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明細書 :Al添加TiNのバルク体を製造する方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5093433号 (P5093433)
公開番号 特開2007-131493 (P2007-131493A)
登録日 平成24年9月28日(2012.9.28)
発行日 平成24年12月12日(2012.12.12)
公開日 平成19年5月31日(2007.5.31)
発明の名称または考案の名称 Al添加TiNのバルク体を製造する方法
国際特許分類 C04B  35/58        (2006.01)
C04B  35/64        (2006.01)
C01B  21/076       (2006.01)
FI C04B 35/58 101G
C04B 35/64 E
C01B 21/076 B
請求項の数または発明の数 3
全頁数 7
出願番号 特願2005-326928 (P2005-326928)
出願日 平成17年11月11日(2005.11.11)
審査請求日 平成20年11月10日(2008.11.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
発明者または考案者 【氏名】廣田 健
【氏名】肥川 翔
個別代理人の代理人 【識別番号】110000475、【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
審査官 【審査官】押見 幸雄
参考文献・文献 特開平05-254939(JP,A)
特開平05-078107(JP,A)
特開平06-271901(JP,A)
調査した分野 C04B 35/58
C01B 21/072
C01B 21/076
B22F 1/00
B22F 3/00
B22F 7/00
C22C 14/00
特許請求の範囲 【請求項1】
(1)所定量の金属Ti粉末および所定量の金属Al粉末を混合した後、プレス成形して第1の成形体とするステップと、
(2)前記第1の成形体を所定圧のN雰囲気中で自己燃焼合成させ、それによって得られた試料を粉砕して第1の粉体とするステップと、
(3)前記第1の粉体をプレス成形して第2の成形体とするステップと、
(4)前記第2の成形体を所定圧のN雰囲気中で自己燃焼合成させ、それによって得られた試料を粉砕して第2の粉体とするステップと、
(5)前記第2の粉体をプレス成形して第3の成形体とするステップと、
(6)前記第3の成形体を加圧焼結させることにより、Al添加TiNのバルク体を得るステップとからなり、前記金属Ti粉末および金属Al粉末の量を、前記Al添加TiNのバルク体の組成が(Ti1-xAl)N(0<x≦0.08)となるように選択することを特徴とするAl添加TiNのバルク体を製造する方法。
【請求項2】
前記加圧焼結は、通電加圧焼結であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記通電加圧焼結を、真空中において圧力10~50MPaを加えた状態で、50~200℃/分で1300~1900℃まで昇温し、その温度を3~20分間保持した後、50~100℃/分で降温するという条件下で実行することを特徴とする請求項2に記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化チタン(TiN)系化合物、特にAl添加TiNのバルク体を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
TiN系化合物は、軽量であるにもかかわらず、高融点、高硬度並びに高耐食性、および高い化学的安定性等の優れた特性を有しており、また美しい金属光沢を示すので、機械部品や切削工具等あるいは宝飾部品に用いられている。
その一方で、TiN系化合物は難焼結性の物質であるから、緻密なバルク体を製造することが難しく、これまで、主として薄膜材料として使用されてきている。
【0003】
従来技術として、TiN系化合物、特にAl添加TiNの粉末を焼結し、窒化チタンアルミ基焼結材を製造する方法が知られている(特許文献1参照)。
この従来の方法によれば、まず最初に、PVD法(スパッタリング法やイオンプレーティング法)や、プラズマCVD法を用いて、(Ti1-xAl)N(x=0.05~0.70)の粉末が製造される。そして、(Ti1-xAl)Nの粉末が、HP(ホットプレス)の他、例えば、HIP(熱間等方加圧焼結)、超高圧HIP等によって焼結され、窒化チタンアルミ基焼結材が得られる。
