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明細書 :バイオマスの固形化素材への変換法および当該固形化素材の利用法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5024848号 (P5024848)
公開番号 特開2007-090131 (P2007-090131A)
登録日 平成24年6月29日(2012.6.29)
発行日 平成24年9月12日(2012.9.12)
公開日 平成19年4月12日(2007.4.12)
発明の名称または考案の名称 バイオマスの固形化素材への変換法および当該固形化素材の利用法
国際特許分類 B09B   3/00        (2006.01)
C10B  53/02        (2006.01)
C05F  17/00        (2006.01)
C09K  17/32        (2006.01)
A01G   1/00        (2006.01)
C09K 101/00        (2006.01)
FI B09B 3/00 ZABA
C10B 53/02
C05F 17/00
C09K 17/32 H
A01G 1/00 303B
C09K 101:00
請求項の数または発明の数 4
全頁数 13
出願番号 特願2005-279086 (P2005-279086)
出願日 平成17年9月27日(2005.9.27)
審査請求日 平成20年8月6日(2008.8.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明者または考案者 【氏名】徳安 健
【氏名】五十部 誠一郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100086221、【弁理士】、【氏名又は名称】矢野 裕也
審査官 【審査官】三崎 仁
参考文献・文献 特開2002-282825(JP,A)
特開2003-095771(JP,A)
特開2000-119086(JP,A)
特開2000-154083(JP,A)
調査した分野 B09B1/00-5/00
A01G1/00
C05F17/00
C09K17/32
C10B53/02
C09K101/00
特許請求の範囲 【請求項1】
植物細胞壁成分およびタンパク質成分に属する少なくとも1種以上の成分を含むバイオマス原料に対して、以下(A)及び(B)の工程を行うことを特徴とする、以下(C)の性質を示す成分相互の結着性を有する固形化素材の製造方法。
(A):以下(a)及び(b)の特徴を有する1種以上の微生物を用いて、前記バイオマス原料の発酵を行って、バインダー特性を有する菌体外成分を含む発酵物を得る工程。
(a):ポリグルタミン酸生産菌、ゲランガム生産菌、ポリガラクトサミン生産菌およびカードラン生産菌に属する1種以上の微生物。
(b):前記原料に含まれる植物細胞壁成分およびタンパク質成分に属する少なくとも1種以上の成分に対する分解能を有する微生物。
(B):前記発酵物、又は、前記発酵物を含む組成物、を成形して固形化する工程。
(C):加圧によって崩壊しにくく、且つ、水中で崩壊しやくなる性質。
【請求項2】
前記発酵物を含む組成物が、未発酵の前記バイオマス原料を含むものである、請求項1に記載の固形化素材の製造方法。
【請求項3】
前記微生物が、Pseudomonas elodea 及び/又は Bacillus subtilisである、請求項1又は2のいずれかに記載の固形化素材の製造方法。
【請求項4】
前記バイオマス原料が、作物の非食部、廃棄農作物、;家畜糞尿、食肉加工時の廃棄物、;水産物加工時の廃棄物、;間伐材、おがくず、廃菌床、;食品製造時の廃棄物、食品流通時の廃棄物、;厨芥ゴミ、建築廃材、剪定残渣、古紙、および古布、;のうちの1以上のものである、請求項1~3のいずれかに記載の固形化素材の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、農林水産業、食品産業を中心とした生物系産業において廃棄物として生じる資源(バイオマス)の固形化素材への変換法および該変換法により製造された固形化素材とその利用法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
持続可能な資源利用を目指したバイオマスのリサイクルの重要性が重視される中で、農林水産業、食品産業を中心とした生物系産業において生成する廃棄物バイオマスの多くは腐敗性の高い有機物を多量に含んでおり、その処理が問題となっている。
これらの廃棄物としては、例えば、農林水産業からは、稲わら、籾殻等の作物の非食部・一次加工残渣や生産調整時の廃棄農作物、家畜糞尿や食肉加工時の畜産系廃棄物、水産物の一次加工残渣等の廃棄物、間伐材、おがくず、廃菌床等の林産廃棄物、食品産業からは、食品製造時の廃棄物、売れ残り品等の流通時の廃棄物等が生産される。また、一般廃棄物としての厨芥ゴミは、有機物を多量に含むが、成分組成が一定でないことから、一部はメタン発酵によるガス化、堆肥化等が実用化されているものの、殆どの資源が直接燃焼されているのが現状である。その他、建築廃材、剪定残渣、古紙、古布等のバイオマスについてもその処理法の開発が望まれている。
【0003】
これらのバイオマスを適切に加工して用途開発を行うことにより、そのカスケード利用によってリサイクルが促される。例えば、豆腐製造工程において副生されるオカラやトウモロコシ由来のバイオマスであるゼインを用いた射出成形技術によりペレットや生分解性ポット等に変換する技術などが開発されている(特許文献1)。
一方、乳酸発酵等により、農産バイオマスをサイレージ化したり、堆肥化したり、食品廃棄物バイオマスをリキッドフィードに変換したりする技術が開発・利用されてきた。また、廃棄物バイオマスの分解・減容化およびガスエネルギーへの変換については、メタン発酵が古くから用いられてきた。
