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明細書 :小型ステレオ超音波受信装置を用いた物体との相対位置を連続して測定する方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4811916号 (P4811916)
公開番号 特開2007-170989 (P2007-170989A)
登録日 平成23年9月2日(2011.9.2)
発行日 平成23年11月9日(2011.11.9)
公開日 平成19年7月5日(2007.7.5)
発明の名称または考案の名称 小型ステレオ超音波受信装置を用いた物体との相対位置を連続して測定する方法
国際特許分類 G01S   5/22        (2006.01)
FI G01S 5/22
請求項の数または発明の数 1
全頁数 7
出願番号 特願2005-369121 (P2005-369121)
出願日 平成17年12月22日(2005.12.22)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 1.Marine Technology Society Journal 「Summer 2005 Volume 39,Number 2,p.3-9」に発表 2.2005年8月第一週インターネットURL http://www.mtsociety.org/publicatins/abstract_details.cfm?ID=705を通じて発表
審査請求日 平成20年7月10日(2008.7.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501168814
【氏名又は名称】独立行政法人水産総合研究センター
発明者または考案者 【氏名】赤松 友成
個別代理人の代理人 【識別番号】100133905、【弁理士】、【氏名又は名称】石井 良夫
【識別番号】100090941、【弁理士】、【氏名又は名称】藤野 清也
【識別番号】100076244、【弁理士】、【氏名又は名称】藤野 清規
【識別番号】100113837、【弁理士】、【氏名又は名称】吉見 京子
【識別番号】100127421、【弁理士】、【氏名又は名称】後藤 さなえ
審査官 【審査官】河内 悠
参考文献・文献 特開昭62-120194(JP,A)
特開平01-219684(JP,A)
特開平05-281354(JP,A)
特開2005-069892(JP,A)
特開2002-286841(JP,A)
特開昭61-281987(JP,A)
特開昭49-047184(JP,A)
特開平02-176487(JP,A)
調査した分野 G01S 5/18- 5/30
7/52- 7/64
15/00-15/96
特許請求の範囲 【請求項1】
CPU、帯域通過フィルタ、アナログデジタル変換器、メモリからなる回路、及び駆動用電池を防水ケース内に収納し、2個のハイドロホンをケース内の前記回路と接続し、前記メモリの一部に、ハイドロホンで受信した音声信号を前記CPUで処理して、その振幅と時刻をメモリに記録するプログラムソフトを格納した装置、及び該装置を測定位置に所定時間固定する手段及び該装置を水面に浮上させる手段を備える小型ステレオ超音波受信装置を、水中遊泳動物に装着し、当該動物と近接して存在する音を発生する物体との相対位置を連続して測定する方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイドロホンを2個備えた小型ステレオ超音波受信装置及びそれを用いる水中物体の相対的位置を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電波を用いたGPSが利用できない水中での物体の位置測定には、音波が利用される。
水中の物体それ自体が音波を発生しない場合は外部から音波を物体に照射し、その反射音を計測するアクチブソーナーが使用され、物体が発音体である場合には、音源が放射している水中音響信号を受信するパッシブソーナーが使用され、物体までの距離が測定される。
アクチブソーナーはその目的により、伝播損失の少ない低周波を用い数十km離れた潜水艦を探知するものから、数百kHzの高周波を用い目標物体の形状を認識するものまで、多くの種類が、防衛分野、海洋開発分野で実用化されているが、送受信設備を必要とするので大型化し、目標物体が発信される音波を検知してしまうという問題がある。
