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明細書 :ビフェニル誘導体オリゴマーおよび液晶

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4192231号 (P4192231)
公開番号 特開2004-075623 (P2004-075623A)
登録日 平成20年10月3日(2008.10.3)
発行日 平成20年12月10日(2008.12.10)
公開日 平成16年3月11日(2004.3.11)
発明の名称または考案の名称 ビフェニル誘導体オリゴマーおよび液晶
国際特許分類 C07C 255/54        (2006.01)
C07C 253/30        (2006.01)
C09K  19/20        (2006.01)
FI C07C 255/54
C07C 253/30
C09K 19/20
請求項の数または発明の数 5
全頁数 16
出願番号 特願2002-239760 (P2002-239760)
出願日 平成14年8月20日(2002.8.20)
審査請求日 平成17年6月24日(2005.6.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
発明者または考案者 【氏名】板原 俊夫
個別代理人の代理人 【識別番号】100090273、【弁理士】、【氏名又は名称】國分 孝悦
審査官 【審査官】近藤 政克
参考文献・文献 英国特許出願公開第02162515(GB,A)
特開昭54-021978(JP,A)
特開平05-005905(JP,A)
Polymer J.,1986年,18(10),p.779-782
Mol.Cryst.Liq.Cryst.,1990年,182B,p.357-371
Mol.Cryst.Liq.Cryst.,1984年,102(letters),p.223-233
J.Mater.Chem.,1999年,9(10),p.2321-2325
日本液晶学会討論会予稿集,2002年10月,p.385-386
日本液晶学会討論会予稿集,2002年10月,p.387-388
調査した分野 C07C 255/54
C07C 253/30
C09K 19/20
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
式I
【化1】
JP0004192231B2_000015t.gif
(式中、p=1、2,3; q=0,1,2; n,m,k=3~12)
で示されるビフェニル誘導体オリゴマー。
【請求項2】
式II
【化2】
JP0004192231B2_000016t.gif
(式中、q=1、2、3; n=3~12)
で示されるビフェニル誘導体オリゴマー。
【請求項3】
式III
【化3】
JP0004192231B2_000017t.gif
(式中、p=1、2; n,m=3~12; X=ハロゲン)
で示されるビフェニル誘導体オリゴマー。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のビフェニル誘導体オリゴマーを少なくとも一つ含む液晶。
【請求項5】
4-シアノ-4’-ヒドロキシビフェニルに式IV
【化4】
JP0004192231B2_000018t.gif
(式中、n=3~12; Xはハロゲン原子)
を反応させ式Vの化合物を合成し、
【化5】
JP0004192231B2_000019t.gif
(式中、n=3~12; Xはハロゲン原子)
次いで、式Vの化合物と4’-ヒドロキシ-4-ビフェニルカルボン酸を反応させ式IIの化合物および式Iの化合物を合成し、
式IIの化合物と式IVの化合物とを反応させ式IIIの化合物および式Iの化合物を合成し、
必要があれば式IIの化合物と式IIIの化合物または式IIの化合物と式Vの化合物とを反応させて得られる請求項1に記載の式Iの化合物を製造する方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、新規化合物に関する。より詳しくは、新規なビフェニル誘導体オリゴマーおよびその製法、これらを用いた液晶、新規な物性を有する液晶に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
