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明細書 :機能性蛋白質及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4304267号 (P4304267)
公開番号 特開2000-297099 (P2000-297099A)
登録日 平成21年5月15日(2009.5.15)
発行日 平成21年7月29日(2009.7.29)
公開日 平成12年10月24日(2000.10.24)
発明の名称または考案の名称 機能性蛋白質及びその製造方法
国際特許分類 C07K  14/465       (2006.01)
A23J   3/04        (2006.01)
A23L   1/305       (2006.01)
A23L   2/66        (2006.01)
A23L   2/52        (2006.01)
A23L   2/38        (2006.01)
A61K  38/55        (2006.01)
C07K   1/36        (2006.01)
C07K  14/81        (2006.01)
FI C07K 14/465
A23J 3/04
A23L 1/305
A23L 2/00 J
A23L 2/00 F
A23L 2/38 Q
A61K 37/64
C07K 1/36
C07K 14/81
請求項の数または発明の数 11
全頁数 17
出願番号 特願平11-108087 (P1999-108087)
出願日 平成11年4月15日(1999.4.15)
審査請求日 平成18年3月27日(2006.3.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
発明者または考案者 【氏名】杉元 康志
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
審査官 【審査官】山中 隆幸
参考文献・文献 Protein Science,1995年,vol.4,p.613-621
調査した分野 C07K1/00-19/00
PubMed
Science Direct
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
胚発生中の鶏卵のみに含有され、分子量が43,000~47,000であって、1%濃度の水溶液を90℃で10分間加熱した場合に、セリンプロテアーゼ及びチロシナーゼの阻害効果が付加されることを特徴とする、HS-オボアルブミン。
【請求項2】
無精卵に含有されるオボアルブミンの構造に対して、α-ヘリックス構造が25%減少し、β-シートが30%増加している構造を有することを特徴とする、請求項1のHS-オボアルブミン。
【請求項3】
請求項1若しくは2のHS-オボアルブミンの水溶液を、80~100℃の範囲内で3~30分間加熱することにより得られる、セリンプロテアーゼ及びチロシナーゼの阻害効果を有することを特徴とする機能性蛋白質。
【請求項4】
胚発生中の卵白を中性緩衝液及び硫酸アンモニウムを用いて、グロブリン画分を除去した後、硫酸アンモニウムを更に加えて沈殿物を生成し、回収することを特徴とする、請求項1若しくは2のHS-オボアルブミンの含有物の製造方法。
【請求項5】
請求項4で得られた沈殿物に、水透析及び遠心分離を行って硫酸アンモニウム及び不純物を除去する工程と、硫酸アンモニウムを更に加えて沈殿物を再度生成して回収する工程により純度を高めることを特徴とする、請求項1若しくは2のHS-オボアルブミンの含有物の製造方法。
【請求項6】
請求項4若しくは5の沈殿物の回収後の上澄液に対し、硫酸アンモニウムの添加及び酸性の水溶液のpH調整によって、沈殿物を生成して回収することを特徴とする、請求項1若しくは2のHS-オボアルブミンの含有物の製造方法。
【請求項7】
請求項5の方法により得られた沈殿物に対し、水透析及び遠心分離を行って硫酸アンモニウム及び不純物を除去する工程と、硫酸アンモニウムを更に加えて沈殿物を再度生成して回収する工程を順次繰り返すことにより、純度を高めることを特徴とする、請求項1若しくは2のHS-オボアルブミンの含有物の製造方法。
【請求項8】
請求項6の方法により得られた沈殿物に対し、水透析及び遠心分離を行って硫酸アンモニウム及び不純物を除去する工程と、硫酸アンモニウムの添加及び酸性の水溶液のpH調整により沈殿物を再度生成して回収する工程を順次繰り返すことにより、純度を高めることを特徴とする、請求項1若しくは2のHS-オボアルブミンの含有物の製造方法。
【請求項9】
請求項4~8の製造方法によって得られたHS-オボアルブミンを含有する物質からHS-オボアルブミンを精製する方法において、
オボアルブミンを吸着する陽イオン交換吸着工程と、
前記の陽イオン交換吸着工程により得られたオボアルブミンを陰イオン交換担体を用いてオボアルブミンを吸着する陰イオン交換担体工程と、
前記の陰イオン交換吸着工程より得られたオボアルブミンからN-オボアルブミンを除去し、HS-オボアルブミンのみを回収する工程、
前記のオボアルブミン回収工程を経て不純物を除去する工程、とを有することを特徴とする、HS-オボアルブミンの精製方法。
【請求項10】
