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明細書 :オリゴ糖又は単糖の増強された食品又は食品素材と、その製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4742343号 (P4742343)
公開番号 特開2007-189944 (P2007-189944A)
登録日 平成23年5月20日(2011.5.20)
発行日 平成23年8月10日(2011.8.10)
公開日 平成19年8月2日(2007.8.2)
発明の名称または考案の名称 オリゴ糖又は単糖の増強された食品又は食品素材と、その製造方法
国際特許分類 A23B   7/10        (2006.01)
A23L   1/226       (2006.01)
C12N   9/42        (2006.01)
FI A23B 7/10 A
A23L 1/226 D
C12N 9/42
請求項の数または発明の数 2
全頁数 23
出願番号 特願2006-011059 (P2006-011059)
出願日 平成18年1月19日(2006.1.19)
審査請求日 平成20年9月26日(2008.9.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明者または考案者 【氏名】徳安 健
個別代理人の代理人 【識別番号】100086221、【弁理士】、【氏名又は名称】矢野 裕也
審査官 【審査官】光本 美奈子
参考文献・文献 特開平05-230092(JP,A)
特開2000-125858(JP,A)
特開2002-191315(JP,A)
特開平07-203901(JP,A)
Plant Science, vol.167, p.1263-1271 (2004)
Phytochemistry, vol.61, p.295-300 (2002)
キチン・キトサン研究, vol.12, p.104-105 (2006)
農林水産技術研究ジャーナル, vol.30, p.16-20 (2007)
Biosci. Biotechnol. Biochem., vol.60, p.194-199 (1996)
Nippon Suisan Gakkaishi, vol.53, p.1033-1037 (1987)
調査した分野 A23B 7/10
A23L 1/27~1/308
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
PubMed
特許請求の範囲 【請求項1】
キムチに、基質としてアミノ糖残基を含有する多糖或いはその部分分解物を添加し、キムチに含まれる酵素を用いて前記基質を低分子化処理することを特徴とする、オリゴ糖又は単糖の増強されたキムチの製造方法。
【請求項2】
アミノ糖残基を含有する多糖或いはその部分分解物が、キチン又はその部分分解物であり、オリゴ糖又は単糖がN-アセチル-D-グルコサミンである、請求項1記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、オリゴ糖又は単糖の増強された食品又は食品素材と、その製造方法とに関し、詳しくはオリゴ糖又は単糖の増強された食品又は食品素材の製造方法、前記方法により製造された、オリゴ糖又は単糖の増強された食品又は食品素材、並びに、食品又は食品素材からの酵素の製造方法に関する。
より詳しくは、本発明は、アミノ糖残基を含有する多糖やその部分分解物から、機能性食品成分としてのオリゴ糖又は単糖等の低分子化物を製造するための技術を提供することにより、機能性食品又は機能性食品素材の開発に繋げることを主目的としている。食品加工工程において副生される農林水産物・食品素材由来の素材、或いは食品素材から酵素を抽出することにより、該酵素を用いた食品加工技術が多様化するのみならず、廃棄物、未利用資源の有効利用にもつながる。
【背景技術】
【0002】
我々は、アミノ糖含有糖質を日常的に食している。アミノ糖残基を含有する多糖としては、キチン、キトサン、ペプチドグリカン、微生物多糖、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、或いはこれらの塩などが知られている。これらは、家畜や魚介類などの動物、或いは納豆、乳酸菌、麹、酵母などの微生物由来の食品素材の構成成分となっており、安全性は十分に高いと考えられているが、ヒトによる消化性が低いことから、栄養性食品素材としての用途は殆ど開発されてこなかった。
【0003】
しかしながら、機能性食品開発が活発化する中で、キトサンのコレステロール吸収抑制作用が特定保健用食品の「関与する成分」となった他、キチンやキトサンの分解物であるN-アセチル-D-グルコサミンやグルコサミン塩の関節障害改善作用、キトサンオリゴ糖の抗菌作用、キチンオリゴ糖のプレバイオティックス活性、ヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸等のヘリコバクター・ピロリの感染防止効果などについて多くの研究成果が蓄積されつつある。このように、アミノ糖含有多糖やその分解物について、注目が高まりつつある。
【0004】
このような中で、アミノ糖残基を含有する多糖から、対応するオリゴ糖または単糖を調製する技術が開発されてきた。
【0005】
N-アセチル-D-グルコサミンについては、甲殻類、イカや微生物細胞壁等から精製されるキチンを原料にして調製される。キチンを低分子化して、キチンオリゴ糖を調製することにより、ある程度の量のN-アセチル-D-グルコサミンが生成する。
その典型的な方法としては、以下の方法が考えられる。破砕した甲殻類の外殻を希塩酸で脱灰した後、NaOHで除蛋白し、濃塩酸で部分加水分解することによりキチンを低分子化する。その後、NaOHで中和し、活性炭で脱色、濾過した後に脱塩して脱アセチル化糖などを除去し、イオン交換樹脂で精製する。
【0006】
しかしながら、この方法で用いる酸加水分解では、N-アセチル基の脱離が起こり、最終的にはグルコサミン塩にまで変換されることから、反応条件に関する詳細な条件検討を行う必要がある。
【0007】
それに対して、酵素を用いてキチン又はキチンオリゴ糖からN-アセチル-D-グルコサミンを高収率で調製する方法が報告されている。この酵素法では、N-アセチル基の脱離が起こらず、定量的にN-アセチル-D-グルコサミンが製造できると期待される。酵素については、細菌、放線菌、カビなどに広く分布することが知られており、リゾチーム、ヘミセルラーゼ等の市販酵素製剤に混入している酵素や市販キチナーゼ製剤、市販キトビアーゼ、放線菌またはトリコデルマ属菌の培養物等を利用する方法が考案されている。
【0008】
現在までに、例えば特許文献1~5が報告されている。
特許文献1は、N-アセチル-D-グルコサミンやキチンオリゴ糖を含むキチン分解物の食品素材としての用途に関するものであり、放線菌による低分子化について記載している。
特許文献2は、キチンオリゴ糖を酵素製剤等により分解することを特徴とするN-アセチル-D-グルコサミンの製造法に関する。
特許文献3は、膜透析で精製することを特徴とする天然型N-アセチル-D-グルコサミンの製造法に関する。
特許文献4は、非晶質キチンを基質とするトリコデルマ酵素とリゾチームによるN-アセチル-D-グルコサミンの製造に関する。
特許文献5は、市販酵素製剤や微生物培養物等によるキチンオリゴ糖の酵素分解等を特徴とするN-アセチル-D-グルコサミンを含有する糖組成物の製造法と飲食品に関する。
【0009】
しかしながら、これら特許文献1~5に記載された発明は、食品素材由来の酵素や食品加工工程における副生成物中に存在する酵素等の利用による、食品中のN-アセチル-D-グルコサミンの増強技術を想定しておらず、特に、キムチなどの発酵食品中に存在する酵素活性を利用したり、廃棄物となる魚介類の内臓部分を利用するような、今回の発明の内容については検討されていない。また、食品由来の酵素を用いた場合、反応生成物の精製を行わずに調味性等の付加価値をもった混合物として利用することが可能であるが、前述した先行発明においては、このような新たな用途については全く考慮されておらず、食品素材からの酵素の探索も行われていない。
