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明細書 :ポルフィリンダイマー誘導体とそれを使用するカーボンナノチューブの分離精製

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4099526号 (P4099526)
公開番号 特開2006-265178 (P2006-265178A)
登録日 平成20年3月28日(2008.3.28)
発行日 平成20年6月11日(2008.6.11)
公開日 平成18年10月5日(2006.10.5)
発明の名称または考案の名称 ポルフィリンダイマー誘導体とそれを使用するカーボンナノチューブの分離精製
国際特許分類 C07D 487/22        (2006.01)
B82B   1/00        (2006.01)
B82B   3/00        (2006.01)
C01B  31/02        (2006.01)
FI C07D 487/22
B82B 1/00
B82B 3/00
C01B 31/02 101F
請求項の数または発明の数 8
全頁数 15
出願番号 特願2005-086044 (P2005-086044)
出願日 平成17年3月24日(2005.3.24)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成17年3月27日 社団法人日本化学会主催の「日本化学会 第85春季年会(2005)」において文書をもって発表
審査請求日 平成18年11月2日(2006.11.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
発明者または考案者 【氏名】白井 汪芳
【氏名】木村 睦
【氏名】木村 洋
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100088306、【弁理士】、【氏名又は名称】小宮 良雄
【識別番号】100126343、【弁理士】、【氏名又は名称】大西 浩之
審査官 【審査官】當麻 博文
参考文献・文献 国際公開第2004/040590(WO,A1)
特開2004-002850(JP,A)
木村洋他,日本化学会講演予稿集,日本,日本化学会,2005年 3月11日,Vol.85th/No.1,p.232
木村洋他,繊維学会予稿集,日本,2004年 9月30日,Vol.59/No.3,p.130
カーボンナノチューブ-期待される材料開発-,日本,株式会社シーエムシー,2001年11月10日,p.2-10
LI, H. et al.,J. Am. Chem. Soc.,米国,2004年 2月 4日,Vol.126/No.4,p.1014-1015
調査した分野 C07D 487/22
B82B 1/00
B82B 3/00
C01B 31/02
CAplus(STN)
CAOLD(STN)
REGISTRY(STN)
WPIDS(STN)
JMEDPlus(JDream2)
JST7580(JDream2)
JSTPlus(JDream2)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記化学式I
【化1】
JP0004099526B2_000007t.gif
(式I中、mは0~17)
で示される、パラポルフィリンダイマー誘導体を除く、ポルフィリンダイマー誘導体。
【請求項2】
2-ブロモベンズアルデヒドおよび3-ブロモベンズアルデヒドから選ばれる少なくとも一方のブロモベンズアルデヒドと、4-アルキルベンズアルデヒド(アルキル基の炭素数は1~18)と、ピロールとから下記式A
【化2】
JP0004099526B2_000008t.gif
(式A中、mは0~17)
で示されるポルフィリン誘導体を合成し、続いて該ポルフィリン誘導体と9,9-ジヘキシルフルオレン-2,7-ジボロン酸とを反応させることを特徴とする前記化学式Iで示されるポルフィリンダイマー誘導体の製造方法。
【請求項3】
前記化学式Iで示される、パラポルフィリンダイマー誘導体を除く、ポルフィリンダイマー誘導体が、カーボンナノチューブに結合しているカーボンナノチューブ複合体。
【請求項4】
下記化学式II
【化3】
JP0004099526B2_000009t.gif
(式II中、mは0~17)
で示されるポルフィリンダイマー誘導体が結合しているカーボンナノチューブ複合体から分離されたことを特徴とする金属的導電性を示す構造のカーボンナノチューブ。
