TOP > 国内特許検索 > 経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法 > 明細書

明細書 :経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4882087号 (P4882087)
公開番号 特開2007-185491 (P2007-185491A)
登録日 平成23年12月16日(2011.12.16)
発行日 平成24年2月22日(2012.2.22)
公開日 平成19年7月26日(2007.7.26)
発明の名称または考案の名称 経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法
国際特許分類 A61B  10/00        (2006.01)
A61B   5/11        (2006.01)
A61B   5/00        (2006.01)
A61B   5/055       (2006.01)
FI A61B 10/00 E
A61B 5/10 310Z
A61B 5/00 G
A61B 5/05 380
請求項の数または発明の数 10
全頁数 24
出願番号 特願2006-301203 (P2006-301203)
出願日 平成18年11月7日(2006.11.7)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2005年6月24日 Elscvier Inc(エルゼビア社)発行の「NouroImage(ニューロイメージ)」に発表
優先権出願番号 2005363795
優先日 平成17年12月16日(2005.12.16)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年10月22日(2009.10.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明者または考案者 【氏名】檀 一平太
個別代理人の代理人 【識別番号】100093816、【弁理士】、【氏名又は名称】中川 邦雄
審査官 【審査官】宮川 哲伸
参考文献・文献 特開2006-320387(JP,A)
特開2006-136434(JP,A)
特開2005-143764(JP,A)
特開2004-340954(JP,A)
特開2004-239782(JP,A)
特開2003-107161(JP,A)
檀一平太,食生活研究への応用のためのfNIRS単独での脳機能マッピング法開発,食品総合研究所 研究ニュース,日本,独立行政法人 食品総合研究所,2005年 7月,第13号,P.4-5
調査した分野 A61B 10/00
A61B 5/00
A61B 5/055
A61B 5/11
特許請求の範囲 【請求項1】
実世界空間における被験者の頭表上基準点及び頭表上計測点の位置情報を入力装置から入力して保存装置に記録する入力手段と、前記入力手段で位置情報を得た後に、データベースから参照脳の頭表データ、脳表データ及び頭表上基準点データを抽出する取出手段と、前記入力手段で得た頭表上基準点を、前記取出手段で得た参照脳の頭表上基準点データに座標変換するのに倣って、計算機が頭表上計測点を標準脳座標空間の仮想正規化計測点に仮想正規化する変換手段と、前記変換手段で得た仮想正規化計測点を、計算機が参照脳の頭表データと脳表データの対応関係を基に、仮想正規化脳表投影点へ脳表上投影する投影手段と、前記入力手段で一人の被験者の位置情報を入力し、前記取出手段で複数の参照脳を抽出して、前記変換手段及び投影手段で得たそれぞれの仮想正規化計測点及び仮想正規化脳表投影点を、計算機が統計処理して被験者内推定点及び被験者内誤差を求める被験者内推定手段と、前記入力手段で複数の被験者の位置情報を入力し、前記被験者内推定手段で得たそれぞれの被験者内推定点及び被験者内誤差を、計算機が統計処理して被験者間推定点及び被験者間誤差を求める被験者間推定手段と、前記入力手段、取出手段、変換手段、投影手段、被験者内推定手段及び被験者間推定手段の各過程を表示装置に出力する表現手段とからなり、前記被験者内推定手段及び被験者間推定手段を繰り返して最確推定点及び推定精度を得ることを特徴とする経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法。
【請求項2】
位置センサー付きプローブホルダーを被験者の頭に装着して測定した頭表上計測点の位置情報を入力することを特徴とする請求項1に記載の経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法。
【請求項3】
予め標準脳座標空間上で正規化された参照脳の頭表及び脳表の3次元情報を、データベースに蓄積しておくことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法。
【請求項4】
請求項1、請求項2又は請求項3に記載の経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法を実現する装置。
【請求項5】
請求項1、請求項2又は請求項3に記載の経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法を実現するソフトウェアプログラムを保存した記録媒体。
【請求項6】
データベースから使用する参照頭表及び参照脳をランダムに1つ抽出すると共に、データベースから参照頭表及び参照脳の高さ及び幅及び奥行をランダムに1組抽出し、前記参照頭表及び参照脳並びに前記高さ及び幅及び奥行を合成して1つの合成参照頭表及び合成参照脳を作成するリサンプリング法により生成した多数の合成参照頭表及び合成参照脳を用いて、仮想正規化した計測点の統計を取ることにより、頭表上及び脳表上の推定位置の最確値及び推定精度を算出することを特徴とする経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法。
【請求項7】
データベースから使用する参照頭表及び参照脳をランダムに1つ抽出すると共に、データベースから参照頭表及び参照脳の相対的なサイズの正規分布を推定し相対サイズを1つ抽出し、前記参照頭表及び参照脳並びに前記相対サイズを合成して1つの合成参照頭表及び合成参照脳を作成する正規分布ランダムサンプリング法により生成した多数の合成参照頭表及び合成参照脳を用いて、仮想正規化した計測点の統計を取ることにより、頭表上及び脳表上の推定位置の最確値及び推定精度を算出することを特徴とする経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法。
【請求項8】
リサンプリング法と正規分布ランダムサンプリング法を組み合わせて生成した多数の合成参照頭表及び合成参照脳を用いて、仮想正規化した計測点の統計を取ることにより、頭表上及び脳表上の推定位置の最確値及び推定精度を算出することを特徴とする経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法。
【請求項9】
請求項6乃至8に記載の経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法を実現する装置。
【請求項10】
請求項6乃至8に記載の経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法を実現するソフトウェアプログラムを保存した記録媒体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外分光分析法(NIRS)や経頭蓋磁気刺激装置(TMS)及びその他の経頭蓋的脳機能測定・刺激法において測定・刺激にかかる脳表座標を推定する方法と、そのソフトウェアプログラムを記録した媒体と、この方法により推定された脳表座標を用いて測定・刺激結果を表示する装置に関するものであり、より詳細には、頭表の任意の点又はその集合としての頭表面に展開された測定データを、参照脳データベース上での仮想的な正規化と脳表投影によって、任意の標準脳座標系に表現する方法とそのソフトウェアプログラムを記録した媒体と装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
経頭蓋的脳機能測定・刺激法において、測定・刺激の対象となる脳表位置を表現するための標準的データ表現システムは重要である。脳科学研究分野における標準的データ表現システムとしては、MNI(Montoreal
Neurological Institute)標準脳座標系に代表される標準脳座標系が挙げられ、fMRI(機能的核磁気共鳴撮像)やPET(陽電子放出断層撮像)などの脳機能イメージング研究法による脳活動データは、標準脳座標系に表現されることが一般的である。したがって、経頭蓋的脳機能測定・刺激法においても、測定・刺激の対象となる脳表位置を標準脳座標系に表現することが望まれている。
【0003】
測定対象が単数の被験者である場合、核磁気共鳴装置(MRI)等の脳画像撮像法を用いて脳の構造画像を得れば、測定・刺激の対象となる脳表位置を標準脳座標系に表現することは可能であったが、補助的な脳画像撮像なしで、標準脳座標系に表現することは不可能であった。
【0004】
この問題を解決する手段として、経頭蓋的脳機能測定・刺激法において、測定・刺激の対象となる脳表位置を標準脳座標系表現するためのデータ表現システムが報告された(非特許文献1、特許文献1参照)。これらの方法によれば、頭表上の任意の点について、近傍3点ないし4点の頭表上基準点との相対位置関係を求めれば、予め記載された当該基準点の標準脳座標上での位置と精度情報を参照して、当該頭表点およびその直下の脳表投影点を、標準脳座標系に表現し、その座標位置と確率的推定の精度情報を得ることが可能である。

【非特許文献1】Okamoto, M. and Dan,I. Automated cortical projection of head-surface locations for transcranial functionalbrain mapping. NeuroImage 26, 18-28 (2005).
