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明細書 :もろみ液蒸留残渣の濃縮物及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4325937号 (P4325937)
公開番号 特開2006-109705 (P2006-109705A)
登録日 平成21年6月19日(2009.6.19)
発行日 平成21年9月2日(2009.9.2)
公開日 平成18年4月27日(2006.4.27)
発明の名称または考案の名称 もろみ液蒸留残渣の濃縮物及びその製造方法
国際特許分類 C12J   1/00        (2006.01)
A23L   1/00        (2006.01)
A23L   1/227       (2006.01)
A23L   1/23        (2006.01)
A23L   2/38        (2006.01)
A23L   2/84        (2006.01)
C12F   3/08        (2006.01)
C12F   3/10        (2006.01)
FI C12J 1/00 Z
A23L 1/00 K
A23L 1/227 Z
A23L 1/23
A23L 2/38 R
A23L 2/38 S
A23L 2/34
C12F 3/08
C12F 3/10
請求項の数または発明の数 4
全頁数 9
出願番号 特願2004-297545 (P2004-297545)
出願日 平成16年10月12日(2004.10.12)
審査請求日 平成19年2月19日(2007.2.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
【識別番号】500082377
【氏名又は名称】西酒造株式会社
発明者または考案者 【氏名】菅沼 俊彦
【氏名】沖園 清忠
【氏名】田之上 隼雄
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100096183、【弁理士】、【氏名又は名称】石井 貞次
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
【識別番号】100120905、【弁理士】、【氏名又は名称】深見 伸子
審査官 【審査官】今村 玲英子
参考文献・文献 特開昭56-048881(JP,A)
特開昭52-034991(JP,A)
特開昭61-005772(JP,A)
特開2004-254512(JP,A)
調査した分野 C12J 1/00
A23L 1/00
A23L 1/227
A23L 1/23
A23L 2/38
A23L 2/84
C12F 3/08
C12F 3/10
特許請求の範囲 【請求項1】
焼酎もろみをもろみ液部ともろみ固形部に固液分離し、得られたもろみ液部を蒸留してアルコール分を留出させた後、蒸留残渣をさらに減圧蒸留することによって得られる、もろみ液蒸留残渣の濃縮物。
【請求項2】
焼酎もろみをもろみ液部ともろみ固形部に固液分離し、得られたもろみ液部を蒸留してアルコール分を留出させた後、蒸留残渣をさらに減圧蒸留することを特徴とする、もろみ液蒸留残渣の濃縮物の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のもろみ液蒸留残渣の濃縮物を含有する飲食品。
【請求項4】
飲食品が、調味料または飲料である、請求項3に記載の飲食品。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、クエン酸などの有機酸、ミネラル、アミノ酸が高度に濃縮され、飲食品として用いることができるもろみ液蒸留残渣の濃縮物、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