4-シアノ-4’-ヒドロキシビフェニルのアルキル置換体は重要な低分子液晶である(液晶辞典、日本学術振興会、液晶部会、1994、培風館、p252、付表2-5;以下先行技術1という)。4-シアノ-4’-ヒドロキシビフェニルを式IVの化合物と反応させて、4-シアノ-4’-ヒドロキシビフェニルをメチレン鎖で連結した液晶二量体の合成が知られている(J. W. Emsley, G. R. Luckhurst, G. N. Shilstone, およびI. Sage, Mol. Cryst. Liq. Cryst. 1984, 102, pp223-233; 以下先行技術2という)。
【0003】
先行技術2の4-シアノ-4’-ヒドロキシビフェニルをメチレン鎖で連結した液晶二量体の間に4、4’-ジヒドロキシビフェニルや4、4’-ジヒドロキシアゾベンゼンなどの液晶化合物1つを挿入した液晶三量体の合成が知られている(Furuya, K. AsahiおよびA. Abe, PolymerJ., 1986, 18, pp779-782; T. Ikeda, T. Miyamoto, S. Kurihara, M. TsukadaおよびS. Tezuka, Mol. Cryst. Liq. Cryst., 1990, 182B, pp357-371; C. T. ImurieおよびG. R. Kuckhurst, J. Mater. Chem., 1998, 8, pp1339-1343;以下先行技術3という)。さらに先行技術2の液晶二量体の間に液晶化合物としてアゾメチン構造を2つ挿入した液晶四量体の合成が知られている(C. T. Imurie, D. Stewart, C. Remy, D. W. ChristieおよびR. Harding, J. Mater. Chem., 1999, 9,pp2321-2335;以下先行技術4という)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、先行技術2の液晶二量体、先行技術3の液晶三量体、先行技術4の液晶四量体は一般の低分子液晶と同様な液晶性を示すのみである。
また、先行技術3、先行技術4では4-シアノ-4’-ヒドロキシビフェニルを末端に結合させた液晶二量体の間に4-シアノ-4’-ヒドロキシビフェニルとは構造の異なるビフェニル化合物を挿入していた。
さらに、これまで純粋な液晶五量体以上の多量体型の液晶は知られていない。
【0005】
本発明は、4-シアノ-4’-ヒドロキシビフェニルに非対称分子として双極子をもつ4’-ヒドロキシ-4-ビフェニルカルボン酸を導入することにより液晶オリゴマー内部のコア部分として挿入した、液晶三量体から液晶七量体までの、新規な、純粋な多量体型化合物を提供すること、従来の一般的な低分子液晶の物性にない、特徴ある物性をもつ純粋な液晶オリゴマーを提供すること目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本願発明者は、鋭意研究の結果、末端の液晶構造のコア部分として4-シアノ-4’-ヒドロキシビフェニルを用い、液晶構造の内部のコア部分として4’-ヒドロキシ-4-ビフェニルカルボン酸を用い、それらのコア部分を炭素数3から12のメチレン鎖で連結した、コア部分の数が3個から7個の式Iの化合物である新規液晶オリゴマーを合成し、その物性を明らかにすることにより発明を完成し、上記課題を解決した。
【0007】
本発明にいう液晶とは、化合物の温度を上げたときの液晶、または他の化合物と混合したときの液晶、またはある特定の溶媒に溶解させたときの液晶をいう。
【0008】
本発明にいう、式Iの化合物である液晶オリゴマーとは、ビフェニル基などのコア部分と炭化水素鎖などフレキシブル部位からなる構造が複数連結した液晶性を示す分子のことをいう。液晶分子の構造は一般的にコア部分とフレキシブル部位から構成されている細長い分子であり、液晶オリゴマーにはそのコア部分とフレキシブル部位からなる構造が3個連結した液晶三量体、4個連結した液晶四量体、5個連結した液晶五量体、6個連結した液晶六量体、7個連結した液晶七量体があり、これらは液晶オリゴマーと総称される。
【0009】
かくして、本発明に従えば、4-シアノ-4’-ヒドロキシビフェニルまたは4’-ヒドロキシ-4-ビフェニルカルボン酸を炭素数3から12のメチレン鎖で連結することにより式Iの化合物、式IIの化合物、式IIIの化合物が提供される。
【0010】
【化6】
JP0004192231B2_000002t.gif(式中、p=1、2,3; q=0,1,2; n,m,k=3~12)
【0011】
【化7】
JP0004192231B2_000003t.gif(式中、q=1、2、3; n=3~12)
【0012】
【化8】
JP0004192231B2_000004t.gif(式中、p=1、2; k,m=3~12; X=ハロゲン)