【0010】
また、ヒアルロン酸オリゴ糖又はコンドロイチン硫酸オリゴ糖、並びにその塩の製造法については、対応する多糖を基質とした化学的加水分解法及び酵素的低分子化法が知られている。
N-アセチル-D-グルコサミンと同様に、化学的方法では、N-アセチル基の脱離等が起こり、反応条件の詳細な検討が必要となることから、主に酵素法が検討されてきた。コンドロイチン硫酸或いはその塩の分解酵素の複数が、ヒアルロン酸或いはその塩の分解酵素活性を有することが知られている。また、低分子化酵素には、加水分解酵素(ヒドロラーゼ)と脱離酵素(リアーゼ)の2種類が知られており、後者を用いた反応では、非還元末端側に不飽和結合をもつ糖鎖が生成することが特徴となる。これまでに、フラボバクテリウム属菌などの細菌、放線菌、ウシ・ヒツジの睾丸、ヒル等に由来する酵素が報告されている。
【0011】
酵素を用いたオリゴ糖の製造方法については、例えば特許文献6~8が報告されている。
特許文献6は、ヒアルロン酸分解酵素を用いて作用させた後、限外濾過膜を用いて分離する方法に関する。
特許文献7は、分解酵素の糖転移活性を抑えてオリゴ糖収率を向上させるための膜の使用を特徴とする製造方法に関する。
特許文献8は、ヒト由来の酵素を用いたオリゴ糖の製造方法に関する。
【0012】
しかしながら、これらのアミノ糖残基を含む多糖又はその部分分解物の酵素による低分子化技術については、食品への使用を認められた酵素製剤でなく、市販の研究用酵素製剤を用いることを想定している。これらの変換技術を食品素材に対して用いる場合、食品の安全性に配慮し、製造後に酵素製剤等から反応生成物を分離する必要がある。
従って、これらの既存技術は、反応分解物全体を食品の製造に用いることを想定した発明として構成されていない。また、既存の技術では、酵素を調達する際に、細菌、放線菌やヒルでは生物体の培養等による酵素生産が必要であり、また、ウシ・ヒツジの睾丸由来の酵素は材料調達に難があるため、食品素材等の大量消費素材としてのオリゴ糖の製造は困難が伴う。
【0013】

【特許文献1】特公平7-102100号公報
【特許文献2】特公平5-33037号公報
【特許文献3】特開2000-281696号公報
【特許文献4】特許第3170602号公報
【特許文献5】特開2005-80605号公報
【特許文献6】特開平11-124401号公報
【特許文献7】特開2003-339393号公報
【特許文献8】特開平9-168384号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記従来の問題点を解消し、アミノ糖残基を含有する多糖やその部分分解物から、機能性食品成分としての単糖又はオリゴ糖等の低分子化物を、安全に、しかも困難を伴うことなく容易に製造する方法を提供することを目的とするものである。
さらに本発明は、有用オリゴ糖や単糖を含む反応生成物からそれらを単離することなく、そのまま食品素材或いは食品として活用する方法を提供することも可能とする技術の提供を目的とするものである。
【0015】
発明者らは、このような従来の問題を解決するために鋭意検討を行った結果、食品素材からアミノ糖残基を含む多糖又はその部分分解物の分解酵素を探索し、これを用いて加水分解を行うことによって、有用オリゴ糖や単糖を調製することを特徴とする食品素材又は食品の製造技術を開発するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1に係る本発明は、キムチに、基質としてアミノ糖残基を含有する多糖或いはその部分分解物を添加し、キムチに含まれる酵素を用いて前記基質を低分子化処理することを特徴とする、オリゴ糖又は単糖の増強されたキムチの製造方法を提供するものである。
請求項2に係る本発明は、アミノ糖残基を含有する多糖或いはその部分分解物が、キチン又はその部分分解物であり、オリゴ糖又は単糖がN-アセチル-D-グルコサミンである、請求項1記載の方法を提供するものである。

【発明の効果】
【0017】
本発明の方法によれば、アミノ糖残基を含有する多糖やその部分分解物から、機能性食品成分としての単糖又はオリゴ糖等の低分子化物を、安全に、しかも困難を伴うことなく容易に製造することができる。
また、本発明の方法によれば、有用オリゴ糖や単糖を含む反応生成物からそれらを単離することなく、そのまま食品素材或いは食品として活用することが可能となる。また、これらの酵素を、食品加工工程において副生される農林水産物・食品素材由来の素材から抽出することにより、バイオマスからの高付加価値素材の製造が可能となる。
【0018】
本発明により、アミノ糖残基を含有する多糖やその部分分解物から、機能性食品成分としての単糖またはオリゴ糖等の低分子化物を製造するための技術が提供され、N-アセチル-D-グルコサミンやヒアルロン酸オリゴ糖、コンドロイチン硫酸オリゴ糖等の機能性糖質に注目した、多岐にわたる機能性食品素材または機能性食品の開発が行われる。例えば、オリゴ糖ミクスチャーとしたり、単離した後に食品添加物等として用いることも可能となる。
本発明は、特に、キムチ、ニンニク、トマト、唐辛子、食用キノコ、魚介類内臓等を活用した機能性食品の開発を飛躍的に発展させる。
また、本発明は、固形食品、液状食品のみならず、調味液、調味料等にも適用可能である。
さらに、食品加工工程において副生される農林水産物・食品素材由来の素材、あるいは食品素材から酵素を抽出することにより、該酵素を用いた食品加工技術が多様化するのみならず、廃棄物、未利用資源の有効利用にもつながる。
この場合、本発明において開発した酵素や反応生成物である低分子化物の用途は、必ずしも食品分野における用途に制限されず、医薬品製造、研究用酵素試薬製造分野等に波及すると期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
請求項1に係る本発明は、オリゴ糖又は単糖の増強された食品又は食品素材の製造方法に関し、アミノ糖残基を含有する多糖或いはその部分分解物を低分子化してオリゴ糖又は単糖に変換する活性を有する酵素を持つ、1又は2以上の食品素材、又は前記食品素材を含む食品に、基質としてアミノ糖残基を含有する多糖或いはその部分分解物を添加し、前記酵素を用いて前記基質を低分子化処理することを特徴とするものである。
ここでアミノ糖残基を含有する多糖或いはその部分分解物としては、例えばキチン又はその部分分解物や、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸又はそれらの塩が挙げられるが、これに限定されるものではない。
また、オリゴ糖又は単糖としては、N-アセチル-D-グルコサミンや、コンドロイチン硫酸オリゴ糖、ヒアルロン酸オリゴ糖等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
また、オリゴ糖の重合度については、明確な定義が存在しないが、本発明では、通常の方法で得られる多糖を低分子化し、意図的に重合度を低下させたものをオリゴ糖と呼ぶ。徹底的に反応を行うことにより、オリゴ糖は最終分解物にまで低分子化されるが、低分子化の条件を変えることにより、オリゴ糖の重合度分布は変えることが可能となる。
【0020】
本発明は、アミノ糖残基を含有する多糖或いはその部分分解物を低分子化してオリゴ糖又は単糖に変換する活性を有する複数又は単数の酵素を、食品加工工程において副生される農林水産物・食品素材由来の素材、食品素材或いは食品から調達することを最大の特徴とする、新たな発想に基づいたものである。
【0021】
食品素材中には多様な酵素が存在し、腐敗、成熟や熟成に関係している。
これまでに、食品素材由来の酵素の利用技術が開発されており、麦芽中のアミラーゼを用いたデンプン糖化によるビール製造技術や、内在性のグルタミン酸脱炭酸酵素を用いたγ-アミノ酪酸の生産による発芽玄米等の製造技術として知られている。
