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明細書 :風速測定システム及び風速測定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4710003号 (P4710003)
公開番号 特開2006-258568 (P2006-258568A)
登録日 平成23年4月1日(2011.4.1)
発行日 平成23年6月29日(2011.6.29)
公開日 平成18年9月28日(2006.9.28)
発明の名称または考案の名称 風速測定システム及び風速測定方法
国際特許分類 G01P   5/00        (2006.01)
FI G01P 5/00 B
請求項の数または発明の数 4
全頁数 10
出願番号 特願2005-075696 (P2005-075696)
出願日 平成17年3月16日(2005.3.16)
審査請求日 平成19年5月9日(2007.5.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
発明者または考案者 【氏名】西尾 正則
【氏名】平田 雅子
個別代理人の代理人 【識別番号】100090273、【弁理士】、【氏名又は名称】國分 孝悦
審査官 【審査官】大谷 純
参考文献・文献 特開2003-202384(JP,A)
調査した分野 G01P 5/00
G01W 1/00
特許請求の範囲 【請求項1】
地上よりも上方に位置する電波発信物からの電波を受信するアンテナを備えた3個の受信手段と、
前記受信手段により受信された3組の電波の位相差から前記受信手段が設置された上空毎の時間構造関数を求める第1の演算手段と、
前記時間構造関数からコルモゴロフの大気理論に基づいて、前記上空毎の特性時間間隔を求める第2の演算手段と、
前記特性時間間隔から前記上空毎の空間構造の速度を求める第3の演算手段と、
を有することを特徴とする風速測定システム。
【請求項2】
受信手段は、互いに10km以上離間して設置されていることを特徴とする請求項1に記載の風速測定システム。
【請求項3】
前記第1の演算手段は、
前記受信手段により受信された3組の電波の位相差から、3組の受信手段間の相対的な時間構造関数を求める第4の演算手段と、
前記3組の相対的な時間構造関数から前記上空毎の時間構造関数を求める第5の演算手段と、
を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の風速測定システム。
【請求項4】
地上よりも上方に位置する電波発信物からの電波を3箇所の観測地で受信する受信ステップと、
前記受信ステップにおいて受信した3組の電波の位相差から前記観測地の上空毎の時間構造関数を求める第1の演算ステップと、
前記時間構造関数からコルモゴロフの大気理論に基づいて、前記上空毎の特性時間間隔を求める第2の演算ステップと、
前記特性時間間隔から前記上空毎の空間構造の速度を求める第3の演算ステップと、
を有することを特徴とする風速測定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、気象予測等に好適な風速測定システム及び風速測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天気の予測、航空機の管制、火山からの噴煙に伴う降灰地域の予測、環境汚染物質の移動範囲の予測等の種々の分野において、地上から1000m程度の対流圏下層の風速は基本的かつ重要なデータの一つである。従来、この高度の風速を測定するために、観測機器を備えた気球(ゾンデ)を地上から放出し、その移動量を観測する方法がとられている。観測機器により、気温、湿度、気圧及び風向等を測定することも可能である。このような測定方法は、レーウインゾンデによる測定方法、ラジオゾンデによる測定方法等とよばれ、本明細書では、ゾンデによる測定方法とよぶ。また、他の観測方法として、航空機を用いた測定方法が直接観測の方法としてとられることもある。更に、レーザを上空に向けて照射し、その反射光を測定する方法(ライダーによる測定方法)、ミリ波帯の電波を上空に向けて、その反射波を測定する方法(レーダーによる測定方法)等がとられることもある。
【0003】
しかしながら、ゾンデによる測定方法では、その都度、ゾンデを放出する必要があるため、コストがかかると共に、作業も煩雑である。また、放出されたゾンデが降下する位置の詳細は予測できないため、地上に降下したゾンデにより何らかの不都合が生じかねない。例えば、航空機に衝突したり、架線に接触したりすることがある。このような事情があるため、頻繁にゾンデを放出することは容易ではなく、例えば1時間毎の観測を行うことは困難である。更に、ゾンデの上昇と共に生じる水平方向の移動量から各高度の風速を求めているため、常に観測しようとする位置の風速を求めることも困難である。
