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明細書 :交流電磁場測定法による探傷検査装置及び方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4180578号 (P4180578)
公開番号 特開2006-292496 (P2006-292496A)
登録日 平成20年9月5日(2008.9.5)
発行日 平成20年11月12日(2008.11.12)
公開日 平成18年10月26日(2006.10.26)
発明の名称または考案の名称 交流電磁場測定法による探傷検査装置及び方法
国際特許分類 G01N  27/82        (2006.01)
FI G01N 27/82
請求項の数または発明の数 13
全頁数 20
出願番号 特願2005-111771 (P2005-111771)
出願日 平成17年4月8日(2005.4.8)
審査請求日 平成18年6月20日(2006.6.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000198318
【氏名又は名称】株式会社IHI検査計測
【識別番号】000196587
【氏名又は名称】西日本旅客鉄道株式会社
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】藤原 貢
【氏名】大黒 光喜
【氏名】笹原 利彦
【氏名】武藤 行伸
【氏名】真野辰哉
【氏名】養祖次郎
【氏名】坂本博
【氏名】牧野一成
個別代理人の代理人 【識別番号】100097515、【弁理士】、【氏名又は名称】堀田 実
審査官 【審査官】田中 洋介
参考文献・文献 特開2002-267636(JP,A)
特開2001-255314(JP,A)
特開平05-157736(JP,A)
特開2001-183348(JP,A)
神保純一,外1名,“ACFM法概論とその適用法”,配管技術,1996年,第38巻第8号,第63-67頁
F C R Marques,et al.,“Experiences in the use of ACFM for offshore platform inspection in Brazil”,INSIGHT,2001年 6月,Vol.43, No.6,pp.394-398
M Howitt,“Bombardier brings ACFM into the rail industry”,INSIGHT,2002年 6月,Vol.44, No.6,pp.379-382
調査した分野 G01N 27/72-27/90
JSTPlus(JDream2)
特許請求の範囲 【請求項1】
被検体表面のx軸方向に交流磁場を与えこれに直交する被検体表面のy軸方向に交流誘導電流を発生させる交流磁場発生コイルと、前記交流誘導電流により発生するx軸方向の磁束密度Bxを検出するBx測定コイルと、前記交流誘導電流により発生するz軸方向の磁束密度Bzを検出するBz測定コイルと、被検体表面に沿ってデータポイントを検出する位置センサとを有する探傷プローブと、
該探傷プローブに交流磁場を与え、前記磁束密度BxとBzを出力する交流電磁場測定装置と、
前記磁束密度BxとBzをデータ解析して、被検体表面に存在する傷等の位置を検出するデータ解析装置と、を備え
前記データ解析装置は、記憶装置と演算装置を有し、
該記憶装置により、探傷プローブで検出したデータポイントi(i=1,2,…,n)に対応する前記磁束密度BxとBzの生データを時系列的に記憶し、
前記演算装置により、交流磁場発生コイル、Bx測定コイル、及びBz測定コイルの位置誤差により前記生データを補正し、次いで前記データを一定範囲の移動平均を取り細かなリップルを取る平滑化処理をしかつ初めの信号値、母材無欠陥部の信号値、信号波形の高次近似曲線、一定範囲の移動平均値などを基準とする基準化処理した基準化データを作成し、
該基準化データからz-x平面上において原点Oから点(Bz、Bx)までの磁束密度ベクトルB(z,x)をデータポイントi(i=1,2,…,n)に対応して設定し、
データポイントiとi+1に対応する磁束密度ベクトルB(z,x)のベクトル積Aを算出し、
該ベクトル積Aが所定の閾値を超えるときに、傷等が存在すると判別する、ことを特徴とする交流電磁場測定法による探傷検査装置。
【請求項2】
前記データ解析装置は、更に画像表示装置を有し、該画像表示装置により、
前記ベクトル積Aと、前記ベクトル積Aが所定の閾値を超えるデータポイントを含む所定のデータポイント範囲の基準化データを、データポイントi(i=1,2,…,n)との関係で表示する、ことを特徴とする請求項に記載の探傷検査装置。
【請求項3】
前記ベクトル積Aは、ベクトル外積値又は隣接する差分ベクトル内積値であり、
該ベクトル外積値を使用する場合はベクトルの方向(ベクトル外積値の正負)もきずの判定に使う、ことを特徴とする請求項に記載の探傷検査装置。
【請求項4】
前記探傷プローブの位置センサは、被検体表面に接触してy軸方向の回転軸を中心に自由に回転可能な検出ローラと、該検出ローラを被検体表面に向けて伸縮可能に押付ける付勢装置と、検出ローラの回転量を検出するロータリエンコーダとからなる、ことを特徴とする請求項1に記載の探傷検査装置。
【請求項5】
前記探傷プローブは、前記データポイントと磁束密度BxとBzの検出開始と検出終了を制御するための押釦スイッチを有する、ことを特徴とする請求項1に記載の探傷検査装置。
【請求項6】
前記探傷プローブは、検出ローラが押し付けられたときに検出を開始し、検出ローラが離れたときに検出を終了する構造のスイッチを有する、ことを特徴とする請求項1に記載の探傷検査装置。
【請求項7】
被検体表面のx軸方向に交流磁場を与えこれに直交する被検体表面のy軸方向に交流誘導電流を発生させ、前記交流誘導電流により発生するx軸方向の磁束密度Bxとz軸方向の磁束密度Bzを被検体表面に沿ったデータポイントと共に検出する探傷ステップと、
前記磁束密度BxとBzをデータ解析して、被検体表面に存在する傷等の位置を検出するデータ解析ステップと、を備え、
