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明細書 :タンパク質-標的物質の結合検出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4631058号 (P4631058)
公開番号 特開2007-236312 (P2007-236312A)
登録日 平成22年11月26日(2010.11.26)
発行日 平成23年2月16日(2011.2.16)
公開日 平成19年9月20日(2007.9.20)
発明の名称または考案の名称 タンパク質-標的物質の結合検出方法
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
G01N  33/566       (2006.01)
G01N  33/543       (2006.01)
FI C12N 15/00 A
G01N 33/566
G01N 33/543 511F
請求項の数または発明の数 9
全頁数 11
出願番号 特願2006-064876 (P2006-064876)
出願日 平成18年3月9日(2006.3.9)
審査請求日 平成19年6月1日(2007.6.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
発明者または考案者 【氏名】岩崎 俊晴
【氏名】鯉淵 典之
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】柴原 直司
参考文献・文献 Nucleic Acids Res., (1988), 16, [24], p.11839
Biotechniques, (1993), 15, [4], p.650,652
Curr. Protoc. Mol. Biol., (2001), Chapter.20, Unit.20.2
調査した分野 C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
PubMed
特許請求の範囲 【請求項1】
タンパク質と標的物質との結合を検出する方法であって、
(1)標的物質をジゴキシゲニン(DIG)で標識化してDIG-標的物質を調製する工程、
(2)タンパク質をグルタチオン-Sトランスフェラーゼ(GST)と融合させ、このGST融合タンパク質をグルタチオン-セファロースビーズと結合させてGST融合タンパク質ビーズを調製する工程、
(3)DIG-標的物質とGST融合タンパク質ビーズとを接触させる工程、
(4)DIG-標的物質を結合したGST融合タンパク質ビーズを回収する工程、
(5)反応溶液中で、GST融合タンパク質ビーズに結合しているDIG-標的タンパク質のDIGを表示する非放射性シグナルを測定する工程、
を含むことを特徴とするタンパク質-標的物質の結合検出方法。
【請求項2】
タンパク質が核受容体タンパク質であり、標的物質がDNA分子である請求項1の検出方法。
【請求項3】
タンパク質がRNA結合タンパク質であり、標的物質がRNA分子である請求項1の検出方法。
【請求項4】
標的物質が、タンパク質と結合するタンパク質である請求項1の検出方法。
【請求項5】
工程(3)-(5)を同一のウェルプレート上で行う請求項1の検出方法。
【請求項6】
タンパク質Aと標的物質との結合を検出する方法であって、タンパク質Aと結合するタンパク質BをGSTと融合化したGST融合タンパク質Bをグルタチオン-セファロースビーズと結合させてGST融合タンパク質ビーズBを調製し、DIG-標的物質とGST融合タンパク質ビーズBとタンパク質Aとを接触させることによって、タンパク質Aを介してDIG-標的物質を結合したGST融合タンパク質ビーズBを回収し、反応溶液中でこのGST融合タンパク質Bに結合しているDIG-標的物質のDIGを表示する非放射性シグナルを測定する請求項1の方法。
【請求項7】
タンパク質と標的物質との結合に影響を及ぼす因子をスクリーニングする方法であって、
(1)標的物質をジゴキシゲニン(DIG)で標識化してDIG-標的物質を調製する工程、
(2)タンパク質をグルタチオン-Sトランスフェラーゼ(GST)と融合させ、このGST融合タンパク質をグルタチオン-セファロースビーズと結合させてGST融合タンパク質ビーズを調製する工程、
(3)DIG-標的物質とGST融合タンパク質ビーズと候補因子とを接触させる工程、
(4)DIG-標的物質を結合したGST融合タンパク質ビーズを回収する工程、
(5)反応溶液中で、GST融合タンパク質ビーズに結合しているDIG-標的タンパク質のDIGを表示する非放射性シグナルを測定する工程、
を含むことを特徴とするスクリーニング方法。
【請求項8】
タンパク質が核受容体タンパク質であり、標的物質がDNA分子である請求項のスクリーニング方法。