チロシナーゼ活性阻害剤として、請求項3の機能性蛋白質を含有することを特徴とする化粧品。
【請求項11】
請求項3の機能性蛋白質を含有することを特徴とする口腔用組成物。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、胚発生中の鶏卵より得られるHS-オボアルブミンに関する。
【0002】
【従来の技術】
ニワトリ卵白蛋白質の54%は、分子量約4万5千の糖蛋白質であるオボアルブミンによって占められており、その構造からserpin superfamilyに属するが、プロテアーゼインヒビター活性を示さないことから、アミノ酸供給源以外の機能は不明である。
これまでの研究から、オボアルブミンを含む卵白蛋白質の胚の利用形態は、発生中に卵黄嚢へ移行し、卵黄嚢膜から吸収される経路と、羊膜内に入り、羊水成分となり、胚へ飲食された後、利用される経路の2つがあると思われ、いずれも分解後に吸収されるものと考えられている。
【0003】
しかし、胚血清には分解されない状態のオボアルブミンなどの卵白蛋白質が検出されていることから、一部には分解を受けずに胚へ吸収されていることが予想される。
新鮮な無精卵より精製したオボアルブミン(N-オボアルブミン)は80℃で変性凝固するが、pH9~11で50~60℃で1~3日間攪拌しながらインキュべートすると80℃でも凝固しないオボアルブミン(S-オボアルブミン)を作製することができる。
【0004】
また、鶏卵あるいは卵白を長時間貯蔵するとS-オボアルブミンが生じてくる。
この変化はタンパク構造の変化として考えられ、二次構造にはほとんど変化が見られないとされ、三次構造の変化に基づくと推定されている。
前記のごとくS-オボアルブミンは耐熱性を有するが、機能性が不十分であり、その他の有効な効果を見出し得ていなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、卵白に含有される蛋白質から食品加工分野のみならず、化粧品、医薬品等の分野にも使用しうる、新規な特性を有する機能性蛋白質を製造することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明において、ニワトリの胚発生中の卵白にもオボアルブミンは熱安定型(HS-オボアルブミン)として存在することを確認した。
発生11日目の卵白、14日目以降の卵黄、14日目以降の羊水及び胚血清のオボアルブミンの80~90%は熱安定型に変化していることがわかった。
前記のHS-オボアルブミンの構造はN-オボアルブミンや人工的に作製したS-オボアルブミンとはα-ヘリックス構造が25%減少し、β-シートが30%増加している。
【0007】
HS-オボアルブミンとS-オボアルブミンとは、蛋白質の一次構造には違いはないが、糖鎖構造の違いによる分子量の違いが見られる。
また、分子量や示差熱容量計の測定パターンも異なっている。
オボアルブミンはセリンプロテアーゼインヒビターのserpin superfamilyに属しているがプロテアーゼインヒビター活性はない。
【0008】
serpinは一般にC末端側のcenter rative loopがプロテアーゼによって切断されたとき、切断されたループが速やかに構造中心へインサートされることによりプロテアーゼインヒビターとして機能を発揮すると考えられているのに対し、オボアルブミンは切断されたループの構造中心へのインサートが非常に遅いことからプロテアーゼインヒビター活性を有さないとされている。
未発生の鶏卵の卵白のオボアルブミンはいわゆるN-オボアルブミンであり、80℃で熱凝固する。
【0009】
しかし、N-オボアルブミンを高pHと高温度下で処理すると80℃でも熱凝固しないいわゆるS-オボアルブミンに変化させることができる。
この変化の詳細なメカニズミは解明されていないが、2次構造上の変化は少ないとされている。
胚発生中に得られるHS-オボアルブミンは、前述したようにこれらのN-若しくはS-オボアルブミンに比べて2次構造のα-ヘリックス構造が25%減少し、β-シートが30%増加している。
また、HS-オボアルブミンを処理するとプロテアーゼインヒビターなどの機能が付加される。
【0010】
これは、図1の(a)と(b)に示すように、2次構造の変化したHS-オボアルブミンの蛋白質の構造が高温により更に構造変化を起こし、プロテアーゼによって切断されたcenter rative loopが蛋白質の構造中心にあるβ-シートへ速やかにインサートされるため、プロテアーゼがブロックされるものと考える。
この現象は人工的に作られたS-オボアルブミンには見られない。
HS-オボアルブミンは構造変化を起こしており、これがこの蛋白質の機能に関係していると推定される。
【0011】
以上のことからHS-オボアルブミンとS-オボアルブミンとは同じオボアルブミンであると思われるが、その性質、潜在的機能は大きく異なっていると思われる。
実際、HS-オボアルブミンとS-オボアルブミンは、次のような性状の差異があることが確認された。
第一に、HS-オボアルブミンには幾つかの種類があり、種類によって耐熱性が異なるが、耐熱性に関しては、いずれも80℃では全く変性凝固しない。
後述する精製方法によって、90℃あるいは100℃でも変性凝固しないものを分離することができる。
【0012】
第二に、HS-オボアルブミンはN-オボアルブミンやS-オボアルブミンに比べ、ペプシンに対して抵抗性を示すが、キモトリプシンに対してはそれらより分解されやすい。