さらに、家庭ゴミを中心にコンポスト化技術が普及しており、好気的分解による減容化が行われてきた。しかしながら、農林水産業や食品産業に由来する廃棄物バイオマスの多くは、放置すると直ちに腐敗して悪臭を放つ汚泥等となってしまうことから、迅速な腐敗防止処理を行わない限り、資源としての価値は大幅に低下する。
【0004】
これらのバイオマスの腐敗防止方法として最も重要な処理の一つは、腐敗前の水分活性の低下である。カビ、酵母、細菌などの微生物は、それぞれ水分活性0.7、0.75および0.8程度以下で増殖が止まることが知られている。
したがって、これらのバイオマスを乾燥することにより、その品質の微生物劣化を防ぎつつ貯蔵することが可能となる。これは厨芥ゴミのような、均一性の低いバイオマスについても同様であり、乾燥させることにより貯蔵性が増し、それだけで付加価値が上昇する。
【0005】
バイオマスの乾燥処理の目的は、貯蔵性の向上であるが、さらに、適切な大きさと目的に応じた形状をもつ固形化素材に成形することにより、貯蔵性のみならず、運搬性や使用時の作業性が飛躍的に向上する。もしも乾燥バイオマスが微粉末状であると、粉塵として飛散しまい、散布しにくいだけでなく、作業者が吸引・被曝してしまう危険性があることから、適切な形状、大きさへの成形工程の重要性は大きい。
また、成形を行う際には、ペレット状、フィルム状、あるいは用途に応じた形状に成形された固形化素材へ変換することが望ましい。良質な有機物に富むバイオマスを効率的に固形化素材に変換できれば、生分解性素材の他、飼料、肥料、発酵培地、土壌改質剤などへの利用のほか、炭化原料、熱分解原料等の用途の開拓につながるものと期待できる。
【0006】

【特許文献1】特許第3697234号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、肥料や飼料のペレット化技術に代表されるバイオマスの固形化素材への変換に係る現存技術については、成形性や成形物の運搬・作業過程における安定性を確保するために、副資材としてのバインダーの添加が求められたり、バイオマスの微粉化工程、高温・高圧処理工程などの存在により、成形工程のコストが大きくなったりすることが問題となっている。
このように、腐敗性の高いバイオマス利用に有効な固形化素材への変換工程を効率化することにより、バイオマスの用途は大きく拡大するものと期待されているにもかかわらず、現存技術では限界がある。これまでに、実用化に至っているものは肥料、飼料などのうちの限られた例に留まっている。このような中で、バイオマスの利用性を高めるための、固形化素材への変換工程におけるバインダーの供給やバイオマスの処理特性の向上に関するブレイクスルーが強く求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意努力を積み重ねた結果、廃棄物資源であるバイオマスの発酵工程を工夫することによってバインダーの供給やバイオマスの処理特性の向上が可能であることを見いだし、種々の問題を解決しつつ有用性の高い固形化素材を製造する方法の開発に成功した。
本発明では、バイオマスの発酵工程によって、固形化素材への変換のためのバイオマスの成形時あるいはその前処理時の特性および成型物としての固形化素材の特性を向上させることが可能となる。また、バイオマスを発酵させて単独で固形化素材に変換する方法のほかに、他のバイオマスと混合した後に固形化素材に変換する方法も開発し、発酵性の低い難分解性バイオマスや、品質が一定でないバイオマス、汚泥のような処理が困難な水分含量の高いバイオマス等についても、後者の混合法による固形化素材への変換が可能となることを見出した。
さらに、バイオマスの発酵工程の工夫によって腐敗を防ぐことができるほか、飼料特性、肥料特性、発酵培地としての特性、土壌改質特性、さらには炭化特性、熱分解特性等を向上させることも可能となる。
【0009】
本願により提供される発明は以下の通りである。
〔請求項1〕:植物細胞壁成分およびタンパク質成分に属する少なくとも1種以上の成分を含むバイオマス原料に対して、以下(A)及び(B)の工程を行うことを特徴とする、以下(C)の性質を示す成分相互の結着性を有する固形化素材の製造方法。
(A):以下(a)及び(b)の特徴を有する1種以上の微生物を用いて、前記バイオマス原料の発酵を行って、バインダー特性を有する菌体外成分を含む発酵物を得る工程。
(a):ポリグルタミン酸生産菌、ゲランガム生産菌、ポリガラクトサミン生産菌およびカードラン生産菌に属する1種以上の微生物。
(b):前記原料に含まれる植物細胞壁成分およびタンパク質成分に属する少なくとも1種以上の成分に対する分解能を有する微生物。
(B):前記発酵物、又は、前記発酵物を含む組成物、を成形して固形化する工程。
(C):加圧によって崩壊しにくく、且つ、水中で崩壊しやくなる性質。
〔請求項2〕:前記発酵物を含む組成物が、未発酵の前記バイオマス原料を含むものである、請求項1に記載の固形化素材の製造方法。
〔請求項3〕:前記微生物が、Pseudomonas elodea 及び/又は Bacillus subtilisである、請求項1又は2のいずれかに記載の固形化素材の製造方法。
〔請求項4〕:前記バイオマス原料が、作物の非食部、廃棄農作物、;家畜糞尿、食肉加工時の廃棄物、;水産物加工時の廃棄物、;間伐材、おがくず、廃菌床、;食品製造時の廃棄物、食品流通時の廃棄物、;厨芥ゴミ、建築廃材、剪定残渣、古紙、および古布、;のうちの1以上のものである、請求項1~3のいずれかに記載の固形化素材の製造方法。

【発明の効果】
【0010】
