TOP > 国内特許検索 > 杭基礎構造及びその構築方法 > 明細書

明細書 :杭基礎構造及びその構築方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4575858号 (P4575858)
公開番号 特開2007-039927 (P2007-039927A)
登録日 平成22年8月27日(2010.8.27)
発行日 平成22年11月4日(2010.11.4)
公開日 平成19年2月15日(2007.2.15)
発明の名称または考案の名称 杭基礎構造及びその構築方法
国際特許分類 E02D  27/12        (2006.01)
E02D  27/34        (2006.01)
FI E02D 27/12 Z
E02D 27/34 A
請求項の数または発明の数 4
全頁数 14
出願番号 特願2005-223632 (P2005-223632)
出願日 平成17年8月2日(2005.8.2)
審査請求日 平成19年12月10日(2007.12.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】桐生 郷史
【氏名】澤田 亮
個別代理人の代理人 【識別番号】100099704、【弁理士】、【氏名又は名称】久寶 聡博
審査官 【審査官】苗村 康造
参考文献・文献 特開2003-321846(JP,A)
特開平06-212618(JP,A)
特開平06-316941(JP,A)
調査した分野 E02D 27/00~27/52
特許請求の範囲 【請求項1】
地盤内に埋設された杭で上部構造物を支持するように構成されてなる杭基礎構造であって、前記地盤のうち、前記杭をその周面で当接するようにして取り囲む被覆領域のみを薬液注入によって地盤改良してなるとともに、杭の径をD、被覆領域の厚みをtとしたとき、間隙水圧比がほぼ1の完全液状化が予想されるときは被覆率t/Dを4以上とし、間隙水圧比がほぼ0.5~0.7の中規模液状化が予想されるときは被覆率t/Dを2以上又は1以上としたことを特徴とする杭基礎構造。
【請求項2】
前記杭を、高架橋を支持する杭とした請求項1記載の杭基礎構造。
【請求項3】
地盤内に埋設された杭で上部構造物を支持するように構成されてなる杭基礎構造の構築方法であって、前記上部構造物が既存構造物として前記杭に支持された状態で、前記地盤のうち、前記杭をその周面で当接するようにして取り囲む被覆領域のみを薬液注入によって地盤改良するとともに、杭の径をD、被覆領域の厚みをtとしたとき、間隙水圧比がほぼ1の完全液状化が予想されるときは被覆率t/Dを4以上とし、間隙水圧比がほぼ0.5~0.7の中規模液状化が予想されるときは被覆率t/Dを2以上又は1以上とすることを特徴とする杭基礎構造の構築方法。
【請求項4】
前記杭を、高架橋を支持する杭とする請求項3記載の杭基礎構造の構築方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、主として高架橋の杭基礎に適用される杭基礎構造及びその構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地震時に起こる液状化は、地震によって地盤に水平振動が作用したときに該地盤のせん断変形によって砂粒子間の間隙水圧が上昇し、その間隙水圧上昇に伴って有効応力がゼロになり砂粒子間で応力伝達ができなくなって流動性が高くなり、やがては鉛直支持力を失って建物の倒壊を招く現象であり、言うまでもなく、緩い飽和砂質地盤で起こりやすい(以下、液状化が発生しやすい地盤を液状化地盤と言う)。
【0003】
かかる液状化による被害の甚大さは、我が国では古くは新潟地震から強く認識されるようになり、従来からさまざまな液状化対策が研究開発されてきた。
【0004】
典型的な液状化対策としては、既設構造物が立設されている場合、その下方に拡がる液状化地盤の広い範囲に薬剤注入等で地盤強度を向上させ、地震時のせん断変形を抑制する工法である。
【0005】

【特許文献1】特開平3-5528
【特許文献2】特開2002-30649
