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明細書 :ひび割れ検知用電気回路の製造方法、ひび割れ検知システムならびにひび割れ検知方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4648080号 (P4648080)
公開番号 特開2006-317350 (P2006-317350A)
登録日 平成22年12月17日(2010.12.17)
発行日 平成23年3月9日(2011.3.9)
公開日 平成18年11月24日(2006.11.24)
発明の名称または考案の名称 ひび割れ検知用電気回路の製造方法、ひび割れ検知システムならびにひび割れ検知方法
国際特許分類 G01N  27/20        (2006.01)
G01R  31/02        (2006.01)
FI G01N 27/20 A
G01R 31/02
請求項の数または発明の数 4
全頁数 11
出願番号 特願2005-141704 (P2005-141704)
出願日 平成17年5月13日(2005.5.13)
審査請求日 平成19年7月25日(2007.7.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000224123
【氏名又は名称】藤倉化成株式会社
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
【識別番号】592180225
【氏名又は名称】株式会社楢崎製作所
発明者または考案者 【氏名】西村 司
【氏名】皆川 昶夫
【氏名】渡邉 博明
【氏名】小島 芳之
【氏名】仲山 貴司
【氏名】田邊 将樹
【氏名】川口 英志
【氏名】横尾 正幸
【氏名】染矢 佳奈恵
個別代理人の代理人 【識別番号】100064908、【弁理士】、【氏名又は名称】志賀 正武
【識別番号】100108578、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 詔男
【識別番号】100089037、【弁理士】、【氏名又は名称】渡邊 隆
【識別番号】100101465、【弁理士】、【氏名又は名称】青山 正和
【識別番号】100094400、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴木 三義
【識別番号】100107836、【弁理士】、【氏名又は名称】西 和哉
【識別番号】100108453、【弁理士】、【氏名又は名称】村山 靖彦
【識別番号】100064908、【弁理士】、【氏名又は名称】志賀 正武
審査官 【審査官】中村 祐一
参考文献・文献 特開2001-201477(JP,A)
特開2004-344860(JP,A)
特開2004-050442(JP,A)
特開平04-115151(JP,A)
特開2002-257769(JP,A)
特開2005-091167(JP,A)
調査した分野 G01N27/00-27/24
特許請求の範囲 【請求項1】
コンクリート製構造物表面に、親水性溶剤を含む2液硬化型溶剤系塗料からなる第1の塗料を塗布し、乾燥して下塗り塗膜を形成する第1の工程と、
下塗り塗膜上に導電性塗料を、乾燥塗膜の幅が5~30mmかつ厚さが5~50μmになるように塗布し、乾燥して導電性塗膜を形成する第2の工程と、
下塗り塗膜および導電性塗膜に、該導電性塗膜を溶解または膨潤させない溶媒を含む2液硬化型溶剤系塗料からなる第2の塗料を塗布し、乾燥して保護塗膜を形成する第3の工程とを有することを特徴とするひび割れ検知用電気回路の製造方法。
【請求項2】
導電性塗料が1液型塗料であることを特徴とする請求項1に記載のひび割れ検知用電気回路の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のひび割れ検知用電気回路の製造方法により製造されたひび割れ検知用電気回路と、該ひび割れ検知用電気回路を通電する通電手段と、該ひび割れ検知用電気回路の通電状態を測定する測定手段と、測定手段で測定したひび割れ検知用電気回路の通電状態に基づいてひび割れの発生を判定する判定手段とを具備することを特徴とするひび割れ検知システム。
【請求項4】
