TOP > 国内特許検索 > 光学活性なβ-ヒドロキシカルボニル化合物の製法 > 明細書

明細書 :光学活性なβ-ヒドロキシカルボニル化合物の製法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4639368号 (P4639368)
公開番号 特開2007-238543 (P2007-238543A)
登録日 平成22年12月10日(2010.12.10)
発行日 平成23年2月23日(2011.2.23)
公開日 平成19年9月20日(2007.9.20)
発明の名称または考案の名称 光学活性なβ-ヒドロキシカルボニル化合物の製法
国際特許分類 C07C  45/45        (2006.01)
C07C  49/82        (2006.01)
C07C  67/313       (2006.01)
C07C  69/738       (2006.01)
C07B  53/00        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI C07C 45/45
C07C 49/82
C07C 67/313
C07C 69/738 Z
C07B 53/00 B
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 3
全頁数 8
出願番号 特願2006-065797 (P2006-065797)
出願日 平成18年3月10日(2006.3.10)
審査請求日 平成19年6月14日(2007.6.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】小林 修
【氏名】小川 知香子
個別代理人の代理人 【識別番号】100113022、【弁理士】、【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
【識別番号】100110249、【弁理士】、【氏名又は名称】下田 昭
審査官 【審査官】増永 淳司
参考文献・文献 特開平06-256248(JP,A)
特開2000-042404(JP,A)
Journal of the American Chemical Society,2004年,126(39),P12236-37
Organic Letters,2005年,7(21),P4729-31
Journal of the American Chemical Society,2003年,125,P2989-2996
Advanced Synthesis & Catalysis,2005年,347,P1247-56
調査した分野 C07C 45/45
C07C 49/82
C07C 67/313
C07C 69/738
C07B 53/00
C07B 61/00
CA/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
水溶液中で、キラルなビピリジン化合物からなる配位子と、ScY又はBiYで表されるルイス酸(式中、Yは炭素数が1~3のパーフルオロアルカンスルホネートを表す)とを混合させて得られる触媒の存在下で、下式(式A)
【化1】
JP0004639368B2_000011t.gif
(式中、R2とR3は水素原子、脂肪族炭化水素基、単環若しくは多環の脂環式炭化水素基、単環若しくは多環の芳香族、単環若しくは多環の芳香脂族炭化水素基、又は複素環基のうち互いに異なるものを表し、かつR2とR3のいずれか一方は水素原子であり、R4は置換基を有していてもよい炭化水素基、置換基を有していても良い複素環基、アルキルチオ基、又はアリールチオ基であり、Rはそれぞれ同じであっても異なってもよいメチル基、エチル基、イソプロピル基、又はtert-ブチル基を表す)で表されるケイ素エノラートと、クロロアセトアルデヒド、アセトアルデヒド、エチルグリオキシレート、イソプロピルグリオキシレート、又はアクロレインとを反応させることを含む、光学活性なβ-ヒドロキシカルボニル化合物の製法。
【請求項2】
前記キラルなビピリジン化合物からなる配位子は、下式(化2)
【化2】
JP0004639368B2_000012t.gif
(式中、R6はイソプロピル基、tert-ブチル基またはフェニル基を表す)またはその対体で表される請求項1に記載の製法。
【請求項3】
前記ルイス酸がSc(OSOCF又はBi(OSOCFで表される請求項1に記載の製法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、水溶媒中での光学活性なβ-ヒドロキシカルボニル化合物の製法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホルムアルデヒド水溶液を用いるシリルエノールエーテルとのヒドロキシメチル化反応は、スカンジウムトリフラート又はビスマストリフラートとキラルビピリジン錯体とを混合した触媒によって円滑に進行することが報告されている(非特許文献1、2)。また、水系溶媒での不斉アルドール反応として芳香族アルデヒドを用いた例が報告されている(非特許文献3、4)。
【0003】