焼酎は、通常、蒸煮した米、麦、サツマイモ等に麹菌を加えて培養(製麹)したものに、アルコール発酵を行うのに十分に育成させた酵母(酒母(もと))を加えて発酵させた「もろみ」を蒸留することによって製造される。近年、焼酎の人気が高まり、その生産量の増大に伴って、蒸留残渣(蒸留廃液、焼酎粕ともいう)の量も増加している。蒸留残渣の代表的な利用法にもろみ酢がある。もろみ酢は、一般的には、蒸留残渣をそのまま圧搾ろ過または遠心分離等によって清澄液を得ることにより製造されている。また、蒸留残渣に糖分を加え、酢酸菌で酢酸発酵させた醸造酢の製造方法も報告されている(特許文献1)。蒸留残渣には、使用する原料由来の、また麹菌、酵母が発酵中につくり出したクエン酸を主成分として、各種有機酸、アミノ酸、ミネラル、ビタミンなどに富むので、健康食品として近年着目されている。また、蒸留残渣の固体成分のほうを飼料や食品素材に利用することもまた提案されている(特許文献2)。
【0003】
従来のもろみ酢は、上記のように、もろみを蒸留してアルコール分(焼酎)を得た後の副産物である蒸留残渣を固液分離することによって製造される。しかしながら、かかる方法では、蒸留残渣に原料由来の不溶性固形物(例えば、イモ焼酎にあっては繊維)が多く含まれるため、濾過性が悪くなる、濃縮して容積を減じることが困難となる、などの問題がある。また、クエン酸濃度が低いために製品化直前にクエン酸を添加して酸味を調製する必要もあり、高い濃縮度のもろみ酢を得る方法が望まれている。
【0004】
これまでもろみ酢の製造においては、上記のように固液分離をもろみの蒸留後の蒸留残渣に対して行っており、もろみの蒸留前に行った例はない。
【0005】

【特許文献1】特開平10-155471号公報
【特許文献2】特開平6-315369号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来のもろみ酢よりもクエン酸などの有機酸、ミネラル、アミノ酸が高度に濃縮され、製品化前に酸味の調整が不要な食用酢様の調味料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、焼酎の製造工程で得られるもろみを固液分離し、その液体部のみを蒸留してアルコール分を留出させて焼酎を得るとともに、その蒸留残渣を引き続いて減圧蒸留して得られる濃縮物が、クエン酸などの有機酸含量が高い飲食品として提供できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)焼酎もろみをもろみ液部ともろみ固形部に固液分離し、得られたもろみ液部を蒸留してアルコール分を留出させた後、蒸留残渣をさらに減圧蒸留することによって得られる、もろみ液蒸留残渣の濃縮物。
(2)焼酎もろみをもろみ液部ともろみ固形部に固液分離し、得られたもろみ液部を蒸留してアルコール分を留出させた後、蒸留残渣をさらに減圧蒸留することを特徴とする、もろみ液蒸留残渣の濃縮物の製造方法。
(3)(1)に記載のもろみ液蒸留残渣の濃縮物を含有する飲食品。
(4)飲食品が、調味料または飲料である、(3)に記載の飲食品。
(5)焼酎もろみをもろみ液部ともろみ固形部に固液分離し、得られたもろみ液部を蒸留して留出させたアルコール分を含有する焼酎。
(6)焼酎もろみを固液分離し、もろみ液部を除去することにより得られるもろみ固形部。
(7)(6)に記載のもろみ固形部を含有する機能性食品素材または飼料。
【発明の効果】
【0009】
本発明により得られるもろみ液蒸留残渣の濃縮物は、従来のもろみ酢よりクエン酸などの有機酸、アミノ酸、ミネラルが高度に濃縮されており、調味料をはじめとする種々の飲食品に利用できる。本発明によれば、上記濃縮物を、焼酎製造工程においてその作業効率を低下させることなく、連続的に製造できる。また、上記濃縮物を調味料などの原液として用いる場合は、高度に濃縮されていることから製品流通コストも低減される。
【0010】
さらに、上記濃縮物の製造における副産物である焼酎もろみの固液分離による固形部は食物繊維分、酵母を含有し、機能性食品素材や飼料に、また、焼酎もろみの固液分離による液部から留出させたアルコール分もまた、従来とは異なる酒質の焼酎として利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の「もろみ液蒸留残渣の濃縮物」(以下、「本発明もろみ液濃縮物」という)とは、焼酎もろみをもろみ液部ともろみ固形部に固液分離し、得られたもろみ液部を蒸留してアルコール分を留出させた後、蒸留残渣をさらに減圧蒸留して得られる濃縮物をいう。
