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明細書 :抗マラリア剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4385096号 (P4385096)
公開番号 特開2006-056872 (P2006-056872A)
登録日 平成21年10月9日(2009.10.9)
発行日 平成21年12月16日(2009.12.16)
公開日 平成18年3月2日(2006.3.2)
発明の名称または考案の名称 抗マラリア剤
国際特許分類 C07H  17/02        (2006.01)
A61K  31/706       (2006.01)
A61P  33/06        (2006.01)
FI C07H 17/02
A61K 31/706
A61P 33/06
請求項の数または発明の数 6
全頁数 22
出願番号 特願2005-077849 (P2005-077849)
出願日 平成17年3月17日(2005.3.17)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2004年1月21日発行の「北海道支部2004年冬季研究発表会講演要旨集」に発表
優先権出願番号 2004081055
2004212107
優先日 平成16年3月19日(2004.3.19)
平成16年7月20日(2004.7.20)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成17年8月29日(2005.8.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504300088
【氏名又は名称】国立大学法人帯広畜産大学
発明者または考案者 【氏名】鈴木 寛
【氏名】長澤 秀行
【氏名】五十嵐 郁男
【氏名】五十嵐 慎
【氏名】田中 一郎
【氏名】鈴木 直義
個別代理人の代理人 【識別番号】110000109、【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
審査官 【審査官】植原 克典
参考文献・文献 Applied and Environmental Microbiology ,1996年,62(10),PP.3868-3870
Archiv der Pharmazie und Berichte der Deutschen Pharmazeutischen Gesellschaft ,1967年,300(9),PP.772-773
Archiv der Pharmazie und Berichte der Deutschen Pharmazeutischen Gesellschaft ,1965年,298(8),pp.481-491
調査した分野 C07H 17/02
CA/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式(1)で示される化合物。
【化1】
JP0004385096B2_000020t.gif
(式中、糖は、D(+)-グルコース、D(+)-ガラクトースまたはD(+)-マンノースであり、
Xは、Oであり、
Yは、Hまたはアセチルであり、
Z1-5は、独立に、Hまたはハロゲンであり、但し、Yがアセチルであるときは、Z1-5の少なくとも1つはハロゲンであり、キノリンの置換位置は、4-イルである。)
【請求項2】
は、D(+)-グルコースまたはD(+)-ガラクトースであり、Yは、Hまたはアセチルであり、Z1-5は、1つがハロゲンであり、残りの4つがHである請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
ハロゲンは、F、ClまたはBrである請求項1~のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載の化合物の薬学的に許容される塩。
【請求項5】
薬学的に許容される塩が塩酸塩である請求項に記載の化合物。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する抗マラリア剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新たなドラックデリバリーシステムとして期待される、糖を含む新規化合物及びこの化合物を有効成分とする抗マラリア剤に関する。
【背景技術】
【0002】
マラリアはプラスモジウム(Plasmodium)属の原虫によって引き起こされる疾患で、熱帯地方を中心に毎年200万-300万人が死亡しており、人類の大きな脅威となっている(小島壮明ら、寄生虫病学、南江堂 (1993))。その主な症状はプラスモジウム(Plasmodium)属の赤血球寄生段階における赤血球破壊によって起こる貧血である。
【0003】
治療法は主として化学療法が行なわれており、クロロキン及びキニーネ等のキノリン骨格を持つ化合物が有効な化学療法剤として用いられている。それらの作用機序は、プラスモジウム(Plasmodium)属の赤血球寄生段階におけるヘモグロビンの代謝中に、ヘムの無毒化の機構を、キノリンが二価の鉄に対する錯形成によって阻害するものと考えられている(N. T. Huy et.al., J. B. Chem., 277, 4152 (2002))。
【0004】
近年、クロロキンに耐性を持つ原虫が出現し、問題となっている。それらの耐性機構は、原虫がクロロキンの取り込みを抑制するためであることが知られている(H. Ginsburg et al., Parasitology Today, 15, 357 (1999))。従って、キノリンを効率的に原虫内に送り込むことができる化合物は、有効なマラリア治療薬の候補となることが期待できる。