【非特許文献1】Kobayashi, S. et al. J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 12236.
【非特許文献2】Kobayashi, S. et al. Org. Lett. 2005, 7, 4729.
【非特許文献3】Kobayashi, S. et al. J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 2989.
【非特許文献4】Li, C-J. et al. Adv. Synth. Catal. 2005, 347, 1247.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、水系溶媒中でホルムアルデヒド以外の水溶性アルデヒドを用いたアルドール反応の成功例は未だにない。また、ケイ素エノラートを用いるアルドール反応に於いてホルムアルデヒド以外のアルデヒドを用いた場合、カルボニル基のβ-位に不斉炭素が生じるため、ケイ素エノラートの構造によりα-位にも不斉炭素が生じる系では、生成物はジアステレオマー混合物となる。このようなことから、本発明は、水系溶媒中でホルムアルデヒドを除く水溶性アルデヒドを用いた不斉アルドール反応を行い、高収率、高ジアステレオ選択的かつ高エナンチオ選択的に光学活性なβ-ヒドロキシカルボニル化合物を製造する方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち、本発明の光学活性なβ-ヒドロキシカルボニル化合物の製法は、水溶液中で、キラルなビピリジン化合物からなる配位子と、ScY又はBiYで表されるルイス酸(式中、Yは炭素数が1~3のパーフルオロアルカンスルホネートを表す)とを混合させて得られる触媒の存在下で、下式(式1)
【化1】
JP0004639368B2_000002t.gif
(式中、R2とR3は水素原子、脂肪族炭化水素基、単環若しくは多環の脂環式炭化水素基、単環若しくは多環の芳香族、単環若しくは多環の芳香脂族炭化水素基、又は複素環基のうち互いに異なるものを表し、かつR2とR3のいずれか一方は水素原子であり、R4は置換基を有していてもよい炭化水素基、置換基を有していても良い複素環基、アルキルチオ基、又はアリールチオ基であり、Rはそれぞれ同じであっても異なってもよいメチル基、エチル基、イソプロピル基、又はtert-ブチル基を表す)で表されるケイ素エノラートと、クロロアセトアルデヒド、アセトアルデヒド、エチルグリオキシレート、イソプロピルグリオキシレート、又はアクロレインとを反応させることを含む。



【0006】
前記キラルなビピリジン化合物からなる配位子は、下式(化2)
【化2】
JP0004639368B2_000003t.gif
(式中、Rはイソプロピル基、tert-ブチル基またはフェニル基を表す)またはその対体で表されることが好ましい。
前記ルイス酸がSc(OSOCF又はBi(OSOCFで表されることが好ましい。



【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、水系溶媒中でホルムアルデヒドを除く水溶性アルデヒドを用いた不斉アルドール反応を行い、高収率、高ジアステレオ選択的かつ高エナンチオ選択的に光学活性なβ-ヒドロキシカルボニル化合物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明で用いる触媒は、キラルなビピリジン化合物からなる配位子と、ScY又はBiYで表されるルイス酸(式中、Yは炭素数が1~3のパーフルオロアルカンスルホネートを表す)とを混合させて得られる。
【0009】
ビピリジン化合物からなる配位子又はその対称体は、水酸基の結合した2つの不斉炭素を有し、Sc塩又はBi塩の水中での触媒活性を調整するキラルな配位子となる。ビピリジン化合物はSc塩又はBi塩への配位能が適切であるため、ルイス酸性を低減させず、又、Sc又はBiと配位子からなる錯体からカチオンを放出させることも少なく、触媒の立体選択性が保たれる。
特に、下式(化2)
【化2】
JP0004639368B2_000004t.gif
(式中、Rはイソプロピル基、tert-ブチル基またはフェニル基を表す)またはその対称体で表されるビピリジン化合物を用いると、ルイス酸性及び立体選択性の点で好ましい。
【0010】
Yとしては、例えばハロゲン原子、OAc、OCOCF、ClO、SbF、PF又はOSOCF(適宜「OTf」:トリフラートと記す)を用いることができる。Yはハロゲン原子、OAc、OCOCF、ClO、SbF、PF又はOSOCF(OTf)を表す。中でもTOfが効果的である。
【0011】
ビピリジン化合物からなる配位子とScY又はBiYとを水溶媒中で混合すると、Sc塩又はBi塩が配位子に配位し、触媒を形成する。
上記配位子とScY又はBiYの各濃度は0.01~0.1mol/l程度が好ましい。又、ScYとBiYを混合して使用してもよい。
【0012】
本発明においては、この触媒を下記の水溶性アルデヒドとケイ素エノラートとの不斉アルドール反応(式IA、IB)に用いる。
【化3】
JP0004639368B2_000005t.gif
【化4】
JP0004639368B2_000006t.gif

