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明細書 :光重合型義歯床粘膜面処理材、それを用いた義歯床粘膜面の処理方法及び義歯床の製作方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4719872号 (P4719872)
公開番号 特開2006-028120 (P2006-028120A)
登録日 平成23年4月15日(2011.4.15)
発行日 平成23年7月6日(2011.7.6)
公開日 平成18年2月2日(2006.2.2)
発明の名称または考案の名称 光重合型義歯床粘膜面処理材、それを用いた義歯床粘膜面の処理方法及び義歯床の製作方法
国際特許分類 A61K   6/083       (2006.01)
A61C  13/00        (2006.01)
A61K   6/00        (2006.01)
A61K   6/09        (2006.01)
FI A61K 6/083 500
A61C 13/00 D
A61K 6/00 D
A61K 6/09
請求項の数または発明の数 6
全頁数 9
出願番号 特願2004-211503 (P2004-211503)
出願日 平成16年7月20日(2004.7.20)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成16年3月20日 日本歯科理工学会発行の「歯科材料・器械・第23巻・第2号」に発表
審査請求日 平成18年7月12日(2006.7.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
発明者または考案者 【氏名】蟹江 隆人
個別代理人の代理人 【識別番号】100147485、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 憲司
【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作
【識別番号】100101096、【弁理士】、【氏名又は名称】徳永 博
【識別番号】100107227、【弁理士】、【氏名又は名称】藤谷 史朗
【識別番号】100114292、【弁理士】、【氏名又は名称】来間 清志
【識別番号】100119530、【弁理士】、【氏名又は名称】冨田 和幸
審査官 【審査官】鶴見 秀紀
参考文献・文献 特開平05-132407(JP,A)
特開平10-236913(JP,A)
蟹江隆人 他,ガラスクロスを利用した光重合型義歯床用レジン補強材-補強材/ポリマ-複合体の曲げ特性-,日本補綴歯科学会学術大会抄録集 ,2003年,Vol.110th,Page.179
調査した分野 A61K 6/083
A61C 13/00
A61K 6/00
A61K 6/09
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
ラジカル重合可能なウレタン系オリゴマー49.8~99.6wt%とメタクリル酸エステル0~49.8wt%とメタクリル酸エステル重合体あるいはメタクリル酸エステル共重合体0~49.8wt%と光増感剤0.2~2wt%と還元剤0.2~2wt%とを配合したことを特徴とする光重合型義歯床粘膜面処理材。
【請求項2】
可視光線を照射することによって光重合反応が起こり、粘性状態から弾性状態に変化することを特徴とする請求項1に記載の光重合型義歯床粘膜面処理材。
【請求項3】
光重合反応後の弾性率が0.2~20MPaの範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光重合型義歯床粘膜面処理材。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の光重合型義歯床粘膜面処理材を単層で又は積層化して用いることを特徴とする義歯床粘膜面の処理方法。
【請求項5】
前記積層化される光重合型義歯床粘膜面処理材の光重合反応後の弾性率が各層で異なることを特徴とする請求項4に記載の義歯床粘膜面の処理方法。
【請求項6】
