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明細書 :青枯れ病菌感染性バクテリオファージ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4862154号 (P4862154)
公開番号 特開2007-252351 (P2007-252351A)
登録日 平成23年11月18日(2011.11.18)
発行日 平成24年1月25日(2012.1.25)
公開日 平成19年10月4日(2007.10.4)
発明の名称または考案の名称 青枯れ病菌感染性バクテリオファージ
国際特許分類 C12N   7/00        (2006.01)
A01N  63/00        (2006.01)
A01P   3/00        (2006.01)
C09K  17/32        (2006.01)
A01G   7/00        (2006.01)
A01G  31/00        (2006.01)
C09K 101/00        (2006.01)
FI C12N 7/00
A01N 63/00 F
A01P 3/00
C09K 17/32 H
A01G 7/00 605Z
A01G 31/00 601A
C09K 101:00
請求項の数または発明の数 6
全頁数 11
出願番号 特願2006-110115 (P2006-110115)
出願日 平成18年4月12日(2006.4.12)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 特許法第30条第1項適用、日本生物工学会大会講演要旨集(平成17年9月25日)日本生物工学会発行第66ページ(3A09-1)に発表
特許法第30条第1項適用 特許法第30条第1項適用、日本生物工学会大会講演要旨集(平成17年9月25日)日本生物工学会発行第67ページ(3A09-2)に発表
優先権出願番号 2006047865
優先日 平成18年2月24日(2006.2.24)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年1月29日(2009.1.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
発明者または考案者 【氏名】藤江 誠
【氏名】山田 隆
【氏名】川崎 健
個別代理人の代理人 【識別番号】110000084、【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
【識別番号】100068700、【弁理士】、【氏名又は名称】有賀 三幸
【識別番号】100077562、【弁理士】、【氏名又は名称】高野 登志雄
【識別番号】100096736、【弁理士】、【氏名又は名称】中嶋 俊夫
【識別番号】100117156、【弁理士】、【氏名又は名称】村田 正樹
【識別番号】100111028、【弁理士】、【氏名又は名称】山本 博人
【識別番号】100101317、【弁理士】、【氏名又は名称】的場 ひろみ
【識別番号】100121153、【弁理士】、【氏名又は名称】守屋 嘉高
【識別番号】100134935、【弁理士】、【氏名又は名称】大野 詩木
【識別番号】100130683、【弁理士】、【氏名又は名称】松田 政広
【識別番号】100140497、【弁理士】、【氏名又は名称】野中 信宏
審査官 【審査官】太田 雄三
参考文献・文献 特開2005-278513(JP,A)
日本生物工学会大会講演要旨集 平成16年度,2004年 8月25日,p. 144, 3C09-3
日本植物病理學會報,1990年,Vol. 56, No. 2,p. 243-246
Journal of Phytopathology,1991年,Vol. 131, No. 1,p. 11-21
特許請求の範囲 【請求項1】
ラルストニア ソラナセラム(Ralstonia solanacearum) MAFF211272株より単離され、RSA1と命名されたバクテリオファージ。
【請求項2】
請求項1記載のバクテリオファージを有効成分として含有する青枯れ病の防除剤。
【請求項3】
請求項1記載のバクテリオファージを有効成分として含有する土壌改良剤。
【請求項4】
請求項1記載のバクテリオファージを植物又は土壌に散布することを特徴とする青枯れ病の防除方法。
【請求項5】
請求項1記載のバクテリオファージを水耕栽培又は溶液栽培の培養液に添加することを特徴とする青枯れ病の防除方法。
【請求項6】
請求項1記載のバクテリオファージを土壌に添加することを特徴とする土壌の改良方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、青枯れ病菌(ラルストニア ソラナセラム(Ralstonia solanacearum))に対して溶菌性を示すバクテリオファージ(以下、単に「ファージ」とも言う)、及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