【0012】
本発明もろみ液濃縮物の製造に用いる「焼酎もろみ」は、焼酎の原料である、米、麦等に麹菌と酵母を作用させて得られる、いわゆる「二次もろみ」をいう。また、ここで、焼酎とは、焼酎乙類として分類される焼酎をいい、醸造用アルコールを薄めた焼酎甲類は含まない。また、焼酎乙類であれば、その種類は問わず、米焼酎、麦焼酎、そば焼酎、いも焼酎、きび焼酎、黒糖焼酎、白糠焼酎のいずれであってもよい。
【0013】
本発明もろみ液濃縮物の製造は、焼酎もろみ(以下、「もろみ」という)の取得までは、焼酎の通常の製造工程に従って行うことができる。まず、蒸米、麦に麹菌(種麹)を接種して十分に攪拌混合し、35℃~45℃の範囲で送風、攪拌、静置を繰り返して培養し、焼酎製造用の麹を得る(製麹)。麹菌としては、白麹菌、黒麹菌、泡盛麹菌のいずれでもよく、具体的には、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)、アスペルギルス・サイトイ(Aspergillus saitoi)、アスペルギルス・ウサミ(Aspergillus usamii)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)などが用いられる。次に、できた麹に酵母(酒母)と水を加えて発酵させ、さらに主原料(焼酎の種類による異なる)を投入して発酵させると、もろみが得られる。
【0014】
続いて得られたもろみを固液分離し、もろみ液部ともろみ固形部を得る。固液分離手段としては、例えば、加圧脱水機、真空脱水機、遠心分離機などの装置を用いて分離する方法が挙げられる。
【0015】
次に、分離したもろみ液部を蒸留(減圧または常圧蒸留)し、アルコールを留出させ、回収する。留出アルコールの濃度が約10%程度になった時点でアルコールの回収を終了し、残った蒸留残液をさらに減圧蒸留し、本発明もろみ液濃縮物を得る。濃縮度は基本的には大きいほうが好ましいが、初発もろみ液部を2~20倍に濃縮することが好ましい。濃縮度が2倍未満であると、もろみ濃縮物としての特徴が発揮できず、また20倍を越えると、成分的変化はないが、粘凋度が増し、内容物が蒸留器に付着して洗浄が困難になるので好ましくない。
【0016】
減圧蒸留は、通常の食品分野で使用されている減圧濃縮装置を用いて行えばよく、例えば、真空度-720~-600mmHg程度の減圧下、32~60℃で2時間程度行う。
【0017】
上記のようにして得られる本発明もろみ液濃縮物は、麹菌により生成されたクエン酸が高度に濃縮され、その濃度は1~10g/100mlである。さらに、当該もろみ液濃縮物は、リンゴ酸、コハク酸、酢酸などの有機酸のほか、ナトリウム、カリウムなどのミネラル、種々のアミノ酸も多量に含んでいるので、そのままで、または希釈して、あるいは他の成分を配合して、飲食品として利用できる。
【0018】
本発明の飲食品としては、上記のもろみ液濃縮物を含有する限りいかなるものでもよく、特に限定はされないが、好適には、調味料または飲料が挙げられる。
【0019】
調味料とする場合は、単独で食用酢様の酸味調味液として利用でき、あるいは他の原料または調味(旨み)成分を配合してドレッシング、マヨネーズ等としても利用できる。配合できる他の原料または調味成分としては、しょうゆ、みりん、みそ、香辛料、食用油、卵黄、動物性蛋白質加水分解物、植物性蛋白質加水分解物、かつおぶし、乾燥たまねぎ、乾燥にんじん、魚介エキス、酵母エキス、果物エキス等が挙げられる。また、調味料には必要に応じ、食品添加物として許容されている増粘剤、安定剤、乳化剤、酸化防止剤などを添加してもよい。
【0020】
飲料とする場合は、単独で高濃度のクエン酸飲料として利用できるが、リンゴ、レモン、オレンジ等の絞り汁を配合し、必要に応じ、甘味料、香料、色素などを添加してもよい。
【0021】
本発明の飲食品に含有されるもろみ液濃縮物の量には特に限定はないが、例えば、もろみ液濃縮物を0.01重量%から100重量%とすることが例示される。
【0022】
一方、上記の本発明もろみ液濃縮物の製造工程において、もろみを固液分離し、もろみ液部を除いた後に残るもろみ固形部は、食品への天然繊維成分強化、食感改善、水分保持作用による鮮度保持効果などの種々の作用を発揮できることから、機能性食品素材として用いることができる。
