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明細書 :浮上式鉄道用地上コイルの締結部の構造

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4541265号 (P4541265)
公開番号 特開2007-081068 (P2007-081068A)
登録日 平成22年7月2日(2010.7.2)
発行日 平成22年9月8日(2010.9.8)
公開日 平成19年3月29日(2007.3.29)
発明の名称または考案の名称 浮上式鉄道用地上コイルの締結部の構造
国際特許分類 H01F   7/20        (2006.01)
H01F   7/06        (2006.01)
B60L  13/04        (2006.01)
FI H01F 7/20 ZAAE
H01F 7/06 J
B60L 13/04 L
請求項の数または発明の数 3
全頁数 9
出願番号 特願2005-266150 (P2005-266150)
出願日 平成17年9月14日(2005.9.14)
審査請求日 平成19年11月8日(2007.11.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】鈴木 正夫
【氏名】鈴木 裕之
【氏名】饗庭 雅之
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
【識別番号】100096426、【弁理士】、【氏名又は名称】川合 誠
審査官 【審査官】長谷川 直也
参考文献・文献 特開平06-013233(JP,A)
特開平06-135323(JP,A)
特開平06-135322(JP,A)
特開平11-026229(JP,A)
特開平08-331706(JP,A)
特開平06-280206(JP,A)
特開平09-203159(JP,A)
調査した分野 B60L 13/03-13/10、
B61B 1/00-10/04、
E01B 1/00-26/00、
H01F 7/06- 7/16、 7/20
特許請求の範囲 【請求項1】
内層としてCFRP強化層(2)と、該CFRP強化層(2)の外層にGFRP準強化層(3)と、該GFRP準強化層(3)の外層である最外層に応力緩和層(4)とを積層した厚肉FRPブッシュ(1)を、浮上式鉄道用地上コイルのボルト締結穴(6)の周りに配置し、モールド樹脂(7)で一体成形することを特徴とする浮上式鉄道用地上コイルの締結部の構造。
【請求項2】
請求項1記載の浮上式鉄道用地上コイルの締結部の構造において、前記CFRP強化層(2)の内側の最内層に熱可塑性樹脂層(12)を形成することを特徴とする浮上式鉄道用地上コイルの締結部の構造。
【請求項3】
請求項1記載の浮上式鉄道用地上コイルの締結部の構造において、前記応力緩和層(4)の外周面に窪み部を形成することを特徴とする浮上式鉄道用地上コイルの締結部の構造。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、浮上式鉄道用地上コイルの締結部の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁気浮上式鉄道において軌道の全線に亘って敷設される地上コイルは、長期の屋外使用が前提となるばかりでなく、実用の際には膨大な数が対象となる。従って、地上コイルの開発においては、徹底したコストの低減と高い信頼性の確保をいかにして両立させるかが、重要な開発課題となっている。
【0003】
特に、屋外の振動環境下で使用される地上コイルの締結構造の良否は、営業時の保守管理コストに大きく影響を及ぼすばかりでなく、システムの信頼性そのものを左右しかねない重要な要素となっている。
【0004】
地上コイルの締結に関しては、従来から種々の方法がある。例えば、(1)コイルを直接ボルトで締結する、(2)締結用FRP部材を介してコイルを間接的に締結する、(3)FRP部材を介してコイルを鉄筋に締結しコンクリートにて埋め込み固定を図ることが検討され、それぞれに一長一短を有するものの、コイル交換を含めた作業性において優位な(1)のボルト締結方式が現時点での有力候補となっている。
【0005】
