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明細書 :摩擦緩和材、摩擦緩和装置及び摩擦緩和方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4679156号 (P4679156)
公開番号 特開2006-188617 (P2006-188617A)
登録日 平成23年2月10日(2011.2.10)
発行日 平成23年4月27日(2011.4.27)
公開日 平成18年7月20日(2006.7.20)
発明の名称または考案の名称 摩擦緩和材、摩擦緩和装置及び摩擦緩和方法
国際特許分類 C10M 103/02        (2006.01)
C10M 103/04        (2006.01)
C10M 177/00        (2006.01)
F16N  15/02        (2006.01)
C10N  10/16        (2006.01)
C10N  20/06        (2006.01)
C10N  30/06        (2006.01)
C10N  40/02        (2006.01)
C10N  50/08        (2006.01)
C10N  70/00        (2006.01)
FI C10M 103/02 Z
C10M 103/04
C10M 177/00
F16N 15/02
C10N 10:16
C10N 20:06 A
C10N 30:06
C10N 40:02
C10N 50:08
C10N 70:00
請求項の数または発明の数 3
全頁数 10
出願番号 特願2005-002121 (P2005-002121)
出願日 平成17年1月7日(2005.1.7)
審査請求日 平成19年4月11日(2007.4.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】伴 巧
【氏名】石田 誠
【氏名】青木 宣頼
個別代理人の代理人 【識別番号】100104064、【弁理士】、【氏名又は名称】大熊 岳人
審査官 【審査官】品川 陽子
参考文献・文献 特開昭51-082571(JP,A)
特開昭60-250054(JP,A)
特開平06-264079(JP,A)
特開昭60-135489(JP,A)
特開平10-273047(JP,A)
特許第2876551(JP,B2)
特開2001-151110(JP,A)
調査した分野 C10M 103/02
C10N 20/06
C10N 40/02
C10N 50/08
特許請求の範囲 【請求項1】
接触部と被接触部との間の摩擦抵抗を緩和させる摩擦緩和材であって、
前記摩擦抵抗を緩和させる粒子直径100~400μmのカーボン粉末の基材と、
前記基材の平均粒径の5%未満の厚さでありこの基材の表面を無電解めっき法によって被覆するニッケルめっき層とを備え、
急曲線を通過する鉄道車両の車輪が回転接触するレールに噴射されて、この車輪とこのレールとの間で加圧されこれらの間の摩擦抵抗を緩和させること、
を特徴とする摩擦緩和材。
【請求項2】
接触部と被接触部との間の摩擦抵抗を緩和させる摩擦緩和装置であって、
請求項1に記載の摩擦緩和材を収容する収容部と、
前記接触部と前記被接触部との間に前記摩擦緩和材を噴射する噴射部と、
前記収容部から前記噴射部に前記摩擦緩和材を送出する送出経路と、
を備える摩擦緩和装置。
【請求項3】
接触部と被接触部との間の摩擦抵抗を緩和させる摩擦緩和方法であって、
前記摩擦抵抗を緩和させる粒子直径100~400μmのカーボン粉末の基材をこの基材の平均粒径の5%未満の厚さのニッケルめっき層によって被覆した摩擦緩和材を、急曲線を通過する鉄道車両の車輪が回転接触するレールに噴射して、このレールに衝突させてこの表面を粗くし、
前記車輪と前記レールとの間で前記摩擦緩和材が加圧されることによって、この車輪とこのレールとの間の摩擦抵抗を緩和させるとともに、この車輪及び/又はこのレールの表面に前記基材を残留させること、
