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明細書 :自動沈下調整機能付きまくらぎ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4463137号 (P4463137)
公開番号 特開2006-274720 (P2006-274720A)
登録日 平成22年2月26日(2010.2.26)
発行日 平成22年5月12日(2010.5.12)
公開日 平成18年10月12日(2006.10.12)
発明の名称または考案の名称 自動沈下調整機能付きまくらぎ
国際特許分類 E01B   3/00        (2006.01)
E01B   1/00        (2006.01)
FI E01B 3/00
E01B 1/00
請求項の数または発明の数 5
全頁数 14
出願番号 特願2005-097701 (P2005-097701)
出願日 平成17年3月30日(2005.3.30)
審査請求日 平成19年6月27日(2007.6.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】村本 勝己
個別代理人の代理人 【識別番号】100097113、【弁理士】、【氏名又は名称】堀 城之
審査官 【審査官】須永 聡
参考文献・文献 特開2004-156284(JP,A)
特開平11-198204(JP,A)
特表2003-517523(JP,A)
特開2000-104201(JP,A)
特開平11-172693(JP,A)
特開平04-106224(JP,A)
特開平09-165702(JP,A)
特開平11-043902(JP,A)
特開平10-266280(JP,A)
特開2004-068545(JP,A)
実公昭40-013361(JP,Y1)
調査した分野 E01B 1/00
E01B 3/00
E01B 37/00
CiNii
特許請求の範囲 【請求項1】
道床上に敷設されるまくらぎであり、レールが締結される上部ブロックと、前記道床上に設置され、前記上部ブロックが収納可能な下部ボックスと、前記上部ブロックと前記下部ボックスとの間に介在し、前記上部ブロックを支持する自動沈下調整装置と、前記上部ブロックと前記下部ボックスとの間に介在し、前記上部ブロックの前記下部ボックスに対する昇降を案内し、水平方向のずれを拘束する案内部材とを備え、前記自動沈下調整装置は上向きには前記上部ブロックを拘束することなく上昇させると共に上昇させた状態を維持させ、前記下部ボックスを支持する前記道床、もしくは路盤に沈下が生じても、前記上部ブロックの上面及び前記レールのレベルが沈下前の正規の位置を保持し、荷重支持剛性が低下することを防止する機能を有することを特徴とする自動沈下調整機能付きまくらぎ。
【請求項2】
前記上部ブロックに、前記下部ボックスに接続された連結具が挿通し、上部ブロックの上面に定着可能とされていることを特徴とする請求項1に記載の自動沈下調整機能付きまくらぎ。
【請求項3】
前記上部ブロックは長さ方向に2分割され、その分割された上部ブロック構成材毎に前記自動沈下調整装置が設置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動沈下調整機能付きまくらぎ。
【請求項4】
前記自動沈下調整装置は前記上部ブロックを支持する油圧シリンダと、前記油圧シリンダに接続されるオイルタンクとを備え、前記油圧シリンダと前記オイルタンクとの間に前記オイルタンク内のオイルを前記油圧シリンダ側へ流し、逆流を阻止する逆止弁が介在していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の自動沈下調整機能付きまくらぎ。
【請求項5】
前記オイルタンクに予圧が与えられていることを特徴とする請求項4に記載の自動沈下調整機能付きまくらぎ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は道床(バラスト)上に敷設されるまくらぎにおいて、輪荷重が変動することによる沈下が生じたときに、レールレベルが沈下前の正規の位置を保持し、まくらぎ自身の荷重支持剛性が低下することを防止する機能を持たせた自動沈下調整機能付きまくらぎに関するものである。
【背景技術】
【0002】
