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明細書 :磁性薄膜の形成方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4734635号 (P4734635)
公開番号 特開2007-103568 (P2007-103568A)
登録日 平成23年5月13日(2011.5.13)
発行日 平成23年7月27日(2011.7.27)
公開日 平成19年4月19日(2007.4.19)
発明の名称または考案の名称 磁性薄膜の形成方法
国際特許分類 H01F  10/14        (2006.01)
H01F  41/18        (2006.01)
FI H01F 10/14
H01F 41/18
請求項の数または発明の数 3
全頁数 10
出願番号 特願2005-289874 (P2005-289874)
出願日 平成17年10月3日(2005.10.3)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 〔発行者名〕 The Magnetics Society of Japan The Magnetics Society of the IEEE 〔刊行物名〕 INTERMAG ASIA 2005:Digests of the IEEE International Magnetics Conference 〔巻数・号数〕 0-7803-9009-1 〔発行年月日〕 平成17年4月4日
審査請求日 平成20年9月3日(2008.9.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
発明者または考案者 【氏名】森迫 昭光
【氏名】劉 小晰
審査官 【審査官】山田 倍司
参考文献・文献 特開2000-087233(JP,A)
特開2006-344336(JP,A)
SHAO Y, YAN M L, SELLMYER D J (Univ. Nebraska, Nebraska) ,Effects of rapid thermal annealing on nanostructure, texture and magnetic properties of granular FePt:Ag films for perpendicular recording (invited) ,Journal of Applied Physics ,米国,2003年 5月15日,Vol.93 No.10,Pt.3,Page.8152-8154
調査した分野 G11B 5/84- 5/86
H01F 10/00-10/32
41/14-41/34

JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
FexPt1-xからなる磁性微小粒子が非磁性マトリックス中にドットアレイ状に形成された磁性薄膜の形成方法であって、
Feと非磁性材からなるターゲットを用いたスパッタリングを施して、下地上に、前記非磁性材からなるマトリックス中にFeのドットアレイが形成された薄膜を成膜する工程と、
前記薄膜を加熱した状態で前記薄膜にPtをスパッタリングし、前記ドットアレイに形成された各々のFeドットにPtを拡散させ、前記非磁性材からなるマトリックス中に、FexPt1-xからなるドットアレイが形成された磁性薄膜を形成する工程と
を有することを特徴とする磁性薄膜の形成方法。
【請求項2】
前記ターゲットとして、FeとCuからなるターゲットを使用し、Cuのマトリックス中にFeのドットアレイが形成された薄膜を形成し、
次いで、前記薄膜を加熱した状態で前記薄膜にPtをスパッタリングして、Cuのマトリックス中に、FexPt1-xからなるドットアレイが形成された磁性薄膜を形成することを特徴とする請求項1記載の磁性薄膜の形成方法。
【請求項3】
前記ターゲットとして、FeとAgからなるターゲットを使用し、Agのマトリックス中にFeのドットアレイが形成された薄膜を形成し、
次いで、前記薄膜を加熱した状態で前記薄膜にPtをスパッタリングして、Agのマトリックス中に、FexPt1-xからなるドットアレイが形成された磁性薄膜を形成することを特徴とする請求項1記載の磁性薄膜の形成方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は磁性薄膜の形成方法に関し、より詳細には、FePtM(MはCuまたはAg)規則合金薄膜として磁性薄膜を形成する磁性薄膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