【0022】
しかしながら、他の多くの場合、食品素材から抽出された酵素は、安定性や反応特性が必ずしも最良の条件を与えないため、より分解活性が高く、実用性が高い、細菌、放線菌やカビなどの微生物由来の酵素製剤が探索・開発され、広く食品加工用に使われている。
また、一部の食品素材由来の酵素は、品質の劣化や製品の不均一化の原因となり、このような場合には、流通・貯蔵工程における品質管理のために食品素材由来の酵素を失活させる必要がある。このため、食品素材由来の酵素は、基礎研究目的や試薬の生産目的以外には殆ど注目されなかった。
【0023】
しかしながら、食品加工技術の高度化に伴い、食品加工工程において副生される農林水産物・食品素材由来の素材として、多様な廃棄物や副生成物が生じるようになっており、これらの有効利用が課題となっている。例えば、未熟果、生産調整用生鮮食品残さ、剥皮カス・ぬか等の生鮮食品の一次加工廃棄物、魚介類内蔵や卵巣、果実搾汁残さ、麹カス、食用キノコ栽培時の菌床付近の菌体、植物種子、唐辛子等の食品色素抽出カス等が挙げられる。これらの資源から、アミノ糖残基を含有する多糖或いはその部分分解物を低分子化して機能性糖質に変換する酵素を得て、これを食品産業等に活用するという発想は、これまで存在しなかった。
【0024】
これまでに、基礎研究目的或いは研究試薬としての利用目的として、カルスや葉におけるストレス応答性の植物キチナーゼについて研究が行われてきた他、ヤマノイモ、馬鈴薯の塊茎、大麦の種子、ゴムのラテックスのキチナーゼが報告されてきた。パプリカ、レタス、キャベツのN-アセチル-β-D-ヘキソサミニダーゼや、ウシ・ヒツジの睾丸由来、或いはサザエ由来のコンドロイチナーゼなどが知られている。
【0025】
しかしながら、これらを用いて、食品素材としてのN-アセチル-D-グルコサミンやコンドロイチン硫酸オリゴ糖、ヒアルロン酸オリゴ糖等を製造するための検討は行われていない。
【0026】
N-アセチル-D-グルコサミンの酵素による製造については、これまで強力な活性をもつ微生物由来酵素製剤が好まれて用いられてきた。
しかしながら、これらの酵素製剤は、食品中に残存することを想定していないことから、目的物質を酵素製剤から分離・精製する工程が求められる。
【0027】
それに対して、本発明のように、アミノ糖残基を含有する多糖或いはその部分分解物を低分子化してオリゴ糖又は単糖に変換する活性を有する酵素を持つ、1又は2以上の食品素材、又は前記食品素材を含む食品から得られる、酵素(酵素抽出物)を用いてN-アセチル-D-グルコサミンを製造した場合、反応液全体を食品素材として活用することができる。また、N-アセチル-D-グルコサミンを主成分とする食品添加物の製造工程においても、食品素材グレードの精製を行うことが容易になる。
請求項4に記載したように、アミノ糖残基を含有する多糖或いはその部分分解物として、キチン又はその部分分解物を用いることにより、N-アセチル-D-グルコサミンを製造することができる。
【0028】
N-アセチル-D-グルコサミンを調製する上で最も重要な酵素は、N-アセチル-β-D-ヘキソサミニダーゼであるが、キチンやその部分分解物から効率的に単糖を生産するためには、キチナーゼも重要な役割を果たす。
前者の酵素は、様々な食品素材に含まれているが、後述するように、特に、トマト類、食用キノコ、麹菌培養物、唐辛子類、ピーマン類、コショウ、ニンニク、魚介類内臓部分、レタス等で活性が高いことが明らかになった。
また、後者の酵素も様々な食品素材に含まれるが、後述するように、特に、食用キノコ、魚介類内臓部分、唐辛子類、ヤマトイモ、シソ、ニンニク、ジャガイモ、インゲンのサヤ、卵白、ピーマン、カボチャ、なす、ホウレンソウ、メロン、パイナップル、トウモロコシ、麹等に高い活性が見いだされることが明らかになった。
【0029】
即ち、本発明においては、請求項5に記載したように、食品素材、又は前記食品素材を含む食品として、野菜類或いはその加工残渣、食用キノコ或いはその加工残渣、麹菌培養物、香辛料、及び魚介類内臓のうちのいずれか少なくとも一つに由来するものが好適に用いられる。
【0030】
ここで野菜類としては、例えばトマト類、ピーマン類、カボチャ、なす、ホウレンソウ、インゲン、レタス等を挙げることができる。
また、食用キノコとしては、例えばマイタケ、ヤマブシタケ、シイタケ、エノキ等を挙げることができる。
麹菌培養物としては、例えば甘酒用麹、醤油用麹、味噌用麹、酒造用麹等を挙げることができる。
香辛料としては、唐辛子類、コショウ等を挙げることができる。
魚介類としては、例えばカツオ、マグロ、エビ、カニ等が挙げられ、これらの内臓部分が用いられる。
【0031】
それらの中でも、特に唐辛子、コショウ、ニンニク、食用キノコ、麹菌培養物、トマト、及び魚介類内臓のいずれか少なくとも一つから構成される食品素材等が好ましい。
そして請求項8に記載したように、この唐辛子類、コショウ、ニンニク、食用キノコ、麹菌培養物、トマト、及び魚介類内臓のいずれか少なくとも一つから構成される食品素材等に含まれる酵素を用いて、キチン又はその部分分解物を低分子化することにより、N-アセチル-D-グルコサミンの量が増強された食品又は食品素材を製造することができる。
【0032】
請求項6に記載したように、アミノ糖残基を含有する多糖或いはその部分分解物として、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸又はそれらの塩のうちの少なくとも一つを用い、かつ、食品素材、又は前記食品素材を含む食品として、魚介類内臓を用いることにより、コンドロイチン硫酸オリゴ糖、ヒアルロン酸オリゴ糖又はそれらの塩のうちの少なくとも一つの増強された食品又は食品素材を製造することができる。
このとき、請求項7に記載したように、魚介類内臓として、マグロ、カツオ及びエビのうちのいずれか少なくとも一つの内臓を用いることが好ましい。
【0033】
本発明では、単独の食品素材等に存在する単数又は複数の酵素を用いることも可能であるが、複数の食品素材等に含まれる酵素活性を合わせて、より効率的に単糖を製造するための酵素製剤とすることもできる。また、キムチ中に高い活性が検出されるN-アセチル-β-D-ヘキソサミニダーゼ等、加工工程を経て食品素材から外液に抽出されうるような、既存の食品素材中に内在する酵素も本発明における酵素に含まれる。
【0034】
唐辛子類については、市販品である一味唐辛子からの酵素抽出が可能である他、脂溶性赤色色素等を抽出する際の残さからの抽出も可能である。また、唐辛子類を含む食品にキチンの部分分解物を加えれば、唐辛子類から抽出されうる水溶性の酵素が移動してキチンの部分分解物と酵素反応を行うことにより、熟成工程中にN-アセチル-D-グルコサミンの量を増加させることが可能となるのは明白である。
このことから、請求項9に記載したように、本発明を用いて、キムチ等の発酵食品にキチンの部分分解物を加えて熟成させることにより、N-アセチル-D-グルコサミンを強化することが可能となる。一般に、酵素反応は、4℃程度の低温条件下でも少しずつ進み、食品の熟成や劣化に寄与することが知られている。本発明には、食品内に反応基質を新たに混合し、目的物の量を増強するという発想も含まれる。
【0035】
麹菌培養物は、米に生育させたものが甘酒の原料等として食用に用いられていることから、この甘酒用麹を本発明におけるN-アセチル-D-グルコサミン生成酵素の原料として用いることができる。
本発明においては、麹菌培養物が高いN-アセチル-β-D-ヘキソサミニダーゼ活性を有することを見出した。既知の生物工学技術を活用し、有用麹菌や高生産性変異株を探索したり、キチン系基質の添加による酵素誘導生産の有無、培養温度条件、培地成分条件、培養日数、自己溶解の有無等に注意して、酵素の誘導生産を行うために培養条件を検討したりすることにより、酵素の収率を向上させることが可能となる。また、醤油用麹、味噌用麹や酒造用麹なども同様に酵素を有することが容易に想到される。これらは、甘酒用の麹菌と同様に優れた酵素源となりうると考えられる。