バラスト上に敷設されたまくらぎにレールを締結したバラスト軌道においては、踏切との境界や高架橋取付部等、道床の構造が変化する箇所の他、レールの継ぎ目等の近辺で荷重変動が生じ、図7-(a)に示すように1本~3本程度のまくらぎに局所的な沈下が生ずることがある。まくらぎに局所的な沈下が発生すると、図7-(b)に示すように列車が通過した後のレールの弾性回復によりレールに締結されているまくらぎが持ち上げられ、いわゆる浮きまくらぎの状態になることが多い。
一度浮きまくらぎが発生すると、列車が通過する度にまくらぎが道床に叩き付けられてまくらぎに衝撃的な荷重が作用するため、まくらぎの沈下が促進され、次第に大きな軌道狂いを発生させることになる。
【0003】
また路盤に雨水が帯水している状態では、列車通過時の浮きまくらぎの降下によるポンピングアクションにより路盤土が吸い上げられてバラスト外へ噴出する、いわゆる噴泥の発生が顕著になることも分かっている。
【0004】
このようにバラスト軌道における浮きまくらぎの発生は深刻な軌道変状の元凶であり、バラスト軌道において浮きまくらぎの発生を防止することは軌道保守点検を軽微にし、保守コストを低減する上で重要な課題となっている。
【0005】
浮きまくらぎ発生の問題に対しては従来、バラスト中に高分子弾性材の小片を埋設すると共に、小片間に合成樹脂を注入することによりバラストに弾性を付与する方法(特許文献1参照)や、バラスト中に急結性のグラウトを注入することによりまくらぎを安定させる方法がある(特許文献2参照)。
まくらぎに沈下が生じた後に、まくらぎをジャッキアップし、その下に沈下量に相当する高さのパッドを挿入する方法もある(特許文献3参照)。
【0006】
この他、まくらぎを上部ブロックと、その上部ブロックが収納可能な下部ボックスから構成し、上部ブロックに沈下が生じたときに下部ボックスとの間に充填材を充填し、上部ブロックを上昇させることにより、まくらぎの高さを調整する方法もある(特許文献4参照)。
【0007】

【特許文献1】特開平11-209903号公報(請求項1、段落0007~0010、図3~図4)
【特許文献2】特開2002-242103号公報(請求項1、段落0008~0013、図2~図8)
【特許文献3】特開平8-246401号公報(請求項1、段落0016~0017、図2、図5)
【特許文献4】特開2004-156284号公報(請求項7、段落0018~0028、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1、2は浮きまくらぎの発生に備えて、特許文献3は浮きまくらぎの発生後に対策を施す方法であるが、特許文献1、3のようにゴムのような弾性材料をまくらぎの下に介在させる方法では、繰り返される荷重変動による疲労によって次第に復元力が低下し、浮きまくらぎの発生を確実に防止する効果が失われる可能性がある。
特許文献2のようにバラストの空隙をグラウトで埋める方法では衝撃的な荷重によってグラウトに亀裂が発生する可能性があり、亀裂が発生すれば、再度グラウトを注入する必要があるため、メインテナンスを必要とする。
【0009】
特許文献4は特許文献1~3とは異なり、まくらぎ自身を上部ブロックと下部ボックスに2分割し、充填材の充填により上部ブロックを下部ボックスに対して上昇させる方法であるため、沈下し、バラスト中に埋没した下部ボックスを基準に上部ブロックの高さを調整することができ、バラストを基準にする場合より高さ調整をし易い利点があるものの、高さ調整には特許文献1~3と同様の作業を必要とする。
いずれもまくらぎの下にその沈下を防止する、または沈下量を埋める材料を設置する方法であり、まくらぎに沈下が生じたときに、まくらぎ自身にその上面の位置を保持させる機能を持たせる考え方はない。
【0010】
本発明は上記背景より、レールレベルが沈下前の正規の位置を保持し、荷重支持剛性が低下することを防止する機能をまくらぎ自身に持たせることで、確実に浮きまくらぎの発生を防止できる自動沈下調整機能付きまくらぎを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は道床上に敷設されるまくらぎにおいて、レールが締結される上部ブロックと、前記道床上に設置され、前記上部ブロックが収納可能な下部ボックスと、前記上部ブロックと前記下部ボックスとの間に介在し、前記上部ブロックを支持する自動沈下調整装置と、前記上部ブロックと前記下部ボックスとの間に介在し、前記上部ブロックの前記下部ボックスに対する昇降を案内し、水平方向のずれを拘束する案内部材とを備え、前記自動沈下調整装置は上向きには前記上部ブロックを拘束することなく上昇させると共に上昇させた状態を維持させ、前記下部ボックスを支持する前記道床、もしくは路盤に沈下が生じても、前記上部ブロックの上面及び前記レールのレベルが沈下前の正規の位置を保持し、荷重支持剛性が低下することを防止する機能を有することを構成要件とする。自動沈下調整装置は1本の上部ブロックにつき、1個、もしくは上部ブロックの長さ方向に間隔をおいて複数個配置される。