青枯れ病菌は、トマト、ナス、タバコなどに青枯れ病(立ち枯れ病)を引き起こす土壌細菌である。比較的温暖な地域を中心に世界中に分布し、ナス科やマメ科の他、経済的に重要な農作物多種を含む33科200種以上の植物に感染し、甚大な被害をもたらす。一度汚染された土壌から病原菌を除去することはきわめて困難である。本病に対する防除法としては、これまでに間作、輪作、土壌改良、土壌消毒法などが考案されているが、その発生を安定的に抑えることはほとんどできていない。
【0003】
また、植物細菌病に関しては、病原細菌を溶菌するバクテリオファージを利用した防除方法が、病原細菌を選択的に溶菌して防除できる手段として古くから期待され、青枯れ病についても、P4282ファージ、PK101ファージ等の青枯れ病菌感染性バクテリオファージが報告されている(非特許文献1、非特許文献2)。また、最近、本発明者らは、青枯れ病菌に対して溶菌性を示し、その宿主特異性から3種類に大別される十数種のバクテリオファージを自然界より単離することに成功し、先に特許出願している(特許文献1)。
しかしながら、これまで報告されているバクテリオファージは、溶菌スペクトルが狭く、宿主範囲、地理的分布、病原性、疫学的特徴から多くの系統が存在する青枯れ病菌を有効に防除するには十分なものではない。

【特許文献1】特開2005-278513号公報
【非特許文献1】田中 博、根岸秀明、前田初枝:非病原性タバコ立枯病菌Pseudomonas solanacearum M4Sとバクテリオファージによるタバコ立枯病の生物防除、日本植物病理学会報 56巻2号pp243-246(1990年)
【非特許文献2】Toyoda H, Kakutani K, Ikeda S, Goto H, Tanaka H and Ouchi S. Characterization of deoxyribonucleic acid of virulent bacteriophage and its infectivity to host bacteria, Pseudomonas solanacearum. J. Phytopathology. (1991), 131:11-21
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、新規な青枯れ病菌感染性バクテリオファージを用いて、青枯れ病を効果的に防除する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、斯かる実情に鑑み鋭意検討を重ねた結果、ラルストニア ソラナセラム(Ralstonia solanacearum)より、青枯れ病菌に感染性の広い溶菌スペクトルを示すバクテリオファージを単離することに成功し、これを用いることにより青枯れ病を効果的に防除できることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は以下の(1)~(6)に係るものである。
(1)ラルストニア ソラナセラム(Ralstonia solanacearum)より単離され、ラルストニア ソラナセラムのC-319株、M4S株、Ps29株、Ps65株、Ps72株、Ps74株、MAFF106603株、MAFF106611株、MAFF211270株、MAFF211271株、MAFF211272株、MAFF301556株、MAFF301558株、MAFF730138株及びMAFF730139株のすべてに溶菌性を示すバクテリオファージ。
(2)上記バクテリオファージを有効成分として含有する青枯れ病の防除剤。
(3)上記バクテリオファージを有効成分として含有する土壌改良剤。
(4)上記バクテリオファージを植物又は土壌に散布することを特徴とする青枯れ病の防除方法。
(5)上記バクテリオファージを水耕栽培又は溶液栽培の培養液に添加することを特徴とする青枯れ病の防除方法。
(6)上記バクテリオファージを土壌に添加することを特徴とする土壌の改良方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明のバクテリオファージは、公知の青枯れ病菌感染性バクテリオファージに比べて、広い作用スペクトルを示す。従って、これを用いることにより、多くの青枯れ病に有効な防除剤を提供することができ、また青枯れ病菌で汚染された土壌の改良に有効な土壌改良剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のバクテリオファージは、ラルストニア ソラナセラム(Ralstonia solanacearum)から単離されるものである。
ラルストニア ソラナセラム(Ralstonia solanacearum)は、トマト、ナス、タバコなど200種以上の農作物に対して、青枯れ病(立ち枯れ病)を引き起こす多犯性の土壌伝染細菌である。本明細書においては、「青枯れ病菌」とも云う。
【0009】
本発明のバクテリオファージは、少なくともラルストニア ソラナセラム(Ralstonia solanacearum)のC-319株、M4S株、Ps29株、Ps65株、Ps72株、Ps74株、MAFF106603株、MAFF106611株、MAFF211270株、MAFF211271株、MAFF211272株、MAFF301556株、MAFF301558株、MAFF730138株及びMAFF730139株のすべてに溶菌性を示すという、宿主特異性を有する。
