TOP > 国内特許検索 > 磁気浮上装置並びに磁気浮上方法 > 明細書

明細書 :磁気浮上装置並びに磁気浮上方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5176097号 (P5176097)
公開番号 特開2007-084338 (P2007-084338A)
登録日 平成25年1月18日(2013.1.18)
発行日 平成25年4月3日(2013.4.3)
公開日 平成19年4月5日(2007.4.5)
発明の名称または考案の名称 磁気浮上装置並びに磁気浮上方法
国際特許分類 B65G  54/02        (2006.01)
H02N  15/00        (2006.01)
B60L  13/04        (2006.01)
FI B65G 54/02
H02N 15/00
B60L 13/04 N
請求項の数または発明の数 16
全頁数 20
出願番号 特願2006-182509 (P2006-182509)
出願日 平成18年6月30日(2006.6.30)
優先権出願番号 2005243617
優先日 平成17年8月25日(2005.8.25)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年6月2日(2009.6.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
発明者または考案者 【氏名】大路 貴久
個別代理人の代理人 【識別番号】100088683、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 誠
【識別番号】100108855、【弁理士】、【氏名又は名称】蔵田 昌俊
【識別番号】100075672、【弁理士】、【氏名又は名称】峰 隆司
【識別番号】100109830、【弁理士】、【氏名又は名称】福原 淑弘
【識別番号】100084618、【弁理士】、【氏名又は名称】村松 貞男
【識別番号】100092196、【弁理士】、【氏名又は名称】橋本 良郎
審査官 【審査官】八板 直人
参考文献・文献 特開昭61-136818(JP,A)
実開平5-37773(JP,U)
特開平2-198920(JP,A)
特開平5-97242(JP,A)
特開昭50-124380(JP,A)
調査した分野 B65G 54/02
B60L 13/04
H02N 15/00
特許請求の範囲 【請求項1】
浮上させるべき導電性非磁性金属板の面に対して第1の交流磁界を印加して前記金属板に渦電流を生じさせる第1の交流電磁石と、
前記金属板の周囲に略対称に配置されている第2及び第3の交流電磁石であって、前記第1の交流磁界の周波数と略等しい周波数を有し、前記第1の交流磁界に対して位相差が与えられている第2及び第3の交流磁界を前記渦電流に交差するように前記金属板に印加して前記金属板にローレンツ力を発生させる第2及び第3の交流電磁石と、
を具備し、前記ローレンツ力を含む浮上力で前記金属板を磁気的に浮上させる磁気浮上装置。
【請求項2】
前記金属板の反対面に対して前記第1の交流磁界の周波数と略等しい周波数を有する第4の交流磁界を印加して前記金属板に渦電流を生じさせる第4の交流電磁石を更に具備することを特徴とする請求項1の磁気浮上装置。
【請求項3】
前記金属板は、前記第1の交流磁界と前記渦電流によって生ずる磁束との誘導反発力及び前記第2並びに第3の交流磁界と前記渦電流によって生ずるローレンツ力によって浮上されることを特徴とする請求項1の磁気浮上装置。
【請求項4】
前記第1、第2及び第3の電磁石は、三相交流電磁石で構成されることを特徴とする請求項1又は請求項3の磁気浮上装置。
【請求項5】
前記第1の交流電磁石に略並列して前記金属板の長手方向の中心軸に関して略対称に配置され、前記金属板の面に対して前記第1の交流磁界の周波数と略等しい周波数を有する第5の交流磁界を印加して前記金属板に渦電流を生じさせる第5の交流電磁石を更に具備することを特徴とする請求項1の磁気浮上装置。
【請求項6】
前記金属板の周囲に前記第2及び第3の交流電磁石とともに略対称に配置されている第6及び第7の交流電磁石であって、前記第1の交流磁界の周波数と略等しい周波数を有し、前記第1の交流磁界に対して位相差が与えられている第6及び第7の交流磁界を前記渦電流に交差するように前記金属板に印加して前記金属板にローレンツ力を発生させる第6及び第7の交流電磁石を更に具備することを特徴とする請求項1の磁気浮上装置。
【請求項7】
前記第1の交流電磁石とともに前記金属板の中心に関して略対称に配置され、前記金属板の面に対して前記第1の交流磁界の周波数と略等しい周波数を有する第8、第9及び第10の交流磁界を印加して前記金属板に渦電流を生じさせる第8、第9及び第10の交流電磁石を更に具備することを特徴とする請求項1又は請求項6の磁気浮上装置。
【請求項8】
前記第1、第2及び第3の交流電磁石は、移動磁界を生成することを特徴とする請求項1の磁気浮上装置。
【請求項9】
前記金属板は、絶縁層を介して金属層が積層された積層構造に構成され、当該金属板積層構造が磁気的に浮上されることを特徴とする請求項1又は請求項6の磁気浮上装置。
【請求項10】
浮上させるべき導電性非磁性金属板の面に対して第1の交流磁界を印加して前記金属板に渦電流を生じさせ
前記金属板の周囲から略対称に第2及び第3の交流磁界を前記金属板に印加して前記金属板を磁気的に浮上させる磁気浮上方法において
前記第2及び第3の交流磁界は、前記第1の交流磁界の周波数と略等しい周波数を有し、前記第1の交流磁界に対して位相差が与えられ、前記渦電流に交差するように前記金属板に印加されて前記金属板にローレンツ力を発生させ、当該ローレンツ力を含む浮上力で前記金属板を磁気的に浮上させる磁気浮上方法。
【請求項11】
固定されている導電性非磁性金属レールと、
この金属レールの面に対して第1の交流磁界を印加して前記金属レールに渦電流を生じさせる第1の交流電磁石、前記金属レールの周囲に略対称に配置されている第2及び第3の交流電磁石であって、前記第1の交流磁界の周波数と略等しい周波数を有し、前記第1の交流磁界に対して位相差が与えられている第2及び第3の交流磁界を前記渦電流に交差するように前記金属レールに印加して前記金属レールにローレンツ力を発生させる第2及び第3の交流電磁石及び前記第1、第2及び第3の交流電磁石を搭載するキャリッジから構成される磁石部と、