【0013】
本発明の式I及び式IIの新規化合物は液晶性を持つビフェニル誘導体からなる液晶オリゴマーである。本発明の液晶オリゴマーの好ましい態様は一般の低分子液晶とは異なった物性を示すことで、多量体型の液晶オリゴマーになるにつれ、液晶から液体への透明点のエンタルピー変化は大きくなり、多量体型の液晶オリゴマーでは液晶状態から温度を下げると液晶の構造のままで固体状態へと変わり、液晶構造を保持したままの固体状態を形成させることができること、などを含む特徴を提供する。
【0014】
さらに本発明は、上記のビフェニル誘導体オリゴマーの製法に関するもので、4-シアノ-4’-ヒドロキシビフェニルに式IV
【化9】
JP0004192231B2_000005t.gif(式中、n=3~12; Xはハロゲン原子)
を反応させ式Vの化合物を合成し、
【化10】
JP0004192231B2_000006t.gif(式中、n=3~12; Xはハロゲン原子)
次いで、式Vの化合物と4’-ヒドロキシ-4-ビフェニルカルボン酸を反応させ式IIの化合物および式Iの化合物を合成し、
式IIの化合物と式IVの化合物とを反応させ式IIIの化合物および式Iの化合物を合成し、
必要があれば式IIの化合物と式IIIの化合物または式IIの化合物と式Vの化合物とを反応させて得られる請求項1に記載の式Iの化合物を製造する方法である。
【0015】
【発明の実施の形態】
次ぎに式Iの化合物、式IIの化合物、式IIIの化合物の合成と、多量体型の液晶オリゴマーの物性の特徴について述べる。
【0016】
本発明で合成した4-シアノ-4’-ヒドロキシビフェニル、4’-ヒドロキシ-4-ビフェニルカルボン酸、炭素数3から12のメチレン鎖からなる式Iの化合物である液晶構造が3個連結した液晶三量体、4個連結した液晶四量体、5個連結した液晶五量体、6個連結した液晶六量体、7個連結した液晶七量体は全て新規化合物であり、それらの新規化合物の構造は核磁気共鳴スペクトル(NMR)、赤外吸収スペクトル(IR)、質量スペクトル(マススペクトル)、元素分析などの手段により同定された。
【0017】
4-シアノ-4’-ヒドロキシビフェニルと式IVのα,ω—ジブロモアルカンの等モルを有機溶媒たとえばN,N—ジメチルホルムアミド、DMSOに溶かし、塩基たとえば炭酸カリウム等モルを加え12時間から24時間室温で攪拌する。反応液をろ過し、ろ液の溶媒を蒸留し、残渣をクロロホルムに溶解し、シリカゲルカラムクロマトグラフ(展開溶媒:クロロホルムとヘキサンの混合溶媒)で分離する。式Vの化合物たとえばα-ブロモ-ω—(4-シアノビフェニル-4’-イルオキシ)アルカンと液晶二量体とを得る。α,ω—ジブロモアルカンの他にα,ω—ジクロロアルカンやα,ω—ジヨードアルカンでも同様の反応が起こる。
(反応式1)
【0018】
【化11】
JP0004192231B2_000007t.gif(ただし、Xはハロゲン原子)
【0019】
また4-シアノ-4’-ヒドロキシビフェニルと式IVの化合物たとえばα,ω—ジブロモアルカンのモル比を変えることで、α-ブロモ-ω—(4-シアノビフェニル-4’-イルオキシ)アルカンと液晶二量体の収量を変えることができる。
なお、α-ブロモ-ω—(4-シアノビフェニル-4’-イルオキシ)アルカンと液晶二量体の収率はnの数により変化する。
【0020】
反応式1の生成物であるα-ブロモ-ω—(4-シアノビフェニル-4’-イルオキシ)アルカンと4’-ヒドロキシ-4-ビフェニルカルボン酸の等モルをN,N—ジメチルホルムアミドに溶かし、炭酸カリウムの等モルを加え15時間室温で攪拌する。反応液をろ過し、ろ液の溶媒を蒸留し、残渣をクロロホルムに溶解し、シリカゲルクロマトグラフ(展開溶媒:クロロホルムまたはクロロホルムとメタノールの混合溶媒)で分離し、式IIの化合物(q=1)と式Iの液晶三量体(n=m,p=1,q=0)を得る。式IIの化合物(q=1)で末端がCOOHでなくOHであることはNMRとIRから確認される。
(反応式2)
【0021】
【化12】
JP0004192231B2_000008t.gif【0022】
反応式2の生成物である式IIの化合物(p=1)と式IVのα,ω—ジブロモアルカンの等モルをN,N—ジメチルホルムアミドに溶かし、炭酸カリウムの等モルを加え15時間室温で攪拌する。反応液をろ過し、ろ液の溶媒を蒸留し、残渣をクロロホルムに溶解し、シリカゲルクロマトグラフ(展開溶媒:クロロホルムまたはクロロホルムとヘキサンの混合溶媒)で分離し、式IIIの化合物(p=1)と式Iの液晶四量体(n=k,p=1,q=1)を得る。
(反応式3)
【0023】