前記データ解析ステップは、探傷プローブで検出したデータポイントi(i=1,2,…,n)に対応する前記磁束密度BxとBzの生データを時系列的に記憶する生データ記憶ステップと、
交流磁場発生コイル、Bx測定コイル、及びBz測定コイルの位置誤差により前記生データを補正し、次いで前記データを一定範囲の移動平均を取り細かなリップルを取る平滑化処理をしかつ初めの信号値、母材無欠陥部の信号値、信号波形の高次近似曲線、一定範囲の移動平均値などを基準とする基準化処理した基準化データを作成する基準化データ作成ステップと、
該基準化データからz-x平面上において原点Oから点(Bz、Bx)までの磁束密度ベクトルB(z,x)をデータポイントi(i=1,2,…,n)に対応して設定するベクトル設定ステップと、
データポイントiとi+1に対応する磁束密度ベクトルB(z,x)のベクトル積Aを算出するベクトル積算出ステップと、
該ベクトル積Aが所定の閾値を超えるときに、傷等が存在すると判別する傷判別ステップと、を有することを特徴とする交流電磁場測定法による探傷検査方法。
【請求項8】
前記データ解析ステップは、前記ベクトル積Aと、前記ベクトル積Aが所定の閾値を超えるデータポイントを含む所定のデータポイント範囲の基準化データを、データポイントi(i=1,2,…,n)との関係で表示する画像表示ステップを有する、ことを特徴とする請求項に記載の探傷検査方法。
【請求項9】
前記ベクトル積Aは、ベクトル外積値又は隣接する差分ベクトル内積値であり、
該ベクトル外積値を使用する場合はベクトルの方向(ベクトル外積値の正負)もきずの判定に使う、ことを特徴とする請求項に記載の探傷検査方法。
【請求項10】
被検体表面に接触してy軸方向の回転軸を中心に自由に回転可能な検出ローラを被検体表面に向けて伸縮可能に押付け、ロータリエンコーダにより検出ローラの回転量を検出する、ことを特徴とする請求項に記載の探傷検査方法。
【請求項11】
探傷プローブに取付けられた押釦スイッチにより、前記データポイントと磁束密度BxとBzの検出開始と検出終了を制御する、ことを特徴とする請求項に記載の探傷検査方法。
【請求項12】
探傷プローブに取付けられたスイッチにより、検出ローラが押し付けられたときに検出を開始し、検出ローラが離れたときに検出を終了する、ことを特徴とする請求項に記載の探傷検査方法。
【請求項13】
きずに直交してプローブを走査してBx信号とBz信号を取得し、この2つの信号を横軸にBz信号、縦軸にBx信号としてバタフライパターンをプロットし、該バタフライパターンがきずに平行にプローブ走査したバタフライパターンの中心点に対し点対称となる曲線を描くとき、きずを判定する、ことを特徴とする請求項に記載の探傷検査方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電磁場測定法により表面の傷等を検査する探傷検査装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両用の台車枠には大きな荷重がかかるため、長期間の使用により溶接箇所等に傷や亀裂が発生したり、微細な傷が大きな亀裂に成長することがある。そこで、台車枠の表面に存在する傷や亀裂を定期的に検査する必要がある。以下、傷、亀裂及び欠陥を単に「傷」又は「傷等」と呼ぶ。
【0003】
従来、かかる台車枠の検査には、磁粉探傷法が主に採用されていた。磁粉探傷法は、表面あるいは表面近くに欠陥がある箇所を磁化してその表面に微細な磁粉を塗布すると、傷等の存在によって生じる漏洩磁束のために磁粉が欠陥部の表面に凝集吸引されて磁粉のパターンに乱れが生じることを利用したものである。
しかし、磁粉探傷法を適用する場合、検査箇所の塗装を剥がす必要があり、その前処理、後処理に多大な手間がかかる問題点があった。
【0004】
そこで、渦電流探傷法を適用することが、例えば、[特許文献1]に提案されている。しかし、渦電流探傷法は、塗装を剥がさずに適用はできるが、検査箇所表面に発生する渦電流の傷等による乱れを同一の渦電流センサで検出するため、表面で発生するノイズの影響が大きく、傷等との識別が困難であった。また、傷等の大きさや深さをキャリブレーションで求める必要があり、経験が豊富な検査員でない限り、正確な判断ができない欠点があった。
【0005】
一方、傷等の大きさや深さをキャリブレーションなしで求めることができる探傷検査法として、交流電磁場測定法(Alternating Current Field Measurement:以下、「ACFM」と略す)が[非特許文献1]で提案されている。
図13は、ACFMにおける座標系を示す図である。被検体1の表面に細長い開口傷2がある場合に、表面に沿って、傷2の方向をx、xに直交する方向をy、表面に直交する方向をzと定義する。x方向(傷の方向)に外部から交流磁場3を付与すると、傷に直交するy方向に交流誘導電流4が発生する。
【0006】
図14は、交流電磁場測定法の原理図である。図13のように発生した交流誘導電流4により発生するx軸方向の磁束密度Bxと、z軸方向の磁束密度Bzは、それぞれx軸を中心とするBx測定コイルと、z軸を中心とするBz測定コイルで検出することができる。以下、これを「Bx成分」及び「Bz成分」と呼ぶ。
すなわち、交流誘導電流4は、傷2の存在により、x方向の傷2の両端外側では電流密度が高く、傷の位置では電流密度が低くなるため、この図の(b)に示すようにBx成分は傷の両端外側で高く、傷の位置で低くなる。
同様に、交流誘導電流4は、傷2の存在により、x方向の傷2の両端外側では外側に膨らんで流れるため、この図の(c)に示すようにBz成分は傷の一方では高く、他方では低くなる。
従って、Bx成分とBz成分がこのような特性を示したときに、傷が存在すると判断でき、傷の大きさと深さをキャリブレーションなしで求めることができる。
【0007】
図15は、非特許文献1に開示されているデータ処理法の説明図である。試験体1及びその開口傷2が、試験片のような単純な形状である場合には、Bx成分及びBz成分として、この図の(a)に示すような、典型的な波形が得られる。この場合、両成分の横軸は時間であり、検出速度により変化するため、同一の試験片であっても、検出毎に異なる波形が得られ、傷の識別が困難になる。