【請求項9】
核受容体タンパク質が甲状腺ホルモン受容体タンパク質であり、DNA分子が甲状腺応答配列を含むDNA分子であり、候補因子が環境ホルモン候補物質である請求項8のスクリーニング方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本願発明は、タンパク質-標的物質の結合検出方法に関するものである。さらに詳しくは、本願発明は、タンパク質-DNAやタンパク質-タンパク質等の結合を短時間で大量に検出する方法、およびタンパク質-DNAやタンパク質-タンパク質等の結合に影響を及ぼす因子を短時間で大量にスクリーニングする方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
環境ホルモン(内分泌撹乱物質)とは、「生体の恒常性、生殖、発生あるいは行動に関与する種々の生体内ホルモンの合成、貯蔵、分泌、体内輸送、結合、そしてそのホルモン作用そのもの、あるいはクリアランス、などの諸過程を阻害する性質を持つ外来性の物質」と一般に定義されている。
【0003】
本願発明者らは、環境ホルモンであるポリ塩化ビフェニル(PCB: polychlorinated biphenyl)が甲状腺ホルモン受容体作用を直接撹乱することによって生体機能に対する阻害作用を及ぼすことを世界で初めて報告している(非特許文献1)。さらに本願発明者らは、そのようなPCBによる機能阻害作用は、核受容体である甲状腺ホルモン受容体がDNA上の甲状腺応答配列から解離することによって発現することを見出している(非特許文献2)。
【0004】
従って、甲状腺ホルモン受容体による生体機能の維持やPCB等の環境ホルモン物質の影響を詳細に解析するためには、甲状腺ホルモン受容体と標的DNAの結合を正確に検出する必要がある。
【0005】
従来、核受容体とDNA分子との結合は、ゲルシフトアッセイ(Gel Shift Assay: GSAまたはElectropheretic Mobility Shift Assay: EMSA)法によって検出されてきた(例えば非特許文献3、4)。このGSA法は標的DNAを放射性同位元素で標識し、組換え受容体タンパク質と反応させ、アクリルアミドゲル電気泳動で両者の結合体を分離した後、ゲルを乾燥させ、X線フィルム上に感光させて、放射性同位元素のシグナルを測定することによって、受容体タンパク質と標的DNAとの結合を検出する方法である。
【0006】
しかしながらGSA法は、上記のとおりの多くの工程を含むまめ、作業が煩雑であり、最終的な結果を得るまでに多くの時間(約48時間)を要する。また、放射性同位元素を使用するため、施行者の被爆、周囲の汚染の危険性も存在する。
【0007】
このようなGSA法の問題点を解決する方法として、DIGゲルシフトアッセイ(DIG Gel Shift Assay:DIG-GSA)法が提案されている(例えば特許文献1、2、3)。この方法は、ジゴキシゲニン(digoxigenin:DIG)で標的DNAを標識し、抗DIG抗体と反応させ、抗体シグナル(非放射性シグナル)を検出することによって、標的DNAを同定する方法(DIGシステム)を応用したものである。すなわちDIG-GSA法では、標的DNAをDIGで標識し、組換え受容体タンパク質と反応させ、アクリルアミドゲル電気泳動で両者の結合体を分離した後、結合体をゲルからメンブレンにトランスファーし、メンブレン上で抗体DIG抗体と反応させて非放射性シグナル(発光シグナル)を生じさせ、このシグナルを測定することによって、受容体タンパク質と標的DNAとの結合を検出する。また、このDIG-GSA法を実施するために必要な試薬等を備えたキット(DIG Gel Shift Kit, 2nd generation:Roche社、製品番号 #3 353 591)も市販されている。
【0008】
このDIG-GSA法は、放射性同位元素を使用しない点、最終結果を得るまでの時間が約24時間に短縮される点において、GSA法よりも優れた方法である。

【特許文献1】欧州特許第0 324 474号
【特許文献2】米国特許第5,344,757号
【特許文献3】米国特許第5,702,888号
【非特許文献1】Iwasaki, T. et al. Biochem. Biophys. Res. Commun. 299:384-388, 2002
【非特許文献2】Miyazaki, W. et al. J. Biol. Chem. 279:18195-18202, 2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
DIG-GSA法は、甲状腺ホルモン受容体に対する環境ホルモンの影響を調べる場合にも、放射性同位元素を使用しない点、最終結果を得るまでの時間が短縮される点において、GSA法を適用した場合よりも優れた方法である。