【化13】
JP0004192231B2_000009t.gif【0024】
反応式3の生成物である式IIIの化合物(p=1、n=m)と4’-ヒドロキシ-4-ビフェニルカルボン酸の等モルをN,N—ジメチルホルムアミドに溶かし、炭酸カリウムの等モルを加え15時間室温で攪拌する。反応液をろ過し、ろ液の溶媒を蒸留し、残渣をクロロホルムに溶解し、薄層シリカゲルクロマトグラフ(展開溶媒:クロロホルムとヘキサンの混合溶媒またはクロロホルムとメタノールの混合溶媒)で分離し、式IIの化合物(q=2)と式Iの液晶五量体(n=m=k,p=2,q=1)を得る。
(反応式4)
【0025】
【化14】
JP0004192231B2_000010t.gif【0026】
反応式4の生成物である式IIの化合物(p=2)と式IVのα,ω—ジブロモアルカンの等モルをN,N—ジメチルホルムアミドに溶かし、炭酸カリウムの等モルを加え15時間室温で攪拌する。反応液をろ過し、ろ液の溶媒を蒸留し、残渣をクロロホルムに溶解し、薄層シリカゲルクロマトグラフ(展開溶媒:クロロホルムとヘキサンの混合溶媒またはクロロホルム)で分離し、式IIIの化合物(n=m,p=3)と式Iの液晶六量体(n=m=k,p=2,q=2)を得る。
(反応式5)
【0027】
【化15】
JP0004192231B2_000011t.gif【0028】
反応式5の生成物である式IIIの化合物(n=m,p=3)と4’-ヒドロキシ-4-ビフェニルカルボン酸の等モルをN,N—ジメチルホルムアミドに溶かし、炭酸カリウムの等モルを加え15時間室温で攪拌する。反応液をろ過し、ろ液の溶媒を蒸留し、残渣をクロロホルムに溶解し、薄層シリカゲルクロマトグラフ(展開溶媒:クロロホルムとヘキサンの混合溶媒またはクロロホルム)で分離し、式IIの化合物(q=3)と式Iの液晶七量体(n=m=k,p=3,q=2)を得る。
(反応式6)
【0029】
【化16】
JP0004192231B2_000012t.gif【0030】
上記の反応式3から反応式6において、メチレン鎖の数の異なる化合物間で反応を行うことができる。このことはメチレン鎖の数の異なった組み合わせにより、多数の物性の異なる多様な式Iの液晶オリゴマーを作ることを可能とする。なおメチレン鎖の数の異なる式Iの液晶三量体(p=1,q=0)の合成は反応式7として行う。
【0031】
反応式2の生成物であり、メチレン鎖の数がnの式IIの化合物(p=1)とメチレン鎖の数がmのα-ブロモ-ω—(4-シアノビフェニル-4’-イルオキシ)アルカンの等モルをN,N—ジメチルホルムアミドに溶かし、炭酸カリウム等モルを加え15時間室温で攪拌する。反応液をろ過し、ろ液の溶媒を蒸留し、残渣をシリカゲルクロマトグラフ(展開溶媒:ヘキサンとクロロホルムの混合溶媒またはクロロホルム)で分離し、反応式7の生成物としてメチレン鎖の数がnとmからなる式Iの液晶三量体(p=1,q=0)を得る。
【0032】
(反応式7)
【化17】
JP0004192231B2_000013t.gif【0033】
本発明の液晶オリゴマーは純粋な分子であるという点で高分子液晶とは異なる。またメチレン鎖の数により液晶オリゴマーの物性は異なる。たとえば、一般に純粋な低分子液晶は結晶から液晶に変わる融点のエンタルピー変化は大きく、液晶から液体への透明点のエンタルピー変化は小さい。ホットプレート上での偏光顕微鏡観察および/または示唆走査熱量計(DSC)を用いて、本発明で合成した液晶オリゴマーの熱的挙動を検討する。その結果、式Iのメチレン鎖の数やp、qの数が大きい多量体型の液晶オリゴマーの場合、液晶から液体への透明点のエンタルピー変化は融点のエンタルピー変化より大きくなる。このような物性は、一般の低分子液晶では起こらないことから、純粋な多量体型液晶オリゴマーの特徴を見出したことになる。
【0034】
さらに、式Iのメチレン鎖の数やp、qの数が大きい多量体型の液晶オリゴマーでは液晶状態から温度を下げると液晶の組織構造のままで固体状態へと変わる。この物性は炭素数が10のメチレン鎖の液晶オリゴマー(n=m=k=10)において、液晶四量体から液晶七量体までのものに見出される。このことはその固体状態が液晶状態の組織構造を保ったまま結晶化していることを示している。この物性は流動性のある液晶の構造を操作することにより、その固体状態での組織構造を制御できることを示している点で重要であり、新しい機能材料設計に有用である。
【0035】
【実施例】
実施例としてn=m=k=10の場合の液晶三量体から液晶七量体の合成とその物性、およびn=3とm=12またはn=12とm=3からなる液晶三量体とn=k=3とm=12またはn=k=12とm=3からなる液晶四量体の合成を示す。以下に、本発明の実施例を示すが、本発明はこの実施例によって制限されるものではない。