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、杭基礎の場合には、地震時において杭周辺の地盤が液状化すると、水平地盤反力が杭に作用しなくなる。換言すれば、液状化によって地盤抵抗が低下するため、既設構造物からの地震時水平力のうち、その大部分を杭が負担することとなり、杭頭に大きな曲げモーメントが生じて曲げ破壊を起こし、ひいては杭全体が既設構造物の荷重を支持できない状況に陥る。
【0007】
しかしながら、液状化地盤の広い範囲に薬剤注入等で地盤強度を向上させる従来の液状化対策は、施工能率が悪いだけではなく、例えば高架橋を支持する杭基礎の場合、高架橋の橋軸に沿った長い区間にわたる地盤改良が必要となり、工期や工費といった面で現実性に欠けるという問題を生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、液状化地盤を広範囲に地盤改良せずとも、構造物の倒壊を確実に防止することが可能な杭基礎構造及びその構築方法を提供することを目的とする。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る杭基礎構造は請求項1に記載したように、地盤内に埋設された杭で上部構造物を支持するように構成されてなる杭基礎構造であって、前記地盤のうち、前記杭をその周面で当接するようにして取り囲む被覆領域のみを薬液注入によって地盤改良してなるとともに、杭の径をD、被覆領域の厚みをtとしたとき、間隙水圧比がほぼ1の完全液状化が予想されるときは被覆率t/Dを4以上とし、間隙水圧比がほぼ0.5~0.7の中規模液状化が予想されるときは被覆率t/Dを2以上又は1以上としたものである。
【0010】
また、本発明に係る杭基礎構造は、前記杭を、高架橋を支持する杭としたものである。
【0011】
また、本発明に係る杭基礎構造の構築方法は請求項3に記載したように、地盤内に埋設された杭で上部構造物を支持するように構成されてなる杭基礎構造の構築方法であって、前記上部構造物が既存構造物として前記杭に支持された状態で、前記地盤のうち、前記杭をその周面で当接するようにして取り囲む被覆領域のみを薬液注入によって地盤改良するとともに、杭の径をD、被覆領域の厚みをtとしたとき、間隙水圧比がほぼ1の完全液状化が予想されるときは被覆率t/Dを4以上とし、間隙水圧比がほぼ0.5~0.7の中規模液状化が予想されるときは被覆率t/Dを2以上又は1以上とするものである。
【0012】
また、本発明に係る杭基礎構造の構築方法は、前記杭を、高架橋を支持する杭とするものである。
【0013】
本出願人は、液状化防止対策として、広範囲を地盤改良するという非効率的な従来工法を見直すべく、さまざまな視点で研究開発を行った結果、液状化地盤を広範囲に地盤改良せずとも、杭の周囲だけを地盤改良すれば、所定の液状化防止を図ることができるというあらたな知見を見いだした。
【0014】
すなわち、本発明に係る杭基礎構造及びその構築方法においては、杭をその周面で当接するようにして取り囲む被覆領域のみを薬液注入によって地盤改良するものであり、かかる部分的な地盤改良であっても液状化防止に対して十分な効果を得ることができることを実証試験で確認した。
【0016】
被覆領域の厚みの下限値については、どの程度の液状化が予想されるかによって設定する。すなわち、杭の径をD、被覆領域の厚みをtとしたとき、被覆率t/Dを4以上としたならば、完全液状化状態となった場合でも、杭の健全性を確保し、ひいては上部構造物の倒壊を未然に防止することができる。
【0017】
また、被覆率t/Dを2以上、又は1以上としたならば、中規模液状化状態の場合には、杭の健全性を十分確保することができる。
【0018】
ここで、本明細書では、間隙水圧比(過剰間隙水圧Δu/初期上載圧σv′)がほぼ0.5~0.7の状態を中規模液状化、間隙水圧比がほぼ1の状態を完全液状化と呼ぶこととする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る杭基礎構造及びその構築方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、従来技術と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0022】