【0036】
食用キノコ、特に食用キノコ菌体は、麹菌培養物と同様に、本発明におけるN-アセチル-D-グルコサミン生成酵素の原料として用いることができる。食用キノコ底部の菌床付近部分は可食性と考えられるが、実際には加工・調理時に廃棄される部分となる。この部分から酵素を抽出することにより、廃棄物資源の高度利用に繋がる。また、食用キノコの子実体を誘導するのではなく、菌糸体を培養して酵素を生産させることが可能である。麹菌と同様に、高生産株の探索や培養条件の検討等を行うことにより、抽出効率を上げることが可能となる。食用キノコは多くの旨味成分を含むことから、酵素抽出物は調味液としての潜在性が高い。抽出液を用いたN-アセチル-D-グルコサミンの生産後に加熱処理を行うことにより、食用キノコ抽出液の付加価値を上げることが可能となる。
【0037】
コショウ,ニンニクなどの香辛料、トマト,ピーマンなどの野菜、魚介類内蔵部分などは、様々な旨味成分や抗酸化成分等の機能性成分、香辛料としての成分を含むことから、調味液、調味料や機能性飲料としての用途が広がるものと期待される。内蔵部分を発酵・熟成させたものには、しょっつるや、ニョクマム、パティス、ナンプラなどが知られており、本発明では、これらの素材中の機能性糖質を強化することが可能となる。例えば、N-アセチル-D-グルコサミンを強化した唐辛子入り調味液や魚醤などが本発明による製品として考えられる。
【0038】
食品素材等から酵素を抽出する際には、酵素反応或いは化学反応による腐敗臭等の発生を可能な限り抑えるために低温で行い、水又はpH、イオン強度、活性の安定化成分等に配慮して調製した水溶液を用いて抽出する(水系抽出する)ことが望ましい。また、酵素を取り出すべき食品素材等に対して、予め裁断、粉砕、磨砕等の処理を行うことにより、組織に内在する酵素の抽出効率を向上させることができる。
【0039】
即ち、アミノ糖残基を含有する多糖或いはその部分分解物を低分子化してオリゴ糖又は単糖に変換する活性を有する酵素を持つ、1又は2以上の食品素材、又は前記食品素材を含む食品を水系抽出するにより、アミノ糖残基を含有する多糖或いはその部分分解物を低分子化してオリゴ糖又は単糖に変換する活性を有する酵素を製造することができる。
【0040】
例えば請求項17に記載したように、唐辛子を水系抽出することにより、キチンの部分分解物をN-アセチル-D-グルコサミンに変化する酵素を製造することができる。
【0041】
また、例えば、請求項18に記載したように、魚介類内臓を水系抽出することにより、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸又はそれらの塩のうちの少なくとも一つを、それぞれコンドロイチン硫酸オリゴ糖、ヒアルロン酸オリゴ糖又はそれらの塩のうちの少なくとも一つに変換する酵素を製造することができる。
ここで魚介類内臓としては、特に限定されないが、請求項19に記載したように、マグロ、カツオ及びエビのうちのいずれか少なくとも一つの内臓がより好ましい。
【0042】
このような抽出を行うときの抽出温度は、目的の酵素が失活しない温度域であることが必要であり、酵素の特性解明を行った後に条件決定すべきであるが、一般的には、0℃~37℃程度、好ましくは0℃~25℃において抽出することにより、良好な結果が得られる。一般的には、酵素失活を招くプロテアーゼ活性等を抑えるために、低温での抽出を行うことが望ましい。
【0043】
抽出溶媒についても、酵素の耐塩性や抽出挙動に基づき最適化することが望ましいが、食品素材等から抽出するメリットを最大に生かすためには、食品添加物として使用可能な成分のみを用いることが求められる。一般的には、組織に緩やかにイオン結合している酵素については、塩濃度を高めると抽出効率が増すと考えられる(「蛋白質・酵素の基礎実験法 改訂第2版」(南江堂))。
【0044】
このような抽出操作により、全ての水溶性物質が酵素とともに抽出されることから、抽出物には様々な物質が混入することとなる。機能性をもつポリフェノール配糖体、旨味を示すグルタミン酸や核酸関連成分などが酵素と共に抽出されることから、抽出物は独特の調味料としての有用性も期待できる。
しかしながら、脂質やポリフェノール等の酸化による悪臭や着色、又は苦味、えぐ味などは、品質や付加価値の低下に繋がることから注意が必要である。
【0045】
従って、抽出物については、適宜、市販されている精密濾過膜或いは限外濾過膜等を用い、食品素材由来の組織断片、微生物、ウイルス、高分子成分の混入を防き、低温保存することにより、食品素材としての品質を長期にわたり維持できると考えられる。
【0046】
しかしながら、成分の劣化を招く化学的劣化やリパーゼやリポキシゲナーゼ、プロテアーゼ等の影響を抑制し、長期にわたり酵素活性を維持することが必要な場合や、副成分の混入が製造工程上不都合な場合等には、塩析、カラムクロマトグラフィによる分離技術やpH処理による酵素失活、微生物不活性化等の技術を用いるべきである。
【0047】
即ち、請求項3に記載したように、アミノ糖残基を含有する多糖或いはその部分分解物を低分子化してオリゴ糖又は単糖に変換する活性を有する酵素を持つ、1又は2以上の食品素材、又は前記食品素材を含む食品から前記酵素を抽出し、得られた抽出物を、アミノ糖残基を含有する多糖或いはその部分分解物からなる基質と反応させて低分子化処理する前、或いは低分子化処理した後に、pH処理、膜処理、塩析、クロマトグラフィーのうち、いずれか少なくとも一つの方法を施すことによって、前記抽出物中或いは低分子化処理物中に含まれる不要物質や微生物を除去乃至失活することが好ましい。
【0048】
一方、本発明では、生の食品素材等を用いて抽出することから、その食材が生食を想定していない場合、安全性に問題のある物質等が混入する危険性がある。例えば、キチンの分解酵素を有する生の食用キノコから酵素の抽出を行った場合、消化不良の原因となりうるレクチン等が混入する場合がある。このような場合の殆どは、N-アセチル-D-グルコサミンへの酵素変換を行った後、加熱処理等を行って問題物質を失活させれば、酵素反応物を食品素材又は食品として使用可能となる。その際には、通常の食形態や加工工程の目的や必要性を考慮し、適切な処理を講じることが望まれる。また、本発明による食品素材又は食品の製造工程においては、混入成分に起因するリスクを考慮した上で、安全性確保に務める必要がある。
【0049】
従って、請求項2に記載したように、アミノ糖残基を含有する多糖或いはその部分分解物を低分子化してオリゴ糖又は単糖に変換する活性を有する酵素を持つ、1又は2以上の食品素材、又は前記食品素材を含む食品に、基質としてアミノ糖残基を含有する多糖或いはその部分分解物を添加し、前記酵素を用いて前記基質を低分子化処理し、次いで加熱処理によって、前記食品素材に由来する非食性成分、又は前記食品素材を含む食品に由来する非食性成分を可食性成分へ変換することが好ましい。
加熱温度は、消化不良などの原因となる物質が失活する温度、つまり前記食品素材に由来する非食性成分、又は前記食品素材を含む食品に由来する非食性成分を可食性成分へ変換しうる温度であり、必ずしも一義的に決定することはできない。このように素材ごとに有害成分を失活させる温度は異なるが、各食品素材の調理条件等として経験的に知られているものが多く、調理を行ったのちには、素材中の有害成分は失活されていると考えられる。
【0050】
本発明は、アミノ糖残基を含有する多糖或いはその部分分解物を低分子化してオリゴ糖又は単糖に変換する活性を有する酵素を持つ、1又は2以上の食品素材、又は前記食品素材を含む食品に、「外部から」基質としてアミノ糖残基を含有する多糖或いはその部分分解物を添加し、前記酵素を用いて前記基質を低分子化処理することを特徴とする。