例えば、地上コイル取り付け構造において、図11に示すように、軌道構造物101に設けられたインサート102に地上コイル取り付け部103を対応させ、その地上コイル取り付け部103の開口部104に機械的強度が高い材料からなるブッシュ105を設けるようにしたり(下記特許文献1参照)、図12に示すように、コンクリート軌道201に取り付けるための取付座202を有し、導体203が所定形状に巻回されてなるコイル204と、内部にコイル204を埋め込んでコイル204を支持するモールド樹脂205と、貫通する取付穴206を有し、両端面がモールド樹脂205の表面に露出するように、モールド樹脂205の取付座202に埋め込まれたブッシュ207とを設けることが提案されている(下記特許文献2参照)。

【特許文献1】特開平6-236811号公報
【特許文献2】特開平9-320843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の地上コイルの締結に関しては、以下のような問題点がある。
【0007】
(1)圧縮クリープによる緩み
浮上式鉄道用地上コイルは鉄心のない空心コイルであるため、車上の超電導磁石との間に作用する繰り返し電磁力を保持するために巻線コイルを樹脂で一体成形する必要がある。
【0008】
つまり、モールド樹脂には電気絶縁機能に加え、締結部材としての機械的強度が要求されている。
【0009】
ところが、コイルを直接ボルトで締結した場合、ボルトの締結軸力によりモールド樹脂に圧縮クリープ(圧縮変形)が生じ、ボルトの軸力抜けによる緩みが生じることが問題となっている。
【0010】
これは、日常の保守点検コストを増大させるばかりでなく、締結構成そのものの信頼性を著しく悪化させている。
【0011】
(2)金属ブッシュのガタ発生
そこで、最近の地上コイル締結部においては、上記圧縮クリープによるボルトの軸力抜けを回避するため、締結部に圧縮クリープを事実上無視できる金属(SUS)ブッシュを配置し、モールド樹脂と一体化させることにより締結部の改良を図った(上記引用文献1及び2参照)。
【0012】
ところが、金属ブッシュ~モールド樹脂界面を意図的に非接着としている(界面を接着とした場合、ボルト締結時の局部的応力集中によりモールド樹脂に亀裂を生ずるため)ことから、車両通過時の繰り返し電磁力により界面の相対変位が大きくなり、手で容易に動かせるほどのガタが発生し、上記(1)と同様に大きな問題となっている。
【0013】
本発明は、上記状況に鑑みて、圧縮クリープによる緩みや取り付け部のガタつきを防止することができる浮上式鉄道用地上コイルの締結部の構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕浮上式鉄道用地上コイルの締結部の構造において、内層としてCFRP強化層(2)と、このCFRP強化層(2)の外層にGFRP準強化層(3)と、そのGFRP準強化層(3)の外層である最外層に応力緩和層(4)とを積層した厚肉FRPブッシュ(1)を、浮上式鉄道用地上コイルのボルト締結穴(6)の周りに配置し、モールド樹脂(7)で一体成形することを特徴とする。
【0015】
〔2〕上記〔1〕記載の浮上式鉄道用地上コイルの締結部の構造において、前記CFRP強化層(2)の内側の最内層に熱可塑性樹脂層(12)を形成することを特徴とする。
【0016】
〔3〕上記〔1〕記載の浮上式鉄道用地上コイルの締結部の構造において、前記応力緩和層(4)の外周面に窪み部を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、次のような効果を奏することができる。
【0018】
(1)浮上式鉄道用地上コイルのボルト締結部の物性の極端な不連続界面をなくし、浮上式鉄道用地上コイルのボルト締結部の強化を図ることができる。つまり、ボルトの締結部の圧縮クリープを抑えるとともに、ボルトの締結部のガタつきを防止することができる。
【0019】
(2)浮上式鉄道用地上コイルのボルト締結部のブッシュ部を、浮上式鉄道用地上コイルを成形するモールド樹脂とは別パーツ化することにより、品質(材料、寸法精度)管理をしやすくし、低コスト化を図る。
【0020】
(3)FRPの材質や積層構造を見直すことにより、浮上式鉄道用地上コイルの用途に応じ、ボルト締結部の要求機能により近づけることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の浮上式鉄道用地上コイルの締結部の構造は、内層としてCFRP強化層(2)と、このCFRP強化層(2)の外層にGFRP準強化層(3)と、そのGFRP準強化層(3)の外層である最外層に応力緩和層(4)とを積層した厚肉FRPブッシュ(5)を、浮上式鉄道用地上コイルのボルト締結穴(6)の周りに配置し、モールド樹脂(7)で一体成形する。