【請求項5】
下記化学式III
【化4】
JP0004099526B2_000010t.gif
(式III中、mは0~17)
で示されるポルフィリンダイマー誘導体が結合しているカーボンナノチューブ複合体から分離されたことを特徴とする半導体的導電性を示す構造のカーボンナノチューブ。
【請求項6】
請求項3、4、5のいずれかに記載したカーボンナノチューブ複合体が有機溶媒に分散している分散液に、酢酸、希塩酸水溶液、希硫酸水溶液から選ばれる酸を添加して、カーボンナノチューブを沈殿させることを特徴とするカーボンナノチューブの分離精製方法。
【請求項7】
請求項に記載したカーボンナノチューブ複合体を有機溶媒に分散させた分散液に、酢酸、希塩酸水溶液、希硫酸水溶液から選ばれる酸を添加して、カーボンナノチューブを沈殿させることを特徴とする金属的導電性を示す構造のカーボンナノチューブの分離精製方法。
【請求項8】
請求項に記載したカーボンナノチューブ複合体を有機溶媒に分散させた分散液に、酢酸、希塩酸水溶液、希硫酸水溶液から選ばれる酸を添加して、カーボンナノチューブを沈殿させることを特徴とする半導体的導電性を示す構造のカーボンナノチューブの分離精製方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブと複合体を形成し得る新規化合物のポルフィリンダイマー、およびそのポルフィリンダイマーとカーボンナノチューブとが結合して溶剤に可溶化したカーボンナノチューブ複合体、また斯かる可溶化を通じてカーボンナノチューブを構造的に選別し分離精製する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは次世代の電子デバイスの材料として最も注目されているものの一つであり、電気、熱伝導性に優れ、機械的強度が非常に強く、熱的にも安定で、さらに電解放出、水素吸蔵にも優れた材料である。
【0003】
カーボンナノチューブはグラフェンシートを筒状に巻いた構造であり、その直径と巻き方の違いによって、金属的、半導体的のような異なる導電性質を示す。しかし、このような巻き方の違いでカーボンナノチューブを分離することは困難である。また、カーボンナノチューブは反応性、溶解性が悪いため精製が難しい。このようなカーボンナノチューブの精製、分離を効率的に行う方法が望まれている。
【0004】
カーボンナノチューブの溶解性を高める方法として、特許文献1には、カーボンナノチューブの外側壁に、非共有的な相互作用によりポリマーを結合させカーボンナノチューブを可溶化させることが示されている。また特許文献2には、カーボンナノチューブの周囲にポリマーを巻きつけることで複合化したカーボンナノチューブが示されている。
【0005】
一方、特許文献3にはカーボンナノチューブとポルフィリンが結合し得ることが示唆されている。さらに非特許文献1には、ポルフィリンを用いてカーボンナノチューブを複合化し、可溶化した例が開示されている。
【0006】

【特許文献1】特開2004-2850号公報
【特許文献2】特表2004-506530号公報
【特許文献3】特開2004-315786号公報
【非特許文献1】Huaping Li,Bing Zhou,Yi Lin,Lingrong Gu,Wei Wang,K.A.Shiral Feronando,Satish Kumar,Lawrence F.Allard,and Ya-Ping Sun.,J.Am.Chem.Soc.2004,126,1014
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、カーボンナノチューブを可溶化するため、さらに異なる導電性質を示すカーボンナノチューブを構造的に選別するためになされたもので、非共有結合によりカーボンナノチューブと複合体を形成する新規化合物、その新規化合物を非共有的に結合し溶剤に可溶化したカーボンナノチューブ複合体、さらにはそのような複合化、可溶化を利用してカーボンナノチューブを構造的に選別し分離精製する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載されたポルフィリンダイマー誘導体は、下記化学式I
【化1】
JP0004099526B2_000002t.gif
(式I中、mは0~17)
で示されるもの(ただし、パラポルフィリンダイマー誘導体を除く)である。
【0009】
特許請求の範囲の請求項2に記載されたポルフィリンダイマー誘導体の製造方法は、 2-ブロモベンズアルデヒドおよび3-ブロモベンズアルデヒドから選ばれる少なくとも一方のブロモベンズアルデヒドと、4-アルキルベンズアルデヒド(アルキル基の炭素数は1~18)と、ピロールとから下記式A