情報を高速かつ高い信頼性で記録し活用するものとして、磁気記録再生技術を使用した磁気ディスク装置が広く利用されている。磁気ディスク装置に使用されているハードディスクの記録密度は、現在は約133G(ビット/平方インチ)であり、2010年には500(ビット/平方インチ)になると予想されている。
このような背景のもとで現在注目されている磁気記録媒体が、パターンドメディアと呼ばれる自己配列型の磁性体ドットアレイであるIBM社は、FeとPtとを含む2種類のポリマーを反応させ、FexPt1-x からなる合金粒子の周りをポリマーが覆ったコロイドを生成し、これを基板に塗布して熱処理することによりFexPt1-x の磁性粒子が一定間隔で並んだドットアレイを形成した(非特許文献1参照)。

【非特許文献1】Science,2000.3.17.Vol.287,pp1989
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した方法によって生成するFePtドットアレイを形成する方法は、工程が複雑であり、磁気記録媒体として利用する場合には熱処理による粒子の成長、基板との付着、表面粗さ等の解決すべき課題が多い。また、磁性を備えたドットアレイを形成する方法としては、磁性材料に非磁性金属または酸化物を混在させて粒状の薄膜を形成する方法、フォトリソグラフィや収束イオンビームを使用するといった方法もあるが、いずれも製造工程が複雑になるという問題があった。
【0004】
本発明は、情報をきわめて高密度に記録することを可能にするとともに、簡単な製造工程によって形成できることから安価に提供することができ、磁気記録媒体に好適に利用することができる磁性薄膜の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記目的を達成するため次の構成を備える。
すなわち、FexPt1-xからなる磁性微小粒子が非磁性マトリックス中にドットアレイ状に形成された磁性薄膜の形成方法であって、Feと非磁性材からなるターゲットを用いたスパッタリングを施して、下地上に、前記非磁性材からなるマトリックス中にFeのドットアレイが形成された薄膜を成膜する工程と、前記薄膜を加熱した状態で前記薄膜にPtをスパッタリングし、前記ドットアレイに形成された各々のFeドットにPtを拡散させ、前記非磁性材からなるマトリックス中に、FexPt1-xからなるドットアレイが形成された磁性薄膜を形成する工程とを有することを特徴とする。
【0006】
また、前記ターゲットとして、FeとCuからなるターゲットを使用し、Cuのマトリックス中にFeのドットアレイが形成された薄膜を形成し、次いで、前記薄膜を加熱した状態で前記薄膜にPtをスパッタリングして、Cuのマトリックス中に、FexPt1-xからなるドットアレイが形成された磁性薄膜を形成すること、また、前記ターゲットとして、FeとAgからなるターゲットを使用し、Agのマトリックス中にFeのドットアレイが形成された薄膜を形成し、次いで、前記薄膜を加熱した状態で前記薄膜にPtをスパッタリングして、Agのマトリックス中に、FexPt1-xからなるドットアレイが形成された磁性薄膜を形成する方法が、すぐれた磁気特性を備えた磁性薄膜を得る方法として有効である。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る磁性薄膜の形成方法によれば、磁性薄膜にきわめて微細構造の磁性粒子をドットアレイ状に形成することが可能となり、これによってきわめて高密度の情報を記録することができる磁性薄膜として提供することができる。また、本発明方法は、スパッタリング法によって磁性薄膜を形成することから、磁性薄膜を容易に形成することができ、磁気記録媒体等の製造に好適に利用することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
本発明における磁性薄膜の形成方法は、基板(下地)の上にFeの微小粒構造(Granular
structure)を備えた薄膜を成膜し、次いで、この薄膜の表面にPt薄膜を成膜することにより、FexPt1-xからなる磁性微小粒子(磁性ナノ粒子)が、非磁性マトリックス中にドットアレイ状に形成された磁性薄膜を形成することを特徴とする。
【0009】