【0012】
まくらぎの本体が上部ブロックと下部ボックスに分割されていることで、図3-(a)に示すように、ある自動沈下調整機能付きまくらぎに著大な荷重が作用してそのまくらぎが沈下し、レールに変形が生じたとき、上部ブロックが降下し、それに押されて下部ボックスが道床(バラスト)中に押し込まれる。列車の通過後には(b)に示すようにレールは弾性回復し、それに伴い、レールに締結されている上部ブロックは上昇し、上部ブロック上面及びレールレベルが沈下前の正規の位置を保持し、荷重支持剛性の低下が防止される。
【0013】
上部ブロックが上昇しようとするとき、下部ボックスは自重により道床中に埋め込まれた状態を保つが、自動沈下調整装置が上向きには上部ブロックを拘束することなく上昇させる機能を有することで、図3-(b)に示すように自動沈下調整装置は鉛直方向に伸長等することにより上部ブロックをレールの弾性回復に自由に追従させる。
【0014】
下部ボックスが道床中に押し込まれたとき(図3-(b))、下部ボックス周囲の、道床を構成する砕石は周辺に回り込むが、下部ボックスはその回り込み、圧密された砕石中に自重で埋め込まれた状態を維持することで、砕石に拘束され、砕石中で安定性を確保する。一方、自動沈下調整装置は下向きには上部ブロックの降下を阻止することで、上部ブロックを上昇させた状態を維持するため、上部ブロックに連結されたレールの沈下が阻止され、上部ブロック上面及びレールレベルが沈下前の正規の位置を保持する。
【0015】
この状態では、自動沈下調整装置は下向きには上部ブロックの降下を阻止する機能を発揮し続けるため、自動沈下調整機能付きまくらぎはその後に下部ボックスに作用する鉛直下向きの荷重によって沈下を生ずることなく、その荷重を道床に確実に伝達する機能を発揮し、レールと道床との間で再度の著大な荷重による更なる降下に対して安定する。
【0016】
砕石が下部ボックス周囲に回り込んだ後の道床とレールとの間で自動沈下調整機能付きまくらぎが再度の荷重による降下に対して安定することで、まくらぎに再度著大な荷重が作用しても図3-(c)に示すように上部ブロックの降下(沈下)が阻止されるため、まくらぎの上面の絶対的な高さに変動は生じず、レールに変形は生じない。
また自動沈下調整機能付きまくらぎが道床とレール間で安定することで、上部ブロックがレールから吊り下げられた状態になることがなくなるため、浮きまくらぎの発生が確実に防止され、浮きまくらぎの発生に伴う軌道狂いと、噴泥の発生が回避される。
【0017】
自動沈下調整機能付きまくらぎが一度著大な荷重を受け、下部ボックスが道床中に押し込まれた後に上部ブロックをレールの弾性回復に追従させ、上部ブロック上面及びレールレベルの位置を保持する機能を有することで、まくらぎの下にゴムのような弾性材料を設置した場合のように原位置を保持する機能が低下することはなく、グラウトを充填した場合のように衝撃的な荷重による亀裂が発生する可能性もない。
【0018】
請求項2に記載の発明は上部ブロックに、下部ボックスに接続された連結具が挿通し、上部ブロックの上面に定着可能とされていることを構成要件とする。
請求項2における連結具は自動沈下調整機能付きまくらぎの運搬時や補修時に上部ブロックの上面に定着され、定着により上部ブロックと下部ボックスの一体性を確保し、分離を防止するため、運搬時や補修時の取り扱い作業性を向上させる。
【0019】
連結具は自動沈下調整機能付きまくらぎの使用状態では、原則的に上部ブロックと下部ボックスの相対移動を自由に生じさせるために上部ブロックには定着されないが、必要に応じ、下部ボックスに対して上昇した上部ブロックの更なる上向きの移動を拘束し、上部ブロックの抜け止めを図るために上部ブロックの上面との間にクリアランスを確保して定着されることもある。
【0020】
連結具はまた、上部ブロックを挿通することで、上部ブロックが下部ボックスに対して昇降するときに上部ブロックを案内する働きをするため、昇降するときの上部ブロックの水平移動に対する安定性を高める他、上部ブロックに作用する水平荷重を負担し、下部ボックスに伝達する働きもするため、レールから受ける水平荷重を下部ボックスを介して道床に分散させて伝達する機能も発揮する。
【0021】