【0036】
実施例1: (反応式1、n=10)
4-シアノ-4’-ヒドロキシビフェニル(アメリカ合衆国Aldrich社製)10mmolと1,10-ジブロモデカン(特級試薬 和光純薬工業株式会社)10mmolを、N,N—ジメチルホルムアミド(特級試薬 ナカライ工業株式会社)200mlに溶かし、炭酸カリウム(特級試薬 ナカライ工業株式会社)10mmolを加え15時間室温で攪拌した。反応液をろ過し、ろ液の溶媒を蒸留し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフ(展開溶媒:クロロホルムとヘキサンの混合溶媒)で分離し、反応式1の生成物としてα-ブロモ-ω—(4-シアノビフェニル-4’-イルオキシ)デカンを収率69%で、液晶二量体を収率9%で得た。
【0037】
実施例2: (反応式2、n=m=10)
反応式1の生成物α-ブロモ-ω—(4-シアノビフェニル-4’-イルオキシ)デカン4mmolと4’-ヒドロキシ-4-ビフェニルカルボン酸(アメリカ合衆国Aldrich社製)4mmolをN,N—ジメチルホルムアミド100mlに溶かし、炭酸カリウム4mmolを加え15時間室温で攪拌した。反応液をろ過し、ろ液の溶媒を蒸留し、残渣を薄層シリカゲルクロマトグラフ(展開溶媒:クロロホルム)で分離した。反応式2の生成物として式IIの化合物(n=10,q=1)を収率47%で、式Iの液晶三量体(n=m=10,p=1,q=0)を収率14%で得た。式IIの化合物(n=10、q=1)の末端がCOOHでなくOHであることはNMRとIRから確認された。式IIの化合物(n=10、q=1)のNMRスペクトルを図1に示す。図1よりCOOHのピークは観測されず、OHのピーク(δ5.23)が観測されることから式IIの化合物であると確認された。
【0038】
実施例3 (反応式3、n=m=k=10)
反応式2で得た式IIの化合物(n=10,p=1)2mmolと1,10-ジブロモデカン2mmolをN,N—ジメチルホルムアミド50mlに溶かし、炭酸カリウム2mmolを加え15時間室温で攪拌した。反応液をろ過し、ろ液の溶媒を蒸留し、残渣を薄層シリカゲルクロマトグラフ(展開溶媒:クロロホルムとヘキサンの7:3の混合溶媒)で分離し、反応式3の生成物として式IIIの化合物(n=m=10,p=1)を収率56%で、式Iの液晶四量体(n=m=k=10,p=1,q=1)を収率15%で得た。
【0039】
実施例4 (反応式4、n=m=k=10)
反応式3で得た式IIIの化合物(n=m=10,p=1)1mmolと4’-ヒドロキシ-4-ビフェニルカルボン酸1mmolをN,N—ジメチルホルムアミド50mlに溶かし、炭酸カリウム1mmolを加え15時間室温で攪拌した。反応液をろ過し、ろ液の溶媒を蒸留し、残渣を薄層シリカゲルクロマトグラフ(展開溶媒:クロロホルムとヘキサンの9:1の混合溶媒)で分離し、反応式4の生成物として式IIの化合物(n=10,q=2)を収率53%で、式Iの液晶五量体(n=m=k=10,p=2,q=1)を収率7%で得た。
【0040】
実施例5 (反応式5、n=m=k=10)
反応式4で得た式IIの化合物(n=10,p=2)0.5mmolと1,10-ジブロモデカン0.5mmolをN,N—ジメチルホルムアミド50mlに溶かし、炭酸カリウム0.5mmolを加え15時間室温で攪拌した。反応液をろ過し、ろ液の溶媒を蒸留し、残渣を薄層シリカゲルクロマトグラフ(展開溶媒:クロロホルム)で分離し、反応式5の生成物として式IIIの化合物(n=m=10,p=3)を収率32%と式Iの液晶六量体(n=m=k=10,p=2,q=2)を収率9%で得た。この液晶六量体の核磁気共鳴スペクトル(NMR)を図2に、質量スペクトル(マススペクトル)を図3に示す。質量スペクトルよりMNaが1961即ちこの分子の分子量が1961-23(Naの原子量)=1938であることが分かる。ビフェニル誘導体の六量体であることが確かめられた。
【0041】
実施例7 (反応式6、n=m=k=10)
反応式5の生成物である式IIIの化合物(n=m=10,p=3)(0.25mmol)と4’-ヒドロキシ-4-ビフェニルカルボン酸(0.25mmol)をN,N—ジメチルホルムアミド(20ml)に溶かし、炭酸カリウム(0.5mmol)を加え15時間室温で攪拌した。反応液をろ過し、ろ液の溶媒を蒸留し、残渣を薄層シリカゲルクロマトグラフ(展開溶媒:クロロホルムとヘキサンの混合溶媒)で分離し、式IIの化合物(n=10,q=3)を収率9%で、式Iの液晶七量体(n=m=k=10,p=3,q=2)を収率4%で得た。