【実施例】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0023】
図1は本発明の第1実施例を示す積層型厚肉FRPブッシュの斜視図、図2はその積層型厚肉FRPブッシュの上面図、図3はその積層型厚肉FRPブッシュの断面図、図4はその積層型厚肉FRPブッシュをコイル締結部に用いた状態を示す断面図、図5はその積層型厚肉FRPブッシュの受圧面を示す図である。
【0024】
本発明では、SW(シートワインディング)製法による積層構造の厚肉FRP(Fiber Reinforced Plastic)パイプを製作し、図1~図3に示すように、適当な長さに裁断、外周を機械加工することにより、FRPブッシュを作成し、図4に示すようにコイル締結部に用いる。
【0025】
更に詳細に説明すると、積層型厚肉FRPブッシュ1は内層に強化層(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastic)2、その強化層2の外層に準強化層(GFRP:Glass Fiber Reinforced Plastic)3、その準強化層3の外層(最外層)に応力緩和層4を設けるようにしている。また、図4に示すように、モールド樹脂(エポキシ樹脂)7で成形された浮上式鉄道用地上コイル(図示なし)を締結するボルト5のためのボルト締結穴6の周りに積層型厚肉FRPブッシュ1が配置される。
【0026】
本発明の積層型厚肉FRPブッシュの特長は、次に示す通りである。
【0027】
(1)圧縮クリープの対策として強化層(CFRP)2を用いている。通常のFRP板では、強化繊維が締結時の圧縮方向に対し積層方向を構成するため、効果が十分発揮されない。これに対して、本発明では、圧縮と同方向に強化繊維を配置しているため、耐クリープ特性が格段に向上し、長期使用に対するクリープ変形を事実上無視できる。
【0028】
長期負荷に対するクリープ変形を無視できるレベルは、静的強度の30%未満とされている。強化層(CFRP層)(繊維方向0度時)2の圧縮強度は約1000Mpaであるため、積層型厚肉FRPブッシュ1の破壊荷重は640kNとなる、一方、ボルト5の締結時の設定軸力は30~40kN程度であるため、静的強度の数%程度と圧縮クリープは無視できる。
【0029】
(2)最外層に応力緩和層4(GFRP±45度)を設けることにより、ボルト締結時の積層型FRPブッシュ1の微小傾斜に対しモールド樹脂7への無理な応力集中を回避できる。従来の金属ブッシュでは両者の機械物性(特に弾性係数)が桁違いであったため、ブッシュの傾斜による応力集中が避けられず、界面を接着させることができなかった。これに対して、本発明の積層型厚肉FRPブッシュ1の応力緩和層4には、±45度方向のガラスクロスを用いることにより、弾性係数を通常の30Gpa前後から4Gpa程度まで低下させることができ、モールド樹脂(約13Gpa)と接着させても積層型厚肉FRPブッシュ1の微小傾斜に対し、十分に応力緩和が可能となる。
【0030】
(3)強化層(CFRP)2と応力緩和層4の間に準強化層3(GFRPクロス)を設けることにより、物性的に連続した積層構造を提供することができる。
【0031】
図6は本発明の第2実施例を示す積層型厚肉FRPパイプの一部破断斜視図、図7はその積層型厚肉FRPブッシュの上面図、図8はその積層型厚肉FRPブッシュの断面図、図9はその積層型厚肉FRPブッシュを浮上式鉄道用地上コイル締結部に用いた状態を示す断面図、図10はその積層型厚肉FRPブッシュの受圧面を示す図である。
【0032】
図6に示すように、SW(シートワインディング)製法による積層構造の厚肉FRPパイプ10を製作し、適当な長さに裁断、外周を機械加工することにより、図7~図9に示すように、積層型厚肉FRPブッシュ11としてコイル締結部に適用する。
【0033】
