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明細書 :故障検出システム,方法,プログラム及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4681320号 (P4681320)
公開番号 特開2006-234461 (P2006-234461A)
登録日 平成23年2月10日(2011.2.10)
発行日 平成23年5月11日(2011.5.11)
公開日 平成18年9月7日(2006.9.7)
発明の名称または考案の名称 故障検出システム,方法,プログラム及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体
国際特許分類 G01R  31/08        (2006.01)
B60M   3/00        (2006.01)
FI G01R 31/08
B60M 3/00 E
請求項の数または発明の数 8
全頁数 12
出願番号 特願2005-046728 (P2005-046728)
出願日 平成17年2月23日(2005.2.23)
審査請求日 平成19年5月30日(2007.5.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000196587
【氏名又は名称】西日本旅客鉄道株式会社
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】梅田 善和
【氏名】安喰 浩司
【氏名】相原 徹
個別代理人の代理人 【識別番号】100064908、【弁理士】、【氏名又は名称】志賀 正武
【識別番号】100089037、【弁理士】、【氏名又は名称】渡邊 隆
審査官 【審査官】武田 知晋
参考文献・文献 特開平07-113837(JP,A)
特開平07-177654(JP,A)
特開昭53-121306(JP,A)
実開昭56-043239(JP,U)
調査した分野 G01R 31/08
B60M 3/00
特許請求の範囲 【請求項1】
き電線及びトロリ線とを有する直流き電電圧印加部分を、それらの施設方向に沿った複数個の箇所で、それぞれ絶縁してレール沿いの予定の高さで支持する部材を含む構造物と、トロリ線とが接触し、トロリ線が前記構造物を介して地絡した故障点を標定する故障点標定システムであって、
前記構造物と、前記構造物にがいしにより支持されている保護線との間に、前記がいしと並列に設けられた放電素子を有し、前記トロリ線が地絡した際に、当該放電素子を介して前記構造物から前記保護線に印加される直流電圧の抽出を行う、前記構造物とトロリ線との間に設けられた短絡故障(地絡故障)検出手段と、
地絡電圧により、故障点から保護線上に生成されるサージパルスを検出した時刻を測定する、保護線の両端に各々設けられたサージ電圧伝搬時間検出手段と、
該サージ電圧伝搬時間検出手段各々の検出した時刻から、前記故障点の位置を算出する故障点算出手段と
を有し、
前記放電素子が前記がいしの両端に設けられたS状ホーンの間に介挿されていること
を特徴とする故障検出システム。
【請求項2】
前記保護線の両端に各々設けられ、保護線に印加される直流電圧が所定の値を超えることを検出すると地絡であることを検出する地絡判定手段を有することを特徴とする請求項1記載の故障検出システム。
【請求項3】
地絡が起こったときに、前記放電素子の放電現象が継続する電圧値及び電流値となる抵抗値の抵抗が、前記保護線の所定の位置に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の故障検出システム。
【請求項4】
き電線及びトロリ線とを有する直流き電電圧印加部分を、それらの施設方向に沿った複数個の箇所で、それぞれ絶縁してレール沿いの予定の高さで支持する部材を含む構造物と、トロリ線とが接触し、トロリ線が前記構造物を介して地絡した故障点を標定する故障点標定方法であって、
前記構造物と、前記構造物にがいしにより支持されている保護線との間に、前記がいしと並列に、かつ前記がいしの両端に設けられたS状ホーンの間に介挿されて設けられた放電素子を介し、前記トロリ線が地絡した際に前記構造物から前記保護線に印加される直流電圧の抽出を行う過程と
保護線の両端に各々設けられたサージ電圧伝搬時間検出手段により、地絡電圧によって、故障点から保護線上に生成されるサージパルスを検出し、この検出した時刻を測定するサージ電圧検出過程と、
該サージ電圧伝搬時間検出手段各々の検出した時刻から、前記故障点の位置を算出する故障点算出過程と