【特許文献1】特開2005-143764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、脳機能研究においては、複数被験者の測定データを統計的に処理して、被験者間のばらつきを考慮した解析を行うことが必要であり、これまで、複数の被験者について、測定・刺激の対象となる脳表位置を標準脳座標系表現するためのデータ表現システムは存在しなかった。したがって、経頭蓋的脳機能測定・刺激法において、複数被験者にも拡張可能かつ補助的撮像を要さない標準的データ表現システムの確立が望まれている。
【0006】
そこで、本発明は、経頭蓋的脳機能測定・刺激法において、補助的撮像がない場合でも、個人および複数被験者の計測・刺激データを、参照脳データベースにおける頭部画像上での仮想的な正規化と脳表投影を行うことによって、任意の標準脳座標系に表現し、座標値および推測の精度情報を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するために、実世界空間15における被験者16の頭表上基準点19及び頭表上計測点20の位置情報を入力装置9から入力して保存装置10に記録する入力手段2と、前記入力手段2で位置情報を得た後に、データベース12から参照脳18の頭表データ12b、脳表データ12c及び頭表上基準点データ12dを抽出する取出手段3と、前記入力手段2で得た頭表上基準点19を、前記取出手段3で得た参照脳18の頭表上基準点データ12dに座標変換4aするのに倣って、計算機8が頭表上計測点20を標準脳座標空間15aの仮想正規化計測点20aに仮想正規化4cする変換手段4と、前記変換手段4で得た仮想正規化計測点20aを、計算機8が参照脳18の頭表データ12bと脳表データ12cの対応関係を基に、仮想正規化脳表投影点20bへ脳表上投影5aする投影手段5と、前記入力手段2で一人の被験者16の位置情報を入力し、前記取出手段3で複数の参照脳18を抽出して、前記変換手段4及び投影手段5で得たそれぞれの仮想正規化計測点20a及び仮想正規化脳表投影点20bを、計算機8が統計処理して被験者内推定点21及び被験者内誤差21aを求める被験者内推定手段6aと、前記入力手段2で複数の被験者16の位置情報を入力し、前記被験者内推定手段6aで得たそれぞれの被験者内推定点21及び被験者内誤差21aを、計算機8が統計処理して被験者間推定点22及び被験者間誤差22aを求める被験者間推定手段6bと、前記入力手段2、取出手段3、変換手段4、投影手段5、被験者内推定手段6a及び被験者間推定手段6bの各過程を表示装置11に出力する表現手段7とからなり、前記被験者内推定手段6a及び被験者間推定手段6bを繰り返して最確推定点23及び推定精度23aを得ることを特徴とする経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法1及びその装置1a及びそれを実現するソフトウェアプログラムを保存した記録媒体10aの構成とした。
【0008】
即ち、被験者頭部の4以上の任意の数の頭表上基準点および経頭蓋的脳機能測定・刺激法における測定・刺激点の頭表位置情報の入力に対して、3次元頭部画像上における任意の頭表上基準点とその直下の脳表位置の関係について任意の標準脳座標空間に対する正規化前後の対応関係を記載したデータベースから任意の数の3次元頭部画像を取り出し、測定・刺激点の位置情報を頭表上基準点の情報を用いて、取り出された3次元頭部画像上における頭表上または脳表上に、線形変換または非線形変換によって変換し、任意の標準脳座標空間に対する正規化前後の対応関係を利用することによって当該標準脳座標値を仮想的に推定し、その仮想的推定値を統計処理することによって最確値およびその精度情報を表現する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、以上の構成であるため、以下の効果が得られる。第1に、3次元頭部構造画像のない被験者に対して、経頭蓋的脳機能測定・刺激法における測定・刺激点の頭表位置とその脳表投影点を標準脳座標上に推定することが可能となる。
【0010】
第2に、当該データベースから複数の3次元画像を取り出し、測定・刺激点の標準脳座標上への仮想的な推定を繰り返し、その結果を統計的に処理することによって、当該推定点の最確値および精度情報を表現することが可能となる。
【0011】
第3に、3次元頭部構造画像のない複数被験者に対して、それぞれの被験者につき測定・刺激点の標準脳座標上への推定をおこない、その結果を統計的に処理することによって、複数被験者における当該推定点の最確値および精度情報を表現することが可能となる。
【0012】
以上の効果により、本発明による方法を用いて、経頭蓋的脳機能測定・刺激法で得られたデータは、脳機能研究で通常用いられる標準脳座標系に表現できるようになった。これは、経頭蓋的脳機能測定・刺激法で得られたデータ処理に極めて高い拡張性をもたらすものである。このように本発明は、NIRSやTMS等の経頭蓋的脳機能測定・刺激法の普及に対して、基盤となる新技術を提供するものであり、脳機能研究とその臨床応用の発展に大きな貢献をもたらすものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、任意の頭表上基準点とその直下の脳表位置の関係について任意の標準脳座標空間に対する正規化前後の対応関係を記載した3次元頭部画像のデータベースを用いる。頭表上基準点の設定については、脳波研究で標準的に用いられている国際10-20法およびその派生法が望ましいが、それら以外の頭表上基準点を用いることもできる。標準脳座標系としては、当該分野で一般的に用いられているMNI(Montreal Neurological
Institute)座標やTalairach座標を利用するのが好ましいが、他の座標系を用いることもできる。3次元頭部画像データベースを構成する各エントリーデータを構築するための手法としては、頭皮上に設置したマーカーのMRI撮像によって、国際10-20法基準点とMNI座標系の対応関係を記載する方法(非特許文献2、特許文献1参照)を用いることが可能である。また、既に報告された方法を利用して(非特許文献1参照)、MRI画像上で、国際10-20法基準点とMNI座標系の対応関係を記載することも可能である。
<nplcit num="2"><text>Okamoto, M., Dan, H.,Sakamoto, K., Takeo, K., Shimizu, K., Kohno, S., Oda, I., Isobe, S., Suzuki,T., Kohyama, K., and Dan, I. Three-dimensional probabilistic anatomicalcranio-cerebral correlation via the international 10-20 system oriented fortranscranial functional brain mapping. NeuroImage 21 99-111 (2004).</text></nplcit>
【0014】
