TOP > 国内特許検索 > 高分子固定化酵素 > 明細書

明細書 :高分子固定化酵素

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4649644号 (P4649644)
公開番号 特開2007-236317 (P2007-236317A)
登録日 平成22年12月24日(2010.12.24)
発行日 平成23年3月16日(2011.3.16)
公開日 平成19年9月20日(2007.9.20)
発明の名称または考案の名称 高分子固定化酵素
国際特許分類 C12N  11/08        (2006.01)
C12P  41/00        (2006.01)
C08F 212/14        (2006.01)
FI C12N 11/08 A
C12P 41/00 F
C08F 212/14
請求項の数または発明の数 6
全頁数 11
出願番号 特願2006-065083 (P2006-065083)
出願日 平成18年3月10日(2006.3.10)
審査請求日 平成19年6月14日(2007.6.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】小林 修
【氏名】森 雄一朗
個別代理人の代理人 【識別番号】100110249、【弁理士】、【氏名又は名称】下田 昭
【識別番号】100113022、【弁理士】、【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
審査官 【審査官】渡邉 潤也
参考文献・文献 特開平02-227471(JP,A)
特開昭56-115727(JP,A)
特開昭48-073378(JP,A)
OKAMOTO,K. et al,Recoverable, Reusable, Highly Active, and Sulfur-Tolerant Polymer Incarcerated Palladium for Hydroge,J. Org. Chem.,American Chemical Society,2004年,69 (8),p.2871-2873
OKAMOTO,K. et al,Suzuki-Miyaura Coupling Catalyzed by Polymer-Incarcerated Palladium, a Highly Active, Recoverable, a,Org. Lett.,American Chemical Society,2004年,6 (12),p.1987-1990
調査した分野 C12N 11/00-13/00
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
酵素を架橋高分子に固定化させてなる高分子固定化酵素であって、該架橋高分子がポリスチレンをベースとし、その主鎖又はベンゼン環に親水性の架橋性官能基を側鎖に有し、該架橋性官能基としてエポキシ基と水酸基を有し、該架橋性高分子を含む溶液に該酵素を分散させ、その後、該溶液と混和しない該架橋性高分子に対する貧溶媒を加えることで相分離を生じさせ、相分離により酵素が固定化された該架橋性高分子のエポキシ基と水酸基とを架橋させてなることを特徴とする高分子固定化酵素。
【請求項2】
前記架橋性高分子が、下式(化1)
【化1】
JP0004649644B2_000008t.gif
(式中、m及びnはm:n=0.20:0.80~1.00:0.00を満たし(但し、n=0.00を除く。)、xは1~4、yは1~10である。)で表され、重量平均分子量が7,000~100,000である請求項1に記載の高分子固定化酵素。
【請求項3】
前記架橋反応の際に、ポリアミン化合物を添加して製造された請求項1又は2に記載の高分子固定化酵素。
【請求項4】
前記ポリアミン化合物がトリス(2-アミノエチル)アミンである請求項に記載の高分子固定化酵素。
【請求項5】
前記酵素が加水分解酵素である請求項1~のいずれかに記載の高分子固定化酵素。
【請求項6】