例えば、N-アセチル-D-ヘキソサミンを生産させるための酵素反応を行う際には、上記したように基質を外部から添加することを特徴とする。カニ、エビの外殻や真菌の細胞壁等を用いて、食品由来の酵素によって分解を行わせる方法は含まれない。麹菌の自己消化や、脱皮中のカニ(ソフトシェルクラブ等)、韓国食品の「トーハ」に代表されるエビ等の発酵熟成物などは、N-アセチル-D-グルコサミンが増強された食品である可能性があるが、本発明には含まれない。
【0051】
外部からキチン或いはその部分分解物を添加する際に用いる物質としては、カニ殻、エビ殻、オキアミ、イカ、カビ・キノコ類等から得られるキチン又はその部分分解物が該当する。キチンについては、例えば、「キチン・キトサン実験法」(技報堂出版)に記載されている公知の方法によってタンパク質や無機塩、共存する多糖等との分離を行うことにより、精製することが可能となる。
【0052】
一般に、キチンは結晶性が高く、水に溶けないことから、酵素分解を受けにくい。そのため、本発明では、適宜、キチンの結晶構造を崩し、高度に水和させるための前処理を行ったものを基質として用いることが望ましい。「キチン・キトサン実験法」(前述)や「キチン・キトサン・ハンドブック」(技報堂出版)に記載された、コロイド状キチンへの変換技術、酵素、塩酸等を用いた部分加水分解技術を用いることが可能である。コロイド状キチンは、キチンの会合を分解したものであり、一般的に、アルカリによる加水分解が起こることから、キチンの部分分解物とみなされる。
【0053】
キチンの部分分解物は、化学的方法と酵素的方法によって生成物の構成成分は異なるが、一般的には、キチンオリゴ糖やN-アセチル-D-グルコサミンを主成分として構成される。「キチン・キトサン実験法」(前述)等に紹介された方法等、キチンの部分分解物を調製するための種々の方法が開発され、公知の方法となっている。
【0054】
先述したとおり、化学的方法では、副反応としてN-アセチル-D-グルコサミン残基の脱アセチル化等が起こり、その加水分解条件の検討が必要となる。
酵素的方法については、微生物酵素を用いた場合、脱アセチル化等の副反応は無視できるが、キチンオリゴ糖のうち2糖が多く蓄積する。
キチンの部分分解物の調製に関しては、キチンオリゴ糖の精製が目的でないことから、本発明の目的に合い、かつ、食品素材として利用可能な製品を与える最低限の加工・精製工程により達成することが望ましい。
塩酸加水分解を行う際には、アルカリで中和した後、適宜、脱塩することによって部分分解物の混合物を粗精製することが可能となる。
しかしながら、着色や味質等に注意すべき食品への適用を考える場合には、適宜、着色成分の除去、遊離アミノ基をもつ糖質の除去、高度な脱塩等を行い、キチン部分分解物を一層高度に精製する必要が生じる。酵素法の場合は、適宜、酵素除去と簡単な脱塩を行うことにより、粗精製された部分分解物の混合物を得ることができる。
【0055】
キチンの部分分解物を外から添加し、可食性食品素材等に由来する酵素とともに反応させ、その加工特性を利用した機能性食品素材や機能性食品の開発に繋げるという考え方はこれまでに存在しなかった。翻すと、食品中のN-アセチル-D-グルコサミンを効果的に増強するために、キチンの部分分解物を添加することを特徴とした、キチンの部分分解物の用途は新たな発想に基づく。
【0056】
即ち、請求項4に示すように、アミノ糖残基を含有する多糖或いはその部分分解物として、キチン又はその部分分解物を用い、これをアミノ糖残基を含有する多糖或いはその部分分解物を低分子化してオリゴ糖又は単糖に変換する活性を有する酵素を持つ、1又は2以上の食品素材、又は前記食品素材を含む食品に、外部から添加することにより、N-アセチル-D-グルコサミンが増強された食品又は食品素材を製造することができる。
【0057】
酵素反応を行う際のキチン又はその部分分解物の濃度には制限がなく、重合度の高いキチンオリゴ糖の溶解性は低いことから、反応液中の基質濃度を増した場合でも、液相部分の粘度増加にはつながりにくい。溶解性が比較的高い、重合度2~6程度のオリゴ糖を主成分として含む部分分解物を基質として用いた場合、N-アセチル-D-グルコサミンの酵素生産が効率化する。不溶性の基質が多く、反応時間が長期化すると、反応液中の成分が化学的或いは酵素的に劣化したり、侵入する微生物の影響が無視できなくなる可能性があることから、適宜、基質や酵素の殺菌・除菌を行う、酵素の精製度を上げる等の配慮をすることが必要となる。
【0058】
一般的に、酵素反応生成物が酵素活性の阻害を起こすことが知られており、酵素反応を効率化するためには、反応系外に反応生成物を除くための工夫を行うことが望ましい。そのためには、透析膜や限外濾過膜等を用いた反応の効率化やカラムクロマトグラフィによる反応の連続化等の、広く知られた生物工学技術を用いることが可能である。
【0059】
酵素反応条件については、用いる酵素の特性に応じて最適化する必要がある。
例えば、一味唐辛子の水抽出液中のN-アセチル-β-D-ヘキソサミニダーゼについて、p-ニトロフェニル N-アセチル-β-D-グルコサミニドを基質として用いて調べた結果、最適pHはpH5-6、最適温度は40-50℃、安定pHは3.5-6.5程度、安定温度は30-40℃以下であった。
一般的な酵素特性の解析方法を用いて、酵素の使用条件範囲を絞り込んだ上で、酵素の抽出条件や反応条件の決定を行うべきである。
【0060】
酵素反応は、公知の様々な方法でモニターすることができる。生成還元糖量を定量することにより、おおまかな反応進行度が明らかになる他、薄層クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、質量分析計、核磁気共鳴法による分析等により、N-アセチル-D-グルコサミンの生成を定量的或いは定性的に把握することが可能となる。
酵素の力価の推定のためには、p-ニトロフェニル基が結合したキチンオリゴ糖誘導体基質が市販されており、簡便なキチナーゼ活性の検出法として用いることができる。
また、p-ニトロフェニル N-アセチル-β-D-グルコサミニドを用いることにより、N-アセチル-β-D-ヘキソサミニダーゼ活性の存在を検出することができる。
【0061】
コンドロイチン硫酸或いはヒアルロン酸、又はそれらの塩を基質として低分子化するための酵素は、例えば、魚介類の内臓部分に含まれることを本発明において見出した。魚介類としては、カツオ、マグロ、エビ、カニ等が考えられる。例えば、カツオの内臓から構成される食品の“酒盗”からは、両者を低分子化する活性が検出される。この酵素は、30℃を超える温度での熱安定性が低いことから、抽出・保存方法には注意が必要である。
【0062】
コンドロイチン硫酸或いはヒアルロン酸、又はそれらの塩を基質として低分子化する活性をもつ酵素は、単独の食品素材等に存在する複数の酵素を用いることも可能であるが、複数の食品素材等に含まれる酵素活性を合わせて、より効率的に単糖を製造するための酵素製剤とすることもできる。
また、“酒盗”中に活性が検出される酵素等、食品素材から外液に抽出されうるような、本来、食品素材中に内在する酵素も本発明における酵素に含まれる。
【0063】
魚介類には多くの旨味成分が含まれており、内臓部分は、珍味である塩辛、カニみそ等として珍重されてきた。目的酵素を抽出したエキスには旨味成分が豊富に含まれていることから、調味料、調味液という観点を含めて、素材全体としての付加価値が高まると期待される。
【0064】
一般的に、マグロ、カツオ等の大型魚類の内臓は、冷凍状態で本体から切断・除去された後に廃棄される。切断された内蔵のみが冷凍状態で生産・貯蔵されることから、本画分からの酵素生産は比較的工程化しやすいと期待される。目的の酵素活性が内在菌や消化物によるものか、魚本体が生産した酵素によるものかは不明であるが、カツオの内臓の塩辛“酒盗”から酵素活性が検出されることからも、内臓全体として酵素を抽出することに問題はない。
動物性の素材は富栄養性であるため、特に腐敗・劣化が早いと考えられることから、適宜、塩析、精密濾過膜や限外濾過膜等を利用した膜分離技術やカラムクロマトグラフィー分離技術等を用い、微生物汚染、化学的或いは酵素的な劣化を抑えるための適切な措置を講じることが望ましい。また、寄生虫や食中毒菌などを除去したり、重金属値の測定を行ったりする等、十分な衛生・安全管理が必要となる。
