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明細書 :移動体の風速低減構造

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4438669号 (P4438669)
公開番号 特開2006-273294 (P2006-273294A)
登録日 平成22年1月15日(2010.1.15)
発行日 平成22年3月24日(2010.3.24)
公開日 平成18年10月12日(2006.10.12)
発明の名称または考案の名称 移動体の風速低減構造
国際特許分類 B61D  49/00        (2006.01)
B61D  17/02        (2006.01)
FI B61D 49/00 Z
B61D 17/02
請求項の数または発明の数 5
全頁数 14
出願番号 特願2005-099926 (P2005-099926)
出願日 平成17年3月30日(2005.3.30)
審査請求日 平成19年7月23日(2007.7.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】斎藤 実俊
個別代理人の代理人 【識別番号】100104064、【弁理士】、【氏名又は名称】大熊 岳人
審査官 【審査官】西中村 健一
参考文献・文献 実開昭55-073468(JP,U)
特開2001-239936(JP,A)
特開2002-325304(JP,A)
特開2006-117218(JP,A)
特開平01-132462(JP,A)
特開2000-016288(JP,A)
特開2002-205639(JP,A)
調査した分野 B61D 49/00
B61D 17/02
B61F 3/14
B62D 35/00-02
B62D 37/02
特許請求の範囲 【請求項1】
移動体が移動するときにこの移動体の周囲に発生する気流の風速を低減する移動体の風速低減構造であって、
前記移動体の底面凸部の側方、前方及び後方に前記気流の風速を低減する風速低減部を備え、
前記底面凸部は、前記移動体の走行装置であり、
前記風速低減部は、
前記走行装置の側面を覆う第1の側板部と、
前記第1の側板部と連続して前記移動体の端部まで伸びる第2の側板部と、
後側の前記走行装置の前方の前記移動体の底面からこの走行装置に向かって下方に傾斜する第1の傾斜部と、
前側の前記走行装置の後方の前記移動体の底面からこの走行装置に向かって下方に傾斜する第2の傾斜部とを備えること、
を特徴とする移動体の風速低減構造。
【請求項2】
請求項1に記載の移動体の風速低減構造において、
前記第1の傾斜部は、後側の前記走行装置の前方の前記移動体の底面に側方に傾斜し、
前記第2の傾斜部は、前側の前記走行装置の後方の前記移動体の底面に側方に傾斜すること、
を特徴とする移動体の風速低減構造。
【請求項3】
移動体が移動するときにこの移動体の周囲に発生する気流の風速を低減する移動体の風速低減構造であって、
前記移動体の底面凸部の側方、前方及び後方に前記気流の風速を低減する風速低減部を備え、
前記底面凸部は、前記移動体の走行装置であり、
前記風速低減部は、
前記走行装置の側面を覆う第1の側板部と、
前記第1の側板部と連続して前記移動体の端部まで伸びる第2の側板部と、
後側の前記走行装置の前方の前記移動体の底面に側方に傾斜する第1の傾斜部と、
前側の前記走行装置の後方の前記移動体の底面に側方に傾斜する第2の傾斜部とを備えること、
を特徴とする移動体の風速低減構造。
【請求項4】
請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の移動体の風速低減構造において、
前記底面凸部は、前記移動体の床下機器であり、
前記風速低減部は、
前記床下機器の側面を覆う側板部と、
前記床下機器の前後の前記移動体の底面からこの床下機器に向かって下方に傾斜する傾斜部とを備えること、
を特徴とする移動体の風速低減構造。
【請求項5】
請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の移動体の風速低減構造において、
前記底面凸部は、前記移動体の床下機器であり、
前記風速低減部は、
前記床下機器の側面を覆う側板部と、
前記床下機器の前後の前記移動体の底面に側方に傾斜する傾斜部とを備えること、
を特徴とする移動体の風速低減構造。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、移動体が移動するときにこの移動体の周囲に発生する気流の風速を低減する移動体の風速低減構造に関する。