実施形態
図1は、本実施形態に係る杭基礎構造を示した図である。同図でわかるように、本実施形態に係る杭基礎構造1は、上部構造物としての高架橋2の一部を構成するフーチング3と、地盤としての液状化地盤4内に埋設されフーチング3に頭部が接合された杭5とから構成してある。
【0023】
ここで、液状化地盤4のうち、杭5をその周面で当接するようにして取り囲む被覆領域6のみを地盤改良してある。
【0024】
本実施形態に係る杭基礎構造1を構築するには、既存構造物である高架橋2を支持する杭5の周囲に薬液を注入することにより、杭5の被覆領域6のみを地盤改良する。
【0025】
薬液については、液状化地盤を地盤改良する際に用いられる公知の薬剤から適宜選択すればよい。
【0026】
薬液を注入して被覆領域6のみを地盤改良するにあたっては、杭5の径をD、被覆領域6の厚みをtとしたとき、被覆率t/Dを1以上、望ましくは2以上、さらに望ましくは4以上に設定するのがよい。
【0027】
被覆率t/Dの設定にあたっては、液状化地盤4がどの程度液状化しやすいか、あるいは設計地震動の大きさをどの程度に想定するかによるが、完全液状化状態が想定されるのであれば、被覆率t/Dを4以上とするのがよい。
【0028】
一方、中規模液状化状態を想定すれば必要十分である場合には、被覆率t/Dを2以上、又は1以上とすればよい。
【0029】
ここで、完全液状化状態とは、間隙水圧比がほぼ1の状態を意味し、中規模液状化状態とは、間隙水圧比(過剰間隙水圧Δu/初期上載圧σv′)がほぼ0.5~0.7の状態を意味する。
【0030】
以上説明したように、本実施形態に係る杭基礎構造1及びその構築方法によれば、杭5の被覆領域6のみを地盤改良するだけでも、液状化地盤4が液状化して高架橋2を支持できなくなるといった不測の事態を未然に防止することが可能となる。
【0031】
また、本実施形態に係る杭基礎構造1及びその構築方法によれば、被覆率t/Dを4以上とすることにより、完全液状化状態が想定される場合にも杭5の健全性ひいては高架橋2の倒壊を未然に防止することができるとともに、被覆率t/Dを2以上、又は1以上とすることにより、中規模液状化状態が想定される場合において杭5の健全性ひいては高架橋2の倒壊を未然に防止することができる。
【0033】
参考形態)
次に、参考形態について説明する。なお、実施形態と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0034】
図2は、参考形態に係る杭基礎構造を示した図である。同図でわかるように、本参考形態に係る杭基礎構造21は、上部構造物としての高架橋22の一部を構成するフーチング23と、地盤としての液状化地盤4内に埋設されフーチング23に頭部が接合された複数本の杭25とから構成してある。
【0035】
ここで、液状化地盤4は、各杭25をそれらの周面で当接するようにして取り囲む複数の被覆領域26と、該被覆領域の外側に拡がる中間領域27とに区分するとともに、複数の被覆領域26のみを地盤改良してある。
【0036】
参考形態に係る杭基礎構造21を構築するには上述の実施形態と同様、既存構造物である高架橋22を支持する杭25の周囲に薬液を注入することにより、各杭25の被覆領域26のみを地盤改良する。
【0037】
薬液については、液状化地盤を地盤改良する際に用いられる公知の薬剤から適宜選択すればよい。
【0038】
薬液を注入して被覆領域26のみを地盤改良するにあたっては、杭25の径をD、被覆領域26の厚みをtとしたとき、被覆率t/Dを1以上、望ましくは2以上、さらに望ましくは4以上に設定するとともに、各被覆領域26が互いに接触しないように被覆率t/Dの上限値を定める。
【0039】