請求項1~に記載の高分子固定化酵素を用いて、ラセミ化合物のいずれか一方の鏡像体を特異的に反応させることからなる光学活性化合物の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、高分子に固定化した酵素及びその製造方法並びに該高分子固定化酵素を用いる光学活性物質の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酵素を用いる合成反応は、非常に高い立体・位置・化学選択性で進行し、一般に危険な試薬を必要とせず、常温常圧下で行われることから安全性が高く、反応後は生物的に分解されることから環境負荷も小さい。しかし酵素は通常高価である上、熱、有機溶媒、酸やアルカリに対して不安定で、さらに種々の酵素阻害剤や蛋白分解酵素によっても影響を受け易い。そこで、酵素の安定化と回収・再使用を目的として、固定化酵素の開発が進められてきた(非特許文献1)。
代表的な酵素の固定化方法と特徴を下記に示す。
1.物理的吸着や共有結合による不溶性担体への固定
この手法は最も広く行われているが、酵素の脱離や構造変化により活性の低下を起こしやすい。
2.酵素分子同士をの多官能性の試薬による架橋
この場合は架橋化の度合いが大きいほど酵素の安定性は増大するが、同時に酵素活性が低下する。
3.包括法
低分子化合物を重合あるいは会合させるか、あるいは可溶状態の高分子化合物を不溶状態に移すことによって生じる高分子ゲル、マイクロカプセル、リポソームや中空繊維に酵素を閉じ込める方法である(特許文献1など)。本法は、共有結合による結合法や架橋化法と比較すると、構造変化による酵素活性の低下は少ないが、酵素の脱離が問題である。
一方、本願発明者らは架橋性官能基を有する両親媒性高分子とマイクロカプセル化法及び高分子の架橋を組み合わせる手法が、金属クラスターやルイス酸の固定化に有効であることを見出している(非特許文献2、3、特許文献2)。ここでいうマイクロカプセル化法とは、担持される物質と高分子を含む溶液に、高分子に対する貧溶媒を加えることで相分離を起こし、高分子中に物質を担持する手法である。
【0003】

【特許文献1】特表2002-506719
【特許文献2】WO2005/085307
【非特許文献1】D. E. De Vos, I. F. J. Vankelecom, P.A. Jacobs Eds. Chiral Catalyst Immobilization and Recycling, Vol 5. pp. 97, Wiley-VCH, Weinheim, 2000
【非特許文献2】J.Am.Chem.Soc. 127, 2125-2135(2005)
【非特許文献3】Synlett 2005, 813-816
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、酵素を活性低下させることなく不溶性の担体に固定する手法、及びこの酵素を用いた光学活性物質の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明者は、マイクロカプセル化法(特許文献2等)を利用して、架橋性の両親媒性高分子と酵素を含む溶液を相分離させ、続いて酵素を含む担体高分子同士を温和な条件下で架橋させることにより、新規な架橋高分子固定化酵素を作成した。得られた高分子固定化酵素を用いてラセミ化合物中のいずれか一方の鏡像異性体との特異的な反応を検討した結果、前記課題を解決することが出来ることを見出し本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、酵素を架橋高分子に固定化させてなる高分子固定化酵素であって、該架橋高分子がポリスチレンをベースとし、その主鎖又はベンゼン環に親水性の架橋性官能基を側鎖に有し、該架橋性官能基としてエポキシ基と水酸基を有し、該架橋性高分子を含む溶液に該酵素を分散させ、その後、該溶液と混和しない該架橋性高分子に対する貧溶媒を加えることで相分離を生じさせ、相分離により酵素が固定化された該架橋性高分子のエポキシ基と水酸基とを架橋させてなることを特徴とする高分子固定化酵素である。


【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、活性低下を伴うことなく高分子担体への酵素の固定化が可能である。本固定化酵素は回収再使用が容易であり、回収後も活性が低下しない。さらに、本固定化酵素はラセミ化合物のうちのいずれか一方の鏡像体と特異的に反応させることが可能であることから、医薬、農薬、天然物等の光学活性中間体の製造用触媒として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の高分子固定化酵素は、酵素がポリマーとの相互作用によりポリマーに固定化された形態を有する。