【0023】
例えば、上記もろみ固形物を配合して機能性を付与または改善できる食品としては、ソーセージ、ハムなどの畜肉加工食品、かまぼこ、ちくわなどの魚肉加工食品、ギョウザ、コロッケなどの冷凍食品などが挙げられる。また、上記もろみ固形物は、賦形剤などを配合して家畜用、魚用飼料としても好適に用いることができる。
【0024】
さらに、上記の本発明もろみ液濃縮物の製造工程において、もろみ液部を蒸留して留出させたアルコール分は、40~42%のアルコール濃度を有している。このアルコール分は、もろみから固形分を除くことなく直接蒸留して製造した従来の焼酎とは異なり、原料特有の香りや臭いがなく、味についても原料特性が弱く、淡麗である。従って、上記アルコール分は、従来の焼酎とは異なる酒質の焼酎として提供できる。
【実施例】
【0025】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものでない。
【0026】
(実施例1) もろみ液蒸留残渣濃縮物の製造
原料米1000kgを水洗した後、水中に60分間浸漬し、30分間水切りし、次いで60分間蒸煮した。得られた蒸煮米を冷却後、焼酎用種麹河内菌白麹を接種し、約35~40℃で約40時間かけて製麹した。製造された麹に水(一次仕込み水)1200Lを加え、更に、種酵母菌5Lを加えて、5日間発酵させ、酒母をつくった(一次仕込み)。
【0027】
次に、生甘藷5000kgを水洗し、1時間蒸煮した後、送風して冷却し、粉砕した。ついで、粉砕した甘藷に3000Lの水(二次仕込み水)を加え、更に、これに先の一次仕込みで発酵させた一次もろみ(酒母)を加えた(二次仕込み)。二次仕込みを行った後、約9日間発酵させ、約8200Lの二次もろみ(もろみ)を得た。ここまでは、現場規模で実施した。
【0028】
次に、上記で得られた二次もろみ約100Lを、吸引濾過装置でろ過し、清澄ろ液約50Lを得た。このときの試留アルコール濃度は14.5%であった。このろ液(もろみ液)50Lを、蒸留機(ケミカルプラント社製50L減圧・常圧兼用試験蒸留装置)で、減圧蒸留した。運転条件は、真空度-720mmHg、もろみ液は約32℃で沸騰した。約2時間蒸留を続け、留出アルコール濃度が10%になったとき、アルコール回収をやめ、製品タンクから後留タンクにバルブを切り替えた。その後も始発50Lのもろみ液が約15Lになるまで減圧蒸留を続けた。その結果、42.0%のアルコール留分16.6Lと3.2倍に濃縮されたもろみ液蒸留残渣15.5Lが得られた。アルコール回収歩留は、96.1%であった。
【0029】
得られたもろみ液蒸留残渣濃縮物の成分分析値を表1に、各種焼酎製造で得られる従来のもろみ酢、および米酢、果実酢の成分分析値を表2に示す。
【0030】
【表1】
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【0031】
【表2】
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【0032】
また、上記で得られたアルコール留分のパネラー10名による官能試験結果を表3及び図1に示す。香りに関しては、従来の芋焼酎の原料特性である芋くささがなく、上品な果実様臭があり、味についても同様に原料特性が弱くなり、淡麗であった。また蒸留直後でも、刺激臭、ガス臭がなく、くせのない飲みやすい酒質であった。
【0033】
【表3】
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【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明により得られるもろみ液蒸留残渣の濃縮物は、栄養価が高く、飲食品として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明もろみ液蒸留残渣の濃縮物の製造において副産物として得られるアルコール留分の官能試験結果を示す。
図面
【図1】
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