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明細書 :光触媒及びそれを用いた水素の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4929450号 (P4929450)
公開番号 特開2007-069158 (P2007-069158A)
登録日 平成24年2月24日(2012.2.24)
発行日 平成24年5月9日(2012.5.9)
公開日 平成19年3月22日(2007.3.22)
発明の名称または考案の名称 光触媒及びそれを用いた水素の製造方法
国際特許分類 B01J  35/02        (2006.01)
C01G  55/00        (2006.01)
C01G   7/00        (2006.01)
B01J  23/42        (2006.01)
B01J  23/52        (2006.01)
FI B01J 35/02 J
C01G 55/00
C01G 7/00
B01J 23/42 M
B01J 23/52 M
請求項の数または発明の数 3
全頁数 7
出願番号 特願2005-261015 (P2005-261015)
出願日 平成17年9月8日(2005.9.8)
審査請求日 平成20年1月24日(2008.1.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
発明者または考案者 【氏名】楠元 芳文
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100096183、【弁理士】、【氏名又は名称】石井 貞次
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
【識別番号】100101904、【弁理士】、【氏名又は名称】島村 直己
審査官 【審査官】大城 公孝
参考文献・文献 特開2004-330074(JP,A)
IKEDA, M. et al,Synergy Effect of Graphite Silica and TiO2 on Photocatalytic Hydrogen Production,Chemistry Letters,2005年 7月 2日,Vol.34, No.8,p.1106-1107,doi:10.1246/cl.2005.1106
調査した分野 B01J 21/00-38/74
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
酸化チタン、グラファイトシリカ及び貴金属を含有する光触媒であって、
前記貴金属が白金であり、
グラファイトシリカと白金との重量比が5:1~1:5である前記光触媒
【請求項2】
グラファイトシリカと白金との重量比が2:1~1:5である請求項1記載の光触媒。
【請求項3】
アルコール類の水溶液に、光照射により活性化された請求項1又は2記載の光触媒を作用させることにより水素を製造する方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は光触媒及びそれを用いた水素の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新しいエネルギー源として原子力発電が実用化されているが、安全性や廃棄物処理等の問題を抱えているのでクリーンで安全な新エネルギーの開発が注目されている。現在、化石資源の制約やそれらの大量消費によって引き起こされた深刻な地球温暖化などの環境問題が注目されている。
【0003】
一方、一年間で地上に届く太陽エネルギーは人類の年間エネルギー消費量の1万倍に相当するほど莫大なものであり、その効率的な利用研究が最近活発となっている。その代表的な研究に光触媒の研究がある。光触媒、たとえば紫外線および可視光応答型光触媒は、無尽蔵な太陽光と水から、クリーンな燃料となる水素と酸素を直接製造することができる極めて有用な触媒として注目されている。
【0004】
太陽光と水から、水素と酸素を直接製造する反応を下記の反応式(a)に示す。この反応はエネルギー蓄積型の反応であり、光合成において、光を必要とする明反応下で起こる酸素発生も、この分解反応にほかならない。
O→H+(1/2)O (a)
【0005】
一般に、光触媒は、そのバンドギャップ以上のエネルギーを吸収すると、正孔と電子を生成しこれらがそれぞれ酸化反応、還元反応を行い、酸素、水素を発生させる。
【0006】
光触媒の実用化を考えた場合、光源として太陽光の利用は不可欠である。地表に降り注ぐ太陽光は、可視光である波長500nm付近に放射の最大強度をもっており、波長が約400~750nmの可視光領域のエネルギー量は全太陽光のエネルギー量の約43%である。一方、波長が約400nm以下の紫外線領域でのエネルギー量は全太陽光の5%にも満たない。
【0007】
太陽光を効率的に利用するには紫外線を効率よく利用する光触媒が求められている。本発明者らはこれまでに、紫外線利用能が高い光触媒として、酸化チタン(TiO)とグラファイトシリカとを含有する二種混合系の光触媒を開発している(特許文献1)。しかしながらその触媒の触媒活性は必ずしも満足できるものではなく、より一層の改善が求められている。
【0008】

【特許文献1】特開2004-330074号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、効率的な水素の製造のために用いることができる、高活性の光触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは驚くべきことに、酸化チタンとグラファイトシリカとを含有する二種混合系の光触媒(特許文献1)に白金等の貴金属を更に配合することにより光触媒活性がより一層高められることを見出した。