【0013】
式IA、IB中、R~Rは上記式1で用いたのと同一である。Rは、親水性の置換基又はアルデヒド基と結合して水溶性アルデヒドを形成する置換基である。具体的な置換基としては、メチル基、クロロメチル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、ビニル基、2-ヒドロキシエチル基等を挙げることができる。さらにRとしては、水酸基やアミノ基などの親水性基が1つ以上結合したアルキル基を挙げることができる。
【0014】
ホルムアルデヒドを用いた場合は、生成物であるβ-ヒドロキシカルボニル化合物のβ-炭素は不斉を持たない。一方、式IA、IBからわかるように、ホルムアルデヒド以外の水溶性アルデヒド(式IA、IBの最左の化合物)を用いた場合、β-位に不斉炭素が生成されるため、エナンチオ選択性と共に、ジアステレオ選択性が重要になる。つまり、反応に用いるケイ素エノラート(式A)のRとRが異なる置換基であることから生じるα-位の不斉炭素と前記β-位の不斉炭素とにより、式IA、IBから明らかなように、生成物としてジアステレオ異性体が得られる。
なお、本発明に於いて水溶性アルデヒドとは、25℃における水に対する溶解度が5以上のアルデヒドをいう。
このようなことから、本発明では上記触媒を用いることにより、高いエナンチオ選択性と共に、高いジアステレオ選択性かつ高エナンチオ選択性でβ-ヒドロキシカルボニル化合物を得ることができる。
【0015】
溶媒の使用量は、適宜に考慮されるものであるが、通常は、原料物質並びに触媒の溶解に必要とされる量として、たとえばこれらの2~50重量倍の割合での使用が考慮される。溶媒には水を使用するが、補助溶媒として、水と混和する有機溶媒を添加しても良く、その場合、使用される有機溶媒の量は水に対して0.5~10倍(v/v)程度が好ましい。
【0016】
反応液中の水溶性アルデヒド/ケイ素エノラートのモル比は好ましくは0.1~20、より好ましくは0.2~5程度である。また触媒は、ケイ素エノラートに対するモル%として1~50モル%、より好ましくは5~20モル%使用する。
反応温度は-30℃~常温、より好適には-15~0℃の範囲である。
反応時間は、適宜定めてもよく、例えば、0.5~50時間である。
本反応系に2,6-ジ-tert-ブチルピリジンなどのピリジン化合物の添加剤が有効な場合がある。その場合のピリジン化合物の量はケイ素エノラートに対するモル比で、0.1~10、好ましくは0.5~3である。(実施例1参照)
【0017】
この反応により、光学活性なβ-ヒドロキシカルボニル化合物が生成する。
【実施例】
【0018】
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。
【0019】
<実施例1>
スカンジウムトリフラート(Sc(OTf)3, 19.7 mg , 0.0400 mmol) のジメトキシエタン(DME、420μL)溶液に配位子1(15.7 mg , 0.0480 mmol) を添加し、室温下、30分撹拌した。反応容器を0 ℃に冷却し、10分間撹拌した後、2,6-ジ-tert-ブチルピリジン(270μL , 1.20 mmol) を加えた。さらに10分間撹拌した後、クロロアセトアルデヒド水溶液(63.5μL, 0.40 mmol)、および(Z)- (1-フェニルプロプ-1-エニルオキシ)トリメチルシランを加え、0 ℃で40時間撹拌した。水を加えて反応を停止し、ジクロロメタンで抽出した後に、有機相に無水酢酸(113.2 μL、1.20 mmol) 、ピリジン(155μL, 2.00 mmol),4-ジメチルアミノピリジン(5mg)を加え、0 ℃で1時間撹拌した。水を加えて反応を停止し、ジクロロメタンで抽出した後、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、減圧濃縮して得られた粗生成物を分取用薄層クロマトグラフィーで精製し、1-クロロ-3-メチル-4-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル アセテートを74.4 mg(0.292 mmol, 収率73%)で得た。この生成物のジアスレレオマー比:Syn/anti = 88/12、光学収率:90 % ee (syn)、収率:60 % ee (anti)であった。
反応式は下記II式となった。又、生成物の物性値は以下の通りであった。
H-NMR(CDCl)(syn) δ=1.21 (d, 2.7 H, J = 7.4 Hz), 1.25 (d, 0.3 H, J = 6.8 Hz), 1.94 (s, 2.7 H), 1.96 (s, 0.3 H), 3.71-3.80 (m, 1H), 3.93-3.97 (m, 1H), 4.05-4.13 (m, 1H), 5.38-5.42 (m, 0.9 H), 5.45-5.50 (m, 0.1H), 7.43-7.71 (m, 3H), 7.91-8.02 (m, 2H).
【0020】
【化5】
JP0004639368B2_000007t.gif

