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明細書 :集電装置の騒音抑制構造

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4475535号 (P4475535)
公開番号 特開2007-082312 (P2007-082312A)
登録日 平成22年3月19日(2010.3.19)
発行日 平成22年6月9日(2010.6.9)
公開日 平成19年3月29日(2007.3.29)
発明の名称または考案の名称 集電装置の騒音抑制構造
国際特許分類 B60L   5/22        (2006.01)
FI B60L 5/22 A
請求項の数または発明の数 4
全頁数 14
出願番号 特願2005-266065 (P2005-266065)
出願日 平成17年9月13日(2005.9.13)
審査請求日 平成19年11月12日(2007.11.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】池田 充
【氏名】鈴木 昌弘
個別代理人の代理人 【識別番号】100104064、【弁理士】、【氏名又は名称】大熊 岳人
審査官 【審査官】東 勝之
参考文献・文献 特開平06-178403(JP,A)
特開2005-065350(JP,A)
特開平05-328514(JP,A)
特許第2737072(JP,B2)
実開昭60-077202(JP,U)
調査した分野 B60L 5/00 - 5/42
特許請求の範囲 【請求項1】
集電装置から発生する騒音を抑制する集電装置の騒音抑制構造であって、
前記集電装置は、
架線のトロリ線と接触するすり板を支持する集電舟と、
前記集電舟を支持した状態で上下方向に動作可能なリンク機構である枠組と、
前記枠組の上端部に支持される舟支え部と、
前記集電舟と前記舟支え部とが所定の間隔をあけて離れるように、この集電舟とこの舟支え部とを連結する連結軸を備え、
前記連結軸は、前記集電舟の前部又は後部と前記舟支え部とを連結し、この集電舟を水平方向から支持する水平支持部と、この水平支持部を斜め方向から支持する傾斜支持部とを備えること、
を特徴とする集電装置の騒音抑制構造。
【請求項2】
請求項に記載の集電装置の騒音抑制構造において、
前記連結軸は、離線アークによる溶損を防止する溶損防止部を備えること、
を特徴とする集電装置の騒音抑制構造。
【請求項3】
集電装置から発生する騒音を抑制する集電装置の騒音抑制構造であって、
前記集電装置は、
架線のトロリ線と接触するすり板を支持する集電舟と、
前記集電舟を支持した状態で上下方向に動作可能なリンク機構である枠組と、
前記枠組の上端部で支持される舟支え部と、
前記集電舟と前記舟支え部とが所定の間隔をあけて離れるように、この集電舟とこの舟支え部とを連結する連結軸とを備え、
前記連結軸は、前記集電舟の下部と前記舟支え部とを連結し、この集電舟の下部を斜め方向から支持する傾斜支持部を備えること、
を特徴とする集電装置の騒音抑制構造。
【請求項4】
請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の集電装置の騒音抑制構造において、
前記連結軸は、前記枠組よりも外径が細いこと、
を特徴とする集電装置の騒音抑制構造。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、集電装置から発生する騒音を抑制する集電装置の騒音抑制構造に関する。
【背景技術】
【0002】
新幹線用パンタグラフの空力騒音に対して集電舟や枠組から発生する空力音が大きな寄与を有していることが知られており、空力音低減に関する研究が数多く進められ、集電舟単体や枠組単体としてはかなりの低空力音化が実現しつつある。最近では、新幹線用パンタグラフの集電舟の設計方法として、流れ場のシミュレーションと最適化手法とを組み合わせることにより集電舟の形状を決定する手法も提案されている(例えば、特許文献1参照)。この手法では、流れ場のシミュレーションの実行と最適化手法とによる形状変更を計算機により繰返し実施させることができる。このため、風洞試験によって望ましい形状を試行錯誤する必要がなく、適切な形状のパンタグラフを得ることができ、揚力特性が安定化し低騒音化を実現することができる。