また、請求項1に記載の発明は上部ブロックと下部ボックスとの間に、上部ブロックの下部ボックスに対する昇降を案内する案内部材が介在していることを構成要件とする。
【0022】
自動沈下調整装置が上部ブロックを上昇させて保持するとき、自動沈下調整装置が上部ブロックを支持するのみでは自動沈下調整装置の個数によっては上部ブロックが下部ボックスに対して傾斜する、あるいは水平方向にずれる可能性がなくはない。
そこで、請求項3に記載のように上部ブロックと下部ボックスとの間に案内部材を介在させることで、昇降するときの上部ブロックの傾斜や揺れを拘束することができるため、昇降時の上部ブロックの安定性が高まり、上昇後の上部ブロック上面の水平精度が向上する。
【0023】
また上部ブロックに連結具を挿通させる請求項2によれば、定着させた場合に連結具が上昇した上部ブロックの更なる上向きの移動を拘束し、上部ブロックの下部ボックスに対する一定量を超える浮き上がりを阻止するため、上昇後の上部ブロック上面の水平精度が向上し、上部ブロックの安定性も確保される。
【0024】
請求項3に記載の発明は上部ブロックが長さ方向に2 分割され、その分割された上部ブロック構成材毎に自動沈下調整装置が設置されていることを構成要件とする。
【0025】
上部ブロックが1本の部材である場合、1本の上部ブロックは2本のレールを支持することになるが、同一のまくらぎ上の2本のレールに作用する衝撃的な荷重による沈下は必ずしも1本の上部ブロックの長さ方向に一様に発生するとは限らず、中心に関して一方側の沈下量が他方側の沈下量より大きくなることも考えられる。このような場合に上部ブロックが1本の部材であれば、沈下に偏りが生ずる可能性がある。
そこで、請求項4に記載のように上部ブロックが上部ブロック構成材に2分割されることで、上部ブロックが1本のレール毎に区分され、区分された上部ブロック構成材単位で自動沈下調整装置の機能が発揮されるため、上部ブロックの偏った沈下を抑制することが可能になる。
【0026】
請求項4に記載の発明は自動沈下調整装置が、上部ブロックを支持する油圧シリンダと、油圧シリンダに接続されるオイルタンクとを備え、油圧シリンダとオイルタンクとの間にオイルタンク内のオイルを油圧シリンダ側へ流し、逆流を阻止する逆止弁が介在していることを構成要件とする。
【0027】
この場合、油圧シリンダは上部ブロックを支持することで衝撃的な荷重も負担し、衝撃的な荷重の作用時には、逆止弁のクラッキング圧の設定やオイルタンク内の空圧の設定により僅かに収縮しようとするが、油圧シリンダに作用する圧力が一定値を超えれば、逆止弁がオイルタンク側へのオイルの逆流を阻止することで、油圧シリンダはロックされた状態となり、初期の状態を維持しようとするため、衝撃的な荷重による上部ブロックの降下時には下部ボックスが道床中に押し込まれる形になる(図3-(a)、図4-(a))。
【0028】
油圧シリンダが衝撃的な荷重を負担し、ロックされた状態からは車輪が通過した後のレールの弾性回復に伴い、上部ブロックが上昇すると共に、逆止弁を通じてオイルタンクから油圧シリンダの油圧室へオイルが流入して油圧シリンダが伸長し、上部ブロックを上昇させた状態を保持しようとするため、下部ボックスが道床中に埋め込まれたまま上部ブロックが上昇した状態を維持する(図3-(b)、図4-(b))。
【0029】
ここで、請求項5に記載のように請求項4に記載の発明においてオイルタンクに予圧を与えておくことで、その予圧を超える圧力を生じさせる荷重が作用したときに直ちに油圧シリンダをロック状態にすることができるため、ロック状態から油圧シリンダの伸長までの時間を短縮し、レールの弾性回復に追従する上部ブロックの上昇を早めることが可能となる。
上部ブロックと油圧シリンダとの間に何らかのばねを介在させても、油圧シリンダが伸長しようとする応答時期を早める上ではオイルタンクに予圧に与えておくことと同等であるため、予圧に代えて、または予圧と共にばねを使用することもある。
【0030】
上部ブロックがレールと共に上昇した後には、逆止弁により油圧シリンダからオイルタンク側へのオイルの流れが阻止されることで、下部ボックスが道床中に埋め込まれて道床への荷重伝達機能を発揮することと併せ、上部ブロックは降下に対してロックされた状態になるため、レールの弾性回復後、レールが再度衝撃的な荷重を受けたときには上部ブロックは降下せず、レールに沈下は発生しない(図3-(c))。
【0031】
また、自動沈下調整装置が、上部ブロックの中心に関して長さ方向両側に配置され、その中心から端部側へかけて断面が次第に拡大した形状をした摺動ブロックと、両摺動ブロックを連結し、前記両摺動ブロックを互いに引き寄せる連結材とを備えるようにしても良い。