この酵素としては、セルラーゼ、β-グルコシダーゼ、プロテアーゼ、リパーゼなどの加水分解酵素が挙げられ、このうちリパーゼが好ましい。これら酵素は2種以上組み合わせて固定化させてもよい。
【0008】
このポリマー(架橋高分子)は、架橋性官能基を含む親水性鎖を側鎖に有する架橋性高分子を架橋させたポリマーである。これら側鎖を複数種有していてもよい。
この架橋性高分子は側鎖として、疎水性側鎖又は親水性側鎖のいずれを有していてもよい。この疎水性側鎖又は親水性側鎖は、架橋性官能基を含む親水性鎖を側鎖に有していても、架橋性官能基を含む親水性鎖を側鎖に有していなくともよいが、架橋性官能基を含む親水性鎖を側鎖に有していることが好ましい。更にこの架橋性高分子が、架橋性官能基を含む親水性鎖を有する疎水性側鎖を有していることがより好ましい。
【0009】
疎水性側鎖としては、アリール基、アルキル基などが挙げられ、アリール基が含まれていることが好ましい。
アリール基としては、炭素数が6~10のものが挙げられ、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられ、好ましくはフェニル基である。
尚、本明細書に於いて定義されている炭素数はその基が有する置換基の炭素数を含まないものとする。
アリール基はアルキル基を置換基として有していてもよい。
【0010】
アリール基が有していてもよいアルキル基としては、直鎖状でも分枝状でも或いは環状でもよく、環状の場合には単環でも多環でもよく、通常炭素数1~8、好ましくは1~6のものが挙げられ、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。
アリール基が有していてもよい置換基は、アリール基に通常1~5個、好ましくは1~2個置換していてもよい。
疎水性側鎖としてのアルキル基としては、直鎖状でも分枝状でも或いは環状でもよく、環状の場合には単環でも多環でもよく、通常炭素数1~20、好ましくは1~12のものが挙げられる。
【0011】
親水性側鎖としては、水酸基、アミノ基等の末端基が結合したポリアルキレンオキシド鎖が挙げられる。アルキレンとしてはエチレンやプロピレンが挙げられる。このポリアルキレンオキシド鎖の炭素数としては、2~20程度が適当である。
【0012】
本発明における架橋性官能基、エポキシ基であり、高分子が更に水酸基を有する

【0013】
本発明において「架橋性官能基を含む親水性鎖」としては、上記架橋性官能基に親水性鎖が結合したものをいい、この親水性鎖としては、例えば、-R(OR-、-R(COOR-、又は-R(COOR(OR-(式中、Rは共有結合又は炭素数1~6、好ましくは共有結合又は炭素数が1~2のアルキレン基を表し、Rはそれぞれ独立して炭素数2~4、好ましくは2のアルキレン基を表し、a、b及びdは1~4の整数、cは1又は2を表す。)で表される鎖が好ましい。このような好ましい主鎖として、-CH(OC-や-CO(OC-等が挙げられる。
【0014】
本発明において「架橋性官能基を含む親水性鎖を側鎖に有する架橋性高分子」における側鎖とは、上述の疎水性側鎖に上記架橋性官能基を含む親水性鎖を有するもの、又は親水性側鎖の一部に上記架橋性官能基を含む親水性鎖を有するものなどが挙げられる。
【0015】
一方、高分子、ポリスチレンをベースとし、その主鎖又はベンゼン環に架橋性官能基を有する親水性側鎖を有し、該架橋性官能基としてエポキシ基と水酸基を有す

【0016】
このような高分子として、例えば、下記のものが挙げられる。
【化1】
JP0004649644B2_000002t.gif
m及びnは構成モノマーのモル比を表し、好ましくはm:n=0.20:0.80~1.00:0.00(但し、n=0.00を除く。)である。
xは1~4、好ましくは1~2であり、yは1~10、好ましくは1~4である。
このような高分子の重量平均分子量は、好ましくは7,000~100,000、より好ましくは10,000~80,000である。


【0017】
上記のように架橋性官能基としてエポキシ基を有する高分子を用いた場合、酵素は熱に弱いため温和な加熱でも架橋するように、従来技術で述べた金属触媒の固定の場合に比べて架橋性官能基(エポキシ基)の割合を増やすことが好ましい。エポキシ基を増やすことにより60℃でも架橋が可能となる。
この架橋反応については、さらにポリアミン等の外部架橋剤を添加することにより、より温和な条件の架橋が可能である。