を特徴とする摩擦緩和方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、接触部と被接触部との間の摩擦を緩和させる摩擦緩和材、摩擦緩和装置及び摩擦緩和方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両は、急曲線を通過するときに曲線通過性能に応じた横圧を伴って走行し、この横圧は曲線の内軌及び外軌のきしり音(摩擦音)の原因になるとともに、内軌側のレール頭頂面に発生する波状摩耗の原因にもなる。一般に、このような過大な横圧や波状摩耗を低減するために、内軌側のレール頭頂面又は車輪踏面に鉱油やグリースなどの潤滑剤を塗布している。このような車輪とレールとの間の潤滑に使用される鉱油やグリースは、潤滑効果が過大であるため車輪の空転や滑走を誘発する。このため、近年、安定した摩擦係数が確保できる固形の潤滑剤(固体潤滑剤)を摩擦調整剤として使用している。このような摩擦調整剤は、レール面上にそのまま散布しても風で飛ばされてしまうため、溶液に分散させてからレール面上に噴霧している。例えば、従来の摩擦調整剤は、二硫化モリブデンなどの固体潤滑剤と、炭酸カルシウムやケイ酸マグネシウムなどの摩擦調整剤と、ナトリウムモンモリロナイトなどの結合材などを水媒体中に含む(例えば、特許文献1参照)。このような従来の摩擦調整剤は、液体状で速乾性がありレール頭頂面に付着すると時間の経過とともに乾燥し、後続の列車がこの急曲線を通過するときに発生する横圧を低減させる。
【0003】

【特許文献1】特表2001-501994号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の摩擦調整剤は、固体潤滑剤などを水媒体中に含む速乾性の液体であるためレール頭頂面に塗布されてから乾燥するまで待つ必要があり、乾燥前に後続の列車が通過するとレール頭頂面に付着した水によって摩擦係数が小さくなりすぎてしまう問題があった。また、従来の摩擦調整剤は、固体潤滑剤として高価な二硫化モリブデンを使用しているためコストが高くなってしまう問題があった。
【0005】
この発明の課題は、安価な材料によってレールと車輪との間の摩擦抵抗を緩和することができるとともに、効果の持続性に優れ安定した摩擦係数を確保することができる摩擦緩和材、摩擦緩和装置及び摩擦緩和方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、接触部(1d)と被接触部(4d)との間の摩擦抵抗を緩和させる摩擦緩和材であって、前記摩擦抵抗を緩和させる粒子直径100~400μmのカーボン粉末の基材(C1)と、前記基材の平均粒径の5%未満の厚さでありこの基材の表面を無電解めっき法によって被覆するニッケルめっき層(C2)とを備え、急曲線を通過する鉄道車両の車輪が回転接触するレールに噴射されて、この車輪とこのレールとの間で加圧されこれらの間の摩擦抵抗を緩和させることを特徴とする摩擦緩和材(C)である。
【0007】
請求項2の発明は、接触部(1d)と被接触部(4d)との間の摩擦抵抗を緩和させる摩擦緩和装置であって、請求項1に記載の摩擦緩和材(C)を収容する収容部(5f)と、前記接触部と前記被接触部との間に前記摩擦緩和材を噴射する噴射部(5d)と、前記収容部から前記噴射部に前記摩擦緩和材を送出する送出経路(5c)とを備える摩擦緩和装置(5,6)である。
【0008】
請求項3の発明は、接触部(1d)と被接触部(4d)との間の摩擦抵抗を緩和させる摩擦緩和方法であって、前記摩擦抵抗を緩和させる粒子直径100~400μmのカーボン粉末の基材(C1)をこの基材の平均粒径の5%未満の厚さのニッケルめっき層(C2によって被覆した摩擦緩和材(C)を、急曲線を通過する鉄道車両の車輪が回転接触するレールに噴射して、このレールに衝突させてこの表面を粗くし、前記車輪と前記レールとの間で前記摩擦緩和材が加圧されることによって、この車輪とこのレールとの間の摩擦抵抗を緩和させるとともに、この車輪及び/又はこのレールの表面に前記基材を残留させることを特徴とする摩擦緩和方法である。
【発明の効果】
【0013】