本発明により、産業廃棄物資源であるバイオマスの有効利用にあたり、当該バイオマスの発酵工程を加えることを特徴とした固形化素材の製造技術が提供される。これにより、バイオマスへ多様な特性を付与することが可能となる。
本発明により、多様なバイオマスの特性に応じた高付加価値化が可能となり、我が国の高度な発酵工学技術を活用した、バイオマスからの様々な有用素材の開発に道が拓けるものと考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明について説明する。
固形化素材の製造技術としては、前処理としてバイオマスの乾燥処理、熱処理を行い、最適水分条件に調整した後に一般的な造粒装置等を用いるような固形化法、ガンマ線等の照射や酵素処理による高分子架橋等を伴う固形化法等の他、機械により加温・加圧を伴う固形化法等が考えられる。
機械による成形方法としては、射出、押出、圧縮(ホットプレス)などの広く利用されている技術を用いることができる。また、乾燥工程としては、自然乾燥、風力乾燥、加熱乾燥等が挙げられる。
【0012】
バイオマスを固形化素材に成形するまでの前処理段階および加工段階において考慮すべき主な要素としては、バイオマスの保存性、バイオマスの水分量、固体バイオマスからの液体の分離、粒子サイズ、系外からのバインダーの添加量、成形装置への物質移動効率、熱・圧力処理による固形化の際の効率などが挙げられる。
本発明では、成形工程の前にバイオマスを発酵することにより、これらの因子に係るバイオマスの特性を向上させることができる。
バイオマスの発酵に関しては、発酵培地の全てあるいは一部としてバイオマスやこれらの物理的、化学的あるいは生物学的前処理によって分解・修飾した成分等を用いて発酵を行うことになる。その際には、主成分として、澱粉、フラクタン、グルコマンナン等の植物貯蔵多糖、セルロース、ヘミセルロース、ペクチン、リグニン等の植物細胞壁成分、キチン、キトサン、グルカン等の微生物・動物由来の糖質成分、乳製品から副生する乳糖、蛋白質、脂質などの有機成分あるいはこの分解・修飾物を用いることになる。
【0013】
本発明において、対象とするバイオマスの発酵条件を決定する際には、種々の能動的調整を行うことがポイントとなる。能動的調整には、バイオマスの組成を解析し、既知の微生物あるいは自然界から適切な微生物を探すためのスクリーニングを行うこと等が含まれる。また、適宜、公知の突然変異導入手法、遺伝子工学的手法、あるいは遺伝子操作技術を用いたタンパク質工学的手法や代謝工学的手法等を用いて微生物の発酵特性を最適化する。
本発明において改良すべき発酵特性としては、例えば、バイオマスの資化特性、生育特性に関する特性、発酵生成物の特性が挙げられる。微生物機能の発酵を促進し、原料となるバイオマスの特性の変化にも適切に対応するため、適宜、pHを調整したり、栄養成分を調整したりするための副成分を添加したりする。これらの能動的調整により、使用菌株、主成分量、副成分組成、水分含量、培養温度・pH、培養時間、撹拌条件等を決定することが可能となり、バイオマスの変換工程が最適化することが可能となる。
【0014】
バイオマスの保存性の問題は、食品廃棄物のような、一般に易分解性の有機物が多く水分活性が高いバイオマスについては、特に重大な問題である。これまでは、保存性を向上させるためバイオマスは殺菌あるいは乾燥による静菌を行う必要があったが、本発明では、発酵処理を行うことにより、混入する腐敗菌による腐敗過程よりも先に発酵工程を進め、腐敗菌の増殖を抑制する。
また、選択性の高い培養条件における耐性や生育能力が高い微生物を発酵菌として用いることにより、腐敗菌が殆ど生育しない培養条件における発酵が可能となることは、アルコール発酵や有機酸発酵などについて知られており、この方法を用いてバイオマスの発酵処理を行うことができる。一般的な選択圧としてpH、温度、湿度、アルコール濃度、塩濃度、抗生物質等があり、その他、難分解性バイオマスの分解能力等が挙げられる。
さらに、スターターとして圧倒的に多量の発酵菌をバイオマスに接種することにより、培養条件が発酵菌にとって有利なものとなる。これらの発酵生産に係る公知の知見をバイオマスの成形における前処理段階で用いることにより、バイオマスの腐敗抑制に係る手間の軽減が可能となるのみならず、再現性の高い発酵を行うことが可能となる。
また、選択圧への耐性を示す微生物のスクリーニングは、選択圧のある環境を再現した培地における生育活性を指標にスクリーニングすることにより、容易に見出すことが可能であり、本発明において利用することができる。
【0015】
成形特性を向上させるためのバイオマスの減容化については、基質の組織構造や粒状構造の崩壊、フロックの形成等による脱水促進等が関係する。例えば、微生物の物質分解能、pH改変能等を活用することにより、固形化素材への変換に先立つ脱水・減容化が可能となる。また、ヨーグルトのように、乳酸菌等を用いてpHを低下させることにより、タンパク質の水和水が脱離するとともにタンパク質同士の凝集が促進され、離水が起こることが古くから知られており、本発明においても活用することが可能となる。
溶液中で電荷をもつ菌体外多糖や細胞壁成分を生産することによりフロック形成能が期待される微生物については、キトサンを生産するMucor属菌、Absidia属菌、Rhizopus属菌等の接合菌類をはじめとして、ポリガラクトサミンを生産するAspergillus属菌、Paecilomyces属菌、Neurospora属菌などが知られており、バイオマスを発酵させることにより、本発明における技術として利用することが可能である。
また、フロック形成を促進する活性をもつ微生物は、菌体培養液と不溶性物質の分散液を混合し、その不溶性物質の沈降速度変化を調べる等の方法によって容易にスクリーニングし、本発明において用いることが可能である。