を具備し、前記ローレンツ力を含む浮上力で前記金属レール上に前記磁石部を磁気的に浮上させる磁気浮上装置。
【請求項12】
前記磁石部は、前記第1の交流磁界と前記渦電流によって生ずる磁束との誘導反発力及び前記第2並びに第3の交流磁界と前記渦電流によって生ずるローレンツ力によって前記金属レール上に浮上されることを特徴とする請求項11の磁気浮上装置。
【請求項13】
前記第1、第2及び第3の電磁石は、三相交流電磁石で構成されることを特徴とする請求項11の磁気浮上装置。
【請求項14】
前記第1、第2及び第3の交流電磁石は、移動磁界を生成することを特徴とする請求項11の磁気浮上装置。
【請求項15】
前記金属レールは、絶縁層を介して金属レールが積層された積層構造に構成されることを特徴とする請求項11の磁気浮上装置。
【請求項16】
固定されている導電性非磁性金属レールの面に対して第1の交流磁界を印加して前記金属レールに渦電流を生じさせ
前記金属レールの周囲から略対称に第2及び第3の交流磁界を前記金属レールに印加して前記金属レール上に前記第1、第2及び第3の交流電磁石を搭載するキャリッジを磁気的に浮上させる磁気浮上方法において
前記第2及び第3の交流磁界は、前記第1の交流磁界の周波数と略等しい周波数を有し、前記第1の交流磁界に対して位相差が与えられ、前記渦電流に交差するように前記金属レールに印加されて前記金属レールにローレンツ力を発生させ、当該ローレンツ力を含む浮上力で前記金属レール上に前記第1、第2及び第3の交流電磁石を搭載するキャリッジを磁気的に浮上させる磁気浮上方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、金属板を磁気的に浮上させる磁気浮上装置並びに金属板を磁気的に浮上させる方法に係り、特に、交流電磁石によって非磁性金属板に磁束を発生させ、誘導電流と磁束とによって発生するローレンツ力を用いて非磁性金属板に浮上力を与える磁気浮上装置並びに磁気浮上方法に関する。
【0002】
また、この発明は、金属レール上に磁石装置を磁気的に浮上させる磁気浮上装置並びに金属レール上に磁石装置を磁気的に浮上させる磁気浮上方法に係り、特に、交流電磁石によって非磁性金属レール上に磁束を発生させ、誘導電流と磁束とによって発生するローレンツ力を用いて当該金属レールに対して浮上力が与えられるとともに移動磁界で搬送力が与えられる磁気浮上装置並びに磁気浮上方法に関する。
【背景技術】
【0003】
金属板を磁気的に浮上させる磁気浮上装置として誘導反発式の磁気浮上装置が特許文献1で知られている。また、磁気浮上装置として交流磁気浮上搬送装置が特許文献2及び特許文献3で知られている。
【0004】
誘導反発式の磁気浮上装置では、交流磁界によって良導体金属板に渦電流(二次電流)を発生させ、この渦電流によって新たに磁界を発生させている。与えられた交流磁界と渦電流によって生ずる磁界とが互いに反発される結果、その相互反発の向きに発生する浮上力を利用して金属板を浮上させている。
【0005】
誘導反発式の磁気浮上装置として、山梨リニア実験線のような浮上・案内を受動的に制御する8の字コイルが有名である。電磁誘導によって金属板に生じる渦電流は、金属板が有する抵抗によって熱に変換されることから、金属板に熱蓄積が生じないよう配慮が必要であるとされている。
【0006】
一方、磁気浮上装置において、ローレンツ力によって対象物を制御しようとする試みもある。ローレンツ力は、直流磁界に直流電流を作用させれば発生し、磁界及び電流のいずれにも線形性を有することから、ローレンツ力は、能動制御しやすい力とされている。
【0007】
また、磁気浮上装置において、吸引力による磁気浮上は、電磁石と磁性材料若しくは永久磁石の間に働く磁気クーロン力を利用するもので、磁気浮上方式として最も多く用いられている。
【0008】
薄板の浮上搬送に関しては、金属板(特に薄板)であっても、その金属板が強磁性体か否かでその浮上搬送方式が大きく異なっている。金属板が強磁性体の場合は、薄鋼板と呼ばれ、磁気クーロン力を直接作用させることができ、電磁石による吸引制御並びに永久磁石による振動軽減などが考えられている。磁気浮上を利用するタイプとして、
(ア) 有限長の薄鋼板(例えば、縦1m×横1m×厚さ0.5mm)を非接触で搬送するもの
(イ) ローラ上を移動する無限長薄鋼板の振動によって生じる波状の紋様を防止するもの
等がある。強磁性体以外の金属板の搬送に関しては、誘導反発浮上方式で有限長の金属板を搬送する例がある。但し、浮上している金属板には、移動磁界によって誘起される渦電流に基づいて熱が発生するため、長時間亘って連続的な磁気浮上は、困難であるとされている。また、誘導反発浮上方式では、金属板に働く反発力は、浮上力の安定に寄与し、案内力を安定化するには、固定子側若しくは金属薄板自体の形状を工夫することも必要とされている。
【0009】
更に、金属板が変形を伴わないことを条件に誘導反発浮上方式で金属搬送を実現しているが、金属薄板の搬送は難しいとされている。また、反発力のみを作用させる安定化では、能動的な制御機能が低く、金属薄板の種々の振動モードの抑制は極めて困難であるとされている。

【特許文献1】特開平06-048568
【特許文献2】特開平05-252610
【特許文献3】特開平04-029506
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、交流磁界による電磁誘導現象で良導体金属板を浮上させる誘導反発式磁気浮上が既存技術として存在するが、誘導反発式磁気浮上は受動浮上となるため、金属板の浮上状態を積極的に制御することが困難であるとされている。従って、上述した従来の磁気浮上装置においては、金属薄板の搬送は難しく、また、反発力のみを作用させる安定化では、能動的な制御機能が低く、金属薄板の種々の振動モードの抑制は極めて困難であるとされている。このような背景から、磁気浮上装置において、正確な浮上位置制御或いは振動抑制を実現できることが望まれている。
【0011】