【0004】
また、航空機を用いた測定方法でも、コストがかかると共に、作業が煩雑である。ライダー又はレーダーによる測定方法では、地上から電磁波を照射する必要があるため、周辺への電磁波の影響を配慮する必要がある。また、装置の運用に際して許可及び届出等も必要である。
【0005】

【非特許文献1】劉 慶会、他4名、電子情報通信学会論文誌 2002年7月、VOL. J85-B NO.7、P1112-P1119
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、容易且つ頻繁に風速の測定を行うことができる風速測定システム及び風速測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す発明の諸態様に想到した。
【0008】
本発明に係る風速測定システムは、地上よりも上方に位置する電波発信物からの電波を受信するアンテナを備えた3個の受信手段と、前記受信手段により受信された3組の電波の位相差から前記受信手段が設置された上空毎の時間構造関数を求める第1の演算手段と、前記時間構造関数からコルモゴロフの大気理論に基づいて、前記上空毎の特性時間間隔を求める第2の演算手段と、前記特性時間間隔から前記上空毎の空間構造の速度を求める第3の演算手段と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る風速測定方法は、地上よりも上方に位置する電波発信物からの電波を3箇所の観測地で受信する受信ステップと、前記受信ステップにおいて受信した3組の電波の位相差から前記観測地の上空毎の時間構造関数を求める第1の演算ステップと、前記時間構造関数からコルモゴロフの大気理論に基づいて、前記上空毎の特性時間間隔を求める第2の演算ステップと、前記特性時間間隔から前記上空毎の空間構造の速度を求める第3の演算ステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、3箇所の観測地間の位相差から空間構造の速度を求めており、この空間構造は例えば水蒸気の塊に相当する。このため、空間構造の速度を風速とみなすことができ、容易に風速のデータを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照して具体的に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る風速測定システムを示す模式図である。
【0013】
本実施形態に係る風速測定システムには、受信機1~3が設けられている。受信機1~3は、例えば互いに10km以上離間して設置される。受信機1~3には、夫々アンテナ11、前置増幅器12、周波数変換増幅器13、位相同期発振器14、高安定基準信号源15、記録装置16及びGPS受信機17が設けられている。
【0014】
アンテナ11は、静止型人工衛星101からのビーコン信号(電波)を受信する。前置増幅器12は、受信した電波を増幅する。周波数変換増幅器13は、受信した電波を記録装置16で処理可能な周波数帯及び信号強度に変換する。高安定基準信号源15は、受信機1~3が位相同期して動作するための基準信号を発生する。高安定基準信号源15としては、例えば数1000秒までの時間間隔において周波数の安定度が高い水素メーザ発振器が用いられる。位相同期発振器14は、基準信号に位相同期した周波数変換増幅器13の局部発振信号を発生する。本実施形態では、受信機1~3で受信した信号間の到来時間差を位相差として求めるため、周波数変換で使用する局部発振信号は基準同期信号に同期している必要がある。記録装置16は、高安定基準信号源15から供給される信号に同期してデータのサンプリングを行い、受信した電波の位相情報を保持したまま記録する。GPS受信機17は、GPS衛星の信号を利用し、記録装置16に記録される受信信号に時刻情報を付与する際に用いる時刻同期信号(1pps信号)を供給する。時刻同期信号の立ち上がりは、毎秒の開始時刻と1μ秒程度の精度で一致させる。図1では、便宜上、受信機1のみにこれらを図示している。
【0015】
また、本実施形態には、位相検出器52、データ解析装置53及び出力装置54が設けられている。受信機1~3から出力されたデジタルデータは、ADSL又はISDN等の公衆デジタル通信網等のネットワーク51を介して位相検出器52に入力される。