【非特許文献1】小島壮明ら、寄生虫病学、南江堂 (1993)
【非特許文献2】N. T. Huy et.al., J. B. Chem., 277, 4152 (2002)
【非特許文献3】H. Ginsburg et al., Parasitology Today, 15, 357 (1999)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明の目的は、マラリア治療薬として期待出来るキノリンを効率的に原虫内に送り込むことができる新規化合物を提供することにある。
【0006】
本発明者は、糖を担体として膜浸透性を向上させ、キノリンを効率的に原虫内に送り込むことができる、新たなドラックデリバリーシステムを用いた新規キノリングリコシドの合成に成功し、本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は以下の通りである。
(請求項1)
下記一般式(1)で示される化合物。
【化1】
JP0004385096B2_000002t.gif
(式中、糖は、D(+)-グルコース、D(+)-ガラクトースまたはD(+)-マンノースであり、
Xは、Oであり、
Yは、Hまたはアセチルであり、
Z1-5は、独立に、Hまたはハロゲンであり、但し、Yがアセチルであるときは、Z1-5の少なくとも1つはハロゲンであり、キノリンの置換位置は、4-イルである。)
(請求項2)
は、D(+)-グルコースまたはD(+)-ガラクトースであり、Yは、Hまたはアセチルであり、Z1-5は、1つがハロゲンであり、残りの4つがHである請求項1に記載の化合物。
(請求項
ハロゲンは、F、ClまたはBrである請求項1~のいずれか1項に記載の化合物。
(請求項
請求項1~のいずれか1項に記載の化合物の薬学的に許容される塩。
(請求項
薬学的に許容される塩が塩酸塩である請求項に記載の化合物。
(請求項6)
請求項1~のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する抗マラリア剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、キノリンを効率的に原虫内に送り込むことができる新規化合物を提供することができ、この化合物はマラリア治療薬として期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、前記一般式(1)~(5)で示される化合物に関する。
一般式(1)~(5)で示される化合物は、Xを介して糖とキノリンと結合した化合物であり、糖の置換位置が異なる。Xは、O(酸素)である。
【0010】
式中の糖は、D(+)-グルコース、D(+)-ガラクトースまたはD(+)-マンノースであり、各糖等のYは、H、C1~C15の直鎖アルキル、シクロプロピル、シクロヘキシル、ベンジル、tert-ブチル、トリチル、アセチル、ピバロイルまたはベンゾイルである。C1~C15の直鎖アルキルは、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル等である。
【0011】
キノリンの糖に対する置換位置は、2-イル、3-イル、4-イル、5-イル、6-イル、または7-イルである。置換位置以外のキノリンが有するZ1-5は、独立に、H、ハロゲン、C1~C15の直鎖アルキル、シクロプロピル、シクロヘキシル、ベンジル、フェニル、C1~C15の直鎖アルコキシ、シクロプロピロキシ、シクロヘキシロキシ、ベンジロキシ、メトキシカルボニル、またはエトキシカルボニルである。ハロゲンは、例えば、F、ClまたはBrであることができる。C1~C15の直鎖アルキルは、上記で挙げたC1~C15の直鎖アルキルと同様の基を挙げることができる。C1~C15の直鎖アルコキシは、例えば、メトキシ、エトキシ、プロピロキシ、ブトキシ、ペンチロキシ、ヘキシロキシ、オクチロキシ等である。
【0012】
上記化合物の内、好ましい化合物の1つは、一般式(1)で示される化合物である。さらに一般式(1)において、糖は、D(+)-グルコース、D(+)-ガラクトースまたはD(+)-マンノースであることが好ましく、Yは、Hまたはアセチルであることが好ましい。さらに、キノリンの置換位置は、4-イルであることが好ましく、Z1-5は、独立に、H、またはハロゲンであることが好ましい。特に、Z1-5は、5つ全てがHであるか、あるいは、いずれか1つがハロゲン、例えば、塩素であり、残りの4つがHであることが好ましい。
実施例に記載の化合物の内、実施例1~5および10~12に記載の化合物が、一般式(1)で示される化合物である。
【0013】
上記化合物の内、好ましい化合物の別の1つは、一般式(2)で示される化合物である。さらに一般式(2)において、糖は、D(+)-グルコースであることが好ましく、Yは、Hまたはアセチルであることが好ましい。さらに、キノリンの置換位置は、4-イルまたは6-イルであることが好ましく、Z1-5は、独立に、H、またはハロゲンであることが好ましい。特に、Z1-5は、5つ全てがHであるか、あるいは、いずれか1つがハロゲン、例えば、塩素であり、残りの4つがHであることが好ましい。
実施例に記載の化合物の内、実施例6~8に記載の化合物が、一般式(2)で示される化合物である。
【0014】
上記化合物の内、好ましい化合物のさらに別の1つは、一般式(5)で示される化合物である。さらに一般式(5)において、糖は、D(+)-グルコースであることが好ましく、Yは、Hまたはアセチルであることが好ましい。さらに、キノリンの置換位置は、6-イルであることが好ましく、Z1-5は、独立に、H、またはハロゲンであることが好ましい。特に、Z1-5は、5つ全てがHであるか、あるいは、いずれか1つがハロゲン、例えば、塩素であり、残りの4つがHであることが好ましい。
実施例に記載の化合物の内、実施例9に記載の化合物が、一般式(5)で示される化合物である。
【0015】
本発明の化合物は、例えば、以下のスキームに示すように、ヒドロキシキノリン類を溶媒中、例えば、炭酸銀の存在下にグリコシル化することにより合成することができる。より具体的には、ヒドロキシキノリン類のRが水素の場合、4-ヒドロキシキノリンを、α-ブロモ-O-テトラアセチル-D-グルコースでグリコシル化し、次いで得られたキノリングリコシドを脱保護(脱アセチル化)する。
【0016】
【化2】
JP0004385096B2_000003t.gif