【背景技術】
【0002】
列車が高速で走行すると、列車の周りには強い列車風が発生する。この列車風は、列車の走行に伴って発生する空気の流れであり、明かり区間(トンネル区間以外の区間)では列車の通過にともなって、先頭部で発生する湧き出し流と、中間部で発生する境界層流と、後尾部で発生する伴流とに分けられる。このような列車風が発生すると、線路に敷き詰めてある砂利や砕石などから構成されるバラストが舞い上がり、車両の床下機器や軌道の周辺の地上構造物を損傷する可能性がある。バラストの舞い上がりは、バラストの表面の風速が速いほど発生しやすいが、新幹線では現在さらなる高速化を目指しており、バラストの飛散を防止する必要がある。従来、このようなバラストの飛散を防止するために種々の対策が提案されている。
【0003】
従来のバラスト飛散防止方法(従来技術1)は、バラスト上に水性樹脂を散布した後に、凝集剤水溶液を散布して被膜を形成している(例えば、特許文献1参照)。このような従来のバラスト飛散防止方法では、水性樹脂の散布直後からの降雨などによる水性樹脂の流出を防止して、列車風によるバラストの飛散を防止している。
【0004】
従来のバラスト飛散防止方法(従来技術2)は、バラストが飛び出さない程度の網目の天然繊維や合成樹脂の網状シート材に、ゴムや合成樹脂の配合物を浸透させて形成したバラスト飛散防止シートを軌道上に設置している(例えば、特許文献2参照)。このような従来のバラスト飛散防止方法では、バラスト飛散防止シートをレールの内側及び外側にバラストを覆うように設置して、列車風によるバラストの飛散を防止している。
【0005】

【特許文献1】特開平6-158601号公報
【0006】

【特許文献2】特開平9-250103号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術1,2は、いずれも有効な対策ではあるが地上側におけるバラスト飛散防止対策である。このため、従来技術1では、保線作業後にバラスト上に再度水性樹脂などを散布する必要があり、従来技術2では保線作業時にバラスト飛散防止シートを着脱する必要があり、保線作業に手間がかかり支障をきたす問題点がある。また、従来技術1,2では、いずれも長いバラスト区間に水性樹脂を塗布したりバラスト飛散防止シートを設置したりする必要があり、コストが高くなってしまう問題点がある。
【0008】
この発明の課題は、低コストで簡単な構造によって移動体の周囲に発生する気流の風速を低減することができる移動体の風速低減構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、図~図11に示すように、移動体(1)が移動するときにこの移動体の周囲に発生する気流の風速を低減する移動体の風速低減構造であって、前記移動体の底面凸部の側方、前方及び後方に前記気流の風速を低減する風速低減部(7)を備え、前記底面凸部は、前記移動体の走行装置(2)であり、前記風速低減部は、前記走行装置の側面を覆う第1の側板部(7a)と、前記第1の側板部と連続して前記移動体の端部まで伸びる第2の側板部(7d)と、後側の前記走行装置の前方の前記移動体の底面(4)からこの走行装置に向かって下方に傾斜する第1の傾斜部(7f)と、前側の前記走行装置の後方の前記移動体の底面(4)からこの走行装置に向かって下方に傾斜する第2の傾斜部(7f)とを備えることを特徴とする移動体の風速低減構造である。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載の移動体の風速低減構造において、前記第1の傾斜部は、後側の前記走行装置の前方の前記移動体の底面に側方に傾斜し、前記第2の傾斜部は、前側の前記走行装置の後方の前記移動体の底面に側方に傾斜することを特徴とする移動体の風速低減構造である。
【0011】
請求項3の発明は、図14に示すように、移動体(1)が移動するときにこの移動体の周囲に発生する気流の風速を低減する移動体の風速低減構造であって、前記移動体の底面凸部の側方、前方及び後方に前記気流の風速を低減する風速低減部(7)を備え、前記底面凸部は、前記移動体の走行装置(2)であり、前記風速低減部は、前記走行装置の側面を覆う第1の側板部(7a)と、前記第1の側板部と連続して前記移動体の端部まで伸びる第2の側板部(7d)と、後側の前記走行装置の前方の前記移動体の底面に側方に傾斜する第1の傾斜部(7h)と、前側の前記走行装置の後方の前記移動体の底面に側方に傾斜する第2の傾斜部(7h)とを備えることを特徴とする移動体の風速低減構造である。