【0004】
こうして得られた窒化チタンアルミ基焼結材は、高硬度であり、耐摩耗性、耐欠損性に優れ、例えば切削工具、掘削用ビット等に有効利用することができる。
しかしながら、この従来の方法では、原料となる(Ti1-xAl)Nの粉末を製造するために、PVD法やプラズマCVD法を使用するので、所定の組成x=0.05~0.70を得るために、複雑な処理プロセスを必要とする。したがって、この方法は、(Ti1-xAl)N(x=0.05~0.70)の粉末の製造に、時間とコストを要し、量産性が低いという欠点を有している。
加えて、この方法によれば、(Ti1-xAl)Nの粉末をHP、HIPおよび超高圧HIP等によって焼結するので、焼結体は、高い硬度を有している割に、曲げ強度が弱いという欠点を有している。
【0005】

【特許文献1】特開平10-182233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、従来よりも短時間にかつ低コストでAl添加TiNのバルク体を製造する方法を提供することにある。
また、本発明の課題は、従来のものより曲げ強度の優れたAl添加TiNのバルク体を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、(1)所定量の金属Ti粉末および所定量の金属Al粉末を混合した後、プレス成形して第1の成形体とするステップと、(2)前記第1の成形体を所定圧のN雰囲気中で自己燃焼合成させ、それによって得られた試料を粉砕して第1の粉体とするステップと、(3)前記第1の粉体をプレス成形して第2の成形体とするステップと、(4)前記第2の成形体を所定圧のN雰囲気中で自己燃焼合成させ、それによって得られた試料を粉砕して第2の粉体とするステップと、(5)前記第2の粉体をプレス成形して第3の成形体とするステップと、(6)前記第3の成形体を加圧焼結させることにより、Al添加TiNのバルク体を得るステップとからなり、前記金属Ti粉末および金属Al粉末の量を、前記Al添加TiNのバルク体の組成が(Ti1-xAl)N(0<x≦0.08)となるように選択することを特徴とするAl添加TiNのバルク体を製造する方法を構成したものである。
【0009】
上記の構成において、前記加圧焼結は、通電加圧焼結であることが好ましく、さらには、前記通電加圧焼結を、真空中において圧力10~50MPaを加えた状態で、50~200℃/分で1300~1900℃まで昇温し、その温度を3~20分間保持した後、50~100℃/分で降温するという条件下で実行することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、原料となる(Ti1-xAl)Nの粉末を、金属Ti粉末および金属Al粉末を混合して成形体とし、それを自己燃焼合成させて得られた試料を粉砕することによって製造するようにしたので、所定の組成、好ましくは0<x≦0.2の(Ti1-xAl)Nの粉末を短時間にかつ低コストで製造可能であり、従来法よりも量産性が格段に向上する。
さらに、本発明によれば、(Ti1-xAl)Nの粉末を成形体とした後、加圧焼結させるようにしたので、得られた(Ti1-xAl)Nのバルク体は、従来のものより緻密であり、曲げ強度等の物理的特性も向上している。
こうして、本発明によって製造される(Ti1-xAl)Nのバルク体は、高い硬度に加えて大きな曲げ強度も備えているので、切削工具等として利用できるだけでなく、例えば、タービンエンジンのプロペラ等の形成材料として使用することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の好ましい実施例について説明する。
本発明によれば、まず、所定量の金属Ti粉末(純度99.9%:平均粒径=25μm)および所定量の金属Al粉末(純度99.89%:平均粒径=1.15μm)が湿式混合される。この場合、湿式混合がより好ましいが、乾式混合することもできる。そして、その混合された粉体が、一軸加圧成形された後、100MPaで冷間静水圧プレス(CIP)されて第1の成形体とされる。
【0012】
次に、この第1の成形体が、10MPaのN(純度99.99%)雰囲気中で自己燃焼合成(Self-propagating High-temperature Synthesis:SHS) せしめられる。この自己燃焼合成によって得られた試料は、超硬乳鉢によって粉砕され、メッシュフィルター(開口径32μm)を用いて整粒され、第1の粉体とされる。