請求項1または2に記載のひび割れ検知用電気回路の製造方法により製造されたひび割れ検知用電気回路の通電状態を測定し、その導電回路の通電状態に基づいてひび割れの発生を検知することを特徴とするひび割れ検知方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルなどの構造物のひび割れを検知するためのひび割れ検知用電気回路およびその製造方法、ひび割れ検知システムならびにひび割れ検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルや橋梁などコンクリート構造物は、設計時に想定されていなかった荷重の影響や経年変化によるコンクリートの劣化により、ひび割れを生じることがある。ひび割れを放置しておくと、コンクリート構造物が破損するおそれがあるので、それを未然に防ぐために、ひび割れを早期に検知し、修復する必要がある。
構造物のひび割れを検知する方法としては、目視検査、ハンマーによる打音検査、超音波による検査等が行われている。しかしながら、目視検査、ハンマーによる打音検査においては、ひび割れの有無は各検査者の判断に委ねられており、検査者毎に結果が異なる可能性があった。したがって、ひび割れ検知の正確性が低かった。また、超音波による検査では、検査者が構造物表面に超音波を照射し、超音波反射の状態をモニタで観察してひび割れを判定しなければならないから、効率的ではなかった。さらに、これらの方法では、構造物を列車や車が通過しない時間内でしか検査できないという問題があった。
【0003】
そこで、コンクリート構造物の表面に、導電塗料、導電性樹脂、導電性コーティング材などの導電材を塗装して導電回路を形成し、その導電回路の通電状態の変化を検出してコンクリート構造物のひび割れを検知する方法が提案されている(特許文献1参照)。この方法では、構造物のひび割れに伴って電気回路が破断した際に生じる電気抵抗の変化を検出してひび割れを検知する。

【特許文献1】特開2001-201477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1には、概念的なことしか記載されておらず、ひび割れ等の異常を検知するための具体的手段が記載されていないため、ひび割れを正確に検知することができないことがあった。例えば、大きなひび割れが生じているにもかかわらず、ひび割れを検知しなかったり、ひび割れが生じていないにもかかわらず、ひび割れを通知したりすることがあった。
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、ひび割れを正確に常時検知できるひび割れ検知用電気回路およびその製造方法、ひび割れ検知システム、ひび割れ検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のひび割れ検知用電気回路の製造方法は、コンクリート製構造物表面に、親水性溶剤を含む2液硬化型溶剤系塗料からなる第1の塗料を塗布し、乾燥して下塗り塗膜を形成する第1の工程と、下塗り塗膜上に導電性塗料を、乾燥塗膜の幅が5~30mmかつ厚さが5~50μmになるように塗布し、乾燥して導電性塗膜を形成する第2の工程と、下塗り塗膜および導電性塗膜に、該導電性塗膜を溶解または膨潤させない溶媒を含む2液硬化型溶剤系塗料からなる第2の塗料を塗布し、乾燥して保護塗膜を形成する第3の工程とを有することを特徴とする。
本発明のひび割れ検知用電気回路の製造方法においては、導電性塗料が1液型塗料であることが好ましい。
本発明のひび割れ検知システムは、上述したひび割れ検知用電気回路の製造方法により製造されたひび割れ検知用電気回路と、該ひび割れ検知用電気回路を通電する通電手段と、該ひび割れ検知用電気回路の通電状態を測定する測定手段と、測定手段で測定したひび割れ検知用電気回路の通電状態に基づいてひび割れの発生を判定する判定手段とを具備することを特徴とする。
本発明のひび割れ検知方法は、上述したひび割れ検知用電気回路の製造方法により製造されたひび割れ検知用電気回路の通電状態を測定し、その導電回路の通電状態に基づいてひび割れの発生を検知することを特徴とする。

【発明の効果】
【0006】
本発明のひび割れ検知用電気回路、ひび割れ検知システムおよびひび割れ検知方法によれば、構造物のひび割れを正確に常時検知できる。すなわち、ひび割れが生じていない場合にはひび割れを通知することがなく、ひび割れが生じた際にひび割れを正確に通知することができる。