これに対し、パッシブソーナーは、相手に悟られることなく目標の監視・探索を行うことができ、主として軍事用利用の面で発達してきたが、最近では海底火山活動や地震の監視、生物の鳴音の観察などの分野で活用されている。しかしながら、パッシブソーナーでは受信した音響信号の複数のハイドロホンへの到達時間差から水中位置を解析するため、陸上局と接続する海底ケーブルを設置したり、測定船にハイドロホンアレイを設置したり、受信した音響信号を電波で伝送する手段が必要となる。
このように水中での物体の位置を計測するためには、通常、大規模な音響送受信システムを必要とした。
【0003】
ところで、水中を遊泳する動物の位置を測定するため、小型の超音波発信器(ピンガー)を動物に装着し、船舶などでこれを追跡しながら測定するバイオテレメトリは、特定の対象について詳細な生態的情報をうることができ、従来から広く採用されている。標識音のみのピンガーの例では半径8.5mm、長さ33mm、寿命10日間程度のものが実用化されている(非特許文献1)が、検知レベルは30mから500mであり、この範囲内で船舶が追跡可能な動物に限られ、また超音波に敏感な動物では標識音により動物の行動が変化し、音圧レベルによっては威嚇反応が認められるという問題があった。また、群れで遊泳する動物の相対位置を測定するには、すべての動物にピンガーを装着する必要があり、しかも群れの離合が生じた場合、一艘の追跡船ですべての動物の位置を追跡することは事実上不可能であった。
【0004】
一方、水中を遊泳する動物からの生物音波を受信し、その位置や深度を計測する方法も
提案されている(特許文献1)が、大型のブイを利用するもので、動物に直接装着できる
ような小型の超音波受信装置は知られていない。

【特許文献1】特表平5-509404号公報
【非特許文献1】音響学会編「海洋音響の基礎と応用」成山堂書店、平成16年4月28日発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、小型で軽量の超音波受信装置、特に水中を遊泳する動物に直接装着することが可能な小型で軽量の超音波受信装置を提供することである。
本発明の他の目的は、上記小型で軽量の超音波受信装置を利用して、海洋生物や海洋観測装置、あるいは漁具などのあらゆる水中物体の相対位置を計測する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本件発明者は、受信信号の振幅と時刻を記録するイベントレコダーとすることにより、小型のメモリであっても長時間の記録が可能となり、またハイドロホンを2つ設置することにより機器装着動物による発声音と周辺個体による発声音を弁別し、帯域通過フィルタと閾値検出によりS/N比を大幅に向上できることに着目し、本発明に至った。
本発明の小型ステレオ超音波受信装置は、2個のハイドロホン、防水ケース内に収納したCPU、帯域通過フィルタ、アナログデジタル変換器、メモリからなる回路、及び駆動用電池を有し、2個のハイドロホンがリード線を介して前記防水ケース内の電子回路と接続され、前記メモリの一部に格納したプログラムソフトによりハイドロホンで受信した音声信号を前記CPUで処理し、その振幅と時刻をメモリに記録するよう構成されている。ハイドロホンは脱着式で、対象とする音波の周波数特性にあわせ選択可能である。
本発明の小型ステレオ超音波受信装置は、市販のCPU,メモリを使用し、約60時間の連続記録が可能であり、重量も80g以下とすることができる。
【0007】
本発明の小型ステレオ超音波受信装置を複数の個体に取り付け、基準点となる物体にピンガーなどの小型音響発信器を取り付け、音波の時間差から基準点から観測対象までの距離と方位を計測でき、基準点がイルカやクジラ、あるいは多くの魚類のように音を発生する生物であれば、その鳴音を測距信号として用いることで、発信器の装着が不要となる。
