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明細書 :天然ろ過助剤を用いる焼酎もろみの固液分離方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4320403号 (P4320403)
公開番号 特開2006-217823 (P2006-217823A)
登録日 平成21年6月12日(2009.6.12)
発行日 平成21年8月26日(2009.8.26)
公開日 平成18年8月24日(2006.8.24)
発明の名称または考案の名称 天然ろ過助剤を用いる焼酎もろみの固液分離方法
国際特許分類 C12H   1/06        (2006.01)
A23L   1/30        (2006.01)
C12F   3/00        (2006.01)
C12G   3/12        (2006.01)
FI C12H 1/06
A23L 1/30 Z
C12F 3/00
C12G 3/12
請求項の数または発明の数 5
全頁数 9
出願番号 特願2005-031896 (P2005-031896)
出願日 平成17年2月8日(2005.2.8)
審査請求日 平成19年3月27日(2007.3.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
発明者または考案者 【氏名】菅沼 俊彦
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100096183、【弁理士】、【氏名又は名称】石井 貞次
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
【識別番号】100120905、【弁理士】、【氏名又は名称】深見 伸子
審査官 【審査官】今村 玲英子
参考文献・文献 特公昭57-033014(JP,B1)
特開昭62-006640(JP,A)
特開昭61-005772(JP,A)
特開昭56-048881(JP,A)
特開昭52-034991(JP,A)
特開平02-117377(JP,A)
特開平06-106186(JP,A)
特開平06-315369(JP,A)
調査した分野 C12H 1/06
A23L 1/30
C12F 3/00
C12G 3/12
特許請求の範囲 【請求項1】
焼酎もろみを、破砕米を用いてろ過し、もろみ液部ともろみ固形部に固液分離する方法。
【請求項2】
破砕米の粒度が0.5~5.0mmである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
破砕米を蒸熱処理することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
焼酎もろみを、破砕米を用いてろ過し、固液分離することによって得られる、破砕米由来成分を含むもろみ固形部。
【請求項5】
請求項に記載のもろみ固形部を含有する食品素材。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、天然ろ過助剤を用いて焼酎もろみを効率的にかつ短時間で固液分離する方法、ならびに該方法により得られるもろみ固形部に関する。
【背景技術】
【0002】
焼酎は、通常、蒸煮した米、麦等に麹菌を加えて培養(製麹)したものに、アルコール発酵を行うのに十分に育成させた酵母(酒母(もと))を加えて発酵させた「もろみ」を蒸留することによって製造される。近年、焼酎の人気が高まり、その生産量の増大に伴って、蒸留残渣(蒸留廃液、焼酎粕ともいう)の量も増加している。蒸留残渣の代表的な食品への利用法にもろみ酢がある。もろみ酢は、一般的には、もろみを蒸留してアルコール分(焼酎)を得た後の副産物である蒸留残渣をそのまま圧搾ろ過または遠心分離等によって清澄液を得ることにより製造されている。しかしながら、かかる方法では、蒸留残渣に原料由来の不溶性固形物(例えば、イモ焼酎にあっては繊維)が多く含まれるため、ろ過性が悪い。また、これまで蒸留残渣の固形部のほうを飼料や肥料に利用することも行われているが(特許文献1)、上記のように、蒸留残渣には不溶性固形物が多く含まれるため、ろ過による分離が困難であり、その有効利用がなされていないのが現状である。
【0003】