【0065】
カニやエビの内臓は、カニではカニみそ部分に、エビでは頭部付近に存在する。
カニの内臓からは良い出汁が出て鍋料理などに好まれている等の理由から、まとまった量の廃棄物としては生産されにくい。
一方、エビについては、小型或いは中型エビの大部分が加工工場において一次加工され、相当部分について頭部が除去されることから、副生成物としてまとまった規模で産出されると期待できる。
【0066】
基質となるコンドロイチン硫酸或いはヒアルロン酸、又はそれらの塩は、動物素材や水産物に広く含まれている他、微生物由来の食品添加物としても知られている。
素材としては、ニワトリ、魚類等から製造・販売されている。コンドロイチン硫酸には、硫酸化部位が異なる数種類の異性体が存在する。塩を構成する対イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオンを用いることが一般的であるが、アルカリ金属類以外の無機イオンとの塩やカチオン系の有機物との塩等も考えられる。
【0067】
コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸或いはそれらの塩は水溶性が高く、酵素反応は迅速に進む。
酵素反応を行う際の基質濃度には制限がないが、基質濃度を高めると反応液の粘度が増加し、取り扱いが困難になることに注意する必要がある。
一般的に、酵素反応生成物が酵素活性の阻害を起こすことが知られている他、ヒアルロニダーゼやコンドロイチナーゼは糖転移活性を有し、副反応を起こす可能性があることから、酵素反応を効率化するためには、反応系外に反応生成物を除くための工夫を行うことが望ましい。そのためには、透析膜や限外濾過膜等を用いた反応の効率化やカラムクロマトグラフィによる反応の連続化等の、広く知られた生物工学技術を用いることが可能である。
【0068】
酵素反応条件については、用いる酵素の特性に応じて最適化する必要がある。例えば、“酒盗”の水抽出液中の酵素について、コンドロイチン硫酸塩又はヒアルロン酸塩を基質として用いて最適pHを調べた結果、最適pHはpH5-6付近に存在する。
【0069】
酵素反応は、公知の様々な方法でモニターすることができる。生成還元糖量を定量することにより、おおまかな反応進行度が明らかになる他、薄層クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、質量分析計、核磁気共鳴法による分析等により、オリゴ糖の生成を定量的或いは定性的に把握することが可能となる。
【0070】
魚介類内蔵由来のヒアルロニダーゼやコンドロイチナーゼは、生化学試薬や医薬品素材製造用途に用いることができると期待されることから、廃棄物資源の有効利用法として期待される。
このように、本発明において開発した酵素や反応生成物である低分子化物の用途は、必ずしも食品分野における用途に限定されない。
【0071】
上記した如き請求項1乃至3のいずれかに記載の方法によれば、請求項12に記載したように、オリゴ糖又は単糖の増強された食品又は食品素材が提供される。
【0072】
また、上記した如き請求項4、5、8及び9のいずれかに記載の方法によれば、請求項13に記載したように、酵素反応によりN-アセチル-D-グルコサミンが増強された食品又は食品素材が提供される。
ここで食品又は食品素材としては、例えば請求項14に記載したように、調味料が好ましい。
即ち、請求項14に係る本発明は、請求項4、5、8及び9のいずれかに記載の方法により製造された、酵素反応によりN-アセチル-D-グルコサミンが増強された調味料である。
【0073】
次に、上記した如き請求項6又は7記載の方法によれば、請求項15に記載したように、魚介類内臓由来の酵素によりオリゴ糖が増強された食品又は食品素材が提供される。
ここで魚介類内臓としては、請求項16に記載したように、マグロ、カツオ及びエビのうちのいずれか少なくとも一つの内臓が好ましい。
【0074】
さらに、請求項10に、記載したように、魚介類内臓由来の酵素を用いて、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸又はそれらの塩のうちの少なくとも一つを基質として低分子化することにより、コンドロイチン硫酸オリゴ糖、ヒアルロン酸オリゴ糖又はそれらの塩のうちの少なくとも一つを製造方することができる。
即ち、請求項10に係る本発明は、コンドロイチン硫酸オリゴ糖、ヒアルロン酸オリゴ糖又はそれらの塩のうちの少なくとも一つの製造方法に関し、魚介類内臓由来の酵素を用いて、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸又はそれらの塩のうちの少なくとも一つを基質として低分子化することを特徴とするものである。
ここで魚介類内臓由来の酵素としては、好ましくは請求項18に記載した方法により製造された酵素が挙げられる。
魚介類としては、例えばカツオ、マグロ、エビ、カニ等が挙げられ、これらの内臓部分由来の酵素が用いられる。
【0075】
このようにして請求項10記載の方法により製造された、コンドロイチン硫酸オリゴ糖、ヒアルロン酸オリゴ糖又はそれらの塩を提供するのが、請求項11に係る本発明である。
【実施例】
【0076】
以下に実施例を示して本発明をさらに詳しく説明する。ただし、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0077】
実施例1
表1に示す様々な食品素材やその非食部を、湿重で0.5g、4℃以下に冷却した乳鉢上にとり、4℃以下に冷却した乳棒により破砕して、2ミリリットル(唐辛子は4ミリリットル)の水で酵素を抽出した。これをエッペンドルフチューブに移し、4℃、15000回転で5分間回転して回収した上澄みを酵素液とした。酵素反応条件は、反応液(80マイクロリットル)中に1mM(終濃度)p-ニトロフェニル N-アセチル-β-D-ヘキソサミニド、20 mM(終濃度)酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)、活性測定用酵素液8マイクロリットルを含み、反応は30℃で30分間行い、80マイクロリットルの1 Mの炭酸ナトリウム水溶液を加えることにより停止した。遊離したp-ニトロフェノールに由来する405ナノメートルの吸光度を測定し、反応により生成したp-ニトロフェノール量を計算した。結果を表1に示す。
【0078】
その結果、p-ニトロフェノールを遊離する酵素活性が、野菜、果物、食用キノコ菌体、加工食品、魚介類内臓に活性が広く分布することが明らかとなった。
【0079】
【表1】
JP0004742343B2_000002t.gif

【0080】
実施例2
実施例1と同様の方法で、表2に示す様々な食品素材やその非食部から酵素液を抽出した。酵素反応条件は、反応液(80マイクロリットル)中に1mM(終濃度)p-ニトロフェニル N,N'-ジアセチル-β-キトビオシド、20 mM(終濃度)酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)、活性測定用酵素液8マイクロリットルを含み、反応は30℃で30分間行い、80マイクロリットルの1 Mの炭酸ナトリウム水溶液を加えることにより停止した。遊離したp-ニトロフェノールに由来する405ナノメートルの吸光度を測定し、反応により生成したp-ニトロフェノール量を計算した。結果を表2に示す。
【0081】
その結果、キチナーゼ或いはN-アセチル-β-D-ヘキソサミニダーゼに由来すると考えられる活性が、以下の食品素材等に由来する酵素液中に存在することが明らかとなった。
【0082】
【表2】
JP0004742343B2_000003t.gif

【0083】
実施例3