【0003】

【特許文献1】特開2005-20834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のパンタグラフの空力音低減構造では、最適化手法によって低空力音化を実現した集電舟をパンタグラフに実際に搭載しても、集電舟とこの集電舟を支持する枠組との間に生じる強い空力干渉が原因となって、パンタグラフ全体の空力音が予想したほど低減しない問題点がある。例えば、現用集電舟単体と最適化集電舟単体との空力音を比較すると、現用集電舟単体に比べて最適化集電舟単体では5~10dB程度空力音が低減する。しかし、実際のパンタグラフの枠組に現用集電舟と最適化集電舟とを取り付けて、パンタグラフ全体での空力音を比較すると、集電舟単体での比較では5~10dB程度あった空力音の差が2~3dB程度しか認められないことがある。この要因を調べるために最適化集電舟をパンタグラフの枠組に取り付けて、表面圧力分布と空力音分布とを測定すると、最適化集電舟と枠組との接合部に強い空力干渉が生じており、空力音源も最適化集電舟と枠組との接合部に局在している。このため、集電舟単体で形状を変化させても枠組との空力干渉に起因する空力音が余り減少せず、全体としては期待したほどの空力音の低減が実現できない問題点がある。
【0005】
この発明の課題は、集電舟と枠組との接合部から発生する空力音を簡単な構造によって抑制することができる集電装置の騒音抑制構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、集電装置(3)から発生する騒音を抑制する集電装置の騒音抑制構造であって、前記集電装置は、架線(1)のトロリ線(1a)と接触するすり板(7a)を支持する集電舟(7)と、前記集電舟を支持した状態で上下方向に動作可能なリンク機構である枠組(6)と、前記枠組の上端部に支持される舟支え部(6a)と、前記集電舟と前記舟支え部とが所定の間隔をあけて離れるように、この集電舟とこの舟支え部とを連結する連結軸(9)を備え、前記連結軸は、前記集電舟の前部又は後部と前記舟支え部とを連結し、この集電舟を水平方向から支持する水平支持部(9a)と、この水平支持部を斜め方向から支持する傾斜支持部(9b)とを備えることを特徴とする集電装置の騒音抑制構造(8)である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項に記載の集電装置の騒音抑制構造において、前記連結軸は、離線アークによる溶損を防止する溶損防止部(9d)を備えることを特徴とする集電装置の騒音抑制構造である。
【0008】
請求項3の発明は、集電装置(3)から発生する騒音を抑制する集電装置の騒音抑制構造であって、前記集電装置は、架線(1)のトロリ線(1a)と接触するすり板(7a)を支持する集電舟(7)と、前記集電舟を支持した状態で上下方向に動作可能なリンク機構である枠組(6)と、前記枠組の上端部に支持される舟支え部(6a)と、前記集電舟と前記舟支え部とが所定の間隔をあけて離れるように、この集電舟とこの舟支え部とを連結する連結軸(9)とを備え、前記連結軸は、前記集電舟の下部と前記舟支え部とを連結し、この集電舟の下部を斜め方向から支持する傾斜支持部(9e)を備えることを特徴とする集電装置の騒音抑制構造(8)である。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の集電装置の騒音抑制構造において、前記連結軸は、前記枠組よりも外径が細いことを特徴とする集電装置の騒音抑制構造である。
【発明の効果】
【0014】