ポリアミン化合物としては、1分子中に2つ以上の1級アミノ基を有する化合物が好ましく、3つ以上の1級アミノ基を有する化合物がより好ましい。このようなポリアミン化合物として、トリス(2-アミノエチル)アミンなどが挙げられる。
【0018】
酵素をこの高分子に固定化させる方法としては、特に限定されないが、例えば上記したごとき構造を有する高分子と酵素とを、a)適当な極性の良溶媒に溶解・分散させた後適当な極性の貧溶媒で凝集させる、又はb)適当な非極性の良溶媒に溶解・分散させた後適当な極性の貧溶媒で凝集させることにより行うことができる。
例えば、架橋性高分子を含む溶液に前記酵素を分散させ、その後、該溶液と混和しない前記架橋性高分子に対する貧溶媒を加えることで相分離を生じさせ、相分離により酵素が固定化された該架橋性高分子を架橋反応に付すことによって、酵素をこの高分子に固定化させることができる。
【0019】
極性の良溶媒としてはテトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、アセトン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)などがあり、非極性の良溶媒としてはトルエン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルムなどが使用できる。極性の貧溶媒としてはメタノール、エタノール、ブタノール、アミルアルコールなどがあり、非極性の貧溶媒としてはヘキサン、ヘプタン、オクタンなどが使用できる。
酵素を固定する際の、良溶媒中のポリマーの濃度は用いる溶媒によっても異なるが、約0.5~50 g/L、特に約0.1~10 g/Lが好ましい。これに添加する酵素量はポリマーに対して10~50%(w/w)が好ましい。この酵素を含むポリマー溶液を相分離させるための貧溶媒の量は、良溶媒に対して0.5~10(v/v)が好ましく、この貧溶媒は10分間から24時間、好ましくは30分間から6時間程度で添加される。相分離して形成された酵素含有架橋性高分子は、濾過、デカンテーション或いは遠心分離によって回収し、さらにポリマーを溶解しない溶媒で洗浄することで単離出来る。
【0020】
このように酵素を固定化した架橋性高分子は、架橋性官能基により架橋することができる。架橋することにより高分子は種々の溶剤に不溶性となり、酵素は高分子網に囲われることにより化学反応等に供しても漏れることがない。
架橋反応の際に、アミノ基や水酸基などエポキシ基と結合する官能基を表面に有する。
本発明における架橋方法としては、温和な加熱による架橋が適している。
この加熱により架橋させる際の温度は、通常50~70℃、好ましくは50~60℃である。
加熱架橋反応させる際の反応時間は、通常0.1~100時間、好ましくは1~50時間である。
【0021】
架橋剤としてポリアミン化合物を用いる場合、その量は、ポリアミンの構造、ポリマーの分子量、反応条件などによって影響されるが、通常架橋性官能基に対して0.01~1.0等量(モル比)、好ましくは0.02-0.5等量になるように添加する。これは目的とする架橋型高分子組成物に期待する物性(例えば柔軟性、膨潤性など)によっても適宜増減させてもよい。
【0022】
好ましい形態として、高分子固定化酵素を担体に固定することもできる。ガラス、シリカゲル、樹脂などの担体表面の架橋性官能基(例えば、水酸基やアミノ基など)と酵素を担持した高分子表面の架橋性官能基とを架橋反応させると、本発明の高分子固定化酵素は担体表面に強固に固定され、より再使用が簡便な酵素固定化反応容器として使用できる。
このようにして得られた高分子固定化酵素は回収再使用が容易であり、再使用時の活性低下も少なく、種々の加水分解酵素が関与する反応に対して高い活性を示す。この高分子固定化酵素はアシル化反応や加水分解反応に使用でき、特にラセミ化合物(例えば、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、エステル基、アミド基等を有するラセミ化合物)のいずれか一方の鏡像体を特異的に反応させる工程を含む光学活性化合物の製造などに有用である。
このような光学活性化合物の製造方法としては、例えば、ラセミアルコールの一方の鏡像体のみをアセチル化する、ラセミ体のカルボン酸のエステルやカルボン酸のアミドの一方の鏡像体のみを加水分解する、ラセミ体のアミノ酸の一方の鏡像体のアミノ基のみをアセチル化する等が挙げられる。