また、直流磁界に直流電流を作用させるローレンツ力によって対象物を制御しようとする試みもあるが、ローレンツ力を交流磁界に作用させるような発想は、今までのところ知られていない。
【0012】
更に、金属板が固定されたレールとして磁石装置で磁気的に浮上させ、磁石装置を搬送させる磁気浮上装置、所謂、リニアモータにおいても正確な浮上位置制御或いは振動抑制を実現できることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記問題点を解決するためになされてものであり、その目的は、正確な浮上位置制御或いは振動抑制を実現することができる金属板を磁気的に浮上させる磁気浮上装置及び磁気浮上方法を提供することにある。
【0014】
また、本発明の目的は、金属レール上に正確な浮上位置制御可能に磁石部を磁気的に浮上させることができる磁気浮上装置及び磁気浮上方法を提供することにある。
【0015】
この発明によれば、
浮上させるべき導電性非磁性金属板の面に対して第1の交流磁界を印加して前記金属板に渦電流を生じさせる第1の交流電磁石と、
前記金属板の周囲に略対称に配置されている第2及び第3の交流電磁石であって、前記第1の交流磁界の周波数と略等しい周波数を有し、前記第1の交流磁界に対して位相差が与えられている第2及び第3の交流磁界を前記渦電流に交差するように前記金属板に印加して前記金属板にローレンツ力を発生させる第2及び第3の交流電磁石と、
を具備し、前記ローレンツ力を含む浮上力で前記金属板を磁気的に浮上させる磁気浮上装置が提供される。
【0016】
また、この発明によれば、
浮上させるべき導電性非磁性金属板の面に対して第1の交流磁界を印加して前記金属板に渦電流を生じさせ
前記金属板の周囲から略対称に第2及び第3の交流磁界を前記金属板に印加して前記金属板を磁気的に浮上させる磁気浮上方法において
前記第2及び第3の交流磁界は、前記第1の交流磁界の周波数と略等しい周波数を有し、前記第1の交流磁界に対して位相差が与えられ、前記渦電流に交差するように前記金属板に印加されて前記金属板にローレンツ力を発生させ、当該ローレンツ力を含む浮上力で前記金属板を磁気的に浮上させる磁気浮上方法が提供される。
【0017】
更に、この発明によれば、
固定されている導電性非磁性金属レールと、
この金属レールの面に対して第1の交流磁界を印加して前記金属レールに渦電流を生じさせる第1の交流電磁石、前記金属レールの周囲に略対称に配置されている第2及び第3の交流電磁石であって、前記第1の交流磁界の周波数と略等しい周波数を有し、前記第1の交流磁界に対して位相差が与えられている第2及び第3の交流磁界を前記渦電流に交差するように前記金属レールに印加して前記金属レールにローレンツ力を発生させる第2及び第3の交流電磁石及び前記第1、第2及び第3の交流電磁石を搭載するキャリッジから構成される磁石部と、
を具備し、前記ローレンツ力を含む浮上力で前記金属レール上に前記磁石部を磁気的に浮上させる磁気浮上装置が提供される。
【0018】
更にまた、この発明によれば、
固定されている導電性非磁性金属レールの面に対して第1の交流磁界を印加して前記金属レールに渦電流を生じさせ
前記金属レールの周囲から略対称に第2及び第3の交流磁界を前記金属レールに印加して前記金属レール上に前記第1、第2及び第3の交流電磁石を搭載するキャリッジを磁気的に浮上させる磁気浮上方法において
前記第2及び第3の交流磁界は、前記第1の交流磁界の周波数と略等しい周波数を有し、前記第1の交流磁界に対して位相差が与えられ、前記渦電流に交差するように前記金属レールに印加されて前記金属レールにローレンツ力を発生させ、当該ローレンツ力を含む浮上力で前記金属レール上に前記第1、第2及び第3の交流電磁石を搭載するキャリッジを磁気的に浮上させる磁気浮上方法が提供される。
【0019】
上述したように、この発明の磁気浮上装置によれば、被対象物となる金属板(非磁性良導体)に対し、面方向の上部若しくは下部に設置された交流電磁石によって誘導電流を発生させ、同時に、金属薄板の両端に設置された交流電磁石によって磁束を発生させ、誘導電流と磁束によって発生するローレンツ力を用いて金属板に浮上力を発生させている。即ち、この浮上装置は、誘導反発効果にローレンツ力効果を複合させる方式であり、ローレンツ力を制御することで積極的な制御(能動制御)が可能となる。
【発明の効果】
【0020】
誘導電流及び交流磁界によって発生するクーロン力を利用した磁気浮上方式では、非磁性金属板の浮上制御に対し、この発明の磁気浮上装置によれば、誘導反発による磁気浮上のみでは達成が困難である正確な浮上位置制御並びに振動抑制を実現することができる。非磁性金属板は、交流電磁石を用いた誘導反発による非接触浮上が可能であるが、金属薄板と交流電磁石の間には、文字通り反発力しか働かない。また、誘導電流による反発力は、磁気的なクーロン力に相当し、浮上位置を制御する場合には、周波数や距離等に対して極めて非線形性の強い対象となる。ローレンツ力を発生させる場合、誘導電流と外部作用磁場との外積によって力が発生するため、力の線形性が高く周波数依存性も小さい。
【0021】
この発明の磁気浮上方式では、交流磁界によって発生する誘導電流による誘導反撥と交流電磁石からの磁界とを作用させるローレンツ力によって能動制御を実施するものであり、従来の誘導反発のみの方式で発生する反発力と同等の力を発生させる場合、この発明の磁気浮上方式において、第1の交流電磁石を金属板の下部に配置すれば、より小さい誘導電流で十分な浮上力が得られる。従って、金属板中の熱発生量が軽減され、前述した(ア)非接触で搬送される有限長の薄鋼板(例えば,縦1m×横1m×厚さ0.5mm)への適用が可能となる。また、ローレンツ力は、能動制御が可能であるから、(イ)ローラ上を移動する無限長薄鋼板の振動によって生じる波状の紋様を防止するシステムに適用することができる。
【0022】
金属板を浮上させるシステムと同様に固定された金属レール上に磁石装置を磁気的に浮上させ、磁石装置を搬送させる磁気浮上装置、所謂、リニアモータにおいても、同様に正確な浮上位置制御及び振動抑制を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、必要に応じて図面を参照しながら、この発明の実施の形態に係る磁気浮上装置を説明する。