本発明のひび割れ検知用電気回路の製造方法によれば、構造物のひび割れを正確に常時検知できるひび割れ検知用電気回路を製造できる。
本発明のひび割れ検知用電気回路の製造方法において、第1の塗料および/または第2の塗料が2液硬化型溶剤系塗料であれば、塗料の加熱硬化が困難な場所でも下塗り塗膜および/または保護塗膜を形成できる。
本発明のひび割れ検知用電気回路の製造方法において、第1の塗料の溶媒が親水性溶剤を含んでいれば、水分を含む構造物に対して密着性に優れた下塗り塗膜を形成できる。
本発明のひび割れ検知用電気回路の製造方法において、導電性塗料が1液型塗料であれば、導電性を安定して確保することができる。
本発明のひび割れ検知用電気回路の製造方法において、第2の塗料の溶媒が、導電性塗膜を溶解または膨潤させないものであれば、ひび割れ検知の正確性低下を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のひび割れ検知用電気回路の一実施形態例について説明する。
図1に、本実施形態例のひび割れ検知用電気回路の断面図を示す。このひび割れ検知用電気回路1は、構造物10表面に形成された積層塗膜20からなり、積層塗膜20が、構造物10表面上に形成された下塗り塗膜21と、下塗り塗膜21上に形成された導電性塗膜22と、導電性塗膜22を被覆する保護塗膜23とを有して構成されている。
【0008】
構造物10としては、例えば、トンネル、建物、高架道路およびその支柱、橋梁、煙突などが挙げられる。構造物10の材質としては特に制限されないが、コンクリート製である場合に、本発明の効果がとりわけ発揮される。
【0009】
下塗り塗膜21は、第1の2液硬化型溶剤系塗料(第1の塗料)が塗布されて形成された絶縁性を有する塗膜である。ここで、絶縁性とは、塗膜上に形成した電極間の絶縁抵抗が10Ω以上のことである。コンクリート構造物は含水状態である場合、10Ω程度の絶縁抵抗を有することがある。このため、導電性塗膜の抵抗値を正確に測定するには、導電性塗膜とコンクリート構造物との抵抗値の差が大きい程良い。したがって、下塗り塗膜21の絶縁性はできるだけ高いことが好ましい。また、下塗り塗膜21は、構造物10から導電性塗膜22への水分の移行を防ぐために、耐水性を有することが好ましい。
【0010】
下塗り塗膜21の幅としては、導電性塗膜22の幅より広いことが好ましい。下塗り塗膜21の幅が導電性塗膜22の幅より広ければ、構造物10と導電性塗膜22との短絡を防ぐことができるため、ひび割れ検知の正確性をより高くできる。また、下塗り塗膜21の厚さとしては、5~50μmであることが好ましい。下塗り塗膜21の厚さが5μm未満であると、構造物10と導電性塗膜22とを短絡させてしまうことがあり、50μmを超えると、下塗り塗膜21の形成が困難になる傾向にある。
【0011】
導電性塗膜22は、1液型導電性塗料が塗布されて形成された塗膜であり、体積固有抵抗値が10-1Ω・cm以下、好ましくは10-3Ω・cm以下の塗膜である。構造物10がコンクリート製である場合、湿潤状態で導電性を有するが、導電性塗膜22の体積固有抵抗値が10-1Ω・cm以下であれば、コンクリート製構造物の体積固有抵抗値より小さくなるため、より正確にひび割れを検知できる。
【0012】
導電性塗膜22は、幅が5~30mmであり、かつ、厚さが5~50μmである。導電性塗膜22の幅が5mm以上かつ厚さが10μm以上であることにより、平常時におけるひび割れ検知用電気回路の抵抗値を低くでき、かつ安定させることができる。一方、導電性塗膜22の幅が30mm以下かつ厚さが30μm以下であることにより、構造物10のひび割れに伴ってひび割れ検知用電気回路を確実に破断させることができる。
【0013】
保護塗膜23は、第2の2液硬化型溶剤系塗料(第2の塗料)が塗布されて形成された塗膜である。
保護塗膜23の幅としては、導電性塗膜22の幅より広いことが好ましい。保護塗膜23の幅が導電性塗膜22の幅より広ければ、外気中の水分が導電性塗膜22に付着することを防止できるため、ひび割れ検知の正確性をより高くできる。また、保護塗膜23の厚さとしては、5~50μmであることが好ましい。保護塗膜23の厚さが5μm未満であると、損傷しやすく、保護膜としての機能を充分に果たせないことがあり、50μmを超えると、保護塗膜23の形成が困難になる傾向にある。