この発明によると、安価な材料によってレールと車輪との間の摩擦抵抗を緩和することができるとともに、効果の持続性に優れ安定した摩擦係数を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、この発明の実施形態に係る摩擦緩和装置を備える車両が急曲線を通過するときの車輪とレールとの状態を示す平面図である。図2は、この発明の実施形態に係る摩擦緩和装置を備える車両が急曲線を通過するときの車輪とレールとの状態を示す正面図であり、図2(A)は内軌側のレールと車輪との接触状態を示す正面図であり、図2(B)は外軌側のレールと車輪との接触状態を示す正面図である。図3は、この発明の実施形態に係る摩擦緩和装置を概略的に示す斜視図である。図4は、この発明の実施形態に係る摩擦緩和装置を概略的に示す構成図である。
【0015】
図1に示す線路1は、車両2が走行する通路(軌道)である。線路1は、車輪4a,4bを案内する一対のレール1a,1bなどから構成されており、レール1aは急曲線の内軌でありレール1bは急曲線の外軌である。レール1a,1bは、図2に示すように、車輪4a,4bを直接支持するレール頭頂面(頭部上面)1cと、このレール頭頂面1cと連続する内側頭側面1dとを備えている。図3に示すように、レール1a,1bと車輪4a,4bとの接触点Sには垂直力W及び接線力Fが作用し、垂直力Wに対する接線力Fの比例係数(接線力係数(トラクション係数))F/Wが摩擦係数でありこの摩擦係数の最大値が粘着係数である。図1に示す横圧Qは、レール1aとの間に作用する力のうち車軸方向に作用する力である。
【0016】
図1に示す車両2は、電車や気動車などの鉄道車両である。車両2は、図1に示す車体3と、台車4と、摩擦緩和装置5,6と、図3及び図4に示す気体噴射部7と、管路8と、曲線検出部9と、速度検出部10と、制御装置11などを備えている。車体3は、乗客を積載し輸送するための構造物である。台車4は、車体3を支持して走行する装置であり、一対のレール1a,1bとそれぞれ回転接触する一対の車輪4a,4bと、車体3に回転自在に連結されるけん引装置4eなどを備えている。車輪4a,4bは、図2に示すように、レール1a,1bのレール頭頂面1cと接触して摩擦抵抗を受ける車輪踏面4cと、鉄道車両が急曲線を通過するときに、外軌側のレール1bの内側頭側面1dと接触して摩擦抵抗を受けるフランジ面4dとを備えている。
【0017】
図1に示す摩擦緩和装置5,6は、レール1a,1bと車輪4a,4bとの間の摩擦抵抗を緩和する装置である。摩擦緩和装置5,6は、図1、図3及び図4に示すように、車両2が急曲線を通過するときに内軌側のレール1aと車輪4aとの間に摩擦緩和材Cを噴射してこれらの間の摩擦抵抗を緩和させる。摩擦緩和装置5,6は、先頭の車両2の進行方向前側の台車4の車輪4a,4bとそれぞれ対応して設置されている。摩擦緩和装置5,6は、いずれも同一構造であり、以下ではレール1aと車輪4aとの間の摩擦抵抗を緩和する摩擦緩和装置5側について説明し、摩擦緩和装置5側の部分に対応する摩擦緩和装置6側の部分については対応する符号を付して詳細な説明を省略する。摩擦緩和装置5は、図3及び図4に示すように、管路5aと、収容装置5bと、管路5cと、噴射口5dと、電磁弁5eなどを備えている。
【0018】
管路5aは、圧縮気体を供給する配管であり、上流側が管路8に接続されており、下流側が収容装置5bに接続されている。収容装置5bは、レール1aと車輪4aとの間の摩擦抵抗を緩和する摩擦緩和材Cを収容する装置である。収容装置5bは、図4に示すように、収容部5fと、管路5gと、オリフィス5hと、噴射孔5iと、吸引管路5jとを備えている。収容部5fは、摩擦緩和材Cを収容する容器である。管路5gは、収容部5fを貫通して圧縮気体が流れる配管であり、管路5gの上流側は管路5aに接続されており管路5gの下流側は管路5cに接続されている。噴射孔5iは、管路5g内を流れる圧縮気体の一部を収容部5f内に噴出させる貫通孔である。管路5cは、レール1aと車輪4aとの間に摩擦緩和材Cを供給するために、収容部5fから摩擦緩和材Cを送出する配管であり、下流側が噴射口5dに接続されている。噴射口5dは、レール1aと車輪4aとの間に摩擦緩和材Cを噴射する噴射ノズルであり、例えば接触点Sの直前の内側頭側面1dに向けて摩擦緩和材Cを噴射する。電磁弁5eは、管路5aを開閉する圧力調整弁でありオリフィス5hの上流側に設置されており、制御装置19が出力する開閉信号に基づいて管路5aを開閉して摩擦調整剤Cの噴射量を可変する。