【0024】
図1は、この発明の実施の形態に係る磁気浮上装置の構成を概略的に示すブロック図である。また、図2は、図1に示された磁気浮上装置の構成を下方から見て示す平面図である。
【0025】
この図1及び図2に示される磁気浮上装置においては、磁気によって非接触で力を与える方法として、誘導反発による抑制力の弱い磁気浮上のみならず、金属板に発生する誘導電流を活用してローレンツ力を発生させて搬送対象である金属板の振動を能動的に抑制している。
【0026】
図1及び図2に示されるように、磁気浮上装置においては、非磁性且つ導電性の金属板(以下、単に金属板と称する。)5上に上部交流電磁石EM1が配置されている。上部交流電磁石EM1は、その端面が非磁性金属板5の上面に向けられた上部交流電磁石鉄心1a及びこの上部交流電磁石鉄心1aの周りに巻回された上部交流電磁石コイル1bから構成される。同様に、非磁性金属板5下には、上部交流電磁石EM2が配置されている。この上部交流電磁石EM2は、その端面が非磁性金属板5の下面に向けられた下部交流電磁石鉄心2a及びこの下部交流電磁石鉄心2aに巻回された下部交流電磁石コイル2bから構成される。また、非磁性金属板5の右側には、右交流電磁石EM3が配置され、非磁性金属板5の左側には、左交流電磁石EM4が配置され、右交流電磁石EM3及び左交流電磁石EM4は、非磁性金属板5の中心に関して略対称に磁束を発生するように配置されている。右交流電磁石EM3は、その端面が非磁性金属板5の側端に向けられた右交流電磁石鉄心3a及びこの右交流電磁石鉄心3aに巻回された右交流電磁石コイル3bから構成される。左交流電磁石EM4は、同様にその端面が非磁性金属板5の側端に向けられた左交流電磁石鉄心4a及びこの左交流電磁石鉄心4aに巻回された左交流電磁石コイル3bから構成される。
【0027】
尚、上述した説明においては、便宜上、図面の面を基準として左右並びに上下と称し、また、図1及び図2には、左右並びに上下の表現とは、別に進行方向をx、案内方向をy、浮上方向をzとする3次元座標x、y、zが示されている。図2においては、磁気浮上装置を下方から示していることから、上部交流電磁石鉄心1a及び上部交流電磁石コイル1bが示されず、金属板5下の下部交流電磁石鉄心1a及び下部交流電磁石コイル1bが示されている。ここで、鉄心1a、2a、3a、4aとして全てU字鉄心が示されているが、U字鉄心に限らず、これら鉄心1a、2a、3a、4aとコイル1b、2b、3b、4bで交流電磁石が構成されれば、他の形態の電磁石であっても良い。
【0028】
下部交流電磁石コイル2bに商用周波数若しくはそれ以上の交流電圧を印加することによって、金属板5に同一周波数の渦電流(i-eddy2)が発生される。渦電流(i-eddy2)によって金属板5に磁束が発生され、この磁束の極性と交流電磁石の極性が相対する(同極となる)ため反発力f2が発生する。この反発力f2によって金属板5が浮上される。これが誘導反発浮上方式の基本原理であり、下側の電磁石EM2によって浮上方向に金属板5を押し上げる効果が発生される。金属板5を案内する案内力を発生させたい場合には、金属板5の両縁下方に交流電磁石を追加配置しても良い。
【0029】
図1及び図2に示される磁気浮上装置では、更に左右の交流電磁石コイル3b、4bに下部交流電磁石コイル2bに印加される交流電圧と同一の周波数の交流電圧が印加されて交流磁界が発生される。この交流磁界によって浮上力としてフレミング左手の法則に従うローレンツ力が発生される。図3には、ある瞬時での電流i1,i2,i3,i4、磁束φ1,φ2,φ3,φ4、力f1,f2,f3,f4の方向が夫々示されている。下部交流電磁石EM2によって発生する反発力f2(誘導反発力)は、同極が相対する状態で発生されるクーロン力に相当する。このクーロン力は、よく知られるように、距離の2乗に反比例する。誘導電流(i-eddy2)と左右交流電磁石EM3、EM4から発生される磁束φ3,φ4との外積によってローレンツ力f3,f4が発生されるが、このローレンツ力f3,f4は、夫々の値に比例し、ベクトルが直交するときに最大となる。誘導反発を生じさせる条件を一定とすれば、金属板に流れる誘導電流(i-eddy2)は、一定値となり、ローレンツ力f3,f4は、左右交流電磁石コイル3b,4bに印加される電圧値に比例する力となる。つまり、ローレンツ力f3,f4は、線形性が高いため金属板5を浮上制御するに際しての制御性が向上される。
【0030】
図3には、金属板5の上方にも上部交流電磁石鉄心1aとそのコイル1bとから構成される上部交流電磁石EM1が配置されている。この電磁石EM1に下部交流電磁石EM2と同方向の磁束(-φ1)が発生するように電流i1を印加すれば、金属板5中の誘導電流(i-eddy1+i-eddy2)が増加し、ローレンツ力f3,f4も増加される。
【0031】
尚、図3に示されるように上部交流電磁石EM1によって下部交流電磁石EM2と同方向の磁束(φ1)が発生される場合には、誘導電流(i-eddy1)によって発生される磁束と上部交流電磁石EM1からの磁束(φ1)によって反発力f1が発生される。従って、金属板5には、下方向の反発力f1及び金属板5の質量mに応じた重力mgを加算した力(f1+mg)並びに上方向の反発力f2が作用される。ここで、反発力f2が力(f1+mg)よりも大きければ、金属板5が浮上される。
【0032】
実際には、金属板5の板幅や板厚は様々である。上下の交流電磁石EM1,EM2と左右の交流電磁石EM3,EM4との間の距離は、金属板5の両端まで誘導電流を流すための重要な指標であり、また、交流電磁石EM1~EM4間同士の相互作用にも関係するものと考えられる。板幅が増加した場合、後に図8を参照して説明されるように上下の交流電磁石EM1,EM2を板端部まで及ぶように複数配置すれば良い。板厚に関しては、板厚の増加により、左右交流電磁石からの磁束によって生じる誘導電流が流れやすい状態となる。このとき、上下の交流電磁石EM1,EM2による誘導電流(i-eddy1,i-eddy2)の方向を大きく乱すことになると考えられる。また、板厚は、渦電流(i-eddy1,i-eddy2)の深さ、即ち、表皮厚さに関係するため配慮が必要となる。更に、誘導電流(i-eddy1,i-eddy2)による熱蓄積に対しても配慮する必要があり、以上の点を考慮すると非磁性且つ電気的な良導体であって熱的にも良好な導体である金属薄板に適用するのが最も効果的であると考えられる。