【0010】
しかしながら、DIG-GSA法はゲル電気泳動の工程やメンブレンへのトランスファー工程が必須とするために、一度に調べる検体に限りがあり、多種類の環境ホルモン物質を調べる上では必ずしも実用的ではない。特に、PCBにおいては209種類、ダイオキシン類においては210種類もの異性体が存在するため、これらの異性体の迅速なスクリーニングは困難である。加えて、これらの環境ホルモン物質は特別に許可を受けた施設でしか取り扱いができず、大量にPCBやダイオキシン廃棄物が出るのは好ましい状況とはいえない。
【0011】
また、環境ホルモン物質は、内因性のホルモンと異なり、受容体タンパク質との結合は弱く、しかも環境ホルモン物質を結合した受容体タンパク質の立体構造化も内因性物質を結合した場合ほど大きくないと考えられる。従って、環境ホルモン物質により形成される受容体タンパク質-DNA結合体は脆弱でゲル上で結合が損なわれてしまうことも考えられる。
【0012】
本願発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、ゲル電気泳動の工程やメンブレンへのトランスファー工程を含まないことによって、簡便かつ短時間に大量の検査を高精度で行うことができ、しかもPCBやダイオキシン廃棄物の排出量も抑えることのできる、新しいタンパク質-標的物質検出方法およびスクリーニング方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】

上記の課題を解決するための第1の発明は、タンパク質と標的物質との結合を検出する方法であって、
(1)標的物質をジゴキシゲニン(DIG)で標識化してDIG-標的物質を調製する工程、
(2)タンパク質をグルタチオン-Sトランスフェラーゼ(GST)と融合させ、このGST融合タンパク質をグルタチオン-セファロースビーズと結合させてGST融合タンパク質ビーズを調製する工程、
(3)DIG-標的物質とGST融合タンパク質ビーズとを接触させる工程、
(4)DIG-標的物質を結合したGST融合タンパク質ビーズを回収する工程、
(5)回収したGST融合タンパク質ビーズに結合したDIG-標的タンパク質のDIGを表示する非放射性シグナルを測定する工程、
を含むことを特徴とするタンパク質-標的物質の結合検出方法である。
【0014】
この第1発明においては、タンパク質が核受容体タンパク質であり、標的物質がDNA分子であることを好ましい態様としている。
【0015】
さらにこの第1発明においては、タンパク質がRNA結合タンパク質であり、標的物質がRNA分子であること、または標的物質が、タンパク質と結合するタンパク質であることをそれぞれ別の好ましい態様としている。
【0016】
またさらに、この第1発明においては、工程(3)-(5)を同一のウェルプレート上で行うことを別の好ましい態様としている。
【0017】
さらにまた、この第1発明は、タンパク質Aと標的物質との結合を検出する方法であって、タンパク質Aと結合するタンパク質BをGSTと融合化したGST融合タンパク質Bをグルタチオン-セファロースビーズと結合させてGST融合タンパク質ビーズBを調製し、DIG-標的物質とGST融合タンパク質ビーズBとタンパク質Aとを接触させることによって、タンパク質Aを介してDIG-標的物質を結合したGST融合タンパク質ビーズBを回収し、このGST融合タンパク質Bに結合したDIG-標的物質のDIGを表示する非放射性シグナルを測定することを一つの態様としている。
【0018】
第2の発明は、タンパク質と標的物質との結合に影響を及ぼす因子をスクリーニングする方法であって、
(1)標的物質をジゴキシゲニン(DIG)で標識化してDIG-標的物質を調製する工程、
(2)タンパク質をグルタチオン-Sトランスフェラーゼ(GST)と融合させ、このGST融合タンパク質をグルタチオン-セファロースビーズと結合させてGST融合タンパク質ビーズを調製する工程、
(3)DIG-標的物質とGST融合タンパク質ビーズと候補因子とを接触させる工程、
(4)DIG-標的物質を結合したGST融合タンパク質ビーズを回収する工程、
(5)回収したGST融合タンパク質ビーズに結合したDIG-標的タンパク質のDIGを表示する非放射性シグナルを測定する工程、
を含むことを特徴とするスクリーニング方法である。
【0019】
この第2発明においては、タンパク質が核受容体タンパク質であり、標的物質がDNA分子であること、さらには核受容体タンパク質が甲状腺ホルモン受容体タンパク質であり、DNA分子が甲状腺応答配列を含むDNA分子であり、候補因子が環境ホルモン候補物質であることをそれぞれ好ましい態様としている。
【発明の効果】
【0020】