【化2】
JP0004099526B2_000003t.gif
(式A中、mは0~17)
で示されるポルフィリン誘導体を合成し、続いて該ポルフィリン誘導体と9,9-ジヘキシルフルオレン-2,7-ジボロン酸とを反応させることを特徴とする。
【0010】
2-ブロモベンズアルデヒドを用いると、前記化学式IIのようにポルフィリンとフルオレンとがオルト位で連結したポルフィリンダイマー誘導体(以下、オルト-ポルフィリンダイマー誘導体と略す)が得られ、3-ブロモベンズアルデヒドを用いると、前記化学式IIIのようにポルフィリンとフルオレンとがメタ位で連結したポルフィリンダイマー誘導体(以下、メタ-ポルフィリンダイマー誘導体と略す)が得られる
【0011】
特許請求の範囲の請求項に記載されたカーボンナノチューブ複合体は、前記化学式Iで示されるポルフィリンダイマー誘導体(ただし、パラポルフィリンダイマー誘導体を除く)が、カーボンナノチューブに結合しているものである。
【0012】
特許請求の範囲の請求項に記載された金属的導電性を示す構造のカーボンナノチューブは、下記化学式II
【化3】
JP0004099526B2_000004t.gif
(式II中、mは0~17)
で示されるポルフィリンダイマー誘導体が結合しているカーボンナノチューブ複合体から分離されたことを特徴とする。
【0013】
特許請求の範囲の請求項に記載された半導体的導電性を示す構造のカーボンナノチューブは、下記化学式III
【化4】
JP0004099526B2_000005t.gif
(式III中、mは0~17)
で示されるポルフィリンダイマー誘導体が結合しているカーボンナノチューブ複合体から分離されたことを特徴とする。
【0014】
特許請求の範囲の請求項に記載されたカーボンナノチューブの分離精製方法は、請求項3、4、5のいずれかに記載したカーボンナノチューブ複合体が有機溶媒に分散している分散液に、酢酸、希塩酸水溶液、希硫酸水溶液から選ばれる酸を添加して、カーボンナノチューブを沈殿させることを特徴とする。
【0015】
特許請求の範囲の請求項に記載された金属的導電性を示す構造のカーボンナノチューブの分離精製方法は、請求項に記載したカーボンナノチューブ複合体を有機溶媒に分散させた分散液に、酢酸、希塩酸水溶液、希硫酸水溶液から選ばれる酸を添加して、カーボンナノチューブを沈殿させることを特徴とする。
【0016】
特許請求の範囲の請求項に記載された半導体的導電性を示す構造のカーボンナノチューブの分離精製方法は、請求項に記載したカーボンナノチューブ複合体を有機溶媒に分散させた分散液に、酢酸、希塩酸水溶液、希硫酸水溶液から選ばれる酸を添加して、カーボンナノチューブを沈殿させることを特徴とする。
【0017】
前記希塩酸水溶液、及び前記希硫酸水溶液は、いずれもpH1~2であることが好ましい。
【0018】
本発明で用いられる前記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブであっても多層カーボンナノチューブであってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のポルフィリンダイマー誘導体は、フルオレンを介して二つのポルフィリンが連結したポルフィリンダイマーであり、非共有結合によってカーボンナノチューブとの複合体を形成することができる。非共有結合は直接的な結合ではないため、本来の性質を損なうことなくカーボンナノチューブを容易に複合化することができる。本発明のポルフィリンダイマーにより複合化されたカーボンナノチューブは溶媒に対して可溶性となり、カーボンナノチューブの精製を可能にする。
【0020】
本発明のカーボンナノチューブ複合体を分散している分散液は、カーボンナノチューブの沈澱、分離を生ずることなく長期間安定に分散状態を保つことができる。
【0021】
本発明のポルフィリンダイマー誘導体の立体構造を分子設計すると、金属的導電性を示す構造のカーボンナノチューブと半導体的導電性を示す構造のカーボンナノチューブとを効率よく容易に選別できる。選別されたカーボンナノチューブは、その複合体の分散液に酸を添加すると容易に分離、回収できるので、電気的性質の異なるカーボンナノチューブをナノワイヤとして利用した電子回路を組み立てることが可能となり、新規なナノデバイス化に向けた材料として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