また、水中を遊泳する動物に直接装着する場合、所定時間後に本発明の小型ステレオ超音波受信装置が動物から自然脱落し、回収できるような手段を講じておくことにより、受信した音響データを取得することができる。例えば、動物への装着には吸盤やタイマー式自動切り離し装置付きの取り付け治具を使用し、脱落後に浮上するよう本発明の小型ステレオ超音波受信装置を浮力材で覆い、回収を容易にするための小型発信器を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本装置を使用し、2つのハイドロホンで受信した信号を帯域通過フィルタで目的とする周波数帯域を抽出し、閾値比較回路で高音圧信号のみを記録することにより、音源からの信号と雑音を簡単に排除できる。
さらに、2つのハイドロホンで受信した同一信号の時間差から、音源の方向、および複数の本装置を組み合わせることで音源との相対距離を連続して長時間計測することができる。
本発明の装置を使用することにより、クジラ、マグロ、くらげなどの海洋中での群集行動を直接計測することが可能となり、さらに、海中敷設を行った漁具の位置計測、漁具に対する魚群行動の計測といった漁業的な応用、複数のAUV、ROVなどの海中ロボットの協調的オペレーション、マリンデブリなど海中浮遊物体や深層海流の局所的な挙動など、これまできわめて困難とされていた水中でのさまざまな位置計測が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の小型ステレオ超音波受信装置を図面で説明する。金属製の筐体の内部を隔壁により区画し防水室とし、該防水室内にAD変換器、CPU、メモリなどを装着した基板、及びCPUを駆動する電池を配置する。2個のハイドロホンは防水プラグを介してプリアンプ、帯域通過フィルタ、アナログデジタル変換器を経たのちCPUで必要な数値情報にが計算される。一方のハイドロホンは前方に他方のハイドロホンは後方に適宜の手段で固定する。
【0010】
本装置を深海で使用する場合や、クジラなどの深海まで潜る動物に本発明の受信装置を装着する場合には、防水室の耐圧を高めておく必要がある。
また、ハイドロホンのリード線は、隔壁に設けた防水コネクタにより本体と脱着可能な構成であるため、測定目的に応じて異なった特性のハイドロホンを使用することができ、異なった周波数の声を出すイルカやクジラ、あるいはピンガー毎に対応することが可能となり、ハイドロホンの固定位置も自由に変えることができるような構成を採用すれば、観測したい音の到来方向にあわせて、ハイドロホンの位置を調整できる。
【0011】
さらに、本体メモリに格納してある制御用プログラムソフトも書き換え可能なので、同じハードウェアでありながら異なった機能をもたせることができ、バージョンアップもソフトで対応することができる。例えば、上記プログラムソフトに、一定の時間ごとに計測を行う、インターバル計測機能を付加すれば、1ヶ月から1年程度の長期間計測が可能となる。共振特性の異なる2つのハイドロホンを用いれば、異なる周波数成分の強度比較も可能である。
【0012】
本発明の小型ステレオ超音波受信装置を水中遊泳動物に所定時間装着する手段としては、可撓性吸盤が好ましい。イルカなどの肌は非常に滑らかなので吸盤により簡単に装着することができ、数十時間持続して装着させることができる。吸盤はその後、動物の肌表面から自然脱落するので、受信音波を記録した本体を回収できるよう、本体に発泡材等の浮上手段を取り付け、脱落後本体が水面に浮上するようにする。また、浮上した本体位置が容易に確認できるよう、VHF発信器を備え、前記浮力材は水面に本体が浮上した際、VHF発信器のアンテナが水面上に露出するように取り付ける。海洋生物への機器装着方法については、ひれや体側への縫いつけ、体毛への接着などの手法もある。動物の体に装着した支持板と本装置とをタイマー式切り離し装置を介して接合すれば、あらかじめ浮上時刻を設定することも可能である。
【0013】
本発明の小型ステレオ超音波受信装置を利用して水中遊泳動物の相対位置を連続して想定するには、少なくとも3頭の水中遊泳動物に本発明の小型ステレオ超音波受信装置を吸盤によって装着する。例えば、イルカでは数頭が群れをなして遊泳し、それぞれのイルカが鳴音を発するので、複数の本発明の装置が録音したデータから音源方位を解析することにより、本発明の装置を装着したイルカに対し、それぞれのイルカがどの方向に位置しながら遊泳しているのかを知ることができる。
イルカは、10万分の5秒という短い超音波を発する。本発明の装置ではこの超音波を受信した時刻とその振幅を記録する。その際、適当な閾値を設けることにより雑音を排除する。2つのハイドロホンで録音されたこれらのデータをマッチングさせることで、水中での同所性や距離が計測できる。