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の移動体の風速低減構造において、図15に示すように、前記底面凸部は、前記移動体の床下機器(4a,4b)であり、前記風速低減部は、前記床下機器の側面を覆う側板部(7j)と、前記床下機器の前後の前記移動体の底面(4)からこの床下機器に向かって下方に傾斜する傾斜部(7k)とを備えることを特徴とする移動体の風速低減構造である。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の移動体の風速低減構造において、前記底面凸部は、前記移動体の床下機器(4a,4b)であり、前記風速低減部は、前記床下機器の側面を覆う側板部と、前記床下機器の前後の前記移動体の底面に側方に傾斜する傾斜部とを備えることを特徴とする移動体の風速低減構造である。
【発明の効果】
【0016】
この発明によると、低コストで簡単な構造によって移動体の周囲に発生する気流の風速を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、この発明の第1実施形態について詳しく説明する。
図1は、この発明の第1実施形態に係る移動体の風速低減構造を備える車両が走行している状態を示す側面図である。図2は、この発明の第1実施形態に係る移動体の風速低減構造を備える車両の正面図である。図3は、この発明の第1実施形態に係る移動体の風速低減構造を備える車両の側面図である。図4は、この発明の第1実施形態に係る移動体の風速低減構造を備える車両の底面図である。図5は、この発明の第1実施形態に係る移動体の風速低減構造を備える車両の縦断面図である。図6は、この発明の第1実施形態に係る移動体の風速低減構造を車両の底面側から見た斜視図である。
【0018】
図1に示す軌道Rは、車両1が走行する通路(線路)である。バラストR1は、レールを支持するまくらぎと路盤との間に敷き詰められる砂利や砕石などの粒状体であり軌道Rの一部を構成する。
【0019】
車両1は、軌道Rに沿って移動する移動体である。車両1は、300km/h以上の高速で走行する新幹線車両などであり、台車2と車体3などを備えている。車両1は、図1に示すように、軌道R上をA方向に走行している。台車2は、車体3を支持して走行する走行装置であり、車体3の底面凹部6に設置されている。台車2は、図4に示すように、レールと転がり接触する車輪2aと、この車輪2aを取り付ける車軸2bと、この車軸2bを支持する台車枠2cなどから構成されている。図1~図4に示す車体3は、乗客を積載し輸送するための構造物であり、車体底面(車両床下)4と、車体側面5と、底面凹部6などを備えている。
【0020】
車体底面4は、軌道Rの表面(地表面)と対向する側の面であり、図1に示すように耐寒耐雪車両の雪氷害対策の一つとして車両1の床下機器が平坦なカバーによって覆われた床下平滑化構造などを有する鉄道車両の底面である。車体側面5は、軌道Rに対してほぼ垂直な面であり、下側縁部が曲面に形成されて車体底面4と連続している。車体側面5には、車体3の長さ方向の両端部(車体3の妻面側)に側面端部5a,5bが形成されている。
【0021】
底面凹部6は、台車2を収納する収納部であり、車体底面4に形成された切欠部(キャビティ)である。底面凹部6は、図4~図6に示すように、台車2を支持するほぼ水平な底面6aと、この底面6aの長さ方向(車両1の長さ方向)の両端部にそれぞれ形成され底面6aに対して所定の角度(例えば60°程度)で上方に傾斜する傾斜面6bなどを備えている。
【0022】
風速低減部7は、車両1が走行するときにこの車両1の周囲に発生する気流の風速を低減するための部分である。風速低減部7は、図3~図5に示すように、車両1を基準として相対的に車体側面5に沿ってB方向に流れる気流が台車2及び底面凹部6付近で乱れるのを防ぎ、気流をスムーズに流すことによって地表面の風速を低下させる。風速低減部7は、図1、図3~図5に示すように、台車2(底面凹部6)の側方、前方及び後方に設置されており、側板部7aと傾斜部7bとを備えている。
【0023】
側板部7aは、車体側面5を底面凹部6に向かって流れる空気が台車2で乱されこの底面凹部6から剥離するのを抑制する部分である。側板部7aは、軌道Rの外側の気流の速度を低下させてバラストR1が舞上るのを抑制する。側板部7aは、車体側面5に沿って空気が流れるように前後の台車2の側面を覆う側カバー部(台車整風カバー)として機能し、台車2の点検作業時に支障がないように車体3に着脱自在に装着されている。側板部7aは、図1~図6に示すように、底面凹部6の切欠部を塞ぐように台車2の側方に設置されており、車両限界の範囲内で側板部7aの下端面が車体底面4から僅かに突出するように形成されている。