【実施例】
【0023】
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。
本実施例において、1H NMRと 13C NMRはJNM-LA400を使用しCDCl3 を溶媒とし、テトラメチルシラン(δ=0、1H NMR)またはCDCl3(δ=77.0、13C NMR)を内部標準物質として測定した。HPLCの測定にはSHIMADZU LC-10AT、SHIMADZU SPD-10A及びSHIMADZU C-R6A Cを使用した。調整用薄層クロマトグラフィーにはWakogel B-5Fを使用した。溶媒は定法に従い蒸留したものを使用した。
【0024】
製造例1
水素化ナトリウム(40 mmol)を含むテトラヒドロフラン(100 ml)の懸濁液に、テトラエチレングリコール(160 mmol)のテトラヒドロフラン(50 ml)溶液を0℃で加えた。室温で1時間攪拌後、4-クロロメチルスチレン(40 mmol)を加えさらに24時間攪拌した。氷冷下でエーテル、続いて飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、有機相を分離した。水相をエーテルで2回抽出し、有機相を併せて無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、溶媒を減圧留去し残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより下式の4-ビニルベンジルテトラエチレングリコールエーテルを得た。収量7.47g(60%)。
【化2】
JP0004649644B2_000003t.gif
1H NMR(CDCl3)δ=3.58-3.72(m, 16H), 4.54(s, 2H), 5.23(d, 1H, J=11.0 Hz), 5.73(d, 1H, J=17.9 Hz), 6.70(dd, 1H, J=17.4, 11.0 Hz), 7.29(d, 2H, J=8.2 Hz), 7.38(d, 2H, J=7.8 Hz); 13C NMR(CDCl3)δ=61.8, 69.4, 70.4-72.5(6x), 73.0, 113.8, 126.2, 128.0, 136.6, 137.0, 137.8.
【0025】
製造例2
水酸化ナトリウム(60%, 4.00g, 100mmol)を石油エーテルにて3回洗浄した後減圧下で乾燥した。そこにジメチルホルムアミド(200ml)を加えた後、氷浴にて冷却した。次いでグリシドール(6.6mL, 99.5mmol)を攪拌下にゆっくり加えた。反応混合物を室温で1時間攪拌した後、4-ビニルベンジルクロリド(7mL, 49.7mmol)及びヨウ化テトラ-n-ブチルアンモニウム(1.84g, 4.98mmol)を加え、さらに5時間攪拌した。反応混合物を氷冷しジエチルエーテルで希釈した後、飽和塩化アンモニウム水溶液をゆっくり加えて反応を停止した。有機層を分離した後、水層をジエチルエーテルで2回抽出した。有機層を合わせて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。これを濾過、減圧濃縮した後、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、4-ビニルベンジルグリシジルエーテル(7.00g, 74%)を得た。反応式を下式に示す。
【化3】
JP0004649644B2_000004t.gif
1H NMR(CDCl3)δ=2.6O(dd, 1H, J=2.8, 4.8 Hz), 2.78(dd, 1H, J=4.0, 4.8 Hz), 3,17(m, 1H), 3.42(dd, 1H, J=5.6,. 11.2 Hz), 3.74(dd, 1H, J=2.8, 11.2 Hz), 4.56(dd, 2, J=12.0, 22.4 Hz), 5.23(d, 1H, J=10.8 Hz), 5.74(d, 1H,. J=17.6 Hz), 6.70(dd, 1H, J=10.8, 17.6 Hz), 7.3O(d, 2H, J=8.0 Hz). 7.39(d, 2H, J=8.O Hz); 13C NMR(CDCl3)δ=40.2, 50.7, 70.7, 72.9, 113.8 126.2, 127.9, 136.4, 137.O, 137.4.