を有することを特徴とする故障検出方法。
【請求項5】
前記保護線の両端に各々設けられた地絡判定手段により、地絡故障時に保護線に印加される直流電圧を測定し、直流電圧が所定の値を超えることを検出すると地絡であることを検出する地絡判定過程を有することを特徴とする請求項4記載の故障検出方法。
【請求項6】
き電線及びトロリ線とを有する直流き電電圧印加部分を、それらの施設方向に沿った複数個の箇所で、それぞれ絶縁してレール沿いの予定の高さで支持する部材を含む構造物と、トロリ線とが接触し、トロリ線が前記構造物を介して地絡した故障点を標定する故障点標定処理を行うプログラムであって、
前記構造物と、前記構造物にがいしにより支持されている保護線との間に、前記がいしと並列に、かつ前記がいしの両端に設けられたS状ホーンの間に介挿されて設けられた放電素子を有し、前記トロリ線が地絡した際に、当該放電素子を介して前記構造物から前記保護線に印加される直流電圧の抽出を行う、前記構造物と保護線との間に介挿される抽出手段により、トロリ線が地絡したときに地絡電圧の一部が保護線に印加され、この地絡電圧に起因して発生するサージパルスが各々保護線の両端において検出された時刻を入力するサージ電圧入力処理と、
該サージ電圧伝搬時間検出処理の検出した各々の時刻から、前記故障点の位置を算出する故障点算出処理と
を有する処理を行うコンピュータが実行可能なプログラム。
【請求項7】
前記保護線の両端に各々設けられた地絡判定手段が地絡故障時に保護線に印加される直流電圧を測定し、直流電圧が所定の値を超えることを検出すると地絡であることを検出する地絡判定処理を有する請求項6記載のコンピュータが実行可能なプログラム。
【請求項8】
請求項6または請求項7のいずれかのプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電気鉄道のき電回路における地絡故障を検出し、この地絡故障の発生した点、すなわち故障点を標定する故障検出システム,方法,プログラム及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
直流き電回路の保護方式は、故障時の電流変化分(増加分)を検出するΔI型故障選択装置が主として用いられており、また高速度気中遮断器(直流高速度遮断器)では遮断器自身にも選択特性がある。
しかし、これらの保護方式は、故障点抵抗が0Ωに近い回路の短絡故障を前提としたものであり、故障点抵抗が高く故障電流が小さい地絡事故には、実際に地絡が起こったか否かを有効に判定することができず、かつ、この小さな故障電流から故障点を標定することは不可能である。
【0003】
例えば、電車線(トロリ線、き電線)は、がいしにより絶縁され電柱に支持されている構造が標準的である。
また、電柱としてコンクリート柱が最も一般的であり、このコンクリート柱の接地抵抗値は、高々300Ω~1kΩ程度であり、近年使用されるようになってきた鋼管柱の接地抵抗値は50Ω~200Ω程度である。
【0004】
そして、直流電車線路のき電電圧は、直流1500Vであるから、トロリ線と電柱とが接触するような地絡故障電流は多くても数十A程度にしかならない。
したがって、電流検知方式である既存の保護システムで地絡故障を検出することは不可能と言える。
この場合、コンクリート柱は、電柱バンドと鉄筋との間に対し、1500Vが加圧されることになり、コンクリートが加熱されて、破壊に至ることがある。
【0005】
このため、故障点検出システムとして、電柱と、この電柱に対して絶縁された保護線との間にダイオードと抵抗とを直列接続した構成により、保護線を変電所の電圧検出器に接続し、保護線に直流電圧が発生したことにより、地絡故障を検出して、その電圧値により故障点を標定する保護システムが考案されている(例えば、特許文献1参照)。

【特許文献1】特許第3429542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に示す保護システムにあっては、それぞれ異なる抵抗値の抵抗を各地点に配置し、地絡して流れる電流を、変電所にて電圧値に変更し、この電圧値に基づいて、いずれの抵抗に値絡電流が流れたかを判定して故障点を検出する。