第1の粉体は、再び、一軸加圧成形された後、100MPaでCIPされて第2の成形体とされ、前と同様に自己燃焼合成せしめられる。この自己燃焼合成によって得られた試料は、前と同様、超硬乳鉢によって粉砕され、メッシュフィルターを用いて整粒され、第2の粉体とされる。
【0013】
この実施例では、上述のように自己燃焼合成が2回繰り返されるが、自己燃焼合成を1回だけ行うようにしてもよい。この場合、金属チタンTiおよび金属アルミニウムAl粉末の混合物からなる成形体中の金属粒子間の隙間を充填する気体の窒素ガス、および成形体周辺に存在する窒素ガスからの窒素供給では、自己燃焼合成一回の当たりの窒素の供給量に限界がある。そこで、TiN化合物を生成するには略50モル%(窒素含有量として22.64質量%)の窒素を供給するために必要な窒素を、気体状態ではなく、液体や固体状態で供給する必要がある。例えば、ジアゾ化ナトリウムNaNのような固体の化合物を原料のTiやAl粉末と適当量混合し、この混合物の成形体を自己燃焼させればよい。燃焼反応後のNaは温水で洗浄して洗い流せば除去できる。
【0014】
第2の粉体は、その後、遊星ボールミル(WC-Coボール使用、500rpm、60分)によって粉砕され、さらに乾燥された後、200MPaでCIP成形されて第3の成形体とされる。
その後、第3の成形体は、通電加圧焼結(Spark Plasma Sintering:SPS)せしめられ、それによってAl添加TiNのバルク体が得られる。通電加圧焼結は、真空中において圧力10~50MPaを加えた状態で、50~200℃/分で1300~1900℃まで昇温し、その温度を3~20分間保持した後、50~100℃/分で降温するという条件下でなされる。この実施例では、(Ti1-xAl)Nの粉末を通電加圧焼結によって焼結させたが、HIP(熱間等方加圧焼結)等の加圧焼結によって焼結させてもよい。
【0015】
本発明によれば、形成されるAl添加TiNのバルク体の組成(Ti1-xAl)Nは、主として、混合される金属Ti粉末および金属Al粉末の量によって決定される。
そして、それぞれ、x=0、x=0.01、x=0.02、x=0.04、x=0.08の組成を有する5種類の(Ti1-xAl)Nのバルク体(試料No.1~No.5)を製造した。なお、これらのバルク体試料の製造に際しては、通電加圧焼結は、真空中において圧力約30MPaを加えた状態で、約100℃/分で1300~1900℃まで昇温し、その温度を約5分間保持した後、約50℃/分で降温するという条件下でなされた。
【0016】
製造した各バルク体試料の結晶構造、すなわち、その結晶相をX線回折装置によって分析した。図1には、X線回折パターン(CuKα線による)のグラフが示してある。グラフの縦軸はX線強度、横軸は回折角2θの値をそれぞれ表している。なお、図1では、試料No.2のデータは省略されている。
図1のグラフから、試料No.1(x=0)では、立方晶TiNが形成され、試料No.3(x=0.02)では、(Ti1-xAl)Nが形成されていることがわかる。また、試料No.4(x=0.04)および試料No.5(x=0.08)では、(Ti1-xAl)Nのほかに微細窒化物TiAlNが形成されている。
【0017】
また、各バルク体試料の諸特性を調べ、結果を以下の表1にまとめた。
【表1】
JP0005093433B2_000002t.gif
表1中、Gは平均結晶粒径であり、Hは硬度であり、σは曲げ強度であり、KICは破壊靱性値である。
【0018】
表1を参照して、Alの添加量(xの値)が増大するにつれて、格子定数aが、立方晶TiNの格子定数4.2411Åから4.2325Åへと徐々に減少し、ここでも(Ti1-xAl)Nの形成が裏付けられた。また、Alの添加量(xの値)が増大するにつれて、バルク体の曲げ強度σが増大していることがわかる。そして、最も優れた機械的特性を示したものは、試料5(x=0.08)で、硬度H=14.1GPa、曲げ強度σ=796MPa、破壊靱性値KIC=4.5MPa・m1/2である。この結果から、Alを添加することによって、硬度および破壊靱性値はわずかに低下するものの、曲げ強度が著しく向上することがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の方法によって製造したAl添加TiNのバルク体試料のX線回折パターンのグラフである。
図面
【図1】
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