この図の(b)は、横軸にBx成分、縦軸にBz成分をプロットしたもので、「バタフライプロット」と呼ばれる。このバタフライプロットは、時間成分がなくなるため、検出速度が変化しても、同一の試験片であれば、常に同一の波形が得られ、傷の識別が容易になる特徴がある。また、一般的に、傷があるとバタフライプロットは中心から離れた閉じた形状となること知られている。
【0008】
非特許文献2は、上述した交流電磁場測定法を用いて傷の大きさと深さを解析する方法を開示している。この方法は、Bz成分を増加領域と減少領域に区分し、減少から増加に転じたデータから増加から減少に転じたデータまでを傷領域と判別し、この傷領域のBx成分とBz成分をx成分、z成分としてz-x座標に図16のようにバタフライプロットを作成し、このプロットが囲む面積を計算して、その大きさにより傷の有無とその大きさと深さを計算するものである。
【0009】
さらに、交流電位差測定法を用いた非破壊検査法として、特許文献2が開示されている。この方法は、上述したような傷の検出やその大きさと深さを検査する目的とは相違し、微細な亀裂が複数存在するような表面欠陥について、亀裂の平均深さ及び数を定量的に検査することを目的としたものである。
【0010】

【非特許文献1】“THE ACFM TECHNIQUE”,TSC Inspection Systems,[平成17年3月14日検索]、インターネット<URL: 1112925638984_0.htm
【非特許文献2】Jiannong Zhou,et al.,“An ACFM automated Crack Detection System Deployed Vy An Underwater Roving Vehicle”,NDT.net September 2003,Vol.9 No.09
【0011】

【特許文献1】特開2004-117138号公報、「鉄道車両用台車枠の探傷用センサーユニット及びこれを用いた探傷設備」
【特許文献2】特開平8-313473号公報、「亀裂深さの非破壊検査法及び亀裂数の非破壊検査法」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したように、交流電磁場測定法は、原理的には塗装を剥がさずに塗装の上から表面開口割れの検査ができる特徴を有する。しかし、試験片のような単純な形状でなく、例えば鉄道車両用の台車枠のように形状が複雑であり、かつ表面に起伏があるような複雑な溶接構造物の検査に適用した場合、形状、接触条件により様々な擬似信号が出現するため、上述したような典型的なBx成分とBz成分が得られることはほとんどなく、このため、熟練した検査員であっても欠陥の判別が依然として困難であった。
また、欠陥が判別できた場合でも、従来は時間に対して各信号が得られるため欠陥の位置を特定するのが困難であり、かつその大きさと深さの特定にも手間と時間がかかっていた。
【0013】
本発明は、かかる従来の問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、(1)被検体が台車枠のような複雑な溶接構造物であっても、ノイズや擬似信号の影響を低減することができ、(2)経験の少ない検査員によっても容易かつ確実に傷等を判別でき、(3)傷等の位置とその大きさ及び深さを容易かつ確実に求めることができる交流電磁場測定法による探傷検査装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、被検体表面のx軸方向に交流磁場を与えこれに直交する被検体表面のy軸方向に交流誘導電流を発生させる交流磁場発生コイルと、前記交流誘導電流により発生するx軸方向の磁束密度Bxを検出するBx測定コイルと、前記交流誘導電流により発生するz軸方向の磁束密度Bzを検出するBz測定コイルと、被検体表面に沿ってデータポイントを検出する位置センサとを有する探傷プローブと、該探傷プローブに交流磁場を与え、前記磁束密度BxとBzを出力する交流電磁場測定装置と、前記磁束密度BxとBzをデータ解析して、被検体表面に存在する傷等の位置を検出するデータ解析装置と、を備え、前記データ解析装置は、記憶装置と演算装置を有し、該記憶装置により、探傷プローブで検出したデータポイントi(i=1,2,…,n)に対応する前記磁束密度BxとBzの生データを時系列的に記憶し、前記演算装置により、交流磁場発生コイル、Bx測定コイル、及びBz測定コイルの位置誤差により前記生データを補正し、次いで前記データを一定範囲の移動平均を取り細かなリップルを取る平滑化処理をしかつ初めの信号値、母材無欠陥部の信号値、信号波形の高次近似曲線、一定範囲の移動平均値などを基準とする基準化処理した基準化データを作成し、該基準化データからz-x平面上において原点Oから点(Bz、Bx)までの磁束密度ベクトルB(z,x)をデータポイントi(i=1,2,…,n)に対応して設定し、データポイントiとi+1に対応する磁束密度ベクトルB(z,x)のベクトル積Aを算出し、該ベクトル積Aが所定の閾値を超えるときに、傷等が存在すると判別する、ことを特徴とする交流電磁場測定法による探傷検査装置が提供される。
【0016】
前記データ解析装置は、更に画像表示装置を有し、該画像表示装置により、
前記ベクトル積Aと、前記ベクトル積Aが所定の閾値を超えるデータポイントを含む所定のデータポイント範囲の基準化データを、データポイントi(i=1,2,…,n)との関係で表示する。
前記ベクトル積Aは、ベクトル外積値又は隣接する差分ベクトル内積値であり、
該ベクトル外積値を使用する場合はベクトルの方向(ベクトル外積値の正負)もきずの判定に使う、のがよい。
【0017】
前記探傷プローブの位置センサは、被検体表面に接触してy軸方向の回転軸を中心に自由に回転可能な検出ローラと、該検出ローラを被検体表面に向けて伸縮可能に押付ける付勢装置と、検出ローラの回転量を検出するロータリエンコーダとからなる。
【0018】
前記探傷プローブは、前記データポイントと磁束密度BxとBzの検出開始と検出終了を制御するための押釦スイッチを有する。
前記探傷プローブは、検出ローラが押し付けられたときに検出を開始し、検出ローラが離れたときに検出を終了する構造のスイッチを有してもよい。