斯かる宿主特異性は、後記実施例3に示すように、特開2005-278513号公報(特許文献1)に記載のタイプ1、タイプ2及びタイプ3に属するバクテリオファージとは、異なるものである。
【0010】
ここで、M4S株は、タバコより分離されたレース1の菌株であり、前記非特許文献1に記載の菌株である。
Ps29株は、タバコより分離されたレース1の菌株であり、Ozawa H,Tanaka H, IchinoseT, Shiraishi T, and Yamada T. Bacterialphage P4282, a parasite of Ralstonia solanacearum, encodes a bacteriolytic protein, important for lytic infection of its host. Molecular Genetics and Genomics (2001) 265:95-101に記載の菌株である。
C-319株、Ps65株、Ps72株及びPs74株は、タバコより分離されたレース1の菌株である。
C-319株、M4S株、Ps29株、Ps65株、Ps72株及びPs74株は、山陰建設工業(島根県出雲市)より分譲された菌株である。
MAFF106603株は、レース1、biovar 3の菌株であり、MAFF106611株は、レース1、biovar 4の菌株であり、MAFF211270株は、レース1、biovar N2の菌株であり、MAFF211271株は、レース3、biovar N2の菌株であり、MAFF211272株は、レース4、biovar 4の菌株であり、MAFF301556株はレース1、biovar 4の菌株であり、MAFF301558株は、レース3、biovar N2の菌株であり、MAFF730138株は、レース1、biovar 3の菌株であり、MAFF730139株は、レース1、biovar 4の菌株である。MAFF106603株、MAFF106611株、MAFF211270株、MAFF211271株、MAFF211272株、MAFF301556株、MAFF301558株、MAFF730138株及びMAFF730139株は、農林水産省生物資源研究所発行の微生物遺伝資源利用マニュアル(12)、堀田光生・土屋健一、平成14年3月に記載の菌株で、農林水産省生物資源研究所農業生物資源ジーンバンクより分譲が可能である。
【0011】
上記の宿主特異性(溶菌スペクトル)を有するバクテリオファージは本発明のバクテリオファージに包含されるが、このうち、ラルストニア ソラナセラム(Ralstonia solanacearum) MAFF211272株より単離されるものが好ましい。MAFF211272株は、上記のとおりレース 4、biovar 4の菌株であり、農林水産省生物資源研究所農業生物資源ジーンバンクより分譲が可能である。
そして、このうち、「RSA1」と命名されたバクテリオファージが特に好ましい。
RSA1は、本出願人において分譲可能な状態で保管されている。尚、当該RSA1は、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託を申請(NITE AP-210(平成18年2月22日))したが、拒否された。
【0012】
以下、バクテリオファージRSA1が有するこの他の特徴について説明する。
1.形態
図1に示すとおり、バクテリオファージRSA1は、正二十面体型の頭部と線上の尾部とから構成されるものである。これは、前記非特許文献1に記載のP4282ファージとは、P4282ファージは頭部の直径が約70nm、尾部が約20nmであるのに対して、RSA1は頭部の直径が約40nm、尾部が約100nmである点で異なる。
【0013】
2.ゲノム解析
バクテリオファージRSA1のゲノムは、2本鎖DNAよりなり、制限酵素(SmaI)処理による断片のパターンは、図2に示すとおりであり、特許文献1に記載のタイプ1~3のバクテリオファージとは異なる(実施例5)。
電気泳動により決定したRSA1のゲノムサイズは、約39Kbpであり(図2)、非特許文献2のPK101ファージ(約35Kbp)、とは異なる。
また、RSA1の塩基配列を決定したところ、サイズは38,820bpであり、全ゲノムが決定されているラルストニア ソラナセラム(Ralstonia solanacearum)GMI1000株のゲノム中に、RSA1の配列と非常に高い相同性を示す領域が存在しており(図3)、RSA1はラルストニア ソラナセラム(Ralstonia solanacearum)のゲノム中に溶原化され保持される可能性を示している。
以上より、バクテリオファージRSA1は、文献未記載の新規な青枯れ病菌感染性バクテリオファージであると云える。
【0014】
