TOP > 国内特許検索 > 自動沈下補正装置 > 明細書

明細書 :自動沈下補正装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4673204号 (P4673204)
公開番号 特開2007-162293 (P2007-162293A)
登録日 平成23年1月28日(2011.1.28)
発行日 平成23年4月20日(2011.4.20)
公開日 平成19年6月28日(2007.6.28)
発明の名称または考案の名称 自動沈下補正装置
国際特許分類 E02D  27/34        (2006.01)
FI E02D 27/34 Z
請求項の数または発明の数 6
全頁数 12
出願番号 特願2005-358709 (P2005-358709)
出願日 平成17年12月13日(2005.12.13)
審査請求日 平成20年4月3日(2008.4.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】村本 勝己
個別代理人の代理人 【識別番号】100097113、【弁理士】、【氏名又は名称】堀 城之
【識別番号】100124316、【弁理士】、【氏名又は名称】塩田 康弘
審査官 【審査官】石村 恵美子
参考文献・文献 特開昭52-082836(JP,A)
特開平06-212807(JP,A)
特開昭50-69806(JP,A)
調査した分野 E02D 27/34
E02D 27/00-01
E04H 7/00
特許請求の範囲 【請求項1】
下部構造に直接、または間接的に載置され、その下部構造側に流出孔を有する容器と、
この容器内に充填される粒状体、もしくは粉状体とを備え、
前記容器は、前記流出孔を底板に備えた有底筒状を呈し、
前記底板は、前記流出孔の内周面もしくは前記流出孔の上面が下方から上方へかけて大きさが次第に拡大し、下面が平坦に形成された形状をしており、
前記下部構造の沈下に伴い、前記容器が前記下部構造に対して相対的な浮き上がりを生じるときに前記容器内の前記粒状体、もしくは粉状体が前記流出孔から流出して前記容器と前記下部構造との間の空隙を埋め、前記下部構造の沈下分を補正することを特徴とする自動沈下補正装置。
【請求項2】
下部構造に支持される上部構造が容器を兼ねていることを特徴とする請求項1に記載の自動沈下補正装置。
【請求項3】
下部構造に一体となる外郭内に容器が収納され、粒状体、もしくは粉状体は容器と外郭間に生じた空隙を埋めることを特徴とする請求項1、もしくは請求項2に記載の自動沈下補正装置。
【請求項4】
前記粒状体は砂であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の自動沈下補正装置。
【請求項5】
前記粒状体は金属球であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の自動沈下補正装置。
【請求項6】
前記粒状体はセラミック球であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の自動沈下補正装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は例えばバラスト軌道やスラブ軌道等の軌道構造、あるいは多径間連続橋その他、3点以上の支点で支持される構造物において、各支点の少なくともいずれかに沈下が生じたときにその沈下分を補正する自動沈下補正装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
軌道構造のレールや多径間連続橋の橋桁等、3点以上の支点で支持される不静定構造物のように、中間支点が何らかの原因で沈下したときに各支点が分担すべき荷重の比率が変化する。中間支点の負担率の低下によりその近傍の支点の負担率が大きくなり、それに起因してその支点が沈下し易くなるため、一旦、中間支点に沈下が生ずると、沈下が連鎖的に起こり、不同沈下が起こり易くなる。
【0003】