本発明を実施するためには、被験者頭部の4以上の任意の数の当該頭表上基準点および経頭蓋的脳機能測定・刺激法における測定・刺激点の頭表位置情報を磁気式3Dデジタイザーなどを用いて計測することが望ましい。または、プローブホルダーに位置センサーを装着し、測定・刺激点の頭表位置情報を自動的に計測することが可能である。または、計測値の代わりに、予め経験的に求められた当該頭表上基準点および経頭蓋的脳機能測定・刺激法における測定・刺激点の頭表位置情報を用いることも可能である。
【0015】
本発明は、被験者頭部の4以上の任意の数の当該頭表上基準点を、これらに対応する、かつ、参照脳データベースから抽出された頭部構造画像における、頭表上基準点の位置へと線形変換または非線形変換を行う。この結果を変換式として保存する。変換法の例としては、アフィン変換が望ましいが、それ以外の変換を用いてもよい。また、変換先となる頭部構造画像は、任意の標準脳座標系に正規化された後のものであってもよい。標準脳座標系に正規化された頭部構造画像へと変換する場合は、この変換は仮想正規化に相当する。
【0016】
本発明は、上記で保存された変換式を用いて、経頭蓋的脳機能測定・刺激法における測定・刺激点の頭表位置情報を当該頭部構造画像上に変換する。
【0017】
本発明の実施の好ましい一態様として、当該頭部構造画像上に変換された当該測定・刺激点の頭表位置情報を既に報告された方法(非特許文献1参照)を利用して脳表上に投影することも可能である。
【0018】
本発明は、脳および頭部構造の任意の位置について、標準脳座標系への正規化前後の対応関係を予め参照脳データベース上に記載してあるので、標準脳座標系への正規化に伴う作業を省くことができる。一般的に、頭部構造画像の標準脳座標系への変換は10分以上を要する作業であり、本発明によって時間短縮効果がある。標準脳座標系への正規化はSPM(Statistical
Parametric Method)等のソフトウェアを用いて予め行っておくことが望ましいが、SPM以外の任意の正規化法を用いることも可能である。
【0019】
本発明において用いる参照脳データベースを構成する頭部構造画像は、任意の被験者母集団に対応させて構成を変化させることが可能である。被験者母集団の例としては、全人類成人、白人成人、右利き日本人男子成人等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
本発明は、参照脳データベースから任意の数の参照頭部画像データを取り出すことにより、当該測定・刺激点の頭表位置情報に対する標準脳座標系での頭表または脳表推定の信頼性を上げるとともに、その推定の精度を明確に記載することができる。
【0021】
本発明は、単一被験者の当該測定・刺激点の頭表位置情報を処理した場合に、これに対する標準脳座標系での頭表または脳表推定の精度情報を被験者内誤差として記載することができる。
【0022】
本発明は、複数被験者の当該測定・刺激点の頭表位置情報を処理した場合に、これに対する標準脳座標系での頭表または脳表推定の精度情報を被験者間誤差として記載することができる。
【0023】
本発明は、複数被験者グループを対象とした解析において、各被験者解析における被験者内誤差を集積した値と被験者間誤差の総和を求めることによって、標準脳座標系での頭表または脳表推定の精度情報を全誤差として記載することができる。
【0024】
本発明を実施するための望ましい一態様は、本発明を用いたソフトウェアプログラムを作成し、媒体に記録することである。当該ソフトウェアプログラムは単独で機能することも可能であるが、他のソフトウェアプログラムの一部として組み込むことも可能である。
【0025】
本発明を実施するための望ましい一態様は、本発明を遂行する専用装置を構築することである。当該専用装置は、測定結果を入力するための入力端子、データ処理のための計算機、処理結果を表示するための表示装置、処理結果を保存するための保存装置から構成されることが望ましいが、それ以外の構成も可能である。尚、データを蓄積しておくデータベースも保存装置に含まれる。
【実施例1】
【0026】
本発明による方法で、補助的構造画像なしに、12名の被験者におけるNIRS計測点を、MNI標準脳座標系に表現した。まず、左右それぞれ3個ずつの送受光プローブからなるプローブホルダーも準備した。この送受光プローブの間に左右それぞれ7個ずつ、計14個のチャネル(NIRS計測点)を設定した。送受光プローブ間の距離は2.5cmとした。この際、左側プローブホルダーは、O10が国際10-20システムのF8とFp2の中点になり、かつ、下列のプローブがF8とFp2を結ぶ曲線状に整列するように配置した。また、右側プローブホルダーは、O4が国際10-20システムのF7とFp1の中点になり、かつ、下列のプローブがF7とFp1を結ぶ曲線状に整列するように配置した。プローブ位置およびチャネルの実世界座標位置を磁気式3Dデジタイザーで計測した。
【0027】
このように計測された各被験者のNIRSプローブ点および計測点を、本発明による方法で参照脳データベースの17頭部画像を用いて脳表に投影した後、MNI標準脳座標系に変換した。さらに、各被験者のデータを統合して、MNI標準脳座標で確率分布として表した。
【0028】
上記のように、本発明によれば、複数被験者において、頭表上のNIRSプローブおよび計測点をMNI標準脳座標系の脳表上に推定することができた。また、推定の最確値を示すだけでなく、推定の精度を全誤差として表すことができた。このデータは、MNI標準脳座標上に展開された理想的な脳において、各推定点は表に示された座標を中心に分布し、標準偏差を半径として表現される球の中に61%の推定値が分布する、という確率的推定を与えるものである。
【0029】
このような精度情報は、研究、臨床上の応用において、極めて有用な情報である。すなわち、徒に最適値を提示するのではなく、推定方法の有効範囲を示すことが重要である。本発明によって始めて、補助的頭部画像撮像なしに、複数被験者において、頭表上のNIRSプローブおよび計測点をMNI標準脳座標系の脳表上に推定することができた。
【実施例2】
【0030】
以下に、添付図面に基づいて、本発明である経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法について詳細に説明する。
【0031】
図1は、本発明である経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法の流れを示すフローチャートであり、図2は、本発明である経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法の装置の構成を示す図である。
【0032】
図1に示すように、経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法1は、入力手段2、取出手段3、変換手段4、投影手段5、推定手段6及び表現手段7からなる。尚、推定手段6には、被験者内推定手段6aと被験者間推定手段6bとがある。
【0033】