本願発明によれば、ゲル電気泳動の工程やメンブレンへのトランスファー工程を含まないことによって、簡便かつ短時間に大量の検査を高精度で行うことができ、しかも環境ホルモン物質を被検対象とする場合であってもPCBやダイオキシン廃棄物の排出量を抑えることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
第1発明の検出方法は、タンパク質と標的物質との結合の有無を検出する方法である。最終工程で測定した非放射性シグナルが高ければ、タンパク質と標的物質は結合したと判定することができ、シグナルが低ければタンパク質と標的物質は結合していないと判定することができる。
【0022】
対象となるタンパク質と標的物質は、例えば、生体内で機能する任意のタンパク質と、このタンパク質に結合することによってタンパク質の機能発現や機能変化に影響する標的物質(内因性物質、外因性物質)などである。具体的には、タンパク質が核受容体タンパク質である場合には、標的物質は受容体結合配列を有するDNA分子である。またタンパク質がRNA結合タンパク質である場合には、標的物質はそれに対する特異的結合配列を有するRNA分子である。あるいはまた、標的物質が、タンパク質と結合する別のタンパク質(例えばタンパク質のコファクターや、タンパク質に対する抗体など)であってもよい。
【0023】
なお、この結合検出方法においては、既知のタンパク質に対する未知の標的物質を検出することもでき、あるいは既知の標的物質が結合する未知のタンパク質を検出することもできる。
【0024】
以下、タンパク質が核受容体であり、標的物質が受容体結合DNAである場合について、第1発明の方法(Liquid DNA pul down法)の各工程を説明する。
工程(1):DIG-標的DNAの調製
標的DNAをジゴキシゲニン(DIG)で標識化する。すなわち、DIGは11炭素鎖のスペーサーアームを介してウリジンヌクレオチドのC-5位に結合しており、このDIG標識dUTPやDIG標識UTPを標的DNAと反応させることによって、DIG-標的DNAを調製する。さらに具体的には、DIG Gel Shift Kit, 2nd generation(Roche社)のマニュアルに従って、DIG-標的DNAを調製することができる。また、標的DNAは、30-200bpの1本鎖DNAまたは2本鎖DNAを対象とすることができる。
工程(2):GST融合タンパク質ビーズの調製
GST発現ベクター(例えばpGEXシリーズ、pETシリーズなど)に核受容体タンパク質のコード配列(例えばcDNA)を組換え、大腸菌等の宿主細胞内でGST融合タンパク質を発現させる。次いで、このGST融合タンパク質をグルタチオン-セファロースビーズ(例えばGlutathione-Sepharose 4B:Amarsham-Pharmasia社製)と接触させて両者を結合させる。より具体的には、Amarsham-Pharmasia社のマニュアルに従ってこの工程は行うことができる。
【0025】
また、核受容体タンパク質等のcDNA等は、既存のDNAデータベース(GenBank等)に登録された配列情報に基づいて設計したプローブDNAを用いてcDNAライブラリーをスクリーニングする方法や、配列情報に基づいて設計したプライマーセットと用いてトータルRNAから目的のcDNAを合成するRT-PCR法等によって取得することができる。このようなcDNAの取得や、ベクターへのクローニング、タンパク質の発現、精製等は、遺伝子工学および分子生物学のテキスト(Sambrook and Maniatis, in Molecular Cloning-A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, 1989; Ausubel, F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, N.Y, 1995等)、あるいはこれらのテキストに引用されている文献等に従って特段の困難性なく行うことができる。
工程(3):DIG-標的DNAとGST融合タンパク質ビーズとの反応
例えば、1.5 mlのエッペンドルフチューブに、DIG-標的DNAとGST融合タンパク質ビーズ蛋、タンパク質-DNA反応バッファーを加え、室温で30分-60分間インキュベートする。各種の試薬や操作はDIG Gel Shift Kit, 2nd generation(Roche社)のマニュアルに準ずることができる。
工程(4):DIG-標的物質を結合したGST融合タンパク質ビーズの回収
グルタチオン-セファロースビーズを用いたGST融合タンパク質の分離、精製の手続に基づき、この工程を行うことができる。例えば、エッペンドルフチューブにDIG洗浄バッファーを加え、未結合のDIG-標的物質を洗浄することによって、DIG-標的物質を結合したGST融合タンパク質ビーズを回収する。洗浄操作は複数回(3回程度)行う。DIG洗浄バッファーは、例えばRoche社のDIG Wash and Block Buffer Set(製品番号# 1 585 762)に含まれるDIG wash buffer(800μl)を使用することができる。