この発明によると、集電舟と枠組との接合部から発生する空力音を簡単な構造によって抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、この発明の第1実施形態について詳しく説明する。
図1は、この発明の第1実施形態に係る集電装置の騒音抑制構造を備える集電装置を模式的に示す側面図である。図2は、この発明の第1実施形態に係る集電装置の騒音抑制構造の側面図である。
図1に示す架線1は、線路上空に架設される架空電車線であり、所定の間隔をあけて支持点で支持されている。トロリ線1aは、集電装置3が接触移動する電線であり、集電装置3が摺動することによって車両2に負荷電流を供給する。車両2は、電車や電気機関車などの電気車であり、例えば高速で走行する新幹線などの鉄道車両である。車体2aは、乗客や貨物を積載し輸送するための構造物である。
【0016】
図1及び図2に示す集電装置3は、トロリ線1aから電力を車両2に導くための装置であり、台枠4と、碍子5と、枠組6と、集電舟(舟体)7と、騒音抑制構造8などを備えている。台枠4は、枠組6を支持して車体2aの屋根上に設置される部材であり碍子5上に設置されている。碍子5は、車体2aと台枠4との間を電気的に絶縁する部材である。枠組6は、集電舟7を支持する部材であり、集電舟7を支持した状態で上下方向に動作可能なリンク機構である。枠組6は、舟支え部6aと、上枠6bと、下枠6cと、屈曲部(関節部)6dなどを備えている。舟支え部6aは、集電舟7を支持する部分であり、集電舟7を架線1に対して水平に押上げるとともに、集電舟7にばねによる緩衝作用を与える。上枠6bは、舟支え部6aに回転自在に連結される部材であり、下枠6cは図示しない主軸に固定される部材であり、屈曲部6dは上枠6bと下枠6cとが回転自在に連結される部分である。枠組6は、上昇力を付与する図示しない主ばねによって上方に押上げられている。図1に示す集電装置3は、車両2の進行方向(図中A方向)に対して非対称であり、一方向又は両方向に使用可能なシングルアーム型パンタグラフである。図1及び図2に示す集電装置3は、車両2の進行方向後側に屈曲部6dが位置する反なびき方向に移動している。
【0017】
集電舟7は、すり板7aが取り付けられ支持される部材であり、一般にトロリ線1aと直交する方向に伸びた細長い金属製の部材である。新幹線用パンタグラフの集電舟7は、前縁からの気流Fの流れの剥離を可能な限り防止するように、滑らかな曲面によって形成されている。図1及び図2に示す集電舟7は、例えば、特許文献1に記載の最適化手法と計算流体力学(Computational Fluid Dynamics(CFD))とを組み合わせた手法によって外形形状が最適化されており、図2に示すように上下対称の形状に形成されている。集電舟7は、車両2の進行方向前側及び後側の端面が曲面であり、前側の端面が後側の端面よりも全体的にずんぐりした形状に形成されており、後側の端面は前側の端面よりも絞り込まれた形状に形成されている。集電舟7は、すり板7aとの接続部(継ぎ目)に段差が形成されないように、同一面(同一高さ)に形成されている。集電舟7は、図1及び図2に示すように、すり板7aとホーン7bなどを備えている。
【0018】
すり板7aは、トロリ線1aと接触する部材であり、車両2の進行方向と直交する方向に伸びた金属製又は炭素製の板状部材である。すり板7aは、図2に示すように、トロリ線1aと接触する最大厚み位置から前縁及び後縁に向かって下方に傾斜している。すり板7aは、集電舟7とは別個に製造される別部品であり、集電舟7の上面にこの集電舟7と一体に取り付けられている。すり板7aは、集電舟7に取り付けられた状態で、気流Fが滑らかに流れ空力音を低減するように、集電舟7とともに外形形状が最適化されている。
【0019】
ホーン7bは、車両2が分岐器を通過するときに、この分岐器の上方で交差する2本のトロリ線1aのうち車両2の進行方向とは異なる方向のトロリ線1aへの割込みを防止するための部材である。ホーン7bは、集電舟7の長さ方向の両端部から突出しており、先端部が湾曲して形成された金属製の部材である。