被覆率t/Dの設定にあたっては、液状化地盤4がどの程度液状化しやすいか、あるいは設計地震動の大きさをどの程度に想定するかによるが、完全液状化状態が想定されるのであれば、被覆率t/Dを4以上とするのがよい。
【0040】
一方、中規模液状化状態を想定すれば必要十分である場合には、被覆率t/Dを2以上、又は1以上とすればよい。
【0041】
以上説明したように、本参考形態に係る杭基礎構造21によれば、複数本の杭25の被覆領域26のみをそれぞれ地盤改良するだけでも、液状化地盤4が液状化して高架橋22を支持できなくなるといった不測の事態を未然に防止することが可能となる。
【0042】
また、本参考形態に係る杭基礎構造21によれば、被覆率t/Dを4以上とすることにより、完全液状化状態が想定される場合にも杭25の健全性ひいては高架橋22の倒壊を未然に防止することができるとともに、被覆率t/Dを2以上、又は1以上とすることにより、中規模液状化状態が想定される場合において杭25の健全性ひいては高架橋22の倒壊を未然に防止することができる。
【0044】
次に、本発明及び参考発明に係る杭基礎構造の作用効果を確認すべく、室内模型試験を行ったので、以下にその概要を説明する。
【0045】
試験は、鉄道構造物の杭基礎周面近傍のみを薬液注入で地盤改良した場合を想定し、液状化の程度及び改良範囲の大きさをパラメータとして行った。
また、試験は、静的載荷実験と動的実験(振動実験)の両方を行った。
(1)静的載荷実験
(a) 実験概要
図3に示すように,実験は長方形せん断土槽(長さ2600mm、幅1000mm、高さ750mm)を用い、該せん断土槽内に単杭模型を4体配置して行った。地盤の相対密度は,Dr=55%として作成した。模型地盤には珪砂6号を使用し,水中落下法で作成した。
【0046】
入力波は、完全液状化状態までを模擬することを目的として、正弦波(最大加速度100gal)を用いた。
【0047】
計測機器については図3に示す通り、模型地盤内に間隙水圧計および加速度計を設置し、単杭模型にはひずみゲージを、土槽リングには加速度計および変位計を、地表面及びフーチング部には変位計をそれぞれ設置した。
【0048】
単杭模型は、アクリル系剛性樹脂材(ABS)を、杭径D=20mm、杭長750mm、曲げ剛性287000kN/m2 となるように形成し、下端をせん断土槽の底面に固定し、上端をフリーとした。
【0049】
単杭模型は、その周囲をポリマーで固めることで、薬液注入による杭周面近傍の地盤改良を模し、実スケールの杭強度と薬液注入による実強度の関係及び挙動が同様となる強度に設定した(E50=485kN/m2)。
【0050】
単杭模型の水平断面図を図4に示す。同図でわかるように、単杭模型は、杭を模したABS樹脂のみ(以下、「無対策」と言う)、ABS樹脂の周囲を杭径Dに相当する厚みのポリマーで固めたもの(以下、「1D改良」と言う)、ABS樹脂の周囲を杭径2Dに相当する厚みのポリマーで固めたもの(以下、「2D改良」と言う)、ABS樹脂の周囲を杭径4Dに相当する厚みのポリマーで固めたもの(以下、「4D改良」と言う)の計4体とした。なお、改良深さ(ポリマーの長さ)は、全てのケースについてABS樹脂で形成した杭の全長とした。
【0051】
実験方法は、このような4体の単杭模型をせん断土槽内に配置し、水平荷重10.0kNをせん断土槽の短辺方向に静的に載荷した状態で加振を行った。加振方向は載荷方向と直角とし(せん断土槽の長辺方向)、単杭模型に慣性力が生じない方法とした。
【0052】
(b)実験結果
初期状態(液状化前であり、間隙水圧比≒0)、中規模状態(間隙水圧比≒0.5)及び完全液状化状態(間隙水圧比≒1.0)における曲げモーメント分布を図5乃至図7にそれぞれ示す。
【0053】
これらの図でわかるように、液状化状態に関わらず、改良径に応じて第1不動点が杭頭方向へ移動し、発生最大モーメントにおいても改良径が大きいほど小さくなる傾向があることがわかる。
【0054】
無対策を基準として各液状化状態毎に改良径別の発生断面力の低下程度を表1に示す。
【0055】
【表1】
JP0004575858B2_000002t.gif

【0056】