【0033】
実際にローレンツ力f3,f4に相当する磁気力が発生するかを実験によって確認した。但し、励磁周波数は60Hzで一定とし、鉛直上向きを正とし、金属板5の自重mは省略する。
【0034】
図4は、交流電磁石EM1によって金属板5に生じる渦電流(i-eddy1)と交流電磁石EM1からの磁束とによって生ずる誘導反発による発生力を示すグラフを示している。図4において、横軸は、電磁石EM1に印加した電流密度(A/m)を示し、縦軸は、反発力をニュートン(N)で示している。また、図5は、金属板5に生じる渦電流(i-eddy1)と交流電磁石EM3、EM4からの磁束とによって生ずるローレンツ力の発生状況を示すグラフを示している。図5において、縦軸は、Z軸に沿ったローレンツ力をニュートン(N)で示し、横軸は、交流電磁石EM3、EM4に印加した電流密度(A/m)を示している。また、図5におけるグラフは、夫々図5中に示されるように交流電磁石EM1の電流密度(A/m)に依存するローレンツ力の変化を示している。
【0035】
図4及び図5は、上部交流電磁石EM1のみを誘導電流(i-eddy1)の発生源とした実験における結果を示している。図4は、上部交流電磁石EM1のみを励磁した際には電流i1の2乗に比例する力(f1)が発生され、図5は、上部交流電磁石EM1、左右交流電磁石EM3、EM4の両方を励磁した際の全発生力から図4の誘導反発力分を差し引いた結果を示している。この図5に示されるグラフから、左右交流電磁石EM3、EM4の電流i3,i4の増加に伴い、線形性を保ちながら鉛直上向き(金属板5を浮上させる方向に)にローレンツ力f3,f4が発生していることがわかる。また,金属板5に発生する誘導電流(i-eddy1)のベクトルの向きによってはローレンツ力f3,f4が弱くなるため、現象として線形でなくなる状況も存在した。即ち、上下と左右の交流電磁石EM1,EM2,EM3,EM4に供給される電流の振幅のみならず、電流相互間の位相差によってもローレンツ力f3、f4の大きさを変化させることが可能であり、更に左右の電磁石EM3,EM4の振幅及び位相を独立に制御すれば、金属板5のロール運動或いは高次振動に対しても抑制できる可能性を示唆している。
【0036】
図6は、この発明の他の実施の形態に係る三相交流を用いて移動磁界を発生する磁気浮上装置を示している。図6に示される浮上装置においては、下部三相交流電磁石EM6が非磁性の導電性金属板9下に直線的に配列されている。また、金属板9の左右には、左三相交流電磁石EM7及び右三相交流電磁石EM8が配置されている。下部三相交流電磁石EM6と同様の構造を有する上部三相交流電磁石は、図6には図示されていないが、図2に示される装置と同様に金属板9の上部に設けられても良い。
【0037】
下部三相交流電磁石EM6は、金属板9に対向する櫛形形状の誘導反発用電磁石固定子(磁気ヨーク)6aに三相交流磁界(U,V,W相)が夫々に印加されるコイル6bが巻回されて構成されている。同様に、左三相交流電磁石EM7及び右三相交流電磁石EM8も夫々金属板9の側端面に対向する櫛形形状のローレンツ力発生用電磁石固定子(磁気ヨーク)7a,8aに誘導反発用の電磁石EM6とほぼ同相の三相交流が印加されるコイル7b,8bが巻回されて構成されている。
【0038】
下部三相交流電磁石EM6のコイル6bに三相交流電流が図6並びに図7に示すように+U、-W、+V、-U、+W、-V、…の順である瞬間に印加されると、誘導反発用電磁石固定子(磁気ヨーク)6aからは、三相交流で生成された移動磁界が金属板9に向けて発生される。従って、このとき金属薄板9には、図6に矢印で示される渦電流(I-eddy(1)、I-eddy(2)、I-eddy(3))が発生される。この渦電流(I-eddy(1)、I-eddy(2)、I-eddy(3))によって生ずる誘導反発力は、図面上の紙面を突き抜ける方向に発生さし、移動磁界が時間的にx方向に移動するのに伴い、渦電流の発生位置も移動し、金属薄板9には、x方向の推進力が発生して金属薄板9が搬送される。この結果、誘導反発によって金属板9の浮上と搬送とを同時に実現することができる。
【0039】
また、左三相交流電磁石EM7及び右三相交流電磁石EM8のコイル7b,8bに誘導反発用電磁石EM6とほぼ同相の三相交流電流が同様に図6及び図7に示すように+U、-W、+V、-U、+W、-V、…の順である瞬間に印加されると、ローレンツ力発生用電磁石固定子7a,8aからは、誘導反発用電磁石EM6で生成された移動磁界に同期した移動磁界が金属板9の側端面に向けて発生される。従って、互いに直交する関係にある三相交流で生成された移動磁界と金属薄板9内の渦電流の直交成分との間に同様に図面上の紙面を突き抜ける方向にローレンツ力が発生される。このローレンツ力発生用電磁石EM7、EM8が金属板9の側端面に印加する磁界は、誘導反発用電磁石EM6が金属板9に印加する移動磁界と同期している為に、ローレンツ力が常時発生される。従って、金属板9が誘導反発力並びにローレンツ力によって浮上された状態に維持され、また、推進力が金属板9に付与された状態に維持され、結果として、金属板9が浮上された状態で搬送される。
【0040】
図8は、図6に示される磁気浮上装置の変形例に係る金属薄板の幅が広い場合に適用される移動磁界発生する磁気浮上装置を示している。図8に示される浮上装置においては、幅の広い金属薄板11下に並列して下部三相交流電磁石EM6と同様な構造を有する下部三相交流電磁石EM10L、EM10Rが金属薄板11の長手方向の中心軸に関して略対称に配置されている。ここで、金属薄板11の幅が広いとは、三相交流電磁石EM10L、EM10Rの幅に比して金属薄板11が十分広い幅を有していることを意味している。
【0041】
図8に示される磁気浮上装置においては、金属薄板11の幅が広くても、下部三相交流電磁石EM10L、EM10Rの誘導反発用電磁石固定子10a及びコイル10bを幅方向両側に配置することで有効にローレンツ力を発生することができる。
【0042】