【0032】
この場合、上部ブロックが衝撃的な荷重を受けた後に、下部ボックスの沈下により元の状態より上部ブロックと下部ボックスとの間の距離が拡大した場合にも摺動ブロックが両者に挟まれた状態を維持するよう、上部ブロックの下面と下部ボックスの上面の少なくともいずれか一方は中心から長さ方向両側へかけて対向する面間距離が拡大する傾斜が付けられ、摺動ブロックがその中心から端部側へかけて断面が次第に拡大した形状をする。
自動沈下調整機能付きまくらぎの使用状態では摺動ブロックは上部ブロックの下面と下部ボックスの上面との間における摩擦力(静止摩擦力)によって上部ブロックと下部ボックスとの間に挟まれ、固定された状態を維持する。
【0033】
上部ブロックが衝撃的な荷重を受けて下部ボックスが道床中に押し込まれた後(図5-(a))、上部ブロックがレールの弾性回復に追従して上昇し(図5-(b))、上部ブロックと下部ボックスとの間の距離が拡大したときには一旦、摺動ブロックの上面と上部ブロックの下面との間に空隙が生ずる。このとき、連結材が両摺動ブロックを中心側へ引き寄せることで、摺動ブロックの上面が上部ブロックの下面に接触するまで両摺動ブロックが互いに接近し、その上面と上部ブロック下面との間の空隙を埋めるため、上部ブロックは下部ボックスにロックされた状態となる。
【0034】
上部ブロックがロック状態となったときには、摺動ブロックが中心から端部側へかけて断面が次第に拡大した形状をすることと、図5-(b)に示すように衝撃的な荷重を受ける前より両摺動ブロックが互いに接近していることで、上部ブロック下面と下部ボックス上面との間の距離は衝撃的な荷重を受ける前より拡大する。
上部ブロックが上昇したときに下部ボックスにロックされた状態となることで、レールの弾性回復後、レールが再度衝撃的な荷重を受けたときには上部ブロックは降下せず、レールに沈下は発生しない(図3-(c))。
【0035】
自動沈下調整装置は上部ブロックが降下(沈下)する向きに上部ブロックの降下を阻止し、上昇する向きに上部ブロックを上昇させる機能を有すればよいため、具体的な構成には請求項5、7の他、ラチェット機構を用いることも可能である。
【発明の効果】
【0036】
上記の通り、本発明ではレールが締結される上部ブロックと、上部ブロックが収納可能な下部ボックスと、上部ブロックと下部ボックスとの間に介在する自動沈下調整装置とを備え、自動沈下調整装置が上向きには上部ブロックを拘束することなく上昇させ、下向きには上部ブロックの降下を阻止する機能を有することで、自動沈下調整機能付きまくらぎを道床とレール間で再度の荷重による降下に対して安定させることができる。
この結果、上部ブロックがレールから吊り下げられた状態となる浮きまくらぎの発生を確実に防止することができ、浮きまくらぎの発生に伴う軌道狂いと噴泥の発生を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0038】
本発明は図1-(a)、(b)に示すようにレール7が締結される上部ブロック2と、道床8上に設置され、上部ブロック2が収納可能な下部ボックス3と、上部ブロック2と下部ボックス3との間に介在して上部ブロック2を支持し、上部ブロック2の上面及びレール7のレベルが沈下前の正規の位置を保持し、荷重支持剛性が低下することを防止する機能をする自動沈下調整装置4とを備える自動沈下調整機能付きまくらぎ1である。図1-(a)はレール7の軸方向に見た自動沈下調整機能付きまくらぎ1の断面を、(b)は(a)の平面を示す。
【0039】
図1-(a)に示すように道床8上の、下部ボックス3が設置される箇所には自動沈下調整機能付きまくらぎ1が受ける衝撃を緩和して道床8に伝達するためのラバー層9が敷設され、ラバー層9上に下部ボックス3が設置される。下部ボックス3は上部ブロック2からの荷重を受け、分散させて道床8に伝達する働きをする。
【0040】
下部ボックス3は上部ブロック2の形状に対応し、底板3aと四周の側壁3bから箱形の形状をし、上部ブロック2が降下したときに収納され得るよう、上方が開放する。下部ボックス3は鋼製等の金属、もしくは合成樹脂等で製作される。
【0041】
上部ブロック2は下部ボックス3に上方から嵌入し得る形状をし、使用時には上部ブロック2と下部ボックス3との間に自動沈下調整装置4が配置されることにより下部ボックス3の底板3aから浮いた状態で、また下部ボックス3に対して水平方向にずれないよう、下部ボックス3の側壁3bに係止し得る状態に下部ボックス3に嵌入する。上部ブロック2には長さ方向に間隔をおき、後述の連結具5が挿通するための挿通孔2aが形成される。上部ブロック2はレール7が締結されるため、自動沈下調整機能付きまくらぎ1の本体を構成し、プレストレストコンクリートを含む鉄筋コンクリート、もしくはFRPその他の合成樹脂、木材等から製作される。