請求項1~3のいずれかに記載の光重合型義歯床粘膜面処理材を容器から筆で取り出し、患者口腔内を複製した石膏模型上で口腔内の目的の位置に適量を塗布し、光を照射し、化学重合型、加熱重合型または光重合型義歯床用レジンを加え重合することを特徴とする義歯床の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科の光重合型義歯床粘膜面処理材、並びにこれを使用した義歯床粘膜面の処理方法及び義歯床の製作方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、高齢者の有床義歯を支持する粘膜は、適合性に優れた義歯を装着したとしても、加齢が進むに従って顎堤粘膜が菲薄になり、咬合圧に耐えにくく、咬合時に疼痛や炎症を生じやすくなる。そのような患者に対しては、硬質裏装材によって適合性の改善を行っても、咬合時の疼痛や炎症は治まらないことが多い。そこで、義歯床の咬合圧をできるだけ広い面積で負担し、局部的に集中して加わることをさける目的から、義歯床粘膜面に軟質裏装材やティッシュコンディショナーを利用する方法が用いられている。
【0003】
このような咬合時の疼痛緩和を目的とした義歯床用軟質裏装材としては、シリコーン系、アクリル系、フルオロ系、オレフィン系の材料が用いられており、原材料としては、特開2003-040723号(以下、特許文献1という)、特開2002-060311号(以下、特許文献2という)、特開平10-245313号(以下、特許文献3という)、特開平10-226613号(以下、特許文献4という)、特開平08-291017号(以下、特許文献5という)に義歯床用軟質裏装材の組成物(特許文献1の請求項1~4、特許文献2の請求項1~2、特許文献3の請求項1~2、特許文献4の請求項1、特許文献5の請求項1)の記載があるが、それぞれ一長一短があり、臨床的に満足のいく材料は得られていない。
【0004】
シリコーン系の義歯床用軟質裏装材としては、主に付加重合タイプの常温重合型シリコーンが使用されている。この材料はベースとキャタリストの2種類のペーストを使用時に混和し、その混合物を義歯床粘膜面に盛り付け、患者の口腔内に装着して硬化させることにより裏装を行う。この場合、2種類のペーストの混合は、通常ディスペンサーによる自動練和で行なわれるため、手練和のように気泡の混入が少なく、均質な材料が得られる。
【0005】
しかし、シリコーン系裏装材は、アクリル系義歯床用レジンとは化学的な接着が行われないために、接着剤の使用が必要となる。しかしながら、この接着剤は使用中に義歯床との界面で剥離が生じるといった問題が指摘されており、耐久性の面で十分とは言えない。また、シリコーン系裏装材は、新たに材料を追加したい場合、一度硬化したものには接着しないため、再修正することが実質的に不可能であり、このことが臨床上の大きな欠点となっている。
【0006】
一方、アクリル系裏装材は、義歯床用レジンと材質が同系統のものであるため、義歯床用レジンと化学的に接着するばかりでなく、新たに材料を追加したい場合でも強固に接着するため、修正できることが大きな特徴となっている。このアクリル系裏装材は、モノマーとポリマーを混合してゲル化して使用するが、この時可塑剤としてアルコールを使用するタイプと、常温で重合硬化させるタイプの2種類がある。
【0007】
アルコールを可塑剤とするタイプは、口腔内での使用時にアルコールが徐々に溶出していくため、表面から硬化し、材質が劣化していく。また、混和時の気泡が多いことから、飲食物等による汚染も発生しやすく、その用途は暫間的なものに限られる。一方、常温硬化型裏装材は、低分子量のモノマーを使用する。このモノマーは重合してポリマー化し、口腔内温度で弾性を持つ。該ポリマーは、アルコールのように使用中にモノマーが溶出することは少ないが、硬化直後の重合度が低く、比較的長期にわたって使用する場合、材質的な劣化が見られる。
【0008】
この常温硬化型アクリル系裏装材を改良した光重合型の軟質裏装材の原料について、特開2002-119523号(以下、特許文献6という)に組成物と方法(特許文献6の請求項1~4)の記載がある。この場合、軟質裏装材は、光照射により光重合反応が起こり、最終重合段階で粘弾性状態に変化するため、長期間使用しても、従来の軟質材料のように表面が汚れてくることが少なく、耐久性が飛躍的に向上している。しかし、一度完成した義歯床に軟質裏装材を装着する技法に変わりはなく、義歯床を再度石膏模型に埋没して、軟質裏装材を填入して、光重合して、石膏を取り除く必要があるために、余分な作業時間が必要となる。
【0009】
一方、同じように咬合圧を分散させ、義歯使用感を改善する目的でティッシュコンディショナーを使用することがある。ティッシュコンディショナーとしては、シリコーン系、アクリル系の材料が用いられており、原材料としては義歯床用軟質裏装材の組成物に近いものがほとんどであり、性質も似ている。特開2001-46404(以下、特許文献7という)に義歯及びその製造方法(特許文献7の請求項1~4)の記載があるが、シリコーン系を使用しており、軟質裏装材と同じく接着剤を介して義歯床にティッシュコンディショナーを接着するため、耐久性に問題がある。
