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明細書 :カーボンナノチューブと高分子を用いた電子放出源の製法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3972107号 (P3972107)
公開番号 特開2005-285344 (P2005-285344A)
登録日 平成19年6月22日(2007.6.22)
発行日 平成19年9月5日(2007.9.5)
公開日 平成17年10月13日(2005.10.13)
発明の名称または考案の名称 カーボンナノチューブと高分子を用いた電子放出源の製法
国際特許分類 H01J   9/02        (2006.01)
B82B   3/00        (2006.01)
C01B  31/02        (2006.01)
FI H01J 9/02 B
B82B 3/00
C01B 31/02 101F
請求項の数または発明の数 4
全頁数 13
出願番号 特願2004-092829 (P2004-092829)
出願日 平成16年3月26日(2004.3.26)
審査請求日 平成18年10月19日(2006.10.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
発明者または考案者 【氏名】伊東 栄次
【氏名】宮入 圭一
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】110000121、【氏名又は名称】アイアット国際特許業務法人
審査官 【審査官】山口 剛
参考文献・文献 特開平11-329217(JP,A)
特開2002-025767(JP,A)
特開2002-056976(JP,A)
特開2003-187963(JP,A)
特開2001-057146(JP,A)
特開2002-008517(JP,A)
特開2004-042253(JP,A)
Y.W.Jin、J.E.Jung、Y.J.Park、J.H.Choi、D.S.Jung、H.W.Lee、S.H.Park、N.S.Lee、J.M.Kim、T.Y.Ko、S.J.Lee、S.Y.Hwang、J.H.You、Ji-Beom Yoo、Chong-Yun Park,"Triode-type field emission array using carbon nanotubes and a conducting polymer composite prepared by electrochemical polymerization",JOURNAL OF APPLIED PHYSICS,米国,American Institute of Physics,2002年 7月15日,Vol.92,No.2,pp.1065-1068
W.B.Choi、Y.W.Jin、H.Y.Kim、S.J.Lee、M.J.Yun、J.H.Kang、Y.S.Choi、N.S.Park、N.S.Lee、J.M.Kim,"Electrophoresis deposition of carbon nanotubes for triode-type field emission display",APPLIED PHYSICS LETTERS,米国,American Institute of Physics,2001年 3月12日,Vol.78,No.11,pp.1547-1549
調査した分野 H01J 9/02
H01J 1/30- 1/316
B82B 1/00- 3/00
JST7580(JDream2)
JSTPlus(JDream2)
特許請求の範囲 【請求項1】
電界放出により電子を放出させる電子放出源を製造する方法であって、
導電性高分子とカーボンナノチューブとを含む有機溶媒に、電源に接続された陽極と陰極とを挿入し、陰極に、導電性高分子とカーボンナノチューブとを堆積させる工程と、
上記導電性高分子と上記カーボンナノチューブとを堆積させた後に、上記陰極を上記溶液から引き上げて、上記陰極と堆積物の表面との間に150~250Vの範囲の電圧をかける電場処理を行う工程と、
を含むことを特徴とする、カーボンナノチューブと高分子を用いた電子放出源の製法。
【請求項2】
前記導電性高分子は、ポリビニルカルバゾール、可溶性ポリパラフェニレンビニレン、可溶性ポリアニリン、ポリ(アルキル)フルオレンまたはポリ(アルキル)チオフェンの内のいずれか1つまたは複数からなることを特徴とする請求項1に記載の、カーボンナノチューブと高分子を用いた電子放出源の製法。
【請求項3】