同表でわかるように、初期状態では,杭改良径に応じて発生断面力が小さくなっており、中規模液状化状態では、無対策に対する低下程度が「1D改良」「2D改良」で2割、「4D改良」では3割となり、「1D改良」と「2D改良」では低下程度に大差がない。また、完全液状化状態では「4D改良」で2割程度低下しているが、「1D改良」「2D改良」については、無対策と大差なく対策工の効果がない。
【0057】
すなわち、完全液状化状態でも対策効果を発揮させるためには、「4D改良」が必要である一方で、中規模液状化状態を対象とした対策を講じる場合には、「1D改良」あるいは「2D改良」程度で十分効果を発揮することがわかった。
【0058】
(2)振動試験
前述した静的実験の実験結果を受け、実施工として常識的な範囲でかつ対策効果を発揮すると思われる「1D改良」で、対象となる杭を群杭として構造物全体系の挙動の把握を試みた。
(a)実験概要
実験に用いた円形大型せん断土槽(φ=1200mm,H=750mm)を図8に示す。同図でわかるように、本実験では、土槽中央に群杭(4 本杭)の杭基礎模型を配置して加振をおこなった。
【0059】
杭基礎模型は、4本の杭に上部工として98Nの重量を杭頭に載せ、杭先端及び杭頭ともに剛結した。また、模型地盤は、相対密度をDr=60%として作成した。なお、その他の模型地盤及び杭基礎模型の製作仕様は、静的載荷試験と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0060】
入力波は、加振中の各段階で入力波と構造物の共振状態が確認できるよう、図 9に示す0.5~5.0Hz の広帯域波(ホワイトノイズ)を用いた。
【0061】
杭基礎模型及び模型地盤の実験ケースを表2に、それらの配置模式図を図10に示す。
【0062】
【表2】
JP0004575858B2_000003t.gif

【0063】
同表でわかるように、C-1~C-3は、地盤全層が液状化層となるよう、模型地盤の地表面まで水を満たしてある。一方、C-4~C-5は、地表面から一定深さまで非液状化層となるよう、模型地盤の水位を模型地盤表面から30cmの深さにとどめてある。ここで、模型地盤の相対密度は、液状化層、非液状化層とも同一であり、上述したようにDr=60%として作成してある。
【0064】
なお、液状化層と非液状化層の境界部については、止水性があり剛性の小さい改良体層(5mm~10mm)を配置し、地盤作成後の水の浸透を防ぐこととした。
【0065】
なお、計測機器は図8に示すように、間隙水圧計及び加速度計を模型地盤内に設置するとともに、ひずみゲージを杭基礎模型に取り付け、さらに加速度計および変位計を土槽リングに設置した。また、模型地盤の地表面およびフーチング部には変位計を設置した。
【0066】
(b)実験結果
i) 杭の加速度応答倍率
本実験では、入力加速度波形に広帯域波(ホワイトノイズ)を用いており、また各ケース、各時刻の最大入力加速度も異なるため、最大応答値そのものからは定量的な考察を行うことが困難である。
【0067】
そこで、図11に示すように,初期から過剰間隙水圧上昇中の中規模液状化状態と、完全液状化状態において、入力加速度と杭天端の応答加速度のフーリエ振幅を算出し、さらに区間内の周波数に対して積分することにより、各区間毎の入力エネルギーと構造物の応答エネルギーの比(応答倍率=構造物/入力波)を算定し、この値を応答倍率として検討をおこなった。応答倍率の算定結果を表3に示す。
【0068】
【表3】
JP0004575858B2_000004t.gif

【0069】
同表でわかる通り、中規模液状化状態においては、加速度応答倍率は、全てのケースにおいてほぼ一定となっており、構造物の固有振動数変化に対し、大きな影響を及ぼしていないことがわかる。
【0070】
それに対し、完全液状化状態においては、各ケース間で応答倍率にバラツキがあるとともに、非液状化層の有無に関わらず、C-2,C-3,C-5の加速度応答倍率は、無対策(C-1,C-4)と比べて、低下していることがわかる。
【0071】