特に軌道構造の場合には長いレールをまくらぎやスラブが支持する構造であることから、全まくらぎ等の水準(レベル)と支持剛性を完全に揃えることは実質的に不可能であるため、これらのばらつきによる不同沈下、すなわち軌道狂いが生じることは避けられない。またレールの継ぎ目部においては、衝撃荷重が作用する上、レールの曲げ剛性が低下し易い部分であるため、道床や路盤の沈下がその他の区間より発生し易く、軌道狂いを起し易い。
【0004】
構造物に不同沈下が生じた場合にはジャッキアップする方法が一般的であるが(特許文献1、2参照)、構造物の基礎の底面等、上部構造と下部構造の境界まで地盤を掘削した上で、ジャッキを設置しなければならないため、作業が大掛かりになり、工費の高騰と工期の長期化を招く。
【0005】
これに対し、構造物の下に、粒形物を充填した複数個のジャッキを設置しておき、沈下量の大きい箇所に合わせて沈下量の小さい箇所のジャッキから粒形物を抜き、この箇所をジャッキダウンさせることにより不同沈下を修正する方法(特許文献3参照)、構造物の下の地盤中に中空柱状体を埋設しておき、不同沈下の発生時に中空柱状体の内部に非圧縮性流体を充填させ、中空柱状体を膨張させることにより沈下した部分を上昇させる方法(特許文献4参照)がある。
【0006】

【特許文献1】特開平8-302723号公報(請求項1、段落0013、0017~0025、図1~図3)
【特許文献2】特開平9-273171号公報(請求項1、段落0009~0019、図2、図6)
【特許文献3】特開平5-071135号公報(請求項1、段落0012~0017、図1、図2)
【特許文献4】特開2004-218201号公報(請求項1、段落0012~0022、図1~図3、図8、図9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3の方法では沈下量の大きい箇所に合わせて沈下量の小さい箇所をジャッキダウンさせるため、不同沈下を均すことにしかならず、沈下を生じた箇所を個別に修正することはできない。
【0008】
特許文献4の方法では中空柱状体内への非圧縮性流体の充填によって沈下量分を上昇させるため、沈下を修正することはできるものの、中空柱状体内への非圧縮性流体の充填が沈下の検知に基づいて行われるため、非圧縮性流体の充填を能動的に制御しなければならず、検知手段を必要とすることと併せ、システムが複雑化する。
【0009】
本発明は上記背景より、格別な制御を必要とすることなく、沈下の発生と共に沈下量に応じて沈下の補正をする自動沈下補正装置を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明の自動沈下補正装置は、下部構造に直接、または間接的に載置され、その下部構造側に流出孔を有する容器と、この容器内に充填される粒状体、もしくは粉状体とを備え、前記容器が、前記流出孔を底板に備えた有底筒状を呈し、前記底板が、前記流出孔の内周面もしくは前記流出孔の上面が下方から上方へかけて大きさが次第に拡大し、下面が平坦に形成された形状をしており、下部構造の沈下に伴い、容器が下部構造に対して相対的な浮き上がりを生じるときに容器内の粒状体、もしくは粉状体が流出孔から流出して容器と下部構造との間の空隙を埋め、下部構造の沈下分を補正することを構成要件とする。
【0011】
容器が下部構造に直接、または間接的に載置されることで、下部構造に沈下が生じたときには容器は下部構造に対して相対的に浮き上がり可能な状態にある。この状態で、流出孔を有する容器内に粒状体、もしくは粉状体(以下、粒状体等と言う)が充填されていることで、下部構造に沈下が発生すると同時に、容器内の粒状体等が流出孔から容器外へ流出し、容器と下部構造との間の空隙を埋めることになる。粒状体等は下部構造の沈下の速度に合わせ、流出孔から徐々に流出するが、沈下速度が速ければその速度に合わせた速度で流出する等、流出速度は粒状体等の粒径や形状と流出孔の大きさや形状の関係を調整することで自由に設定される。
【0012】
粒状体等の内、粒状体としては具体的には請求項5に記載のように砂、または請求項6に記載のように金属球、あるいは請求項7に記載のようにセラミック球が使用される。
【0013】