前記有機溶媒中に含まれる前記導電性高分子に対する前記カーボンナノチューブの重量比率は、0.05以上2以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の、カーボンナノチューブと高分子を用いた電子放出源の製法。
【請求項4】
前記電場処理は、200Vで30から60秒間行われることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の、カーボンナノチューブと高分子を用いた電子放出源の製法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、低電圧にて電子を放出するカーボンナノチューブと高分子を用いた電子放出源の製法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、電界放出型ディスプレイ(Field Emission Display:FED)の開発が、日本のみならず、韓国をはじめとする海外においても活発化している。電界放出とは、固体表面に強い電場をかけると、固体表面に閉じ込められていた電子が真空中に飛び出す現象をいう。電子を放出させるためには固体に強い電圧をかける必要があるが、細く尖った固体を使用すれば、小さな電圧をかけるだけで済む。これまでは、細く尖らせたシリコン、モリブデン等の材料を電界放出型電子源として採用されてきたが、最近では、ナノスケールの細さと、良好な電気伝導性と、高強度と、化学的安定性とを兼ね備えたカーボンナノチューブ(Carbon Nano Tube:CNT)が、新たな電界放出型電子源として期待されている。
【0003】
FEDは、ピクセル単位で配置される蛍光体に電子を当てて発光させることにより映像を形成するディスプレイである。CNTを電界放出電子源として利用するには、FEDのガラス板の裏面にある蛍光体に向けて電子を放出できるように、蛍光体に対して実質的に垂直に多数のCNTを配置する必要がある。通常、多数のCNTは、導電性高分子膜中に立設されるが、この工程において、CNTを導電性高分子中にどれだけ垂直に立設するかが重要となる。
【0004】
CNTを導電性高分子中に立設する方法としては、例えば、スピンコート法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。スピンコート法は、導電性高分子とCNT等の電極材の混合物をディスク上に塗布して当該ディスクを回転させて広げ、硬化させる方法である。
【0005】

【特許文献1】特開2000-277004号公報(特許請求の範囲、要約書等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、スピンコート法の場合、ディスクの回転によって生じる遠心力によって、導電性高分子とCNTが広がるだけであるため、導電性高分子上に垂直に立設されるCNTは必ずしも多くはない。CNTの垂直配向性が低いと、多数の電子が放出されたとしても、蛍光体を発光させるのに有効な電子の数が少なくなる。したがって、蛍光体を発光させるための電圧はいまだ十分に低くならず、より低電圧にて電子放出が可能なFEDが強く望まれている。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、電子放出に要する電圧をさらに低くすることができるカーボンナノチューブと高分子を用いた電子放出源の製法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、電界放出により電子を放出させる電子放出源を製造する方法であって、導電性高分子とカーボンナノチューブとを含む有機溶媒に、電源に接続された陽極と陰極とを挿入し、陰極に、導電性高分子とカーボンナノチューブとを堆積させる工程と、導電性高分子とカーボンナノチューブとを堆積させた後に、陰極を溶液から引き上げて、陰極と堆積物の表面との間に150~250Vの範囲の電圧をかける電場処理を行う工程とを含むカーボンナノチューブと高分子を用いた電子放出源の製法としている。かかる製法を採用することにより、導電性高分子中にカーボンナノチューブが分散した膜を得ることができる。製造過程において、カーボンナノチューブは、その長さ方向を陰極に向けて堆積しやすくなる。このため、カーボンナノチューブが導電性高分子の膜に垂直に立設した形態の膜を得ることができる。特に、かかる電場処理を行うことにより、閾電圧がさらに低い良好な電子放出源を得ることができる。電場処理における電圧が150V未満でも250Vより高くても、閾電圧の低下効果は低い。150~250Vの範囲の電圧の場合に、閾電圧の低下が高まる。
【0009】
