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明細書 :早期地震諸元推定方法及びそのシステム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4509837号 (P4509837)
公開番号 特開2006-275696 (P2006-275696A)
登録日 平成22年5月14日(2010.5.14)
発行日 平成22年7月21日(2010.7.21)
公開日 平成18年10月12日(2006.10.12)
発明の名称または考案の名称 早期地震諸元推定方法及びそのシステム
国際特許分類 G01V   1/00        (2006.01)
G01V   1/28        (2006.01)
FI G01V 1/00 D
G01V 1/28
請求項の数または発明の数 2
全頁数 7
出願番号 特願2005-093906 (P2005-093906)
出願日 平成17年3月29日(2005.3.29)
審査請求日 平成19年6月27日(2007.6.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】中村 洋光
【氏名】岩田 直泰
【氏名】佐藤 新二
【氏名】小高 俊一
【氏名】芦谷 公稔
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
【識別番号】100096426、【弁理士】、【氏名又は名称】川合 誠
審査官 【審査官】田中 秀直
参考文献・文献 特開2002-277557(JP,A)
特開2001-147273(JP,A)
特開2003-114281(JP,A)
束田進也、他,早期地震検知における新しい地震諸元推定方法,RTRI REPORT,2002年,Vol.16,No.8,P.1-6
束田進也、他,P波エンベロープ形状を用いた早期地震諸元推定法,地震 第2輯,2004年 3月25日,第56巻第4号,P.351-361
調査した分野 G01V 1/00
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
関数フィッティング法を用いて得られるP波初動振幅の時間変化の程度を表す係数Bの1秒間データ(1秒B)と、P波到達から1秒間の初期微動の最大振幅(1秒Amax )から、震央距離をlogΔ=αlog(1秒B)+βに基づいて、かつ、マグニチュードをM=αlog(1秒Amax )+βlog(1秒B)+γ+k(α、β、γは統計的に決める係数、kは0.5)に基づいて推定することを特徴とする早期地震諸元推定方法。
【請求項2】
(a)地震計と、
(b)該地震計からの情報により関数フィッティング法により1秒間のP波初動振幅の時間変化の程度を表す係数Bを演算する1秒間係数Bの演算部と、
(c)前記1秒間係数Bに基づいて震央距離を推定する震央距離の推定部と、
(d)P波到達から1秒の最大振幅(1秒Amax )を求める最大振幅の演算部と、
(e)前記最大振幅と前記1秒間係数Bと定数k=0.5とに基づいてマグニチュードを推定するマグニチュード推定部とを具備することを特徴とする早期地震諸元推定システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、早期地震諸元推定方法に係り、特に、P波到達から1秒間のデータを用いて地震諸元(震央距離とマグニチュード)を推定する早期地震諸元推定方法及びそのシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
震央距離やマグニチュードを推定するために、本願発明者らは、既に、地震波の初動部分の波形形状をパラメータが数個の簡易な関数でフィッティングしてその波形形状を定量化し、得られたパラメータから震央距離とマグニチュードを推定することができる、震央距離及びマグニチュード推定方法を提案している(下記特許文献1,2参照)。

【特許文献1】特開2002-277557号公報
【特許文献2】特開2005-010041号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した地震諸元推定方法である関数フィッティング法を用いて、本願発明者らは、P波到達から2秒間のデータを使って地震諸元を推定することを提案していたが、直下型の地震などにおいては、さらなる早期の地震諸元推定方法が要望されるに至っている。
本発明は、上記状況に鑑みて、P波到達から1秒間のデータを用いて、さらに早く地震諸元の推定を的確に行うことができる早期地震諸元推定方法及びそのシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕早期地震諸元推定方法において、関数フィッティング法を用いて得られるP波初動振幅の時間変化の程度を表す係数Bの1秒間データ(1秒B)と、P波到達から1秒間の初期微動の最大振幅(1秒Amax )から、震央距離をlogΔ=αlog(1秒B)+βに基づいて、かつ、マグニチュードをM=αlog(1秒Amax )+βlog(1秒B)+γ+k(α、β、γは統計的に決める係数、kは0.5)に基づいて推定することを特徴とする。