工程(5):非放射性シグナルの測定
回収したGST融合タンパク質ビーズに結合したDIG-標的タンパク質のDIGを表示する非放射性シグナルを測定する。すなわち、非放射性シグナル(例えばルシフェラーゼ等の発光タンパク質)で標識化した抗DIG抗体を反応溶液に加え、DIGと標識化抗体とを結合させる。次いで、この結合体を含む溶液をウェルプレート等に移し、シグナルの基質(発光基質等)を溶液に加えてシグナル反応を生じさせる(以上の工程は約3時間)。最後にウェルプレートを留身のメーター等をセットして、シグナルを測定する(約10分間)。
【0026】
Roche社のDIG Gel Shift Kit, 2nd generationに含まれる試薬を用いた場合には、この工程は以下のとおりに実施することができる。
(a) 800μl Washing bufferでビーズを1-5分洗浄する。
(b) 800μl Blocking solutionで30分インキュベートする。
(c) 800μl Antibody solutionで30分インキュベートする。
(d) 800μl Washing bufferで15分、洗浄を2回行う。
(e) 800μl Detection bufferで2-5分インキュベートした後、上清を吸引し、50%スラリーとし、ビーズを96ウェルアッセイプレートに移す。
(f) CSPD working solution(発光基質)を各ウェルに1滴加え、5分間室温でインキュベートする。
(g) 96ウェルアッセイプレートをルミノメーターにセットして発光量を測定する(全自動)。
【0027】
図1は、Liquid DNA pul down法における上記の工程(3)-(5)を示す。
【0028】
また、図2は、標的物質が、タンパク質と結合する別のタンパク質の場合(Liquid GST pul down法)の工程、図3はタンパク質がRNA結合タンパク質であり、標的物質がRNA分子の場合(Liquid RNA pul down法)の工程を示す。
【0029】
さらに、図4は、被験タンパク質Aと結合するタンパク質Bをグルタチオン-セファロースビーズと融合化してGST融合タンパク質ビーズBとし、DIG-標的物質とGST融合タンパク質ビーズBと被験タンパク質Aとを接触させることによって、被験タンパク質Aを介してDIG-標的物質を結合したGST融合タンパク質ビーズBのDIGを表示する非放射性シグナルを測定する方法(Liquid 3-hybrid pul down法)の工程を示す。
【0030】
またさらに、図5は、Liquid DNA pul down法の工程(3)—(5)を単一のウェルプレート上で行う方法(Liquid DNA pul down on plate法)を示す。
【0031】
なお、Liquid GST pul down法(図2)、Liquid RNA pul down法(図3)、Liquid 3-hybrid pul down法(図5)もそれぞれ単一のウェルプレート上で実施することができる。
【0032】
第2の発明は、タンパク質と標的物質との結合に影響を及ぼす因子をスクリーニングする方法であり、前記第1発明の工程(3)において、候補物質を共存させることによって実施することができる。すなわち、候補物質がタンパク質と標的物質の結合を阻害する物質であれば、最終的に得られるシグナルは低下し、一方、候補物質が両者の結合を促進するものであれば、シグナルの増加が観察される。被験対象となる候補物質は、例えば、既知の環境ホルモン物質やその変異体、環境ホルモンの可能性が疑われる化学物質、低分子化合物、生体由来のタンパク質やペプチド、核酸等を採用することができる。
【0033】
以下、実施例を示して本願発明についてさらに詳細かつ具体的に説明するが、本願発明は以下の例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0034】
実施例1:Liquid DNA pull down 法の例
ヒト甲状腺ホルモン受容体タンパク質β1(TRβ1)のcDNA(GenBank/NM_000461)のリガンド結合ドメイン(LBD)をpGEXに組換え、GSTと融合させて発現させ、さらにグルタチオン-セファロースビーズと結合させてGST-TRβ1-LBDを調製した。このGST-TRβ1-LBDを、DIGで標識した標的DNA(DR4-TRE:thyroid hormone response elementとともにインキュベートした。コントロールとして、GSTとDIG-DR4をインキュベートした。また、サンプルには10-7M甲状腺ホルモン(T3)および1000倍濃度のcold DR4を添加した。その後、ルシフェラーゼ標識化抗DIG抗体を反応させ、相対発光量を指標として、GST-TRβ1-LBDとDIG-DR4の結合の程度を測定した。