また、別の本発明において、先の導電性高分子を、ポリビニルカルバゾール、可溶性ポリパラフェニレンビニレン、可溶性ポリアニリン、ポリ(アルキル)フルオレンまたはポリ(アルキル)チオフェンの内のいずれか1つまたは複数からなる高分子としている。これらの高分子は、有機溶媒に溶けやすく、かつ導電性高分子の中でも特に導電性に優れる。したがって、カーボンナノチューブと高分子を用いた電子放出源を製造しやすく、かつカーボンナノチューブに電界をかけやすくなる。
【0010】
また、別の本発明は、有機溶媒中に含まれる導電性高分子に対するカーボンナノチューブの重量比率を0.05以上2以下とするカーボンナノチューブと高分子を用いた電子放出源の製法としている。導電性高分子に対するカーボンナノチューブの重量比率を高くすると、理論的には、カーボンナノチューブの先端から電子を放出するために必要な電圧(閾電圧)は低くなる。しかし、実際には、カーボンナノチューブ同士の凝集の確率も高まるために、カーボンナノチューブの量が多くなりすぎ、閾電圧は高くなる。導電性高分子に対するカーボンナノチューブの重量比率を0.05以上2以下とすると、カーボンナノチューブ同士の凝集が少なく、分散性の高いカーボンナノチューブから成る閾電圧の低い電子放出源を得ることができる。
【0012】
また、別の本発明において、先の電場処理を200Vで30から60秒間行うカーボンナノチューブと高分子を用いた電子放出源の製法としている。特に、電場処理における電圧を200Vとし、電場処理の時間を30~60秒の範囲で設定すると、閾電圧が大きく低下する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電子放出に要する電圧がより低い、カーボンナノチューブと高分子を用いた電子放出源を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係るカーボンナノチューブと高分子を用いた電子放出源の製法の実施の形態について説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係るカーボンナノチューブと高分子を用いた電子放出源(以後、単に、「電子放出源」という。)の製造工程と評価の流れを示す図である。
【0020】
図1に示すように、電子放出源の製造方法は、電気泳動に用いられる溶液(以後、「電気泳動溶液」という。)の調整(ステップS1)、その電気泳動溶液中における成膜処理(ステップS2)、作製後の膜に対する電場処理(ステップS3)というステップから成る。その後、評価(ステップS4)が行われる。ただし、ステップS3は、必須のステップではなく、成膜処理の後に評価を行うこともできる。
【0021】
次に、上述の各ステップについて詳しく説明する。
【0022】
(1)電気泳動溶液の調整(ステップS1)
ステップS1は、カーボンナノチューブと導電性高分子を溶媒に混ぜるステップである。ステップS1では、カーボンナノチューブを所定の液体と混ぜた溶液と、導電性高分子を所定の液体と混ぜた溶液とを予め用意し、これら両溶液を溶媒に混ぜる方法を採用することができる。ただし、カーボンナノチューブと導電性高分子を、直接、溶媒に混ぜても良い。
【0023】
カーボンナノチューブ(Carbon Nano Tube:CNT) は、グラフィン(graphene)という炭素六角網面がナノレベルの直径を持つ円筒に丸めた中空状のチューブであり、一枚のグラフィンからなる単層カーボンナノチューブ(Single Wall Carbon Nano Tube:SWCNT)と径の異なる複数枚のグラフィンからなる多層カーボンナノチューブ(Multi Wall Carbon Nano Tube:MWCNT)に大別される。電界放出型ディスプレイ(Field Emission Display:FED)に利用するCNTとしては、SWCNTおよびMWCNTのいずれをも採用可能であるが、低い電圧にて多くの電子を放出させるMWCNTの方が有利である。本発明では、CNTは、直径が1ナノメール以下の極細のCNTの他、数ナノメートルから数十ナノメートルの中細のCNTも含むものとして広義に解釈されるものとする。さらに、CNTは、アーク放電法、レーザーアブレーション法、プラズマ合成法、化学気相析出(Chemical Vapor Deposition:CVD)法等のいずれの製法により製造されたものでも採用可能である。ただし、量産に有利なCVD法により製造されたCNTの方が好ましい。
【0024】