基板上にFeの微小粒構造を備えた磁性薄膜を形成する方法としては、Feと非磁性金属を適宜組成によって形成したターゲットを使用し、スパッタリングによって形成する方法が利用できる。
本実施形態において磁性薄膜を形成するターゲットとして使用した非磁性材はCuとAgである。図1と図2に、FeとCu、FeとAgをそれぞれターゲットとしてガラス基板上に成膜した薄膜の電子顕微鏡写真を示す。なお、図1は、Fe75Cu25からなるターゲットを使用した場合、図2は、Fe75Ag25からなるターゲットを使用した場合である。いずれの場合も、ガラス基板の温度を室温とし、薄膜の厚さは20nmである。
【0010】
図3は、図1の薄膜についてのX線回折測定結果を示すグラフ、図4は、図2の薄膜についてのX線回折測定結果を示すグラフである。図3に示すグラフは、Fe75Cu25をターゲットとしてガラス基板上に形成した薄膜がFeとCuが不共溶の状態で形成されていることを示し、図4に示すグラフはFe75Ag25をターゲットとしてガラス基板上に形成された薄膜がFeとAgが不共溶の状態で形成されていることを示す。
【0011】
図1において、明るい粒状に形成された部位がFeのドット部分であり、暗いバックグラウンドとしてあらわれている部分がCuである。すなわち、FeとCuからなるターゲットを用いてスパッタリングにより薄膜を形成すると、Feは非磁性材であるCuのマトリックス中にドットアレイ状に配列されて形成されるようになる。図1において、Feのドットの大きさは平均で33nmであり、Feのドット間の間隔(Cuの部分)は平均10nmである。
【0012】
同様に、図2において、明るい粒状に形成された部位がFeのドット部分であり、暗いバックグラウンド部分がAgである。このように、FeとAgをターゲットとしてスパッタリングによって成膜した場合も、Feは非磁性材であるAgのマトリックス中にドットアレイ状に形成される。
このように、FeとCuあるいはFeとAgの2元素をターゲットとしてスパッタリングすることによって数十nm程度の微小なドットとしてFeが形成されるのは、700℃以下の温度においては、FeとCu、FeとAgとが完全に不共溶であるためである。
なお、上述した方法により、薄膜を成膜した際のFeのドットの大きさ、ドット間距離は、ターゲットの組成およびスパッタリングの際の基板の温度に依存する。したがって、ターゲットの組成およびスパッタリング条件を適宜調節することによって、Feのドットの大きさおよびドット間距離を調節することが可能である。
【0013】
図5は、FeCuあるいはFeAgをターゲットとしてスパッタリングにより基板10上に形成した薄膜20の構成を図示している。薄膜20はドットアレイ状に形成されたFeドット22と、CuあるいはAgの非磁性材部24からなる。Feのドットはアレイ状に配置されるから、図5では、Feドット22とCuあるいはAgの非磁性材部24を交互に同幅で配置した単純化した形態を示している。
【0014】
基板10のFeのドットアレイが形成された薄膜を形成した後、本発明方法では、薄膜表面にPtをスパッタリングし、Feのドット中にPtを拡散させて、薄膜に形成されたFeのドットをFexPt1-xからなる磁性微小粒子とする。
ドットアレイ状に形成された各々のFeドット中にPtを拡散させるには、薄膜を所定温度以上に加熱し、スパッタリングによってPtを薄膜20の表面に成膜すればよい。所定の熱エネルギーとスパッタリングされたイオンのエネルギーによって、PtがFeドット中に拡散して各々のFeドットがFexPt1-xからなる磁性微小粒子となる。
【0015】
本実施形態においては、基板10に薄膜20を形成した後、基板10を400℃に加熱してPtをスパッタリングした。Ptのスパッタ厚は10nmである。
図6(a)は、Feドット22と非磁性材部24が形成された薄膜20の表面にPt薄膜30を成膜した状態を示す。図6(b)は、薄膜20の表面に形成されたPt薄膜30からPtがFeドット22中に拡散してFexPt1-xドット22aと非磁性材部24が形成される様子を説明的に示している。
【0016】
図7は、Fe75Cu25薄膜にPt薄膜をスパッタリングして形成した薄膜の電子顕微鏡写真である。図7は、Ptをスパッタリングした状態で、基板10に形成された薄膜が依然として微小粒構造(Granular structure)を保持していることを示している。
また、図8は、図7に示す薄膜についてのX線回折測定結果を示す。この図8に示すグラフは、薄膜20にPtをスパッタリングしたことによって、Feドット22がすべてFePt(001)、FePt(111)に置き換わったこと、非磁性材のCuがそのまま残留したことを示す。