【0011】
本発明は以下の発明を包含する。
(1)酸化チタン、グラファイトシリカ及び貴金属を含有する光触媒。
(2)前記貴金属が白金である(1)記載の光触媒。
(3)グラファイトシリカと白金との重量比が29:1~1:5である(2)記載の光触媒。
(4)前記貴金属が金である(1)記載の光触媒。
(5)グラファイトシリカと金との重量比が29:1~1:1である(4)記載の光触媒。
(6)アルコール類の水溶液に、光照射により活性化された(1)~(5)のいずれか1項に記載の光触媒を作用させることにより水素を製造する方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光触媒は、酸化チタンとグラファイトシリカとを含有する二種混合系の光触媒と比較して高い触媒活性を有する。本発明の光触媒により効率的な水素の製造が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明において酸化チタンとは、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、無定形酸化チタンなどの各種酸化チタンを意味する。特に、アナターゼ型酸化チタン単独またはアナターゼ型酸化チタンを主成分とするアナターゼ型/ルチル型酸化チタン混合物が好ましい。本発明の光触媒の調製において用いられる典型的な酸化チタンは、粉末状のものである。
【0014】
グラファイトシリカは、通称ブラックシリカ、シリカブラック、神明石などと呼ばれ、数億年前の海底の珪藻類が蓄積して地表に隆起し層状堆積して形成された、炭素の混入した黒鉛珪石質の天然鉱石である。グラファイトシリカはC、SiO、Fe、Al、CaO、MgO、TiO、NaO、KO、HO等を含有し、炭素含有量が約5%である黒色物であり、約80%のシリカ(SiO)を主成分とする。グラファイトシリカは多孔質であり物質を吸着する作用を有する。本発明の光触媒の調製において用いられる典型的なグラファイトシリカは、粉末状のものである。
【0015】
本発明に使用できる貴金属としては、白金、金、銀、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムが挙げられ、特に白金及び金が好ましく、白金が最も好ましい。本発明の光触媒の調製において、貴金属は例えば粉末の形態のものが用いられる。
【0016】
本発明者らは、上述の酸化チタン、グラファイトシリカ及び貴金属を含有する光触媒が、酸化チタン及びグラファイトシリカからなる光触媒や、酸化チタン及び貴金属からなる光触媒と比較して、予想外に優れた触媒活性を有することを見出した。グラファイトシリカと貴金属とが相乗的に作用して酸化チタンの光触媒活性を高めているものと考えられる。本発明の光触媒においてグラファイトシリカ及び貴金属の合計重量が、酸化チタン、グラファイトシリカ及び貴金属の合計重量を基準として5~80wt%、好ましくは40~60wt%である場合に、特に水素発生効率が良い。貴金属として白金を用いる場合、グラファイトシリカと白金との重量比は29:1~1:5であることが好ましい。グラファイトシリカと白金との重量比が29:1~2:1である場合、高価な白金の使用量は少量でありながら十分に高い触媒活性を達成できるため好ましい。グラファイトシリカと白金との重量比が2:1~1:5、特に1:1~1:5である場合、特に高い触媒活性を達成することができるため好ましい。貴金属として金を用いる場合、グラファイトシリカと金との重量比は29:1~1:1であることが好ましく、14:1~2:1であることが特に好ましい。
【0017】
本発明の光触媒は、酸化チタン、グラファイトシリカ及び貴金属を混合することにより調製される。光を有効に利用するためには各成分は粒子状であることが好ましい。なかでも、比表面積が大きい粒子、すなわち粒子径の小さい粒子ほど好ましく、例えば10nm~200μmの粒子径を有する粒子が好ましい。一般に固相反応法で調製された酸化チタン粒子は粒子径が大きく、その比表面積は小さいが、ボールミルなどで粉砕を行うことなどにより粒子径を小さくできる。また、本発明の光触媒は、粉末混合物のまま使用されるだけでなく、適宜成形加工又は焼結されて使用され得る。例えば微粒子を成型して板状又は薄膜の形態で使用することもできる。また、粉末光触媒を適当な基板上に固定化して使用することもできる。
【0018】
本発明の光触媒は更に、Ni等の遷移金属、NiO、IrO、RuO等からなる群から選択される1種又は2種以上の成分からなる助触媒によって修飾、担持することができる。担持は混錬法や含浸法、光電着法等で行うことができる。
【0019】
本発明の光触媒による水素の製造は、アルコール類(水素含有化合物)の水溶液に本発明の光触媒を作用させることにより行われる。アルコール類の濃度は10~99.5vol%が好ましく、40~90vol%が特に好ましい。アルコール類としては、例えばメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオールが挙げられる。アルコール類の水溶液中では、アルコール分子と水分子が水素結合でつながった会合体を形成し、さらに周囲のアルコール会合体を水分子が水素結合のネットワークでつなぎ水和クラスターを形成していると考えられている。アルコール類の水溶液に用いられる水としては純粋な水に限定されず、炭酸塩や炭酸水素塩、ヨウ素塩、臭素塩等の塩類を混合、溶解した水を用いてもよい。