【0042】
図1-(b)に示すように上部ブロック2の上面のレール7の位置にはレール7を上部ブロック2に締結するためのタイプレート10がボルト等により固定され、このタイプレート10にレール7が締結装置により締結される。
【0043】
上部ブロック2と下部ボックス3は、上部ブロック2の下部ボックス3からの抜け出しを阻止するためのボルト等の連結具5によって互いに連結された状態で搬入され、道床8上に設置される。連結具5の下端は下部ボックス3の底板3aに螺合、溶接等により接合され、上端は上部ブロック2の挿通孔2aを貫通してその上面から突出する。連結具5の、上部ブロック2の上面から突出した部分には必要によりナット等の締結具5aが螺合する等により接続される。
【0044】
自動沈下調整機能付きまくらぎ1の使用状態では衝撃荷重を受けたときの下部ボックス3の沈下とその後の上部ブロック2の上昇により上部ブロック2と下部ボックス3との間に相対移動が生ずることから、締結具5aは接続されないか、または上部ブロック2の上面との間にクリアランスを確保した状態で接続される。接続された場合には上部ブロック2と下部ボックス3との間の距離が拡大する向きの相対移動が生じたときの上部ブロック2の下部ボックス3からの抜け出しが防止され、上昇後の上部ブロック2の安定性も確保される。
【0045】
上部ブロック2は連結具5によって下部ボックス3に対する相対移動時の安定性も確保するが、図2-(a)では上部ブロック2の安定性をより高めるために、上部ブロック2と下部ボックス3間に、上部ブロック2の下部ボックス3に対する昇降を案内し、水平方向のずれを拘束する案内部材6を介在させている。
【0046】
案内部材6は下部ボックス3の底板3aに軸を鉛直に向けて固定されるロッドやブロック等のガイド6aと、上部ブロック2の底面等に軸を鉛直に向けて固定され、ガイド6aの少なくとも上部を包囲するスリーブ6bからなり、ガイド6aは常にスリーブ6bに水平方向に係止した状態に置かれる。ガイド6aの上端とスリーブ6bの下面との間には、車輪通過時の衝撃的な荷重による上部ブロック2の降下分を見込んだクリアランスが確保される。図2-(a)では上部ブロック2と下部ボックス3を合わせた自動沈下調整機能付きまくらぎ1自身の高さを抑えるために、上部ブロック2の底面側に切欠きを形成し、その切欠き内にスリーブ6bを納めているが、必ずしもその必要はない。
【0047】
上部ブロック2と下部ボックス3間には、上部ブロック2が上昇する向きには上部ブロック2を拘束することなく上昇させ、上部ブロック2が降下する向きには上部ブロック2の降下を阻止し、下部ボックス3を支持する道床8、もしくは路盤に沈下が生じても、上部ブロック2の上面及びレール7のレベルが沈下前の正規の位置を保持する機能を有する自動沈下調整装置4が設置される。自動沈下調整装置4は1本の上部ブロック2の中心に1箇所、もしくは図1、図2に示すように中心に関して均等に複数箇所配置される。
【0048】
図4-(a)は自動沈下調整装置4が上部ブロック2を支持する油圧シリンダ41と、油圧シリンダ41に接続されるオイルタンク42からなる場合の自動沈下調整装置4の初期状態を示す。油圧シリンダ41のシリンダ本体41aは下部ボックス3の底板3a、または上部ブロック2の底面に固定、もしくは水平軸回りに回転自在に連結され、ピストンロッド41bは上部ブロック2、または下部ボックス3に固定、もしくは連結されるか、または単に接触する。図4はシリンダ本体41aを下部ボックス3に固定し、ピストンロッド41bを上部ブロック2に連結した、もしくは接触させた場合を示す。
【0049】
シリンダ本体41aとオイルタンク42は管路43で結ばれ、管路43にオイルタンク42内のオイルを油圧シリンダ41側へ流し、逆流を阻止する逆止弁44が接続される。逆止弁44のクラッキング圧とオイルタンク42内の空圧は上部ブロック2の許容し得る、衝撃荷重による降下量に応じて予め任意に設定される。オイルタンク42内の空圧は空圧調整弁45によって自由に調整され、予めオイルタンク42内に正の空圧(予圧)を与えておけば、上部ブロック2が降下した後のピストンロッド41bの応答(伸長)を早め、衝撃荷重を受けたときからオイルタンク42内のオイルがシリンダ本体41aへ移動するまでの時間を短縮することができる。シリンダ本体41aから突出したピストンロッド41bの回りには予圧を与えることに代え、または予圧の付与と共にコイルスプリングや皿ばね、板ばね等のばねを配置することもある。