一方、脱水工程を含むバイオマスの固形化の経済効率を考慮した場合、外部から余分な水分を添加することは必ずしも効率的ではない。可能であれば、水の添加量を抑えたふすま培養等のような固相培養技術を活用することが望ましい。
【0016】
また、脱水促進以外にも、メタン発酵やコンポスト化のように、バイオマスの量を発酵によって減らす技術が広く知られており、本発明において適宜、活用することが可能である。本発明においては、メタン発酵やコンポスト化のような公知技術を利用する場合でも、バイオマスの成形工程全体の効率を考慮した上での条件の再検討や最適化を行うことが望ましい。例えば、現存の減容化技術を用いた場合の有用物質の損失が最終産物としての固形化素材の付加価値に及ぼす影響を考慮する必要が生じる。
【0017】
バイオマスの発酵によりその一部が分解して、全体の構造が崩壊したり、軟化したりして、粒子が細かくなったり、流動性や成形性が向上するような場合、既存の方法と比較して、少量の動力で輸送、添加、混合等の作業を行うことが可能になり、成形工程にかかるコスト削減に貢献するものと考えられる。
植物細胞壁成分や甲殻類外殻成分などの分解菌の作用により、難分解性成分が会合したこれらのバイオマスの構造をバラバラに解離したり軟化したりする。このような多くの菌類や細菌類は自然界においてバイオマスの分解者の役割を果たしており、単独または複合的な作用により、難分解性成分を分解して微粒子化、可溶化あるいは資化することが知られている。
【0018】
本発明においては、これらの公知の知見をもとに、これらの難分解性成分の分解性を有することを特徴とする微生物を、バイオマスの固形化素材への変換のために有効活用することが特徴となる。植物細胞壁の分解菌としては、例えばAcetobacter属菌、Acetovibrio属菌、Acidobacterium属菌、Aeromonas属菌、Bacillus属菌、Cellulomonas属菌、Celluvibrio属菌、Clostridium属菌、Pseudoalteromonas属菌、Pseudomonas属菌、Streptomyces属菌、Thermomonospora属菌、Ruminococcus属菌、Xanthomonas属菌、 Aspergillus属菌、Penicillium属菌、Fusarium属菌、Humicola属菌、Hypocrea属菌、Macrophomina属菌、Nectria属菌、Neurospora属菌、Robillarda属菌、Trichoderma属菌、Verticikkium属菌、Agricus属菌、Phanerochaete属菌、Schizophyllum属菌、Sclerotium属菌、Coniophora属菌、Cryptococcus属菌、Filobacidiella属菌、Irpex属菌、Trametes属菌、Ustilago属菌、Dictyostelium属菌などを用いることができる。
また、甲殻類外殻成分の分解菌としては、例えばキチナーゼ生産菌であるAeromonas属菌、Alteromonas属菌、Arthrobacter属菌、Aspergillus属菌、Bacillus属菌、Burkholderia属菌、Cellulomonas属菌、Clostridium属菌、Coccidioides属菌、 Cryptococcus属菌、Enterobacter属菌、Hypocrea属菌、Lactococcus属菌、Metarhizium属菌、Saccharophagus属菌、Pseudoalteromonas属菌、Pseudomonas属菌、Pyrococcus属菌、Rhizopus属菌、Serratia属菌、Streptomyces属菌、Thermococcus属菌、 Thermomyces属菌、Xanthomonas属菌、Trichoderma属菌、Vibrio属菌などを用いることができる。
【0019】
また、タンパク質を多く含むバイオマスについては、家畜や魚介類の加工残渣、微生物菌体残渣や植物性残渣等が含まれる。例えば、豆腐の絞りかすであるオカラはタンパク質を豊富に含むバイオマスである。タンパク質分解能力が高い微生物はオカラを含む培地での良好な生育を示し、オカラの粒子を微小化して流動性を高めることができる。強力なプロテアーゼを生産する微生物として、例えば、Aspergillus属菌、Bacillus属菌、Kluyveromyces属菌、Rhizopus属菌、Rhizomucor属菌、Streptomyces属菌等を用いることができる。
【0020】
これらの植物細胞壁成分、甲殻類外殻成分あるいはタンパク質成分を分解する微生物は、上に例示した以外にも、これらの成分を含む培地において培養した場合に、その成分の分解活性をもつことを指標にして容易にスクリーニングすることができ、当該微生物を本発明において利用することができる。適宜、上記培地における培養条件において生育の際の選択圧をかけることにより、目的とするバイオマスの発酵時環境適性が高く、腐敗を抑える活性が高い分解菌等のスクリーニングを行うことが可能となる。
【0021】
バイオマスの多くはセルロース、キチン、リグニン等の難分解性の成分を含む。バイオマスの発酵工程を効率化するためには、発酵段階を必ずしも一段階として設定する必要はない。例えば、麹菌を培養して麹を作った後に、それを酵母でアルコール発酵させるという酒造工程のように、バイオマスや有用菌の資化能力によっては、適切な前発酵を行うことにより、バイオマスの高付加価値化が効率化する。
また、廃棄物中に多量に含まれる他の重要成分として、澱粉等の植物貯蔵多糖成分、乳糖、脂質などが考えられる。これらの成分についても、スクリーニングによって資化性の高い微生物を容易に見出すことが可能であり、本発明において活用することができる。バイオマスから有用物質を生産する微生物に対して、それぞれの成分に対する資化性を付与するには、アミラーゼやマルターゼ等の澱粉分解酵素系をコードする遺伝子、β-ガラクトシダーゼをコードする遺伝子、リパーゼ遺伝子を導入することにより、その微生物の資化特性が向上する。