しかし、HS-オボアルブミンを80℃以上で加熱するとキモトリプシン等の酵素に対して強い阻害作用を発揮するようになる。
N-オボアルブミンやS-オボアルブミンではこのような作用はない。
【0013】
更に第三として、加熱したHS-オボアルブミンはキモトリプシンだけでなく、トリプシンなどのプロテアーゼを阻害し、DNアーゼ、RNアーゼ、チロシナーゼなども阻害する性質を有する。また、抗菌作用もある。
【0014】
第四として、HS-オボアルブミンはN-オボアルブミンをHS-オボアルブミンに変換することができる。S-オボアルブミンはN-オボアルブミンをS-オボアルブミンに変化させる能力はあるが、HS-オボアルブミンに変化させる能力はない。
【0015】
本発明の機能性蛋白質は、胚発生中の卵白に含有される特定のオボアルブミンを出発原料とし、これに熱処理を加える工程によって製造されることを特徴とし、また、キモトリプシンやトリプシン等のプロテアーゼ阻害作用、DNase,RNaseの阻害作用、チロシナーゼ等の阻害作用及び抗菌作用を有し、100℃で30~60分間加熱しても変性凝固若しくは機能が失われないことを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の機能性蛋白質の製造方法は、胚発生中の卵白から特定のオボアルブミンを含有する水溶液を卵白から調製する工程と、かかる水溶液から前記の特定のオボアルブミンを精製する工程と、これに熱処理を加えて本発明の機能性蛋白質を製造する工程からなることを特徴とする。
【0017】
まず、本発明の機能性蛋白質の原料となる特定のオボアルブミン(以下、HS-オボアルブミン)を調製する工程について説明する。
HS-オボアルブミンの調製には、胚発生中の卵の卵白を用いる。
胚発生中の卵としては孵卵15日目以前のものを用いるが、孵卵7日~12日目のものが好ましい。それ以降の孵卵には、不純物が多く生じており、本発明の機能性蛋白質の原料を精製できる量が乏しいためである。
【0018】
前記の卵白からHS-オボアルブミンを調製するための第一の工程として、まず、卵白からグロブリン画分を除去する。
グロブリン画分を除去する方法は、次のようにおこなう。
前記の卵白に対して1~3倍量のリン酸生理食塩水等の中性緩衝液を加えて希釈してホモジネートし、卵白と中性緩衝液が均一に混合されているのを確認した後、遠心分離若しくは濾過等の方法により、沈殿物を除去する。
ついで、沈殿物を除去した上澄液に、硫酸アンモニウムを上澄液の30%飽和濃度にまで徐々に加えて攪拌し、静置する。
攪拌は、混合状態が均一になるまで行い、10分~4時間程度行う。
静置後、遠心分離若しくは濾過等の方法で沈殿物を除去することによってグロブリン画分が除去され、前記のHS-オボアルブミンが含有された上澄液が残される。
【0019】
前記第1工程によりグロブリン画分等の沈殿物を除去した上澄液からは、下記の第2工程及び第3工程により、アルブミン画分が回収される。
第2工程として、前記の上澄液に対し、硫酸アンモニウムを50%飽和濃度まで徐々に加えて攪拌し、静置する。
攪拌は、混合状態が均一になるまで行い、10分~4時間程度行う。
かかる工程により、前記のHS-オボアルブミンが含有される沈殿物が生じるので、かかる沈殿物を遠心分離若しくは濾過等の方法で回収し、これをHS-アルブミン画分Iとする。
【0020】
次いで、第3工程として、第2工程を経て残った上澄液に対し、酢酸等の酸性の水溶液を加えて、pHを4.5に調整する。
前述の酸性の水溶液として、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸等の有機酸の水溶液及び塩酸、硝酸等の無機酸の水溶液を使用することができる。
前述のごとく、上澄液のpHを4.5に調整することによって沈殿が生じるが、このとき沈殿が生じない場合は、更に硫酸アンモニウムを65%飽和濃度まで徐々に加えて攪拌する。
攪拌は、混合状態が均一になるまで行い、10分~4時間程度行う。
かかる工程により、前記のHS-オボアルブミンが含有される沈殿物が生じるので、かかる沈殿物を遠心分離若しくは濾過等の方法で回収し、これをHS-アルブミン画分IIとする。
【0021】
前述のごとく得られたHS-アルブミン画分I及びHS-アルブミン画分IIについて、HS-オボアルブミンの含有率を高め、不要な蛋白質を除去するべく、更に次のような処理を施す。
前述のHS-アルブミン画分I及びHS-アルブミン画分IIは、熱安定性等の性質が異なるので、それぞれ別々に処理をするのが好ましい。
HS-アルブミン画分Iに対しては、不純物を除去し、含有されるHS-オボアルブミンの純度を上げるため、次の処理を行う。
【0022】
第4工程として、HS-アルブミン画分Iに対して水透析及び遠心分離を行い、硫酸アンモニウム及び不純物を除去する。
前記の水透析は、セロハン膜或いはビスキングチューブ等を使用した一般的な方法により行う。
前記の水透析は、8~36時間の範囲内で行う。水透析時間が8時間に満たないと、硫酸アンモニウムの除去が不十分であるが、36時間程度の水透析で硫酸アンモニウムの除去が十分に行われ、それ以上水透析を行っても硫酸アンモニウムの除去がほとんど進まない。
【0023】
水透析後、濾過若しくは遠心分離等の方法により沈殿物を除去する。