【0010】

【特許文献1】特開2003-040723号公報
【特許文献2】特開2002-060311号公報
【特許文献3】特開平10-245313号公報
【特許文献4】特開平10-226613号公報
【特許文献5】特開平8-291017号公報
【特許文献6】特開2002-119523号公報
【特許文献7】特開2001-46404号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、義歯床用軟質裏層材やティッシュコンディショナーの問題点を解決するものであり、口腔内粘膜面に対する密着性、装着感が良好で、義歯床用レジンの製作工程の途中で簡単に加熱重合型、化学重合型および光重合型義歯床用レジンの粘膜面に接着でき、短時間で重合反応が完結し、気泡のない、滑沢な義歯床面を得ることが可能な光重合型義歯床粘膜処理材、並びにそれを用いた義歯床粘膜面の処理方法及び義歯床の製作方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、義歯床用レジンと化学的に結合する光重合性オリゴマーまたは光重合性オリゴマーとメタクリル酸エステルとを混合した粘性溶液からなる光重合型義歯床粘膜面処理材を作製し、上記課題を解決した。また、予め口腔内を印象した石膏模型上にこの光重合型義歯床粘膜面処理材を筆で塗布し、所望する形状に成形し、光重合し、義歯床用レジンを充填することで、接着性と耐久性に優れた義歯床粘膜面が得られることを見出した。
【0013】
即ち、本発明の光重合型義歯床粘膜面処理材は、ラジカル重合可能なウレタン系オリゴマー49.8~99.6wt%とメタクリル酸エステル0~49.8wt%とメタクリル酸エステル重合体あるいはメタクリル酸エステル共重合体0~49.8wt%と光増感剤0.2~2wt%と還元剤0.2~2wt%とを配合したことを特徴とする。
【0014】
本発明の光重合型義歯床粘膜面処理材に用いるラジカル重合可能なウレタン系オリゴマーは、オリゴマー化した光重合活性をもつもの、即ち、光重合性オリゴマーであって、該ウレタン系オリゴマーとしては、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート等が挙げられる。上記ウレタン系オリゴマーがウレタンアクリレートの場合、粘度が1000~30000mPa・sを示すもの、また、多官能性モノマーを0~30wt%添加して粘度調整したものを含む。また、上記ウレタン系オリゴマーがウレタンメタクリレートの場合、粘度が1000~30000mPa・sを示すもの、また、多官能性モノマーを0~30wt%添加して粘度調整したものを含む。ここで、上記多官能性モノマーとしては、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、2,2-ビス-(4-メタクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス-(4-メタクリロキシフェニル)プロパンが挙げられる。
【0015】
本発明の光重合型義歯床粘膜面処理材におけるラジカル重合可能なウレタン系オリゴマーの含有率は、49.8~99.6wt%の範囲である。ウレタン系オリゴマーの含有率が49.8wt%未満では、石膏模型上で一定の形状を維持するのが困難である。
【0016】
本発明の光重合型義歯床粘膜面処理材に用いる光増感剤は、還元剤の助けを借りて、可視光線により活性化して、遊離ラジカルを発生させ、重合を引き起こすものであり、例えば、カンファキノン、ベンジル、ジアセチル、アントラキノン、ベンゾインメチルエーテル等が挙げられる。
【0017】
本発明の光重合型義歯床粘膜面処理材における光増感剤の含有率は、0.2~2wt%の範囲である。光増感剤の含有率が0.2wt%未満では、光重合型義歯床粘膜面処理材を十分に光重合させることができず、一方、光増感剤の含有率が2wt%を超えると、可塑材として働き、物性を低下させるばかりでなく、粘膜面処理材を着色してしまう。
【0018】
本発明の光重合型義歯床粘膜面処理材に用いる還元剤は、上記光増感剤の活性化を助けるものであり、例えば、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、トリエタノールアミン、ジメチルアミノ安息香酸誘導体、チオバルビツル酸誘導体等が挙げられる。
【0019】
本発明の光重合型義歯床粘膜面処理材における還元剤の含有率は、0.2~2wt%の範囲である。還元剤の含有率が0.2wt%未満では、光増感剤の活性化を十分に助けることができず、一方、還元剤の含有率が2wt%を超えると、可塑材として働き、物性を低下させる。