【0019】
また本発明によれば、被検体表面のx軸方向に交流磁場を与えこれに直交する被検体表面のy軸方向に交流誘導電流を発生させ、前記交流誘導電流により発生するx軸方向の磁束密度Bxとz軸方向の磁束密度Bzを被検体表面に沿ったデータポイントと共に検出する探傷ステップと、前記磁束密度BxとBzをデータ解析して、被検体表面に存在する傷等の位置を検出するデータ解析ステップと、を備え、前記データ解析ステップは、探傷プローブで検出したデータポイントi(i=1,2,…,n)に対応する前記磁束密度BxとBzの生データを時系列的に記憶する生データ記憶ステップと、交流磁場発生コイル、Bx測定コイル、及びBz測定コイルの位置誤差により前記生データを補正し、次いで前記データを一定範囲の移動平均を取り細かなリップルを取る平滑化処理をしかつ初めの信号値、母材無欠陥部の信号値、信号波形の高次近似曲線、一定範囲の移動平均値などを基準とする基準化処理した基準化データを作成する基準化データ作成ステップと、該基準化データからz-x平面上において原点Oから点(Bz、Bx)までの磁束密度ベクトルB(z,x)をデータポイントi(i=1,2,…,n)に対応して設定するベクトル設定ステップと、データポイントiとi+1に対応する磁束密度ベクトルB(z,x)のベクトル積Aを算出するベクトル積算出ステップと、該ベクトル積Aが所定の閾値を超えるときに、傷等が存在すると判別する傷判別ステップと、を有することを特徴とする交流電磁場測定法による探傷検査方法が提供される。
【0021】
前記データ解析ステップは、前記ベクトル積Aと、前記ベクトル積Aが所定の閾値を超えるデータポイントを含む所定のデータポイント範囲の基準化データを、データポイントi(i=1,2,…,n)との関係で表示する画像表示ステップを有する。
前記ベクトル積Aは、ベクトル外積値又は隣接する差分ベクトル内積値であり、
該ベクトル外積値を使用する場合はベクトルの方向(ベクトル外積値の正負)もきずの判定に使う、ことが好ましい。
【0022】
被検体表面に接触してy軸方向の回転軸を中心に自由に回転可能な検出ローラを被検体表面に向けて伸縮可能に押付け、ロータリエンコーダにより検出ローラの回転量を検出する。
【0023】
探傷プローブに取付けられた押釦スイッチにより、前記データポイントと磁束密度BxとBzの検出開始と検出終了を制御する。
また、探傷プローブに取付けられたスイッチにより、検出ローラが押し付けられたときに検出を開始し、検出ローラが離れたときに検出を終了してもよい。
さらに、きずに直交してプローブを走査してBx信号とBz信号を取得し、この2つの信号を横軸にBz信号、縦軸にBx信号としてバタフライパターンをプロットし、該バタフライパターンがきずに平行にプローブ走査したバタフライパターンの中心点に対し点対称となる曲線を描くとき、きずを判定する、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
上記本発明の装置及び方法によれば、磁束密度BxとBzをデータ解析して、磁束密度ベクトルB(z,x)のベクトル積Aを算出し、ベクトル積Aが所定の閾値を超えるときに、傷等が存在すると判別するので、被検体が台車枠のような複雑な溶接構造物であっても、ノイズや擬似信号の影響を低減することができ、経験の少ない検査員によっても容易かつ確実に傷等を判別できる。
また、ベクトル積Aと、ベクトル積Aが所定の閾値を超えるデータポイントを含む所定のデータポイント範囲の基準化データを、データポイントi(i=1,2,…,n)との関係で表示するので、この表示データから傷等の位置とその大きさ及び深さを容易かつ確実に求めることができる。
さらに、本発明により、鉄道車両用の台車枠の検査にACFM法を簡便に適用することが可能となり、従来の塗装を剥がして磁粉探傷を行なう方式から、塗装を剥がさずに検査ができるため、検査の効率化と、クリーン化が図れる。
また、検査記録が電子データとして残されるために、記録の管理及び履歴の管理が簡便になる。
また、ベクトル積を使用した自動判別が可能である。
なお、本発明は、鉄道車両用の台車枠のみならず鋼構造物等で、塗装を剥がして検査を行なっている構造物に適用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面を参照して説明する。なお各図において、共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0026】
図1は、本発明による探傷検査装置の全体構成図であり、図2は図1の探傷プローブ拡大図、図3は探傷プローブに取付けた位置センサの拡大図である。
図1に示すように、本発明の探傷検査装置は、探傷プローブ10、交流電磁場測定装置20、及びデータ解析装置30を備える。
【0027】
図2おいて探傷プローブ10は、被検体表面1aに接触させるプローブ先端部11の内部に、交流磁場発生コイル12、Bx測定コイル13及びBz測定コイル14を内蔵する。プローブ先端部11は、内部を磁場が透過しやすい非磁性体からなるのがよい。
なおこの図において、紙面に直交する方向をx軸方向、これに直交する水平方向をy軸方向、被検体表面1aに直交する方向をz軸方向と定義する。
【0028】
交流磁場発生コイル12は、x軸方向を軸心とするコイルであり、被検体表面1aのx軸方向に交流磁場2を与えこれに直交する被検体表面のy軸方向に交流誘導電流3を発生させる機能を有する。
Bx測定コイル13は、被検体表面1aに発生した交流誘導電流3により発生するx軸方向の磁束密度Bxを検出する機能を有する。
Bz測定コイル14は、被検体表面1aに発生した交流誘導電流3により発生するz軸方向の磁束密度Bzを検出する機能を有する。
交流磁場発生コイル12、Bx測定コイル13、及びBz測定コイル14は、機能を阻害しない限りで、できるだけ近接して設置するのがよい。また相互間の位置誤差は、データ解析装置30により補正するようになっている。
【0029】
探傷プローブ10は、更に、押釦スイッチ16と位置センサ18を有する。