図6、図8における移動磁界として一般的な三相交流磁界による印加方法を例としたが、移動磁界を発生させる方法は、一般的な三相交流磁界に限らず、他の方法で移動磁界を発生させても良い。
【0043】
図9は、図1及び図2に示した磁気浮上装置の変形例に係る有限長の金属薄板14に対してローレンツ力を発生する磁気浮上装置を示している。図9に示される浮上装置においては、金属薄板14の下方に単極の電磁石12が配置され、その周囲に単極の電磁石13-1~13-4が対称に配置されている。電磁石12の単極のみを利用した場合、誘導反発用電磁石鉄心12a及びコイル12bが金属薄板14の側端面に対向するように配置され、ローレンツ力によって金属薄板14が浮上される。ここで、電磁石13-1~13-4のローレンツ力発生用電磁石鉄心13-1a~13-4a及びコイル13-1b~13-4bを金属薄板の周囲に配置することで金属薄板内の渦電流を利用したローレンツ力を発生させることができるが、磁気回路的には、単極の電磁石13-1~13-4及び単極の電磁石12に代えて両極の電磁石13-1~13-4及び12が望ましい。
【0044】
図10は、図1及び図2に示した磁気浮上装置の変形例に係る磁気浮上装置において磁気回路を考慮した有限長の金属薄板20に対するローレンツ力発生原理を示している。図9に示される浮上装置においては、金属薄板20の下方に両極の電磁石15が配置され、x軸方向に沿って配置された両極の電磁石16、17及びy軸方向に沿って配置された単極の電磁石18,19が金属薄板20の周りに対称に配置されている。電磁石15のU字形電磁石鉄心15a及びコイル15bは、誘導反発用電磁石15を構成し、このU字形電磁石鉄心15a及びコイル15bによって発生する金属薄板20内の渦電流に沿って電磁石16、17のU字形鉄心16a,17a及びそのコイル16b,17bを配置することでローレンツ力を発生させることができる。更に電磁石18,19の鉄心18a,19a及びコイル18b,19bを図10のように配置することでローレンツ力を追加させることができるが、鉄心からの磁束が磁気回路的に閉じるように構成すると鉄心15aと16aを接合することになる。以上で磁気回路的に完全に閉じた浮上装置の構成が実現できる。
【0045】
図11はこの発明の更に他の実施の形態に係る磁気浮上装置であって、有限長の金属薄板23に対し、回転磁界を印加する場合にローレンツ力を発生させる例を示している。図11に示される浮上装置では、誘導反発とともに回転力を発生させるために4つの両極の電磁石21—1~21-4が金属薄板23の下面に対向して金属薄板23の中心に関して略対称に配置されている。ローレンツ力発生させるための4つの電磁石22-1~22-4が金属薄板23の周囲に略対称に配置されている。
【0046】
電磁石21—1~21-4の電磁石鉄心21-1a~21-4a及びコイル21-1b~21-4bによって金属薄板23に渦電流が生じ、電磁石22-1~22-4のローレンツ力発生用電磁石鉄心22-1a~22-4a及びコイル22-1b~22-4bによって金属薄板23内の渦電流を利用してローレンツ力が発生される。このローレンツ力発生用電磁石に印加する磁界は、誘導反発用電磁石による回転磁界と同期するように印加することでローレンツ力は、常時発生することになる。
【0047】
上述した全ての構成において,ローレンツ力の効果的発生方法は,ローレンツ力が金属薄板内の渦電流とローレンツ力発生用電磁石の磁束の外積で表現されるため、正確には、金属薄板中の渦電流と磁束が同期し、且つ、空間的に90度のベクトルを持つとき最大となる。従って,全ての例において誘導反発力発生用電磁石とローレンツ力発生用電磁石を同相としたがこれに限られるものではなく、実際は,電磁石間の相互作用や金属薄板内部の渦電流分布により多少ずれが生じる。
【0048】
図12は、上部交流電磁石EM1と右側交流電磁石EM3の各部の電圧、電流、磁束及び力の関係を説明するための図であり、図13は、図12に示される点線領域30を拡大して示している。また、図14~図16は、図12及び図13に示される磁気浮上装置において、浮上方向へのローレンツ力が最大となる関係を示している。但し、この波形は様々な仮定を与えた理想状態であるとする。様々な仮定とは、各電磁石鉄心の透磁率が一定、鉄心中の鉄損を無視し、コイルの銅損や漏れリアクタンス、電磁石間の相互インダクタンスを無視し、金属薄板は抵抗成分のみ(位相遅れは生じない)ものとし、全ての作用要素は座標軸方向のみに分布する等を意味している。
【0049】
図12に示される上部交流電磁石EM1のコイルに与えられる電圧vに対し,その電流iは、図14に示されるようにコイルの自己インダクタンスにより90度の位相遅れとなる。また、電流iと磁束φは、同相で金属薄板に作用される。更にファラデーの電磁誘導の法則に従い、磁束φより90度遅れた誘導起電力が発生し、金属薄板の位相遅れを無視すれば、図14に示されるように金属薄板中の渦電流ieddy1は、電流i及び磁束φより90度位相遅れとなる。渦電流ieddy1に対し右側交流電磁石からの磁束φが同相となるように電流iを印加する。当然、電磁石の自己インダクタンスの影響により右側交流電磁石電圧vは、図15に示されるように電流iに対し90度進み位相となる。このとき空間的な位相差も考慮すると、電流ieddy1とそれより90度進んだ磁束φ3の外積によって生じるローレンツ力f3が図16に示されるように浮上方向+zで最大となる。
【0050】
この一連の現象を,図13を用いて渦電流ieddy1及び磁束φ,φを数式化することで以下に説明する。上部交流電磁石の磁束φを空間ベクトルとして、
【0051】
【数1】
JP0005176097B2_000002t.gif

【0052】
とおくと,金属薄板中の渦電流は90度遅れとなるから、
【0053】
【数2】
JP0005176097B2_000003t.gif

【0054】
と表される。ローレンツ力を得るために右側交流電磁石に以下の磁束を発生させる。
【0055】
【数3】
JP0005176097B2_000004t.gif

【0056】