【0020】
本発明の光重合型義歯床粘膜面処理材には、上記ラジカル重合可能なウレタン系オリゴマー、光増感剤、還元剤の他に、メタクリル酸エステル、メタクリル酸エステル重合体あるいはメタクリル酸エステル共重合体を配合することができる。ここで、本発明の光重合型義歯床粘膜面処理材におけるメタクリル酸エステルの含有率は、0~49.8wt%の範囲であって、メタクリル酸エステル重合体あるいはメタクリル酸エステル共重合体の含有率は、0~49.8wt%の範囲である。ここで、メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等が挙げられ、該モノマーを単独重合又は共重合することで、メタクリル酸エステル重合体又はメタクリル酸エステル共重合体が得られる。
【0021】
本発明の光重合型義歯床粘膜面処理材は、好ましくは可視光線を照射することによって光重合反応が起こり、粘性状態から弾性状態に変化する。ここで、本発明の光重合型義歯床粘膜面処理材は、光重合反応後の弾性率が0.2~20MPaの範囲であるのが好ましく、5~20MPaの範囲であるのが更に好ましい。光重合反応後の弾性率がこの範囲内であれば、人の口腔内粘膜の弾性率とほぼ同等の弾性率となる。
【0022】
本発明の光重合型義歯床粘膜面処理材は、例えば、光増感剤と還元剤とを加えたウレタンアクリレートまたはウレタンメタクリレートを、専用ミキサーで加熱回転により脱泡し、粘性溶液化することによって製造できる。
【0023】
本発明の光重合型義歯床粘膜面処理材は、単層で又は積層化して用いることができ、積層化して用いる場合、各層の光重合反応後の弾性率が異なるのが好ましい。
【0024】
本発明の義歯床の製造方法は、上記光重合型義歯床粘膜面処理材を容器から筆で取り出し、患者口腔内を複製した石膏模型上で口腔内の目的の位置に適量を塗布し、光を照射し、化学重合型、加熱重合型または光重合型義歯床用レジンを加え重合することを特徴とする。ここで、上記光重合型義歯床粘膜面処理材を収容する容器は、遮光されているものが好ましい。
【0025】
本発明の義歯床の製造方法においては、硬化後の弾性率が異なる上記の光重合型義歯床粘膜面処理材を数回塗布することにより、義歯床粘膜面処理材部分が積層化してもよい。この場合、義歯床粘膜面処理材部分の表面を柔らかく、内部を硬くして、いわゆる機能傾斜性能を持たせることもできる。
【発明の効果】
【0026】
以上のように本発明の光重合型義歯床粘膜面処理材を用いて得られる義歯によれば、口腔内粘膜部に接する義歯床面に軟質薄膜を装着しているので、この軟質薄膜を介して口腔内粘膜部に良く密着し、その上、軟質薄膜は適度な弾性を発揮し、軟質薄膜を介して咬合圧を口腔内粘膜部全体に均一に分散することができ、従って、比較的強い咬合圧を発揮させることができる。
【0027】
さらに、始めに硬化後の弾性が低い光重合型義歯床粘膜面処理材を塗布し、重合し、その上に、硬化後の弾性が高い光重合型義歯床粘膜面処理材を塗布し、重合することにより、表層部は柔らかく、内部ほど硬くなる性質を付与できるために、装着感に優れた義歯床が作製できる。
【0028】
そして、本発明の光重合型義歯床粘膜面処理材は、成分として、義歯床用レジンと同系統のウレタン系オリゴマーを使用しているため、光重合型義歯床粘膜面処理材と義歯床用レジンが化学的な結合を行い、耐久性が飛躍的に向上している。さらに、このウレタン系オリゴマーは、光重合により、充分に重合するため、重合後の光重合型義歯床粘膜面処理材は、義歯床用レジンと同程度に長期間に渡り十分な耐久性を維持できる。
【0029】
また、本発明の義歯床の製造方法によれば、まず、口腔内を印象した石膏模型面上に粘性の光重合型義歯床粘膜面処理材を患者の粘膜面に適合するように薄く塗布することが可能で、患者に適合した厚みと形状の光重合型義歯床粘膜面処理材膜を容易に且つ正確に形成することができ、次いで、この光重合型義歯床粘膜面処理材は独自に光重合するため、義歯床用レジンに加熱重合型、化学重合型および光重合型義歯床用レジンを用いることができる。また、この光重合型義歯床粘膜面処理材の光重合過程は、従来の義歯床用レジン製作の工程上で行うことができるため、極めて容易に義歯床用レジンを製造できる。
【0030】