しかしながら、特許文献1の保護システムにあっては、保護線の抵抗及び地絡したときの電柱及びトロリ線間の抵抗などのバラツキにより、実際に地絡電流が流れた抵抗の配置してある場所が精度良く判定できないという問題がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、地絡故障が起きた故障点を高い精度で検出することが可能な故障点標定システム,方法,プログラム及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の故障検出システムは、き電線及びトロリ線とを有する直流き電電圧印加部分を、それらの施設方向に沿った複数個の箇所で、それぞれ絶縁してレール沿いの予定の高さで支持する部材を含む構造物と、トロリ線とが接触し、トロリ線が前記構造物を介して地絡した故障を検出するシステムと故障点を標定する故障点標定システムであって、トロリ線が地絡したときに保護線に印加される直流電圧を測定し、前記構造物とトロリ線との短絡故障(地絡故障)検出手段(地絡判定部)と、地絡電圧により、故障点から保護線上に生成されるサージパルスを検出した時刻を測定する、保護線の両端に各々設けられたサージ電圧伝搬時間検出手段と、該サージ電圧伝搬時間検出手段各々の検出した時刻から、前記故障点の位置を算出する故障点算出手段とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明の故障検出システムは、前記保護線の両端に各々設けられ、保護線に印加される直流電圧を測定し、直流電圧が所定の値を超えることを検出すると地絡であることを検出する地絡判定手段を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の故障検出システムは、前記短絡故障検出手段が、前記構造物と前記保護線間に接続されたS状ホーンとの間に放電管を介挿して構成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の故障検出システムは、地絡が起こったときに、放電管の放電現象が継続する電圧値及び電流値となる抵抗値の抵抗が、前記保護線の所定の位置に設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明の故障検出方法は、き電線及びトロリ線とを有する直流き電電圧印加部分を、それらの施設方向に沿った複数個の箇所で、それぞれ絶縁してレール沿いの予定の高さで支持する部材を含む構造物と、トロリ線とが接触し、トロリ線が前記構造物を介して地絡した故障を検出するシステムと故障点を標定する故障点標定方法であって、前記構造物と保護線との間に介挿される抽出手段により、トロリ線が地絡したときに保護線に印加される電圧の地絡電流抽出過程と、保護線の両端に各々設けられたサージ電圧伝搬時間検出手段により、地絡電圧によって、故障点から保護線上に生成されるサージパルスを検出し、この検出した時刻を測定するサージ電圧検出過程と、該サージ電圧伝搬時間検出手段各々の検出した時刻から、前記故障点の位置を算出する故障点算出過程とを有する。
【0012】
本発明の故障検出方法は、前記保護線の両端に各々設けられた地絡故障判定手段により、保護線に印加される直流電圧測定し、直流電圧が所定の値を超えることを検出すると地絡であることを検出する地絡判定過程を有することを特徴とする。
【0013】
本発明のプログラムは、き電線及びトロリ線とを有する直流き電電圧印加部分を、それらの施設方向に沿った複数個の箇所で、それぞれ絶縁してレール沿いの予定の高さで支持するを部材を含む構造物と、トロリ線とが接触し、トロリ線が前記構造物を介して地絡した故障を検出するシステムと故障点を標定する故障点標定処理を行うものであり、前記構造物と保護線との間に介挿される抽出手段により、トロリ線が地絡したときに地絡電圧が保護線に印加され、この地絡電圧に起因して発生するサージ電圧が各々保護線の両端において検出された時刻を入力するサージ電圧入力処理と、該サージ電圧伝搬時間検出処理の検出した各々の時刻から、前記故障点の位置を算出する故障点算出処理とを有する処理を行うコンピュータが実行可能なプログラムである。
【0014】
本発明のプログラムは、前記保護線の両端に各々設けられた地絡判定手段が地絡故障時に保護線に印加される直流電圧測定し、直流電圧が所定の値を超えることを検出すると地絡であることを検出する地絡判定処理を有するコンピュータが実行可能なプログラムである。
【0015】
本発明の記録媒体は、上記プログラムのいずれかが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、地絡した故障点から、短絡故障検出手段により印加される地絡電圧(後に述べる放電素子により保護線に印加される放電電圧)によるサージパルスのパルスが保護線を伝搬し、この保護線の両端に各々設けられたサージ電圧伝搬時間検出手段がそれぞれサージパルスのパルスが検出された時刻を検出し、故障点算出手段がこの時刻の差から、地絡電流が注入された保護線の位置を算出し、この位置を故障点として出力するため、高い信頼性により地絡した故障点を標定することが可能となる。