実施例1と同様の方法で、表3に示す様々な食品素材やその非食部から酵素液を抽出した。酵素反応条件は、反応液(80マイクロリットル)中に1mM(終濃度)p-ニトロフェニル N,N',N''-トリアセチル-β-キトトリオシド、20 mM(終濃度)酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)、活性測定用酵素液8マイクロリットルを含み、反応は30℃で30分間行い、80マイクロリットルの1 Mの炭酸ナトリウム水溶液を加えることにより停止した。遊離したp-ニトロフェノールに由来する405ナノメートルの吸光度を測定し、反応により生成したp-ニトロフェノール量を計算した。結果を表3に示す。
【0084】
その結果、キチナーゼ或いはN-アセチル-β-D-ヘキソサミニダーゼに由来すると考えられる活性が、以下の食品素材等に由来する酵素液中に存在することが明らかとなった。
【0085】
【表3】
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【0086】
実施例4
実施例1と同様の方法で、表4に示す様々な食品素材やその非食部から酵素液を抽出した。これを0.22マイクロメートル径の精密濾過膜を通過させた後、ウルトラフリーMC(ミリポア社、10,000NMWL)を用いて、膜を通過しない画分(分子量1万程度以上の画分)を20 mM酢酸ナトリウム緩衝液(0.02%アジ化ナトリウムを含む。)で洗浄し、液を置換した。反応液(80マイクロリットル)組成は、0.25%(最終濃度)N,N'-ジアセチルキトビオースおよび20 mM(最終濃度)酢酸ナトリウム緩衝液(0.02%(最終濃度)アジ化ナトリウムを含む。)及び洗浄酵素液(40マイクロリットル)を含む。反応は30℃で8時間(エビの内臓とカツオ塩辛は4時間)行い、高速液体クトマトグラフィーにより反応基質と反応生成物を分析した。分析条件等は、以下のとおり。
【0087】
[分析条件等]
・カラム:アミド80カラム(4.6 mm×250 mm)及びガードカラム(3.2 mm×15 mm)(東ソー株式会社製)
・カラムオーブン:CO-8020(東ソー株式会社製)
・ポンプ:CCPM-II(東ソー株式会社製)
・コントローラ:PX-8020(東ソー株式会社製)
・検出器:UV-8020(東ソー株式会社製)
・データ解析:PowerChrom v.2.0.7(ADInstruments社)
・分離条件:水:アセトニトリル=30/70
1ミリリットル/分
カラム温度40℃
検出UV210 nm
サンプル量 10マイクロリットル
【0088】
分析結果を表4に示す。
その結果、本実験に用いた食品素材等由来の酵素は、N-アセチル-D-グルコサミンを生成することを確認した。
【0089】
【表4】
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【0090】
実施例5(酵素の温度安定性の測定)
実施例1の方法にならい抽出した一味唐辛子由来の酵素を用いて、酵素の温度安定性を測定した。
温度処理条件は、酵素10マイクロリットルを用いて、終濃度20 mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)となるように緩衝液を加えて、最終量を30マイクロリットルとした。これを一定の温度条件下で30分間放置した後に4℃に冷まし、これを活性測定用酵素として反応を行った。
酵素反応条件は、反応液(80マイクロリットル)中に1mM(終濃度)p-ニトロフェニル N-アセチル-β-D-ヘキソサミニド、20 mM(終濃度)酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)、酵素液8マイクロリットルを含み、反応は30℃で20分間行い、80マイクロリットルの1 Mの炭酸ナトリウム水溶液を加えることにより停止した。遊離したp-ニトロフェノールに由来する405ナノメートルの吸光度を測定し、最大活性を示す条件を100%としてその比率を求めた。その結果を図1に示す。
【0091】
その結果、本酵素は、30-40℃程度では高い活性を示すが、それ以上の温度では活性が下がる傾向が見られた。
【0092】
実施例6(酵素のpH安定性の測定)
実施例1の方法にならい抽出した一味唐辛子由来の酵素を用いて、酵素のpH安定性を測定した。
温度処理条件は、酵素10マイクロリットルを用いて、終濃度20 mMになるように、各緩衝液を加えて、最終量を30マイクロリットルとした。緩衝液は、酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.5-6.0)、リン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0-8.0)および四ホウ酸ナトリウム・塩酸緩衝液(pH8.5)を用いた。これを30℃で60分間放置した後に4℃に冷まし、これを活性測定用酵素として反応を行った。
酵素反応条件は、反応液(80マイクロリットル)中に1mM(終濃度)p-ニトロフェニル N-アセチル-β-D-ヘキソサミニド、20 mM(終濃度)酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)、活性測定用酵素液8マイクロリットルを含み、反応は30℃で20分間行い、80マイクロリットルの1 Mの炭酸ナトリウム水溶液を加えることにより停止した。遊離したp-ニトロフェノールに由来する405ナノメートルの吸光度を測定し、最大活性を示す条件を100%としてその比率を求めた。その結果を図2に示す。
【0093】
その結果、本酵素は、pH3.5-6.5程度の間では高い活性を示すが、それより高いpHでは活性が低下した。
【0094】
実施例7(酵素の至適温度の測定)
実施例1の方法にならい抽出した一味唐辛子由来の酵素を用いて、至適温度を測定した。
酵素反応条件は、反応液(80マイクロリットル)中に1mM(終濃度)p-ニトロフェニル N-アセチル-β-D-ヘキソサミニド、20 mM(終濃度)酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)、酵素液8マイクロリットルを含み、反応は各温度で20分間行い、80マイクロリットルの1 Mの炭酸ナトリウム水溶液を加えることにより停止した。遊離したp-ニトロフェノールに由来する405ナノメートルの吸光度を測定し、最大活性を示す条件を100%としてその比率を求めた。その結果を図3に示す。
【0095】
その結果、本酵素は、40-50℃付近で高い活性を示した。
【0096】
実施例8(酵素の至適pHの測定)
実施例1の方法にならい抽出した一味唐辛子由来の酵素を用いて、至適pHを測定した。
酵素反応条件は、反応液(80マイクロリットル)中に1mM(終濃度)p-ニトロフェニル N-アセチル-β-D-ヘキソサミニド、20 mM(終濃度)各緩衝液、酵素液8マイクロリットルを含み、反応は30℃で20分間行い、80マイクロリットルの1 Mの炭酸ナトリウム水溶液を加えることにより停止した。緩衝液としては、酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.5-6.0)及びリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0-8.0)を用いた。遊離したp-ニトロフェノールに由来する405ナノメートルの吸光度を測定し、最大活性を示す条件を100%としてその比率を求めた。その結果を図4に示す。
【0097】
その結果、本酵素は、pH5-6付近で高い活性を示した。
【0098】
実施例9
実施例1の方法にならい抽出した一味唐辛子由来の酵素を用いて、これを0.22マイクロメートル径の精密濾過膜を通過させた後、ウルトラフリーMC(ミリポア社、10,000NMWL)を用いて、膜を通過しない画分(分子量1万程度以上の画分)を20 mM酢酸ナトリウム緩衝液(0.02%アジ化ナトリウムを含む。)で洗浄し、液を置換した。反応液(100マイクロリットル)組成は、0.2%(最終濃度)のキチンオリゴ糖(2糖~6糖のいずれか)及び20 mM(最終濃度)酢酸ナトリウム緩衝液(0.02%(最終濃度)アジ化ナトリウムを含む。)及び洗浄酵素液(10マイクロリットル)を含む。反応は30℃で12時間行い、高速液体クトマトグラフィーにより反応基質と反応生成物を分析した。分析条件は実施例4と同様に行った。その結果を表4に示す。