本発明のバクテリオファージは、プラークアッセイ・分離方法を用いることにより、青枯れ病菌より分離することができる。すなわち、例えば、ラルストニア ソラナセラム(Ralstonia solanacearum) MAFF211272株をCPG(実施例1)培地で旋回培養し、この培養液をtop agarに混合して、CPG寒天培地上に広げる。25~30℃で12時間~48時間培養し、検出された単一プラークの中央部分を滅菌爪楊枝等でつつき、例えばラルストニア ソラナセラム(Ralstonia solanacearum)M4S株等の培養液に添加してバクテリオファージを増幅させる。増幅後、遠心上清を0.2μm孔のフィルター等で濾過滅菌することにより、バクテリオファージRSA1を分離することができる。
【0015】
本発明のバクテリオファージは、一般的なバクテリオファージと同様の方法で増殖させることができる。例えば、ラルストニア ソラナセラム(Ralstonia solanacearum)を培養し、十分に増殖させた後、本発明のバクテリオファージを接種し、培養を継続することにより、大量のファージ溶液を得ることができる。ラルストニア ソラナセラム(Ralstonia solanacearum)の培養は、定法に従って行うことができ、例えば、CPG液体培地などを用い、温度27~37℃で旋回又は振とう培養すればよい。バクテリオファージを接種する時期は、ラルストニア ソラナセラム(Ralstonia solanacearum)が十分増殖している時期であれば特に限定されないが、菌体濃度が1×104~1×108cfu/ml程度まで増殖した時期に接種するのが望ましい。ファージ接種から6~12時間の培養で、ほぼすべての菌が溶菌し、ファージ溶液を得ることができる。
【0016】
本発明のバクテリオファージは、上述したように、公知の青枯れ病菌感染性バクテリオファージに比べて、広い作用スペクトルを有し(実施例3)、圃場や水耕栽培等に適用した場合に、優れた青枯れ病防除効果を発揮する(実施例8)。従って、このバクテリオファージは、青枯れ病の防除、青枯れ病菌で汚染された土壌の改良及び水耕栽培や溶液栽培の培養液の当該細菌の駆除等に利用できる。なお、ここでいう「防除」とは、感染した青枯れ病菌の「駆除」と感染の「予防」の双方を含む意味である。
【0017】
本発明のバクテリオファージを青枯れ病の防除剤又は土壌改良剤として利用する場合、上述した増殖方法によって得られるファージ溶液、あるいはファージ溶液を遠心分離等によって培養残渣と分離したものを使用してもよいが、展着剤を配合した溶液として使用しても、植物体への付着をよくすることができ好ましい。また、微生物製剤において一般的に使用される固体担体又は液体担体を配合して、水和剤、粉剤、カプセル剤等の製剤形態に調製したものを使用してもよい。
【0018】
当該バクテリオファージを含有する防除剤又は土壌改良剤においては、溶液中のファージ濃度は、1×105~1×1011 pfu/mlとするのが好ましく、1×108~1×1010 pfu/mlとするのが更に好ましい。
【0019】
防除の対象となる植物としては、ジャガイモ、ナス、トマト、トウガラシ、ピーマン、タバコ、シソ、ダイコン、イチゴ、バナナ、マーガレット、キク、ヒマワリ等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、防除対象とする病害は、ラルストニア ソラナセラム(Ralstonia solanacearum)によって引き起こされる病害であれば限定されず、例えば、ナス科植物の青枯れ病、タバコ立枯れ病などを挙げることができる。
【0020】
本発明の防除剤を圃場に散布する場合、その散布量は青枯れ病菌を防除できる範囲内であれば特に限定されないが、通常、圃場1平方メートル当り1×108~1×1012 pfuのファージを散布するのが好適である。水耕栽培又は溶液栽培での防除に用いる場合は、ファージを1×103~1×1010pfu/mlになるように培養液に添加するのが好ましい。
【0021】
また、本発明の土壌改良剤を土壌に添加する場合、その添加量は特に限定されないが、通常、土壌1kg当り1×1010~1×1012pfuのファージを添加するのが好適である。
【実施例】
【0022】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明する。尚、特に説明がない場合には、J. Sambrook, E. F. Fritsch & T. Maniatis (Ed.), Molecular cloning, a laboratory manual (3rd edition), Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (2001);F. M. Ausubel, R. Brent, R. E. Kingston, D. D. Moore, J.G. Seidman, J. A. Smith, K. Struhl (Ed.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Ltd.などの標準的なプロトコール集に記載の方法、あるいはそれを修飾したり、改変した方法を用いる。また、市販の試薬キットや測定装置を用いる場合には、特に説明が無い場合、それらに添付のプロトコールを用いる。