押釦スイッチ16は、探傷プローブ10の側面に取り付けられたスタートスイッチ16aとストップスイッチ16bとからなり、スタートスイッチ16aを押す(ON)することにより、探傷プローブ10によりデータポイントと磁束密度BxとBzの検出を開始し、ストップスイッチ16bを押す(OFF)することにより、検出を終了させるようになっている。押釦スイッチ16は、好ましくは、シートスイッチである。
この構成により、探傷プローブ10を検査員が片手で持ち、被検体表面に沿ってプローブ先端部11を接触させて移動させながら、押釦スイッチ16により自由な位置で検出を開始しかつ終了させることができる。
また探傷プローブ10に取付けられたスイッチにより、後述する検出ローラ18aが押し付けられたときに検出を開始し、検出ローラが離れたときに検出を終了してもよい。
【0030】
位置センサ18は、プローブ先端部11の側面に取付けられ、被検体表面に沿ってプローブ先端部11によるデータポイントを検出する機能を有する。
図3に示すように、この位置センサ18は、検出ローラ18a、付勢装置18b及びロータリエンコーダ18cとからなる。
検出ローラ18aは、好ましくはy軸方向の回転軸を中心に自由に回転可能な円筒形部材であり、被検体表面1aに接触して滑ることなく自由に回転できる。また付勢装置18bは、例えば圧縮ばねであり、検出ローラ18aの回転支持部を被検体表面1aに向けて伸縮可能に押付ける。さらにロータリエンコーダ18cは、検出ローラ18aの回転量(移動距離)を検出するように構成されている。
この構成により、探傷プローブ10を検査員が片手で持ち、被検体表面に沿ってプローブ先端部11を接触させて移動させると、検出ローラ18aが被検体表面に所定の押付力で押付けられ、被検体表面の起伏に付勢装置18bで追従しながら、検出ローラ18aが被検体表面1aに接触して滑ることなく回転し、検出ローラ18aの回転量(移動距離)を検出することができる。
【0031】
図1において、交流電磁場測定装置20は、細長いフレキシブルコード21で、探傷プローブ10に電気的に接続されており、探傷プローブ10の交流磁場発生コイル12に交流電流を印加し、Bx測定コイル13及びBz測定コイル14で検出した磁束密度BxとBzを出力するようになっている。
また、押釦スイッチ16及び位置センサ18の信号線もフレキシブルコード21を介して交流電磁場測定装置20に接続され、押釦スイッチ16により交流電磁場測定装置20の作動を制御し、同時に位置センサ18によるデータポイントを交流電磁場測定装置20に入力するようになっている。
さらに、交流電磁場測定装置20は、出力ケーブル22を介してデータ解析装置30に接続され、Bx測定コイル13及びBz測定コイル14で検出した磁束密度BxとBz、押釦スイッチ16及び位置センサ18の信号をデータ解析装置30に出力するようになっている。
また、探傷プローブ10は、検出ローラ18aが押し付けられたときに検出を開始し、検出ローラが離れたときに検出を終了する構造のスイッチを有するのが好ましい。
【0032】
データ解析装置30は、磁束密度BxとBzをデータ解析して、被検体表面1aに存在する傷等2の位置を検出する機能を有する。図1に示すように、データ解析装置30は、記憶装置32、演算装置34および画像表示装置36を有する。
記憶装置32は、HD、ROM、RAM、その他の記憶媒体であり、探傷プローブ10で検出したデータポイントi(i=1,2,…,n)に対応する磁束密度BxとBzの生データを時系列的に記憶すると共に、データ解析用のプログラムと、データ解析に伴って形成される各データを記憶する。
【0033】
演算装置34は、例えばコンピュータであり、データ解析用プログラムの実行により、交流磁場発生コイル12、Bx測定コイル13、及びBz測定コイル14の位置誤差(取付位置のズレ)をデータポイントを用いて補正し、探傷プローブ10で検出した生データを同一のデータポイントに対応するように補正する。次いで前記データを一定範囲の移動平均を取り細かなリップルを取る平滑化処理をしかつ初めの信号値、母材無欠陥部の信号値、信号波形の高次近似曲線、一定範囲の移動平均値などを基準とする基準化処理した基準化データを作成する。
この補正により、相互間の位置誤差を無くし、位置センサ18のデータポイントと各コイルによる検出データを正確に対応させることができる。
また、この平滑化処理により、ノイズや擬似信号による、高周波成分を除去し、微細な凹凸をなくすことができる。
さらに、基準化処理により、磁束密度ベクトルB(z,x)の起点を原点Oに設定することができる。
【0034】
さらに、演算装置34は、作成した基準化データからz-x平面上において原点Oから点(Bz、Bx)までの磁束密度ベクトルB(z,x)をデータポイントi(i=1,2,…,n)に対応して設定し、データポイントiとi+1に対応する磁束密度ベクトルB(z,x)のベクトル積Aを算出し、ベクトル積Aが所定の閾値を超えるときに、傷等が存在すると判別するようになっている。
この磁束密度ベクトルB(z,x)は、原点Oを起点とすることから、傷がまったくない場合には、原点近傍に集中するベクトルであり、ベクトル積Aは0に近い値または0以下の値になる。これに対して、傷がある場合、ベクトルは、原点Oから長く伸び、隣接するベクトルのベクトル積Aも増大する。
従って、ベクトル積Aが所定の閾値を超えるときに、傷等が存在すると判別することにより、容易に傷等を判別することができる。
【0035】
画像表示装置36は、例えばタッチパネル方式の液晶表示装置であり、ベクトル積Aと、ベクトル積Aが所定の閾値を超えるデータポイントを含む所定のデータポイント範囲の基準化データを、データポイントi(i=1,2,…,n)との関係図として画像表示するようになっている。
この構成により、ベクトル積Aが所定の閾値を超えるときに、傷等の影響を受ける所定のデータポイント範囲の基準化データを、データポイントi(i=1,2,…,n)との関係で画像表示できるので、「Bx成分」と「Bz成分」をノイズや擬似信号を除去した純粋な波形として正確に把握することができる。
さらにこの波形に基づき、その大きさ及び深さを容易かつ確実に求めることができる。
【0036】