残った上澄液に対し、HS-アルブミン画分I及びIIを回収するために行った前記の第2工程及び第3工程を再度行う。
このとき、第2工程の処理を施して得られた沈殿物をHS-アルブミン画分I-Iとし、第2工程を経て残った上澄液に対し、第3工程の処理を施して得られた沈殿物を、HS-アルブミン画分I-IIとする。
HS-アルブミン画分I-Iに対しては、前記の第4工程を施して硫酸アンモニウム及び不純物を除去し、前記の第2工程の処理と第4工程をもう一度繰り返す。
【0024】
このように、前記のHS-アルブミン画分Iに対し、前記の第2工程の処理と第4工程を順次2回繰り返して行って最終的に得られたものをHS-アルブミン画分Aとする。
前記のHS-アルブミン画分IIに対しては、不純物を除去し、含有されるHS-オボアルブミンの純度を上げるため、下記の処置を行う。
まず前記のHS-アルブミン画分IIに対して前記の第4工程を行い、硫酸アンモニウム及び不純物を除去する。
残った上澄液に対し、HS-アルブミン画分I及びIIを回収するために行った前記の第2工程及び第3工程を再度行う。
このとき、第3工程により生成する沈殿物をHS-アルブミン画分II-IIとする。
このHS-アルブミン画分II-II及び前記のHS-アルブミン画分I-IIに対し、それぞれ前記の第4工程を施し、硫酸アンモニウム及び不純物を除去する。処理後の水溶液は、いずれもほぼ同等の性質を有するので、混合して一緒に処理する。
【0025】
かかる混合物を、HS-アルブミン画分II-IIMixとする。
HS-アルブミン画分II-IIMixに対して、前記の第3工程の処理と第4工程を順次施し、最終的に得られたものをHS-アルブミン画分Bとする。
前述したように、HS-アルブミン画分I及びHS-アルブミン画分IIは、熱安定性等の性質が異なるので、それぞれ別々に処理をするのが好ましいが、これらを混合して同時に処理することもできる。
この場合は、HS-アルブミン画分I及びHS-アルブミン画分IIをそれぞれ前記の第4工程を施し、硫酸アンモニウム及び不純物を除去する。
第4工程を施した後のそれぞれの水溶液は混合され、前述の第2工程、第3工程及び第4工程の処置を2回繰り返す。
このような処置を施して最終的に得られたものを、HS-アルブミン画分Cとする。
【0026】
HS-アルブミン画分A、B及びCはいずれもHS-オボアルブミンを含んでおり、その性質には差がないと思われる。但し、HS-アルブミン画分Bが最も純度が高い。
HS-アルブミン画分A、B及びCを保存する場合、0℃で保存すれば性質を損なうことなく1ヶ月間安定に保存できる。また、凍結乾燥は性質が損なわれるので避ける。1ヶ月以上の長期間保存する場合は、HS-アルブミン画分A、B及びCを硫酸アンモニウム50%飽和の状態で保存する。
前記のHS-アルブミン画分A、B及びCには高い濃度で、本発明の機能性蛋白質の原料となる特定のオボアルブミンが含有されている。
【0027】
しかしながら、80℃程度で変性凝固するオボアルブミン(N-オボアルブミン)も含有される。そこで、前記のHS-アルブミン画分A、B及びCに対し次の精製工程を施し、目的とするHS-オボアルブミンの純度を高め、N-オボアルブミンを除去する。
【0028】
精製工程は、前記の調製工程により得られたHS-アルブミン画分A、B及びCの水溶液、若しくはこれらの混合液を一定のpHに平衡化する平衡化工程と、前記平衡化工程により平衡化された水溶液から陽イオン交換担体を用いてオボアルブミンを吸着する陽イオン交換吸着工程と、
前記の陽イオン交換吸着工程により得られたオボアルブミンを陰イオン交換担体を用いてオボアルブミンを吸着する陰イオン交換担体工程と、
前記の陰イオン交換吸着工程より得られたオボアルブミンからN-オボアルブミンを除去し、目的のHS-オボアルブミンを回収する工程、
前記のHS-オボアルブミン回収工程より得られたHS-オボアルブミンから不純物を除去する工程よりなる。
【0029】
まず、平衡化工程において、HS-アルブミン画分A、B及びCの水溶液、若しくはこれらの混合液に酢酸ナトリウム緩衝液を混合して、pH4.5に平衡化する。
次いで、陽イオン交換吸着工程において、前述の緩衝液を用いてpH4.5にて平衡化された陽イオン交換担体を用意し、これを用いて前述の平衡化された水溶液からオボアルブミンを吸着する。
陽イオン交換担体は、カルボキシルメチルセルロース系の交換体など、陽イオン交換担体であれば、いずれも使用することができる。
オボアルブミンを吸着した陽イオン交換担体は、pHを4.5に調製した酢酸ナトリウム緩衝液でよく洗浄した後、pH4.8~5.0に調製した酢酸ナトリウム緩衝液にイオン交換担体を浸漬し、オボアルブミンを溶出させる。
陽イオン交換担体に吸着したオボアルブミンは、酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.8)でオボアルブミンを溶出され、これを限外濾過で濃縮する。
限外濾過は、一般的な方法により行われる。例えば、分子量10000以下の分子ふるい能力を有するメンブランを用いて行うことができる。
【0030】
前記の陽イオン交換吸着工程によって集められ、限外濾過で濃縮されたオボアルブミンを、トリス塩酸緩衝液を混合して、pH7.5に平衡化する。