ルフィリンダイマー誘導体の合成方法を、前記パラ-ポルフィリンダイマー誘導体を例に挙げて説明する。前記パラ-ポルフィリンダイマー誘導体の好ましい形態のものは、以下の化学反応式のようにして合成する。
【0023】
【化5】
JP0004099526B2_000006t.gif

【0024】
まず、4-ブロモベンズアルデヒドと、4-アルキルベンズアルデヒドとをプロピオン酸に溶解する。前記4-アルキルベンズアルデヒドは、アルキル基の炭素数が12である4-ドデシルベンズアルデヒドであると好ましい。続いてこの溶液に単留ピロールを加えて撹拌還流し、前記化学式Aで示されるポルフィリン誘導体を合成する。得られたポルフィリン誘導体は、アルミナカラムクロマトグラフィーや高速液体クロマトグラフィーによって精製されることが好ましい。
【0025】
次に、9,9-ジヘキシルフルオレン-2,7-ジボロン酸を溶解した溶媒に炭酸ナトリウム水溶液を加えて窒素気流下で脱気する。そこに前記で得られたポルフィリン誘導体Aを加え、撹拌還流して反応させ、前記化学式IVで示されるパラ-ポルフィリンダイマー誘導体を合成する。得られたポルフィリンダイマー誘導体は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーや高速液体クロマトグラフィーによって精製されることが好ましい。また、前記溶媒は、9,9-ジヘキシルフルオレン-2,7-ジボロン酸を溶解するものであればよく、トルエン-テトラヒドロフラン混合溶媒であると好ましい。
【0026】
前記4-ブロモベンズアルデヒドに代えて2-ブロモベンズアルデヒドを用い、同様の手順で合成すると、前記化学式IIで示されるオルト-ポルフィリンダイマー誘導体を得ることができる。また、前記4-ブロモベンズアルデヒドに代えて3-ブロモベンズアルデヒドを用い、同様の手順で合成すると、前記化学式IIIで示されるメタ-ポルフィリンダイマー誘導体を得ることができる。
【0027】
カーボンナノチューブを分散させた溶媒に本発明のポルフィリンダイマー誘導体を加えて分散させると、カーボンナノチューブとポルフィリンダイマー誘導体との複合体を形成することができる。本発明のポルフィリンダイマー誘導体としては、前記オルト-ポルフィリンダイマー誘導体、前記メタ-ポルフィリンダイマー誘導体、前記パラ-ポルフィリンダイマー誘導体のいずれを用いてもよい。
【0028】
この複合体は、ポルフィリン部位とカーボンナノチューブとの間のπ‐π相互作用、疎水性相互作用のような非共有結合によって形成されるものである。カーボンナノチューブは溶媒や水に対して不溶性であるが、本発明のポルフィリンダイマー誘導体でカーボンナノチューブを複合化すると、カーボンナノチューブは可溶化する。これは、前記複合体中のポルフィリンダイマー誘導体による溶媒和が可能となり、カーボンナノチューブを溶媒中で長期間安定に分散させるためである。ここでいうカーボンナノチューブの可溶化とは、前記カーボンナノチューブ複合体が溶媒に溶解した状態、及び前記カーボンナノチューブ複合体が溶媒中で長期間均一に分散した状態を含む。
【0029】
前記カーボンナノチューブ複合体を有機溶媒に分散させた分散液は、カーボンナノチューブが分離、沈澱することなく、均一な分散状態を6ヶ月以上安定に保つ。本発明のカーボンナノチューブ複合体を分散させる前記有機溶媒は、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミドであると好ましい。
【0030】
前記複合体を形成する際の分散、及び前記複合体の有機溶媒への分散は、超音波処理により行われることが好ましい。
【0031】
前記化学式IIで示されるオルト-ポルフィリンダイマー誘導体は、金属的導電性を示す構造のカーボンナノチューブと選択的に複合体を形成する。また、前記化学式IIIで示されるメタ-ポルフィリンダイマー誘導体は、半導体的導電性を示す構造のカーボンナノチューブと選択的に複合体を形成する。カーボンナノチューブの導電性はその直径及びカイラリティーによって異なり、カーボンナノチューブのカイラリティーは、ジグザグ型、キラル型、アームチェア型に分類される。本発明のポルフィリンダイマー誘導体は、ポルフィリン部分がカーボンナノチューブの側壁に強く吸着して安定な複合体を形成する。この時、ポルフィリンダイマー誘導体は、その分子内におけるポルフィリン間の距離と角度の違いによってカーボンナノチューブのカイラリティーを認識し、複合体形成時に前記のような選択性が生じるものと考えられる。
【0032】
