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明細書 :石炭中のフッ素の定量方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4660764号 (P4660764)
公開番号 特開2007-101504 (P2007-101504A)
登録日 平成23年1月14日(2011.1.14)
発行日 平成23年3月30日(2011.3.30)
公開日 平成19年4月19日(2007.4.19)
発明の名称または考案の名称 石炭中のフッ素の定量方法
国際特許分類 G01N  31/00        (2006.01)
G01N  31/12        (2006.01)
G01N  31/10        (2006.01)
G01N  33/22        (2006.01)
G01N  27/416       (2006.01)
FI G01N 31/00 Q
G01N 31/12 A
G01N 31/10
G01N 33/22 A
G01N 27/46 351K
請求項の数または発明の数 4
全頁数 11
出願番号 特願2005-295476 (P2005-295476)
出願日 平成17年10月7日(2005.10.7)
審査請求日 平成20年1月31日(2008.1.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
発明者または考案者 【氏名】大木 章
個別代理人の代理人 【識別番号】100090273、【弁理士】、【氏名又は名称】國分 孝悦
審査官 【審査官】三木 隆
参考文献・文献 特開平04-002962(JP,A)
国際公開第2004/055554(WO,A1)
特開昭55-031973(JP,A)
特開昭58-122458(JP,A)
特開昭56-037552(JP,A)
特開平07-020114(JP,A)
特開平02-092802(JP,A)
日本分析化学会年会講演要旨集,2003年,Vol.52nd Page.11 1A26
日本分析化学会年会講演要旨集,2006年,Vol.55th Page.225 I3011
調査した分野 G01N 31/00
G01N 27/416
G01N 31/10
G01N 31/12
G01N 33/22
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
石炭及び触媒を含む試料を酸素フラスコ燃焼法により燃焼させることにより、前記石炭中から発生したフッ素が溶解した溶液を得る工程と、
前記溶液中のフッ素濃度を測定する工程と、
を有し、
前記触媒は、少なくともWO3又はMoO3を含有することを特徴とする石炭中のフッ素の定量方法。
【請求項2】
前記触媒は、更にSnを含有することを特徴とする請求項1に記載の石炭中のフッ素の定量方法。
【請求項3】
前記フッ素濃度を測定する工程において、フッ素イオン選択性電極を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の石炭中のフッ素の定量方法。
【請求項4】
前記溶液を得る工程において、前記試料を3回以上燃焼させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の石炭中のフッ素の定量方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、環境汚染の改善に好適な石炭中のフッ素の定量方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、石炭は世界の一次エネルギの約3割を占めている。特に電力生産に関しては、石炭火力発電への依存が大きい。更に、石炭の需要は増大しており、近年では、それまで使用されていない低品位炭(高灰分炭)も使用されるようになっている。しかし、石炭にはフッ素が含まれており、石炭の燃焼により放出されたフッ素を起因とする環境への影響が顕在化してきている。また、フッ素の含有量は、灰分量が多いほど高いため、低品位炭の使用量が増加するほど、汚染が広がりやすくなる。
【0003】
このため、石炭に含まれるフッ素の量を正確に分析し、その分析結果に応じた対応を行うことが重要である。対応策としては、フッ素の含有量が少ない石炭と混ぜて燃焼させる混焼という技術があるが、この技術にも、正確なフッ素含有量が必要とされる。
【0004】
石炭中のフッ素含有量を定量するためには、固体である石炭中からフッ素を回収し溶液化する必要がある。そして、この溶液化の方法として、pyrohydrolysis法(加水分解法)とよばれる方法が主流となっている。この方法は、例えば国際標準化機構(ISO:International Organization for Standardization)及びアメリカ材料試験協会(ASTM:American Society for Testing and Material)等でも採用されている。
【0005】
しかしながら、pyrohydrolysis法には、処理の煩雑さ及び習熟の必要性等の問題点がある。また、定量に要する時間が比較的長い(3時間~4時間程度)という問題点もある。
【0006】
また、石炭中の元素の分析に関する種々の提案もされているが、そのままフッ素の分析に適用できるものはない。
【0007】

