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明細書 :ブレーキディスクとその表面処理方法及びブレーキディスクの表面処理装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4646119号 (P4646119)
公開番号 特開2006-336812 (P2006-336812A)
登録日 平成22年12月17日(2010.12.17)
発行日 平成23年3月9日(2011.3.9)
公開日 平成18年12月14日(2006.12.14)
発明の名称または考案の名称 ブレーキディスクとその表面処理方法及びブレーキディスクの表面処理装置
国際特許分類 F16D  65/12        (2006.01)
F16D  69/00        (2006.01)
FI F16D 65/12 E
F16D 69/00 M
請求項の数または発明の数 3
全頁数 11
出願番号 特願2005-164777 (P2005-164777)
出願日 平成17年6月3日(2005.6.3)
審査請求日 平成19年9月4日(2007.9.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】森 久史
【氏名】松井 元英
【氏名】辻村 太郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100104064、【弁理士】、【氏名又は名称】大熊 岳人
審査官 【審査官】塚原 一久
参考文献・文献 特開平11-279713(JP,A)
特開昭62-174388(JP,A)
特開昭57-198249(JP,A)
特開2004-169738(JP,A)
特開2000-170805(JP,A)
特開2003-130102(JP,A)
特開平10-089389(JP,A)
特開2002-061685(JP,A)
特開平06-200966(JP,A)
調査した分野 F16D 65/12、69/00
C22C 37/00、37/04
特許請求の範囲 【請求項1】
摩擦面が表面処理されたブレーキディスクであって、
前記摩擦面の表層に熱処理によって硬化処理層が形成されており、
前記硬化処理層は、パーライト鋳鉄の表面を熱処理することによって形成されており、厚み方向に金属組織の結晶粒度が傾斜しており、前記摩擦面側にいくほど金属組織が粗大な結晶粒化し、内部にくほど金属組織が微細な結晶粒化していること、
を特徴とするブレーキディスク。
【請求項2】
ブレーキディスクの摩擦面を表面処理するブレーキディスクの表面処理方法であって、
前記摩擦面の表層に熱処理によって硬化処理層を形成する熱処理工程を含み、
前記硬化処理層は、パーライト鋳鉄の表面を熱処理することによって形成されており、厚み方向に金属組織の結晶粒度が傾斜しており、前記摩擦面側にいくほど金属組織が粗大な結晶粒化し、内部にくほど金属組織が微細な結晶粒化し、
前記熱処理工程は、
前記摩擦面を焼なましする焼なまし工程と、
前記焼なまし工程後の前記摩擦面を750~860℃で焼入れする焼入れ工程と、
前記焼入れ工程後の前記摩擦面を300~600℃で焼もどしする焼もどし工程とを含むこと、
を特徴とするブレーキディスクの表面処理方法。
【請求項3】
ブレーキディスクの摩擦面を表面処理するブレーキディスクの表面処理装置であって、
前記摩擦面の表層に熱処理によって硬化処理層を形成する硬化処理装置と、
前記摩擦面の温度を検出する温度検出装置と、
前記温度検出装置の検出結果に基づいて前記硬化処理装置を制御する制御装置とを備え、
前記硬化処理層は、パーライト鋳鉄の表面を熱処理することによって形成されており、厚み方向に金属組織の結晶粒度が傾斜しており、前記摩擦面側にいくほど金属組織が粗大な結晶粒化し、内部にくほど金属組織が微細な結晶粒化し、
前記制御装置は、前記硬化処理装置が前記摩擦面を焼なましし、焼なまし後のこの摩擦面を750~860℃で焼入れし、焼入れ後のこの摩擦面を300~600℃で焼もどしするように、この硬化処理装置を制御すること、