【0021】
<実施例2>
ビスマストリフラート(Bi(OTf)3, 7.9 mg、0.0012 mmol)のDME溶液(420μL)に上記実施例1の配位子1(11.8 mg、0.0360 mmol)を添加し、室温で30分間撹拌した後、0 ℃まで冷却した。10分間撹拌後、水(47μL)、アセトアルデヒド(22.4μL, 0.04 mmol)、(Z)- (1-フェニルプロプ-1-エニルオキシ)トリメチルシラン(142 mg.0.6 mmol)を順次添加した。23時間後、水を加えて反応を終止し、ジクロロメタンで抽出、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、減圧濃縮して得られた粗生成物を分取用薄層クロマトグラフィーで精製し、3-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルブタン-1-オンを47.0 mg得た(0.263 mmol, 収率66%, ジアステレオマー比:syn/anti = 98/2、光学収率:90% ee(syn))。反応式を式IIIに表す。
又、生成物の物性値は以下の通りであった。
H-NMR(CDCl)(syn) δ= 1.228 (d, 1.5 H, J = 7.3 Hz), 1.231 (d, 1.5 H, J = 6.4 Hz), (1.5 H, J = 7.3 Hz), 1.27 (1.5 H, J = 7.3 Hz), 1.27 (1.5 H, J = 6.4 Hz), 3.40-3.50 (m, 1H), 4.11 (apparent quint, 0.5 H, J = 6.4 Hz), 4.25 (qd, 0.5 H, 3.2 Hz, 6.4 Hz), 7.46-7.51 (m, 2H), 7.58-7.59 (m 1H), 7.94-7.98 (m, 2H).
【化6】
JP0004639368B2_000008t.gif
<実施例3~9>
表1に示す種々のアルデヒド又はケイ素エノラートに対して、スカンジウムトリフラート又はビスマストリフラートをルイス酸として用い、実施例2と同様にして反応を実施した(式IV)。得られた生成物の収率(%Yield)、エナンチオ選択性(%ee)、ジアステレオ選択性(syn/antiの比)は表1のとおりである。
【化7】
JP0004639368B2_000009t.gif

【0022】
【表1】
JP0004639368B2_000010t.gif