【0017】
グリコシル化が行われる溶媒としては、例えば、アセトニトリル、ピリジン、N,N-ジメチルホルムアミド、トルエン等を挙げることができる。
【0018】
炭酸銀は、ヒドロキシキノリン類またはグルコースに対して等モルから1.5倍モルの範囲で用いることができる。
【0019】
キノリングリコシドを脱保護(脱アセチル化)は、例えば、メタノール中、MeONaを用いて行うことができるが、これ以外に水あるいはメタノール中、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアを用いて行うこともできる。
【0020】
出発原料であるヒドロキシキノリン類については、上記スキームに示した4-ヒドロキシキノリンを初めとして、2-、3-、5-、6-及び7-ヒドロキシキノリンのいずれも、市販品として入手可能である。また、これらのヒドロキシキノリンに水素以外のZ1-5置換基を有する多置換ヒドロキシキノリンは、Journal of American Chemical Society, 61, 2890, 1939 に記載されている方法を用いて、置換アニリン類とエトキシメチレンジアルコキシマロネートより調製可能である。
【0021】
α-ブロモ-O-テトラアセチル-D-グルコースを含む、D(+)-グルコース、D(+)-ガラクトース及びD(+)-マンノースのブロモアセチル体は、Organic Synthesis, Collective Volume 3, P432 及び Bioconjugate Chemistry 14, 18, 2003に記載されている方法を用いて、D(+)-グルコース、D(+)-ガラクトース及びD(+)-マンノースを原料として、調製可能である。さらに、糖の置換基Yの導入は、Method in carbohydrate chemistry の各巻に記載されている方法により実施できる。例えば、ベンジル体はベンジルクロリドを塩基存在下で反応させることによって得られる。
【0022】
炭酸銀は、グリコシル化の触媒に用いられるが、炭酸銀以外に例えば、硝酸銀、酸化銀等を用いることもできる。
【0023】
上記方法で得られた化合物は適当な方法で精製することができる。例えば、展開溶媒として酢酸エチルを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフに付すことに精製することが出来る。
【0024】
本発明は、上記本発明の化合物の薬学的に許容される塩も包含する。薬学的に許容される塩は、特に制限はないが、例えば、塩酸(HCl)塩、HBr塩、HI塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸、二水素塩、亜リン酸塩、亜リン酸一水素塩、亜リン酸二水素塩、次亜リン酸塩、次亜リン酸水素塩等であることができる。
【0025】
本発明は、上記本発明の化合物又はその塩を有効成分として含有する抗マラリア剤である。本発明の化合物又はその塩を、マラリア等の原虫類による感染症の予防及び治療に使用する場合、投与経路としては、経口、皮下注射、静脈注射、局所投与等のいずれでもよい。また、製剤としては、通常、製薬的に許容される担体や賦形剤、その他添加剤を用いて製造した散剤、錠剤、細粒剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤等の経口剤、点眼剤、注射剤、坐剤等の非経口剤が挙げられる。製薬的に許容される担体や賦形剤、その他添加剤としては、グルコース、ラクトース、ゼラチン、マンニトール、でんぷんペースト、トリケイ酸マグネシウム、コーンスターチ、ケラチン、コロイド状シリカ等があり、さらには、安定剤、増量剤、着色剤及び芳香剤の様な補助剤を含有してもよい。
【0026】
これらの製剤は、各々当業者に公知慣用の製造方法により製造できる。本発明化合物又はその塩の製剤中の配合量としては、0.1~100重量%が好ましく、さらに好ましくは0.1~80重量%であり、0.1~50重量%が好適である。また、1日当たりの投与量は、患者の症状、体重、年齢、性別等によって異なり一概に決定できないが、通常成人1日当り本発明化合物を0.1~1000mg、好ましくは1~600mgを1回又は2~4回程度に分けて投与するのが好ましい。
【実施例】
【0027】
以下、本発明について実施例によりさらに説明する。
1(参考例)
4-(β-O-テトラアセチル-D-グルコシルオキシ)-キノリンの合成
【0028】
【化3】
JP0004385096B2_000004t.gif