【0050】
図4-(a)の状態から上部ブロック2が衝撃荷重を受けたとき、道床8・路盤が沈下し、下部ボックス3は下方へ押し下げられ、図3-(b)に示すように道床8中に押し込まれる。油圧シリンダ41は僅かに収縮しようとし、図3-(a)に示すように上部ブロック2が降下しようとするが、油圧シリンダ41内の油圧が一定値を超えたときに逆止弁44がオイルタンク42側へのオイルの逆流を阻止するため、上部ブロック2の降下は一旦停止する。
【0051】
その後、レール7の弾性回復により上部ブロック2及びレール7が沈下前の正規の位置に戻ろうとし、上部ブロック2の上昇に合わせてオイルタンク42内のオイルがシリンダ本体41aへ流れ込み、ピストンロッド41bが上部ブロック2を上昇させた状態を保持する。上部ブロック2がレール7の弾性回復と共に原位置に復帰し、下部ボックス3が道床8中に押し込まれた状態では下部ボックス3が道床8中で安定し、道床8への荷重伝達機能を発揮する。この状態では逆止弁44が油圧シリンダ41からオイルタンク42側へのオイルの流れを阻止することで、上部ブロック2は道床8上でロックされるため、その後、レール7上を車輪が通過しても図3-(c)に示すように上部ブロック2は降下せず、レール7に沈下は生じない。
【0052】
図3では自動沈下調整機能付きまくらぎ1の両側に隣接する位置に通常のまくらぎ100を配置しているが、自動沈下調整機能付きまくらぎ1はレール7に沿った一部の区間に集中的に配置されることもあるため、図3における通常のまくらぎ100に代えて自動沈下調整機能付きまくらぎ1を配置し、複数本の自動沈下調整機能付きまくらぎ1を並列させることもある。
【0053】
図2-(a)は自動沈下調整装置4が油圧シリンダ41とオイルタンク42からなる場合の自動沈下調整機能付きまくらぎ1を示しているが、ここでは油圧シリンダ41が発生する圧力が上部ブロック2に効率的に伝達されるよう、ピストンロッド41b等、上部ブロック2との接触面を曲面にしている。図2-(b)は(a)の詳細例を示すが、ここでは油圧シリンダ41をケース46に収納し、油圧シリンダ41が接触する上部ブロック2側にブロック47を収納したケース48を固定している。
【0054】
図2では上部ブロック2の下に4個の油圧シリンダ41を設置し、上部ブロック2の上に4個の油圧シリンダ41にオイルを供給する1個のオイルタンク42を設置しているが、1個の油圧シリンダ41毎にオイルタンク42を設置することもある。
【0055】
図5-(a)は自動沈下調整装置4が、上部ブロック2の中心に関して長さ方向両側に配置され、その中心から端部側へかけて断面が次第に拡大した形状をした摺動ブロック411と、両摺動ブロック411、411を互いに連結し、両摺動ブロック411、411を互いに引き寄せる向きに復元力を発揮する連結材412からなる場合に、自動沈下調整装置4が上部ブロック2から衝撃荷重を受ける前の様子を示す。
【0056】
上部ブロック2の下面と下部ボックス3の上面の少なくともいずれか一方は中心から長さ方向両側へかけて対向する面間距離が拡大する傾斜が付けられ、それに対応して摺動ブロック411がその中心から端部側へかけて断面が次第に拡大した楔形の形状をする。上部ブロック2下面や下部ボックス3上面の傾斜と、摺動ブロック411の形状により、上部ブロック2が衝撃的な荷重を受けた結果、元の状態より上部ブロック2と下部ボックス3との間の距離が拡大した場合にも摺動ブロック411が両者に挟まれた状態を維持することが可能となっている。
【0057】
摺動ブロック411は図5-(a)に示す平常時にはその上面と上部ブロック2の下面との間、及び下面と下部ボックス3の上面との間の摩擦力によって上部ブロック2と下部ボックス3との間に挟まれて安定した状態を維持している。この状態で連結材412は常に両摺動ブロック411、411を互いに引き寄せる向きに復元力を発揮しており、両摺動ブロック411、411は上部ブロック2の長さ方向に摺動自在であり、摩擦力が小さくなったときに図5-(a)に示す元の状態より互いに接近し得る状態にある。連結材412にはコイルスプリングや板ばねの組み合わせ等のばねが使用される。
【0058】