【0099】
その結果、唐辛子中の酵素は、キチンオリゴ糖を効率的に低分子化し、単糖であるN-アセチル-D-グルコサミンを生成した。
【0100】
【表5】
JP0004742343B2_000006t.gif

【0101】
実施例10
実施例4で用いた洗浄後のキムチ抽出物を酵素液として、4℃又は30℃においてキトオリゴ糖(生化学工業株式会社)の加水分解を行った。反応液(200マイクロリットル)組成は、0.5%(最終濃度)のキトオリゴ糖及び20 mM(最終濃度)酢酸ナトリウム緩衝液(0.02%(最終濃度)アジ化ナトリウムを含む。)及び洗浄酵素液(100マイクロリットル)を含む。反応は、それぞれの温度で24時間行い、実施例4と同じ条件で高速液体クトマトグラフィーにより分析を行った。その結果を表6に示す。
【0102】
その結果、低温での熟成期間中においても、酵素変換が進み、N-アセチル-D-グルコサミンの生成が促進されていることが示唆された。
【0103】
【表6】
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【0104】
実施例11
実施例4の方法で抽出及び洗浄を行った、カツオ塩辛由来の酵素とエビ内蔵由来の酵素とを用いて、コンドロイチン硫酸及びヒアルロン酸の加水分解活性を調べた。カツオ塩辛については、得られた酵素をさらに20 mM酢酸緩衝液で5倍に希釈したものを洗浄酵素液とした。
また、マグロ(ビンチョウ)の内臓については、凍結臓器26gの解凍後に4倍量の水を加え、氷浴中でブレンダー(ULTRA-TURRAX T25, JANKE & KUNKEL IKA-Labortechnik社)によって5分間、10000回転/分で潰した後、0.45マイクロメートル径の精密濾過フィルターを通過させて、さらにこれを限外濾過スピンカラム(UFV4BGC00、ミリポア社)を用いて4倍に濃縮して酵素液とした。
酵素反応条件は、反応液(320マイクロリットル)中に120マイクロリットルの0.33%の基質(コンドロイチン硫酸又はヒアルロン酸)、20 mM(終濃度)の酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)、0.02%(最終濃度)アジ化ナトリウム及び40マイクロリットルの酵素液を含み、反応は30℃で60分間行った。その後、遊離した還元糖をソモギ・ネルソン法により定量した。還元糖の定量はグルコースを標準物質として行った。その結果を表7に示す。
【0105】
その結果、カツオ塩辛由来の酵素とエビ内蔵由来の酵素とマグロ内蔵由来の酵素のいずれもが、コンドロイチン硫酸及びヒアルロン酸の加水分解活性を有することが示唆された。
【0106】
【表7】
JP0004742343B2_000008t.gif

【0107】
実施例12(酵素の至適pHの測定)
実施例11で抽出したカツオ塩辛由来の酵素中に存在する、コンドロイチン硫酸又はヒアルロン酸を加水分解する活性について至適pHを測定した。
酵素反応条件は、反応液(320マイクロリットル)中に120マイクロリットルの0.33%の基質(コンドロイチン硫酸又はヒアルロン酸)、20 mM(終濃度)の各緩衝液、0.02%(最終濃度)アジ化ナトリウム及び20マイクロリットルの酵素液を含み、反応は30℃で30分間行った。その後、遊離した還元糖をソモギ・ネルソン法により定量した。還元糖の定量はグルコースを標準物質として行い、各基質について最大活性を示す条件を100%としてその比率を求めた。その結果を図5に示す。
【0108】
その結果、コンドロイチン硫酸の加水分解活性とヒアルロン酸の加水分解活性は極めて狭いpH範囲(pH5.5-6.5付近)で最大値を示し、その範囲から外れると大きく低下した。
【0109】
実施例13(酵素の温度安定性の測定)
実施例11で抽出したカツオ塩辛由来の酵素中に存在する、コンドロイチン硫酸又はヒアルロン酸を加水分解する活性について温度安定性を測定した。
酵素液を25℃、30℃、40℃及び50℃に60分放置した後に酵素反応に用いた。酵素反応条件は、反応液(320マイクロリットル)中に120マイクロリットルの0.33%の基質(コンドロイチン硫酸又はヒアルロン酸)、20 mM(終濃度)の酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)、0.02%(最終濃度)アジ化ナトリウム及び10マイクロリットルの酵素液を含み、反応は30℃で30分間行った。その後、遊離した還元糖をソモギ・ネルソン法により定量した。
【0110】
その結果、コンドロイチン硫酸を基質とした場合、25℃保存後の活性を100%とすると、30℃で80%の活性、40℃で59%の活性がそれぞれ検出され、そして50℃では活性が検出されなかった。
また、ヒアルロン酸を基質とした場合、25℃保存後の活性を100%とすると、30℃で82%の活性、40℃で7.8%の活性がそれぞれ検出され、そして50℃では3.2%の活性が検出された。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の方法によれば、有用オリゴ糖や単糖を含む反応生成物からそれらを単離することなく、そのまま食品素材或いは食品として活用することが可能となる。また、これらの酵素を、食品加工工程において副生される農林水産物・食品素材由来の素材から抽出することにより、バイオマスからの高付加価値素材の製造が可能となる。
本発明により、アミノ糖残基を含有する多糖やその部分分解物から、機能性食品成分としての単糖またはオリゴ糖等の低分子化物を製造するための技術が提供され、N-アセチル-D-グルコサミンやヒアルロン酸オリゴ糖、コンドロイチン硫酸オリゴ糖等の機能性糖質に注目した、多岐にわたる機能性食品素材または機能性食品の開発が行われる。
本発明は、特に、キムチ、ニンニク、トマト、唐辛子、食用キノコ、魚介類内臓等を活用した機能性食品の開発を飛躍的に発展させる。
また、本発明は、固形食品、液状食品のみならず、調味液、調味料等にも適用可能である。
さらに、食品加工工程において副生される農林水産物・食品素材由来の素材、あるいは食品素材から酵素を抽出することにより、該酵素を用いた食品加工技術が多様化するのみならず、廃棄物、未利用資源の有効利用にもつながる。
この場合、本発明において開発した酵素や反応生成物である低分子化物の用途は、必ずしも食品分野における用途に制限されず、医薬品製造、研究用酵素試薬製造分野等に波及すると期待される。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】唐辛子由来のN-アセチル-β-D-ヘキソサミニダーゼの温度安定性の測定結果を示すグラフである。
【図2】唐辛子由来のN-アセチル-β-D-ヘキソサミニダーゼのpH安定性の測定結果を示すグラフである。
【図3】唐辛子由来のN-アセチル-β-D-ヘキソサミニダーゼの至適温度の測定結果を示すグラフである。
【図4】唐辛子由来のN-アセチル-β-D-ヘキソサミニダーゼの至適pHの測定結果を示すグラフである。
【図5】カツオ塩辛由来のコンドロイチン硫酸/ヒアルロン酸加水分解酵素の至適pHの測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0113】
●:コンドロイチン硫酸加水分解活性を示す。
▲:ヒアルロン酸加水分解活性を示す。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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