【0024】
傾斜部7bは、車両1がA方向に走行してこの車両1を基準として相対的にB方向に空気が流れたときに、車体底面4を底面凹部6に向かって流れる空気が台車2に直接当たり流れが淀んだり乱れたりするのを抑制するとともに、この底面凹部6から剥離するのを抑制する部分である。また、傾斜部7bは、車両1を基準として相対的に底面凹部6から車体底面4に向かって流れる空気がこの底面凹部6から剥離するのを抑制する部分である。傾斜部7bは、図1~図6に示すように、台車2(底面凹部6)の前後の車体底面4から台車2に向かって下方(軌道R側)に傾斜している。傾斜部7bは、底面凹部6に向かって流れる気流が台車2の前方の傾斜部7bから剥離するのを防止し、かつ、底面凹部6から車体底面4に向かって流れる気流が台車2の後方の傾斜部7bから剥離するのを防止するために、所定の傾斜角度(例えば13°程度)に設定されている。傾斜部7bは、図5に示すように、外観形状がほぼ四角錐状に形成されており、車体底面4に沿って流れる気流を車体3の両側の車体側面5に向かって横方向にスムーズに逃がす。傾斜部7bには、図4及び図6に示すように、車体底面4側から見たときにこの車体底面4の中心線上の台車2の前方及び後方に先端部(頂角部)7cが形成されており、この先端部7cには流れの剥離防止のためのR(丸み)が付与されている。
【0025】
次に、この発明の第1実施形態に係る移動体の風速低減構造の作用を説明する。
図1に示すように、車両1がA方向に走行した場合に、車両1を基準とすると相対的に車両1の先頭側から後尾側に向かって車体側面5に沿ってB方向に空気が流れる。図1~図6に示す側板部7a及び傾斜部7bが存在しない場合には、車両1を基準として相対的に車体側面5に沿ってB方向に流れる空気が台車2で乱され、底面凹部6で車体側面5から剥離する。流れが剥離すると列車から見たB方向の流れは遅くなるので、地上側から見たA方向に流れるバラスト表面の列車風は相対的に速くなり、その結果、列車風によってバラストR1が持ち上げられて舞上り、舞上ったバラストR1が飛散する。
【0026】
一方、図1~図6に示すように、側板部7a及び傾斜部7bが存在する場合には、車体側面5に沿って流れる空気の剥離を側板部7aが抑制するとともに、車体底面4に沿って流れる空気の乱れ及び剥離を傾斜部7bが抑制する。このため、側板部7a及び傾斜部7bによって台車2の周囲の流れの乱れが抑えられ、軌道Rの表面の空気の流れがスムーズになる。その結果、軌道Rの表面の風速が低下してバラストR1の舞上りが抑制される。
【0027】
この発明の第1実施形態に係る移動体の風速低減構造には、以下に記載するような効果がある。
(1) この第1実施形態では、台車2の側方、前方及び後方に気流の風速を低減する風速低減部7を備えている。このため、列車風の速度を低減してバラストR1が舞上り飛散するのを防止することができる。その結果、列車のさらなる高速化を図ることができるとともに、従来技術1,2のような地上側のバラスト飛散対策が不要になり低コスト化を図ることができる。
【0028】
(2) この第1実施形態では、台車2の側面を側板部7aが覆うとともに、この台車2の前後の車体底面4に下方に傾斜する傾斜部7bを備えている。このため、車体側面5を流れる空気や車体底面4を流れる空気が底面凹部6から剥離して空気の流れが乱れるのを簡単な構造によって抑制することができる。その結果、軌道R面の列車風の速度が低下してバラストR1の舞上りを抑制することができる。
【0029】
(第2実施形態)
図7は、この発明の第2実施形態に係る移動体の風速低減構造を備える車両が走行している状態を示す側面図である。図8は、この発明の第2実施形態に係る移動体の風速低減構造を備える車両の側面図である。図9は、この発明の第2実施形態に係る移動体の風速低減構造を備える車両の底面図である。図10は、この発明の第2実施形態に係る移動体の風速低減構造を備える車両の縦断面図である。図11は、この発明の第2実施形態に係る移動体の風速低減構造を車両の底面側から見た斜視図である。以下では、図1~図6に示す部分と同一の部分については、同一の番号を付して詳細な説明を省略する。
【0030】