【0019】
図3及び図4に示す気体噴射部7は、気体を噴射する装置であり、圧縮空気などの圧縮気体を管路8内に噴射するコンプレッサなどである。管路8は、圧縮気体を供給する配管であり、上流側が気体噴射部7に接続されており、下流側が2つに分岐して摩擦緩和装置5側の管路5aと摩擦緩和装置6側の管路6aとにそれぞれ接続されている。
【0020】
曲線検出部9は、車両2が通過する曲線を検出する装置である。曲線検出部9は、例えば、走行地点情報を記憶する地上側タグを車上側検知部によって検知して車両2の走行距離とこの走行地点情報とに基づいて急曲線とその方向を検出したり、図1に示すように台車4がけん引装置4eを中心として回転する回転角θを近接スイッチや加速度センサなどによって検知したりして、急曲線及びこの急曲線の方向を検出する。速度検出部10は、車両2の速度を検出する装置であり、車輪4a,4bの回転によって発生するパルス信号に基づいて車両2の速度を検出する速度発電機などである。
【0021】
制御装置11は、曲線検出部9及び速度検出部10の検出結果に基づいて電磁弁5e,6eの開閉動作及び気体噴射部7の噴射動作を制御する装置である。制御装置11は、曲線検出部9の検出結果に基づいて回転角θが所定角度を超えており左右いずれの方向の急曲線を車両2が通過していると判断したときには、電磁弁5eに管路5aを開放させ電磁弁6eに管路aを閉鎖させて気体噴射部7を動作させる。制御装置11は、例えば、車両2が5~60km/hの範囲内であるようなときには曲線半径にかかわらず、電磁弁5e,6e及び気体噴射部7を動作制御して摩擦緩和材Cを噴射させる。一方、制御装置11は、例えば、車両2が60km/hを超えるような高速走行時や5km/hを下回るような低速走行時には、曲線半径にかかわらず電磁弁5e,6e及び気体噴射部7を動作制御して摩擦緩和材Cを噴射させない。
【0022】
図5は、この発明の実施形態に係る摩擦緩和材を模式的に示す断面図である。
摩擦緩和材Cは、接触部と被接触部との間の摩擦抵抗を緩和させる材料である。摩擦緩和材Cは、図5に示すように、基材(母材)C1と被覆層C2とから構成されている。摩擦緩和材Cは、例えば、レール1a及び/又は車輪4aに噴射されてこれらの間に生じる過度の摩擦力を緩和させる。摩擦緩和材Cは、対象物に噴射したときにこの対象物の表面に容易に付着し、風によって舞上らず取扱が容易な大きさに形成されている。摩擦緩和材Cは、図1に示すように、急曲線通過時に生ずるすべり率の範囲ではトラクション係数が小さくなって横圧Qの発生を抑制し、車両2の加速又は減速によって空転又は滑走に至る巨視すべりが発生した場合には瞬時に高いトラクション係数に移行するような材料が望ましい。ここで、すべり率とは、車両2の走行速度と滑走又は空転時の車輪4a,4bの周速度との差を車両2の走行速度で除した値である。トラクション係数とは、レール1aに作用する車輪4aの円周の接線方向の力(図4に示す接線力F)を、車輪4aからレール1aに作用する力(図4に示す垂直力W)で除した値(接線力係数)であり、ブレーキ力や駆動力の伝達の大きさを表す。
【0023】
基材C1は、摩擦抵抗を緩和させるカーボン系材料であり、摩擦係数を略一定範囲内に低減する摩擦安定材として機能する。基材C1は、例えば、カーボン粉末やカーボン粒子などである。基材C1には、例えば、トロリ線との摺動部に取り付けられたパンタグラフのカーボン系すり板や、脱臭剤などに使用される活性炭などのようにカーボン(炭素)を主原料とするものを再使用することができる。基材C1は、カーボン粉末の場合には粒子直径が100~400μm程度で形成されている。
【0024】