を特徴とするブレーキディスクの表面処理装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、摩擦面が表面処理されたブレーキディスクとその表面処理方法及びブレーキディスクの表面処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
新幹線などの鉄道車両には、ブレーキディスクに制輪子を圧着させてブレーキ力を得るディスクブレーキ装置が搭載されており、このようなブレーキディスクには優れた熱伝導性、耐摩耗性及び耐熱性が要求されている。このため、従来のブレーキディスクは、例えば、ディスク本体の裏面の放熱用フィンの形状や数を変更したり、ディスク形状を二分割構造から一体構造に変化させたり、ディスク素材自体を鋳鉄から鋳鉄と鍛鋼とのクラッド構造や鍛造品に変更したりして、熱伝導性、耐摩耗性及び耐熱性を向上させている。
【0003】
従来のブレーキディスク(従来技術1)は、ディスク本体の裏面に多数の放熱用フィンを形成している(例えば、特許文献1参照)。この従来技術1では、摩擦面の過大な発熱による熱膨張をディスク本体の厚さ方向に逃がし、ディスク本体の周方向の熱応力を緩和してクラックや変形の発生を防止している。また、従来のブレーキディスク(従来技術2)は、周方向にディスク本体を二分割して分割面で突き合わせ、半径方向に移動可能なように固定している(例えば、特許文献2参照)。この従来技術2では、ディスク本体が摩擦熱によって膨張しても、分割されたディスク本体が径方向に移動可能であるため、ディスク本体との結合部分に無理な力が加わるのを防止している。また、従来のブレーキディスク(従来技術3)は、アルミニウム合金を鍛造又は鋳造して成形したディスク本体を鋳型内に設置して予熱し、アルミニウム又はアルミニウム合金にセラミックス粒子又はセラミックス繊維を分散させた複合材料の溶湯をこのディスク本体の摩擦面に流し込み一体化鍛造して製造されている(例えば、特許文献3参照)。この従来技術3では、アルミニウム合金によってディスク本体を成形することによって軽量化を図るとともに、複合材料によって耐摩耗性を向上させている。さらに、従来のブレーキディスク(従来技術4)は、アルミニウム合金からなるディスク本体の表面にめっき又は溶射によって摩擦面となる硬化層が形成されている(例えば、特許文献4参照)。この従来技術4では、ディスク本体の表面をショットピーニング処理した後に溶射又はめっきにより硬化層を形成して耐摩耗性を高めている。この従来技術4では、ショットピーニング処理することによってディスク本体の表面に凹凸面を形成し、この凹凸面と硬化層との固着面積を増加させこれらの結合度を向上させている。
【0004】

【特許文献1】特開2000-170805号公報
【0005】

【特許文献2】特開2003-130102号公報
【0006】

【特許文献3】特開平10-89389号公報
【0007】

【特許文献4】特開2002-61685号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来技術1では、ディスク本体の裏面に多数の放熱用フィンを形成する必要があるため、特別の金型を製作する必要がありコストが高くなる問題点があった。また、従来技術2では、径方向に移動可能なようにディスク本体を分割構造にする必要があり、製造や組立に手間がかかる問題点があった。また、従来技術3では、ディスク本体と複合材料とを熱間鍛造などによって一体化する必要があり、製造工程が複雑になり製造に手間がかかる問題点があった。さらに、従来技術4では、ディスク本体の表面に溶射又はめっきによって硬化層を形成しているため、高速で走行する新幹線などの鉄道車両に使用した場合には硬化層とディスク本体との結合状態を長時間維持できない問題点があった。
【0009】