砂は安価であり、適用範囲が広いことが最大の特徴と言える。粒径にばらつきがあるために、高精度での流出速度(応答速度)の調整が利かない可能性があるものの、選別して使用することでこの問題は解消される。粒子間に水が浸入した場合にも水の粘性の影響により調整が利かなくなる可能性があるが、容器に止水処理を施すことでこの問題も回避することが可能である。
【0014】
金属球も比較的安価である上、粒径を揃えることができるために高精度での流出速度の調整が可能である利点がある。水の浸入があっても比重の関係から粘性の影響をほとんど受けずに、流出孔からの円滑な流出を生じさせることが可能である。只、ステンレス球を使用しても、水や塩分の存在下では錆や腐食の問題が避けられないため、止水処理を施すことが適切である。
【0015】
セラミック球は金属球より高価になるものの、素材の性質から粒径のばらつきと水の影響による調整困難の問題、及び水や塩分の存在による錆や腐食の問題が伴わないため、止水処理の必要も、メインテナンスの必要もなく、高精度での流出速度の調整が可能である上、当初の品質が永続的に維持される利点を有する。
【0016】
金属球とセラミック球の場合には、粒径を揃え、高精度での流出速度の調整が可能であることで、応答速度、すなわち下部構造に沈下が生じたときから、粒状体が下部構造と容器の底面との間の空隙を埋め、容器の降下を阻止するまでの時間を自由に制御することが可能である。
【0017】
粒状体等は上部構造の荷重を負担するのに十分な圧縮強度を有し、多量に集合することで、容器外への流出時には流体として挙動し、容器と下部構造との間に生ずる、沈下量に応じた空隙を隙間なく埋める。粒状体等が容器と下部構造との間の空隙を埋めた状態では圧縮強度を発揮することで、容器、すなわち上部構造の沈下を阻止しようとし、容器と上部構造を沈下前の原位置に留めようとする。
【0018】
粒状体等は下部構造の沈下の速度と沈下量に応じて自由に容器から流出できるため、下部構造の沈下量に関係なく容器の実質的な沈下が防止、あるいは抑制される。粒状体等が一旦容器外に流出した後には、容器の底面と下部構造との間で圧縮され、逆流することがないため、下部構造が沈下して静止したときには容器は粒状体等によって安定性を確保する。
【0019】
下部構造上に位置する上部構造は容器上に載置される形で容器に支持され、容器を介して下部構造に支持されるが、下部構造の沈下に拘らず容器の沈下が防止等されることで、上部構造の沈下も防止される。
【0020】
上部構造の沈下が防止されることで、上部構造に沈下が生じた場合のようなジャッキアップの作業の必要性は発生しない。また粒状体等が下部構造の沈下と同時に容器外へ流出して容器(上部構造)を沈下前の原位置に留めることで、容器(上部構造)の沈下を修正するための沈下位置の検出、沈下量の測定、沈下量に応じた充填材の充填等の能動的な制御も一切必要とされず、下部構造に沈下が生じても放置しておくだけで、下部構造の沈下が自動的に補正されることになる。
【0021】
前記のように上部構造は容器を介して下部構造に支持される形になるが、請求項2に記載のように下部構造に支持される上部構造が容器を兼ねている場合には、部品としての容器が不要になるため、自動沈下補正装置の構成を簡素化することが可能になる。また容器の高さ分の空間が節減されるため、自動沈下補正装置の高さを最小に抑えることも可能になる。
【0022】
容器は下部構造上に直接載置されることもあるが、その場合には下部構造に沈下が生じたときに粒状体等の流出量が多くなることもある。このため、容器から流出しきる事態を回避する上では下部構造のある一箇所当たりの容器の配置数を多くする必要もあり得る。
【0023】
これに対し、請求項3に記載のように下部構造に一体となる外郭内に容器を収納することにより、粒状体等の流出量を抑制することができるため、粒状体等が容器から流出しきる事態を回避することが可能になり、容器の配置数を節減することも可能になる。
【0024】
請求項3では容器外に流出した粒状体等が外郭内に留まるため、下部構造が地盤である場合のように粒状体等が下部構造から反力を得られず、下部構造内に埋没していくような下部構造に対して請求項3は有効である。容器外に流出した粒状体等が下部構造内に埋没していくような場合には粒状体等が支持能力を発揮する余地がないが、外郭内に留まることで、粒状体等が確実に支持能力を発揮するため、上部構造の沈下を阻止することが可能になる。
