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明細書 :線路上空建築物の免震防振構造システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4567493号 (P4567493)
公開番号 特開2006-249795 (P2006-249795A)
登録日 平成22年8月13日(2010.8.13)
発行日 平成22年10月20日(2010.10.20)
公開日 平成18年9月21日(2006.9.21)
発明の名称または考案の名称 線路上空建築物の免震防振構造システム
国際特許分類 E04H   9/02        (2006.01)
E04B   1/36        (2006.01)
F16F  15/04        (2006.01)
FI E04H 9/02 301
E04H 9/02 331A
E04B 1/36 B
E04B 1/36 F
F16F 15/04 P
請求項の数または発明の数 2
全頁数 7
出願番号 特願2005-068450 (P2005-068450)
出願日 平成17年3月11日(2005.3.11)
審査請求日 平成19年6月27日(2007.6.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】武居 泰
【氏名】山田 聖治
【氏名】山田 努
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
【識別番号】100096426、【弁理士】、【氏名又は名称】川合 誠
審査官 【審査官】田中 洋行
参考文献・文献 特開平01-169022(JP,A)
特開2000-220316(JP,A)
特開2003-328585(JP,A)
特開平03-063361(JP,A)
特開2002-235454(JP,A)
調査した分野 E04H 9/02
E04B 1/36
F16F 15/04
特許請求の範囲 【請求項1】
建築物の基礎の下部に線路が敷設される線路上空建築物の免震防振構造システムにおいて、
(a)鉄道車両の通路として供するための、地中梁を設けない基礎杭に連結して配置される基礎柱と、
(b)駅施設を含む前記基礎柱上に構築され、かつ線路上空に構築される多層の建築物の基礎部の柱に配置される鉛直方向の剛性を柔らかくした積層ゴムを配置した免震層と、
(c)前記積層ゴムを配置した免震層の上下の梁の間に配置され、かつ滑り支承機構が組み込まれた粘弾性ダンパーとを具備することを特徴とする線路上空建築物の免震防振構造システム。
【請求項2】
請求項1記載の線路上空建築物の免震防振構造システムにおいて、前記粘弾性ダンパーを前記免震層の中央部に配置することを特徴とする線路上空建築物の免震防振構造システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、線路上空建築物の免震防振構造システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
線路上空を利用した建築物は、鉄道事業者の関連事業展開や都市再開発の面で今後ますます必要性が高まることが予想される。そのような建築物は、軌道を跨ぐことから一般建築物より耐震性能を高める必要がある。
従来、免震機能を有すると共に、建物周辺の鉄道や道路から伝搬してくる微振動や固体伝搬音を遮断する機能を合わせ持つ免震・防振構法建物についての提案が、下記非特許文献1,2としてなされている。

【非特許文献1】安藤:「建物の免震防振構法の研究開発(その10)」鹿島技術研究所年報,第39号,第141~147頁,1991年10月31日発行
【非特許文献2】中村他:「厚肉積層ゴムを用いた免震・除振システムの開発(その1)」,大林組技術研究所報 No.42,第15~22頁
【非特許文献3】寺村他:「厚肉積層ゴムを用いた免震・除振システムの開発(その2)」,大林組技術研究所報 No.42,第23~26頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、鉄道線路上空の建築物の構築に当たって、耐震性能を高めるためには免震構造が有利であるが、軌道を跨ぐために基礎同士を繋ぐ剛強な地中梁を設けることは施工上難しく、一般建築物のように基礎に免震層を設けることは難しい。
さらに、列車走行時に発生する振動が建物内を伝搬するため、一般的な構造ではホテル等の騒音・振動の少ない高い品質が求められる空間を確保することは難しい。
【0004】