この発明の課題は、強度に優れ製造が容易で安価であり長寿命化を図ることができるブレーキディスクとその表面処理方法及びブレーキディスクの表面処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、摩擦面(5a)が表面処理されたブレーキディスクであって、前記摩擦面の表層に熱処理によって硬化処理層(5e)が形成されており、前記硬化処理層は、パーライト鋳鉄の表面を熱処理することによって形成されており、厚み方向に金属組織の結晶粒度が傾斜しており、前記摩擦面側にいくほど金属組織が粗大な結晶粒化し、内部にくほど金属組織が微細な結晶粒化していることを特徴とするブレーキディスク(5)である。
【0011】
請求項2の発明は、ブレーキディスク(5)の摩擦面(5a)を表面処理するブレーキディスクの表面処理方法であって、前記摩擦面の表層に熱処理によって硬化処理層(5e)を形成する熱処理工程を含み、前記硬化処理層は、パーライト鋳鉄の表面を熱処理することによって形成されており、厚み方向に金属組織の結晶粒度が傾斜しており、前記摩擦面側にいくほど金属組織が粗大な結晶粒化し、内部にくほど金属組織が微細な結晶粒化し、前記熱処理工程は、前記摩擦面を焼なましする焼なまし工程(#110)と、前記焼なまし工程後の前記摩擦面を750~860℃で焼入れする焼入れ工程(#120)と、前記焼入れ工程後の前記摩擦面を300~600℃で焼もどしする焼もどし工程(#130)とを含むことを特徴とするブレーキディスクの表面処理方法である。
【0012】
請求項3の発明は、ブレーキディスク(5)の摩擦面(5a)を表面処理するブレーキディスクの表面処理装置であって、前記摩擦面の表層に熱処理によって硬化処理層(5e)を形成する硬化処理装置(12)と、前記摩擦面の温度を検出する温度検出装置(14)と、前記温度検出装置の検出結果に基づいて前記硬化処理装置を制御する制御装置(16)とを備え、前記硬化処理層は、パーライト鋳鉄の表面を熱処理することによって形成されており、厚み方向に金属組織の結晶粒度が傾斜しており、前記摩擦面側にいくほど金属組織が粗大な結晶粒化し、内部にくほど金属組織が微細な結晶粒化し、前記制御装置は、前記硬化処理装置が前記摩擦面を焼なましし、焼なまし後のこの摩擦面を750~860℃で焼入れし、焼入れ後のこの摩擦面を300~600℃で焼もどしするように、この硬化処理装置を制御することを特徴とするブレーキディスクの表面処理装置である。
【発明の効果】
【0021】
この発明によると、強度に優れ製造が容易で安価であり長寿命化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、この発明の第1実施形態について詳しく説明する。
図1は、この発明の第1実施形態に係るブレーキディスクを備える車輪の縦断面図である。図2は、この発明の第1実施形態に係るブレーキディスクの平面図である。図3は、この発明の第1実施形態に係るブレーキディスクの断面図である。以下では、新幹線などの鉄道車両のディスクブレーキ装置を例に挙げて説明する。
【0023】
図1に示す車輪1は、鉄道用レールと回転接触する鉄道用車輪であり、リム部1aと、ボス部1bと、板部1cとを備えている。リム部1aは、車輪1の外周部であり、レール頭頂面と接触して摩擦抵抗を受ける踏面1dと、脱輪を防止するために車輪1の外周に連続して形成されたフランジ1eとを備えている。ボス部1bは、車輪1の中心部であり、車軸が圧入される貫通孔1fと、締結ボルト4aが挿入される貫通孔1gとを備えている。板部1cは、リム部1aとボス部1bとの間の中間部である。図1に示す車輪1は、高炭素鋼を圧延してタイヤと輪心とが一体に製造される一体圧延車輪であり、ブレーキディスク5を板部1cの両側面に取り付けたディスク付き車輪である。
【0024】