導電性高分子は、ドーパントにより金属並みに電気を流す高分子をいう。本発明の実施において使用する導電性高分子としては、有機溶媒に可溶の導電性高分子であれば適用可能であるが、特に、p型半導体に属するものが好ましい。また、導入される置換基としては、炭化水素基(アルキル基など)が好ましい。このアルキル基は、直鎖及び分岐鎖のいずれであっても良いが、好ましくは、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基が良い。例えば、ポリビニルカルバゾール、可溶性ポリパラフェニレンビニレン(MEH-PPV(Poly[2-methoxy-5-(2'ethylhexyloxy)-1,4-phenylenevinylene] )、可溶性ポリアニリン、ポリ(アルキル)フルオレンあるいはポリ(アルキル)チオフェンが好ましい。アルキル基の長さは、可溶性と耐熱性とを考慮すると、炭素数4以上20以下の範囲のものが好ましい。特に、アルキル基が炭素8個から成るポリ(3-オクチルチオフェン)あるいは炭素6個から成るポリ(3-ヘキチルチオフェン)を採用するのが好ましい。また、上記導電性高分子を複数使用しても良い。
【0025】
また、導電性高分子に対するCNTの重量比率は、0.05以上2以下が好ましい。当該重量比率が0.05より小さいと、蛍光体を十分に発光させるだけの電子放出効果が望めない。一方、当該重量比率が2より大きいと、CNTの占める体積比率が大きすぎて、扱いづらくなると共に、凝集しやすくなり分散性が低下する。なお、用いる溶媒は、CNTおよび導電性高分子を分散でき、陰極にこれら導電性物質を堆積させることができる媒体であれば、特に制約されないが、アセトニトリル、トルエン等の有機溶媒が好ましい。
【0026】
(2)成膜処理(ステップS2)
成膜は、電気泳動法により行われる。ステップS1にて調整された電気泳動溶液を入れた容器中に、2枚の電極を挿入し、各電極を直流電源の正極側と負極側に接続する。電極は、導電性の高い材料からなる。電極としては、例えば、白金、銅、あるいは酸化インジウム錫(Indium Tin Oxide:ITO)、金、あるいはアルミニウムが採用可能である。
【0027】
直流電源に接続される2枚の電極は、正極と負極となる。電気泳動溶液中のCNTおよび導電性高分子は、負極に引かれてその表面に堆積する。成膜条件は、適宜選択できるが、100~300Vの直流電源を使用し、2分以内の成膜時間で処理を行うのが好ましい。
【0028】
(3)電場処理(ステップS3)
電場処理は、成膜後の負極を電気泳動溶液から引き出し、乾燥後に行われる処理であり負極に形成された膜の上下間に電圧をかける処理である。膜は負極に堆積しているので、電源の一方は、負極に接続される。電源のもう一方は、膜の表面近傍に接続される。電圧は、150~250Vの範囲とするのが好ましい。電場処理の時間としては、30~60秒が好ましい。
【0029】
(4)膜の評価(ステップS4)
成膜処理で得られた膜は、閾電圧の評価に供される。当該評価は、膜の直下にある負極と、膜の上方に非接触に配置される電極との間にかける電圧を上昇させていき、膜の表面に突出するCNTの先端から電子が放出されて、上方に非接触に配置される電極との間で電気が流れる時の電圧(閾電圧)を調べる手法で行われる。閾電圧が低いほど、良好な電極である。
【実施例】
【0030】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0031】
(電気泳動法による成膜条件と評価方法)
電気泳動溶液は、アセトニトリル(Acetonitrile)30mlに、ポリ(3-オクチルチオフェン)溶液(以後、「P3OT溶液」という。)0.5mlおよびカーボンナノチューブ溶液(以後、「CNT溶液」という。)0.25mlを混ぜたものを用いた。電気泳動溶液中のP3OT/CNT(重量比率)は、2.0である(CNT/P3OT(重量比率)は、0.5である。)。P3OT溶液は、前もって、トルエン(Toluene)20mlとP3OT20mgとを混合して作製された。また、CNT溶液は、前もって、トルエン(Toluene)5mlとCNT5mgとを混合して作製された。使用したCNTは、アルドリッチ社製の直径12~15オングストロームのものである。
【0032】
図2は、本実施例において使用した電気泳動装置を示す図である。
【0033】
この装置は、円筒容器1に上述の電気泳動溶液2を入れ、その中に2枚のガラス基板3,4を挿入したものである。2枚のガラス基板3,4は、互いに5mmの間隔をあけて配置された。ただし、ガラス基板3,4間の距離は、5mmに限定されない。一方のガラス基板4には、その一部5にITO膜を貼り付けた。また、他方のガラス基板3には、全面にITO膜を貼り付けた。ITO膜のシート抵抗は、約20Ω/cmであった。ガラス基板4の一部5とガラス基板3の面とは、配線6を伸ばして、それぞれ直流電源7の負極および正極に接続した。したがって、ガラス基板4の一部5は負極5に、ガラス基板3の面は正極3になる。