図7~図11に示す風速低減部7は、側板部7a,7dと傾斜部7fとを備えている。側板部7dは、前側の車両1の後側の台車2の後方に配置されており、前側の車両1の後側の側板部7aと連続してこの車両1の後側の側面端部5aまで伸びている。また、側板部7dは、後側の車両1の前側の台車2の前方に配置されており、後側の車両1の前側の側板部7aと連続してこの車両1の前側の側面端部5bまで伸びている。側板部7dは、側板部7aと同じ高さで形成されており、側板部7aと同一構造であり同一の機能を有する。傾斜部7fは、車両1の後側の台車2の前方の車体底面4からこの台車2に向かって下方に傾斜している。また、傾斜部7fは、前側の台車2の後方の車体底面4からこの台車2に向かって下方に傾斜している。傾斜部7fは、図1~図6に示す傾斜部7bと同一構造であり同一の機能を有する。この第2実施形態には、第1実施形態と同様の効果がある。
【0031】
(第3実施形態)
図12は、この発明の第3実施形態に係る移動体の風速低減構造を備える車両の正面図である。図13は、この発明の第3実施形態に係る移動体の風速低減構造を車両の底面側から見た斜視図である。
図12及び図13に示す風速低減部7は、側板部7aと傾斜部7hとを備えており、傾斜部7hは台車2の前後の車体底面4に側方に向かって傾斜する部分である。傾斜部7hは、図13に示すように、外観形状がほぼ三角柱状に形成されており、車体底面4に沿って流れる気流を車体3の両側の車体側面5に向かって横方向にスムーズに逃がす。傾斜部7hには、図13に示すように、車体底面4側から見たときにこの車体底面4の中心線上の台車2の前方及び後方に先端部(頂角部)7iが形成されており、この先端部7iには剥離を防止するためのR(丸み)が付与されている。この第3実施形態には、第1実施形態及び第2実施形態と同様の効果がある。
【0032】
(第4実施形態)
図14は、この発明の第4実施形態に係る移動体の風速低減構造を車両の底面側から見た斜視図である。
図14に示す風速低減部7は、側板部7a,7dと傾斜部7hとを備えており、傾斜部7hは図7~図10に示す傾斜部7fと同じ位置に設置されている。この第4実施形態には、第1実施形態~第3実施形態と同様の効果がある。
【0033】
(第5実施形態)
図15は、この発明の第5実施形態に係る移動体の風速低減構造を備える車両が走行している状態を示す側面図である。
図15に示す車両1は、例えば、在来線を高速で走行する車両である。車両1は、車体底面4に設置された床下機器4a,4bを備えており、床下平滑化構造などを有する鉄道車両とは異なり車体底面4から台車2及び床下機器4a,4bが突出し露出している。風速低減部7は、車体底面4とバラストR1との間を相対的にB方向に流れる気流が台車2及び床下機器4a,4b付近で乱れるのを防ぎ、バラストR1の表面の列車風の速度を低下させてバラストR1の舞上りを抑制する。風速低減部7は、台車2及び床下機器4a,4bの側方、前方及び後方に設置されており、図1~図14に示す側板部7a,7dと同様の側板部7jと、傾斜部7b,7f~7hと同様の傾斜部7kとを備えている。この第5実施形態では、在来線の高速車両などが軌道R上を走行したときに発生するバラストR1の舞上りを抑制することができる。
【実施例】
【0034】
次に、この発明の実施例について説明する。
列車通過時に発生する地表面の風速を実際の車両で測定すると、車体底面よりも台車のほうが地表面に近いため、台車が通過する度に風速が大きくなる。そこで、図1~図14に示す実際の車両1を縮尺した3両編成の模型車両を風洞試験装置内に設置するとともに、中間車両前端部よりも1384mm後方の、この模型車両の中心線から157mm外側に風速測定器を設置し、この風速測定器の高さを変化させて台車の地表面風速に対する影響を調査した。
【0035】
図16は、風速測定試験に使用した模型車両を概略的に示す側面図であり、図16(A)は実施例1の側面図であり、図16(B)は実施例2の側面図であり、図16(C)は従来の側面図である。
図16(A)に示す実施例1は、図1~図6に示す風速低減構造(第1実施形態)と同一であり、側板部7a及び傾斜部7bを備えている。図16(B)に示す実施例2は、図7~図14に示す風速低減構造(第2実施形態)と同一であり、側板部7a,7d及び傾斜部7fを備えている。図16(C)に示す従来例1は、従来の鉄道車両を模擬した模型車両である。
【0036】
図17は、風速測定試験の試験結果を示すグラフである。