詳細に説明すると、積層構造の厚肉FRPブッシュ11は最内層に保護層としての熱可塑性樹脂層(ポリプロプレンPP,ポリエチレンPE等)12、その熱可塑性樹脂層12の外層に強化層(CFRP)13、その強化層13の外層に準強化層(GFRP)14、その準強化層の外層(最外層)に応力緩和層15が設けられている。なお、16は浮上式鉄道用地上コイルを締結するボルト、17はそのボルト締結穴、18は浮上式鉄道用地上コイルのモールド樹脂(エポキシ樹脂)である。
【0034】
本発明の積層構造の厚肉FRPブッシュの特長は、上記第1実施例におけるFRPブッシュの特長に加えて、最内層に熱可塑性樹脂層を形成するようにしている。すなわち、
(1)圧縮クリープの対策としてCFRPの強化層13を用いる。通常のFRP板では、強化繊維が締結時の圧縮方向に対し積層方向を構成するため、効果が十分発揮されない。これに対して、本発明では圧縮と同方向に強化繊維を配置しているため、耐クリープ特性が格段に向上し、長期使用に対するクリープ変形が事実上無視できる。
【0035】
長期負荷に対するクリープ変形が無視できるレベルは、静的強度の30%未満とされている。CFRP層(繊維方向0度時)の圧縮強度は約1000Mpaであるため、CFRP層の破壊荷重は640kNとなる、一方、ボルト締結時の設定軸力は30~40kN程度であるため、静的強度の数%程度と圧縮クリープは無視できる。
【0036】
(2)最外層に応力緩和層15(GFRP±45度)を設けることにより、ボルト16締結時のブッシュの微小傾斜に対しモールド樹脂への無理な応力集中を回避できる。従来の金属ブッシュでは両者の機械物性(特に弾性係数)が桁違いであったため、ブッシュの傾斜による応力集中が避けられず、界面を接着させることができなかった。これに対して、本発明の積層構造の厚肉FRPブッシュの応力緩和層には、±45度方向のガラスクロスを用いることにより、弾性係数を通常の30Gpa前後から4Gpa程度まで低下させることができ、モールド樹脂(約13Gpa)と接着させても積層構造の厚肉ブッシュの微小傾斜に対し、十分に応力緩和が可能となる。
【0037】
(3)強化層(CFRP)13と応力緩和層15の間に準強化層14(GFRPクロス)を設けることにより、物性的に連続した積層構造を提供することができる。
【0038】
(4)最内層としての熱可塑性樹脂層12(PP,PE等)の熱可塑性樹脂を用いることにより、積層構造の厚肉FRPブッシュを保護すると同時に、締結ボルトとの摺動によるブッシュ内周の磨耗を防止することができる。
【0039】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の浮上式鉄道用地上コイルの締結部の構造は、圧縮クリープによる緩みや取り付け部のガタつきを防止することができる浮上式鉄道用地上コイルの締結部の構造として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1実施例を示す積層型厚肉FRPブッシュの斜視図である。
【図2】本発明の第1実施例を示す積層型厚肉FRPブッシュの上面図である。
【図3】本発明の第1実施例を示す積層型厚肉FRPブッシュの断面図である。
【図4】本発明の第1実施例を示す積層型厚肉FRPブッシュをコイル締結部に用いた状態を示す断面図である。
【図5】本発明の第1実施例を示す積層型厚肉FRPブッシュの受圧面を示す図である。
【図6】本発明の第2実施例を示す積層型厚肉FRPブッシュの斜視図である。
【図7】本発明の第2実施例を示す積層型厚肉FRPブッシュの上面図である。
【図8】本発明の第2実施例を示す積層型厚肉FRPブッシュの断面図である。
【図9】本発明の第2実施例を示す積層型厚肉FRPブッシュを浮上式鉄道用地上コイル締結部に用いた状態を示す断面図である。
【図10】本発明の第2実施例を示す積層型厚肉FRPブッシュの受圧面を示す図である。
【図11】従来の地上コイルの締結部の構造(その1)を示す断面図である。
【図12】従来の地上コイルの締結部の構造(その2)を示す断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1,11 積層型厚肉FRPブッシュ
2,13 強化層(CFRP)
3,14 準強化層(GFRP)
4,15 応力緩和層
5,16 ボルト
6,17 ボルト締結穴
7,18 モールド樹脂(エポキシ樹脂)
10 積層構造の厚肉FRPパイプ
12 熱可塑性樹脂層(ポリプロプレンPP,ポリエチレンPE等)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11