被覆層C2は、基材C1を被覆する層である。被覆層C2は、基材C1の表面を保護する機能と、内側頭側面1d及び/又はフランジ面4dに摩擦緩和材Cが噴射され衝突したときにこれらの表面を粗くして基材C1の残留性を向上させる機能とを有する。被覆層C2の厚さは、基材C1の平均粒径の5%以上であると摩擦特性に影響を与え摩擦緩和の効果が低減するため、基材C1の平均粒径の5%未満であることが好ましい。被覆層C2は、基材C1よりも硬度が高く延性があり耐摩耗性の硬質めっき層である。被覆層C2は、例えば、レール1a及び/又は車輪4aに付着したときにこれらの導電性を阻害することなく、基材C1とともにある程度の摩擦緩和機能を有するような硬質めっき層であることが好ましい。このような硬質めっき層としては、カーボン粉末やカーボン粒子に無電解めっき法によって形成されたニッケルめっき層などが好ましい。ニッケルめっき層の場合には、レール1aや車輪4aとの間で金属間化合物を容易に形成することが期待され、粒界割れを起こす危険性がなく特に好ましい。
【0025】
次に、この発明の実施形態に係る摩擦緩和装置の動作を説明する。
以下では、図1に示すように、左方向の急曲線を車両2が通過する場合を例に挙げて説明する。
図1に示すように、車両2が線路1を走行すると振動して、図4に示す収容部5f内の隣接する摩擦緩和材C同士が互いに擦れ合う。図5に示すように、基材C1の表面が硬質の被覆層C2によって保護され被覆されているため、基材C1が摩耗するのを防止する。図3及び図4に示す曲線検出部9が急曲線とその方向を検出すると、この曲線検出部9の検出結果に基づいて制御装置11が電磁弁5eに管路5aを開放させ電磁弁6eに管路6aを閉鎖させる。制御装置11が気体噴射部7を動作させると気体噴射部7が圧縮気体を管路8に供給する。その結果、管路5gに管路5aから圧縮気体が流入してオリフィス5hを通過する。オリフィス5hを通過した高圧の圧縮気体が管路5gを流れると、収容部5f内に開口する吸引管路5jが管路5gに接続されているため、この収容部5f内が負圧になる。同時に、オリフィス5hを通過した高圧の圧縮気体が噴射孔5iから収容部5f内に流入するため、収容部5f内の摩擦緩和材Cが吸引管路5jから吸引されて、摩擦緩和材Cが圧縮気体とともに管路5cに流入し噴射口5dから噴射する。
【0026】
次に、この発明の実施形態に係る摩擦緩和方法について説明する。
図6は、この発明の実施形態に係る摩擦緩和方法を説明するための模式図であり、図6(A)は摩擦緩和材を噴射している状態を示し、図6(B)はレールと車輪との間で摩擦緩和材が加圧された状態を示す。
図4に示す接触点Sの直前の内側頭側面1dに摩擦緩和材Cが衝突すると、基材C1の表面が硬質の被覆層C2によって被覆されているため、図6(A)に示すように内側頭側面1dに微細な凹凸を形成しこの内側頭側面1dを粗くする。同時に、被覆層C2が潰れて内側頭側面1dに密着したり、被覆層C2の一部が砕けて基材C1が内側頭側面1dに直接密着したりする。次に、図6(B)に示すように、内側頭側面1dとフランジ面4dとの間に摩擦緩和材Cが挟み込まれて、これらの間で摩擦緩和材Cが加圧される。このとき、車輪4aとレール1aとの接触圧力が大きいため、摩擦緩和材Cが圧縮せん断応力を受けて破壊する。その結果、図1に示すレール1aと車輪4aとの間に発生する横圧Qが低減するため、内側頭側面1dとフランジ面4dとの間に生じる過度の摩擦抵抗が緩和され、急曲線部におけるレール1aの摩耗が防止される。また、表面に微細な凹凸が形成され表面粗さが形成された内側頭側面1dに摩擦緩和材Cが広がり、内側頭側面1d及び/又はフランジ面4dに摩擦緩和材Cが残留する。その結果、摩擦緩和材Cによる摩擦係数の緩和機能が長期間にわたり持続し、車両2が通過した後に急曲線を後続列車が通過するときにも残留する摩擦緩和材Cによって摩擦緩和の効果が維持される。
【0027】
この発明の実施形態に係る摩擦緩和材、摩擦緩和装置及び摩擦緩和方法には、以下に記載するような効果がある。
(1) この実施形態では、内側頭側面1dとフランジ面4dとの間の摩擦抵抗を緩和させるカーボン系材料を被覆層C2が被覆する。例えば、摩擦緩和材Cが無機物で硬度の高いカーボン系材料のみからなる場合には、車両2が線路1を走行するときに発生する振動などによって、カーボン系材料が収容部5f内で互いに擦れ合って割れ微粉が発生する可能性がある。この実施形態では、カーボン系材料からなる基材C1を被覆層C2が保護するため、摩擦緩和材Cが収容部5f内で擦れ合ったときに、基材C1が微粉化するのを防止することができる。