【0034】
CNT8および導電性高分子9は、電気泳動溶液中において共に正に帯電しているため、正極3と負極5の間に電圧をかけると、CNT8と導電性高分子9は、それぞれ負極5に引かれる。この結果、負極5の表面に、CNT8と導電性高分子9とが混在した堆積物が形成される。かかる成膜処理は、直流電源の電圧を100V、200Vおよび300Vと変化させて行った。また、処理時間は、5秒および60秒の2種類の時間とした。
【0035】
図3は、本実施例において採用した電場処理の方法を説明するための図である。図3(A)は電気泳動装置から外したガラス基板4をシリコン板20上に載せる状況を、図3(B)は電場処理を行う状況を、それぞれ示す図である。
【0036】
ガラス基板4の負極5には、CNT8と導電性高分子9から成る膜10(図中、黒塗りで示す部分)が形成された。一方、シリコン板20の表面には、予め、厚さ約620nmのシリカ(Si0)膜21が形成された(図3の斜線部分)。ただし、シリコン板20の一角20aだけは、Si0膜21を形成せず、シリコンが露出した状態とした。かかるシリコン板20のSi0膜21の上から、膜10の部分をSi0膜21に接触させるように、ガラス基板4を載せた。この状態で、一角20aと負極5とを、配線22を介して直流電源23に接続した。一角20aと負極5との間にかける電圧は、100、140、150、200、250、260、300および400Vに変化させた。また、電場処理の時間は、20秒、30秒、60秒および70秒に変化させた。
【0037】
図4は、膜10の評価方法を説明するための図である。図4(A)は、膜10の評価状況を示す斜視図であり、図4(B)は、図4(A)のX-X線(一点鎖線)で切断して矢印Yの方向から見た断面図である。ただし、図4(B)は、見やすくするために、各種の薄膜の厚さを誇張して示している。
【0038】
成膜処理後あるいは電場処理後のガラス基板4の負極5の周囲には、4つのフィルム(PET製、厚さ約25ミクロン)25を配置した。一方、ライン状にITO膜26を貼り付けた別のガラス基板27を用意し、ITO膜26が膜10と交差するように、ガラス基板27をフィルム25の上に載せた。負極5およびITO膜26は、それぞれ配線28を伸ばして直流電源29に接続した。また、配線28の途中には、電流計30を接続した。
【0039】
図4(B)に示すように、膜10に立設するCNT8とその上方のITO膜26とは、非接触状態におかれている。この状態で負極5とITO膜26間の電圧を上昇していくと、ある電圧を超えた時点で、CNT8の先端から電子が放出されITO膜26に到達し、上述のように形成した回路に電流が流れる。このときの電圧を調べて、膜10の評価を行った。なお、この評価は、真空中で行った。また、温度の影響を調べる目的で、常温(20℃)から100℃の範囲の温度の下で評価を行った。
【0040】
(スピンコート法による成膜条件と評価方法)
一方、電気泳動法により作製した膜10の性能と比較するため、スピンコート法により作製した膜も評価した。スピンコート法による成膜条件は、以下の通りである。
【0041】
P3OT50mgと、クロロホルム(Chloroform)5mlと、CNTとを混合した溶液(P3OT溶液)を5種類用意した。ここで、各種のP3OT溶液におけるCNTの量は、それぞれ0mg(P3OT溶液の重量に対して0wt%相当)、0.25mg(P3OT溶液の重量に対して0.5wt%相当)、0.5mg(P3OT溶液の重量に対して1.0wt%相当)、1.0mg(P3OT溶液の重量に対して2.0wt%相当)および2.5mg(P3OT溶液の重量に対して5.0wt%相当)とした。
【0042】
次に、上述のP3OT溶液を約20秒間超音波分散してから、その内の50マイクロリットルを1000rpmで回転する媒体上に25秒間滴下することによって、成膜処理を行った。膜の評価は、電気泳動法により作製した膜10の評価(先に説明した評価)と同じ手法により行った。
【0043】
(評価結果)
図5は、比較として、スピンコート法により成膜した電子放出源のエミッション特性を示すグラフである。横軸は、負極5とITO膜26間にかけた電圧(電界強度)を、負極5とITO膜26間の距離(=25μm)で除した単位で示す値としている。また、縦軸は、負極5からITO膜26に電子が放出されることによって生ずる電流の密度を示している。図6以降の図についても同様である。試料は、CNTを0、0.5、1.0、2.0および5.0wt%含有する5種類の電子放出源とした。
【0044】