【0022】
難分解性バイオマスなどの発酵能力をもつ微生物を培養することにより、基質が解離・軟化するのみならず、培養液に菌体外物質や有機物などが蓄積し、菌体が増殖する。微粉化等の前処理を行わない限り、基質となる難分解性バイオマスは体積が大きいために分散性が低く、バインダー活性も小さいが、発酵後に培養液に蓄積した種々の有機物や微小な菌体は分散性が高く、大きいバインダー活性をもつことは明らかである。
また、基質の周辺を発酵菌が覆ったり、バイオフィルムのような高分子を生産したりすることにより、基質自体の固形化特性の向上に寄与すると考えられる。このように、これらの有機物の資化菌を用いて発酵することにより、バイオマスの固形化素材としての成形特性や成形物の特性が向上することは明らかであり、本発明においてバイオマスの発酵を行うことは、固形化素材への変換を行う際の大きい利点になると考えられる。
【0023】
固形化素材への変換のためのバイオマスの成形特性や成型物の特性の向上については、バイオマスを構成する微粒子を相互に結着させて、もろく崩れて微粒子に戻らないように安定的に存在させるためのバインダー分子を発酵生産させる方法が考えられる。
これまでは、先述したトウモロコシ由来のゼインなどのタンパク質系素材、グリセロールや多糖類等を用いてきたが、バインダーをバイオマスの発酵により意図的に生産させるという方法はこれまでに開発されていない。
発酵生産によるバインダーとしては、微生物細胞壁、菌体外多糖・粘質物、低分子の発酵生産物や、あるいは植物細胞壁成分の部分構造などのような、発酵工程によりバイオマスから副生した成分等が想定される。微生物由来の物質としては、例えば麹菌やケカビをはじめとする子嚢菌の構成成分、食用キノコ類をはじめとする担子菌の構成成分、酵母、乳酸菌、納豆菌などの細菌の構成成分や、それらの処理による加水分解物、自己消化物、菌体外多糖成分や菌体外ポリペプチド等を用いることができる。
【0024】
良好なバインダー特性が期待される菌体外成分としては、例えばカードラン、ゲランガム、キサンタンガム、ヒアルロン酸、プルラン、デキストラン、スクシノグリカン、ポリグルタミン酸、ポリヒドロキシアルカン酸、ε-ポリ-L-リジン、ポリガラクトサミン等が挙げられ、これらの高分子物質の生産菌として、例えばAgrobacterium属菌、Alkaligenes属菌、Pseudomonas属菌、 Xanthomonas属菌、Streptococcus属菌、Aureobasidium属菌、Leuconostoc属菌、Bacillus属菌、Ralstonia属菌、Azotobacter属菌、Spirillum属菌、Vibrio属菌、Photobacterium属、Streptomyces属菌、Aspergillus属菌等を用いることができる。
これらの成分の多くは食品用ゲルとしても知られており、公知の方法を活用して、バインダー活性を最大に発揮する方法を開発することが可能である。これらの多くは100℃以下で溶解・分散して、冷やすかまたはカルシウム塩や他のゲルの添加等を行うことによりゲル化する。
【0025】
本発明におけるバイオマスを固形化素材へ変換する成形工程においては、熱や圧力によって圧着、乾燥するよりもはるかに低温で固形化することから、熱や圧力によるエネルギーの使用を大幅に減らすことが可能である。さらに、多くのゲルのもつ高い弾力性や安定性は、成形後の固形化素材の物理的安定性や化学的安定性等に大きく貢献する。
固体または液体培地において微生物を生育させ、菌体外多糖を回収して、主成分となるバイオマスの特性に合うようなバインダーを生産する微生物を探すことにより、良質のバインダー活性をもつ菌体外成分の生産菌は容易にスクリーニングすることが可能であり、本発明において活用することができる。
【0026】
これまで、廃棄物バイオマスを用いて有用物質である菌体外多糖を製造するための研究が報告されており、オリーブ粉砕廃水(Lopez, M. J.ら、J. Appl. Microbiol., 90, 829-835 (2001))、栗の抽出物(Liakoupoulou-Kyriakiswa, M.ら、Appl. Biochem. Biotechnol., 82, 175-183 (1999))、キャッサババガスの加水分解物(Woiciechowski, A. L.ら、Appl. Biochem. Biotechnol., 118, 305-312 (2004))などを用いて菌体外多糖の製造が試みられてきた。
しかし、これらの研究成果は、バイオマスからの菌体外多糖の抽出を目的としており、使用したバイオマス全体の固形化素材への変換を目的としたものではない。本発明の概念に従って最適化することによって、本発明において利用することが可能である。
【0027】
また、公知の突然変異導入手法、遺伝子工学的手法、遺伝子操作技術を用いたタンパク質工学的手法や代謝工学的手法等を用いて微生物の発酵能力を改変することにより、例えば本来、注目すべき菌体外多糖・粘質物の生産能力を欠く微生物に対してその生産能力を付与したり、菌体外多糖・粘質物の生産時に利用できる炭素源等の栄養特性を変換したり、代謝制御機構を制御したり、あるいは酵素の構造を改変することによって生成物の構造を制御したりすること等が可能となる。