前記カーボンナノチューブ複合体の分散液、前記オルト-ポルフィリンダイマー誘導体と金属的導電性を示す構造のカーボンナノチューブとの複合体の分散液、及び前記メタ-ポルフィリンダイマー誘導体と半導体的導電性を示す構造のカーボンナノチューブとの複合体の分散液に酸を添加すると、各複合体を形成している非共有結合が酸によって阻害され、ポルフィリンダイマーとカーボンナノチューブとが分離する。分離したカーボンナノチューブは溶媒中に分散していることができなくなって沈澱するため、容易に回収できる。従って、本発明のポルフィリンダイマー誘導体でカーボンナノチューブを複合化して精製し、その後、精製した複合体からカーボンナノチューブを分離すれば、所望のカーボンナノチューブが高純度で得られる。前記酸は、酢酸であると好ましい。
【実施例】
【0033】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
ルフィリンダイマー誘導体を合成した例を実施例1~3に示す。
【0035】
(実施例1)
パラ-ポルフィリンダイマー誘導体の合成
4-ドデシルベンズアルデヒド2.00g(7.29×10-3mol)と、4-ブロモベンズアルデヒド0.45g(2.43×10-3mol)とをプロピオン酸20mlに溶解し、単留ピロール0.65ml(9.72×10-3mol)を加えてから130℃で2晩撹拌還流した。室温まで冷却し、反応溶液を減圧濃縮した。生成物をアルミナカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:ヘキサン=1:1)と高速液体クロマトグラフィーによって精製し、5-(4’-ブロモフェニル)-10,15,20-トリス(4’-ドデシルフェニル)ポルフィリン(前記式Aのm=11、Brがパラ位で連結した化合物)を得た。
【0036】
次に、トルエン5mlとテトラヒドロフラン(THF)5mlとの混合溶媒に上記で得られた5-(4’-ブロモフェニル)-10,15,20-トリス(4’-ドデシルフェニル)ポルフィリン0.1g(8.34×10-5mol)を溶解し、さらに9,9-ジヘキシルフルオレン-2,7-ジボロン酸15.3mg(3.63×10-5mol)を加えて溶解した。そこに2M炭酸ナトリウム溶液10mlを加え、窒素気流下でよく脱気した後テトラキストリフェニルフォスフィンパラジウム(Pd(PPh)を加え、70℃で3晩撹拌還流した。室温まで冷却し、エーテルで有機層を抽出し、2回水洗した後、無水硫酸マグネシウムで脱水し減圧濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン)と高速液体クロマトグラフィーによって精製し、パラ-ポルフィリンダイマー(前記化学式IVで示されm=11の化合物)を収率35%で得た。得られた化合物の1H-核磁気共鳴測定(1H-NMR)と13C-核磁気共鳴測定(13C-NMR)とマトリックス支援レーザー脱離イオン化-飛行時間型質量分析(MALDI-TOF-MS)との分析データは、この構造を支持している。
【0037】
1H-NMR(CDCl3,400.13MHz):δ=8.98(d,J=4.8Hz,4H,Pyrrole H),8.91(d,J=4.8Hz,4H,Pyrrole H),8.87(s,8H,Pyrrole H),8.35(d,J=8.4Hz,4H,ArH),8.11-8.15(m,18H,Fluorene H and ArH),8.00(d,J=4.8Hz,2H,Fluorene H),7.98(s,2H,Fluorene H),7.55-7.58(m,12H,ArH),2.96(t,J=7.2Hz,12H,ArCH2),2.28(t,J=6.0Hz,4H,Fluorene CH2),1.93(t,J=8.0Hz,12H,ArCH2CH2),1.22-1.60(m,124H,CH2),0.90(t,J=6.8Hz,18H,CH3),0.84(t,J=6.8Hz,6H,2CH3),-2.69(s,4H,NH)
13C-NMR(CDCl3,100.61MHz)δ:142.40,139.49,135.23,134.61,126.74,125.41,120.39,120.32,111.05,102.31,101.75,36.05,31.99,31.68,29.80,29.76,29.71,29.64,29.44,22.75,14.16
MALDI-TOF-MS(Dithranol):m/z=2570.33[M+H]+,C185H234NO8計算値2569.83
【0038】
(実施例2)
メタ-ポルフィリンダイマー誘導体の合成