入力手段2は、国際10-20法(26)による実世界空間15における被験者16の頭表上基準点19の位置情報と、被験者16の頭に位置センサー付きプローブホルダー13を装着して測定、又は3Dデジタイザーを使用して測定する等して得た頭表上計測点20の位置情報とを、入力装置9から入力する。
【0034】
取出手段3は、データベース12の参照脳テーブル12aから、標準脳座標空間15aにおける参照脳18の頭表データ12b、脳表データ12c及び頭表上基準点データ12dを抽出する。
【0035】
参照脳テーブル12aには、予めMRI等の画像を基に参照脳18の情報が作成される。尚、参照脳18は、複数の被験者16について、標準脳座標空間15a上の雛形である標準脳を用いて正規化した頭表及び脳表の3次元情報である。
【0036】
参照脳テーブル12aの頭表データ12b及び脳表データ12cは、一つの参照脳18についてそれぞれ数万個のベクトル値で構成され、頭表上基準点データ12dは、一つの参照脳18について4個以上、好ましくは十数個程度の任意の数のベクトル値で構成される。
【0037】
変換手段4は、まず、入力手段2で取得した実世界空間15上の頭表上基準点19から、取出手段3で取得した標準脳座標空間15a上で正規化4bされた頭表上基準点データ12dへ、アフィン変換などにより座標変換4aを行い、変換式を得る。
【0038】
次に、求めた変換式を、入力手段2で取得した実世界空間15上の頭表上計測点20に適用して座標変換4aを行う。この座標変換4aは仮想正規化4cに相当する。この結果、標準脳座標空間15a上で正規化4bされた仮想正規化計測点20aを得る。
【0039】
尚、正規化4bとは、被験者16の頭表及び脳表の位置情報を、標準脳座標空間15a上の標準脳の頭表及び脳表に変形させて参照脳18を作ることであり、縮小、拡大、歪曲からなる線形変換や、局所的に変形率を変えた非線形変換が用いられる。
【0040】
投影手段5は、取出手段3で取得した参照脳テーブル12aの頭表データ12bと脳表データ12cの対応関係を基にして、変換手段4で変換した仮想正規化計測点20aについて脳表上投影5aを行い、仮想正規化脳表投影点20bを得る。
【0041】
推定手段6は、被験者内推定手段6a及び被験者間推定手段6bにより、最確推定点23及び推定精度23aを得る。被験者内推定手段6aは、同一の被験者16について推定を繰り返して推定点及び誤差を求め、被験者間推定手段6bは、複数の被験者16について推定を繰り返して推定点及び誤差を求める。
【0042】
被験者内推定手段6aは、入力手段2で計測した頭表上計測点20について、取出手段3において同一被験者16の複数の参照脳18を抽出し、各参照脳18について変換手段4及び投影手段5により仮想正規化計測点20a及び仮想正規化脳表投影点20bを求め、それらを比較することにより、被験者内推定点21及び被験者内誤差21aを得る。
【0043】
被験者間推定手段6bは、複数の被験者16について、入力手段2から被験者内推定手段6aまでを行って各被験者16の被験者内推定点21及び被験者内誤差21aを求め、それらを比較することにより、被験者間推定点22及び被験者間誤差22aを得る。
【0044】
表現手段7は、測定した被験者16の頭表上計測点20から推定される脳表位置又は頭表位置の標準脳座標空間15aにおける最確推定点23及び推定精度23aを表示装置11に出力する。尚、入力手段2、取出手段3、変換手段4、投影手段5及び推定手段6の各過程の状態を表示することも可能である。
【0045】
図2に示すように、経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法1に使用する装置1aは、計算機8、入力装置9、保存装置10及び表示装置11などからなる一般的なコンピュータである。
【0046】
計算機8は、CPU(中央処理装置)及びメモリ(主記憶装置)等からなる。CPUは、保存装置10からデータをメモリに読み込んで演算処理したり、入力装置9、保存装置10及び表示装置11などの制御を行う。
【0047】
入力装置9は、位置情報を測定してデータを保存装置10に送る装置であり、キーボード、マウス又は3Dデジタイザー等が該当する。3Dデジタイザーは、磁気式又は超音波式の空間計測装置であり、プローブホルダー13に設置されたプローブ14及びチャネル14cの空間座標値を測定することができる。また、プローブホルダー13に3Dデジタイザーの位置センサーを組み込んでおくという入力様式も可能である。その他、モニターに映った頭部の画像上の点を指定して入力するなどの方法もある。
【0048】
保存装置10は、計算機8の補助記憶装置であり、ハードディスク等が該当する。データベース12は、保存装置10に作成される。尚、保存装置10のデータを退避したCD(コンパクトディスク)やFD(フレキシブルディスク)などの記録媒体10aも保存装置10に含むものとする。
【0049】
表示装置11は、保存装置10のデータを可視化する装置であり、モニターやプリンターが該当する。経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法1の全ての過程を図示することができる。
【0050】
図3は、本発明である経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法の被験者の頭表上の基準点を示す図であり、図4は、本発明である経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法で使用するプローブホルダーを示す図である。
【0051】
図3に示すように、国際10-20法(26)は、頭表26aにおいて、鼻根26bをNz、後頭結節26cをIz、左耳介前点26dをT9、右耳介前点26eをT10とした場合に、まず、Nz-Iz間の距離をそれぞれ10%、20%、20%、20%、20%、10%に等分して、Nz、Fpz、Fz、Cz、Pz、Oz、Izの頭表上基準点19を設定し、T9-T10間の距離をそれぞれ10%、20%、20%、20%、20%、10%に等分して、T9、T3、C3、Cz、C4、T4、T10の頭表上基準点19を設定する。
【0052】
次に、Fpz-Oz間の左側をそれぞれ10%、20%、20%、20%、20%、10%に等分して、Fpz、Fp1、F7、T3、T5、O1、Ozの頭表上基準点19を設定し、Fpz-Oz間の右側をそれぞれ10%、20%、20%、20%、20%、10%に等分して、Fpz、Fp2、F8、T4、T6、O2、Ozの頭表上基準点19を設定する。
【0053】
最後に、F7-Fz間の等分点にF3の頭表上基準点19を設定し、F8-Fz間の等分点にF4の頭表上基準点19を設定し、T5-Pz間の等分点にP3の頭表上基準点19を設定し、T6-Pz間の等分点にP4の頭表上基準点19を設定する。
【0054】
図4に示すように、入力手段2で使用するプローブホルダー13には、任意の数のプローブ14が設置される。プローブホルダー13は、左側プローブホルダー13aと右側プローブホルダー13bに分けることもできる。
【0055】