【0017】
上記パルスを検出した時刻は、GPS(Global Positioning System)衛星からのGPS時計信号(タイムコード信号)を基に、同一時刻からパルス検出を開始し、任意の周波数を作り出して複数の同期時計を構成して、各々のサージ電圧伝搬時間検出手段が測定する。ここで、複数のサージ電圧伝搬時間検出手段はGPS時計信号により常に、時刻経過の同期が取られている。
このため、本発明によれば、保護線の両端で測定するサージ電圧のパルスの検出時刻を、常に時刻同期が取られた状態にて、検出することが可能である。
【0018】
また、本発明によれば、保護線と構造物との間に放電装置からなる短絡故障検出手段を設けることにより、他に直流き電回路に特別な装置を設けることなく、故障点の検出が行えるため、容易にシステムとして構成することができ、安価なシステムとして運用することが可能である。
【0019】
さらに、本発明によれば、地絡故障時に保護線に発生する直流電圧を測定し、その直流電圧が所定値より高ければ地絡故障として検出するため、電車のパンタグラフとトロリ線との接触時に発生するようなノイズを、地絡故障と誤検出することがなく、高い精度で地絡故障の検出を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態による故障点標定システムを図面を参照して説明する。図1は同実施形態が用いられる直流き電方式の系統構成例を示す概念図である。
この図において、直流き電方式は、図におけるき電用変電所(または電鉄用変電所,直流変電所とも言う)K1及びK2が、送電系統より受電する三相交流特別高圧電圧を整流器用の変圧器100により適切な電圧(直流1500Vの場合は、三相交流1200V)に降圧し、シリコン整流器,サイリスタ整流器等の整流器101により直流に整流し、き電線1を介して、架空電車線または剛体電車線やサイドレール(図1で言うトロリ線2)を介して電気車Dへ電力を供給し、き電用変電所に対する電流帰路として、走行レール(図1で言うレール3)が利用される方式である。
【0021】
上述した各き電線1は、図1に示すように、レール3に沿った方向に対して、所定の長さにおいて複数に分割されており、他のき電線と独立して、き電用変電所と接続を切断できるようになっている(その部分のき電線1だけき電用変電所から切り離せるようになっている)。
ここで、電気車Dの駆動に必要な電力は、1電動車あたり1500V/500A程度であるため、一編成としては1500V/何千アンペアとなり、トロリ線2のみでは電流容量が不足し、電圧降下が大きくなるため、電流容量の大きなき電線1とトロリ線2とを、250m~500m毎に分岐線を介して接続している。
【0022】
トロリ線2は、図1に示すように、き電線1に対応した同様な長さで、き電線1と同様な位置にて分割されている。
また、高速度遮断機102は、き電変電所において地絡故障が発生したことが確認されると、後に述べる故障点標定システムにより切断状態とされ、その部分のき電線1をき電用変電所から切り離す。
すなわち、き電線1は、き電用変電所の整流器101と、高速度遮断機102を介して接続されている。
【0023】
次に、図2は上述した分割されたトロリ線2の1つ(直流き電電圧印加部分の一つ)、すなわち保護対象区間に注目して記載した、本発明の実施例を説明する概念図である。
ここで、き電線1及びトロリ線2とは図1に示すように並列して、レール3に沿って施設されているが、図を簡単にするため、き電線1を省略している。
DC電源V部分で、図示しないき電線1から分岐線を介して、DC電圧(例えば1500V)が、トロリ線2に電力が供給されている。
この保護対象区間を、トロリ線2及びレール3の施設方向に沿った複数個の箇所において、それぞれ絶縁してレール3沿いの予定の高さで支持するための部材を含む構造物に配設されている。
【0024】
ここで、上記構造物としては、例えば、すでに従来例にて説明した電柱(コンクリート柱または鋼管柱)A,C,Dなどが用いられる。
コンクリート柱の場合には接地抵抗が300Ω~1kΩ程度であり、鋼管柱の場合には接地抵抗が50Ω~200Ω程度である。
また、絶縁して高さを支持する部材としては、がいしなどの絶縁体が用いられ、各き電線,保護線2各々と上記電柱(電柱A,C,D)とを電気的に絶縁状態として配設している。