【0014】
以上説明したひび割れ検知用電気回路1では、導電性塗膜22の幅および厚さが特定されているため、ひび割れを正確に常時検知できる。
特に、このひび割れ検知用電気回路1においては、構造物10と導電性塗膜22との間に下塗り塗膜21が形成されているため、構造物10が導電性を有しても、ひび割れを検知できる。さらに、導電性塗膜22が保護塗膜23により被覆されているため、外気中の水分、粉塵、NOx、SOxが導電性塗膜22に付着してひび割れ検知の正確性が低下することを防止できる。
【0015】
上記ひび割れ検知用電気回路を形成するためには、まず、第1の工程にて、構造物10表面に、第1の2液硬化型溶剤系塗料を塗布し、乾燥して下塗り塗膜21を形成する。
第1の2液硬化型溶剤系塗料は、主剤と硬化剤と親水性溶剤を含有するものである。第1の2液硬化型溶剤系塗料の主剤としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、フェノール変性エポキシ化合物、ウレタン変性エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物などが挙げられる。
また、硬化剤としては、例えば、アミン化合物、ポリアミド、酸無水物、フェノールなどが挙げられる。
親水性溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノールなどのアルコール類などが挙げられる。
【0016】
次いで、第2の工程にて、下塗り塗膜21上に、乾燥塗膜の幅が5~30mmかつ厚さが5~50μmになるように1液型導電性塗料を塗布し、乾燥して導電性塗膜22を形成する。
【0017】
1液型導電性塗料(導電性塗料)は、樹脂成分と導電性成分と溶媒とを含有するものである。1液型導電性塗料の樹脂成分としては、導電性塗膜22の伸張による検知感度低下を防ぐために、構造物10表面の温度より高いガラス転移温度を有するものが好ましい。構造物10表面の温度より高いガラス転移温度を有する樹脂成分としては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂などが挙げられる。
導電性成分としては、例えば、銀、銅、ニッケル、カーボン、グラファイトなどの粒子、またはそれらの合金などが挙げられる。
溶媒としては、周知の溶剤を使用できる。
このような導電性塗料においては、乾燥時に導電性成分同士が接触することにより、導電性を持った塗膜を形成することができる。
【0018】
そして、第3の工程にて、下塗り塗膜21および導電性塗膜22に、第2の2液硬化型溶剤系塗料(第2の塗料)を塗布し、乾燥して保護塗膜23を形成する。
第2の2液硬化型溶剤系塗料は、主剤と硬化剤と溶媒とを含有するものである。第2の2液硬化型溶剤系塗料の主剤としては、例えば、アクリルポリオール化合物、アクリルシリコン化合物、フッ素変性アクリル化合物などが挙げられる。
また、硬化剤としては、例えば、イソシアネート、アミン化合物、ポリアミドなどが挙げられる。
第2の2液硬化型溶剤系塗料の溶媒は、導電性塗膜22の体積固有抵抗値を10倍以上上昇させないものである。このような溶媒としては、例えば、ソルベントナフサ、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどが挙げられる。これらの溶媒は、導電性塗膜22を殆ど溶解することはない。
溶媒が、導電性塗膜22の体積固有抵抗値を10倍以上上昇させないものか10倍以上上昇させるものかを判別する方法としては、試験用コンクリート板上に形成した下塗り塗膜上に導電性塗膜を形成し、導電性塗膜上に第2の2液硬化型溶剤系塗料を塗布し、その塗布前後の導電性塗膜の体積固有抵抗値を測定することにより、判別する方法が挙げられる。
【0019】
上記ひび割れ検知用電気回路の製造方法において、第1の2液硬化型溶剤系塗料、第2の2液硬化型溶剤系塗料、1液型導電性塗料の塗布方法としては特に制限されず、例えば、刷毛塗り、ローラー塗り、スプレー塗装などの方法が挙げられる。
乾燥方法としては、構造物10がトンネルの場合には、自然乾燥が好ましい。