【0016】
位相検出器52は、各受信機1~3で受信した人工衛星101からの電波間の相互相関処理を行い、電波間の位相差を求める。人工衛星101は、静止型であっても軌道運動をしているため、受信機1~3が設置された観測地を基準とした人工衛星101の位置は厳密には変動している。このため、例えば受信機1及び2から出力されたデジタルデータから位相差を求めると、図2に示すような曲線が描かれる。そこで、位相検出器52は、このような位相差から人工衛星101の運動に伴う成分を除去する。この除去の方法としては、次のようなものが挙げられる。
(1)人工衛星101の軌道要素から軌道運動を求め、その運動に対応する受信機1~3間での位相変化を計算する方法。
(2)軌道運動による受信期間での位相変化を表す近似関数を、観測された位相差の時間変化自身からか又は最小二乗法等により推定する方法。
(3)これらを組み合わせた方法。
【0017】
位相検出器52によるこのような処理の結果、受信機i及びj(i,j=1,2,3)間の位相変化に関して、図3に示すような位相変化データφij(t)がデータ解析装置53に出力される。図4は、データ解析装置53のハードウェアを示すブロック図である。図4に示すように、データ解析装置53には、例えばCPU(コンピュータ)61、ハードディスクドライブ(HDD)62、メモリ63、操作部64及びインタフェース(I/F)部65が設けられている。
【0018】
HDD62には、CPU61が実行するデータ解析プログラム等が記憶されている。メモリ63は、CPU61がプログラムを実行する際にワークエリア等として用いられる。操作部64はキーボード等から構成されており、データ解析装置53の使用者が指示を入力する際等に用いられる。I/F部65は、位相検出器52からのデータを入力し、また、出力装置54に処理後のデータを出力する。
【0019】
図5は、データ解析装置53の機能的な構成を示す機能構成図である。CPU61は、データ解析プログラムを実行することにより、図5に示すような機能を発現する。即ち、CPU61は、受信機間時間構造関数演出部71、受信機毎時間構造関数演出部72、特性時間間隔演算部73及び風速演算部74として機能する。
【0020】
受信機間時間構造関数演出部71は、位相検出器52から出力された位相変化データφ12(t)、φ23(t)及びφ31(t)を用いて、数1に示す時間構造関数D12(τ)、D23(τ)及びD31(τ)を求める。図6に、これらの時間構造関数D12(τ)、D23(τ)及びD31(τ)を表すグラフを示す。
【0021】
【数1】
JP0004710003B2_000002t.gif

【0022】
受信機毎時間構造関数演出部72は、時間構造関数D12(τ)、D23(τ)及びD31(τ)を用いて、数2に示す時間構造関数D1(τ)、D2(τ)及びD3(τ)を求める。図7に、これらの時間構造関数D1(τ)、D2(τ)及びD3(τ)を表すグラフを示す。
【0023】
【数2】
JP0004710003B2_000003t.gif

【0024】
コルモゴロフの大気理論によると、ある一つの観測地における観測時間の時間間隔τと時間構造関数との間には図8に示すような関係がある。そして、時間構造関数の傾きが変化する特性時間間隔をτcとし、大気に起因する位相変化を引き起こしている空間構造の最大長をL、この空間構造の移動速度をvwとすると、数3の関係が成り立つ。
【0025】
【数3】
JP0004710003B2_000004t.gif

【0026】
特性時間間隔演算部73は、図9に示すように、図7に示す時間構造関数D1(τ)、D2(τ)及びD3(τ)の近似計算を行って、上述のような特性時間間隔τcを受信機毎に求める。特性時間間隔τcを求めるためには、連続して2時間程度の観測を行えばよい。
【0027】
風速演算部74は、図10に示すように、特性時間間隔演算部73により求められた特性時間間隔τcを用いて、数3から受信機毎に移動速度vwの値を求める。このような処理により求められる移動速度vwは、地上から1km~2km程度の上空に存在する水蒸気の塊81の移動速度に相当する。従って、移動速度vwを、地上から1km~2km程度における風速とみなすことが可能である。なお、水蒸気の塊の最大長Lの値は、気候、地形及び温度により多少変化することはあるが、その変化量は風速の精度に影響を及ぼすほどのものではない。但し、より高い精度の風速を得るためには、季節ごと、月ごと等で求めることが好ましい。
【0028】
出力装置54は、ディスプレイ及びプリンタ等から構成され、I/F部65から出力されたデータを出力する。