4-ブロモベンズアルデヒドに代えて3-ブロモベンズアルデヒド0.45g(2.43×10-3mol)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、メタ-ポルフィリンダイマー(前記化学式IIIで示されm=11の化合物)を収率43%で得た。得られた化合物の1H-NMRと13C-NMRとMALDI-TOF-MSとの分析データは、この構造を支持している。
【0039】
1H-NMR(CDCl3,400.13MHz):δ=8.82-8.96(m,16H,Pyrrole H),8.47-8.61(m,4H,Fluorene H),8.19-8.21(m,2H,Fluorene H),8.04-8.14(m,8H,ArH),7.76-7.96(m,12H,ArH),7.54(d,J=7.6Hz,12H,ArH),2.93(t,J=7.4Hz,12H,ArCH2),1.86-1.97(m,16H,CH2),1.30(m,124H,CH2),0.86-0.90(m,24H,CH3),-2.72(s,4H,NH)
13C-NMR(CDCl3,100.61MHz)δ:142.39,139.48,138.05,134.57,126.71,120.18,118.42,108.36,100.37,36.00,31.95,31.64,29.76,29.72,29.59,29.39,22.71,19.40,14.12
MALDI-TOF-MS(Dithranol):m/z=2571.04[M+H]+,C185H234NO8計算値2569.83
【0040】
(実施例3)
オルト-ポルフィリンダイマー誘導体の合成
4-ブロモベンズアルデヒドに代えて2-ブロモベンズアルデヒド0.45g(2.43×10-3mol)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、オルト-ポルフィリンダイマー(前記化学式IIで示されm=11の化合物)を収率58%で得た。得られた化合物の1H-NMRと13C-NMRとMALDI-TOF-MSとの分析データは、この構造を支持している。
【0041】
1H-NMR(CDCl3,400.13MHz):δ=8.76(d,J=4.8Hz,4H,Pyrrole H),8.72(d,J=4.8Hz,4H,Pyrrole H),8.54(s,8H,Pyrrole H),8.10(m,6H,ArH),8.03(d,J=7.2Hz,4H,ArH),7.96(d,J=7.6Hz,4H,ArH),7.85(m,6H,ArH),7.67(d,J=7.6Hz,2H,ArH),7.44-7.56(m,12H,ArH),7.38(d,J=7.6Hz,4H,ArH),6.69(s,J=7.6Hz,2H,Fluorene H),6.64(d,J=8.0Hz,2H,Fluorene H),6.22(d,J=8.0Hz,2H,Fluorene H),2.89(t,J=7.6Hz,12H,ArCH2),1.89(t,J=7.6Hz,12H,ArCH2CH2),1.31-1.59(m,112H,CH2),0.89(t,J=6.4Hz,24H,CH3),-0.35(t,J=7.2Hz,4H,CH2),-0.76(s,4H,CH2),-1.55(s,8H,CH2),2.96(s,4H,NH),
13C-NMR(CDCl3,100.61MHz)δ:149.46,142.24,142.12,139.35,134.57,134.42,134.29,126.65,126.55,119.78,118.58,108.11,100.38,36.06,36.02,32.00,31.69,29.82,29.76,29.68,29.45,27.35,22.76,21.33,14.17,13.49
MALDI-TOF-MS(Dithranol):m/z=2569.86[M+H]+,C185H234NO8計算値2569.83
【0042】
次に、実施例1~3で得られたポルフィリンダイマー誘導体を用いて、本発明を適用するポルフィリンダイマー誘導体と単層カーボンナノチューブとの複合体を調製した例を実施例4~6に、実施例6で得られた複合体の分散液を調製した例を実施例7に、本発明を適用外の複合体を調製した例を比較例1に、それぞれ示す。
【0043】
(実施例4)
単層カーボンナノチューブとパラ-ポルフィリンダイマーとの複合体の調製