【0005】
〕早期地震諸元推定システムにおいて、地震計と、この地震計からの情報により関数フィッティング法により1秒間のP波初動振幅の時間変化の程度を表す係数Bを演算する1秒間係数Bの演算部と、前記1秒間係数Bに基づいて震央距離を推定する震央距離の推定部と、P波到達から1秒の最大振幅(1秒Amax )を求める最大振幅の演算部と、前記最大振幅と前記1秒間係数Bと定数k=0.5とに基づいてマグニチュードを推定するマグニチュード推定部とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、P波到達から1秒間のデータを用いて、直下型の地震諸元を素早く的確に推定し、それに伴う事故の被害を最小限に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の早期地震諸元推定方法及びそのシステムは、関数フィッティング法を用いて得られるP波初動振幅の時間変化の程度を表す係数Bの1秒間データ(1秒B)と、P波到達から1秒間の初期微動の最大振幅(1秒Amax )から、震央距離をlogΔ=αlog(1秒B)+βに基づいて、かつ、マグニチュードをM=αlog(1秒Amax )+βlog(1秒B)+γ+k(α、β、γは統計的に決める係数、kは0.5)に基づいて推定する。よって、直下型の地震諸元を素早く的確に推定し、それに伴う事故の被害を最小限に抑える。
【実施例】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明の実施例を示す早期地震諸元推定システムを示す図である。
この図において、1は地震計、2は定数kの入力部、3は情報処理装置、4は関数フィッティング法による1秒間のP波初動振幅の時間変化の程度を示す1秒間係数B(1秒B)の演算部、5はその1秒間係数B(1秒B)に基づいた震央距離の推定部、6はP波到達から1秒間の最大振幅Amax (1秒Amax )の検出部、7はそのP波到達から1秒間の最大振幅Amax (1秒Amax )と1秒間係数B(1秒B)と定数kとに基づいたマグニチュードの推定部、8は震央距離とマグニチュードの推定値の送信部、9はその震央距離とマグニチュードの推定値が送信される通信回線である。
【0009】
この早期地震諸元推定システムでは、まず、1秒間係数B(1秒B)の演算部4において、地震計1から得られる地震情報に基づいて、関数フィッティング法(上記特許文献1参照)を用いて、1秒間のP波初動振幅の時間変化の程度を示す1秒間係数B(1秒B)を演算する。次に、その求められた1秒間係数B(1秒B)に基づいて震央距離の推定部5で震央距離の推定を行う。一方、1秒間の最大振幅Amax (1秒Amax )の検出部6で、P波到達から1秒間の最大振幅Amax (1秒Amax )を求め、前記1秒間係数B(1秒B)と、定数kの入力部2から入力される定数kとに基づいてマグニチュードの推定部7でマグニチュードを推定する。そのようにして得られた震央距離の推定値とマグニチュードの推定値とは送信部8から通信回線9を介して地震情報センター(図示なし)へリアルタイムに送信される。
【0010】
具体的な震央距離とマグニチュードの推定方法について説明する。
(1)震央距離の推定
関数フィッティング法に基づき、P波到達から1秒間のデータを下記式(1)に適用し、震央距離を推定する。
logΔ=αlog(1秒B)+β …(1)
ここで、α、βは統計的に決める係数である。
【0011】
(2)マグニチュードの推定
関数フィッティング法に基づき、P波到達から1秒間のデータを使って求めた係数B(1秒B)と1秒間の地震動の最大振幅(1秒Amax )から、マグニチュードを推定する。
M=αlog(1秒Amax )+βlog(1秒B)+γ …(2)
α、β、γは統計的に決める係数である。
【0012】
以下、震央距離とマグニチュードの推定について実際のデータを適用して説明する。
(1)震央距離の推定
従来の早期地震諸元推定方法(上記特許文献1,2)では、図2に概要を示すように、P波初動を下記式(3)にあてはめ、係数A,Bを求め、P波初動の振幅の増加率に対応する係数Bと震央距離の関係から、震央距離を推定する。
【0013】
y(t)=Bt×exp(-At) …(3)
ただし、tはP波到達時刻を0とする時間、係数A,Bは関数をあてはめることによって得られるパラメータである。
ここでは、P波到達から1秒間と2秒間のデータを使って求めた係数B(それぞれ1秒B、2秒Bと呼ぶ)と実際の震央距離の関係の比較を行い、1秒間のデータによる推定の精度を検証する。