【0020】
上記ひび割れ検知用電気回路の製造方法では、下塗り塗膜21と特定の寸法の導電性塗膜22と保護塗膜23とを有する積層塗膜20からなるひび割れ検知用電気回路1を形成することができる。
ところで、構造物10は、通常屋外に設けられており、加熱して硬化させることが難しいが、下塗り塗膜21および保護塗膜23の形成に2液硬化型溶剤系塗料を用いることにより、硬化速度を速くできるため、加熱せずに外気温で硬化させることができる。
また、コンクリート構造物などでは水分を含有するため、下塗り塗膜21を形成する塗料が疎水性であると密着性が低くなるが、第1の2液硬化型溶剤系塗料は親水性溶剤を含むため、下塗り塗膜21の構造物10への密着性を高くすることができる。
また、導電性塗膜22を形成する塗料が1液型塗料であり、自然乾燥により溶媒を除去することができるため、加熱硬化をしなくても、導電性成分同士の密着性を高めることができ、高い導電性を安定して確保することができる。
1液型塗料から形成された導電性塗膜22は、硬化剤によって架橋されていないため、溶剤の種類によって溶解または膨潤することがある。しかし、本実施形態例では、保護塗膜23を形成する第2の2液硬化型溶剤系塗料の溶媒として、導電性塗膜22を溶解または膨潤させないものを用いているから、導電性塗膜22の欠陥形成を抑制できるため、ひび割れ検知の正確性低下を防止できる。
【0021】
なお、本発明のひび割れ検知用電気回路およびその製造方法は、上述した実施形態例に限定されない。例えば、第1の塗料および/または第2の塗料が2液硬化型溶剤系塗料でなくてもよいし、第1の塗料の溶媒が親水性溶剤でなくてもよいし、導電性塗料が1液型塗料でなくてもよいし、第2の塗料の溶媒が、導電性塗膜を溶解または膨潤させないものでなくてもよい。
【0022】
次に、ひび割れ検知システムの実施形態例について説明する。この検知システムは、図2に示すように、構造物10表面に、上述した積層塗膜20からなるひび割れ検知用電気回路1と、ひび割れ検知用電気回路1を通電する通電手段2と、ひび割れ検知用電気回路1の通電状態を測定する電気抵抗計3(測定手段)と、電気抵抗計3で測定された抵抗値に基づいてひび割れを判定する判定手段4と、判定手段4の判定結果を表示するモニタ5(表示手段)とを具備するものである。
ここで、ひび割れ検知用電気回路1は、構造物10表面にできるだけ均一なパターンで形成されている。通電手段2としては直流電源が使用され、判定手段4としてはコンピュータが使用される。
【0023】
次に、上記ひび割れ検知システムを用いたひび割れ検知方法について説明する。このひび割れ検知方法では、まず、上述したひび割れ検知用電気回路1を通電手段2によって通電し、その抵抗値(通電状態)を電気抵抗計3で測定する。そして、電気抵抗計3によって測定された抵抗値と予め定めた設定値とを判定手段4で比較する。ここで、設定値とは、ひび割れの発生を判定するための基準値のことであり、抵抗値がその値を超えた場合に、構造物10のひび割れによってひび割れ検知用電気回路1が破断もしくは破断寸前の状態にあるように定める。
よって、判定手段4における比較において、測定された抵抗値が設定値より低いとき(図3における範囲A)には、構造物10表面に形成されたひび割れ検知用電気回路1に変化がないから、構造物10にひび割れが生じていないと判定する。一方、測定された抵抗値が設定値より高くなったとき(図3における範囲B)には、ひび割れ検知用電気回路1が破断もしくは破断寸前になったのでひび割れが生じたと判定する。そして、その判定結果をモニタ5に表示させて監視者に知らせる。
以上説明したひび割れ検知システムおよびひび割れ検知方法では、上述したひび割れ検知用電気回路が用いられているため、構造物のひび割れを正確に常時検知できる。
【実施例】
【0024】
(実施例1~3)
以下の製造方法により、コンクリート板にひび割れ検知用電気回路を形成した。
まず、長さ600mm、幅250mm、厚さ90mmのコンクリート板表面の中央付近に、表1に示す第1の2液硬化型溶剤系塗料をローラーにより塗布し、外気温下で4時間自然乾燥して幅50mmの下塗り塗膜を形成した。次いで、下塗り塗膜上に、表2に示す1液型導電性塗料を刷毛により塗布し、外気温下で8時間以上自然乾燥して幅5mmかつ厚さ15μmの導電性塗膜を形成した。そして、下塗り塗膜および導電性塗膜に、表3に示す第2の2液硬化型溶剤系塗料を刷毛により塗布し、外気温下で8時間以上自然乾燥して幅60mmの保護塗膜を形成することにより、ひび割れ検知用電気回路を形成した。