ディスクブレーキ装置2は、ブレーキディスク5の摩擦面5aに発生する摩擦力によって制動させる装置であり、ブレーキシリンダが発生する駆動力をブレーキてこ機構によって制輪子3に伝達して摩擦面5aに制輪子3を圧着させブレーキ力を発生させる。図1に示すディスクブレーキ装置2は、板部1cの両側面にブレーキディスク5が取り付けられた車輪付きディスクブレーキ装置である。ディスクブレーキ装置2は、図1に示すように、制輪子3と、固定部材4と、ブレーキディスク5などを備えている。
【0025】
制輪子3は、ブレーキディスク5の摩擦面5aに押し付けられてブレーキ力を発生する摩擦材であり、ブレーキ機構部によって駆動されて摩擦面5aと接触及び離間する。制輪子3は、例えば、耐熱性が高く湿潤条件下で適度な増粘着効果がある焼結合金制輪子であり、ブレーキディスク5の摩擦面5aと接触する側の表面にブレーキライニングが装着されている。
【0026】
固定部材4は、ブレーキディスク5を車輪1に固定する部材であり、図2に示すように車輪1及びブレーキディスク5の周方向に所定の間隔をあけて配置されている。固定部材4は、図1に示すように、貫通孔1g及び貫通孔5dに挿入される締結ボルト4aと、この締結ボルト4aと噛み合う締結ナット4bなどから構成されている。
【0027】
ブレーキディスク5は、摩擦面5aが表面処理された部材であり、制動時(ブレーキ時)に制輪子3が摩擦面5aに押し付けられる円板状の摩擦材である。図1~図3に示すブレーキディスク5は、車輪1の板部1cの両側面に取り付けられる車輪側ディスクである。ブレーキディスク5の材質としては、例えば、熱伝導性及び耐摩耗性からパーライト鋳鉄が好ましく、新幹線用では耐熱性の低合金鋳鉄材が使用され、高速新幹線用では一体形低合金鍛鋼材が使用される。ブレーキディスク5は、例えば、車輪径が910mmの新幹線用車輪側ディスクの場合には外径が710mm程度であり、板厚が20mm程度である。ブレーキディスク5には、図1~図3に示すように、摩擦面5aと、硬化処理層5bと、フィン部5cと、貫通孔5dなどが形成されている。
【0028】
摩擦面5aは、制輪子3と接触するしゅう動面(ブレーキ面)である。摩擦面5aは、熱による微小亀裂の発生を抑制するとともに微小亀裂が発生したときにこの微小亀裂の進展を抑制し、耐熱亀裂特性が向上するように硬化処理されている。
【0029】
硬化処理層5bは、摩擦面5aの表層に硬化処理されて形成された部分である。硬化処理層5bは、例えば、現場での取扱が容易で安価なアルミナ、ジルコニア、シリカなどの無機質素材粒子を摩擦面5aに所定の圧力で噴射するシャットピーニング処理によって形成されており、硬化処理層5bには圧縮残留応力が付与されている。
【0030】
フィン部5cは、制動時に発生する熱を放熱させるための冷却用の放熱部である。フィン部5cは、ブレーキディスク5の裏面の放熱面積が大きくなるように、ブレーキディスク5の裏面に鍛造などによって放射状に多数形成されている。フィン部5cの先端部は、図1に示すように、制輪子3が摩擦面5aに押し付けられたときに、ブレーキディスク5が板部1c側に移動して制輪子3と摩擦面5aとの間の摩擦力が低下しないように、板部1cに接触している。貫通孔5dは、締結ボルト4aが挿入される孔であり、図2に示すようにブレーキディスク5の周方向に所定の間隔をあけて形成されている。
【0031】
次に、この発明の第1実施形態に係るブレーキディスクの表面処理方法について説明する。
図4は、この発明の第1実施形態に係るブレーキディスクの表面処理方法を説明するための図である。
図4に示す表面処理工程は、摩擦面5aを表面処理する工程であり、摩擦面5aの表層に硬化処理層5bを形成する硬化処理工程を含み、この硬化処理工程は摩擦面5aをショットピーニング処理する工程である。この硬化処理工程では、図4に示すように、アルミナ、ジルコニア、シリカなどの無機質素材からなる粒子(ショット粒子)6が摩擦面5aに多数投射されて、この摩擦面5aの表層に残留圧縮応力を付与し硬化処理層5bが形成される。
【0032】
次に、この発明の第1実施形態に係るブレーキディスクの表面処理装置について説明する。
図5は、この発明の第1実施形態に係るブレーキディスクの表面処理装置を概略的に示す構成図である。