【特許文献1】特開平10-155471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来の発酵もろみの固液分離を容易にし、その固形部を有効に食品素材として利用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、焼酎の製造工程で得られるもろみを蒸留前に固液分離すること、かつその固液分離のためのろ過に、例えば、破砕米や澱粉粕のような天然ろ過助剤を用いることによって、効率よくかつ短時間に、食品素材として利用価値の高い固形部が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1) 焼酎もろみを、天然ろ過助剤を用いてろ過し、もろみ液部ともろみ固形部に固液分離する方法。
(2) 天然ろ過助剤が破砕米または澱粉粕である、(1)に記載の方法。
(3) 天然ろ過助剤の粒度が0.5~5.0mmである、(1)に記載の方法。
(4) 天然ろ過助剤を蒸熱処理することを特徴とする、(1)に記載の方法。
(5) (1)から(4)のいずれかに記載の方法により得られる、天然ろ過助剤由来成分を含むもろみ固形部。
(6) (5)に記載のもろみ固形部を含有する食品素材。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、焼酎もろみの固液分離を短時間でかつ効率的に行う方法が提供される。本発明の方法により得られた焼酎もろみ固形部は、天然ろ過助剤として用いる澱粉粕や破砕米が吸着しているため、各種栄養分や食物繊維分に富む食品素材として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の焼酎もろみの固液分離方法に用いる「焼酎もろみ」は、焼酎の原料である、米、麦、甘藷等に麹菌と酵母を作用させて得られる、いわゆる「二次もろみ」をいう。また、ここで、焼酎とは、焼酎乙類として分類される焼酎をいい、醸造用アルコールを薄めた焼酎甲類は含まない。また、焼酎乙類であれば、その種類は問わず、米焼酎、麦焼酎、そば焼酎、いも焼酎、きび焼酎、黒糖焼酎、白糠焼酎のいずれであってもよい。
【0009】
上記の「焼酎もろみ」(以下、「もろみ」という)の取得までは、焼酎の通常の製造工程に従って行うことができる。まず、蒸した米または麦に麹菌(種麹)を接種して十分に攪拌混合し、35℃~45℃の範囲で送風、攪拌、静置を繰り返して培養し、焼酎製造用の麹を得る(製麹)。麹菌としては、白麹菌、黒麹菌、泡盛麹菌のいずれでもよく、具体的には、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)、アスペルギルス・サイトイ(Aspergillus saitoi)、アスペルギルス・ウサミ(Aspergillus usamii)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)などが用いられる。次に、できた麹に酵母(酒母)と水を加えて一次発酵させ、さらに主原料(焼酎の種類による異なる)を投入して発酵させると、二次もろみが得られる。
【0010】
続いて得られたもろみを、天然ろ過助剤を用いて固液分離し、もろみ液部ともろみ固形部を得る。
【0011】
天然ろ過助剤としては、固液分離後の固形部が食品素材として再利用可能な天然物であればよく、例えば、破砕米または澱粉粕が好適に用いられる。
【0012】
天然ろ過助剤の粒度は、その助剤の種類にもよるが、作業性(ろ過時間、回収率)の向上の点から、0.5~5.0mm程度であればよく、例えば、破砕米の場合、好ましくは2.0~3.0mmである。
【0013】
天然ろ過助剤は、蒸熱処理(オートクレーブ処理)して用いてもよく、蒸熱処理は、市販のオートクレーブ装置を用い、例えば110~120℃、20~30分間行う。
【0014】
天然ろ過助剤の使用態様は、例えば、天然ろ過助剤を用いてろ過床をつくり、これにもろみを透過する方法、あるいは、もろみと天然ろ過助剤を混合してから、フィルターろ過する方法のいずれであってもよい。
【0015】
天然ろ過助剤の使用量は、用いる天然ろ過助剤の種類、粒度、使用態様により適宜変更しうるが、一般的にはもろみ100重量部に対して天然ろ過助剤を5~10重量部用いることが好ましい。
【0016】