【特許文献1】特開2003-177095号公報
【特許文献2】特開平9-243523号公報
【特許文献3】特開平9-243633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、簡易で正確に分析を行うことができる石炭中のフッ素の定量方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す発明の諸態様に想到した。
【0010】
本発明に係る石炭中のフッ素の定量方法は、石炭及び触媒を含む試料を酸素フラスコ燃焼法により燃焼させることにより、前記石炭中から発生したフッ素が溶解した溶液を得る工程と、前記溶液中のフッ素濃度を測定する工程と、を有し、前記触媒は、少なくともWO3又はMoO3を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、酸素フラスコ燃焼法を採用してフッ素の溶液を取得するので、正確且つ簡易な分析を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照して具体的に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る石炭中のフッ素の定量方法を示す模式図である。
【0013】
本実施形態では、先ず、図1に示すように、濾紙1の中央に試料2を置く。濾紙1としては、例えば1辺の長さが40mmのものを用いる。試料2は、例えば石炭の粉末(0.03g)、触媒(0.01g)及び副触媒(0.005g)からなる。なお、触媒及び副触媒が含まれていなくてもよい。触媒としては、例えばWO3及び/又はMoO3を用いることができ、副触媒としては、例えばSnを用いることができる。なお、濾紙1には導火部3を付加しておく。
【0014】
試料2を濾紙1に置いた後には、導火部3を固定したまま濾紙1を縦方向に三つ折りする。その後、濾紙1を横方向に三つ折りする。その後、試料2を包含した濾紙1を燃焼フラスコの共栓部(ガラス栓)4に取り付けた白金バスケット5に入れる。また、燃焼フラスコの三角フラスコ6には、少量の吸収剤7、例えば5mlの水を入れ、更に酸素を満たしておく。そして、濾紙1の導火部3に点火し、濾紙1が固定された白金バスケット5を三角フラスコ6に挿入し、内部で試料2を燃焼させる。
【0015】
そして、燃焼終了後に燃焼フラスコを傾斜させて2分間振盪し、その後1時間放置することにより、燃焼により発生したフッ素を吸収剤7に吸収させる。このようにして、フッ素を溶液化する。
【0016】
その後、フッ素を吸収した吸収剤7の分析を行う。この分析では、吸収剤7の濾過を行った後、指示薬を1滴添加し、吸収剤7が灰色に変化し始めるまで0.05Mの水酸化ナトリウム水溶液を加えることにより、pHの調整を行う。更に、5mlの全イオン強度補正緩衝液(TISAB)を加え、例えば最終的な体積を25mlとする。そして、この溶液を振盪した後、30分間以上放置した後、例えばフッ素イオン選択性電極及び参照電極を用いてフッ素濃度の測定を行う。
【0017】
酸素フラスコ燃焼法では、1回の燃焼操作に要する時間は、数分間程度(放置時間を含めると1時間程度)である。このため、短時間で石炭の溶液化を行うことが可能である。また、試料2の準備等の各処理も容易であり、特別な習熟がなくとも正確な操作を行うことが可能である。従って、本実施形態によれば、容易且つ正確に石炭中のフッ素含有量を定量することができる。
【0018】
なお、より精度を高めるためには、複数の試料2を用いて複数回の燃焼を行うことが好ましい。即ち、酸素フラスコの振盪後に当該試料2の燃え殻を取り出し、速やかに新たな試料2を包んだ濾紙1を白金バスケット5に投入し、再度の燃焼を行う。この処理を繰り返すことにより、吸収剤7中のフッ素含有量を高める。そして、最後の振盪終了後に1時間の放置を行う。このようにして吸収剤7中のフッ素含有量を高めることにより、フッ素イオン選択性電極を用いた定量分析における誤差が低減され、より一層高い精度を得ることが可能となる。
【0019】
次に、本願発明者が実際に行った実験の結果について説明する。
【実施例1】
【0020】
実施例1では、1g当たりのフッ素含有量が70±2μgの石炭に対して、燃焼の繰り返し回数及び触媒の種類を変化させて、上述の定量方法による分析を行った。「70±2μg」という値は、米国のNIST(National Institute of Standard and Technology)により認証されている値である。試験条件及び試験結果を表1に示す。表1中の実測値は、石炭1g当たりのフッ素含有量(μg)であり、回収率は、認証値に対する平均実測値の割合を示している。回収率は95%~105%程度であることが好ましい。
【0021】
【表1】
JP0004660764B2_000002t.gif

【0022】
表1に示すように、燃焼を3回以上繰り返すことにより、回収率が100%に近付き、標準偏差が向上した。即ち、定量分析の精度が向上した。また、この石炭では、定量分析の精度は、触媒の有無及び種類の影響をほとんど受けなかった。
【実施例2】
【0023】
実施例2では、1g当たりのフッ素含有量が864±20μgの石炭に対して、触媒及び副触媒の種類を変化させて、上述の定量方法による分析を行った。なお、燃焼回数は1回である。「864±20μg」という値は、中国のNRCCRM(National Research Center for Certified Reference Materials)により認証されている値である。試験条件及び試験結果を表2に示す。
【0024】
【表2】
JP0004660764B2_000003t.gif

【0025】
表2に示すように、触媒を用いない場合の回収率は82%程度であったのに対し、触媒としてWO3又はMoO3を添加した場合の回収率は93%~94%程度まで向上した。更に、副触媒としてSnを添加した場合には、回収率が100%~102%程度まで良化した。
【実施例3】
【0026】
実施例3では、表3に示す7種類の石炭における触媒の有無と回収率との関係について調査した。この調査でも、上述の定量方法による分析を行った。なお、この調査では、表3中の試料No.1~No.3については燃焼回数を3回とし、試料No.4~No.7については燃焼回数を1回とした。触媒を用いない場合の回収率を図2に示し、触媒としてWO3を用い、副触媒としてSnを用いた場合の回収率を図3に示す。なお、表3中のフッ素含有量は、石炭1g当たりのフッ素含有量(μg)である。試料No.1及びNo.2のフッ素含有量は米国のNISTにより認証された値である(NIST1635、NIST1632c)。試料No.3及びNo.4のフッ素含有量は欧州のBCR(Community Bureau of Reference)により認証された値である(BCR040、BCR460)。試料No.5~No.7のフッ素含有量は中国のNRCCRMにより認証された値である(GBW11121、GBE11122、GBW11123)。
【0027】
【表3】
JP0004660764B2_000004t.gif