図5に示す表面処理装置7は、摩擦面5aを表面処理する装置である。表面処理装置7は、図5に示すように、硬化処理装置8と、駆動装置9と、設定装置10と、制御装置11などを備えている。表面処理装置7は、摩擦面5aに粒子6を噴射してこの摩擦面5aを表面改質する。
【0033】
硬化処理装置8は、摩擦面5aの表層に硬化処理層5bを形成する装置であり、摩擦面5aをショットピーニング処理するショットピーニング処理装置などを利用して粒子6を圧縮気体とともに摩擦面5aに投射する。駆動装置9は、ブレーキディスク5の摩擦面5aに沿って硬化処理装置8を駆動する手段であり、ブレーキディスク5の中心を回転中心として硬化処理装置8を回転駆動するモータなどを備えている。設定装置10は、摩擦面5aの硬化処理条件を設定する手段であり、粒子6の噴射圧力及び/又は噴射時間などの処理条件を入力するための入力装置などを備えている。制御装置11は、表面処理装置7の種々の動作を制御する手段であり、設定装置10の設定条件に基づいて、硬化処理装置8の動作を制御したり、駆動装置9の駆動速度(回転速度)を制御したりする。
【0034】
次に、この発明の第1実施形態に係るブレーキディスクの表面処理装置の動作を説明する。
図5に示す設定装置10によって摩擦面5aの硬化処理条件が設定されると、この硬化処理条件に応じて硬化処理装置8及び駆動装置9を制御装置11が動作させる。このため、駆動装置9の駆動速度(回転速度)を制御装置11が制御して、駆動装置9が硬化処理装置8を連続して回転するとともに、粒子6の噴射圧力や噴射時間などを制御装置11が制御して、硬化処理装置8が摩擦面5aに粒子6を噴射する。その結果、摩擦面5aに圧縮残留応力が付与されて摩擦面5aの表層に硬化処理層5bが形成される。
【0035】
この発明の第1実施形態に係るブレーキディスクとその表面処理方法及びブレーキディスクの表面処理装置には、以下に記載するような効果がある。
(1) この第1実施形態では、ブレーキディスク5の摩擦面5aの表層に硬化処理層5bが形成されている。このため、ブレーキディスク5の強度を向上させることができる。例えば、制動時にブレーキディスク5に発生する熱応力によって微小な熱亀裂が発生するのを抑制することができるとともに、微小な熱亀裂が発生してもこの熱亀裂の進展を防止することができる。その結果、鉄道車両用ディスクブレーキ装置の場合には、保全検査周期間(二年間)におけるブレーキディスク5の長寿命化が図られて、ブレーキディスク5の交換に要する費用を削減することができる。また、従来技術4のようなめっき又は溶射によって硬化層を形成する場合に比べて、摩擦面5aの表層に強固な硬化処理層5bを形成することができる。さらに、ブレーキディスク5を加工する加工工程の後に、摩擦面5aの表層に硬化処理層5bを形成する硬化処理工程を追加することによって、摩擦面5aを簡単に硬化処理することができる。その結果、従来技術1~3のような特別な金型を製造したり組立に手間をかけたりする必要がなくなるため、製造工程が簡単になってブレーキディスク5を安価に製造することができる。
【0036】
(2) この第1実施形態では、硬化処理層5bがショットピーニング処理されて形成されている。このため、ブレーキディスク5の本来の強度や破壊特性を維持しつつ、ブレーキディスク5の使用前に摩擦面5aに予め圧縮応力を加えておき、強度を向上させることができる。また、ブレーキディスク5の素材を高価で加工が困難なチタンやステンレスなどに変更する必要がなく、ブレーキディスク5を簡単に安価で製造することができる。
【0037】
(3) この第1実施形態では、摩擦面5aの表層に硬化処理装置8が硬化処理層5bを形成する。このため、現在のディスク加工装置の構成を大幅に変更する必要がなく、硬化処理装置8を備える表面処理装置7をディスク加工装置に追加することによって、摩擦面5aの表層に硬化処理層5bを簡単に形成することができる。
【0038】