【0020】
図1及び図2に示す騒音抑制構造8は、集電装置3から発生する騒音を抑制する構造である。騒音抑制構造8は、集電舟7と枠組6との空力干渉によってこれらの間の接合部から発生する騒音を低減する。騒音抑制構造8は、図1及び図2に示すように連結軸9を備えている。
【0021】
連結軸9は、集電舟7と舟支え部6aとが所定の間隔をあけて離れるように、集電舟7と舟支え部6aとを連結する部分である。連結軸9は、図1及び図2に示すように、集電舟7の後部と舟支え部6aとを連結しており、集電舟7の後部(気流Fの流れの下流側)を水平方向から支持している。連結軸9は、集電舟7と枠組6との間の空力干渉が生じ難いように、図1及び図2に示すように側面から見たときの外形形状がほぼL字状に形成されている。連結軸9は、空力干渉に起因して生じる空力騒音を低減して低騒音化を図る機能を有し、図1に示すように集電舟7と舟支え部6aとを接合する部分が可能な限り細くなるように枠組6よりも細く形成されている。連結軸9は、例えば、ステンレス製のパイプによって形成されており、中心軸に対して直交する平面で切断したときの断面形状が円形、楕円形又は流線型に形成されている。連結軸9は、水平支持部9aと、傾斜支持部9bと、屈曲部9cと、溶損防止部9dなどを備えている。
【0022】
水平支持部9aは、集電舟7を水平方向から支持する部分であり、トロリ線1aと平行に水平方向に伸びている。水平支持部9aの先端部は、集電舟7の後側(気流Fの流れの下流側)の端面に接続され固定されている。傾斜支持部9bは、水平支持部9aを斜め方向から支持する部分であり、トロリ線1aの長さ方向に対して所定の角度θ(例えば20°前後)だけ傾斜している。傾斜支持部9bの後端部は、舟支え部6aに接続され固定されている。屈曲部9cは、水平支持部9aと傾斜支持部9bとを接続する部分である。
【0023】
溶損防止部9dは、離線アークによる溶損を防止する部分である。溶損防止部9dは、例えば、集電装置3の追従性能(追随特性)の低下、トロリ線1aの振動や着氷雪などによってトロリ線1aからすり板7aが離れて、トロリ線1aと水平支持部9aとの間で離線アークが発生したときに、この離線アークによる熱によって水平支持部9aが溶損するのを防止する。溶損防止部9dは、例えば、シリコーンを主成分とし常温で硬化するゴム状のシールド材であり、水平支持部9aの外周面にこのシールド材が塗布されて形成されている。
【0024】
次に、この発明の第1実施形態に係る集電装置の騒音抑制構造の作用を説明する。
図1及び図2に示すように、集電舟7の外形形状が最適化されている場合には、車両2がA方向に走行して気流Fの流れを受けたときに発生する空力音が大幅に低減し、集電舟7に作用する揚力が安定化する。集電舟7の外形形状が最適化されていても、集電舟7を舟支え部6aによって直接支持する場合には、集電舟7と枠組6との空力干渉によって空力音が発生してしまう。一方、図1及び図2に示すように、舟支え部6aと集電舟7とが所定の間隔をあけて離れるようにこれらを連結軸9が連結すると、枠組6と集電舟7との空力干渉によって発生する空力音が抑えられる。
【0025】
この発明の第1実施形態に係る集電装置の騒音抑制構造には、以下に記載するような効果がある。
(1) この第1実施形態では、集電舟7と舟支え部6aとが所定の間隔をあけて離れるように、この集電舟7とこの舟支え部6aとを連結軸9が連結する。このため、集電舟7と枠組6との空力干渉によって発生する空力音を低減することができる。その結果、外形形状が最適化された集電舟7が本来発揮する優れた低空力音化を実現することができる。
【0026】
(2) この第1実施形態では、離線アークによる溶損を防止する溶損防止部9dを連結軸9が備えている。このため、トロリ線1aからすり板7aが離れてトロリ線1aと水平支持部9aとの間に離線アークが発生したときに、この離線アークによる熱によって水平支持部9aが溶損するのを防止することができる。