また、導電性塗膜の幅を10mm(実施例2)、20mm(実施例3)にしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例1と同じコンクリート板表面にひび割れ検知用電気回路を形成した。
【0025】
なお、第2の2液硬化型溶剤系塗料の溶媒であるソルベントナフサは、導電性塗膜の体積固有抵抗値を10倍以上上昇させないものである。このことは以下の実験により判別した。
すなわち、10cm角のコンクリート板上の全面に、表1に示す第1の2液硬化型溶剤系塗料をローラーにより塗布し、外気温下で4時間自然乾燥して下塗り塗膜を形成した。次いで、下塗り塗膜上に、表2に示す1液型導電性塗料を刷毛により塗布し、外気温下で8時間以上自然乾燥して幅10mm、長さ80mm、厚さ20μmの導電性塗膜を形成した。このときの導電性塗膜の長さ方向の両端に電極を設置して体積固有抵抗値を測定したところ、2×10-4Ω・cmであった。次いで、下塗り塗膜および導電性塗膜に、表3に示す第2の2液硬化型溶剤系塗料を刷毛により塗布して保護塗膜を形成した。そして、保護塗膜から電極を挿入して導電性塗膜の体積固有抵抗値を測定したところ、5×10-4Ω・cmであった。
ソルベントナフサの代わりにトルエンを用いた2液硬化型溶剤系塗料を下塗り塗膜および導電性塗膜に塗布して保護塗膜を形成し、体積固有抵抗値を測定したところ、3×10-3Ω・cmであった。
よって、ソルベントナフサは導電性塗膜の体積固有抵抗値を10倍以上上昇させない溶媒で、トルエンは導電性塗膜の体積固有抵抗値を10倍以上上昇させる溶媒であることが分かった。
【0026】
【表1】
JP0004648080B2_000002t.gif

【0027】
【表2】
JP0004648080B2_000003t.gif

【0028】
【表3】
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【0029】
[ひび割れ検知試験]
図4に示すように、幅の異なる3本のひび割れ検知用電気回路1が中央部に形成されたコンクリート板31の両端を固定具32で固定した。そして、各ひび割れ検知用電気回路1の抵抗値を電気抵抗計により測定しながら、中央部31aを油圧ジャッキ33で押し上げて、コンクリート板31の中央部31aに意図的にひび割れを生じさせた。その際の、ひび割れ幅に対する各ひび割れ検知用電気回路1の抵抗値をプロットした。図5~図7にその結果を示す。
【0030】
図5~7に示すように、ひび割れ幅を増大させると、ある幅でひび割れ検知用電気回路の抵抗値が急激に増大した。これはひび割れに伴ってひび割れ検知用電気回路が破断したためである。このように、導電性塗膜の幅が5~30mmの範囲内にあった実施例1~3では、ひび割れを正確に検知することができた。さらに、実施例1~3の中では、導電性塗膜の幅が10mmである実施例2において最もばらつきが小さくなっていた。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明のひび割れ検知用電気回路の一実施形態例を示す断面図である。
【図2】本発明のひび割れ検知システムの一実施形態例を模式的に示す図である。
【図3】ひび割れ検知用電気回路の通電状態を示すグラフである。
【図4】ひび割れ検知試験を説明する図である。
【図5】実施例1のひび割れ検知試験におけるひび割れ幅に対するひび割れ検知用電気回路の抵抗値を示すグラフである。
【図6】実施例2のひび割れ検知試験におけるひび割れ幅に対するひび割れ検知用電気回路の抵抗値を示すグラフである。
【図7】実施例3のひび割れ検知試験におけるひび割れ幅に対するひび割れ検知用電気回路の抵抗値を示すグラフである。
【符号の説明】
【0032】
1 ひび割れ検知用電気回路、2 通電手段、3 電気抵抗計(測定手段)、4 判定手段、10 構造物、20 積層塗膜、21 下塗り塗膜、22 導電性塗膜、23 保護塗膜




図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6