これは、地盤抵抗がゼロに近くなることにより、構造物—地盤連成系の固有振動数が変化し、その影響を受けたことによるものと推測される。
【0072】
ii) 全層液状化層の場合の杭挙動(C-1~C-3)
杭のモーメントは、発生断面力が最大を示している時刻をピックアップして比較をおこなった。なお、単杭の挙動検討結果(静的載荷試験)から改良範囲1Dにおいて中規模液状化状態までは対策効果を発揮する傾向が見られたことから、ここでは中規模液状化状態に着目して検討した。
【0073】
図12に中規模液状化状態の場合のモーメント分布及び間隙水圧比分布を示す。
【0074】
同図でわかるように、無対策(C-1)では、杭頭で最大モーメントが発生しているのに対し、杭全長を改良したC-2については、杭中央付近の変曲点及び発生モーメントが、無対策のC-1とほぼ同様であるものの、杭頭においては発生断面力が抑制されており、対策工の効果が十分に発揮されていることがわかる。
【0075】
なお、杭頭-30cm改良のC-3については、改良された杭頭付近において、C-2同様に発生断面力が抑制されているが、杭中央部における発生モーメントが大きくなっていることがわかる。
【0076】
これにより、浅い範囲(GL-30cm)だけに改良を施すことは、杭の剛性に差を生じさせ、改良体の境界部で発生モーメントが大きくなり、後述する非液状化層を有する場合と類似したモードになったものと考えられる。
【0077】
iii) 非液状化層を有する場合の杭挙動(C-4~C-5)
図13に中規模液状化状態におけるモーメント分布図及び間隙水圧比分布図を示す。
【0078】
非液状化層を有する場合のモーメント分布は、層境界部に変曲点が生じることが特徴であるが、中規模液状化状態において対策工を施したC-5においては、発生断面力を抑制し、層境界部で明確な変曲点を生じていないことがわかる。
【0079】
層境界部における変曲点は、液状化の有無(地盤の剛性比)が影響を及ぼすものと考えられるが、改良を施すことによって、液状化層と非液状化層の剛性の差を小さくすることになり、発生断面力を抑制することにつながったと考えられる。
【0080】
以上のことより,非液状化層の地盤強度と構造物の剛性の関係、及び液状化層における改良体と構造物の剛性の関係を合致させた時に変曲点の影響を軽減できると考えられ、地盤強度と改良体強度の関係を勘案して対策工を講じる必要があると言える。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】実施形態に係る杭基礎構造を示した図であり、(a)は鉛直断面図、(b)はA-A線に沿う水平断面図。
【図2】参考形態に係る杭基礎構造を示した図であり、(a)は鉛直断面図、(b)はB-B線に沿う水平断面図。
【図3】本発明の実証試験に関する図であり、静的載荷試験に用いたせん断土槽の鉛直断面図及び機器の配置図。
【図4】単杭とそれを取り囲む被覆領域との関係を示した鉛直断面図。
【図5】初期状態の曲げモーメント分布及び間隙水圧比を示したグラフ。
【図6】中規模液状化状態の曲げモーメント分布及び間隙水圧比を示したグラフ。
【図7】完全液状化状態の曲げモーメント分布及び間隙水圧比を示したグラフ。
【図8】本発明の実証試験に関する図であり、振動試験に用いたせん断土槽の鉛直断面図及び機器の配置図。
【図9】振動試験に用いた入力加速度波形を示したグラフ。
【図10】実験ケースを示した模式図。
【図11】過剰間隙水圧上昇過程を示したグラフ。
【図12】液状化層のみで構成された液状化地盤における実験結果を示したものであり、曲げモーメント及び間隙水圧比を示したグラフ。
【図13】液状化層及び非液状化層で構成された液状化地盤における実験結果を示したものであり、曲げモーメント及び間隙水圧比を示したグラフ。
【符号の説明】
【0082】
1,21 杭基礎構造
2,22 高架橋(上部構造物)
3,23 フーチング(杭基礎構造)
4 液状化地盤(地盤)
5,25 杭(杭基礎構造)
6,26 被覆領域
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12