なおこの画像表示装置36は、さらに、磁束密度BxとBzの生データ、その基準化データ、磁束密度ベクトルB(z,x)をデータポイントi(i=1,2,…,n)との関係図、或いはバタフライプロットとして、同時に或いは選択的に表示するようになっているのがよい。
【0037】
図4は、本発明による探傷検査方法のフロー図である。この図に示すように、本発明の探傷検査方法は、探傷ステップS1とデータ解析ステップS2とからなる。
探傷ステップS1では、ステップS11において、被検体表面1aのx軸方向に交流磁場2を与え、これに直交する被検体表面のy軸方向に交流誘導電流2を発生させる。さらに、ステップS12において、交流誘導電流2により発生するx軸方向の磁束密度Bxとz軸方向の磁束密度Bzを被検体表面1aに沿ったデータポイントと共に検出する。
なお、探傷プローブ10に取付けられた押釦スイッチ16により、データポイントと磁束密度BxとBzの検出開始と検出終了を制御し、ステップS11とステップS12を、同時に行うのがよい。
また、データポイントは、y軸方向の回転軸を中心に自由に回転可能な検出ローラ18aを被検体表面1aに向けて伸縮可能に押付け、ロータリエンコーダ18cにより検出ローラの回転量から検出する。
なお、探傷プローブ10は、検出ローラ18aが押し付けられたときに検出を開始し、検出ローラが離れたときに検出を終了する構造のスイッチを有し、探傷プローブに取付けられたスイッチにより、検出ローラが押し付けられたときに検出を開始し、検出ローラが離れたときに検出を終了するのが好ましい。
【0038】
データ解析ステップS2は、生データ記憶ステップS21、基準化データ作成ステップS22、ベクトル設定ステップS23、ベクトル積算出ステップS24、傷判別ステップS25、及び画像表示ステップS26からなる。
生データ記憶ステップS21では、探傷プローブ10で検出したデータポイントi(i=1,2,…,n)に対応する磁束密度BxとBzの生データを時系列的に記憶する。
【0039】
基準化データ作成ステップS22では、交流磁場発生コイル12、Bx測定コイル13、及びBz測定コイル14の位置誤差(取付位置のズレ)をデータポイントを用いて補正し、探傷プローブ10で検出した生データを同一のデータポイントに対応するように補正する。次いで前記データを一定範囲の移動平均を取り細かなリップルを取る平滑化処理をしかつ初めの信号値、母材無欠陥部の信号値、信号波形の高次近似曲線、一定範囲の移動平均値などを基準とする基準化処理した基準化データを作成する。
この平滑化処理では、例えば、データポイントi(i=1,2,…,n)に対応する生データを位置誤差修正し、5点平滑化処理している。
この補正により、相互間の位置誤差を無くし、位置センサ18のデータポイントと各コイルによる検出データを正確に対応させることができる。
また、この平滑化処理により、ノイズや擬似信号による、高周波成分を除去し、微細な凹凸をなくすことができる。
さらに、基準化処理により、磁束密度ベクトルB(z,x)の起点を原点Oに設定することができる。
【0040】
ベクトル設定ステップS23では、作成した基準化データからz-x平面上において原点Oから点(Bz、Bx)までの磁束密度ベクトルB(z,x)をデータポイントi(i=1,2,…,n)に対応して設定する。
【0041】
ベクトル積算出ステップS24では、データポイントiとi+1に対応する磁束密度ベクトルB(z,x)のベクトル積Aを算出する。
【0042】
傷判別ステップS25では、ベクトル積Aが所定の閾値を超えるときに、傷等が存在すると判別する。
磁束密度ベクトルB(z,x)は、原点Oを起点とすることから、傷がまったくない場合には、原点近傍に集中するベクトルであり、ベクトル積Aは0に近い値または0以下の値になる。これに対して、傷がある場合、ベクトルは、原点Oから長く伸び、隣接するベクトルのベクトル積Aも増大する。
従って上述したデータ解析ステップS2により、磁束密度BxとBzをデータ解析して、被検体表面に存在する傷等の位置を容易に検出することができる。
【0043】
画像表示ステップS26では、ベクトル積Aが所定の閾値を超えるデータポイントを含む所定のデータポイント範囲の基準化データを、データポイントi(i=1,2,…,n)との関係で表示する。
【0044】
上述した本発明の装置及び方法によれば、磁束密度BxとBzをデータ解析して、磁束密度ベクトルB(z,x)のベクトル積Aを算出し、ベクトル積Aが所定の閾値を超えるときに、傷等が存在すると判別するので、被検体が台車枠のような複雑な溶接構造物であっても、ノイズや擬似信号の影響を低減することができ、経験の少ない検査員によっても容易かつ確実に傷等を判別できる。
また、ベクトル積Aと、ベクトル積Aが所定の閾値を超えるデータポイントを含む所定のデータポイント範囲の基準化データを、データポイントi(i=1,2,…,n)との関係で表示するので、この表示データから傷等の位置とその大きさ及び深さを容易かつ確実に求めることができる。
さらに、本発明により、鉄道車両用の台車枠の検査にACFM法を簡便に適用することが可能となり、従来の塗装を剥がして磁粉探傷を行なう方式から、塗装を剥がさずに検査ができるため、検査の効率化と、クリーン化が図れる。
また、検査記録が電子データとして記憶装置32に記憶されるために、記録の管理及び履歴の管理も簡便になる。

【実施例1】
【0045】
図5は、本発明の第1実施例の結果を示す図である。この例は、被検体表面が平坦部であり、その母材に欠陥部がある場合である。
図5(a)は、探傷ステップS1で検出されたデータポイント(データポイント)と磁束密度BxとBzの生データとの関係図である。この図に示すように、実際の計測では、様々な擬似信号が出現するため、典型的なBx成分とBz成分が得られず、欠陥の判別が非常に困難であることがわかる。
図5(b)は、図5(a)から作成した従来のバタフライプロットである。このバタフライプロットは、左右に広がった扁平した分布となっており、このため、熟練した検査員であってもこの図からの欠陥の判別は困難であることがわかる。
【0046】
図5(c)は、本発明の基準化データ作成ステップS22により作成した基準化データである。この例では、データポイントi(i=1,2,…,n)に対応する生データを位置誤差修正し、5点平滑化処理している。