上記のようにして固液分離し、もろみ液部を除いた後に残るもろみ固形部は、食品への繊維成分強化、食感改善、水分保持作用による鮮度保持効果などの種々の作用を発揮できることから、そのままあるいはエタノール発酵して機能性食品素材として用いることができる。
【0017】
例えば、上記もろみ固形物を配合して機能性を付与または改善できる食品としては、ソーセージ、ハムなどの畜肉加工食品、さつまあげ、かまぼこ、ちくわなどの魚肉加工食品、ギョウザ、コロッケなどの冷凍食品などが挙げられる。また、上記もろみ固形物は、賦形剤などを配合して家畜用、魚用飼料としても好適に用いることができる。
【0018】
もろみ固形物を配合して食品とする場合、食品に対するもろみ固形物の量には特に限定はないが、例えば、該もろみ固形物を1~90重量%とすることが例示される。
【実施例】
【0019】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものでない。
【0020】
(実施例1) 澱粉粕をろ過助剤とした場合のろ過性試験
乾燥澱粉粕(粒度1mm以下)をろ過助剤として用い、焼酎もろみのろ過性試験を行った。発酵後の焼酎もろみ(アルコール分14.5%)80gを、下記の処理A~Cの条件下にて吸引ろ過した。ろ過には、ブフナー漏斗(直径7cm)、ろ紙(Toyo No.2, 7cm)を使用した。1分間にろ液が10滴以下になった時をもってろ過終了とした。
処理A:もろみ80g + ろ紙
処理B:もろみ80g + (澱粉粕5g+ろ紙)
処理C:(もろみ80g+澱粉粕5g) + ろ紙
【0021】
処理Bは、澱粉粕でろ紙の上に予め層を作ってからもろみを吸引ろ過し、処理Cは、もろみと澱粉粕を混合したあとに吸引ろ過した。結果を表1に示す。
【0022】
【表1】
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【0023】
澱粉粕をろ過助剤として用いた場合、処理Bに比べて処理Cはろ液を多く回収できた。また、ろ過処理にかかる時間も1/3と大幅に短縮できた。すなわち、澱粉粕の場合はもろみと予め混合し、ろ過することにより固液分離効率が向上し、ろ過時間も短縮することがわかった。
【0024】
(実施例2) 破砕米をろ過助剤とした場合のろ過性試験
市販米を破砕した破砕米(粒度 2.0~3.0mm)をろ過助剤として用い、焼酎もろみのろ過性試験を行った。
【0025】
発酵後の焼酎もろみ(アルコール分14.5%)80gを、下記の処理1~20の条件下にて吸引ろ過した。ろ過には、ブフナー漏斗(直径7cm)、ろ紙(Toyo No.2, 7cm)を使用した。1分間にろ液が10滴以下になった時をもってろ過終了とした。
【0026】
(1) 破砕米(粒度 2.0~3.0mm)をそのまま使用
処理1:もろみ80g + ろ紙
処理2:もろみ80g + (ろ紙+破砕米5g)
処理3:(もろみ80g+破砕米5g) + ろ紙
処理2は、破砕米でろ紙の上に予め層を作ってからもろみを吸引ろ過し、処理3は、もろみと破砕米を混合したあとに吸引ろ過した。結果を表2に示す。
【0027】
【表2】
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【0028】
破砕米の場合は澱粉粕と異なり、ろ紙のうえに予めろ過床を形成してからろ過すると、
固液分離効率が向上し、ろ過時間も短縮した。
【0029】
(2)粒度を約1/2にした破砕米(粒度1~2mm)を使用
処理4:もろみ80g + ろ紙
処理5:もろみ80g + (ろ紙+1/2破砕米5g)
処理6:(もろみ80g+1/2破砕米5g) + ろ紙
処理5は、粒度約1/2破砕米をろ紙の上に予め層を作ってからもろみを吸引ろ過し、処理6は、もろみと粒度約1/2破砕米を混合したあとに吸引ろ過した。結果を表3に示す。
【0030】
【表3】
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【0031】
粒度を約1/2にした破砕米の場合も、ろ紙のうえに予めろ過床を形成してからろ過すると固液分離効率が向上し、ろ過時間も短縮した。
【0032】
(3)破砕米の使用量を増加
処理7:もろみ80g + ろ紙
処理8:もろみ 80g + (ろ紙+破砕米5g)
処理9:もろみ 80g + (ろ紙+破砕米7.5g)
処理10:もろみ80g + (ろ紙+破砕米10g)