【0026】
製造例3
製造例1で製造した4-ビニルベンジルテトラエチレングリコールエーテル(2.33 g, 7.5 mmol)、製造例2で製造した4-ビニルベンジルグリシジルエーテル(1.43 g, 7.5 mmol)及び重合開始剤としてV-70(和光純薬、[2,2'-azobis(2,4-dimethyl-4-methoxyvarelo nitrille)]、69.5 mg, 0.225 mmol)をクロロホルム(4.0 mL)に溶解し、45℃で48時間攪拌した。室温に戻した後、ゆっくりとジエチルエーテルに注いだ。生成した不溶物を濾集、エーテルで洗浄した。得られた粗ポリマーを塩化メチレンに溶解しエーテルに注ぐ再沈殿を3回繰り返した後、減圧乾燥することで下式の高分子を得た(2.74 g, 収率73%)。
【化4】
JP0004649644B2_000005t.gif
高分子中の構成モノマー成分比は 1H-NMR により決定した(x/y=54/46)。分子量はGPCにより決定した(Mw=27,905;Mn=16,659;Mw/Mn=1.68)。
【0027】
実施例1
製造例3で得た高分子(71.4 mg)を塩化メチレン(12 mL)に室温で溶解し、攪拌しながらリパーゼ(candida rugosa(47.6 mg))を加えた。酵素が十分分散した後、ヘキサン(80 ml)をゆっくり滴下して相分離を起こし、溶媒をデカンテーションにより除いた。不溶物をヘキサンで数回洗浄した後、減圧乾燥してマイクロカプセル化リパーゼを得た(108.0 mg)。元素分析の結果、窒素を含有していたことから、酵素の固定化を確認した。
【0028】
実施例2
実施例1で調整したマイクロカプセル化リパーゼ(50.0 mg)をヘキサン中で60℃、24時間加熱した。デカンテーションでヘキサンを除去し、減圧乾燥して架橋高分子固定化リパーゼ(A)を得た(18.6 mg)。
【0029】
実施例3
製造例3で得た高分子(360 mg)を塩化メチレン(15 mL)に室温で溶解し、攪拌しながらリパーゼ(candida antarctica(100 mg))を加えた。酵素が十分分散した後、ヘキサン(50 ml)をゆっくり滴下して相分離を起こし、溶媒をデカンテーションにより除いた。不溶物をヘキサンで数回洗浄した後、減圧乾燥してマイクロカプセル化リパーゼを得た(410 mg)。
【0030】
実施例4
実施例3で調整したマイクロカプセル化リパーゼ(250 mg)とトリス(2-アミノエチル)アミン(5 mg)をヘキサン中で60℃、12時間加熱した。デカンテーションでヘキサンを除去し、酢酸エチルで洗浄後、減圧乾燥して架橋高分子固定化リパーゼ(B)を得た(191 mg)。
【0031】
実施例5
実施例4で製造した固定化リパーゼ(B)(191 mg)、ラセミ体の1-フェニルエチルアルコール(アルドリッチ社製、61.6 mg, 0.5 mmol)及び酢酸ビニル(215 mg, 2.5 mmol)をジエチルエーテル(3 ml)に懸濁し25℃で24時間攪拌した。酢酸エチル(5 ml)を加え、不溶物を酢酸エチルによるデカンテーションで数回洗浄した後、有機相を減圧濃縮した。残渣を調製用薄層クロマトグラフィーで精製した結果、(R)-1-フェニルエチルアセテート(収率47%、99%<ee)及び(S)-1-フェネチルアルコール(収率46%、99%ee)を得た。反応式を下式に示す。JP0004649644B2_000006t.gif
生成物の光学純度はキラルカラムを用いるHPLCにより決定した。回収した固定化リパーゼを用いて同様の反応を繰り返した結果、5回目でも選択性の低下を伴うことなく光学分割が実施できた(表1)。
(R)-1-フェニルエチルアセテート:1H NMR(CDCl3)δ=1.50(d, 3H, J=5.9 Hz), 2.07(s, 3H), 5.88(q, 1H, J=6.4 Hz), 7.25-7.36(m, 5H); 13C NMR(CDCl3)δ=21.3, 22.2, 72.3, 126.1, 127.8, 128.5, 141.6, 170.3. HPLC(CHIRALCEL OB, iPrOH/hexane =1/400). tR=13.4(R)and 15.6(S)min.