(4) この第1実施形態では、硬化処理装置が摩擦面5aをショットピーニング処理する。このため、ショットピーニング処理装置をディスク加工装置に追加して摩擦面5aの表層に簡単に硬化処理層5bを形成することができる。
【0039】
(第2実施形態)
図6は、この発明の第2実施形態に係るブレーキディスクの断面図である。以下では、図1~図3に示す部分と同一の部分については、同一の番号を付して詳細な説明を省略する。
図6に示すブレーキディスク5には、摩擦面5aと、フィン部5cと、貫通孔5dと、硬化処理層5eなどが形成されている。硬化処理層5eは、熱処理によって形成されており、制動時に発生する熱によって摩擦面5a側の金属組織の結晶粒が微細化するように、摩擦面5a側の金属組織が粗大化されている。硬化処理層5eは、ブレーキディスク5の厚み方向に金属組織の結晶粒度が傾斜しており、表面にいくほど金属組織が粗大な結晶粒化(結晶粒が粗大化)しており、内部にいくほど金属組織が微細な結晶粒化(結晶粒が微細化)している。
【0040】
次に、この発明の第2実施形態に係るブレーキディスクの表面処理方法について説明する。
図7は、この発明の第2実施形態に係るブレーキディスクの表面処理方法の工程図である。
図7に示す表面処理工程#100は、摩擦面5aを熱処理する工程であり、摩擦面5aを焼なましする焼なまし工程#110と、焼なまし工程#110後の摩擦面5aを焼入れする焼入れ工程#120と、焼入れ工程#120後の摩擦面5aを焼もどしする焼もどし工程#130とを含む。
【0041】
焼なまし工程#110は、鋼の軟化、結晶粒の微細化、内部応力の除去などを目的としてA3点以上からA1点以下までの適当な温度に加熱し、この温度に保持した後に徐冷する工程である。焼なまし工程#110では、例えば、摩擦面5aを200°Cで1~2時間加熱した後に炉などで徐冷する。焼入れ工程#120は、鋼をマルテンサイト組織にして硬化させるために、オーステナイト組織に加熱した後に冷却剤中で急冷する工程である。焼入れ工程#120では、例えば、摩擦面5aを750~860°Cで加熱後、室温まで水冷又は油冷却する。焼もどし工程#130は、組織と結晶粒の微細化及び均一化を図るために、鋼をオーステナイト組織に加熱し、均一なオーステナイト組織になるまで加熱温度を保持した後に冷却する工程である。焼もどし工程#130では、摩擦面5aを300~600°Cで加熱後、室温まで強制空冷又は炉冷する。一般に、新幹線などの鉄道車両用ディスクブレーキ装置では、ブレーキディスク5が制動時に800°C程度まで上昇する場合と600°C程度まで上昇する場合とがある。このため、焼入れ工程#120では、摩擦面5aを750~860°Cで加熱して金属組織の結晶粒を微細化し、焼もどし工程#130では摩擦面5aを300~600°Cで加熱して硬化処理層5eを安定化させる。
【0042】
次に、この発明の第2実施形態に係るブレーキディスクの表面処理装置について説明する。
図8は、この発明の第2実施形態に係るブレーキディスクの表面処理装置を概略的に示す構成図である。
図8に示す表面処理装置7は、硬化処理装置12と、駆動装置13と、温度検出装置14と、設定装置15と、制御装置16などを備えている。表面処理装置7は、硬化処理装置12によって摩擦面5aを加熱するとともにこの摩擦面5aを冷却してこの摩擦面5aを熱処理する。
【0043】
硬化処理装置12は、摩擦面5aの表層を硬化処理する装置であり、摩擦面5aを熱処理する手段である。硬化処理装置12は、例えば、コイルに高周波電流を流して摩擦面5aに誘導電流を発生させ、この誘導電流の抵抗熱によって摩擦面5aを加熱する高周波加熱装置と、この高周波加熱装置によって加熱された摩擦面5aに水又は油などの冷却剤を噴射したり空気を噴射したりして、この摩擦面5aを冷却する冷却装置などを備えている。駆動装置13は、ブレーキディスク5を駆動する手段であり、ブレーキディスク5の中心を回転中心としてこのブレーキディスク5を回転駆動するモータなどを備えている。温度検出装置14は、摩擦面5aの温度を検出する手段であり、ブレーキディスク5の表面温度を検出し、この検出結果を温度情報として制御装置16に出力する温度センサなどである。設定装置15は、摩擦面5aの硬化処理条件を設定する手段であり、摩擦面5aの加熱温度及び/又は加熱時間などの処理条件を入力するための入力装置などを備えている。制御装置16は、表面処理装置7の種々の動作を制御する手段であり、温度検出装置14の検出結果に基づいて硬化処理装置12を制御したりする。