最後に,励磁周波数について議論すると励磁周波数は、誘導反発力発生用電磁石(上下交流電磁石)とローレンツ力発生用電磁石(左右交流電磁石)において同一周波数であることが必要である。また,このローレンツ力発生には、金属薄板の渦電流を利用するため誘導反発力発生用電磁石との併用が必要である。更に励磁周波数に関しては、金属薄板の表皮効果について議論する必要があるが、表皮厚さを表す次式
【0057】
【数4】
JP0005176097B2_000005t.gif

【0058】
から、60Hzで励磁した場合、銅板で8.5mm、アルミ板で11mm程度となる。ここで、μは金属薄板の透磁率、σは、導電率である。この表皮厚さ以下の薄板であれば大きな問題はなく、薄板に対応させる本方式は非常に有効である。
【0059】
図1~図16を参照して説明した磁気浮上装置では、非磁性且つ導電性の金属板5、9、11、14を浮上させているが、他の観点からこの発明を考察すれば、磁石装置50自体が固定された非磁性の導電性金属レール60上に浮上される磁気浮上装置に構成されても良いことは明らかである。
【0060】
図17は、この発明の更にまた他の実施の形態に係る金属レール60上に磁石装置部50が磁気的に浮上され、搬送される磁気浮上装置を概略的に示している。また、図18は、図17に示した磁気浮上装置の変形形態を示し、金属レール部60に磁石装置部50が磁気的に吊り下げ浮上され、搬送される磁気浮上装置を概略的に示している。図17及び18は、いずれもリニアモータを構成している。図17及び図18において、図1~図16に付したと同一の符号は、同一の箇所或いは同一の部品を示すものとして、以下の説明において、その詳細な説明は省略する。
【0061】
図17に示される磁気浮上装置においては、固定子側に相当する金属レール部60は、レール台座58とレール台座58上に固定された非磁性の導電性金属板5、9、11、14に相当するガイド用板状レール62とから構成され、この金属レール部60は、搬送路(図示せず)に沿って延出されている。この金属レール部60の板状レール62上には、図3に示す磁気浮上装置と同様に上部交流電磁石EM1が配置され、板状レール62の右側には、右交流電磁石EM3が配置され、板状レール62の左側には、左交流電磁石EM4が配置されている。上部交流電磁石EM1、右交流電磁石EM3及び左交流電磁石EM4は、その位置関係を維持するように搬送用キャリッジ、即ち、搬送部64に収納固定され、移動子側としての磁石装置部50を構成している。
【0062】
図17に示される磁気浮上装置では、上部交流電磁石EM1によって磁束(φ1)が発生され、この磁束(φ1)に基づいて板状レール62に誘導電流(i-eddy1)が発生される。また、誘導電流(i-eddy1)によって発生される磁束と上部交流電磁石EM1からの磁束(φ1)によって反発力f1が発生される。また、誘導電流(i-eddy1)と左右交流電磁石EM3、EM4から発生される磁束φ3,φ4との外積によってローレンツ力f3,f4が発生される。この誘導反発力f1及びローレンツ力f3,f4が磁石装置部50の質量Mに応じた重力Mgよりも大きければ、磁石装置部50が浮上される。更に、上部交流電磁石EM1からの磁束(φ1)が移動磁界を生じさせる場合には、この磁石装置部50が移動磁界に応じて搬送される。ここで、既に説明したように、ローレンツ力f3,f4は、線形性が高いため金属板5を浮上制御するに際しての制御性が向上される。
【0063】
尚、図17における、力f1、f3、f4は、ある瞬間に金属板レール62に下向きの力が働くこと、即ち、可動子に反作用として上向きの力が働くことを意味している。
【0064】
図17に示すように、通常、励磁側は常に固定子(レール62)の上部に配置する必要があるが、図18に示すようにレール62の下に可動子である磁石装置部50を配置してローレンツ吸引形とすることも原理的に可能である。即ち、図18に示す磁気浮上装置においては、固定子側に相当する金属レール部60の板状レール62下には、図3に示す磁気浮上装置と同様に下部交流電磁石EM2が配置され、板状レール62の右側には、右交流電磁石EM3が配置され、板状レール62の左側には、左交流電磁石EM4が配置されている。下部交流電磁石EM2、右交流電磁石EM3及び左交流電磁石EM4は、その位置関係を維持するように搬送用キャリッジ64に収納固定され、移動子側としての磁石装置部50を構成している。
【0065】
図18に示される磁気浮上装置では、下部交流電磁石EM2によって磁束(φ2)が発生され、この磁束(φ2)に基づいて板状レール62に誘導電流(i-eddy2)が発生される。また、誘導電流(i-eddy2)によって発生される磁束と下部交流電磁石EM2からの磁束(φ1)によって反発力f2が発生される。また、誘導電流(i-eddy2)と左右交流電磁石EM3、EM4から発生される磁束φ3,φ4との外積によって板状レール62を吸引するローレンツ力f3,f4が発生される。この誘導反発力f1及びローレンツ力f3,f4が磁石装置部50の質量Mに応じた重力Mgよりも大きければ、磁石装置部50が板状レール62に引き寄せられた状態で浮上される。更に、上部交流電磁石EM1からの磁束(φ1)が移動磁界を生じさせる場合には、この磁石装置部50が移動磁界に応じて搬送される。ここで、既に説明したように、ローレンツ力f3,f4は、線形性が高いため金属板5を浮上制御するに際しての制御性が向上される。
【0066】
尚、図18は、ある瞬間で金属板(板状レール62)に上向きの力f2と下向きの力f3、f4が働く状態を示している。
【0067】
図17及び図18に示される磁気浮上装置においては、交流電磁石EM1~EM3に代えて図6及び図8に示されるように三相交流が印加される磁石装置EM6、EM7、EM8或いはEM7、EM8及びEM10L、EM10Rの組み合わせが搬送用キャリッジ64に収納固定され、移動子側としての磁石装置部50を構成しても良い。磁石装置EM6、EM7、EM8或いはEM7、EM8及びEM10L、EM10Rには、図7に示されるような三相交流が印加され、移動磁界も形成される。このような磁気浮上装置においても当然に上述した実施例と同様に磁石装置部50を浮上状態に維持して移動磁界によって搬送することができる。
【0068】