【0025】
また、保護線4には、本発明の構成の一つである短絡故障検出手段が、上記支持する部材とともに設けられている。
すなわち、保護線4は、保護対象区間において、がいし7(例えば懸垂180mmがいし)を介して、所定の高さに電柱に支持されている。
図2に示すように、このがいし7の両端各々にS状ホーン6を設け、このS状ホーン6の間に、所定の放電電圧(例えば、300V)を有する放電素子として放電管5を設ける。
ここで、放電素子として放電管5を用いて説明したが、所定の電圧により放電する素子であれば、ツェナーダイオード等も用いることができる。
同様に、放電素子をがいし7間に接続するために、S状ホーン6を用いて説明したが、導電性で十分電流容量がある部材を用いても良い。
【0026】
この保護線4の両端には、各々き電用変電所があり、このき電用変電所それぞれにおいて、所定の抵抗値の抵抗R1が、トロリ線2と帰還回路であるレール3との間に介挿されている。
この抵抗R1は、地絡故障を確実に検出するために、地絡故障時に放電素子における放電を安定した状態で保つために設けられている。
例えば、検出対象のトロリ線2に1500VのDC電圧が供給されているとすると、抵抗値を200Ω程度にすることにより、地絡故障時に7~8A程度の安定的な放電電流を得ることができる。また、保護線4を抵抗R1を介してレール3に接続するため、フローティング状態となることを防止し、保護線4に併設されるトロリ線2からの誘導電圧を抑止することも期待できる。
【0027】
保護線4とレール3との間には、抵抗R2及び抵抗R3が直列接続されて介挿されており、抵抗R2及び抵抗R3の接続部とレール3との間に直流電圧検出部8が、上記き電用変電所において設けられている。すなわち、保護線4の両端に直流電圧検出部8が設けられている。
直流電圧検出部8各々は、抵抗R2及び抵抗R3各々の抵抗値により、保護線R4の電圧が抵抗分割された電圧値を測定し、この測定した電圧値を出力する。
また、保護線4と接地点(接地電位、すなわちグランド)との間には、抵抗R4及び抵抗R5が直列接続されて介挿されており、抵抗R4及び抵抗R5の接続部と接地点との間にサージ電圧検出部9が、上記き電用変電所K1,K2各々において設けられている。
【0028】
ここで、抵抗R2及び抵抗R3を保護線4とレール3との間に配設し、抵抗R4及び抵抗R5を保護線2と接地点との間に配設する理由を以下に示す。
直流電圧検出部8は、直流き電回路における保護線4の電位がレール3の電位に対して、どの程度上昇したかを判定するための電圧を測定するために用いられるため、抵抗R2及び抵抗R3を、保護線2とレール3との間に配設する必要がある。
また、保護線4に流れる電流を金属回路で電源にもどすことにより放電管の放電を安定させる効果がある。
一方、サージ電圧検出部9は、純粋に、接地点からのサージ電圧を測定するため、抵抗R4及び抵抗R5を保護線2と接地点との間に配設する必要がある。
【0029】
次に、図3を用いて、き電用変電所K1,K2及び情報センタGに設けられた地絡故障の故障点を検出するシステムについて説明する。
き電用変電所K1,K2及び情報センタGは、各々伝送路(公衆回線網,専用回線網,インターネット,無線などの情報通信網)により接続されている。
この図3においては、き電用変電所K1及びK2の変圧器100,整流器101及び高速度遮断器102が省略されており、トロリ線2の終端接続部S1及びS2において、終端接続部S1がき電用変電所K1の高速度遮断器102に接続され、終端接続部S2がき電用変電所K2の高速度遮断器102に接続されている。
【0030】
き電用変電所K1及びK2各々には、故障点標定システムの構成として、GPS受信機10,地絡判定部11,サージ電圧伝搬時間検出部12および制御部13が設けられている。
また、情報センタGには、故障点標定システムの構成として故障点算出部14及び出力部15が設けられている。
この故障点算出部14及び出力部15は、情報センタGに設けずに、き電用変電所K1及びK2それぞれに設けられるようにしてもよい。
【0031】
GPS受信機10は、GPS衛星からタイムコード信号を受信し、制御部13へこのタイムコード信号を受信する。
制御部13は、タイムコード信号を受信すると、サージ電圧伝搬時間検出部12内に設けられたタイマ(時計)の時刻を、このタイムコード信号の入力される周期で校正する。
これにより、き電用変電所K1及びK2の制御部13の時計は、常に同期が取れた状態とすることができる。