(S)-1-フェニルエチルアルコール:1H NMR(CDCl3)δ=1.54(d, 3H, J=7.3 Hz), 1.87(s, 1H), 4.89(q, 1H, J=6.4 Hz), 7.25-7.39(m, 5H); 13C NMR(CDCl3)δ=25.1, 70.4, 125.3, 127.4, 128.5, 145.8. HPLC(CHIRALCEL OB, iPrOH/hexane=1/9). tR=6.1(S)and 8.1(R)min.
【0032】
実施例6~11
実施例5と同様にして、種々のアルコールをアセチル化した。結果を表1に示す。
【表1】
JP0004649644B2_000007t.gif

【0033】
アセチル化された化合物及び回収されたアルコールの物性値及びHPLCの保持時間を以下に示す。
1-(2-Naphthyl)ethyl acetate(実施例6のエステル): 1H NMR(CDCl3)δ=1.62(d, 3H, J=6.9 Hz), 2.10(s, 3H), 6.05(q, 1H, J=6.4 Hz), 7.45-7.50(m, 3H), 7.80-7.85(m, 4H); 13C NMR(CDCl3)δ=21.4, 22.2, 72.4, 124.1, 125.0, 126.0, 126.2, 127.6, 128.0, 128.3, 133.0, 133.1, 139.0, 170.3. HPLC(CHIRALCEL OD-H, iPrOH/hexane=1/30). tR=6.2 and 7.3 min.
α-Methyl-2-naphthalenemethanol(実施例6の回収アルコール): 1H NMR(CDCl3)δ=1.58(d, 3H, J=6.4 Hz), 1.86(s, 1H), 5.07(q, 1H, J=6.4 Hz), 7.44-7.52(m, 3H), 7.81-7.85(m, 4H); 13C NMR(CDCl3)δ=25.1, 70.5, 92.5, 123.8, 125.8, 126.1, 127.7, 128.3, 129.8, 132.9, 133.3, 143.2.
α-Methyl-4-biphenylmethanol acetate(実施例7のエステル): δ=1.58(d, 3H, J=6.4 Hz), 2.10(s, 3H), 5.93(q, 1H, J=6.4 Hz), 7.33-7.46(m, 5H), 7.58(d, 4H, J=7.8 Hz); 13C NMR(CDCl3)δ=21.4, 22.1, 72.1, 126.6, 127.1, 127.3, 127.3, 128.8, 140.7, 140.8, 140.9, 170.4. HPLC(CHIRALCEL OD-H, iPrOH/hexane=1/400). tR=20.0 and 28.6 min.
α-Methyl-4-biphenylmethanol(実施例7の回収アルコール): 1H NMR(CDCl3)δ=1.54(d, 3H, J=6.4 Hz), 1.83(s, 1H), 4.96(q, 1H, J=6.4 Hz), 7.33-7.46(m, 5H), 7.59(d, 4H, J=6.4 Hz); 13C NMR(CDCl3)δ=25.1, 70.2, 125.8, 127.1, 127.2, 128.7, 140.5, 140.8, 144.8. HPLC(CHIRALCEL OD-H, iPrOH/hexane=1/30). tR=20.2 and 22.0 min.
1, 2, 3, 4-Tetrahydro-1-naphthalenol acetate(実施例8のエステル): 1H NMR(CDCl3)δ=1.78-2.01(m, 4H), 2.02(s, 3H), 2.71-2.90(m, 2H), 6.00(t, 1H, J=8.7 Hz), 7.12-7.28(m, 4H); 13C NMR(CDCl3)δ=18.8, 21.5, 29.0, 29.1, 70.0, 126.1, 128.1, 129.1, 129.4, 134.5, 137.9, 170.8. HPLC(CHIRALCEL OD-H, iPrOH/hexane=1/100). tR=5.8 and 6.2 min.