【0028】
図2に示すように、試料No.4~No.7では、触媒がない場合の回収率が低かったが、試料No.1~No.3では、触媒がない場合でも良好な回収率が得られた。また、図3に示すように、触媒及び副触媒がある場合には、全ての試料において良好な回収率が得られた。この結果より、1g当たりのフッ素含有量が150μg以上の石炭に対する定量分析では、適当な触媒を用いることが好ましいといえる。
【実施例4】
【0029】
実施例4では、試料No.1、No.2及びNo.6における燃焼回数と回収率との関係について調査した。この調査でも上述の定量方法(WO3触媒及びSn副触媒あり)による分析を行った。この結果を図4に示す。
【0030】
図4に示すように、石炭灰の量及びフッ素含有量が少ない試料No.1及びNo.2では、3回以上の燃焼で回収率が安定した。これに対し、石炭灰の量及びフッ素含有量が多い試料No.6では、1回の燃焼から安定した回収率が得られた。
【実施例5】
【0031】
実施例5では、試料No.2及びNo.6における試料の粒径と回収率との関係について調査した。この調査でも上述の定量方法による分析を行った。但し、試料No.2では燃焼回数を3回とし、試料No.6では燃焼回数を1回とした。この結果を図5に示す。
【0032】
図5に示すように、試料No.2では、粒径は回収率に影響を及ぼさなかった。これに対し、試料No.6では、粒径が小さいほど回収率が良化するという結果が得られた。更に、試料No.6では、触媒としてWO3を用い、副触媒としてSnを用いた場合により良好な結果が得られた。
【実施例6】
【0033】
実施例6では、試料No.6における燃焼後の静置時間と回収率との関係について調査した。この調査でも上述の定量方法(WO3触媒及びSn副触媒あり、燃焼回数:1回)による分析を行った。この結果を図6に示す。
【0034】
図6に示すように、静置時間を1時間としたときに最も良好な回収率が得られた。
【実施例7】
【0035】
実施例7では、試料No.4及びNo.6における質量比と回収率との関係について調査した。ここで、質量比とは、WO3触媒の質量に対する石炭の質量の割合をいう。また、この調査では、WO3触媒の質量を0.01g、Sn副触媒の質量を0.005gに固定し、石炭の質量を変化させた。この調査でも上述の定量方法(燃焼回数:1回)による分析を行った。この結果を図7に示す。
【0036】
図7に示すように、いずれの試料においても、質量比を3としたときに最も良好な回収率が得られた。
【実施例8】
【0037】
実施例8では、上述の定量方法(WO3触媒及びSn副触媒あり、燃焼回数:3回)による分析結果とpyrohydrolysis法による分析結果との比較を行った。ここでは、表4に示す20種類の石炭に対する分析を夫々の方法によって行った。分析の結果を図8に示す。なお、表4に示す値(フッ素含有量を除く)は、財団法人石炭利用総合センターにより認証されている値である。また、フッ素含有量は、石炭1g当たりのフッ素含有量であり、pyrohydrolysis法による分析の結果、得られた値である。
【0038】
【表4】
JP0004660764B2_000005t.gif

【0039】
図8に示すように、上述の酸素フラスコ燃焼法を採用した定量方法による分析結果は、pyrohydrolysis法による分析結果とほぼ一致した。
【0040】
なお、試料No.1~No.7についてpyrohydrolysis法による分析を行ったところ、図9に示すような結果が得られた。この結果より、pyrohydrolysis法によれば正確な分析が可能であるといえる。そして、pyrohydrolysis法と同等な結果が得られる酸素フラスコ燃焼法を採用した定量方法も正確な分析が可能な方法であるといえる。
【0041】
なお、酸素フラスコ燃焼法は、医薬品中の硫黄及びハロゲン等の分析、並びに石炭中の硫黄、塩素及び水銀等の分析に採用されているが、石炭中のフッ素の溶液化に関する文献及び論文等は皆無である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態に係る石炭中のフッ素の定量方法を示す模式図である。
【図2】実施例3の分析結果(触媒なし)を示すグラフである。
【図3】実施例3の分析結果(触媒あり)を示すグラフである。
【図4】実施例4の分析結果を示すグラフである。
【図5】実施例5の分析結果を示すグラフである。
【図6】実施例6の分析結果を示すグラフである。
【図7】実施例7の分析結果を示すグラフである。
【図8】実施例8の分析結果を示すグラフである。
【図9】pyrohydrolysis法による分析結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0043】
1:濾紙
2:試料
3:導火部
4:共栓部
5:白金バスケット
6:三角フラスコ
7:吸収剤
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
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【図8】
7
【図9】
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