次いで、陰イオン交換吸着工程において、トリス塩酸緩衝液を用いてpH7.5にて平衡化された陰イオン交換担体を用意し、これを用いて前述の平衡化されたオボアルブミン水溶液から、オボアルブミンを吸着する。
陰イオン交換体は、DEAEセルロース系の交換体など、陰イオン交換体であれば、いずれも使用することができる。
オボアルブミンを吸着した陰イオン交換担体は、pHを7.5に調製したトリス塩酸緩衝液でよく洗浄した後、0.1モル/L濃度の塩化ナトリウムを含有するトリス塩酸緩衝液(pH7.5)にイオン交換担体を浸漬し、N-オボアルブミンを溶出させる。
【0031】
次に、0.15~0.5モル/L濃度の塩化ナトリウムを含有するトリス塩酸緩衝液(pH7.5)にイオン交換担体を浸漬し、HS-オボアルブミンを溶出させる。
HS-オボアルブミンを溶出させる時の塩化ナトリウムの濃度は、0.15~0.3モル/L濃度で行うのが好ましい。
このとき回収が悪ければ、前記の塩化ナトリウム濃度を0.5モル/Lまで上げることによってHS-オボアルブミンの回収を高めることができる。
このようにして回収されたHS-オボアルブミンは、限外濾過で濃縮される。
限外濾過は、一般的な方法により行われる。例えば、分子量10000以下の分子ふるい能力を有するメンブランを用いて行うことができる。
以上の操作により、HS-オボアルブミンを精製できる。
【0032】
確認のため、電気泳動等の方法によって、精製物に含有されるHS-オボアルブミンの純度を測定する。
このとき、分子量が45000の単一バンドでなければ、ゲル濾過工程においてHS-オボアルブミンを精製することができる。
ゲル濾過は、分子量10000~100000の分子ふるい能力を有するゲル濾過クロマトグラフィーによって行い、溶出部分のうち45000にピークを有するもののみを採取する。
このとき、分子量が43,000~47,000の範囲内の蛋白質を採取する。
このように、ゲル濾過工程を加えると、極めて純度の高いHS-オボアルブミンを抽出することができる。
【0033】
HS-オボアルブミンを用いて、次の方法により、N-オボアルブミンをHS-オボアルブミンに転換させることができる。
滅菌したN-オボアルブミンを水に溶解し、1%濃度の水溶液を調製する。
N-オボアルブミン水溶液に前述のHS-オボアルブミンを加える。
このとき必要なHS-オボアルブミンの量は、N-オボアルブミンの1~10%の範囲内である。
そして、かかる水溶液を38℃にて5~10日間インキュベートする。
【0034】
インキュベート期間が、5日間より短いと、N-オボアルブミンの転換が不十分であり、インキュベート期間が長すぎるとN-オボアルブミンに戻ってしまうからである。インキュベート期間は、7日間が好ましい。
水溶液のpHは、酸性及び中性でも行うことができるが、8~10程度が好ましい。
【0035】
本発明の機能性蛋白質は、前記の精製工程により精製されたHS-オボアルブミン、若しくは前記のごとくN-オボアルブミンから製造されたHS-オボアルブミンを使用して、次の製造工程の処理を施すことにより、本発明の機能性蛋白質が製造される。
HS-オボアルブミンの濃度が0.01~5%の水溶液を調整し、これを80~100℃の範囲内で加熱する。加熱時間は3~30分間が好ましい。
このように、加熱処理を施したHS-オボアルブミンはキモトリプシンだけでなく、トリプシンなどのプロテアーゼを阻害し、DNアーゼ、RNアーゼ、チロシナーゼ等に対して、幅広いプロテアーゼ活性阻害スペクトルを有する。
また、抗菌性も有する。
キモトリプシンやトリプシンは動物、植物または微生物に含まれる蛋白質の消化酵素である。
正常な状態ではこれらの酵素による自己消化の危険性はないが、疾病やストレス、疲労等の原因でその活性が異常に高まったりする。
そして、発癌の初期の段階で、これらのプロテアーゼが何らかの重大な関わりを有することが示唆されてきた。
【0036】
なお、本発明の機能性蛋白質は、次の方法によっても製造することができる。すなわち、孵卵7~12日目の胚発生中の鶏卵より採取した卵白を、3~20倍の水で希釈して、ホモジネートする。これを、遠心分離若しくは濾過して沈殿物を除去し、上澄液を80~100℃の温度で10~30分間加熱する。次いで、遠心分離若しくは濾過して沈殿物を除去する。このときの上澄液は、前述の加熱したHS-オボアルブミンであり、本発明の機能性蛋白質として使用できる。ここで、純度を高くするには、硫安分画、CM-セルロファイン、DEAE-セルロファイン等の方法を行って純度を高めることができる。
なお、機能性蛋白質を含有する水溶液のpHは、酸性、中性、アルカリを問わないので、本発明の機能性蛋白質は、幅広い分野に応用することができる。
【0037】
本発明の機能性蛋白質は、これらのセリンプロテアーゼに対し、強力な阻害効果を有するので、胃腸の粘膜保護剤として、ストレスによる潰瘍形成、腫瘍、血液凝固等のセリンプロテアーゼに基づく疾患を治療若しくは予防するための医薬品の成分として、或いは健康食品の素材として利用することができる。
また、食品の加工中及び貯蔵中において、食品自体に含有されるセリンプロテアーゼによって品質劣化が生じるが、食品に本発明の機能性蛋白質を使用することにより、食品の品質劣化の防止に役立てることができる。
また、前記のチロシナーゼは、皮膚のメラニン形成に深く関与しており、皮膚などの結合組織の主成分であるヒアルロン酸とコラーゲンを分解する酵素でもある。