図5に示すグラフから、CNTを含有していない電子放出源の場合には、25V/μmまで電圧を上げても電流は流れないが、CNTを0.5~5.0wt%含有する電子放出源の場合には、電圧が6~17V/μmまでの範囲になると電流が流れることがわかった。この電流が流れ始めるときの電圧(閾電圧)とCNT濃度(wt%)との関係を見ると、CNT濃度が0.5および2.0wt%の電子放出源では、閾電圧が約10V/μmであったが、その他のCNT濃度の電子放出源では、閾電圧が約15V/μm以上であった。このように、CNT濃度(wt%)と閾電圧との相関はみられなかった。なお、Fowler-Nordheimの式に基づき、図5に示す電流が電界放出によるものか否かを調べた。F-Nプロットの結果、上記現象は電界放出によるものであることが確認できた。このことから、スピンコート法により成膜した電子放出源は、電圧を10V/μm程度まで上げないと、電界放出による電子放出がみられないことがわかる。
【0045】
図6は、本発明の電気泳動法(電圧200V、成膜時間5秒)により成膜した電子放出源のエミッション特性を示すグラフである。また、図7は、本発明の電気泳動法(電圧100V、成膜時間60秒)により成膜した電子放出源のエミッション特性を示すグラフである。両グラフの横軸と縦軸は、図5のそれらと共通するので、説明を省略する。試料は、P3OT/CNT(重量比)が2.0の電子放出源とし、評価中の温度を常温(20℃)から100℃まで変化させてそれぞれ評価を行った。
【0046】
この結果、図6および図7に示す両エミッション特性とも、評価温度に依存しないことがわかった。また、両エミッション特性とも、4~5V/μm以上から電流が流れ始め、各成膜条件への高い依存性はみられなかった。
【0047】
さらに、図6,7と、先に示した図5とを比較すると、電気泳動法により成膜した電子放出源の場合、スピンコート法により成膜した電子放出源に比べて、閾電圧が一桁小さくなることがわかった。スピンコート法の場合には、遠心力によって導電性高分子と混在した状態で広がるために、CNTを一定の方向に配向させる力は存在しない。一方、電気泳動法の場合には、CNTは溶媒中を自由に移動できるので、CNTがその軸方向に揃って負極に引かれやすく、その結果、配向性に優れた電子放出源が形成されたものと考えられる。
【0048】
図8は、電気泳動法により成膜した電子放出源のエミッション特性と、その後に電場処理を施した電子放出源のエミッション特性とを比較して示すグラフである。成膜条件は、電圧100-成膜時間60秒と、電圧200V-成膜時間5秒とした。電圧100-成膜時間60秒の条件で成膜した電子放出源を、電圧200V-電場処理時間30秒の条件で電場処理を施すと、閾電圧が約5V/μmから2.5V/μmまで低下することがわかった。また、電圧200-成膜時間5秒の条件で成膜した電子放出源を、電圧200V-電場処理時間60秒の条件で電場処理を施すと、閾電圧が約3.5V/μmから2V/μmより低い電圧まで低下することがわかった。この結果から、電場処理を行うことによって、閾電圧をさらに低下させることができることがわかる。
【0049】
図9および図10は、電気泳動法による成膜の後に施す電場処理の条件を変化させた電子放出源のエミッション特性を比較して示すグラフである。図9に、電圧200V-電場処理時間30秒の条件と、電圧400V-電場処理時間30秒の条件とを比較して示す。また、図10に、電圧200V-電場処理時間60秒の条件と、電圧300V-電場処理時間60秒の条件とを比較して示す。
【0050】
図9に示すグラフから明らかなように、電場処理における電圧を200Vにすることによって閾電圧が約5V/μmから2.5V/μmまで低下する現象が見られるが、同電圧を400Vにすると、約5V/μmから3.2V/μmまでしか低下しなかった。また、図10に示すグラフから明らかなように、電場処理における電圧を200Vにすることによって閾電圧が約4V/μmから約2.5V/μmに低下する現象が見られるが、同電圧を300Vにすると、6.0V/μmにまで電圧を上げても電流密度の上昇は見られなかった。これらの結果から、電場処理における電圧を上げすぎると、閾電圧の改善性は低くなり、条件によってはむしろ閾電圧の改善すらみられなくなることがわかる。
【0051】
電場処理における電圧を変化させてエミッション特性をさらに調べると、150~250Vの範囲の電圧をかける電場処理を行うことで、閾電圧の改善が顕著になった。特に、電圧200Vで、電場処理の時間を30~60秒とすることによって、閾電圧の改善性が向上することがわかった。
【0052】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、上記実施例に限定されず、種々変形を施した形態にて実施可能である。
【0053】