本発明は、上記状況に鑑みて、耐震性能を向上させるとともに、免震層の鉛直方向の剛性を柔らかくすることにより列車振動に対する防振効果を高めることができる線路上空建築物の免震防振構造システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕建築物の基礎の下部に線路が敷設される線路上空建築物の免震防振構造システムにおいて、鉄道車両の通路として供するための、地中梁を設けない基礎杭に連結して配置される基礎柱と、駅施設を含む前記基礎柱上に構築され、かつ線路上空に構築される多層の建築物の基礎部の柱に配置される鉛直方向の剛性を柔らかくした積層ゴムを配置した免震層と、前記積層ゴムを配置した免震層の上下の梁の間に配置され、かつ滑り支承機構が組み込まれた粘弾性ダンパーとを具備することを特徴とする。
【0006】
〔2〕上記〔1〕記載の線路上空建築物の免震防振構造システムにおいて、前記粘弾性ダンパーを前記免震層の中央部に配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、次のような効果を奏することができる。
(1)基礎柱上に構築される建築物の基礎部に積層ゴムを配置した免震層を設けるようにしたので、耐震性能を向上させることができるとともに、積層ゴムを配置した免震層の鉛直方向の剛性を柔らかくすることで列車振動に対する防振効果を高めることができる。
(2)免震層の鉛直方向の剛性を柔らかくすることにより生じる免震層より上部の構築物の振動増幅を低減させるための粘弾性ダンパーを免震層に設置することにより、防振効果を高めることができる。
【0008】
(3)建築物が駅施設を含む場合には、隣接してペデストリアンデッキ(歩行者専用の広場や通路)等の構造物が併設されている場合が多く、基礎免震構造の場合には隣接した構造物との境界部において地震時の相対変形を考慮した大規模な伸縮継ぎ目(エキスパンションジョイント)が必要となる。一方、中間層免震構造の場合、免震層より下部の変位は隣接構造物の変位と同程度のため小規模な伸縮継ぎ目で十分である点を考慮して、合理的な免震・除震手段を講じることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の線路上空建築物の免震防振構造システムは、鉄道車両の通路として供するための、地中梁を設けない基礎杭に連結して配置される基礎柱と、駅施設を含む前記基礎柱上に構築され、かつ線路上空に構築される多層の建築物の基礎部の柱に配置される鉛直方向の剛性を柔らかくした積層ゴムを配置した免震層と、前記積層ゴムを配置した免震層の上下の梁の間に配置され、かつ滑り支承機構が組み込まれた粘弾性ダンパーとを具備する。よって、耐震性能を向上させるとともに、積層ゴムを配置した免震層の鉛直方向の剛性を柔らかくすることで、列車振動に対する防振効果を高める。また、免震層より上部の建築物の振動増幅を抑えるための粘弾性ダンパーを免震層に設置する。
【実施例】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明の基本的な線路上空建築物の免震防振構造システムの原理を示す模式図である。
この図において、1は地中に設けられる基礎杭、2はこの基礎杭1に連結され地中から立ち上げられる基礎柱、3は列車4が通過する空間である。上記したように、地中に設けられる基礎杭1の間には地中梁は設けることができない。このような基礎上に例えば、多層の建築物5が構築される。ここでは、列車の通過に伴う振動を抑制するために、厚肉型積層ゴム6を建築物5の基部に配置した免震層を設けるようにしている。このように積層ゴム6を配置することにより、鉛直方向の剛性を柔らかくし、防振効果を高めることができる。
【0011】
図2はかかる積層ゴムによる防振効果(実験結果)を示す図であり、列車走行時の基礎からの建築物の梁中央への振動伝導度を示している。この図において、横軸は1/3オクターブバンド中心周波数(Hz)、縦軸は振動加速度レベル差(dB)を表し、■は本発明にかかる免震層(積層ゴム)を設けていない場合(非免震)、□は本発明にかかる免震層(積層ゴム)を設けた場合(免震)を示している。特に、鉄道による振動の主成分が63~125Hzであるため、その周波数帯域での免震効果が著しくなるように構成している。
【0012】
図3は本発明の第1実施例を示す線路上空建築物の免震防振構造システムの模式図である。
この図において、11は地中に設けられる基礎杭、12は基礎杭11に連結された地中から立ち上げられる基礎柱、13は列車などが通過する空間であり、上記したように、地中に設けられる基礎杭11の間には地中梁は設けることができない。このような基礎の構造体上に例えば、建築物14が構築される。ここでは、列車の通過に伴う振動を抑制するために積層ゴム15を建築物14の基部に配置するとともに、建築物14の梁16と梁17との間の中央部には粘弾性ダンパー18を配置するようにしている。
【0013】
このように構成することにより、特に、基礎杭11の間隔が大きくなる場合に、上下の梁16,17の上下振動を有効に抑えることができる。