【0020】
上記水溶液に本発明の光触媒を添加する。触媒の添加量は、基本的には入射した光が効率よく吸収できる量を選ぶ。このように光分解用触媒を添加したアルコール類水溶液に光を照射することによって光触媒が活性化され、水素発生反応が進行する。照射する光は、半導体光触媒である酸化チタンのバンドギャップを超えるようなエネルギーを持つものである必要がある。このような光としては紫外線が挙げられる。本発明の光触媒は非常に高効率であり、太陽光に含まれる紫外線を有効に利用することができるため、本発明では光触媒が添加されたアルコール類水溶液に太陽光を照射してもよい。
【0021】
実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。
【実施例1】
【0022】
材料
酸化チタン(TiO)として日本アエロジル製P25を用いた。この酸化チタン粉末は約80%がアナターゼ構造、約20%がルチル構造であり、細孔の少ない多面構造である。粒径は約20nmで、比表面積は約50mである。
【0023】
グラファイトシリカとしては、(株)西日本環境工学の平均粒径が約3μmのグラファイトシリカ粉末を用いた。
【0024】
白金は、(株)ニラコ製の300meshのものを用いた。
メタノールは和光純薬工業(株)の特級グレードのものを用いた。水は脱イオン水を2回再蒸留したものを用いた。これらを用いて40vol%メタノール水溶液を調製した。
【0025】
実験方法及び結果
酸化チタン粉末15mgと、グラファイトシリカ粉末及び白金粉末を各種比で配合した混合物15mgとを混合して得られた30mgの光触媒を用いた。図1の横軸に白金粉末の配合量(mg)を示す。
【0026】
パイレックス(登録商標)ガラス製のシュレンク管(容積153ml)に、上記光触媒30mg、40vol%メタノール水溶液20ml、及びスターラーチップを入れ、シリコンキャップで蓋をして密閉し、超音波照射を1分間行って攪拌した。Arガスにより1時間バブリングして溶液を脱気し、管内をArガス雰囲気にした。懸濁溶液をスターラーで攪拌しながら紫外光を照射した。光強度は15mW/cmで行った。紫外光ランプとして、ウシオ電気(株)の500W超高圧水銀ランプ(USH-500SC)を用い、フィルター(ATG UV-D33S)を用いて紫外光を取り出した。紫外光照射は3時間行い、照射開始後0時間、0.5時間、1時間、1.5時間、2時間、及び3時間後にシュレンク管内の気体をシリンジにより少量採取し、ガスクロマトグラフ(島津製作所製、GC-8AIT)を用いて水素の検出を行い、水素発生速度(μmol/h)を算出した。
【0027】
また比較のために、上記光触媒30mgに代えて、酸化チタン粉末15mgと、白金粉末0~15mgとを混合して得られた15~30mgの光触媒を用いて同様の実験を行った。
【0028】
結果を図1に示す。図1中、酸化チタンはTiOと、グラファイトシリカはGSと、白金はPtと示す。酸化チタン粉末15mgに白金粉末のみを0~15mg配合した光触媒を用いた実験(図1の三角印)では、白金粉末を1mg程度配合すると水素発生速度の増大が見られるが、それ以上配合しても水素発生速度は頭打ちになり、ほとんど増大しなかったことから、今回の測定範囲では水素発生速度は白金粉末添加量に強く依存しないことがわかる。そして、酸化チタン粉末15mgと、グラファイトシリカ粉末及び白金粉末の混合物15mgとを配合した本発明の光触媒による水素発生速度は、酸化チタン粉末15mgと、グラファイトシリカ粉末又は白金粉末15mgとを配合した光触媒による水素発生速度から予想される水素発生速度より著しく高いことが明らかとなった。具体的にはグラファイトシリカ粉末:白金粉末が29:1~1:5の重量比で配合された混合物を酸化チタン粉末と組合せた場合に水素発生速度が高められた。グラファイトシリカ粉末と白金粉末との重量比が1:2で配合されている光触媒を用いた場合に水素発生速度がピークに達した。
【実施例2】
【0029】
材料
金としては、(株)ニラコ製の純度が99.5%で、大きさが0.3~0.6μmの金粉末を用いた。
その他の材料については実施例1と同一である。
【0030】
実験方法及び結果
光触媒として、酸化チタン粉末15mgと、グラファイトシリカ粉末及び金粉末を各種比で配合した混合物15mgとを混合して得られた30mgの光触媒を用いた点以外は実施例1と同様の実験操作を行った。図2の横軸に金の配合量(mg)を示す。
【0031】
結果を図2に示す。図2中、酸化チタンはTiOと、グラファイトシリカはGSと、金はAuと示す。酸化チタン粉末15mgと、グラファイトシリカ粉末及び金粉末の混合物15mgとを配合した本発明の光触媒による水素発生速度は、酸化チタン粉末15mgとグラファイトシリカ粉末又は金粉末15mgとを配合した光触媒による水素発生速度から予想される水素発生速度と同程度かそれ以上であった。特にグラファイトシリカ粉末:金粉末が重量比で29:1~1:1で配合されている光触媒を用いた場合に相乗的な効果が認められた。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】酸化チタン、グラファイトシリカ及び白金を含有する光触媒による水素発生速度の促進効果を示す図である。
【図2】酸化チタン、グラファイトシリカ及び金を含有する光触媒による水素発生速度の促進効果を示す図である。
図面
【図1】
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【図2】
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