発酵微生物の資化性、生育環境特性や生成物の構造・物性等を改変したり、固形化素材の特性改良を可能とする有用物質を生産したりすることが可能となり、本発明の目的を達成するための有効な技術となることは明白である。例えば、Xanthomonas campestris菌のもつキサンタンガムの生合成遺伝子をSphingomonas属菌に導入し、キサンタンガムを生合成させた例(Pollock, T. J.ら、J. Ind. Microbiol. Biotechnol., 19, 92-97 (1997))や、乳糖資化能を持たないX. campestris菌にβ-ガラクトシダーゼ遺伝子を導入して、乳糖資化性を付与した例(Fu, J-F. and Tseng, Y-H., Appl. Environ. Microbiol. 56, 919-923 (1990))などの技術や考え方は、本発明の概念に従って最適化することによって、本発明において利用することが可能である。
【0028】
資化特性の向上に関しては、バイオマスを構成する植物細胞壁成分、甲殻類外殻成分、タンパク質成分、植物貯蔵多糖成分、乳糖、脂質等の加水分解や代謝に係る酵素遺伝子、取込みのためのレセプター遺伝子等を導入することにより、バイオマス発酵に用いる微生物に対して新たなバイオマスの資化性を付与することができる。
これらの遺伝子は、各成分に対する分解菌からクローニングすることが可能であるほか、分解活性が不明な微生物からも、遺伝子配列の類似性を利用したPCR法をベースとしたクローニングによって得ることができ、さらに、遺伝子配列の一部または全部を人工的に合成することにより入手することも可能である。これを適切なベクターを用いて、宿主の菌体に導入し、菌体内部で発現させることにより、目的のタンパク質が生合成される。
【0029】
環境耐性に関する遺伝子については、微生物の持つ遺伝子の発現が環境耐性を低下している場合には、その遺伝子の発現を抑えるための突然変異を導入することにより、環境耐性を付与することができる。また、抗生物質の不活性化酵素などのように、環境耐性を向上するための遺伝子を持つ微生物をスクリーニングすることは容易である。この微生物の持つ環境耐性向上遺伝子を耐性のないバイオマス分解菌に導入し、発現させることにより環境耐性が付与される。
【0030】
バイオマス発酵に用いる微生物に対して菌体外成分、可塑性や種々の機能性を提供する低分子有用物質の生合成能力を付与する場合にも、これらの生合成活性を有する微生物から遺伝子や遺伝子群を取得して導入・発現することにより、有用物質の生産が効率化する。その際には、適宜、代謝工学技術、リボゾーム工学技術やタンパク質工学技術等を活用して、目的物質の生合成のために必要な前駆体物質や原料物質の生成量を増やしたり、代謝制御を促進あるいは抑制したり、多くの物質が目的物の生合成のために利用されるように方向付けたりすることにより、バイオマスを資化しながら効率的に有用物質を生産させることが可能となる。
【0031】
タンパク質工学技術や糖質工学技術等を活用することにより、バイオマス発酵により生産される有用物質の構造を改変することが可能となり、付加価値の高い固形化素材を製造するという本発明の目的に一層適した構造の物質を生産させることが可能となる。
公知の技術を本発明において活用し、バイオマスから新たな構造をもつ有用物質の生産を行うことができる。例えば、キサンタンガム等の高分子の側鎖となる糖残基の糖転移酵素の作用を抑え、セルロースに類似した構造をもつ多糖を合成したり、キチン脱アセチル化酵素によってキチン等の不溶性高分子の側鎖N-アセチル基を脱離して、希酸溶液中で電荷をもちフロック形成能をもつキトサン構造に変換したり、多糖合成に用いられる糖転移酵素の基質認識性を改変することにより、異なる構造の単糖誘導体に作用して高分子構造を改変したりするような試みが考えられる。ここに挙げた例の他にも、公知の先端技術を活用して構造改変された生合成物を本発明において用いることにより、バイオマスを一層付加価値の高い固形化素材へ変換することが可能となる。
【0032】
発酵されたバイオマスを用いた成形に関しては、そのバイオマス単独で成形する方法と、発酵されたバイオマスを他のバイオマスと混合して成形する方法が考えられる。後者の方法は、均一性が低く腐敗性が高いことから、発酵を行いにくいバイオマスである厨芥ゴミ、野菜等を一次加工した後の残渣、果実等の搾汁残渣などの生鮮食品加工後の残渣、醤油かす等の発酵残渣、骨粉等の動物性廃棄物、家畜糞尿、メタン発酵廃棄物などに適用することができる。このことは、用途開発が極めて困難なバイオマスを混合し、部分的に用いた固形化素材の製造が可能であることを意味する。
【0033】
成形時には、バインダー活性をもつ物質は試料内に均一に分散していることが望ましい。そのため、適宜、可溶化剤の添加による有効成分の可溶化処理や混合・分散化処理等を行う工程を追加することが考えられる。また、固形化素材の品質を整えたり、その有用性を高めたりするために、適宜、副成分を添加することは容易に想到される。
例えば、肥料の場合は、栄養となる無機成分等の添加、飼料の場合は、嗜好性向上のための調味物質等の添加、有効性の高い発酵培地源とするためには、成分調整する等が例として挙げられる。
【0034】
固形化素材の物理的あるいは化学的安定性とは、固形化素材の貯蔵、運搬、使用時において、その形状が崩れたり化学的に劣化しない性質を指す。固形化素材の製造時には、振動安定性や衝撃安定性などの物理的安定性を高めるため、弾力・可塑性を付与する成分を適宜発酵生産するか、副成分として添加することが望ましい。
可塑性を付与する成分としては、例えば、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール、乳酸、リンゴ酸等の有機酸、尿素等が考えられる。良質なバインダー活性をもつ物質の発酵生産とともに、可塑性を付与する成分を発酵生産することができれば、副成分の添加を抑えることが可能となる。
【0035】