上部ブロック2、すなわち自動沈下調整装置4が衝撃的な荷重を受けたときには図3-(b)に示すように下部ボックス3が道床8中に沈下する一方、上部ブロック2が弾性回復するレール7と共に原位置に復帰することで、上部ブロック2と下部ボックス3との間の距離が拡大する。このとき、摺動ブロック411が上部ブロック2と下部ボックス3から受ける摩擦力が低下するため、両摺動ブロック411、411は連結材412の復元力によって図5-(b)に示すように互いに接近し、上部ブロック2と下部ボックス3との間の距離が拡大したまま保たれる。摺動ブロック411の上下の面とそれに対向する面の少なくともいずれか一方には摺動ブロック411、411の接近時の滑動を円滑にするためにPTFE等の低摩擦材を介在させることもある。
【0059】
上部ブロック2の下面と下部ボックス3の上面、及び摺動ブロック411の上下面が平坦面であれば、両者間距離が拡大した後に元に戻ろうとするが、上部ブロック2下面や下部ボックス3上面が傾斜面であることと、摺動ブロック411が楔形の形状をすることにより、両摺動ブロック411、411の接近によって上部ブロック2下面と下部ボックス3との間の距離は縮小せず、上部ブロック2が下部ボックス3に対して固定(ロック)された状態となる。図5-(b)は図3-(c)の状態に相当する。
【0060】
図5-(b)の状態からは摺動ブロック411、411が再び、上部ブロック2と下部ボックス3から摩擦力を受けて安定することで、上部ブロック2が下部ボックス3に対して降下することが阻止され、上部ブロック2は道床8上でロックされた状態になるため、その後、レール7上を車輪が通過しても図3-(c)に示すように上部ブロック2は降下せず、レール7に沈下は生じない。
【0061】
図6は上部ブロック2を長さ方向に2分割し、その分割された上部ブロック構成材21、21毎に自動沈下調整装置4を設置した場合の自動沈下調整機能付きまくらぎ1の構成例を示す。ここでは各上部ブロック構成材21の下に自動沈下調整装置4を2個ずつ設置しているが、設置数は問われない。図6の場合は連結具5や案内部材6も各上部ブロック構成材21単位で設置される。上部ブロック構成材21、21はそれぞれの自動沈下調整装置4によって個別に挙動できるよう、互いに分離する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】(a)は自動沈下調整機能付きまくらぎの構成例を示した、レールの軸方向の断面図、(b)は(a)の平面図である。
【図2】(a)は自動沈下調整装置が油圧シリンダとオイルタンクからなる場合の自動沈下調整機能付きまくらぎの構成例を示した断面図、(b)は(a)の油圧シリンダ部分の拡大図である。
【図3】(a)は車輪の通過により自動沈下調整機能付きまくらぎが沈下したときの様子を示したレールに直交する方向の断面図、(b)はレールが弾性回復したときの様子を示した断面図、(c)は再度車輪が通過したときの様子を示した断面図である。
【図4】(a)は油圧シリンダとオイルタンクからなる自動沈下調整装置の初期状態を示した縦断面図、(b)は油圧シリンダが上部ブロックを押し上げたときの様子を示した縦断面図である。
【図5】(a)は摺動ブロックと連結材からなる自動沈下調整装置が衝撃荷重を受ける前の様子を示した縦断面図、(b)は衝撃荷重を受けた後の様子を示した縦断面図である。
【図6】(a)は自動沈下調整機能付きまくらぎを2分割した場合の構成例を示した、レールの軸方向の断面図、(b)は(a)の平面図である。
【図7】(a)は従来のまくらぎが車輪の通過により沈下したときの様子を示したレールに直交する方向の断面図、(b)はレールが弾性回復したときの様子を示した断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1………自動沈下調整機能付きまくらぎ
2………上部ブロック
2a……挿通孔
21……上部ブロック構成材
3………下部ボックス
3a……底板
3b……側壁
4………自動沈下調整装置
41……油圧シリンダ
41a…シリンダ本体
41b…ピストンロッド
42……オイルタンク
43……管路
44……逆止弁
45……空圧調整弁
46……油圧シリンダ用のケース
47……ブロック
48……上部ブロック側のケース
411…摺動ブロック
412…連結材
5………連結具
5a……締結具
6………案内部材
6a……ガイド
6b……スリーブ
7………レール
8………道床
9………ラバー層
10……タイプレート
100…まくらぎ

図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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