【0032】
地絡判定部11は、直流電圧検出部8から入力される電圧が、設定された電圧値を超えることを検出すると、地絡故障と判定し、制御部13へ通知する。
抵抗R1によって、放電管5の放電が維持されるため、直流電圧を検出することができる。
サージ電圧伝搬時間検出部12は、サージ電圧検出部9から入力される電圧が、設定された電圧値を超えたことを検出すると、この検出した時刻、すなわちサージパルスが入力された検出時刻を制御部13へ通知する。
【0033】
制御部13は、地絡判定部11から地絡故障と判定した通知が入力されると、地絡故障によるサージパルスが入力されたことを検出して、対応するトロリ線2に接続された高速度遮断機102をオフ状態として、電力の供給を停止する。
また、制御部13は、自身及び地絡故障のあったトロリ線2の識別番号と、地絡故障が起こったことを示す制御信号と、上記検出時刻のデータとを含む地絡データを情報センタGの故障点算出部14へ出力する。
故障点算出部14は、上記地絡データを入力すると、トロリ線2及び制御部13(き電用変電所)の識別番号とにより、検出時刻のデータと検出したき電用変電所との対応を検出し、サージ電圧伝搬時間検出部12各々のサージパルスを検出した検出時刻の差から、地絡故障の起こった位置を算出することで、故障点の標定を行う。
出力部15は表示装置や印刷装置などであり、故障点算出部14から入力される地絡故障の故障点の位置を表示する。
【0034】
次に、図1,図2,図3及び図4を参照して、本発明の実施例である故障検出システムの動作を説明する。図4は、地絡故障が起こった電柱から放電管5を介して印加される放電電圧により発生するサージ電圧、すなわちサージパルスの伝搬を示す波形図であり、縦軸が電圧を示し、横軸が時刻を示している。
以下の説明は、例えば、図2において、トロリ線2と電柱Aとの間に導電性の異物が接触することで電気的に接続された状態になり、地絡故障を起こしたとして説明する。
【0035】
トロリ線2と電柱Aとの間において地絡故障が発生した際、電柱Aには数十Ω以上の接地抵抗値があるため、電柱Aに流れる故障電流は小さく、トロリ線2の電圧はほとんど低下しない。
このため、地絡故障が発生すると電柱Aの上部(保護線4がガイシ7を介して電柱Aに支持されている近傍)の対地電圧は1500V程度まで上昇すると考えられる。
この結果、電柱Aと保護線4との間に設けられた放電管5は、例えば300Vを放電電圧とると、両端にほぼ1500Vの電圧差が生じるため、放電を開始する。
これにより、保護線4は、放電電圧が印加されることにより、1500V程度に充電される。
【0036】
そして、図4において、地絡故障が時刻t0で発生したとすると、上記放電電圧によりサージ電圧(上記1500V)が発生するため、この電圧変化がサージパルスとして故障点から、保護線4の両端(すなわち、き電用変電所K1及びK2各々)に対して伝搬を開始することになる。
次に、き電用変電所K1,K2各々の直流電圧検出部8は保護線4の電圧を抵抗分圧により、測定可能な電圧値にとするために所定の比率によって分圧を行うので、入力される電圧を分圧し、この電圧を直流電圧検出部8へ出力する。
【0037】
図2においては、抵抗R2が約100kΩであり、抵抗R3が約1kΩであるため、1500Vの直流電圧は、100対1の比率で分圧され、直流電圧検出部8には15Vとして入力されることになる。
ここで、直流電圧検出部8は、入力される電圧を測定し、測定された電圧値を地絡判定部11へ出力する。
そして、各直流電圧検出部8は、入力される電圧値が設定された電圧値を超える場合、地絡故障と判定して、制御部13へ通知する。
【0038】
次に、各制御部13は、地絡故障を示す制御信号が入力されると、高速度遮断器102をオフ状態として、トロリ線2を整流器101から切り離す。
地絡故障となったトロリ線2の両端にあるき電用変電所K1及びK2各々において、上記地絡故障の判断及び高速度遮断器102の制御が行われる。
また、き電用変電所K1,K2各々の抵抗R4及び抵抗R5からなる分圧器は保護線4の電圧を抵抗分圧により、測定可能な電圧値にするために所定の比率によって分圧を行うので、入力されるサージパルスのサージ電圧を分圧し、この分圧した電圧をサージ電圧検出部9へ出力する。
【0039】
図2においては、抵抗R4が約100kΩであり、抵抗R5が約1kΩであるため、1500Vのサージ電圧は、100対1の比率で分圧され、サージ電圧検出部9には15Vとして入力されることになる。