【0038】
本発明の機能性蛋白質はチロシナーゼの活性を強力に阻害するので、化粧品に用いることによって、肌の黒ずみやシミなどの美白効果が期待できるだけでなく、皮膚の保湿及びシワの発生予防効果が期待される。
このように、本発明の機能性蛋白質は、皮膚を若々しく保つための成分として、化粧品に配合することもできる。
本発明の機能性蛋白質は、前述したように抗菌効果を有するので、口腔用組成物に配合して口腔内細菌の繁殖を防止するのに好適である。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0040】
【実施例】
[11日目卵白からの機能性蛋白質の製造]
図6に示すように、11日目卵より採取した卵白を10倍水で希釈して、ホモジネートする。これを10,000G、10分間遠心分離し、沈殿物を除く。上清液を80℃で10分間加熱する。同様に10,000G、10分間遠心分離し、沈殿物を除く。上清液は加熱したHS-オボアルブミンであり、このまま機能性蛋白質として使用できる。
【0041】
[HS-オボアルブミンの製造]
▲1▼(グロブリン画分の除去)
孵卵11日の卵白を回収し、3倍量のリン酸生理食塩緩衝液(pH7.2)を加え、ホモジネートし、遠心分離(5,000rpm/min,10min,0℃)し、沈殿物を除去した。
【0042】
▲2▼(HS-アルブミン画分Iの調製)
グロブリン画分除去後の上澄液に硫酸アンモニウムを30%飽和になるように徐々に加え、30分ほど攪拌して静置した。
遠心分離(5,000rpm/min)して沈殿のグロブリン画分を除いた。
上澄液に硫酸アンモニウムを50%飽和になるように加え、2時間攪拌した。
静置後、遠心分離(10,000rpm,10min,0℃)して回収した。
遠心分離により回収した沈殿物をHS-アルブミン画分Iとした。
HS-アルブミン画分Iについて水透析を行なって硫酸アンモニウムを除去し、残留する沈殿物を不純物として遠心分離で除去した。
【0043】
▲3▼(HS-アルブミン画分IIの調製)
HS-アルブミン画分Iを回収した後の上澄液に1モルの酢酸を加えてpHを4.5に調製し、次いで硫酸アンモニウム濃度を10%程度上げた。
このとき生じた沈殿物を遠心分離(10,000rpm,10min,0℃)して回収した。
遠心分離により回収した沈殿物をHS-アルブミン画分IIとした。
HS-アルブミン画分IIについて水透析を行なって硫酸アンモニウムを除去し、残留する沈殿物を不純物として遠心分離で除去した。
【0044】
▲4▼(HS-アルブミン画分Aの調製)
水透析及び不純物除去後のHS-アルブミン画分Iについて、下記の処理を行った。
硫酸アンモニウムを50%飽和になるように加え、2時間攪拌して沈殿物を生成させ、かかる沈殿物を遠心分離(10,000rpm/min,10min,0℃)で回収した。
かかる沈殿物をHS-アルブミン画分I-Iとする。
次いで、前記のHS-アルブミン画分I-I回収後の上澄液に酢酸を加え、pHを4.5に調製した。
更に、硫酸アンモニウム濃度を65%飽和になるように加え、沈殿物を遠心分離で回収した。
この処理工程で回収した沈殿物をHS-アルブミン画分I-IIとする。
HS-アルブミン画分I-I及びHS-アルブミン画分I-IIを、それぞれ水に溶解し、水透析して硫酸アンモニウムを除去した。
水透析後のHS-アルブミン画分I-Iに対して、HS-アルブミン画分IからHS-アルブミン画分I-Iを回収するまでの前記の工程を再度施し、得られた液状物質をHS-アルブミン画分Aとする。
【0045】
▲5▼(HS-アルブミン画分Bの調製)
水透析及び不純物除去後のHS-アルブミン画分IIについて、下記の処理を行った。
硫酸アンモニウムを50%飽和になるように加えて2時間攪拌した後、酢酸を加え、pHを4.5に調製した。
更に、硫酸アンモニウム濃度を65%飽和になるように加え、沈殿物を遠心分離で回収した。
この処理工程で回収した沈殿物を水に溶解し、水透析したものをHS-アルブミン画分II-IIとする。
HS-アルブミン画分II-II及び前記の水透析後のHS-アルブミン画分I-IIを混合し、かかる混合物についてHS-アルブミン画分IIからHS-アルブミン画分II-IIを回収するまでの前記の工程を再度施し、得られた液状物質をHS-アルブミン画分Bとする。
【0046】
[HS-オボアルブミンの精製]
HS-アルブミン画分A及びHS-アルブミン画分Bのそれぞれの水溶液を、50mMの酢酸ナトリウム緩衝液を混合して、pH4.5に平衡化した。
次いで、前述の緩衝液でpH4.5に平衡化されたCM-セルロースのカラムに吸着させ、前記のカラムを50mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.3)で良く洗浄した。
次いで、pH4.8に調製した酢酸ナトリウム緩衝液にイオン交換担体を浸漬し、オボアルブミンを溶出させた。
前記の溶出されたオボアルブミンを、分子量10000以下の限外濾過で濃縮した。
前記の陽イオン交換吸着工程によって集められ、限外濾過で濃縮されたオボアルブミンを、トリス塩酸緩衝液を混合して、pH7.5に平衡化した。
【0047】
次いで、トリス塩酸緩衝液を用いてpH7.5にて平衡化されたDEAEセルロースカラムカラムを用意し、これを用いて前述の平衡化されたオボアルブミン水溶液から、オボアルブミンを吸着した。