この図から、生データの波形形状をそのまま残しながら、ノイズや擬似信号による微細な凹凸が除去されているのがわかる。
なお基準化データは、初めの信号値、母材無欠陥部の信号値、信号波形の高次近似曲線、一定範囲の移動平均値などを基準とすることができる。
図5(d)は、図5(c)から作成したバタフライプロットである。このバタフライプロットは、原点Oを中心に円形に近い分布となっており、典型的なBx成分とBz成分に近い分布となっていることがわかる。
図5(e)は、ベクトル積算出ステップS24により作成したデータポイントに対応するベクトル積Aとの関係図である。この図において、ベクトル積Aは、外積ベクトル値である。
この図から、例えば、閾値を約10に設定することにより、データポイントの約20前後と80~100に閾値を超える箇所があり、傷等が存在すると判別することが容易にできる。
【0047】
なお、図5(f)(g)(h)は、傷がない健全部における図5(c)(d)(e)に対応する図である。これらの図から、健全部では、基準化データはほとんどフラットとなり、バタフライプロットは原点近傍に集中し、ベクトル積A(外積ベクトル値)は全域でほとんど0かそれ以下の値になることがわかる。
以上の結果から、健全部では傷がないことを容易かつ確実に判別でき、また傷がある場合には、その傷を容易かつ確実に判別できることがわかる。
【0048】
図6(a)(b)は、ベクトル積Aとして差分内積ベクトル値を用いた例であり、それぞれ、図5(e)と図5(h)に対応する図である。これらの図から、ベクトル積Aとして差分内積ベクトル値を用いた場合でも、閾値を適切(この例では約4)に設定することにより、外積ベクトル値を用いた場合と同様に、データポイントの約20前後と80~100に閾値を超える箇所があり、傷等が存在すると判別することが容易にできる。

【実施例2】
【0049】
図7は、本発明の第2実施例の結果を示す図である。この例は、被検体表面が平坦部であり、その溶接止端部に欠陥部がある場合である。
図7(a)は、探傷ステップS1で検出されたデータポイント(データポイント)と磁束密度BxとBzの生データとの関係図である。この図に示すように、実際の計測では、様々な擬似信号が出現するため、典型的なBx成分とBz成分が得られず、欠陥の判別が非常に困難であることがわかる。
図7(b)は、図7(a)から作成した従来のバタフライプロットである。このバタフライプロットは、右下部分に細長く集中した分布となっており、熟練した検査員であってもこの図からの欠陥の判別は困難であることがわかる。
【0050】
図7(c)は、本発明の基準化データ作成ステップS22により作成した基準化データである。この基準化データは、初めの信号値、母材無欠陥部の信号値、信号波形の高次近似曲線、一定範囲の移動平均値などを基準とすることができる。
この例では、データポイントi(i=1,2,…,n)に対応する生データを位置誤差修正し、5点平滑化処理している。この図から、生データの波形形状をそのまま残しながら、ノイズや擬似信号による微細な凹凸が除去されているのがわかる。
図7(d)は、図7(c)から作成したバタフライプロットである。このバタフライプロットは、原点Oを中心に円形に近い分布となっており、典型的なBx成分とBz成分に近い分布となっていることがわかる。
図7(e)は、ベクトル積算出ステップS24により作成したデータポイントに対応するベクトル積Aとの関係図である。この図において、ベクトル積Aは、外積ベクトル値である。
この図から、例えば、閾値を約10に設定することにより、データポイントの約30付近と70~90に閾値を超える箇所があり、傷等が存在すると判別することが容易にできる。
【0051】
なお、図7(f)(g)(h)は、傷がない健全部における図7(c)(d)(e)に対応する図である。これらの図から、健全部では、基準化データはほとんどフラットとなり、バタフライプロットは原点近傍に集中し、ベクトル積A(外積ベクトル値)は全域でほとんど0かそれ以下の値になることがわかる。
以上の結果から、健全部では傷がないことを容易かつ確実に判別でき、また傷があう場合には、その傷を容易かつ確実に判別できることがわかる。
【0052】
図8(a)(b)は、ベクトル積Aとして差分内積ベクトル値を用いた例であり、それぞれ、図7(e)と図7(h)に対応する図である。これらの図から、ベクトル積Aとして差分内積ベクトル値を用いた場合でも、閾値を適切(この例では約4)に設定することにより、外積ベクトル値を用いた場合と同様に、データポイントの約30付近と70~90に閾値を超える箇所があり、傷等が存在すると判別することが容易にできる。

【実施例3】
【0053】
図9は、本発明の第3実施例の結果を示す図である。この例は、被検体表面が曲線部であり、その溶接止端部に欠陥部がある場合である。
図9(a)は、探傷ステップS1で検出されたデータポイント(データポイント)と磁束密度BxとBzの生データとの関係図である。この例では、特にBz成分の上下動が大きく、欠陥の判別が非常に困難であることがわかる。
図9(b)は、図9(a)から作成した従来のバタフライプロットである。このバタフライプロットは、蝶が羽を広げたような広く広がった分布となっており、この場合もこの図からの欠陥の判別は困難であることがわかる。
【0054】
図9(c)は、本発明の基準化データ作成ステップS22により作成した基準化データである。この基準化データは、初めの信号値、母材無欠陥部の信号値、信号波形の高次近似曲線、一定範囲の移動平均値などを基準とすることができる。
この例では、データポイントi(i=1,2,…,n)に対応する生データを位置誤差修正し、5点平滑化処理している。この図から、生データの波形形状をそのまま残しながら、上下動が低減されているのがわかる。
図9(d)は、図9(c)から作成したバタフライプロットである。このバタフライプロットは、原点Oを中心に楕円に近い分布となっており、典型的なBx成分とBz成分とは若干相違する分布となっていることがわかる。