プローブ14には、送光プローブ14aと受光プローブ14bとがある。図4のT1~T6が送光プローブ14aで、図4のR1~R6が受光プローブ14bである。この例では、送光プローブ14aと受光プローブ14bとは、互い違いに配置されるが、他の設置法もある。尚、送光プローブ14aと受光プローブ14bの間隔の例としては、約250mmである。
【0056】
図4のCh1~Ch14は、測定点となるチャネル14cであり、送光プローブ14aと受光プローブ14bの中点に位置する。送光プローブ14aと受光プローブ14bを正方形状に配置した場合は、チャネル14cは菱形状の配置となる。
【0057】
送光プローブ14aから頭に光を入射すると、脳を経由して、受光プローブ14bで減衰した光を受ける。脳が活動している場合、活動部位で酸素化型ヘモグロビンが増加して脱酸素化型ヘモグロビンが減少するといったヘモグロビンの濃度変化が生じることから、光の吸収が変化する。この原理によって、送光プローブ14aと受光プローブ14bの中点付近の部位の脳活動を計測することができる。この中点を測定点とする。
【0058】
送光プローブ14a、受光プローブ14b及びチャネル14cは、位置センサーを設置して位置を測定する。位置センサーとして、磁気式の空間計測装置である3Dデジタイザーを使用するが、その他に光学式位置センサーや超音波式位置センサーなどを用いることもできる。
【0059】
プローブホルダー13の装着例としては、左側プローブホルダー13aを、R2の受光プローブ14bが、国際10-20法におけるFp1-F7間の中点となるように被験者の頭に当て、右側プローブホルダー13bを、R5の受光プローブ14bが、国際10-20法におけるFp2-F8間の中点となるように被験者の頭に当てる。
【0060】
図5は、本発明である経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法の実世界空間から標準脳座標空間への変換手段を示す図である。尚、表現手段7により変換手段4の状況も表示装置11に表示することが可能である。
【0061】
図5に示すように、変換手段4では、計算機8を利用して、被験者16の頭表上基準点19及び頭表上計測点20を、3次元の実世界空間15から標準脳座標空間15aに座標変換4a及び仮想正規化4cする。尚、頭表上基準点19は、国際10-20法(26)などにより一義的に定まる点であり、頭表上計測点20は、頭表上の任意の点である。
【0062】
まず、被験者16の頭表上基準点19を、取出手段3で取得した標準脳座標空間15a上の参照脳18の頭表上基準点データ12dに座標変換4aすることによって、標準脳座標空間15aに表現し、仮想正規化基準点19aとする。
【0063】
頭表上基準点19から仮想正規化基準点19aへの変換に倣い、頭表上計測点20を同様に座標変換4a、すなわち仮想正規化4cして、仮想正規化計測点20aとする。尚、変換式を予めデータベース12に登録しておくことも可能である。
【0064】
被験者16の頭表上基準点19と、参照脳18の頭表上基準点データ12dとの関係により、頭表上計測点20を変換するが、参照脳18を変えて複数回繰り返して推定することにより、精度を向上させることができる。
【0065】
図6は、本発明である経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法の推定手段のうち被験者内推定手段を示す図であり、図7は、本発明である経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法の推定手段のうち被験者間推定手段を示す図であり、図8は、本発明である経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法の推定手段の誤差成分の統合を示す図である。
【0066】
図6に示すように、推定手段6の被験者内推定手段6aでは、一人の被験者16について、入力手段2で入力した頭表上基準点19及び頭表上計測点20を、複数の参照頭表17、17a、17b、・・・及び参照脳18、18a、18b、・・・を用いて、標準脳座標空間15a上に頭表位置及び脳表位置として推定する。
【0067】
尚、参照頭表17、17a、17b、・・・は、データベース12の参照脳テーブル12aから頭表データ12bを抽出したものであり、参照脳18、18a、18b、・・・は、データベース12の参照脳テーブル12aから脳表データ12cを抽出したものである。
【0068】
被験者16の頭表上基準点19及び頭表上計測点20は、変換手段4により、参照脳テーブル12aの頭表上基準点データ12dを基にして、参照頭表17、17a、17b、・・・上に仮想正規化基準点19a及び仮想正規化計測点20aとして変換される。
【0069】
仮想正規化計測点20aは、投影手段5により、参照脳テーブル12aの頭表データ12bと脳表データ12cの対応関係を基にして、参照脳18、18a、18b、・・・上に仮想正規化脳表投影点20bとして投影される。尚、この投影手段5を平均参照脳24に対して行う場合もある。
【0070】
参照脳18の仮想正規化脳表投影点20b、参照脳18aの仮想正規化脳表投影点20b、参照脳18bの仮想正規化脳表投影点20b、・・・を計算機8により統計処理して、平均参照脳24の脳表位置として推定される被験者内推定点21と誤差成分である被験者内誤差21aを得る。
【0071】
図7に示すように、推定手段6の被験者間推定手段6bでは、複数の被験者16、16a、16b、・・・について、入力手段2で入力した頭表上基準点19及び頭表上計測点20に対して被験者内推定手段6aまで行い、更にそれらを集計して標準脳座標空間15a上に頭表位置及び脳表位置を推定する。
【0072】
被験者内推定手段6aにより、被験者16、16a、16b、・・・の頭表上基準点19及び頭表上計測点20から、参照脳18、18a、18b、・・・上に、それぞれ平均参照脳24の脳表位置として推定される被験者内推定点21と誤差成分である被験者内誤差21aが得られる。
【0073】
参照脳18の被験者内推定点21及び被験者内誤差21a、参照脳18aの被験者内推定点21及び被験者内誤差21a、参照脳18bの被験者内推定点21及び被験者内誤差21a、・・・を計算機8により統計処理して、平均参照脳24の脳表位置として推定される被験者間推定点22と誤差成分である被験者間誤差22aを得る。
【0074】
図8に示すように、推定手段6の被験者内推定手段6a及び被験者間推定手段6bにより、被験者間推定点22が平均参照脳24の脳表位置として最も信頼される最確推定点23として得られる。
【0075】
更に、被験者間誤差22aに被験者内誤差21aの寄与を加えて全ての誤差成分を計算機8を用いて統合することにより、平均参照脳24の脳表位置に関する全誤差、すなわち、推定精度23aを求めることができる。
【0076】
推定手段6は、参照脳18を10個以上取り出して推定すれば、精度の向上が見られる。被験者16で10~数千回の推定、被験者16aで10~数千回の推定、被験者16bで10~数千回の推定、・・・と、2段階の繰り返しで推定を行うことで、複数被験者16、16a、16b、・・・の集団解析についても、精度の高い結果が得られる。
【0077】