【0042】
実施例8:式I(n=m=k=10)の液晶多量体の熱量変化
式I(n=m=k=10)の液晶多量体の熱量変化を示差走査熱量計(DSC)により測定した。式Iの液晶三量体(p=1、q=0)は先行技術1や先行技術2の液晶と類似した物性を示したが、式Iの液晶四量体(p=1、q=1)からは液晶多量体になるに従って、液晶から液体へのエンタルピー変化は大きくなり、式Iの液晶六量体(p=2、q=2)では融点のエンタルピー変化より大きくなった。
【0043】
実施例9:式I(n=m=k=10)の液晶多量体の偏光顕微鏡観察
式I(n=m=k=10)の液晶多量体の熱的変化における相組織はホットプレート上での偏光顕微鏡観察により明らかにした。式Iの液晶三量体(p=1、q=0)では等方性液体の温度を下げるとネマチック相が現れ、さらに温度を下げると結晶化が起こったのに対し、式Iの液晶四量体(p=1、q=1)から式Iの液晶七量体(p=3、q=2)では等方性液体の温度を下げるとスメクチックA相が現れ、さらに温度を下げると液晶の相構造のままで固体状態へと変わった。式I(n=m=k=10)の液晶多量体の相転移温度とエンタルピー変化を表1に示した。なお温度の上昇および降下は5℃/minで測定した。
【0044】
【表1】
JP0004192231B2_000014t.gifなお相転移温度とエンタルピー変化は一度その分子を加熱し、等方性液体とした後に温度を下げて固体状態と、そのまま12時間以上室温に置いたサンプルを用いて行われた。ここでKは固体、Nはネマチック液晶、SはスメクチックA液晶、SはスメクチックC液晶、Iは等方性液体を示す。
【0045】
表1の結果の中で、式Iの液晶六量体(p=2、q=2)の熱量変化を説明する。その化合物は139℃でスメクチック相に変わり、そのときのエンタルピー変化は26kJ/molであった。さらに加熱すると183℃で等方性液体に変わり、そのときのエンタルピー変化は33kJ/molであった。等方性液体の温度を下げると179℃でスメクチック相に変わり、そのときのエンタルピー変化は30kJ/molであった。さらに温度を下げると133℃で固体に変わり、そのときのエンタルピー変化は22kJ/molであった(図4参照)。
このように液晶から液体へのエンタルピー変化は大きく、液晶六量体では融点のエンタルピー変化より大きくなった。この液晶六量体では液晶状態から温度を下げると129℃で固体に変わるが、そのとき液晶の相組織のままで固体状態へと変わった(図5参照)。同様に液晶七量体でもその固体状態は液晶状態の組織を保ったまま結晶になっていることが分かる(図5参照)。この液晶オリゴマーの液晶状態の組織を保ったままの結晶構造は10日以上安定であった。
【0046】
n=3とm=12またはn=12とm=3からなる液晶三量体とn=k=3とm=12またはn=k=12とm=3からなる液晶四量体の合成とその液晶範囲について述べる。なお液晶範囲は示差走査熱量計(DSC)で測定し、温度の上昇および降下は5℃/minで行った。
【0047】
実施例10: (反応式1、n=3)
4-シアノ-4’-ヒドロキシビフェニル(アメリカ合衆国Aldrich社製)10mmolと1,3-ジブロモプロパン(特級試薬 和光純薬工業株式会社)10mmolを、N,N—ジメチルホルムアミド(特級試薬 ナカライ工業株式会社)200mlに溶かし、炭酸カリウム(特級試薬 ナカライ工業株式会社)10mmolを加え15時間室温で攪拌した。反応液をろ過し、ろ液の溶媒を蒸留し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフ(展開溶媒:クロロホルムとヘキサンの混合溶媒)で分離し、反応式1の生成物としてα-ブロモ-ω—(4-シアノビフェニル-4’-イルオキシ)プロパンを収率48%で、液晶二量体を収率7%得た。
【0048】
実施例11: (反応式2、n=m=3)
実施例10の生成物α-ブロモ-ω—(4-シアノビフェニル-4’-イルオキシ)プロパン4mmolと4’-ヒドロキシ-4-ビフェニルカルボン酸(アメリカ合衆国Aldrich社製)4mmolをN,N—ジメチルホルムアミド100mlに溶かし、炭酸カリウム4mmolを加え15時間室温で攪拌した。反応液をろ過し、ろ液の溶媒を蒸留し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフ(展開溶媒:ヘキサンとクロロホルム)で分離し、反応式2の生成物として式IIの化合物(n=3,q=1)を収率21%で式Iの液晶三量体(n=m=3,p=1,q=0)を収率9%で得た。式Iの液晶三量体(n=m=3,p=1,q=0)の液晶範囲は昇温過程で186℃-242℃、降温過程で239℃—120℃であった。