【0028】
(2) この実施形態では、被覆層C2が硬質めっき層である。このため、摩擦緩和材Cを内側頭側面1dに噴射して内側頭側面1dに被覆層C2を衝突させたときに、内側頭側面1dに適度な表面粗さを形成して、内側頭側面1dへの摩擦緩和材Cの残留性を向上させることができる。また、従来の摩擦調整剤や潤滑剤に比べて、内側頭側面1dの微細な凹凸面に摩擦緩和材Cが残留するため、摩擦緩和効果の持続性に優れ、安定した摩擦係数を長期間確保することができる。
【0029】
(3) この実施形態では、被覆層C2がニッケルめっき層である。このため、内側頭側面1dやフランジ面4dに付着したときにこれらの導電性を阻害することがなく、摩擦係数が極端に低下するのを防止することができるとともに、耐摩耗性のニッケルめっき層によって基材C1の形状を維持することができる。
【0030】
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この実施形態では、鉄道用車輪及び鉄道用レールを例に挙げて説明したが、接触面と被接触面との間の相対運動によって摩擦抵抗を受ける他の部材についてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、レール1aと車輪4aとの間に摩擦緩和材Cを噴射して内側頭側面1dに摩擦緩和材Cを付着させた場合を例に挙げて説明したが、内側頭側面1dとフランジ面4dの両方又はフランジ面4dのみに摩擦緩和材Cを付着させることもできる。さらに、この実施形態では、基材C1をめっき層によって被覆する場合を例に挙げて説明したが、めっき層に限定するものではない。例えば、導電性及び残留性がある硬質な合成樹脂層などによって基材C1をコーティングすることもできる。
【0031】
(2) この実施形態では、カーボン系材料のみによって基材C1を形成する場合を例に挙げて説明したが、酸化鉄(マグネタイト)、黒鉛(グラファイト)又はホウ素(ボロン)などの少なくとも一つとカーボン系材料とによって基材C1を形成することもできる。また、この実施形態では、摩擦緩和装置5,6を車両2側に設置した場合を例に挙げて説明したが、摩擦緩和装置5,6を地上側に設置して地上側から内側頭側面1dとフランジ面4dとの間に噴射することもできる。さらに、この実施形態では、レール1aと車輪4aとの間に摩擦緩和材Cを噴射しているが、分岐器のトングレールを摺動自在に支持する床板に保線作業車などから摩擦緩和材Cを噴射することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の実施形態に係る摩擦緩和装置を備える車両が急曲線を通過するときの車輪とレールとの状態を示す平面図である。
【図2】この発明の実施形態に係る摩擦緩和装置を備える車両が急曲線を通過するときの車輪とレールとの状態を示す正面図であり、(A)は内軌側のレールと車輪との接触状態を示す正面図であり、(B)は外軌側のレールと車輪との接触状態を示す正面図である。
【図3】この発明の実施形態に係る摩擦緩和装置を概略的に示す斜視図である。
【図4】この発明の実施形態に係る摩擦緩和装置を概略的に示す構成図である。
【図5】この発明の実施形態に係る摩擦緩和材を模式的に示す断面図である。
【図6】この発明の実施形態に係る摩擦緩和方法を説明するための模式図であり、(A)は摩擦緩和材を噴射している状態を示し、(B)はレールと車輪との間で摩擦緩和材が加圧された状態を示す。
【符号の説明】
【0033】
1 線路
1a レール(内軌)
1b レール(外軌)
1c レール頭頂面
1d 内側頭側面(接触部)
4 台車
4a,4b 車輪
4c 車輪踏面
4d フランジ面(被接触部)
5,6 摩擦緩和装置
5a 管路
5b 収容装置
5c 管路(送出経路)
5d 噴射口
5e 電磁弁
5f 収容部
5g 管路
5h オリフィス
5i 噴射孔
5j 吸引管路
7 気体噴射部
8 管路
C 摩擦緩和材
1 基材
2 被覆層

図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5