【0029】
4-ヒドロキシキノリン(1.00 g, 6.89 mmol)、α-ブロモ-O-テトラアセチル-D-グルコース(3.11 g, 7.58 mmol)、炭酸銀(1.24 g, 3.79 mmol)及びアセトニトリル(50 ml)の混合物を70 ℃で1時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却した後、不溶物をろ別し、減圧下に溶媒を留去した。得られた残渣に酢酸エチルを加え、不溶物をろ別後、展開溶媒として酢酸エチルを用いたシリカゲルカラムクロマトに付し、表題化合物(2.48 g, 76%)を得た。
得られた化合物のNMRの結果を図1に示す。
【0030】
実施例2
4-(β-D-グルコシルオキシ)-キノリンの合成
【0031】
【化4】
JP0004385096B2_000005t.gif

【0032】
1で得られた化合物(1.00 g, 2.10 mmol)のメタノール溶液(50 ml)に対し、ナトリウムメトキシド(1.70 g, 31.5 mmol)を室温下に加え、1時間室温で撹拌した。反応混合物に対し、1M硫酸のメタノール溶液(15 ml)加え、減圧下に溶媒を留去した。得られた残渣をエタノールによって抽出し、抽出液を減圧下に溶媒を留去することにより、表題化合物(0.52 g, 81%)を得た。
得られた化合物のNMRの結果を図2に示す。
【0033】
実施例3
7-クロロ-4-(β-O-テトラアセチル-D-グルコシルオキシ)-キノリンの合成
【0034】
【化5】
JP0004385096B2_000006t.gif

【0035】
7-クロロ-4-ヒドロキシキノリン(1.24 g, 6.89 mmol)、α-ブロモ-O-テトラアセチル-D-グルコース(3.11 g, 7.58 mmol)、炭酸銀(1.24 g, 3.79 mmol)及びアセトニトリル(50 ml)の混合物を70 ℃で1時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却した後、不溶物をろ別し、減圧下に溶媒を留去した。得られた残渣に酢酸エチルを加え、不溶物をろ別後、展開溶媒として酢酸エチルを用いたシリカゲルカラムクロマトに付し、表題化合物(2.31 g, 66%)を得た。
得られた化合物のNMRの結果を図3に示す。
【0036】
実施例4
7-クロロ-4-(β-D-グルコシルオキシ)-キノリンの合成
【0037】
【化6】
JP0004385096B2_000007t.gif

【0038】
実施例3で得られた化合物(1.00 g, 1.92 mmol)のメタノール溶液(50 ml)に対し、ナトリウムメトキシド(1.55 g, 28.7 mmol)を室温下に加え、1時間室温で撹拌した。反応混合物に対し、1M硫酸のメタノール溶液(15 ml )加え、減圧下に溶媒を留去した。得られた残渣をエタノールによって抽出し、抽出液を減圧下に溶媒を留去することにより、表題化合物(0.61 g, 91%)を得た。
得られた化合物のNMRの結果を図4に示す。
【0039】
実施例5
4-(β-O-テトラアセチル-D-ガラクトシルオキシ)-キノリン
【0040】
【化7】
JP0004385096B2_000008t.gif