【0027】
(3) この第1実施形態では、枠組6よりも連結軸9の外径が細く形成されている。このため、連結軸9が気流Fの流れを受けたときに、この連結軸9から空力音が発生するのを可能な限り抑えることができる。
【0028】
(第2実施形態)
図3は、この発明の第2実施形態に係る集電装置の騒音抑制構造を備える集電装置を模式的に示す側面図である。図4は、この発明の第2実施形態に係る集電装置の騒音抑制構造の側面図である。以下では、図1及び図2に示す部分と同一の部分については、同一の番号を付して詳細な説明を省略する。
図3及び図4に示す集電装置3は、車両2の進行方向前側に屈曲部6dが位置するなびき方向に移動している。連結軸9は、集電舟7の前部と舟支え部6aとを連結しており、集電舟7の前部(気流Fの流れの上流側)を水平方向から支持している。水平支持部9aの先端部は、集電舟7の前側の端面に接続され固定されており、水平支持部9aの外周面にはアークによる損傷を防止するためにシリコーン樹脂などのシールド材が塗布されて溶損防止部9dが形成されている。この第2実施形態には、第1実施形態と同様の効果がある。
【0029】
(第3実施形態)
図5は、この発明の第3実施形態に係る集電装置の騒音抑制構造を備える集電装置を模式的に示す側面図である。図6は、この発明の第3実施形態に係る集電装置の騒音抑制構造の側面図である。
図5及び図6に示す集電装置3は、車両2の進行方向後側に屈曲部6dが位置する反なびき方向に移動している。連結軸9は、集電舟7の下部と舟支え部6aとを連結し、集電舟7の進行方向後側から前側(気流Fの流れの下流側から上流側)に向かって斜め上方に伸びており、集電舟7の下部を斜め方向から支持している。連結軸9は、図5及び図6に示すように、側面から見たときの外形形状が直線状に形成されている。連結軸9は、傾斜支持部9eを備えており、この傾斜支持部9eは集電舟7を傾斜方向から支持する部分であり、トロリ線1aの長さ方向に対して所定の角度θ(例えば20°前後)だけ傾斜している。傾斜支持部9eの先端部は、図6に示すように、集電舟7の最大厚み位置における集電舟7の下面に接続され固定されており、傾斜支持部9eの後端部は舟支え部6aに接続され固定されている。この第3実施形態には、第1実施形態及び第2実施形態と同様の効果がある。
【0030】
(第4実施形態)
図7は、この発明の第4実施形態に係る集電装置の騒音抑制構造を備える集電装置を模式的に示す側面図である。図8は、この発明の第4実施形態に係る集電装置の騒音抑制構造の側面図である。
図7及び図8に示す集電装置3は、車両2の進行方向前側に屈曲部6dが位置するなびき方向に移動している。連結軸9は、集電舟7の下部と舟支え部6aとを連結し、集電舟7の進行方向前側から後側(気流Fの流れの上流側から下流側)に向かって斜め上方に伸びており、集電舟7の下部を斜め方向から支持している。連結軸9は、傾斜支持部9fを備えており、傾斜支持部9fは集電舟7を斜め方向から支持する部分であり、トロリ線1aの長さ方向に対して所定の角度θ(例えば20°前後)だけ傾斜して上下方向に伸びている。この第3実施形態には、第1実施形態~第3実施形態と同様の効果がある。
【0031】
(第5実施形態)
図9は、この発明の第5実施形態に係る集電装置の騒音抑制構造を備える集電装置を模式的に示す側面図である。図10は、この発明の第5実施形態に係る集電装置の騒音抑制構造の側面図である。
図9及び図10に示す集電装置3は、車両2の進行方向後側に屈曲部6dが位置する反なびき方向に移動している。連結軸9は、集電舟7の後部と舟支え部6aとを連結し、集電舟7の進行方向後側から前側(気流Fの流れの下流側から上流側)に向かって斜め上方に伸びており、集電舟7の後部を斜め方向から支持している。連結軸9は、図9及び図10に示すように、側面から見たときの外形形状が直線状に形成されている。傾斜支持部9eの先端部は、集電舟7の後側の端面に接続され固定されており、トロリ線1aに近い部分に所定の長さで溶損防止部9dが形成されている。この第5実施形態には、第1実施形態~第4実施形態と同様の効果がある。