【0023】
実施例1 青枯れ病菌の培養
ポリペプトン10.0g、カザミノ酸1.0g、及びグルコース5.0gを、蒸留水1,000mlに加えて、CPG液体培地を調製した。このCPG液体培地を用いて、青枯れ病菌の各菌株を28℃で旋回培養(200rpm)又は振とう培養(300rpm)した。
【0024】
実施例2 バクテリオファージRSA1の分離
プラークアッセイ・分離方法により青枯れ病菌MAFF211272株よりバクテリオファージRSA1を分離した。
ラルストニア ソラナセラム(Ralstonia solanacearum)MAFF211272株をCPG培地で旋回培養し、この培養液250μLを4mlのtop agarに混合して、CPG寒天培地(上記CPG液体培地に17.0gの寒天を添加した培地)上に広げた。28℃で12時間~48時間培養後、プラークを検出した。単一プラークの中央部分を滅菌爪楊枝でつつき、青枯れ病菌(M4S株)の培養液(OD600=0.1~0.5)に添加してバクテリオファージを増幅した。増幅後、遠心上清を0.2μm孔のフィルターで濾過滅菌し、バクテリオファージRSA1を分離した。
このファージRSA1は青枯れ病菌 MAFF211272株に溶原化していた可能性がある。
尚、RSA1は、平成18年2月15日に、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託申請したが(受領番号NITE AP-210(平成18年2月22日))、平成18年3月28日に受託の拒否がなされた。
【0025】
実施例3 バクテリオファージRSA1の宿主特異性
バクテリオファージRSA1の青枯れ病菌の各菌株に対する宿主特異性をプラークアッセイ法によって調べた。実施例2で分離したバクテリオファージRSA1を、実施例1で得た青枯れ病菌の各菌株の培養液(OD600=0.1~0.5)に混合し、28℃で1時間だけ保温後、4mlのtop agarに混合してCPG寒天培地上に広げ、プラークアッセイを行った。青枯れ病菌の検定菌として、病原性、疫学的特徴、生理・生化学的性質が異なるラルストニア ソラナセラム(Ralstonia solanacearum)C319株、M4S株、Ps29株、Ps65株、Ps72株、Ps74株、MAFF106603株、MAFF106611株、MAFF211270株、MAFF211271株、MAFF211272株、MAFF301556株、MAFF301558株、MAFF730138株、MAFF730139株を用いた。
本発明者が青枯れ病菌からすでに単離している3種類のバクテリオファージ(特許文献1)との相同性を比較・検討するために、L-type(タイプ1ファージ)、M-type(タイプ3ファージ)、S-type(タイプ2ファージ)のバクテリオファージについても、同様の実験を行った。結果を表1に示す。
【0026】
【表1】
JP0004862154B2_000002t.gif

【0027】
表1に示すように、バクテリオファージRSA1は検定に用いた全ての菌株を宿主とし、すでに単離している3種類のバクテリオファージ(特許文献1)とは宿主特異性が異なっていた。
【0028】
実施例4 バクテリオファージRSA1の形態観察
バクテリオファージRSA1の形態を透過型電子顕微鏡を用いて観察した。実施例2で示すバクテリオファージRSA1の濾過滅菌液10mlを、40,000gで1時間、遠心分離し、バクテリオファージRSA1を沈殿として得た。この沈殿を0.01mol/lのMgSO4を含む100μlのPBSに懸濁した。バクテリオファージの懸濁液をホルムバールの膜を張ったグリッドに滴下し、リンタングステン酸を用いてネガティブ染色後、透過型電子顕微鏡で観察した。この結果を図1に示す。
【0029】
図1に示すように、バクテリオファージRSA1は正二十面体型の頭部と線状の尾部から構成されていた。尾部の末端は太くなっていた。この形態は、非特許文献1で報告されているものとは異なっていた。ラルストニア ソラナセラム(Ralstonia solanacearum)に感染する類似ファージの報告は文献等では見あたらない。
【0030】
実施例5 バクテリオファージRSA1のゲノムの解析
バクテリオファージRSA1より核酸を単離し解析した。RSA1のゲノムは2本鎖DNAよりなり、電気泳動でファージRSA1のゲノムサイズを決定したところ、図2に示すように約39kbpであった。RSA1より精製した未処理のDNA(図2A)、SmaI消化処理後のDNA(図2B)の電気泳動パターンより、RSA1のゲノムを解析したところ(図2Aにおいては、低濃度アガロースゲルを用いて電気泳動を行うことで、20Kbp以上のDNAを分離)、断片のパターンは、特許文献1及び非特許文献2のファージとは異なっていた(図2)。
【0031】
実施例6 バクテリオファージRSA1のゲノム配列の決定
RSA1の塩基配列を決定したところ、サイズは38,820bpであった。図3に示すようにラルストニア ソラナセラム(Ralstonia solanacearum)GMI1000株(全ゲノムが決定されている)のゲノム中に、ファージRSA1の配列と非常に高い相同性を示す領域が存在することが判明した。