オボアルブミンを吸着した前記カラムを、pH7.5のトリス塩酸緩衝液でよく洗浄した後、0.1モル/L濃度の塩化ナトリウムを含有するトリス塩酸緩衝液(pH7.5)に前記カラムを浸漬し、N-オボアルブミンを溶出させた。
次に、0.2モル/L濃度の塩化ナトリウムを含有するトリス塩酸緩衝液(pH7.5)に前記カラムを浸漬し、HS-オボアルブミンを溶出させた。
このようにして回収されたHS-オボアルブミンを、分子量10000以下の限外濾過で濃縮した。
限外濾過を行い、濃縮されたものをSDS-電気泳動で純度を確認したところ、45Kの単一バンドであることが確認された。
【0048】
[HS-オボアルブミンの切断パターン]
HS-オボアルブミンを幾つかのプロテアーゼで消化したときの切断パターンを図2に示す。また、比較のため、N-オボアルブミンの切断パターンも示す。ブタペプシン、サーモライシンに対してHS-オボアルブミンは消化され難くなっているが、逆にキモトリプシンに対して消化されやすくなっていることがわかる。
【0049】
[機能性蛋白質の作製]
HS-オボアルブミンの機能付加は、1%濃度のHS-オボアルブミン水溶液を90℃にて10分間加熱することによって行った。
以下、かかる機能性蛋白質を含有する水溶液を試料溶液として、次のごとく試験を行った。
【0050】
[チロシナーゼ阻害作用試験]
まず、B16メラノーマ細胞を5×105個/mlで含有する培養溶液を、凍結融解及び遠心分離を行うことにより、チロシナーゼ粗酵素液を抽出した。
次いで、前述のチロシナーゼ粗酵素液1mlを、0.1%dopa添加50mMリン酸緩衝液(pH6.8)0.5ml、50mMリン酸緩衝液(pH6.8)0.5ml、前述の試料溶液を混合し、37℃に保持しながら経時的に、吸光度(λ=475nm)測定を行った。
共存する機能性蛋白質がチロシナーゼに対して所定の阻害活性を発揮すれば、その阻害の程度に応じてdopa(3,4-ジオキシフェニルアラニン)の分解が低減され、吸光度が低下する。
【0051】
比較のため、N-オボアルブミン及び加熱していないHS-オボアルブミンの水溶液についても、同様の手法にて吸光度測定を行った。その結果を図3の(a)及び(b)に示す。
図3の(a)は、N-オボアルブミンについて行ったチロシナーゼ阻害作用試験結果である。
N-オボアルブミンの濃度を0.0025%~0.1%に調製したもの、及び加熱したN-オボアルブミンを用いて行ったが、いずれもチロシナーゼの阻害効果はごく僅かであり、明確な効果は認められなかった。
図3の(b)は、HS-オボアルブミン及び本発明の機能性蛋白質について行ったチロシナーゼ阻害作用試験結果である。
【0052】
HS-オボアルブミンを使用した場合は、含有量を高める程、チロシナーゼの阻害効果が明確になることがわかった。
しかしながら、濃度が0.1%及び0.2%ではチロシナーゼ阻害効果が殆ど同程度であり、濃度をこれ以上高めてもチロシナーゼ阻害効果の向上は期待できない。
【0053】
一方、本発明の機能性蛋白質の場合、濃度が0.01%であってもチロシナーゼ阻害効果は極めて高いことがわかった。
N-オボアルブミン及びHS-オボアルブミンについては、0.01%の濃度ではチロシナーゼ阻害効果は認められないか、同程度のものであるが、本発明の機能性蛋白質の場合、濃度が0.01%であってもチロシナーゼ阻害効果は極めて高い。
また、濃度を0.02%に高めることによって、更にチロシナーゼ阻害効果が高められることがわかった。
【0054】
[キモトリプシン阻害作用試験]
(1)基質溶液及び酵素溶液の調製
キモトリプシン活性はDelmarら(Anal. Biochem. 99, 316, 1979)の方法に準じて行った。
つまり、基質溶液として、N-succinyl-Ala-Pro-Phe-p-nitroanilide 63mgを1mlのジメチルスルフォキシドに溶解し、これに20mM CaCl2を含む50mM トリス塩酸緩衝液(pH8.0)を加えて全容量が100mlなるように調製した。
酵素溶液として、Sigma社製ウシ膵臓α-キモトリプシンを0.2%となるように1mM 塩酸水溶液で溶解したものを調製した。
【0055】
(2)HS-オボアルブミンのキモトリプシン阻害作用試験
100μlの酵素溶液と100μlの0.1%のHS-オボアルブミン水溶液を混合し、室温下で10分間インキュベートした。
100μlの基質溶液及び800μlの50mM トリス塩酸緩衝液(pH8.0)、蒸留水80μlを38℃でプレインキュベートし、これに前述のHS-オボアルブミンを含有する酵素溶液を20μl添加して反応を開始した。
反応速度を分光光度計で可視410nmでスキャンして1分間あたり直線で増加する吸光度から反応速度を求めて、キモトリプシンの残存活性を測定した。
なお、コントロールとして、酵素溶液のみを用いて反応させた場合について反応速度を測定し、その結果を比較に用いた。
【0056】
(3)加熱HS-オボアルブミンのキモトリプシン阻害作用試験
HS-オボアルブミンを80、90及び97℃で10分間加熱したものをサンプルとして、それぞれのキモトリプシン阻害作用試験を行った。
100μlの基質溶液及び800μlの50mM トリス塩酸緩衝液(pH8.0)、蒸留水80μl、加熱したHS-オボアルブミンの水溶液を10mlの混合液を38℃でプレインキュベートし、これに10μlの酵素溶液を添加して、トリプシンの残存活性を測定した。