【0032】
(第6実施形態)
図11は、この発明の第6実施形態に係る集電装置の騒音抑制構造を備える集電装置を模式的に示す側面図である。図12は、この発明の第6実施形態に係る集電装置の騒音抑制構造の側面図である。
図11及び図12に示す集電装置3は、車両2の進行方向前側に屈曲部6dが位置するなびき方向に移動している。連結軸9は、集電舟7の前部と舟支え部6aとを連結し、集電舟7の進行方向前側から後側(気流Fの流れの上流側から下流側)に向かって斜め上方に伸びており、集電舟7の前部を斜め方向から支持している。傾斜支持部9eの先端部は、集電舟7の前側の端面に接続され固定されており、トロリ線1aに近い部分に所定の長さで溶損防止部9dが形成されている。この第5実施形態には、第1実施形態~第6実施形態と同様の効果がある。
【実施例】
【0033】
次に、この発明の実施例について説明する。
現用の新幹線パンタグラフ用集電舟(現用集電舟)と、形状最適化によって大幅な空力音低減を図った集電舟(最適化集電舟)とを、シングルアーム型パンタグラフの上枠よりも上部を模擬した枠組模型と組み合わせて空力音を測定した。実験は、財団法人鉄道総合技術研究所内の大型低騒音風洞(回流型、吹出口2500×3000mm、最高風速111m/s、開放型計測部)によって実施した。空力音は、ノズル下端と同じ高さに設けた地面板上に模型(供試体)を設置し、集電舟から上方に5m離れた位置に設置した無指向性マイクによって測定した。
【0034】
図13は、風洞試験に使用した集電装置の模型の外観図であり、図13(A)は実施例の外観図であり、図13(B)は比較例の外観図である。
図13(A)に示す実施例は、集電舟と枠組との空力干渉を極力抑制することを意図して形状を決定した集電装置の模型であり、図1及び図2に示すように最適化集電舟と舟支え部とを連結軸で連結している。図13(B)に示す比較例は、現用の新幹線用パンタグラフの上枠を模擬した枠組によって最適化集電舟を支持した集電装置の模型である。
【0035】
図14は、風洞試験による空力音の測定結果を示すグラフである。
図14に示すグラフは、風速83.3m/sにおける空力音の測定結果であり、気流の流れの下流側に枠組の屈曲部(関節部)が位置する反なびき方向の場合の測定結果である。縦軸は、1/3オクターブバンド騒音レベル(dB(A))であり、横軸は周波数(Hz)である。図14に示す従来例は、現用の新幹線用パンタグラフの上枠を模擬した枠組によって現用集電舟を支持した集電装置の模型である。図14に示すいずれの模型についても模型スケールは実サイズであり、ホーンは省略しており、最適化集電舟は長さが900mmである。
【0036】
図14に示すように、従来例と比較例とを比較すると、比較例のほうが従来例よりも空力音が低下しているが、その差は僅かに0.6dBである。従来例の現用集電舟単体と比較例の最適化集電舟単体との空力音の低下を比較すると、両者の差が9dBであり従来例と比較例との差は非常に小さい。このため、集電舟の形状を最適化して集電舟単体で空力音を大幅に低減しても、集電舟と舟支え部との空力干渉の抑制が不十分な場合には、干渉による強い空力音が誘起され、パンタグラフ全体の空力音の大幅な低減を期待できないことが確認された。
【0037】
一方、従来例と実施例とを比較すると、実施例のほうが従来例よりも空力音が10.1dB低下しており、従来例の現用集電舟単体と比較例の最適化集電舟単体との空力音の差にほぼ等しい。このため、集電舟と舟支え部とを所定の間隔をあけて連結軸によって連結して、集電舟と舟支え部との空力干渉を緩和すると、空力音の誘起が抑制されて、集電舟単体の空力音の低減効果がそのままパンタグラフ全体の空力音の低減に寄与することが確認された。
【0038】
図15は、風洞試験による空力音分布の測定結果を示す図であり、図15(A)は実施例の測定結果であり、図15(B)は比較例の測定結果である。