また更に、本発明の光重合型義歯床粘膜面処理材を義歯床に装着した場合、作業時間が大幅に短縮され、かつ、光重合型義歯床粘膜面処理材が義歯床用レジンの一部分として臨床的に機能するため、長期間使用しても、従来の軟質裏装材のように表面が汚れてくることが少なく、また、耐久性が飛躍的に向上しているため、義歯床用レジンを使用する患者にとって有益である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の光重合型義歯床粘膜面処理材を使った義歯床の作製方法について具体的に説明する。まず、患者口腔内より印象を採り、複製された石膏模型を作製する。その石膏模型上で人工歯を配列し、ろう義歯を作製する。重合用フラスコ下部に上顎模型を設置し、空隙部に石膏を流し込み、その後、石膏が硬化したのち表面に分離剤を塗布し、重合用フラスコ上部に石膏を流し込む。石膏が硬化したのち重合用フラスコを分割し、流ろうして上顎口蓋舌側模型と口蓋粘膜側模型が完成する。
【0032】
完成した上顎口蓋粘膜側模型上の所望の場所に光重合型義歯床粘膜面処理材を筆で塗布し、光を照射し、重合させる。重合が終了したのち、重合フラスコ上部を重合フラスコ下部に戻し、義歯床用レジンを通法に従いその空隙に填入する。その後、義歯床用レジンを重合し、室温中で冷却後、重合用フラスコの石膏模型中から義歯床を取り出し、表面を研磨する。図1は完成した部分床義歯、図2は完成した全部床義歯の図である。図中、11及び21は、人工歯を示し、13及び23は、義歯床用レジンを示し、15及び25は、光重合型義歯床粘膜面処理材を示す。
【0033】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0034】
〔光重合型義歯床粘膜面処理材の調製〕
ウレタンメタクリレート90wt%にメタクリル酸エチル10wt%を混合したものに、カンファキノン1wt%とN,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート1wt%を加えて、光重合型義歯床粘膜面処理材として使用した。
【0035】
〔実施例1〕
遮光瓶から取り出した光重合型義歯床粘膜面処理材をアクリル板の上に筆で塗布し、平滑化した後、光照射器で5分間光重合した。その上に内径が10mmとなるようにテフロン(登録商標)型を用いて市販の義歯床用レジンを填入し、重合させた。テフロン(登録商標)型を取り除いた後に、この試験片の引張強さを測定した。その結果を表1に示した。表1から、義歯床用レジンが、光重合型義歯床粘膜面処理材と充分に結合していることがわかる。
【0036】
【表1】
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【0037】
〔実施例2〕
遮光瓶から取り出した光重合型義歯床粘膜面処理材をテフロン(登録商標)板の上に筆で塗布し、平滑化した後、光照射器で5分間光重合した。重合体を細かく粉砕し、テトラヒドロフランに2日間浸漬し、残留モノマーを溶出させた。この溶出した溶液を、高速液体クロマトグラフにかけ、モノマーの検出を行った。その結果を歯科用高分子と比較して表2に示した。表2から、義歯床用レジンと同程度の残留モノマー量を示し、光重合型義歯床粘膜面処理材が充分に重合していることがわかる。
【0038】
【表2】
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【0039】
表2中、UDMAはウレタンジメタクリレートを示し、MMAはメチルメタクリレートを示し、Bis-GMAはビスフェノールAグリシジルメタクリレートを示す。
【0040】
〔実施例3〕
遮光瓶から取り出した光重合型義歯床粘膜面処理材をアクリル板の上に筆で塗布し、平滑化した後、光照射器で5分間光重合した。得られた重合体の表面の硬さをショアA硬度計で測定した。なお、表面硬さは、弾性率と密接に関連し、「硬い」「柔らかい」の指標となる。その結果を表3に示した。表3から、本発明の光重合型義歯床粘膜面処理は、普及している各軟質裏装材と類似した硬さの範囲を持ち、多用されているアクリル系とシリコーン系の値を含むことから臨床的に充分に使用できることがわかる。
【0041】
【表3】
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【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の光重合型義歯床粘膜面処理材を使って完成した部分床義歯の一例の図である。
【図2】本発明の光重合型義歯床粘膜面処理材を使って完成した全部床義歯の例の図である。
【符号の説明】
【0043】
11 人工歯
13 義歯床用レジン
15 光重合型義歯床粘膜面処理材
21 人工歯
23 義歯床用レジン
25 光重合型義歯床粘膜面処理材
図面
【図1】
0
【図2】
1