遠心管内において、実施例1で得られたパラ-ポルフィリンダイマー1mgをヘキサン10mlに溶解し、Solution 1とした。Solution 1に単層カーボンナノチューブ1mgを加え、超音波処理を1晩行って、単層カーボンナノチューブとパラ-ポルフィリンダイマーとの複合体を形成した。その後遠心分離を3000Gで20分行い、上澄み(Solution 2)を除去して沈殿物を減圧乾燥した。この時、Solution 2にはポルフィリンダイマーのみが溶解しており、沈殿物は複合体を形成していない単層カーボンナノチューブと前記複合体との混合物である。得られた乾燥物をTHF5mlに溶解し、超音波処理を行って分散させ、遠心分離を2000Gで15分行った。上澄み(Solution 3)を回収して、沈殿物を再びTHF5mlに溶解し、超音波処理を行って分散させ、遠心分離を2000Gで15分行った。この時、Solution 3には前記複合体が溶解しており、沈殿物は複合体を形成していない単層カーボンナノチューブである。上澄み(Solution 4)を回収して、Solution 3とSolution 4をマイクロチューブに移し、遠心分離してさらに沈殿物を取り除いた。上澄みを減圧濃縮して、残った固体を単層カーボンナノチューブとパラ-ポルフィリンダイマーとの複合体(パラ-複合体)とした。得られたパラ-複合体にヘキサンを加え、遠心分離し上澄みを除去した後、沈殿物をTHFに溶解して減圧濃縮することで、パラ-複合体を精製した。
【0044】
(実施例5)
単層カーボンナノチューブとメタ-ポルフィリンダイマーとの複合体の調製
実施例1で得られたパラ-ポルフィリンダイマーに代えて、実施例2で得られたメタ-ポルフィリンダイマーを用いたこと以外は実施例4と同様にして、単層カーボンナノチューブとメタ-ポルフィリンダイマーとの複合体(メタ-複合体)を調製した。
【0045】
(実施例6)
単層カーボンナノチューブとオルト-ポルフィリンダイマーとの複合体の調製
実施例1で得られたパラ-ポルフィリンダイマーに代えて、実施例3で得られたオルト-ポルフィリンダイマーを用いたこと以外は実施例4と同様にして、単層カーボンナノチューブとオルト-ポルフィリンダイマーとの複合体(オルト-複合体)を調製した。
【0046】
(実施例7)
オルト-複合体分散液の調製
実施例6で得られたオルト-複合体1mgにTHF10mlを加えて超音波処理を8時間行い、前記オルト-複合体の分散溶液を調製した。
【0047】
(比較例1)
実施例1で得られたパラ-ポルフィリンダイマーに代えて、単核ポルフィリンを用いたこと以外は実施例4と同様にして、単層カーボンナノチューブと単核ポルフィリンとの複合体を調製した。
【0048】
実施例1~3で得られた化合物、実施例4~6で得られた複合体、および実施例7で得られた分散液を用いて、以下のような評価を行った。
【0049】
(分散液の安定性評価)
実施例7で得られた分散液を6ヶ月以上放置し、分散状態を確認した。
【0050】
(近赤外吸収スペクトル測定)
THF500μlに、実施例1~3で得られたポルフィリンダイマー誘導体、及び実施例4~6で得られた複合体をそれぞれ加えて溶解した。その溶液の各200μlをとり、それをTHF1.0mlで希釈した溶液をサンプルとして、それぞれ近赤外吸収スペクトルを測定した。測定には、近赤外分光光度計U-4100(日立製作所社製の商品名)を用いた。実施例1で得たパラ-ポルフィリンダイマー及び実施例4で得たパラ-複合体の測定結果を図1の(b)に、実施例2で得たメタ-ポルフィリンダイマー及び実施例5で得たメタ-複合体の測定結果を図1の(c)に、実施例3で得たオルト-ポルフィリンダイマー及び実施例6で得たオルト-複合体の測定結果を図1の(d)に、それぞれ示す。また、比較のため、単核ポルフィリンと比較例1の複合体とをそれぞれ前記と同様に調整した溶液について、近赤外吸収スペクトルを測定した結果を図1の(a)に示す。
【0051】
(原子間力顕微鏡観察)
実施例7で得られた分散溶液をマイカ板にスピンキャスティングし、このマイカ基板をスピンさせながらTHFを滴下して、余分な有機物を除去してサンプルとした。原子間力顕微鏡は、EX290105(サーモマイクロスコープス社製の商品名)を用いた。
【0052】
(ラマンスペクトル測定)
実施例4~6で得た複合体、及び複合体を形成していない単層カーボンナノチューブをスライドガラス上にそれぞれキャストし、514nmのレーザーを用いてラマンスペクトルを測定した。測定には、ラマン分光光度計Hololab 5000(エス・ティ・ジャパン社製の商品名)を用いた。実施例4で得たパラ-複合体の測定結果を図2の(b)に、実施例5で得たメタ-複合体の測定結果を図2の(c)に、実施例6で得たオルト-複合体の測定結果を図2の(d)に、それぞれ示す。また、比較例1の複合体について、同様にしてラマンスペクトルを測定した結果を図2の(a)に示す。