【0049】
実施例12: (反応式1、n=12)
4-シアノ-4’-ヒドロキシビフェニル(アメリカ合衆国Aldrich社製)10mmolと1,12-ジブロモドデカン(アメリカ合衆国Aldrich社製)10mmolを、N,N—ジメチルホルムアミド(特級試薬 ナカライ工業株式会社)200mlに溶かし、炭酸カリウム(特級試薬 ナカライ工業株式会社)10mmolを加え15時間室温で攪拌した。反応液をろ過し、ろ液の溶媒を蒸留し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフ(展開溶媒:クロロホルムとヘキサンの混合溶媒)で分離し、反応式1の生成物としてα-ブロモ-ω—(4-シアノビフェニル-4’-イルオキシ)ドデカンを収率55%で、液晶二量体を収率12%得た。
【0050】
実施例13: (反応式2、n=m=12)
実施例12の生成物α-ブロモ-ω—(4-シアノビフェニル-4’-イルオキシ)ドデカン4mmolと4’-ヒドロキシ-4-ビフェニルカルボン酸(アメリカ合衆国Aldrich社製)4mmolをN,N—ジメチルホルムアミド100mlに溶かし、炭酸カリウム4mmolを加え15時間室温で攪拌した。反応液をろ過し、ろ液の溶媒を蒸留し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフ(展開溶媒:ヘキサンとクロロホルム)で分離し、反応式2の生成物として式IIの化合物(n=12,q=1)を収率38%で式Iの液晶三量体(n=m=12,p=1,q=0)を収率8%で得た。式Iの液晶三量体(n=m=12,p=1,q=0)の液晶範囲は昇温過程で151℃-161℃で、降温過程で157℃—113℃であった。
【0051】
実施例14: (反応式7、n=3,m=12)
実施例11の生成物である式IIの化合物(n=3,p=1)1mmolと実施例12の生成物であるα-ブロモ-ω—(4-シアノビフェニル-4’-イルオキシ)ドデカン1mmolをN,N—ジメチルホルムアミド50mlに溶かし、炭酸カリウム1mmolを加え15時間室温で攪拌した。反応液をろ過し、ろ液の溶媒を蒸留し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフ(展開溶媒:ヘキサンとクロロホルム)で分離し、反応式7の生成物として式Iの液晶三量体(n=3,m=12、p=1,q=0)を収率32%で得た。式Iの液晶三量体(n=3,m=12、p=1,q=0)の液晶温度の範囲は昇温過程で161℃-222℃で、降温過程で219℃—96℃であった。
【0052】
実施例15: (反応式7、n=12,m=3)
実施例13の生成物である式IIの化合物(n=12,p=1)1mmolと実施例12の生成物であるα-ブロモ-ω—(4-シアノビフェニル-4’-イルオキシ)プロパンmmolをN,N—ジメチルホルムアミド50mlに溶かし、炭酸カリウム1mmolを加え15時間室温で攪拌した。反応液をろ過し、ろ液の溶媒を蒸留し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフ(展開溶媒:ヘキサンとクロロホルム)で分離し、反応式7の生成物として式Iの液晶三量体(n=12,m=3、p=1,q=0)を収率25%で得た。式Iの液晶三量体(n=12,m=3、p=1,q=0)の液晶温度の範囲は昇温過程で138℃-156℃、降温過程で151℃—80℃であった。
【0053】
実施例16: (反応式3、n=k=3,m=12)
実施例11の生成物である式IIの化合物(n=3,p=1)1mmolと1,12-ジブロモドデカン1mmolをN,N—ジメチルホルムアミド50mlに溶かし、炭酸カリウム1mmolを加え15時間室温で攪拌した。反応液をろ過し、ろ液の溶媒を蒸留し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフ(展開溶媒:ヘキサンとクロロホルム)で分離し、反応式8の生成物として式Iの液晶四量体(n=k=3,m=12、p=1,q=1)を収率6%で、式IIIの化合物(n=3、m=12,p=1)を収率32%で得た。式Iの液晶四量体(n=k=3,m=12、p=1,q=1)の液晶温度の範囲は昇温過程で124℃-221℃で、降温過程で219℃—66℃であった。また式IIIの化合物(n=3、m=12,p=1)の液晶温度の範囲は昇温過程で126℃-170℃で、降温過程で167℃—97℃であった。