固形化素材を肥料や土壌改質材として利用する場合、例えば、バイオマス中の有機物分解や脱窒、窒素固定等によるC/N比の制御、遅効性窒素である有機物系窒素分の生産や、土壌の団粒化活性をもつ成分の放出がメリットとなる。また、緩衝能をもつ物質による土壌pHの安定化、微生物由来のキチンやペプチドグリカン等による放線菌等の特定の有用微生物の増殖活性の付与、キチンオリゴ糖などによるエリシター活性の付与等も挙げられる。ポリグルタミン酸は、保水性や粘着性が高く、土壌粒子のバインダー活性が期待されている。また、ポリペプチドとして遅効性窒素としての役割を果たすと考えられる。例えば、ポリグルタミン酸を生産させたバイオマスの発酵物を用いて、穏和な条件で調製した固形化素材は、水に浸すことにより容易にポリグルタミン酸を遊離することから、肥料効果や土壌改良効果が高いと考えられる。
【0036】
固形化素材の飼料としての利用や発酵培地源として利用する場合の特性の向上に寄与する発酵工程としては、バイオマスを用いた栄養成分、易消化性成分やビタミン等の発酵合成や食味・食感・風味等の改良等が考えられる。より具体的には、消化性向上のための澱粉や植物細胞壁構成成分等の低分子化、必須アミノ酸、有機酸、アルコール、リボフラビン、ビタミン、ユビキノン等の発酵生産や腸内細菌の栄養源となり得る機能性成分等の発酵生産、さらに、飼料の場合には、プロバイオティクス作用を持つ腸内有用菌の前培養を目的とした発酵変換等を利用することができる。
微生物やビタミン、微量有効成分などの熱に弱い成分を固形化素材に含有させる場合には、低温での乾燥を行う、半乾燥状態にする、乾燥終了直前や終了後に培養液を混合する等、処理方法に工夫をすることが望ましい。また、全ての用途開発において共通であるが、バイオマスを発酵生産する場合には、マイコトキシンやエンドトキシン等、その工程により生成する多様な成分や微生物自身の毒性に注意する必要がある。
【0037】
固形化素材の肥料、土壌改質剤や飼料としての利用に対して特性の発揮が期待できる微生物としては、例えば、Brevibacterium属菌, Proteus属菌, Rhizopus属菌, Bacillus属菌, Pseudomonas属菌, Alkaligenes属菌, Corynebacterium属菌Arthrobacter属菌, Saccharomyces属菌, Zymomonas属菌, Lactobacillus属菌, Serratia属菌, Aerobacter属菌, Aspergillus属菌, Penicillium属菌, Acetobacter属菌, Gluconobacter属菌, Streptococcus属菌, Leuconostoc属菌, Pediococcus属菌, Methylobacillus属菌, Methylobacterium属菌, Flavobacterium属菌, Pichia属菌, Rhizobium属菌, Streptomyces属菌, Agrobacterium属菌, Erythrobacter属菌, Candida属菌, Eremothecium属菌等が挙げられる。
これらの微生物の代謝経路を直接利用して発酵を行うか、遺伝子工学、代謝工学等の公知の技術を用いた資化性の改変または資化菌への新能力付与を行うことができる。
【0038】
固形化素材の炭化特性や燃焼特性の利用については、用途に応じたバインダーの発酵生産が重要になるほか、固形化素材の高熱処理時の形状安定性や燃焼効率向上に係る発酵変換や、脱窒菌、脱硫菌などにより副生物となる窒素系化合物や硫黄系化合物の生産を減らすための発酵変換等が重要となる。
【0039】
本発明における発酵工程を中心とした工程の開発により、効率的な固形化素材の製造が可能となる。公知の機械製造技術を用いることにより、本発明におけるバイオマスの変換法を検討した後に決定される発酵条件や、バイオマスの前処理、発酵生成物の物性に応じた貯蔵・輸送条件、他の素材との混合条件、成型処理条件、成型物の貯蔵・輸送条件等に合わせ、製造工程を最適化するための装置の開発が可能となることは明らかである。
【実施例】
【0040】
以下に実施例を示して本発明をさらに詳しく説明する。ただし、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
LB液体培地(組成:1% Bacto-tryptone, 0.5% Yeast extract, 1% NaCl)に寒天(2%)を加えて調製した寒天培地(LB寒天培地)へ、ゲランガム等のゲルの生産菌であるPseudomonas elodea ATCC 31461株を接種して32℃で増殖させた後、単一コロニーを10 mlのLB液体培地に接種し、32℃において一晩振とう培養した。その後、培養液1 mlを2%(風乾重量)のオカラと0.3%のYeast extract, 0.5%のPeptone, 0.3%のNaClを含む培地に接種し、32℃で180回転/分で振とう培養を行った。菌体の培養液の代わりに、LB液体培地を1 ml接種したものをコントロールとした。3日目の菌体培養物およびコントロールから、1.5 mlを取り出し、木粉(風乾した割り箸を微粉砕したもの(鉛筆削り機使用))0.2 gにかけて、その後スパーテルで混合した。これを手で縦20 mm, 横10 mm, 高さ9 mm程度の団子状に整形し、ホットプレート上に置いて150℃にて30分間加熱乾燥させた。乾燥後、両者を取り出し、室温に冷却した。この団子状のペレットの中央部を、FRUIT HARDNESS TESTERを用いて5 kg/cm2で10秒間加圧(加圧面積約0.20 cm2)する操作を10回行った結果、コントロールのペレットは3つに割れて崩壊したが、菌体培養液の方のペレットは崩壊しなかった。
【0042】
(実施例2)
実施例1と同様に、LB寒天培地へP. elodea ATCC 31461株を接種して32℃で増殖させた後、単一コロニーを10 mlのLB液体培地に接種し、32℃において一晩振とう培養した。その後、培養液1 mlを2%(風乾重量)の植物細胞壁成分であるセルロース微粉末と0.3%のYeast extract, 0.5%のPeptone, 0.3%のNaClを含む培地に接種し、32℃で180回転/分で振とう培養を行った。一方、菌体の培養液の代わりに、LB液体培地を1 ml接種したものをコントロールとした。