次に、実施例及び比較例について指向性の強い楕円体式収音装置を用いて上方に放射される空力音の音源探査を実施した。図15に示す空力音分布は1250Hzバンドの測定結果である。比較例では、図15(B)に示すように、集電舟の中央部付近に強い空力音源が集中しており、1250Hzバンド以外の周波数バンドについても概ね同じような傾向を示した。集電舟そのものは一様な断面形状であることから、空力音は集電舟と舟支え部との強い空力干渉に起因して生じたものと推察できる。これは、空力干渉の結果として集電舟の中央部に見かけ上大きな迎角が生じるため、集電舟の後縁部で剥離が促進されることや、舟支え部の頂点部に強い圧力変動が誘起されることなどにより、強い空力音が放射されたものと考えられる。一方、実施例では、図15(A)に示すように、図15(B)とは異なり空力音源が集電舟上に2次元的に分布していることが確認された。このため、舟支え部を小型化してこの舟支え部の形状を改良し、集電舟と舟支え部との空力干渉を緩和することによってはじめて、集電舟単体の空力音の低減効果がパンタグラフ全体の空力音の低減にそのまま寄与することが確認された。
【0039】
(他の実施形態)
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
この実施形態では、車両2がA方向に移動する場合を例に挙げて説明したが、車両2がA方向とは逆方向に移動する場合についてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、集電装置3としてシングルアーム型パンタグラフを例に挙げて説明したが、翼型パンタグラフや菱型パンタグラフなどの他の形式のパンタグラフについてもこの発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】この発明の第1実施形態に係る集電装置の騒音抑制構造を備える集電装置を模式的に示す側面図である。
【図2】この発明の第1実施形態に係る集電装置の騒音抑制構造の側面図である。
【図3】この発明の第2実施形態に係る集電装置の騒音抑制構造を備える集電装置を模式的に示す側面図である。
【図4】この発明の第2実施形態に係る集電装置の騒音抑制構造の側面図である。
【図5】この発明の第3実施形態に係る集電装置の騒音抑制構造を備える集電装置を模式的に示す側面図である。
【図6】この発明の第3実施形態に係る集電装置の騒音抑制構造の側面図である。
【図7】この発明の第4実施形態に係る集電装置の騒音抑制構造を備える集電装置を模式的に示す側面図である。
【図8】この発明の第4実施形態に係る集電装置の騒音抑制構造の側面図である。
【図9】この発明の第5実施形態に係る集電装置の騒音抑制構造を備える集電装置を模式的に示す側面図である。
【図10】この発明の第5実施形態に係る集電装置の騒音抑制構造の側面図である。
【図11】この発明の第6実施形態に係る集電装置の騒音抑制構造を備える集電装置を模式的に示す側面図である。
【図12】この発明の第6実施形態に係る集電装置の騒音抑制構造の側面図である。
【図13】風洞試験に使用した集電装置の模型の外観図であり、(A)は実施例の外観図であり、(B)は比較例の外観図である。
【図14】風洞試験による空力音の測定結果を示すグラフである。
【図15】風洞試験による空力音分布の測定結果を示す図であり、(A)は実施例の測定結果であり、(B)は比較例の測定結果である。
【符号の説明】
【0041】
1 架線
1a トロリ線
2 車両
2a 車体
3 集電装置
6 枠組
6a 舟支え部
7 集電舟
7a すり板
8 騒音抑制構造
9 連結軸
9a 水平支持部
9b 傾斜支持部
9c 屈曲部
9d 溶損防止部
9e,9f 傾斜支持部
F 気流

図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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