図17に示す縦軸は、床面からの高さ(mm)であり、横軸は床面から見た風速で風洞の主流風速(設定風速)との比(u/U)である。風洞測定試験は設定風速50m/s(180km/h)で行ったものであり、例えば床面から見た風速が0.2(u/U)であるときには36km/hを意味する。図17に示す床面からの高さがゼロに近いときに測定される風速が速いほどバラストが舞上る可能性が高い。図17に示すように、風洞試験装置の床面から風速測定器の高さを変化させて風速を測定したところ、従来例に比べて実施例1,2については風速の低減効果が確認された。一般に、模型車両から台車を取り外して試験した場合には、地表面の風速が大きく低減することが確認されている。特に、実施例1については、模型車両から台車を取り外したときの測定結果にほぼ近く、地表面の風速を低下させる効果が特に大きいことが確認された。
【0037】
(他の実施形態)
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この実施形態では、移動体が鉄道車両である場合を例に挙げて説明したが、自動車などの他の移動体についてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、底面凸部が台車2及び床下機器4a,4bである場合を例に挙げて説明したが、鉄道車両や自動車などの底面から突出する突出部などについてもこの発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、バラストR1の舞上りを抑制する場合を例に挙げて説明したが、雪の舞上りなどを抑制する場合についてもこの発明を適用することができる。
【0038】
(2) この実施形態では、傾斜部7b,7fが四角錐状であり傾斜部7hが三角柱状である場合を例に挙げて説明したが、曲面を含む流線型などにこれらの外観を形成することもできる。また、この実施形態では、傾斜部7b,7fが車体底面4から下方かつ側方に傾斜し、傾斜部7hが側方に傾斜する場合を例に挙げて説明したが、これらを下方にのみ傾斜するような形状にすることもできる。さらに、この実施形態では、台車2及び床下機器4a,4bに風速低減部7を設置した場合を例に挙げて説明したが、これらの一方については風速低減部7の設置を省略することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の第1実施形態に係る移動体の風速低減構造を備える車両が走行している状態を示す側面図である。
【図2】この発明の第1実施形態に係る移動体の風速低減構造を備える車両の正面図である。
【図3】この発明の第1実施形態に係る移動体の風速低減構造を備える車両の側面図である。
【図4】この発明の第1実施形態に係る移動体の風速低減構造を備える車両の底面図である。
【図5】この発明の第1実施形態に係る移動体の風速低減構造を備える車両の縦断面図である。
【図6】この発明の第1実施形態に係る移動体の風速低減構造を車両の底面側から見た斜視図である。
【図7】この発明の第2実施形態に係る移動体の風速低減構造を備える車両が走行している状態を示す側面図である。
【図8】この発明の第2実施形態に係る移動体の風速低減構造を備える車両の側面図である。
【図9】この発明の第2実施形態に係る移動体の風速低減構造を備える車両の底面図である。
【図10】この発明の第2実施形態に係る移動体の風速低減構造を備える車両の縦断面図である。
【図11】この発明の第2実施形態に係る移動体の風速低減構造を車両の底面側から見た斜視図である。
【図12】この発明の第3実施形態に係る移動体の風速低減構造を備える車両の正面図である。
【図13】この発明の第3実施形態に係る移動体の風速低減構造を車両の底面側から見た斜視図である。
【図14】この発明の第4実施形態に係る移動体の風速低減構造を車両の底面側から見た斜視図である。
【図15】この発明の第5実施形態に係る移動体の風速低減構造を備える車両が走行している状態を示す側面図である。
【図16】風速測定試験に使用した模型車両を概略的に示す側面図であり、(A)は実施例1の側面図であり、(B)は実施例2の側面図であり、(C)は従来の側面図である。
【図17】風速測定試験の試験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0040】
1 車両(移動体)
2 台車(底面凸部)
2a 車輪
3 車体
4 車体底面
4a,4b 床下機器(底面凸部)
5 車体側面
6 底面凹部
7 風速低減部
7a 側板部
7b 傾斜部
7d 側板部
7f,7h 傾斜部
7j 側板部
7k 傾斜部
R 軌道
1 バラスト

図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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