【0035】
なお、このような条件で各試料をインキュベートした場合には、受容体タンパク質と標的DNAの結合・解離は図6(a)-(d)のとおりとなる。すなわち、
(a)受容体タンパク質(NR)にリガンド(小黒丸)が結合し、NRにDNA(NRE)が結合した状態;
(b)NRにリガンドが結合してなくても、NRにNREが結合した状態;
(c)リガンドが結合することによってNRとNREが解離した状態;および
(d)PCBやcold DR4の存在によってNRとNREが解離した状態。
【0036】
結果は図7に示したとおりである。GSTコントロールではいずれの条件でも活性は認められなかった(カラム1、2)。GST-TRβ1-LBDとDIG-DR4を共にインキュベートした場合は、予想通り、T3(-)で発光量が最も高く(カラム3)、GST-TRβ1-LBDとDIG-DR4とが結合していることを示した。cold DR4(+:カラム4)あるいはT3(+:カラム5)を入れると発光量は低下し、GST-TRβ1-LBDとDIG-DR4が解離したことを示した。さらに、T3(+)、cold DR4(+)の条件では発光量は最も低く(カラム6)、GST-TRβ1-LBDとDIG-DR4の結合が大きく阻害されることが示された。これらの結果は、従来のGSA法により報告されている通りの結果であった。
【0037】
なお、甲状腺ホルモン受容体タンパク質に対する別の結合DNA配列であるF2-TREを用いた場合も、同様の結果が得られた。
実施例2:Liquid DNA pull down 法の別例
cold DR4の代わりにPCBを10-7 M添加し、また標的DNAとしてF2-TREを用いた以外は実施例1と同様に試験した。
【0038】
結果は図8に示したとおりである。PCBを添加することにより、GST-TRβ1-LBDとDIG- F2との結合は約55%に低下した。これは本願発明者らの既報(非特許文献2)と一致した結果であった。
実施例3:Liquid 3 Hybrid pull down法の例
核内ホルモン受容体コアクチベーターとしてリガンド依存性に核内ホルモン受容体と結合するヒトSRC-1 cDNA(GenBank/U40396)をpGEXベクターに組換え、GSTとの融合タンパクを発現させ、この融合タンパク質をグルタチオン-セファロースビーズと結合させてGST-SRC-1を調製した。また、TRβ1 cDNAをin vitro転写翻訳して組換え体TRβ1を調製した。このGST-SRC-1と組換え体TRβ1を、DIG-DR4とともにインキュベートした。コントロールとしては、GST-SRC-1の替わりにGSTを使用した。
【0039】
結果は図9に示したとおりである。SRC-1はT3存在下でTRβ1とDNA上で結合していることが確認された。この結果も、従来法で報告された結果と一致した。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上詳しく説明したとおり、本願発明は、ゲル電気泳動の工程やメンブレンへのトランスファー工程を含まないことによって、簡便かつ短時間に大量の検査を高精度で行うことができ、しかもPCBやダイオキシン廃棄物の排出量も抑えることを可能とする。環境ホルモンによる生体機能の阻害効果についての解析効率を向上させるとともに、大量の環境ホルモン候補物質を迅速にスクリーニングすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本願発明のLiquid DNA pul down法を例示した模式図である。NRは核受容体タンパク質、NREは受容体結合DNA配列、DIGはジゴキシゲニン標識、小黒丸はリガンドを示す。
【図2】本願発明のLiquid GST pul down法を例示した模式図である。
【図3】本願発明のLiquid RNA pul down法を例示した模式図である。
【図4】本願発明のLiquid 3-hybrid pul down法を例示した模式図である。
【図5】本願発明のLiquid DNA pul down on plate法を例示した模式図である。
【図6】(a)-(d)はそれぞれ、実施例の試験条件かにおける受容体タンパク質と標的DNAの結合・解離の状態を示す模式図である。
【図7】実施例1の結果を示すグラフである。
【図8】実施例2の結果を示すグラフである。
【図9】実施例3の結果を示すグラフである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8