【実施例1】
【0014】
[本発明の小型ステレオ超音波受信装置の作成]
アルミで直径22mmφ×120mmの筐体を作成し、筐体内にリチウム電池(CR123)、CPU
(PIC18F6620)、256MBフラッシュメモリ、A/D変換器、ハイドロホン用バンドパスフィルタ(70から300kHz)を装着した基板を挿入し、アルミ製の隔壁により内部防水室とする。ハイドロホン(システム技研製、-210dB/V感度)をリード線で本体と接続する。この状態での重量は77gであった。
水中遊泳動物の観測に使用する場合は、本体に吸盤(82mm径、製品番号40-1525-3-0、カナディアンタイヤ社製)、浮力材(カネカ社製、発泡塩化ビニル、Klegecell#55、耐圧80N/cm 2)、VHF送信機(MM130、アドバンスト テレメトリー システムス社製)を取り付けた。この状態での水中抵抗は、1m/sの速度で56gFであった。
【実施例2】
【0015】
[本発明の小型ステレオ超音波受信装置を使用したスナメリの軸外ソナービームパターンの計測]
実施例1で得られた小型ステレオ超音波受信装置(2個のハイドロホンは装置の前後に配置)を使用して、中国湖北省の三日月湖において、8頭の自由遊泳するスナメリのソナービームパターン(ソナー信号の強度の体軸正面方向からの角度依存性)を計測した。
本実験では本受信装置のほか、スナメリの遊泳速度、遊泳水深を記録する行動用データロガー(直径21mm、長さ114mm、質量60g)も使用し、スナメリの体の動きに比較的影響を受けにくい胸びれの後方上側に装着した。
本システムを回収では、湖畔の3階建てのフィールドステーションの屋上に設置された2つのアンテナ(RX-155M7/W,Radix社製)を用いて電波受信を行い、連続的に電波が受信されたとき、本装置が水面に浮上しているとした。回収作業は、スナメリへの行動の影響を避けるため、放流後6時間以上経過してから行った。
本装置と行動用データロガーの同時記録時間は、個体によって1時間から35時間(平均8.75時間)で、合計2425095個のパルスと、49470個のパルス列、及び5113回の潜水を記録した。
メモリに記録された2個のハイドロホンへの音波の到着時間差から音源方向を計算し、近くの個体からの音声を排除した。
ダイナミックレンジは129dBから157dBであり、136dB以下の小さな信号、例えば水面反射音は後の解析で排除した。
スナメリの呼吸時の水しぶき音は、0.3m以下の潜水深度の時刻と比較することにより排除した。
以上の結果、スナメリは平均で5.1秒ごとにパルス列を発していることが判明した。
【実施例3】
【0016】
[本発明の小型ステレオ超音波受信装置を使用したスナメリの相対位置の計測]
スナメリの母子を上述の湖にて本装置を装着した後に放流し、母親に装着した本装置に記録された子供の声と、その逆を比較した。記録された音の時間差と水中の音速から、互いの距離を計測することができた。スナメリの母子は、ときに40m以上離れることがあるが、互いの音声を利用してすみやかに再合流できることがわかった。
【実施例4】
【0017】
本装置を互いに垂直に複数台組み合わせることにより、簡易なハイドロホンアレイを構成することが出来た。小型船舶より本装置群を水中に鉛直に垂下し、半径100mを遊泳するスナメリの個体群内で鳴いている各個体の遊泳軌跡を観測することが出来た。従来、複雑な電子回路と高度な知識を必要としたハイドロホンアレイの構成が、本装置を用いることで容易かつ多様な現場環境で応用することが可能になった。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明の超音波受信装置は小型、軽量であるので、取り扱いが容易であり、水中遊泳動物に装着した場合にも負担が少なく、従来測定不可能であった計測が可能となり、有用性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の小型ステレオ超音波受信装置の内部機器構
【図2】水中音の信号処理方法とパルス列の記録イメージ
図面
【図1】
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【図2】
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