図9は、本発明である経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法の表現手段により最確推定点及び推定精度を表した図であり、図10は、本発明である経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法の最確推定点及び推定精度を示した表である。
【0078】
図9に示すように、表現手段7により、標準脳座標空間15a上の平均参照脳24に対し、推定した頭表位置又は脳表位置の推定点25を、表示装置11を利用して表示することができる。
【0079】
尚、標準脳座標空間15a上には、平均参照脳24の左側を示す左側平均参照脳24aと、平均参照脳24の右側を示す右側平均参照脳24bとを表示し、それぞれ推定点25を配置している。
【0080】
推定点25には、頭表上のプローブ14を標準脳座標空間15a上の脳表上に推定した推定プローブ位置25aと、チャネル14cを標準脳座標空間15a上の脳表上に推定した推定チャネル位置25bとを用いている。
【0081】
推定点25は、最確推定点23を中心とし、推定精度23aを半径とする球で表したものである。プローブ14又はチャネル14cの頭表上計測点20がどこに推定されたかが容易に把握できる。
【0082】
図10に示すように、表27は、送光プローブ14a、受光プローブ14b及びチャネル14cの頭表上計測点20を、標準脳座標空間15a上に推定した最確推定点23の座標と、標準偏差により推定精度23aを表した例である。
【0083】
以上により、本発明である経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法1は、3次元頭部構造画像のない被験者16に対して、経頭蓋的脳機能測定・刺激法における測定・刺激点の頭表位置情報を標準脳座標空間15a上に推定することが可能となる。
【0084】
また、データベース12から複数の3次元画像を取り出し、仮想的な標準脳座標空間15a上への推定を繰り返し、その結果を統計的に処理することによって、当該推定点25の最確推定点23及び推定精度23aの情報を表現することが可能となる。
【0085】
更に、3次元頭部構造画像のない複数被験者16に対して、それぞれの被験者16につき標準脳座標空間15a上への推定をおこない、その結果を統計的に処理することによって、複数被験者16における当該推定点25の最確推定点23及び推定精度23aの情報を表現することが可能となる。
【実施例3】
【0086】
本発明による方法で、補助的構造画像および3Dデジタイザーなしに、NIRSのプローブ、チャネル位置を、標準脳座標系に推定し標準脳座標空間上で表現することも可能である。このためには、まず、プローブホルダーを被験者の頭表に置いた際の変形を、コンピュータ上で再現するアルゴリズムを用意しておく必要がある。
【0087】
プローブホルダーの変形を再現するアルゴリズムは、ホルダーの種類によって異なるが、球体模型、楕円体模型、頭表模型、ヒトの頭表なども用いて、実世界空間でホルダーを設置した際の変形と比較することによって、アルゴリズムの精度を検証することができる。
【0088】
市販のプローブホルダーを例に、ホルダーの変形を示す。図11は、本発明である経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法において、頭表の測定に使用するプローブホルダーの模式図である。
【0089】
尚、本実施例では、日立メディコ社製の3×5プローブホルダーを使用する。プローブホルダー28は、受光プローブ28aと送光プローブ28bを交互に、縦に3個、横に5個並べ、受光プローブ28aと送光プローブ28bの間にチャネル28cを配置したものである。
【0090】
このプローブホルダーの変形は、図12のように表される。図12は、本発明である経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法において、プローブホルダーをコンピュータ上に再現した仮想プローブホルダーを示す図である。
【0091】
まず、プローブホルダー28の中心29bをコンピュータ上に作られた球面や頭表29aの上に設置する。その上に2本の交線29cをそれぞれの内積が最小になるように引く。それぞれの交線29c上に球面又は頭表上の軌跡が30mm間隔となるように点29dを設置する。このようにして得られた点29dを利用して、各辺が30mmとなるようなマス目を作りながら、点29dを設置していく。この結果コンピュータ上に再現されたプローブホルダーを仮想プローブホルダー29と呼ぶ。
【0092】
図13は、本発明である経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法において、実世界空間のプローブホルダーと仮想空間の仮想プローブホルダーとを比較した図であり、図14は、本発明である経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法において、実世界空間のプローブホルダーと仮想空間の仮想プローブホルダーとを比較した結果を示す表である。
【0093】
まず、実世界空間30において、半径が124mmの球面模型30aとセンサー30bを設置し、球面模型30aにはプローブホルダー28を装着する。実世界空間30上でプローブホルダー28を変形させた場所を計測点30dとし、ペン30c等でマーキングした後、磁気式3Dデジタイザー30eで計測点30dの位置を計測する。
【0094】
次に、標準脳座標系で構築した仮想空間31において、半径が124mmの仮想球面31aを生成し、仮想球面31a上に仮想プローブホルダー29を設置する。実世界空間30上の計測点30dを仮想空間31a上に座標変換し、仮想プローブホルダー29の位置と比較する。
【0095】
上記方法に基づき、仮想プローブホルダー29をサイズの異なる仮想球面31a(r=62.5mm、74mm、98.5mm、124mm、148mm、223mm)に展開した結果を、実世界空間30上において、プローブホルダー28を前述と同じサイズの球面模型30a(r=62.5、74mm、98.5mm、124mm、148mm、223mm)上に置いた結果と比較した。実世界空間30上でのプローブホルダー28の変形は磁気式3Dデジタイザー30eで計測した。
【0096】
図14の表32が表すように、異なる球の上で、無視できる範囲の誤差で、仮想プローブホルダー29は実世界空間30上でのプローブホルダー28の変形を模すことができた。ほとんどのヒトの頭表の曲率は、ここで用いられた球面の曲率の範囲内に収まるため、アルゴリズムの精度は検証されたといってよい。
【0097】
図15は、本発明である経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法において、実世界空間の頭表と仮想空間に再構築した頭表とを比較した図であり、図16は、本発明である経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法において、実世界空間の頭表と仮想空間に再構築した頭表とを比較した結果を示す表である。