【0014】
解析の対象としたデータは、気象庁の95型震度計で得られた強震記録のべ588観測点分である。地震のマグニチュード範囲は、M2.8~M7.3である。
図3に1秒Bと2秒Bの震央距離との関係を示す。個々のデータについては、1秒B(△で示す)と2秒B(□で示す)に違いが見られるものの、全体の傾向としては、両者とも同様な震央距離と負の相関関係がある。なお、図3において、破線は下記式(4)を示している。
【0015】
次に、2秒Bから震央距離を推定するために作成した推定式を1秒Bに適用して推定した震央距離と実際の震央距離の差から、1秒Bでの推定精度を検証する。
2秒Bを用いた震央距離の推定式は次のように表せる。
logΔ=-0.498・log(2秒B)+1.965 …(4)
ただし、Δは推定震央距離(km)、2秒Bの単位はgal/sである。
【0016】
そこで、上記式(4)の2秒Bの項に1秒Bの値を代入し、得られた推定震央距離の推定精度を図4に示す。対象とした588データのうちの約75%が、実際の震央距離の倍半分の範囲 (図4横軸の-0.3~0.3の範囲)内にあり、2秒Bでの震央距離の推定精度とほぼ同等であることが分かる。
(2)マグニチュードの推定
マグニチュードの推定は、P波検測から1秒間の上下動の最大変位振幅 (1秒Amax と呼ぶ)と1秒Bを用いて、下記の統計式を用いて行う。
【0017】
M=αlog(1秒Amax )+βlog(1秒B)+γ …(5)
ただし、Mは推定マグニチュード、1秒Amax はP波検測から1秒間の最大上下動変位(cm)、α、β、γは統計的に求める係数である。
図5に、震央距離と1秒Amax の関係をマグニチュードごとに示す。ここで、■はM(マグニチュード)7、▲はM6、◇はM5、▽はM4、□はM3である。
【0018】
マグニチュードごとにみると、震央距離が大きくなるにつれて(すなわち1秒Bが小さくなるにつれて)、1秒Amax は、ある程度ばらつきを持って小さくなる傾向がある。加えて、2秒後以降のマグニチュード推定用の統計式を用いた震央距離とAmax の関係〔下記式(6)〕を、図5に破線で示す。
M=0.7387・log(Amax )-1.02・log(B)+7.07 …(6)
ただし、図5において、係数1秒Bと震央距離の関係は上記式(4)を用いて換算している。
【0019】
ここで、地震諸元推定の対象とする地震を、「被害を及ぼす可能性のあるマグニチュードの下限値であるM5.5以上で、1秒B≧1gal/sとすることで網羅できる震央距離30km以内の地震」とした場合の、上記式(6)を用いたマグニチュードの推定精度を図6に示す。上記の対象となるデータは588データ中22データであり、そのすべてのデータにおいてマグニチュードが過小評価されている。
【0020】
これは、もともと上記式(6)に示す推定式が、P波検測から3秒間の上下動の最大変位とマグニチュードの関係から作成されたものであるためであり、データ数を更に増やしたとしてもこの過小評価の傾向は変わらないと考える。
しかし、図5で示したように1秒Amax の距離減衰の傾きは、上記式(6)と同様であることから、より高精度な1秒Amax によるマグニチュードの推定式は、下記のように上記式(6)の推定式に定数を足し合わせることで作成できる。
【0021】
M=0.7387・log(Amax )-1.02・log(B)+7.07+k(定数) …(7)
ここで、kは定数である。また、この定数は、図6の誤差の頻度分布からkを0.5とすることで、1秒間のデータによるマグニチュードの推定精度が高まる。
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の早期地震諸元推定方法及びそのシステムは、直下型の地震にも対応可能な早期地震諸元推定方法として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例を示す早期地震諸元推定システムを示す図である。
【図2】関数フィッティング法の概要説明図である。
【図3】関数フィッティング法における係数B(1秒B,2秒B)と震央距離の関係を示す図である。
【図4】1秒Bによる震央距離の推定精度を示す図である。
【図5】震央距離と1秒Amax の関係を示す図である。
【図6】推定式(6)によるマグニチュードの推定精度を示す図である。
【符号の説明】
【0024】
1 地震計
2 定数kの入力部
3 情報処理装置
4 1秒間係数Bの演算部
5 1秒間係数Bに基づいた震央距離の推定部
6 P波到達から1秒間の最大振幅Amax の検出部
7 最大振幅Amax と1秒間係数Bと定数kとに基づいたマグニチュードの推定部
8 震央距離とマグニチュードの推定値の送信部
9 通信回線
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5