処理8、9、10は、破砕米でろ紙の上に予め層を作ってからもろみを吸引ろ過した。結果を表4(沈殿重は元の破砕米重量を引いて計算)に示す。
【0033】
【表4】
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【0034】
破砕米使用量を増加させるとろ過時間は短縮した。しかしながら、破砕米は水分を若干吸収する傾向があり、使用量が増えると、ろ液が減少し、見かけの沈殿量が増え、固液分離効率は減少した。
【0035】
(4) 破砕米を水に浸せき、水切り後、オートクレーブ処理(120℃、25分間)してから使用
処理11:もろみ80g + ろ紙
処理12:もろみ80g + (ろ紙+オートクレーブ処理破砕米5g)
処理13:(もろみ80g + オートクレーブ処理破砕米5g) + ろ紙
処理12は、オートクレーブ処理破砕米でろ紙の上に予め層を作ってからもろみを吸引ろ過し、処理13は、もろみとオートクレーブ処理破砕米を混合したあとに吸引ろ過した。結果を表5に示す。
【0036】
【表5】
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【0037】
オートクレーブ処理破砕米で予めろ過床を形成しておいてからもろみをろ過しても固液分離効率の改善はみられないが、ろ過時間は1/3に短縮され、著しい作業性の向上が見られた。
【0038】
(5)オートクレーブ処理破砕米の使用量を増加
処理14:もろみ80g +ろ紙
処理15:もろみ80g +(ろ紙+オートクレーブ処理破砕米5g)
処理16:もろみ80g +(ろ紙+オートクレーブ処理破砕米7.5g)
処理17:もろみ80g +(ろ紙+オートクレーブ処理破砕米10g)
処理15、16、17は、オートクレーブ処理破砕米でろ紙の上に予め層を作ってからもろみを吸引ろ過した。結果を表6に示す。
【0039】
【表6】
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【0040】
オートクレーブ処理破砕米の場合は、もろみ80gにつき、その使用量は5gで十分であり、それ以上使用しても同じであった。
【0041】
(6) 粒度を約1/2にした破砕米をオートクレーブ処理してから使用
処理18:もろみ80g+ろ紙
処理19:もろみ80g +(ろ紙+オートクレーブ処理1/2破砕米5g)
処理20:(もろみ80g+オートクレーブ処理1/2破砕米5g)+ろ紙
処理19は、オートクレーブ処理した1/2破砕米でろ紙の上に予め層を作ってからもろみを吸引ろ過し、処理20は、もろみとオートクレーブ処理した1/2破砕米を混合したあとに吸引ろ過した。結果を表7に示す。
【0042】
【表7】
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【0043】
オートクレーブ処理1/2破砕米の場合、オートクレーブ処理破砕米と同様、予めろ過床を形成しておいてからもろみをろ過するとろ過時間が短縮された。
【0044】
(実施例3) もろみ固形部の組成分析
発酵後の焼酎もろみ(アルコール分14.5%)80gを、下記の処理D~Fの条件下にて吸引ろ過した。なお、ろ過に用いる漏斗、ろ紙、ろ過終了時点などは実施例2の通りである。
処理D:もろみ80g + ろ紙
処理E:もろみ80g + (ろ紙+破砕米5g)
処理F:もろみ80g + (ろ紙+オートクレーブ処理破砕米5g)
処理E、Fはいずれも破砕米でろ紙の上に予め層を作ってからもろみを吸引ろ過した。各処理で得られた沈殿(固形部)の組成分析結果を下記表8に示す。
【0045】
【表8】
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【0046】
処理E,Fでは、処理Dに比べて各種栄養分のうち、可溶性無窒素物の数値、すなわち全糖分が高まっている。これは、澱粉を多く含む米成分が固形部に移行したことによる。また、比較的粗タンパクや繊維分も多く含んでいることから、本処理物は食品素材として優れていることが示される。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、焼酎もろみの効率的な固液分離方法を提供するものであり、該方法により得られるもろみ固形部は新たな食品素材として再利用できる。従って、本発明は、固形部を排出しない環境負荷のない焼酎製造システムとして非常に有用である。