【0044】
次に、この発明の第2実施形態に係るブレーキディスクの表面処理装置の動作を説明する。
図8に示す設定装置15によって摩擦面5aの硬化処理条件が設定されると、ブレーキディスク5を駆動装置13が連続して回転しながら、硬化処理装置12が所定の焼なまし温度で所定時間だけ摩擦面5aを加熱して徐冷する。次に、硬化処理装置12が所定の焼入れ温度で摩擦面5aを再度加熱した後に、冷却剤を噴射して摩擦面5aを冷却する。次に、硬化処理装置12が所定の焼もどし温度で摩擦面5aを再度加熱して冷却する。その結果、摩擦面5aが熱処理されて摩擦面5aの表層に硬化処理層5eが形成される。
【0045】
この発明の第2実施形態に係るブレーキディスクとその表面処理方法及びブレーキ装置の表面処理装置には、第1実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
この第2実施形態には、硬化処理層5eが熱処理によって形成されている。このため、例えば、摩擦面5a側の金属組織が粗大化されて、制動時に発生する熱によってこの摩擦面5a側の材料組織が動的に変化して結晶粒が微細化する。このため、制動を繰り返す毎に摩擦面5aの表層が徐々に硬化して、ブレーキディスク5の強度を向上させることができる。その結果、制動時の熱応力による亀裂の発生を抑制することができるとともに、亀裂が発生したような場合にはこの亀裂の進展を可能な限り遅延又は停止させることができる。
【0046】
(他の実施形態)
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
この実施形態では、鉄道車両のブレーキディスク5を例に挙げて説明したが、自動車、自動二輪車又は自転車などのブレーキディスクについてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、表面硬化処理としてショットピーニング処理を例に挙げて説明したが、ブラスト処理などについてもこの発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、表面処理装置7によって摩擦面5aを表面処理しているが、鉄道車両の台車の軸箱を洗浄するために使用されるブラスト装置などを利用して摩擦面5aを表面処理することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】この発明の第1実施形態に係るブレーキディスクを備える車輪の縦断面図である。
【図2】この発明の第1実施形態に係るブレーキディスクの平面図である。
【図3】この発明の第1実施形態に係るブレーキディスクの断面図である。
【図4】この発明の第1実施形態に係るブレーキディスクの表面処理方法を説明するための図である。
【図5】この発明の第1実施形態に係るブレーキディスクの表面処理装置を概略的に示す構成図である。
【図6】この発明の第2実施形態に係るブレーキディスクの断面図である。
【図7】この発明の第2実施形態に係るブレーキディスクの表面処理方法の工程図である。
【図8】この発明の第2実施形態に係るブレーキディスクの表面処理装置を概略的に示す構成図である。
【符号の説明】
【0048】
1 車輪
2 ディスクブレーキ装置
5 ブレーキディスク
5a 摩擦面
5b 硬化処理層
5c フィン部
5e 硬化処理層
6 粒子
7 表面処理装置
8 硬化処理装置
12 硬化処理装置

図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7