【0041】
4-ヒドロキシキノリン(1.00 g, 6.89 mmol)、α-ブロモ-O-テトラアセチル-D-ガラクトース(3.11 g, 7.58 mmol)、炭酸銀(1.24 g, 3.79 mmol)及びアセトニトリル(50 ml)の混合物を70 ℃で1時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却した後、不溶物をろ別し、減圧下に溶媒を留去した。得られた残渣に酢酸エチルを加え、不溶物をろ別後、展開溶媒として酢酸エチルを用いたシリカゲルカラムクロマトに付し、表題化合物(0.81g, 25%)を得た。
得られた化合物のNMRの結果を図5に示す。
【0042】
6(参考例)
4-(2-β-O-テトラアセチル-D-グルコシルオキシ)-キノリン
【0043】
【化8】
JP0004385096B2_000009t.gif

【0044】
4-ヒドロキシキノリン(0.35 g, 2.41 mmol)、1,3,4,6-β-O-テトラアセチル-D-マンノース(1.00g, 2.63 mmol)及びトリフェニルホスフィン(0.75g, 2.63 mmol)溶液の乾燥テトラヒドロフラン懸濁液(50 ml)に対し、アルゴン気流中、アゾジカルボン酸ジエチルエステルの40%-トルエン溶液(1.25 g, 2.63 mmol)を室温下に加え、0.5時間室温で撹拌した。反応混合物を水に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。抽出液を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下に溶媒を留去した。得られた残渣を展開溶媒として酢酸エチルを用いたシリカゲルカラムクロマトに付し、表題化合物(0.17 g, 15%)を得た。
得られた化合物のNMRの結果を図6に示す。
【0045】
7(参考例)
7-クロロ-4-(2-β-O-テトラアセチル-D-グルコシルオキシ)-キノリン
【0046】
【化9】
JP0004385096B2_000010t.gif

【0047】
4-ヒドロキシキノリンを7-クロロ-4-ヒドロキシキノリン(0.43 g, 2.41 mmol)とした以外は実施例6に従い、表題化合物(0.51 g, 34%)を得た。
得られた化合物のNMRの結果を図7に示す。
【0048】
8(参考例)
6-(2-β-O-テトラアセチル-D-グルコシルオキシ)-キノリン
【0049】
【化10】
JP0004385096B2_000011t.gif

【0050】
4-ヒドロキシキノリンを6-ヒドロキシキノリン(0.35 g, 2.41 mmol)とした以外は実施例6に従い、表題化合物(0.47 g, 41%)を得た。
得られた化合物のNMRの結果を図8に示す。
【0051】
9(参考例)
4-(6-β-O-テトラアセチル-D-グルコシルオキシ)-キノリン
【0052】
【化11】
JP0004385096B2_000012t.gif

【0053】
4-ヒドロキシキノリン(1.00, 6.89 mmol)、1,2,3,4,-β-O-テトラアセチル-D-グルコース(2.88g, 7.58 mmol)及びトリフェニルホスフィン(2.17 g, 7.58 mmol)の乾燥テトラヒドロフラン懸濁液(50 ml)に対し、アルゴン気流中、アゾジカルボン酸ジエチルエステルの40%-トルエン溶液(3.60 g, 7.58 mmol)を室温下に加え、0.5時間室温で撹拌した。反応混合物を水に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。抽出液を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下に溶媒を留去した。得られた残渣を展開溶媒として酢酸エチルを用いたシリカゲルカラムクロマトに付し、表題化合物(2.05 g, 63%)を得た。
得られた化合物のNMRの結果を図9に示す。
【0054】
実施例10
4-(β-O-テトラアセチル-D-マンノシルオキシ)-キノリン
【0055】
【化12】
JP0004385096B2_000013t.gif

【0056】
4-ヒドロキシキノリン(1.00 g, 6.89 mmol)、α-ブロモ-O-テトラアセチル-D-マンノース(3.11 g, 7.58 mmol)、炭酸銀(1.24 g, 3.79 mmol)及びアセトニトリル(50 ml)の混合物を70 ℃で1時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却した後、不溶物をろ別し、減圧下に溶媒を留去した。得られた残渣に酢酸エチルを加え、不溶物をろ別後、展開溶媒として酢酸エチルを用いたシリカゲルカラムクロマトに付し、表題化合物(0.87g, 27%)を得た。
得られた化合物のNMRの結果を図10に示す。
【0057】
実施例11
4-(β-O-D-ガラクトシルオキシ)-キノリン
【0058】
【化13】
JP0004385096B2_000014t.gif