【0098】
まず、実世界空間30において、頭表30fにプローブホルダー28を装着する。実世界空間30上でプローブホルダー28を変形させた場所を計測点30dとし、ペン30c等でマーキングした後、磁気式3Dデジタイザー30eでプローブホルダー28の位置と頭表再構築用の位置を計測する。
【0099】
次に、仮想空間31上に、実世界空間30で計測した頭表とプローブホルダー28の位置を再構築し、再構築後計測点31bとする。仮想空間31に再構築された頭表上の点を基準点31cとし、仮想プローブホルダー29を設置する。基準点31cを基にして再構築後計測点31bと仮想プローブホルダー29を重ねて、プローブホルダー28と仮想プローブホルダー29とを比較する。
【0100】
上記方法に基づき、仮想プローブホルダー29をコンピュータ上に再現された頭表に展開した結果を、実世界空間30上でプローブホルダー28を同じ頭表30f上に置いた結果と比較した。仮想空間31上での頭表の再構築は、磁気式3dデジタイザー30eを用いて、実世界空間30の頭表30fを計測した結果を用いて行った。また、実世界空間30の頭表30f上でのプローブホルダー28の変形は、ペン30cで位置をマーキングした後、磁気式3dデジタイザー30eで計測した。このような比較を、6人の頭表30fの前頭部、後頭部、右側頭部、左側頭部について行った。
【0101】
図16の表33が表すように、頭表30fの上でも、平均誤差1mmという、無視できる範囲の誤差で、仮想プローブホルダー29は実世界空間30上でのプローブホルダー28の変形を模すことができた。
【0102】
このようにして精度の確認された仮想プローブホルダー29を利用すれば、3Dデジタイザー30eによるプローブホルダー28位置の計測を省略することも可能である。プローブホルダー28を国際10-20システムなどを利用して頭表上に設置し、その配置をコンピュータ上で仮想プローブホルダー29を用いて再現することによって、プローブ28a、28bやチャネル28cの位置を、MNI座標系など、任意の標準脳座標系に表現することができる。
【実施例4】
【0103】
参照脳および参照頭表は、任意の被験者の脳画像から作られるが、これらを変形することによって、参照脳および参照頭表を増やすことができる。
【0104】
そのような変形の方法の一つにリサンプリング法が有効である。たとえば、被験者の脳画像から作られた参照頭表がn個ある。ここから、ある参照頭表の高さ、幅、奥行のサイズを取り出し、他の参照頭表をそのサイズに変形する。このような作業によって、nの2乗個の参照脳を合成することが可能である。これらのサイズ比率は、現実の頭表や脳から得られたものであるため、現実の頭表や脳の形態に即した参照脳を合成することができる。
【0105】
あるいは、正規分布ランダムサンプリング法も有効である。たとえば、被験者の脳画像から作られたn個の参照頭表のサイズの分布を求める。この分布に基づいて、n個の参照頭表を変形させる。これによって、現実の被験者の頭表のサイズを反映した無限数の参照頭表を作成することができる。
【0106】
上述のリサンプリング法と正規分布ランダムサンプリング法を組み合わせることも可能である。
【0107】
図17は、本発明である経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法において リサンプリング法と正規分布ランダムサンプリングを組み合わせた位置推定を示す図であり、図18は、本発明である経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法において、リサンプリング法と正規分布ランダムサンプリングを組み合わせた位置推定の結果を示す図である。
【0108】
本発明である経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法を実現するために使用する装置としては、頭表上の点を指定するためのプローブホルダー28、位置を測定するための磁気式3Dデジタイザーなどのセンサー、及び仮想空間31を構築するためのコンピュータ等である。
【0109】
また、コンピュータのデータベースには、多数の被験者から取得した頭表及び脳表の情報を参照頭表及び参照脳として蓄積しておく。また、それらの情報を集計して正規分布36aに基づく平均36bや標準偏差36c等も算出しておく。
【0110】
まず、複数の参照頭表34、34a、34b、・・・、及び参照脳35、35a、35b、・・・の中からランダムに1つ抽出し、複数の参照脳35、35a、35b、・・・の中から高さ37a、幅37b及び奥行37c等からなる一組の脳サイズ37をランダムに抽出し、複数の参照頭表34、34a、34b、・・・の中から頭表サイズ36の正規分布36aを基にランダムに1つの相対サイズを抽出する。
【0111】
次に、参照頭表34、参照脳35、高さ37a、幅37b、奥行37c、及び相対サイズ等を組み合わせて、合成参照頭表38及び合成参照脳38aを生成する。この過程を多数回繰り返すことにより多数の合成参照頭表38及び合成参照脳38aが出来る。
【0112】
仮想プローブホルダー29の頭表上の位置及び脳表上に投影した位置を基に、計測点30dを合成参照頭表38及び合成参照脳38a上に仮想正規化する。これらの統計を取ることにより、頭表上推定位置40及び脳表上推定位置41を算出することができる。
【0113】
仮想正規化した合成参照頭表38上における計測点30dの頭表上推定位置40は、最確値40aを中心とし、推定精度40bを半径とする球により可視化表現することができる。また、合成参照脳38a上に投影した計測点30dの脳表上推定位置41は、最確値41aを中心とし、推定精度41bを半径とする球により可視化表現することができる。
【0114】
尚、本発明である経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法を実現するソフトウェアプログラムは、記録媒体に保存しておき、中央処理装置(CPU)が、必要に応じてコンピュータの記憶装置(メモリ)に読み込み、命令を制御及び実行する。
【0115】
上記方法に基づき、実施例3で用いた仮想プローブホルダー29を、リサンプリング法と正規分布ランダムサンプリング法によって合成された1000個の参照頭表・脳を用いてMNI座標上に位置推定した結果を示す。まず、17個の参照頭表・脳から、使用する参照頭表・脳をランダムに1個抽出する。次に、17個の参照頭表・脳から高さ、幅、奥行のサイズを1組ランダムに抽出する。さらに、17個の参照頭表・脳から相対的なサイズの正規分布を推定し、その分布からランダムに1つの相対サイズを抽出する。このようにして得られた、参照頭表・脳、高さ、幅、奥行のサイズ、相対サイズを組み合わせ、1つの参照頭表・脳を作成する。この過程を1000回繰り返し、1000個の参照頭表・脳を作成する。なお、繰り返し数は1000回に限定されるものではない。
【0116】