【0053】
(酢酸の添加によるカーボンナノチューブとポルフィリンダイマーとの分離)
実施例7で得られたオルト-複合体の分散溶液1.2mlに酢酸20μlを加えてよく撹拌し、溶液を一晩放置した。また、酢酸添加前後の溶液について、可視紫外吸収スペクトルを測定した。測定には、紫外可視分光光度計V-570(日本分光社製の商品名)を用いた。測定結果を図3に示す。
【0054】
実施例7で得られたオルト-複合体の分散溶液を放置したところ、分離、沈澱等はみられず、6ヶ月以上安定に溶液の状態を保った。このことから、本発明のポルフィリンダイマー誘導体と単層カーボンナノチューブとの複合体が形成されていることを確認できた。
【0055】
次に、近赤外吸収スペクトル測定結果について検討する。図1から明らかなように、単核ポルフィリンのみ及び実施例1、2、3の溶液では、ポルフィリンのSoret帯の吸収が明確に現れているだけであるが、比較例1の複合体及び実施例4、5、6の複合体の溶液では、ポルフィリンのSoret帯以外にも1800-2200nm付近と1600nm以下にブロードな吸収が見られた。この吸収は単層カーボンナノチューブによるものであると考えられる。
【0056】
原子間力顕微鏡観察では、単層カーボンナノチューブのバンドル構造が解けたナノチューブが観察された。このナノチューブの高さは約5nmであり、まわりがポルフィリンダイマーに覆われていると考えられる。この観察から、本発明のポルフィリンダイマー誘導体が単層カーボンナノチューブとの複合体を形成することが明らかとなった。
【0057】
次に、ラマンスペクトル測定結果について検討する。図2に示すように、パラ-複合体、メタ-複合体、オルト-複合体すべてにおいて、ナノチューブの特徴的なスペクトルであるラジアルブリージングモード(171cm-1付近)とGバンド(1570,1593cm-1付近)が観察され、カーボンナノチューブが存在することが明らかとなった。また、各ラジアルブリージングモードの振動数が、複合体を形成していない単層カーボンナノチューブのスペクトルと比較して若干増大していることから、単核ポルフィリンまたは本発明のポルフィリンダイマーと単層カーボンナノチューブとが複合体を形成した結果、ナノチューブのバンドル構造の形成が阻害されていることが示唆された。
【0058】
さらに、単核ポルフィリンとの複合体及びパラ-複合体は、単層カーボンナノチューブと各複合体とのスペクトルにほとんど変化がみられなかったのに対し、メタ-複合体及びオルト-複合体は、各複合体のGバンドに明らかなピークのシフトが確認できた。メタ-ポルフィリンダイマーは複合体を形成するとGバンドの振動数が増加し、オルト-ポルフィリンダイマーは複合体を形成するとGバンドの振動数が減少している。この結果より、本発明のメタ-ポルフィリンダイマー誘導体は半導体的導電性を示す構造のカーボンナノチューブと選択的に複合体を形成し、本発明のオルト-ポルフィリンダイマー誘導体は金属的導電性を示す構造のカーボンナノチューブと選択的に複合体を形成することが示唆された。
【0059】
実施例7で得られた分散溶液に酢酸を添加し一晩放置したところ、沈澱が生じた。これは、酢酸の添加によりカーボンナノチューブとポルフィリンダイマー誘導体とが分離したため、カーボンナノチューブが溶媒中に分散していることができなくなって沈澱したと考えられる。また、図3に示すように、酢酸を添加した後の可視紫外吸収スペクトルの吸収は、添加前に比べて全体的な吸収が減少していた。これらの結果より、本発明のポルフィリンダイマー誘導体とカーボンナノチューブとが複合体を形成した後、酢酸を添加することで容易にカーボンナノチューブのみを単離することができることが明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】ルフィリンダイマー誘導体、及び本発明を適用するポルフィリンダイマーとカーボンナノチューブとの複合体の近赤外吸収スペクトルである。

【0061】
【図2】本発明を適用するポルフィリンダイマーとカーボンナノチューブとの複合体、及び複合体を形成していないカーボンナノチューブのラマンスペクトルである。

【0062】
【図3】本発明を適用するポルフィリンダイマーとカーボンナノチューブとの複合体に対する、酢酸添加前後における可視紫外吸収スペクトルである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2