【0059】
実施例5で得た4-(β-O-テトラアセチル-D-ガラクトシルオキシ)-キノリン(2.31 g, 15.92 mmol)及びアンバーライトA-26(OH)(4.62 g)のメタノール懸濁液(50 ml)を室温下、1時間撹拌した。メタノール不溶物をろ過し、多量のメタノールで洗浄した後、ろ液と合わせ、減圧下にメタノールを留去した。残渣を乾燥し、表題化合物(1.31 g, 81%)を得た。
得られた化合物のNMRの結果を図11に示す。
【0060】
実施例12
4-(β-O-D-マンノシルオキシ)-キノリン
【0061】
【化14】
JP0004385096B2_000015t.gif

【0062】
実施例10で得た4-(β-O-テトラアセチル-D-マンノシルオキシ)-キノリン(2.89 g, 19.91 mmol)及びアンバーライトA-26(OH)(5.78 g) のメタノール懸濁液(50 ml)を室温下、1時間撹拌した。メタノール不溶物をろ過し、多量のメタノールで洗浄した後、ろ液と合わせ、減圧下にメタノールを留去した。残渣を乾燥し、表題化合物(1.85 g, 99%)を得た。
得られた化合物のNMRの結果を図12に示す。
【0063】
実施例13
4-(β-O-D-グルコシルオキシ)-キノリン塩酸塩
【0064】
【化15】
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【0065】
濃塩酸(30 ml)とメタノール(70 ml)の混合液を調製した。実施例2で得た4-(β-O-D-グルコシルオキシ)-キノリン(1.00 g, 3.25 mmol)のメタノール(50 ml)の混合物に対し、氷冷下に上記混合液(30 ml)を滴下した。室温で15分撹拌したのち、ジイソプロピルエーテル(200 ml)に注ぎ、生成した沈殿をろ取し、表題化合物(1.00 g, 89%)を得た。
得られた化合物のNMRの結果を図13に示す。
【0066】
実施例14
4-(β-O-D-ガラクトシルオキシ)-キノリン塩酸塩
【0067】
【化16】
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【0068】
実施例11で得た4-(β-O-D-ガラクトシルオキシ)-キノリン(1.00 g, 3.25 mmol) のメタノール(50 ml)の混合物に対し、氷冷下に実施例13に記載したと同様の混合液(30 ml)を滴下した。室温で15分撹拌したのち、ジイソプロピルエーテル(200 ml)に注ぎ、生成した沈殿をろ取し、表題化合物(1.11 g, q.)を得た。
得られた化合物のNMRの結果を図14に示す。
【0069】
実施例15
4-(β-O-D-マンノシルオキシ)-キノリン塩酸塩
【0070】
【化17】
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【0071】
実施例12で得た4-(β-O-D-マンノシルオキシ)-キノリン(1.00 g, 3.25 mmol) のメタノール(50 ml)の混合物に対し、氷冷下に実施例13に記載したと同様の混合液(30 ml)を滴下した。室温で15分撹拌したのち、ジイソプロピルエーテル(200 ml)に注ぎ、生成した沈殿をろ取し、表題化合物(940 mg,85%)を得た。
得られた化合物のNMRの結果を図15に示す。
【0072】
試験例1
熱帯熱マラリア原虫の培養
供試マラリア原虫として、P. Falciparum FCR-3株(ATCC30932)及びP. Falciparum Honduras-1株(ATCC30935)を用いた。また、ヒト血清を10%となるように添加し、ろ過滅菌したRPMI 1640培地(pH7.4)を供試培地とした。マラリア原虫は、O2濃度5%、CO2濃度5%、N2濃度90%、温度は36.5℃の条件下で培養した。ヘマトクリット値(赤血球浮遊液中に占める赤血球の体積の割合)は5%とし、培養開始時の熱帯熱マラリア原虫の初期感染率は0.1%とした。24ウェル培養プレートを用いて培養し、培地は毎日交換し、感染率4%で植継ぎを行った。感染率は薄層塗抹標本を作成し、ギムザ染色あるいはDiff-Qick染色を行った後、顕微鏡(油浸、1,000×)下で計測し、マラリア原虫感染率を下記式から算出した。
マラリア原虫感染率(%)={(感染赤血球数)/(総赤血球数)}×100
【0073】
試験例2
マラリア原虫増殖阻害スクリーニング試験