このようにして作られた1000個の参照頭表・脳上を用いて、3×5のプローブホルダー設置のシミュレーションを行った。プローブホルダーの下段の中心が国際10—20システムのFpzに位置し、かつ、プローブホルダーの下段のプローブ列が、国際10-20システムのT7-Fpz-T8からなる規準曲線と平行になるように設置した。
【0117】
シミュレーションの結果、図18に示すように、推定精度数ミリメートル程度で、プローブの位置をMNI標準脳座標系上に推定することができた。このように、仮想プローブホルダー29や、合成参照脳を用いることによって、簡便に精度の高い、プローブホルダー28の位置推定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明である経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法の流れを示すフローチャートである。
【図2】本発明である経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法の装置の構成を示す図である。
【図3】本発明である経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法の被験者の頭表上の基準点を示す図である。
【図4】本発明である経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法で使用するプローブホルダーを示す図である。
【図5】本発明である経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法の実世界空間から標準脳座標空間への変換手段を示す図である。
【図6】本発明である経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法の推定手段のうち被験者内推定手段を示す図である。
【図7】本発明である経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法の推定手段のうち被験者間推定手段を示す図である。
【図8】本発明である経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法の推定手段の誤差成分の統合を示す図である。
【図9】本発明である経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法の表現手段により最確推定点及び推定精度を表した図である。
【図10】本発明である経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法の最確推定点及び推定精度を示した表である。
【図11】本発明である経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法において、頭表の測定に使用するプローブホルダーの模式図である。
【図12】本発明である経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法において、プローブホルダーをコンピュータ上に再現した仮想プローブホルダーを示す図である。
【図13】本発明である経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法において、実世界空間のプローブホルダーと仮想空間の仮想プローブホルダーとを比較した図である。
【図14】本発明である経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法において、実世界空間のプローブホルダーと仮想空間の仮想プローブホルダーとを比較した結果を示す表である。
【図15】本発明である経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法において、実世界空間の頭表と仮想空間に再構築した頭表とを比較した図である。
【図16】本発明である経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法において、実世界空間の頭表と仮想空間に再構築した頭表とを比較した結果を示す表である。
【図17】本発明である経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法において リサンプリング法と正規分布ランダムサンプリングを組み合わせた位置推定を示す図である。
【図18】本発明である経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法において、リサンプリング法と正規分布ランダムサンプリングを組み合わせた位置推定の結果を示す図である。
【符号の説明】
【0119】
1 経頭蓋的脳機能測定・刺激点の空間解析方法
1a 装置
2 入力手段
3 取出手段
4 変換手段
4a 座標変換
4b 正規化
4c 仮想正規化
5 投影手段
5a 脳表上投影
6 推定手段
6a 被験者内推定手段
6b 被験者間推定手段
7 表現手段
8 計算機
9 入力装置
10 保存装置
10a 記録媒体
11 表示装置
12 データベース
12a 参照脳テーブル
12b 頭表データ
12c 脳表データ
12d 頭表上基準点データ
13 プローブホルダー
13a 左側プローブホルダー
13b 右側プローブホルダー
14 プローブ
14a 送光プローブ
14b 受光プローブ
14c チャネル
15 実世界空間
15a 標準脳座標空間
16 被験者
16a 被験者
16b 被験者
17 参照頭表
17a 参照頭表
17b 参照頭表
18 参照脳
18a 参照脳
18b 参照脳
19 頭表上基準点
19a 仮想正規化基準点
20 頭表上計測点
20a 仮想正規化計測点
20b 仮想正規化脳表投影点
21 被験者内推定点
21a 被験者内誤差
22 被験者間推定点
22a 被験者間誤差
23 最確推定点
23a 推定精度
24 平均参照脳
24a 左側平均参照脳
24b 右側平均参照脳
25 推定点
25a 推定プローブ位置
25b 推定チャネル位置
26 国際10-20法
26a 頭表
26b 鼻根
26c 後頭結節
26d 左耳介前点
26e 右耳介前点
27 表
28 プローブホルダー
28a 受光プローブ
28b 送光プローブ
28c チャネル
29 仮想プローブホルダー
29a 頭表
29b 中心
29c 交線
29d 点
30 実世界空間
30a 球面模型
30b センサー
30c ペン
30d 計測点
30e 磁気式3Dデジタイザー
30f 頭表
31 仮想空間
31a 仮想球面
31b 再構築後計測点
31c 基準点
32 表
33 表
34 参照頭表
34a 参照頭表
34b 参照頭表
35 参照脳
35a 参照脳
35b 参照脳
36 頭表サイズ
36a 正規分布
36b 平均
36c 標準偏差
37 脳サイズ
37a 高さ
37b 幅
37c 奥行
38 合成参照頭表
38a 合成参照脳
39 脳表投影後プローブホルダー
40 頭表上推定位置
40a 最確値
40b 推定精度
41 脳表上推定位置
41a 最確値
41b 推定精度
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17