ラルストニア ソラナセラム(Ralstonia solanacearum)GMI1000株のゲノム中にファージRSA1のゲノムの配列と相同性が高い領域が存在する事は、RSA1はラルストニア ソラナセラム(Ralstonia solanacearum)のゲノム中に溶原化され保持される可能性を示している。
【0032】
実施例7 バクテリオファージRSA1の大量生産
CPG寒天培地上で培養したラルストニア ソラナセラム(Ralstonia solanacearum)M4S株のシングルコロニーをCPG液体培地50mlに植菌し、28℃にて24~48時間旋回培養した。この培養液10mlをCPG液体培地2,000mlに添加し、OD600=0.1(約5×107 cfu/ml)程度まで28℃にて4~6時間旋回培養(120rpm)した。この培養液に、m.o.i.(The multiplicity of infectionの略、細胞一個あたりに対するファージの数)=0.0001~0.1になるようあらかじめ希釈しておいたファージ液を10~100ml添加した。ファージの希釈には、実施例1に示すCPG液体培地に、MgSO4が終濃度0.01mol/lになるように加えた溶液を用いた。28℃にて1時間静置後、28℃にて10時間以上旋回培養し(120rpm)、溶菌させることで大量のバクテリオファージ液を調製した。溶菌液は5×107~5×109 pfu/mlのファージRSA1を含んでいた。
【0033】
実施例8 バクテリオファージRSA1による青枯れ病菌の増殖阻害効果
CPG寒天培地上で培養したラルストニア ソラナセラム(Ralstonia solanacearum)M4S株のシングルコロニーをCPG液体培地50mlに植菌し、28℃にて24時間旋回培養した。この培養液0.5mlをCPG液体培地100mlに添加し、OD600=0.1(約5×107 cfu/ml)程度まで28℃にて4~6時間旋回培養(200rpm)した。この培養液に、あらかじめCPG液体培地にMgSO4が終濃度0.01mol/lになるように加えた溶液で希釈した、ファージRSA1の溶液を20μl加え、m.o.i.(The multiplicity of infectionの略、細胞一個あたりに対するファージの数)が0.01、0.001、0.0001になるよう感染させた。コントロールの試料にはファージを感染させなかった。28℃にて30分間静置後、28℃にて16時間、旋回培養し(200rpm)、2時間ごとにOD600を測定し、青枯れ病菌の増殖を記録した。結果を図4に示す。
【0034】
ファージRSA1の添加により青枯れ病菌の増殖が有意に阻害された。増殖阻害の程度は、ファージ感染時のm.o.i.に依存し、m.o.i.が大きいほうが増殖阻害効果は強かった。
【0035】
〔態様の形式1〕圃場における青枯れ病の防除
圃場に散布する場合は圃場1平方メートル当り1×108~1×1012pfuのファージを散布する。土壌に混合して使用する場合は土壌1Kgあたり1×1010~1×1012pfuのファージを土壌に混合し使用する。
【0036】
〔態様の形式2〕水耕栽培や溶液栽培における青枯れ病菌の防除
ファージRSA1を用いて、水耕栽培又は溶液栽培での青枯れ病菌の防除を行う。水耕栽培又は溶液栽培で用いる培養液に、ファージRSA1を1×103~1×1010pfu/mlになるように添加し栽培する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】RSA1のネガティブ染色法による電子顕微鏡観察写真である。スケールバーは100nmを示す。
【図2】RSA1(Aφ)より精製したDNAの電気泳動パターンを示す写真である。図2A:RSA1より精製した未処理のDNA、図2B:SmaI消化処理後のDNA。λ、λ/StyI、λ/StyI+λ/BglII、λ/HindIII+φX174/HaeIIIで示す各レーンはサイズマーカー。
【図3】バクテリオファージRSA1のゲノム配列とラルストニア ソラナセラムGMI1000株のゲノム配列の相同性を示す図。図3A:ファージRSA1(全長38.8kbp)のゲノムの塩基配列から得た物理地図。末端の○と□は、ファージゲノムDNAの両末端を表す。図3B:ファージRSA1のゲノム配列とラルストニア ソラナセラムGMI1000株のゲノムで相同性があり、対応する部分を示す。図3B上段:RSA1のゲノムが、青枯れ病菌中では両末端が結合し環状構造をとることを仮定したゲノムの構造を示す。図3B下段:ラルストニア ソラナセラムGMI1000株のゲノムの物理地図を示す。上段の数字:ファージRSA1の末端(○)からの距離をKbpで示したもの。下段の数字:GMI1000株のゲノムの末端(▲)からの距離をKbpで示したもの。
【図4】バクテリオファージRSA1による青枯れ病菌の増殖阻害効果を示す図である。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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