【0029】
このような第1の実施形態によれば、地上から1km~2km程度の上空における風速を正確に測定することができる。また、実際の水蒸気の塊の移動をも把握することができるため、その後に雨雲が発生しそうな場所を予測することも可能である。また、最大長Lの値として、ある特定の方向における最大長を用いれば、その方向における風速(ベクトル)が得られる。
【0030】
更に、本実施形態では、受信機1~3を所定の観測地に設置してしまえば、その後に外部に対して実行することは電波の受信だけである。このため、ゾンデの放出のように、周辺地域への不具合を考慮する必要もなく、また、ライダー又はレーダーによる測定のように、電磁波の放射に伴う影響及び手続等も考慮する必要がない。更に、電波を受信しても、変調波等に含まれる情報を利用するのではないため、通信の機密保護に影響を与えることもない。
【0031】
そして、本実施形態では、2時間程度のデータの蓄積があれば、特性時間間隔τcを求めて風速を測定することができるため、頻繁に風速のデータを得ることができる。
【0032】
なお、受信機を2つのみ用いた場合にも風速そのものを求めることは可能であるが、それがどちらの受信機の上空におけるものであるかを識別することができない。これに対し、本実施形態では、3個の受信機1~3を用いて相関関係を求めているため、観測地毎の風速を測定することができる。但し、3個の受信機は、互いに10km以上離間して設置されていることが好ましい。これは、互いの間隔が10km未満であると、観測地間でほぼ同一のデータが取得されて、観測地毎の風速を測定することが困難となる場合があるからである。
【0033】
本願発明者が実際に測定を行ったところ、図11に示す結果が得られた。図11中の◆及び実線で示すデータはゾンデを用いた測定の結果を示し、■及び破線で示すデータは、上述の実施形態に準じて行った測定の結果を示す。ゾンデを用いた方法では、測定高度が時間の経過と共に変化するのに対し、上述の実施形態に準じた方法ではそのような変化がない。このため、これらの結果は完全には一致していないが、上述の実施形態に準じた方法によっても、ゾンデを用いた方法と同等の精度で測定を行うことができた。
【0034】
なお、電波発信物としては、静止型人工衛星の他に、準天頂人工衛星、超楕円軌道の人工衛星及び飛行船等を用いることができる。但し、準天頂人工衛星、超楕円軌道の人工衛星及び飛行船を用いる場合には、これらの位置変動が大きいため、駆動装置等を設けてアンテナにこれらを追跡させる必要がある。
【0035】
また、空間構造の最大長Lの値を求めるためには、例えばゾンデを用いた方法等の他の方法で風速を求め、この風速を数3に代入して求めてもよい。
【0036】
更に、位相検出器52とデータ解析装置53とを一体化させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態に係る風速測定システムを示す模式図である。
【図2】2個の受信機から出力されたデジタルデータから求めた位相差を示すグラフである。
【図3】データ解析装置53に出力される位相変化データを示すグラフである。
【図4】データ解析装置53のハードウェアを示すブロック図である。
【図5】データ解析装置53の機能的な構成を示す機能構成図である。
【図6】時間構造関数D12(τ)、D23(τ)及びD31(τ)の例を示すグラフである。
【図7】時間構造関数D1(τ)、D2(τ)及びD3(τ)の例を示すグラフである。
【図8】時間間隔τと時間構造関数との関係を示すグラフである。
【図9】特性時間間隔τcの求め方を示すグラフである。
【図10】空間構造の移動を示す模式図である。
【図11】実際に行った測定の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0038】
1~3:受信機
11:アンテナ
12:前置増幅器
13:周波数変換増幅器
14:位相同期発振器
15:高安定基準信号源
16:記録装置
17:GPS受信機
51:ネットワーク
52:位相検出器
53:データ解析装置
54:出力装置
61:CPU
62:HDD
63:メモリ
64:操作部
65:インタフェース部
71:受信機間時間構造関数演算部(第4の演算部)
72:受信機毎時間構造関数演算部(第5の演算部)
73:特性時間間隔演算部(第2の演算部)
74:風速演算部(第3の演算部)
81:水蒸気の塊
101:静止型人工衛星
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10