培養したマラリア原虫感染赤血球を遠心分離で集め、血清を含む培地で洗浄を行った後、非感染赤血球を加え、初期感染率0.3%とした。このときのヘマトクリット値は 3%とした。供試サンプルをジメチルスルホキシド(以下、DMSOと称す)に溶解し、終濃度15μg/mlのサンプル液とした。このサンプル液を24ウェル培養プレートに試験液を5~10μLずつ加えた。各供試サンプルについて、2~3回の試験を行なった。また、コントロールとして、DMSOを10μL/ウェル加えた。次に、あらかじめ所定濃度に調整した熱帯熱マラリア原虫培養液を990~995μLずつ加え、静かにピペッティングを行い培地に一様に懸濁させた。培養プレートはCO2-O2-N2(5%,5%,90%)インキュベーター中で72時間培養した後、それぞれのウェルについて薄層塗抹標本を作成し、ギムザ染色あるいはDiff-Qick染色を行った後、顕微鏡(油浸、1,000×)下で計測し、サンプル液添加群及びコントロールのマラリア原虫感染率を算出した。算出したマラリア原虫感染率から、次式によって増殖阻害率を算出し、50%増殖阻害濃度(EC50)を求めた。結果を表1に示す。
【0074】
増殖阻害率(%)={1-(b-a)/(c-a)}×100
a:初期感染率
b:サンプル液添加時の感染率
c:コントロールの感染率
【0075】
試験例3
マウスFM3A細胞増殖阻害試験
マウス乳癌由来FM3A細胞の野生株であるF28-7株を用いた。培地はES培地に非動化した胎児牛血清を2%となるように添加し、CO2濃度5%、37℃で培養した。この条件下でのFM3A細胞の倍加時間は約12時間であった。前培養を行い、対数増殖期に入った細胞を5×104cells/mLになるように培地で希釈し、サンプルはマラリア活性測定時に調製したものを用いた。24ウェル培養プレートに、試験例2で調製したサンプル溶液を5~10μLずつ加えた。各供試サンプルについて、2~3回の試験を行なった。また、コントロールとしてDMSOを各10μL加えたウェルも同時に試験した。次に、用意しておいた培養細胞浮遊液を990~995μLずつ加えて供試サンプルの最終濃度は1×10-4~1×10-5Mとし、静かにピペッティングを行い培地に一様に懸濁させた。48時間培養した後、それぞれのウェルについて細胞数をセルコントローラー(CC-108,Toa.Medical Electrics社製)で計数した。計測した細胞数から、次式により増殖率を算出し、50%増殖阻害濃度(EC50)を算出し、各供試サンプルの細胞毒性を評価した。結果を表1に示す。
【0076】
増殖率(%)={(C-A)/(B-A)}×100
A:初期細胞数
B:2日後のコントロールの細胞数
C:サンプル添加した2日後の細胞数
【0077】
熱帯熱マラリア原虫に対する各供試サンプルのEC50値、マウスFM3A細胞に対する各供試サンプルのEC50値及びマラリア原虫に対する選択毒性の毒性比から各供試サンプルの抗マラリア作用を評価した。表1からも明らかなように、本発明の抗マラリア剤は、顕著な抗マラリア活性を示し、選択毒性も優れたものであり、低毒性の抗マラリア活性物質であることが分かった。
【0078】
【表1】
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括弧内は、増殖率である。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明によれば、新たなドラックデリバリーシステムを利用した新規な抗マラリア剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】1で合成した化合物のNMRの結果。
【図2】実施例2で合成した化合物のNMRの結果。
【図3】実施例3で合成した化合物のNMRの結果。
【図4】実施例4で合成した化合物のNMRの結果。
【図5】実施例5で合成した化合物のNMRの結果。
【図6】6で合成した化合物のNMRの結果。
【図7】7で合成した化合物のNMRの結果。
【図8】8で合成した化合物のNMRの結果。
【図9】9で合成した化合物のNMRの結果。
【図10】実施例10で合成した化合物のNMRの結果。
【図11】実施例11で合成した化合物のNMRの結果。
【図12】実施例12で合成した化合物のNMRの結果。
【図13】実施例13で合成した化合物のNMRの結果。
【図14】実施例14で合成した化合物のNMRの結果。
【図15】実施例15で合成した化合物のNMRの結果。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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