3日目の菌体培養物およびコントロールの培養液全体のそれぞれを遠心分離(5,500回転/分、15分間、(株)日立製作所製)した後、沈殿部1.5 mlを残して上澄みを除いた。得られた沈殿部を木粉0.2 gとスパーテルで混合した。次いで、この混合物を手で縦20 mm, 横10 mm, 高さ9 mm程度の団子状に整形し、ホットプレート上に置いて150℃にて30分間加熱乾燥させた。
乾燥後、両者を取り出し、室温に冷却した。この団子状のペレットの中央部を、FRUIT HARDNESS TESTERを用いて9 kg/cm2で10秒間加圧(加圧面積約0.20 cm2)する操作を1回行った結果、コントロールのペレットは徐々に割れてセルロース微粉末が飛び散り崩壊したが、菌体培養液由来のペレットは崩壊が全く起こらなかった。
【0043】
(実施例3)
LB寒天培地へポリグルタミン酸生産菌(納豆菌)であるBacillus subtilis NAFM5株を接種して37℃で増殖させた後、単一コロニーを10 mlのLB液体培地に接種し、37℃において一晩振とう培養した。その後、培養液1 mlを5 g(風乾重量)のオカラに対して15 mlの1%のグルコースと1%のグルタミン酸ナトリウムを含む培地をかけた後にオートクレーブ滅菌した培地に接種し、37℃で静置培養を行った。一方、菌体の培養液の代わりに、LB液体培地を1 ml接種したものをコントロールとした。
6日目の菌体培養物およびコントロールから、培地0.4 gを取り、1.5 mlの水に懸濁したものを、実施例1に記載した0.2 gの木粉にかけた後、これをスパーテルで軽く混合し、混合物を手で縦24 mm, 横14 mm, 高さ7 mm程度の団子状に整形し、ホットプレート上に置いて150℃にて30分間加熱乾燥させた。
その後、両者を取り出し、室温に冷却した。この団子状のペレットの中央部を、FRUIT HARDNESS TESTERを用いて2.5 kg/cm2で1秒間加圧(加圧面積約0.20 cm2)する操作を1回行った結果、コントロールのペレットは崩壊して木粉が飛散したが、菌体培養液由来のペレットは崩壊が起こらなかった。
【0044】
(実施例4)
実施例3における菌体培養終了後の菌体培養物およびコントロールの試料をそれぞれ1.0 g取り出し、5 mlプラスチックシリンジ(テルモ株式会社製、針なし、中口)に入れて、先端部に移動させた。このシリンジのプランジャー部分をFRUIT HARDNESS TESTERを用いて押して、先端からスムース(1 mm/秒以上)に試料が排出される時の圧力を測定した結果、菌体培養物では0.17 kg/cm2であったのに対して、コントロールの試料ではその10倍以上の1.9 kg/cm2の圧力を要した。このことから、バイオマスの菌体培養による操作性の向上が認められた。
【0045】
(実施例5)
実施例3における菌体培養終了後の菌体培養物およびコントロールの試料をそれぞれ0.6 g取り出し、これを実施例1において調製した木粉0.6 gおよび水を0.2 mlとともに混合した。1.0 ml容プラスチックシリンジ(テルモ株式会社製)の先を切り、先端の内径をシリンジの全体の内径と同じ長さにしたものを用意し、これに上記の混合物を詰めた後に押し出し、直径4 mm、長さ12 mm程度のペレット状に成形した。これをホットプレート上、150℃、30分間処理して乾燥させ、乾燥ペレットとした。各々の試料から作った乾燥ペレット3個を50 ml容プラスチックチューブに入れた後、10分間上下に激しく振ったが、双方とも崩れなかった。さらに、各々の試料から作った乾燥ペレット2個を50 ml容プラスチックチューブに入れた後、水を10 ml加えてフタを閉め、これを28℃で120往復/分、12時間振とうした。これを室温で7日間放置した後、ボルテックスミキサーを用いて10秒間撹拌した結果、菌体培養物由来のペレットは完全に崩壊して木粉が分散し、水中での崩壊性が高いことが明らかとなったが、コントロールのペレットは殆ど崩壊しなかった。
【0046】
(実施例6)
実施例1において調製した木粉1.0 gを100 ml容三角フラスコに入れて、これに2%Peptone、0.1%Yeast Extractおよび0.5%MgSO4・7H2Oを含む水溶液を1 mlと、0.7%K2HPO4および0.3%KH2PO4を含む水溶液1 mlを加えた後、シリコン栓を閉めてオートクレーブ(121℃、20分間)したものを培地とした。この培地にTrichoderma reesei NBRC 31329の生育したPDA培地スラントから菌糸を含む5 mm角の寒天ブロックを接種し、32℃で8日間静置培養した。菌糸の付いた寒天ブロックを接種しない培地をコントロールとした。培養後、各々の培養物を取り出し、これを実施例3の方法にならい、縦24 mm, 横14 mm, 高さ7 mm程度の団子状に整形し、ホットプレート上に置いて150℃にて30分間加熱乾燥させた。
その後、両者を取り出し、室温に冷却した。この団子状のペレットの中央部を、FRUIT HARDNESS TESTERを用いて5 kg/cm2で1秒間加圧(加圧面積約0.20 cm2)する操作を1回行った結果、コントロールのペレットは崩壊して木粉が飛散したが、菌体培養液由来のペレットは崩壊が起こらなかった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明により、農林水産業、食品産業を中心とした生物系産業において生ずる廃棄物資源であるバイオマスを固形化する技術が提供される。しかも、得られた固形化素材を高付加価値化して肥料、飼料など様々な分野で有効利用することができる。