図19は、図1に示される磁気浮上装置の変形例を示している。図19においては、図1に付した符号と同一符号は、同一部分及び同一箇所を示し、その説明を省略する。図19に示される磁気浮上装置は、絶縁層5Bを介して複数枚の金属層5Aが積層された金属板積層構造55が無垢単層の金属板5に代えて用いられている。金属層5Aは、既に説明したように非磁性且つ導電性金属であり、好ましくは、熱的にも良導伝性を有している。
【0069】
既に説明したように、磁気浮上装置において、大きなローレンツ力を得るためには、金属板5の厚みを大きくすることが考えられる。しかし、金属板5の厚みを大きくすると、左右の交流電磁石EM3,EM4からの磁束が鎖交する面積が増加し、金属板5の側面で生ずる渦電流が増加される。この渦電流は、ローレンツ力を増加させるに寄与する渦電流とは異なり、上下交流電磁石EM1、EM2によって生じるローレンツ力に寄与する渦電流の流れを乱したり、渦電流の増加に伴うジュール熱の上昇を引き起こす虞がある。しかし、図19に示される金属板積層構造55を採用することによって、その側面で生ずる渦電流が減少させることができる。
【0070】
図19に示した磁気浮上装置には、金属板積層構造55の各金属層5Aで渦電流を発生させることができ、この渦電流に左右の交流電磁石EM3,EM4からの磁束を鎖交させることによってより大きなローレンツ力を発生させることができる。しかも、積層構造55であることから、その側面には、ローレンツ力の増加に寄与しない渦電流の増加を抑制することができ、渦電流の増加に伴うジュール熱の上昇を抑制することができる。
【0071】
図1及び図19に示すタイプの磁気浮上装置に限らず、図1の変形例に係る磁気浮上装置並びに図17及びその変形例に係る磁気浮上装置において、図19に示す磁気浮上装置と同様に金属板(板状レール)が積層構造を有する金属板或いは板状レールに置き換えられても良いことは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0072】
産業界で車のボディーや家電製品などに大量に使用されている薄鋼板は、薄板の高品質化(均一な塗料流布や接触変形の除去)が重要であり、そのため非接触搬送技術が盛んに研究されている。しかし、薄鋼板は、柔軟性に富むため、能動磁気浮上によって安定に搬送するのは容易ではなく、産業界への導入は長年の懸案となっている。薄鋼板などの磁性材料に限らず、高強度及び軽量化を目的とした材料開発は盛んであり、アルミニウム或いはマグネシウム等の非磁性金属に対しても能動制御を施すことのできる非接触搬送方法が必要であり、産業上の利用可能性は高い。
【0073】
また、リニアモータに代表される磁気浮上装置にも適用することが可能であり、線形性が高いローレンツ力を利用した制御性の良い磁気浮上装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】この発明の一実施の形態に係る磁気浮上装置を概略的に示すブロック図である。
【図2】図1に示された金属板を磁気的浮上させる磁気浮上装置の構成を下方から見て示す平面図である。
【図3】図1に示された磁気浮上装置におけるある瞬時での電流、磁束及び力の方向を示す説明図である。
【図4】図1及び図2に示された磁気浮上装置における誘導反発による発生力を示すグラフである。
【図5】図1及び図2に示された磁気浮上装置において発生されるローレンツ発生力を示すグラフである。
【図6】この発明の他の実施の形態に係る三相交流を用いた移動磁界発生する磁気浮上装置を概略的に示す平面図である。
【図7】図6に示される磁気浮上装置に印加される三相交流及びこの三相交流によって生ずる移動磁界を示す波形図である。
【図8】図6に示される磁気浮上装置の変形例に係る幅が広い金属薄板に適用される移動磁界発生する磁気浮上装置を概略的に示す平面図である。
【図9】図1及び図2に示した磁気浮上装置の変形例に係る有限長の金属薄板に対してローレンツ力を発生する磁気浮上装置を示す平面図である
【図10】図1及び図2に示した磁気浮上装置の変形例に係る有限長の金属薄板に対してローレンツ力を発生する磁気浮上装置を示す平面図である。
【図11】この発明の更に他の実施の形態に係る磁気浮上装置であって、有限長の金属薄板に対し、回転磁界を印加する場合にローレンツ力を発生させる磁気浮上装置を示す平面図である。
【図12】図1及び図2に示される磁気浮上装置において、上部交流電磁石と右側交流電磁石の各部の電圧、電流、磁束及び力の関係を説明するための模式図である。
【図13】図12の一部を拡大して示す模式図である。
【図14】図1及び図2に示される磁気浮上装置の上部電磁石及び金属薄板における電流、電圧、磁束の位相関係を示すグラフである。
【図15】図1及び図2に示される磁気浮上装置の右側電磁石における電流、電圧、磁束の位相関係を示すグラフである。
【図16】図1及び図2に示される磁気浮上装置におけるローレンツ力の位相関係を示すグラフである。
【図17】この発明の更にまた他の実施の形態に係る磁気浮上装置であって、磁石装置が金属レールに対して磁気的反発力で浮上され、金属レール上を搬送される磁気浮上装置を概略的に示す断面図である。
【図18】図17に示した磁気浮上装置の変形例に係る磁気浮上装置であって、磁石装置が金属レールに磁気的吸引力で浮上され、金属レール上を搬送される磁気浮上装置を概略的に示す断面図である。
【図19】図1に示した磁気浮上装置の変形例に係る磁気浮上装置を概略的に示すブロック図である。
【符号の説明】
【0075】
5、9、11、14...非磁性の導電性金属板、EM1、EM2、EM3、EM4、EM6、EM7、EM8、EM10L、EM10R、12、13-1~13-4、15、18、19、21—1~21-4...交流電磁石、1a、2a、3a、4a、6a、7a、8a、10a、12a、13-1a~13-4a、15a、16a、17a、18a、19a、21-1a~21-4a...、交流電磁石鉄心、1b、2b、3b、4b、6b、7b、8b、10b、12b、13-1b~13-4b、15b、16b、17b、18b、19b、21-1B~21-4b...交流電磁石コイル、i1,i2,i3,i4...電流、φ1,φ2,φ3,φ4...磁束、f1,f2,f3,f4...力、
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18