【0017】
図9は、上述したと同様の方法によってFe75Ag25薄膜にPt薄膜をスパッタリングによって成膜した薄膜についてX線回折測定を行った結果を示す。この場合も、薄膜20に形成されていたFeドット22はすべてFePt(001)とFePt(111)に置き換わり、非磁性材であるAgが残留していることを示す。
すなわち、Feがドットアレイ状に形成された薄膜にPtをスパッタリングすることにより、Ptは選択的にFeドット中に拡散し、FeドットがFePtドットに置換され、非磁性材からなるマトリックス中にFePtドットがアレイ状に配置された磁性薄膜が得られる。薄膜20に対するPtのスパッタ量は適宜調節することが可能であるからFePtドットの組成比について調節することも容易である。
【0018】
こうして本発明方法によれば、一般的な成膜方法として広く利用されているスパッタリング法を利用することによって、FePtがドットアレイ状に形成された磁性薄膜を形成することができる。スパッタリングによる成膜条件は適宜調節することが可能であり、磁気ディスク装置に用いるハードディスクの磁性薄膜として利用することも容易に可能である。また、本発明方法によって形成されるFePtドットは数十nmといったナノレベルの微小粒として形成されるから、一平方インチあたり1テラビット(1012)という高密度記録を可能にする。また、FePt規則化合金は磁気異方性が大きいことから、熱擾乱による磁化の不安定といった問題を回避することができる。
【0019】
図10と図11は、上述した方法によって形成したFePt・CuとFePt・Agについての磁化曲線を示す。
図10に示すFePt・Cuについての磁化曲線は、面に垂直方向と平行方向での保持力が全範囲にわたってほとんど変わらないことを示している。この測定結果は、図8に示すX線回折の測定結果と矛盾せず、上記方法によって得られた磁性粒子の結晶軸方向がほぼランダムとなり、磁性薄膜は全体として等方的な磁気特性を備えているということができる。一方、図11に示すFePt・Agについての磁化曲線は、面に垂直方向と平行方向での保持力に若干の差異が見られる。このことは、図9に示すX線回折の測定結果において、FePt(111)の強度がFePt(001)と比較して強くあらわれていることと矛盾せず、FePt・Ag薄膜の場合は、磁気的な特性としてある程度の方向性があるものと考えられる。
【0020】
図12は、FePt、FePt・Cu、FePt・Agについてδm値を測定した結果を示す。この測定結果は、磁性粒子の磁気的な相互作用の強さ(δm)を示すものである。正の値が大きいほど交換結合が強いことを意味しており、記録媒体としては雑音が大きくなり不適である。FePtは交換結合作用が大きいことを示している。FePt・Cu、FePt・Agの薄膜は交換結合作用が弱められていることを示している。従って、本手法で作成された薄膜は磁性粒子がナノドット状になっていることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】FeCuターゲットを用いて形成した薄膜(FeCu)の電子顕微鏡写真である。
【図2】FeAgターゲットを用いて形成した薄膜(FeAg)の電子顕微鏡写真である。
【図3】スパッタリングによって形成した薄膜(FeCu)のX線回折グラフである。
【図4】スパッタリングによって形成した薄膜(FeAg)のX線回折グラフである。
【図5】基板上にFeドットと非磁性材部が形成された状態を示す説明図である。
【図6】薄膜上にPtを成膜し、FePtドットアレイが形成される様子を説明する説明図である。
【図7】Pt(FeCu)薄膜の電子顕微鏡写真である。
【図8】Pt/FeCuについてのX線回折グラフである。
【図9】Pt/FeAgについてのX線回折グラフである。
【図10】Pt/FeCu薄膜について測定した磁化曲線である。
【図11】Pt/FeAg薄膜について測定した磁化曲線である。
【図12】FePt、FePt・Cu、FePt・Agについて測定したδm値を示すグラフである。
【符号の説明】
【0022】
10 基板
20 薄膜
22 Feドット
22a FexPt1-xドット
24 非磁性材部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
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