そして、サージ電圧検出部9は、上記分圧された電圧値を測定して、測定結果を電圧伝搬時間検出部12へ出力する。
そして、サージ電圧伝搬時間検出部12は、入力される電圧値が所定の電圧値を超えるか否かを判定して、所定の電圧値を超えた時点の時刻を、検出時刻として制御部13へ出力する。
【0040】
そして、き電用変電所K1,K2各々の制御部13は、地絡故障のあったトロリ線2の識別番号と、地絡故障が起こったことを示す制御信号と、上記検出時刻のデータとを含む地絡データを情報センタGの故障点算出部14へ出力する。
次に、故障点算出部14は、上記地絡データを入力すると、サージ電圧伝搬時間検出部12各々のサージパルスを検出した検出時刻の差から、地絡故障の起こった位置を算出することで、故障点の標定を行う。
【0041】
すなわち、故障点算出部14は、地絡データにおける識別番号から同一のトロリ線2の両端にあるき電用変電所K1及びK2から入力された地絡データであることを認識すると、これらき電用変電所K1及びK2から得た検出時刻の時間差を求める。
すでに述べたように、地絡故障点で発生したサージパルスは、地絡故障が起こった故障点から対向する両側のき電用変電所に向って伝搬していく。
【0042】
そして、サージパルスの伝搬速度が同一の保護線4内において一定であるから、サージパルスが各き電用変電所(き電用変電所K1,K2)に到達する時間は、地絡故障の起こった故障点からき電用変電所までの距離に比例すると考えられる。
したがって、図4に示すように、故障点で発生したサージパルスが、保護線4上を伝搬して、き電用変電所K1及びK2各々に到達する時刻には時間差が生じる。
【0043】
例えば、き電用変電所K1にサージパルスが到達した時刻をt1とし(すなわち、き電用変電所K1を標定の基準点とおいた場合)、き電用変電所K2(基準点に対応する地点)にサージパルスが到達した時刻をt2とし、この時間差をtとすると、故障点の位置を以下の式により、故障点算出部14は算出することができる。
X=(L/2)+(t/2)・v
ここで、Lはき電用変電所K1とき電用変電所K2との間の距離(単位:m)であり、tはサージパルス到達時間差(単位:秒)であり、vはサージパルスの伝搬速度(単位:m/秒)、Xは標定値(単位:m)である。Xが正の値であればき電変電所K1からの距離であり、Xが0であればき電用変電所K1とき電用変電所K2との中間地点であり、Xが負であればき電変電所K2からの距離である。
【0044】
また、情報センタGに故障点算出部14を設置せず、各き電用変電所にそれぞれ配置した場合、同一のトロリ線2の両端のき電用変電所が伝送路により接続し、地絡故障と判定した場合に、それぞれの測定した測定時刻を接続相手のき電用変電所へ通知することにより、各き電用変電所が独立して故障点の標定を行うことができる。
この場合、き電用変電所それぞれが故障点を標定するため、情報センタGに確認しなくても、自身のほうが他より近いか否かが判断でき、故障点に近い方のき電用変電所の係員が、地絡故障の調査・回復に出向く効果がある。
【0045】
なお、図1における地絡判定部11,サージ電圧伝搬時間検出部12,制御部13,故障点算出部14の各機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより地絡故障の判定や故障点の標定処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0046】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施例が用いられる直流き電方式の系統構成の一例を示す概念図である。
【図2】本発明の実施例にて使用する直流電圧検出部8とサージ電圧検出部9との配置を示す直流き電方式の系統構成の概念図である。
【図3】各き電用変電所及び情報センタに配設される故障点標定システムの構成例を示すブロック図である。
【図4】故障点からのサージパルスの到達時刻が各き電用変電所で異なることを示す波形図である。
【符号の説明】
【0048】
1…き電線 2…トロリ線
3…レール 4…保護線
5…放電素子(放電管) 6…S状ホーン
7…がいし 8…直流電圧検出部
9…サージ電圧検出部 10…GPS
11…地絡判定部 12…サージ電圧伝搬時間検出部
13…制御部 14…故障点算出部
15…出力部 100…変圧器
101…整流器 102…高速度遮断器
G…情報センタ D…電気車
K1,K2…き電用変電所
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
2
【図4】
3