例えば、図2に示した電気泳動装置は、図11に示す形態であっても良い。図11に示す装置は、円筒容器31に、先の電気泳動溶液2と同様の電気泳動溶液32を入れ、その中に円筒形電極33と、当該円筒形電極33の内部に棒状電極34とを挿入したものである。円筒形電極33および棒状電極34は、双方から配線35を伸ばして、それぞれ直流電源36の正極および負極に接続されている。
【0054】
かかる構成にて円筒形電極33と棒状電極34との間に電圧をかけると、CNT37と導電性高分子38はそれぞれ負極となる棒状電極34に引かれ、棒状電極34の表面に、CNT37と導電性高分子38とが混在した堆積物が形成される。かかる成膜処理は、直流電源の電圧を変化させて行うことができる。このように、棒状電極34の周囲にCNT37を配置させることにより、当該棒状電極34を内部に備えた、低電圧にて蛍光可能な蛍光管を作製することができる。
【0055】
CNT37は、SWCNTおよびMWCNTのいずれをも採用可能であり、直径が1ナノメール以下の極細のCNTの他、数ナノメートルから数十ナノメートルの中細のCNTも含むものとして広義に解釈されるものとする。さらに、CNT37は、アーク放電法、レーザーアブレーション法、プラズマ合成法、化学気相析出(Chemical Vapor Deposition:CVD)法等のいずれの製法により製造されたものでも採用可能である。ただし、量産に有利なCVD法により製造されたCNTの方が好ましい。
【0056】
導電性高分子38としては、有機溶媒に可溶の導電性高分子であれば適用可能であるが、特に、p型半導体に属するものが好ましい。また、導入される置換基としては、炭化水素基(アルキル基など)が好ましい。このアルキル基は、直鎖及び分岐鎖のいずれであっても良いが、好ましくは、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基が良い。例えば、ポリビニルカルバゾール、可溶性ポリパラフェニレンビニレン(MEH-PPV(Poly[2-methoxy-5-(2'ethylhexyloxy)-1,4-phenylenevinylene] )、可溶性ポリアニリン、ポリ(アルキル)フルオレンあるいはポリ(アルキル)チオフェンが好ましい。アルキル基の長さは、可溶性と耐熱性とを考慮すると、炭素数4以上20以下の範囲のものが好ましい。特に、アルキル基が炭素8個から成るポリ(3-オクチルチオフェン)あるいは炭素6個から成るポリ(3-ヘキチルチオフェン)を採用するのが好ましい。また、上記導電性高分子を複数使用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、FED等の電子放出源の製造に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明のカーボンナノチューブと高分子を用いた電子放出源の製造工程と評価の流れを示す図である。
【図2】本実施例において使用した電気泳動装置を示す図である。
【図3】本実施例において採用した電場処理の方法を説明するための図である。(A)は電気泳動装置から外したガラス基板をシリコン板上に載せる状況を、(B)は電場処理を行う状況を、それぞれ示す図である。
【図4】本発明における膜の評価方法を説明するための図である。(A)は、膜の評価状況を示す斜視図であり、(B)は、(A)のX-X線(一点鎖線)で切断して矢印Yの方向から見た断面図である。
【図5】本発明の実施例の比較として、スピンコート法により成膜した電子放出源のエミッション特性を示すグラフである。
【図6】本発明の実施例において、電気泳動法(電圧200V、成膜時間5秒)により成膜した電子放出源のエミッション特性を示すグラフである。
【図7】本発明の実施例において、電気泳動法(電圧100V、成膜時間60秒)により成膜した電子放出源のエミッション特性を示すグラフである。
【図8】本発明の実施例において、電気泳動法により成膜した電子放出源のエミッション特性と、その後に電場処理を施した電子放出源のエミッション特性とを比較して示すグラフである。
【図9】本発明の実施例において、電気泳動法による成膜の後に施す電場処理の条件を変化させた電子放出源のエミッション特性を比較して示すグラフである。
【図10】図9と並び、本発明の実施例において、電気泳動法による成膜の後に施す電場処理の条件を変化させた電子放出源のエミッション特性を比較して示すグラフである。
【図11】本発明の別の実施の形態において使用する電気泳動装置を示す図である。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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