1, 2, 3, 4-Tetrahydro-1-naphthalenol(実施例8の回収アルコール): 1H NMR(CDCl3)δ=1.66(s, 1H), 1.74-2.01(m, 4H)2.69-2.86(m, 2H), 4.78(t, 1H, J=9.2 Hz), 7.09-7.44(m, 4H); 13C NMR(CDCl3)δ=18.8, 29.2, 32.3, 68.2, 126.2, 127.6, 128.6, 129.0, 137.1, 138.8. HPLC(CHIRALCEL OD-H, iPrOH/hexane=1/150). tR=24.4 and 26.4 min.
Indanyl acetate(実施例9のエステル): 1H NMR(CDCl3)1H NMR(CDCl3)δ=2.06(s, 3H), 2.04-2.13(m, 1H), 2.45-2.54(m, 1H), 2.84-2.91(m, 1H), 3.07-3.15(m, 1H), 6.19(m, 1H), 7.20-7.42(m, 4H); 13C NMR(CDCl3)δ=21.3, 30.2, 32.3, 78.3, 124.8, 125.6, 126.7, 128.9, 141.0, 144.4, 171.1. HPLC(CHIRALCEL OD-H, iPrOH/hexane=1/400). tR=9.2 and 10.2 min.
Indanol(実施例9の回収アルコール): 1H NMR(CDCl3)1H NMR(CDCl3)δ=1.84-1.92(m, 1H), 2.38-2.47(m, 1H), 2.71-2.79(m, 1H), 2.96-3.03(m, 1H), 5.18(t, 1H, J=6.0 Hz), 7.16-7.36(m, 4H); 13C NMR(CDCl3)δ=29.8, 36.0, 76.5, 124.2, 124.9, 126.7, 128.3, 143.3, 145.0.
1-(4-Methoxyphenyl)ethyl acetate(実施例10のエステル): 1H NMR(CDCl3)δ=1.51(d, 3H, J=6.4 Hz), 2.04(s, 3H), 3.80(s, 3H), 5.84(q, 1H, J=6.4 Hz), 6.87(d, 2H, J=8.7 Hz), 7.29(d, 2H, J=8.7 Hz); 13C NMR(CDCl3)δ=21.4, 21.9, 55.3, 72.0, 113.8, 127.6, 133.7, 159.2, 170.4. HPLC(CHIRALCEL OB, iPrOH/hexane=1/400). tR=15.7 and 16.8 min.
1-(4-Methoxyphenyl)ethanol(実施例10の回収アルコール): 1H NMR(CDCl3)δ=1.48(d, 3H, J=6.4 Hz), 3.80(s, 3H), 4.85(q, 1H, J=6.4 Hz), 6.88(d, 2H, J=8.3 Hz), 7.30(d, 2H, J=8.7 Hz); 13C NMR(CDCl3)δ=25.0, 55.3, 70.0, 113.8, 126.6, 138.0, 159.0.
1-(4-Bromophenyl)ethyl acetate(実施例11のエステル): 1H NMR(CDCl3)δ=1.51(d, 3H, J=6.4 Hz), 2.07(s, 3H), 5.82(q, 1H, J=6.8 Hz), 7.22(d, 2H, J=8.3 Hz), 7.47(d, 2H, J=8.2 Hz); 13C NMR(CDCl3)δ=21.3, 22.1, 71. 6, 76.6, 121.7, 127.8, 131.6, 140.7, 170.2. HPLC(CHIRALCEL OB, iPrOH/hexane=1/19). tR=8.8 and 10.0 min.
1-(4-Bromophenyl)ethanol(実施例11の回収アルコール): 1H NMR(CDCl3)δ=1.46(d, 3H, J=6.4 Hz), 4.86(q, 1H, J=6.4 Hz), 7.24(d, 2H, J=8.2 Hz), 7.46(d, 2H, J=6.4 Hz); 13C NMR(CDCl3)δ=25.2, 69.8, 121.1, 127.1, 131.5, 144.7.