加熱HS-オボアルブミンの水溶液として、濃度が0.1%のものと0.2%のものについて、上記試験に使用した。
【0057】
(4)キモトリプシン阻害作用試験結果
キモトリプシン阻害作用の試験結果を図4に示す。
非加熱のHS-オボアルブミンのキモトリプシン阻害作用は、酵素のみの場合(コントロール)と比較してほとんど差がなく、キモトリプシン阻害作用は認められなかった。
一方、加熱したHS-オボアルブミンの場合、80~90℃の範囲内においては、加熱温度が高い程、キモトリプシンの活性阻害効果が高いことがわかった。また、加熱HS-オボアルブミンの濃度を高くした場合についても、効果が高まることがわかった。
【0058】
[トリプシン阻害作用試験]
(1)基質溶液及び酵素溶液の調製
トリプシン活性は、Erangerらの方法に準じて行った。
すなわち、基質溶液として、BANA(Nα-benzoyl-L-arginine-p-nitroanilide)44mgを1mlのジメチルスルフォキシドに溶解し、これに20mM CaCl2を含む50mM トリス塩酸緩衝液(pH8.0)を加えて全容量が100mlになるように調製した。
【0059】
(2)HS-オボアルブミンのトリプシン阻害作用試験
100μlの酵素溶液と100μlの0.1%のHS-オボアルブミン水溶液を混合し、室温下で10分間インキュベートした。
100μlの基質溶液及び800μlの50mM トリス塩酸緩衝液(pH8.0)、蒸留水80μlを38℃でプレインキュベートし、これに前述のHS-オボアルブミンを含有する酵素溶液を20μl添加して反応を開始した。
反応速度を分光光度計で可視410nmでスキャンして1分間あたり直線で増加する吸光度から反応速度を求めて、トリプシンの残存活性を測定した。
なお、コントロールとして、酵素溶液のみを用いて反応させた場合について反応速度を測定し、その結果を比較に用いた。
【0060】
(3)加熱HS-オボアルブミンのトリプシン阻害作用試験
HS-オボアルブミンを80、90及び97℃で10分間加熱したものをサンプルとして、それぞれのトリプシン阻害作用試験を行った。
100μlの基質溶液及び800μlの50mM トリス塩酸緩衝液(pH8.0)、蒸留水80μl、加熱したHS-オボアルブミンの水溶液を10mlの混合液を38℃でプレインキュベートし、これに10μlの酵素溶液を添加して反応させ、トリプシンの残存活性を測定した。
加熱HS-オボアルブミンの水溶液として、濃度が0.1%のものと0.2%のものについて、上記試験に使用した。
【0061】
(4)トリプシン阻害作用試験結果
トリプシン阻害作用の試験結果を図5に示す。
非加熱のHS-オボアルブミンのトリプシン阻害作用は、酵素のみの場合(コントロール)と比較してほとんど差がなく、トリプシン阻害作用は認められなかった。
一方、加熱したHS-オボアルブミンの場合、80~90℃の範囲内においては、加熱温度が高い程、トリプシンの活性阻害効果が高いことがわかった。
また、加熱HS-オボアルブミンの濃度を高くした場合についても、効果が高まることがわかった。
【0062】
[HS-オボアルブミンの加熱による影響]
HS-オボアルブミンは、80℃で1時間加熱してもプロテアーゼインヒビター活性は失われない。
90℃では30分間加熱では活性の低下は認められないが、1時間以上加熱すると、20%程度の活性の低下が認められた。
100℃付近の加熱では、20分間加熱では活性の低下が認められないが、1時間加熱すると30%程度の活性の低下が認められた。
【0063】
[化粧品原料としての利用]
本発明の機能性蛋白質を用いて、次の処方により常法に従って洗顔クリームを調製した。
【0064】
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【0065】
[口腔用組成物原料としての利用]
本発明の機能性蛋白質を用いて、次の処方により常法に従って口腔用組成物を調製した。
【0066】
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【0067】
[製剤原料としての利用]
次の組成にて、十分に混合し、懸濁剤液とした。
【0068】
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【0069】
[飲料原料としての利用]
次の組成にて、十分に混合し、ドリンク剤を調製した。
【0070】
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【図面の簡単な説明】
【図1】(a)はN-オボアルブミン、(b)はHS-オボアルブミンの構造変化を示す図である。
【図2】HS-オボアルブミンを幾つかのプロテアーゼで消化したときの切断パターンを示す図である。
【図3】(a)はN-OVAが加熱してもチロシナーゼ阻害効果が認められないことを示すグラフ図であり、(b)はチロシナーゼ阻害効果を示すグラフ図である。
【図4】キモトリブシン阻害作用の試験結果を示すグラフ図である。
【図5】トリプシン阻害作用の試験結果を示すグラフ図である。
【図6】オボアルブミンの精製方法の手順を表したフローチャート図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5