図4はこの第1実施例を施工した場合の粘弾性ダンパーによる防振効果(実験結果)を示す図であり、建築物の梁中央に粘弾性ダンパーを設けた場合を示している。この図において、横軸は1/3オクターブバンド中心周波数(Hz)、縦軸は振動加速度レベル差(dB)を表し、□は本発明にかかる粘弾性ダンパーを設けていない場合、■は本発明にかかる粘弾性ダンパーを設けた場合を示している。
【0014】
図2と図4によって本発明の作用効果を明らかにすることができる。すなわち、図2と図4の縦軸は、基礎部(杭頭)と免震層上部梁中央部との振動加速度レベル差を示したもので、正が増幅、負が減衰を意味する。図2では一般的な鉄道振動で振動が最も大きくなる周波数帯の63~125Hzにおいて、積層ゴムを設けた免震(本発明)のほうが積層ゴムを設けない非免震より減衰量が大きくなっており、本発明を実施することにより、防振の効果が顕著であることが示されている。ここで、本発明に用いられる積層ゴムの組成、構造および機能について述べると、通常の積層ゴムに比べて一層あたりのゴム厚を大きくして鉛直方向の剛性を低めることにより、建物の鉛直方向の固有振動数を下げて鉄道振動が卓越する周波数帯(概ね63~125Hz)の振動を低減させる(上記非特許文献2参照)。
【0015】
一方、図4は本発明にかかるダンパーの効果を示したものであり、鉛直方向の振動が卓越する固有振動数における振動増幅を低減している。
本発明の粘弾性ダンパーの組成、構造および機能について述べると、粘弾性材料とは、粘性と弾性を有する高分子材料である(ここではジエン系粘弾性材料を使用)。粘弾性ダンパーは、粘弾性材料と金属を交互に積層して接着した構造を有し、粘弾性材料をせん断変形させることにより、振動エネルギーを熱エネルギーに変換して吸収する。
【0016】
このような粘弾性ダンパーを用いることにより、特に、体感振動で問題となる10Hz付近の振動増幅の低減を図ることができる。
図5は本発明の第2実施例を示す線路上空建築物の免震防振構造システムの模式図である。
この実施例では、粘弾性ダンパー21は滑り支承22を組み込むようにしている。
【0017】
図6は本発明にかかる滑り支承機構の例を示す図である。
この図において、31は梁、32はその梁31の表面に配置される滑り板(SUS板)、33は取付板、34は取付板33に固定される滑り材取付板、35はその滑り材取付板34の中央の下面に設けられる滑り材、36は滑り板(SUS板)32と滑り材取付板34との隙間である。
【0018】
図6に示される滑り支承機構を参照しながら、滑り支承の具体的機構とその機能について説明する。
滑り支承は滑り材35と滑り板32により構成され〔ここでは滑り材35に四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、滑り板32にSUS(ステンレス鋼板)を使用〕、大地震時に免震層が水平方向に変形すると、滑り材35が滑り板32上を摺動する。このように滑り支承を鉛直振動(列車振動)用の粘弾性ダンパーの下部または上部に設置することにより、大地震時に生ずる免震層の水平変形により粘弾性ダンパーを損傷させないようにし、また、粘弾性ダンパーが積層ゴムの水平挙動に影響を与えないようにする。
【0019】
建築物が駅施設を含む場合には、隣接してペデストリアンデッキ等の構造物が併設されている場合が多く、基礎免震構造の場合には隣接した構造物との境界部において地震時の相対変形を考慮した大規模な伸縮継ぎ目が必要となる。一方、中間層免震構造の場合、免震層より下部の変位は隣接構造物の変位と同程度のため小規模な伸縮継ぎ目で十分である点を考慮して、本発明は、上記したように、合理的な免震・除震手段を講じることができる。
【0020】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の線路上空建築物の免震防振構造システムは、線路上空に構築される高層のオフィスビルやマンションなどの免震防振機構として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の基本的な線路上空建築物の免震防振構造システムの原理を示す模式図である。
【図2】図1に示す積層ゴムによる防振効果(実験結果)を示す図である。
【図3】本発明の第1実施例を示す線路上空建築物の免震防振構造システムの模式図である。
【図4】図3に示す実施例を施工した場合の粘弾性ダンパーによる防振効果(解析結果)を示す図である。
【図5】本発明の第2実施例を示す線路上空建築物の免震防振構造システムの模式図である。
【図6】本発明にかかる滑り支承機構の例を示す図である。
【符号の説明】
【0023】
1,11 地中に設けられる基礎杭
2,12 地中から立ち上げられる基礎柱
3,13 列車が通過する空間
4 列車
5 多層の建築物
6,15 積層ゴム
14 建築物
16,17,31 梁
18,21 粘弾性ダンパー
22 滑り支承
32 滑り板(SUS板)
33 取付板
34 滑り材取付板
35 滑り材
36 隙間
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5