図9(e)は、ベクトル積算出ステップS24により作成したデータポイントに対応するベクトル積Aとの関係図である。この図において、ベクトル積Aは、外積ベクトル値である。
この図から、例えば、閾値を約20に設定することにより、データポイントの25~35に閾値を超える箇所があり、傷等が存在すると判別することが容易にできる。
【0055】
なお、図9(f)(g)(h)は、傷がない健全部における図9(c)(d)(e)に対応する図である。これらの図から、健全部では、基準化データは完全なフラットにはならないが、バタフライプロットは原点近傍にほぼ集中し、ベクトル積A(外積ベクトル値)は全域でほとんど10以下となることがわかる。
以上の結果から、健全部では傷がないことを容易かつ確実に判別でき、また傷があう場合には、その傷を容易かつ確実に判別できることがわかる。
【0056】
図10(a)(b)は、ベクトル積Aとして差分内積ベクトル値を用いた例であり、それぞれ、図9(e)と図9(h)に対応する図である。これらの図から、ベクトル積Aとして差分内積ベクトル値を用いた場合でも、閾値を適切(この例では約14)に設定することにより、外積ベクトル値を用いた場合と同様に、データポイントの25~35に閾値を超える箇所があり、傷等が存在すると判別することが容易にできる。

【実施例4】
【0057】
図11と図12は、本発明の第4実施例の結果を示す図である。この例は、被検体表面が平坦部であり、その母材に欠陥部がある場合である。
図11(a)は、探傷ステップS1で検出されたデータポイント(データポイント)と磁束密度Bxの関係図(生データ)、図12(a)とデータポイントとBzの関係図(生データ)である。この例では、Bx成分、Bz成分の両方とも上下動が大きく、欠陥の判別が不可能であることがわかる。
図11(b)、図12(b)の下部の曲線(細線)は、本発明により作成したベクトル積Aのプロット図である。
また、その上の直線(細線)は、ベクトル積Aの閾値が、30であることを示している。
更に、その上の曲線(実線)は、ベクトル積Aが閾値30を超えるデータポイントを含む所定のデータポイント範囲(矢印で示す)の基準化データを、データポイントi(i=1,2,…,n)との関係で表示したものである。またこの場合、データポイント範囲以外の基準化データは、0としている。
【0058】
図11(b)、図12(b)の下部の曲線(細線)から、データポイントの約35近傍と約100近傍に閾値を超える箇所があり、傷等が存在すると判別することが容易にできる。
【0059】
また、図11(b)、図12(b)の上部の曲線(実線)から、基準化データのうち傷に関連するデータのみを明確に示すことができ、この波形に基づき、その大きさ及び深さを容易かつ確実に求めることができる。
【0060】
本発明の発明者等は上述した実施例の他にも、台車枠を用いてその表面に存在する傷を、本発明の装置を用いて検出する様々な試験を実施した。
その結果、本発明の装置及び方法は、平面上の傷に沿って検出する典型的な例に限定されず、被検体表面が湾曲している場合、被検体表面に溶接部がある場合、傷の方向に対し、直角又は斜めに検出する場合でも、容易かつ確実に傷等を判別できることが確認された。
特に、きずに直交してプローブを走査してBx信号とBz信号を取得し、この2つの信号を横軸にBz信号、縦軸にBx信号としてバタフライパターンをプロットし、このバタフライパターンがきずに平行にプローブ走査したバタフライパターンの中心点に対し点対称となる曲線を描くとき、きずを判定することができることが確認された。
【0061】
上述したように、本発明は、ベクトルの外積を利用したフィルタリング機能により、ソフト的に形状あるいは接触条件による擬似信号を除去するものである。
またこの機能を生かすために、従来の時間ベースのデータ採取を、探傷距離ベースのデータ採取とするために、小型のエンコーダユニットを用いている。
さらにこれらのデータ表示を検査員にわかり易く表示する画面を用いている。
また、鉄道車両用の台車枠の検査部位及び検査履歴表示ソフトも組込んである。
【0062】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々に変更することができることは勿論である。例えば、本発明は、鉄道車両用の台車枠に限定されず、塗装を剥がして検査を行なっている鋼構造物等に同様に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明による探傷検査装置の全体構成図である。
【図2】図1の探傷プローブ拡大図である。
【図3】探傷プローブに取り付けた位置センサの拡大図である。
【図4】本発明の探傷検査方法のフロー図である。
【図5】本発明の第1実施例の結果を示す図である。
【図6】第1実施例において差分内積ベクトル値を用いた結果を示す図である。
【図7】本発明の第2実施例の結果を示す図である。
【図8】第2実施例において差分内積ベクトル値を用いた結果を示す図である。
【図9】本発明の第3実施例の結果を示す図である。
【図10】第3実施例において差分内積ベクトル値を用いた結果を示す図である。
【図11】本発明の第4実施例の結果を示すBx成分の図である。
【図12】本発明の第4実施例の結果を示すBz成分の図である。
【図13】ACFMにおける座標系を示す図である。
【図14】交流電磁場測定法の原理図である。
【図15】非特許文献1に開示されているデータ処理法の説明図である。
【図16】非特許文献2に開示されているデータ処理法の説明図である。
【符号の説明】
【0064】
1 被検体、1a 被検体表面、2 開口傷、
3 交流磁場、4 交流誘導電流、
10 探傷プローブ、
11 プローブ先端部、12 交流磁場発生コイル、
13 Bx測定コイル、14 Bz測定コイル、
16 押釦スイッチ、16a スタートスイッチ、
16b ストップスイッチ、18 位置センサ、
18a 検出ローラ、18b 付勢装置、18c ロータリエンコーダ、
20 交流電磁場測定装置、21 フレキシブルコード、22 出力ケーブル、
30 データ解析装置、32 記憶装置、
34 演算装置、36 画像表示装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15