【0054】
実施例17: (反応式3、n=k=12,m=3)
実施例13の生成物である式IIの化合物(n=12,p=1)1mmolと1,3-ジブロモプロパン1mmolをN,N—ジメチルホルムアミド50mlに溶かし、炭酸カリウム1mmolを加え15時間室温で攪拌した。反応液をろ過し、ろ液の溶媒を蒸留し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフ(展開溶媒:ヘキサンとクロロホルム)で分離し、反応式8の生成物として式Iの液晶四量体(n=k=12,m=3、p=1,q=1)を収率4%で、式IIIの化合物(n=12、m=3,p=1)を収率30%で得た。式Iの液晶四量体(n=k=12,m=3、p=1,q=1)の液晶温度の範囲は昇温過程で101℃-147℃で、降温過程で138℃—92℃であった。また式IIIの化合物(n=12、m=3,p=1)の液晶温度の範囲は昇温過程で89℃-119℃で、降温過程で116℃—57℃であった。
【0055】
比較例1: n=10の液晶二量体の相転移
先行技術2の炭素数が10(n=10)のメチレン鎖の液晶二量体の熱量変化を示差走査熱量計(DSC)により測定し、炭素数10のメチレン鎖の液晶多量体と比較した。この液晶二量体は実施例1で得られた。この液晶二量体は164℃で固体から液晶に変わり、そのときのエンタルピー変化は38kJ/molであった。さらに温度を上げると182℃で等方性液体になり、そのときのエンタルピー変化は6kJ/molであった。等方性液体から温度を下げると180℃で液晶に変わり、そのときのエンタルピー変化は6kJ/molであった。さらに温度を下げると124℃で固体になり、そのときのエンタルピー変化は37kJ/molであった。このとき液晶構造とは異なった結晶構造が観測された。炭素数が10のメチレン鎖の液晶二量体のDSCチャート図を図面6に示す。炭素数10のメチレン鎖の液晶六量体のDSCチャート図(図面4)と比較すると、液晶二量体の固体から液晶へのエンタルピー変化は大きく、液晶から等方性液体へのエンタルピー変化は小さい。一方液晶六量体などの多量体型の液晶オリゴマーでは液晶二量体の固体から液晶へのエンタルピー変化は小さく、液晶から等方性液体へのエンタルピー変化は大きく、このことが多量体型の液晶オリゴマーの特徴であることが分かる。また液晶構造が変わらずに固体状態へと変化することも多量体型の液晶オリゴマーの特徴であることが分かる。
【0056】
【発明の効果】
以上の説明から理解されるように本発明の新規な化合物は、末端のコア部分として4-シアノ-4’-ヒドロキシビフェニルを用い、内部のコア部分として4-シアノ-4’-ヒドロキシビフェニルと類似した非対象な分子である4’-ヒドロキシ-4-ビフェニルカルボン酸を用い、それらのコア部分を炭素数3から12のメチレン鎖で連結した、純粋なオリゴマー分子である。
そのオリゴマー分子は液晶性を示し、しかも一般の低分子液晶とは異なる特徴を有している。また本発明の液晶オリゴマーは純粋な分子である点で高分子液晶と異なっている。
本発明の液晶オリゴマーの特徴的な物性は、一般の低分子液晶とは異なり透明点の大きなエンタルピー変化と液晶から固体状態に変わる際に液晶構造をそのまま保っているという点にある。このことは流動性のある液晶構造を操作することにより、その固体状態の構造を制御できる点で極めて有用である。
【0057】
【図面の簡単な説明】
【図1】式IIの化合物(n=10、q=1)の核磁気共鳴スペクトル(NMR)の図である。
【図2】式Iの化合物(n=m=k=10、p=2、q=2)の核磁気共鳴スペクトル(NMR)の図である。
【図3】式Iの化合物(n=m=k=10、p=2、q=2)の質量スペクトル(マススペクトル)の図である。
【図4】式Iの化合物(n=m=k=10、p=2、q=2)のDSCチャート図である。
【図5】(A)式Iの化合物(n=m=k=10、p=2、q=2)の液晶の偏光顕微鏡写真である。
(B)式Iの化合物(n=m=k=10、p=2、q=2)の液晶状態からの急冷により生じた結晶の10日後の偏光顕微鏡写真である。
(C)式Iの化合物(n=m=k=10、p=3、q=2)の液晶の偏光顕微鏡写真である。
(D)式Iの化合物(n=m=k=10、p=3、q=2)の液晶状態からの急冷により生じた結晶の10日後の偏光顕微鏡写真である。
【図6】炭素数10のメチレン鎖(n=10)の液晶二量体のDSCチャート図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5