【0025】
粒状体等が一旦容器外に流出した後には、下部構造上に直接支持される場合より粒状体等の支持能力が安定している外郭の上面と、容器の底面との間で圧縮された状態になるため、下部構造が沈下したときの粒状体等による容器の安定性が向上する。
【0026】
容器に形成される流出孔の形状、大きさ等は粒状体等の粒径、形状に応じて任意に決められ、流出孔の周囲が平坦面(水平面)であっても粒状体等の流出部分は流出時に自然に安息角を生ずるため、流出孔の形状等によって特に流出が阻害されるようなことはない。
【0027】
また、流出孔の内周面、もしくは流出孔の上面が、下方から上方へかけて大きさが次第に拡大する形状をしている場合には、粒状体等が安息角で静止する事態を回避するように流出孔の内周面や上面が作用するため、粒状体等の流出がより円滑に行われる。この結果、下部構造に沈下が生じたときの流出の速度、及び容器と下部構造との間の空隙を埋める速度が上昇し、沈下から流出までの反応が早まるため、下部構造が沈下したときから容器が沈下しようとするまでの時間が短縮され、容器の沈下が一層抑制されることになる。
【発明の効果】
【0028】
下部構造に直接、または間接的に載置され、流出孔を有する容器と、この容器内に充填される粒状体、もしくは粉状体とを備え、粒状体、もしくは粉状体が下部構造の沈下に伴い、流出孔から流出して容器と下部構造との間の空隙を埋めるため、下部構造の沈下分を補正し、上部構造の沈下を阻止することができる。
【0029】
上部構造の沈下が阻止されることで、上部構造に沈下が生じる場合のようなジャッキアップ等の作業の必要性はなく、容器(上部構造)の沈下を修正するための、沈下の検出等の能動的な制御も一切必要とせず、下部構造に沈下が生じても単に放置しておくだけでよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0031】
図1は下部構造5に直接、または間接的に載置され、その下部構造5側に流出孔2aを有する容器2と、容器2内に充填される粒状体、もしくは粉状体(以下、粒状体等と言う)3とを備えた自動沈下補正装置1の基本的な構成例を示す。粒状体等3は下部構造5の沈下に伴い、容器2が下部構造5に対して相対的な浮き上がりを生じるときに容器2の流出孔2aから流出して容器2と下部構造5との間の空隙を埋め、下部構造5の沈下分を補正する。
【0032】
下部構造5の具体的な部位は下部構造5が支持する上部構造6との関係で決まり、上部構造6が地上構造物であれば、下部構造5は地盤や杭等であり、杭が上部構造6となる場合には地盤が下部構造5となる。また軌道構造の場合にはまくらぎ7やスラブが上部構造6となり、道床9や地盤等が下部構造5となる。多径間連続橋では橋脚や橋台が上部構造6となり、これを支持する地盤や杭等が下部構造5となる。
【0033】
図1は下部構造5に一体となる外郭内4に容器2が収納された請求項3に記載の自動沈下補正装置1の具体例を示す。この場合、下部構造5の沈下に伴い、容器2と外郭4間に空隙が生ずることから、粒状体等3は容器2と外郭4との間に生じた空隙を埋めることになる。
【0034】
容器2は外郭4内に単純に嵌合するか、または両者の少なくともいずれか一方に形成されるガイドに案内されることにより高さ方向に相対移動自在に外郭4内に挿入される。この他、外郭4に対して上向きにのみ相対移動自在に挿入され、下向きには外郭4に係止する等、下向きの相対移動が拘束されるように挿入されることもある。
【0035】
下部構造5に沈下が生じたときの、図1に示す自動沈下補正装置1の挙動を図2-(a)~(c)に示す。(a)は沈下が生じていないときの平常時に状態を示す。下部構造5に沈下が生じ、下部構造5に一体化している外郭4が降下したとき、外郭4の降下と同時に、(b)に示すように容器2の流出孔2aから粒状体等3が流出し、容器2の下面と外郭4の内周面との間に生ずる空隙を埋める。流出孔2aは容器2の底板21、または底板21に相当する部分に形成される。
【0036】
粒状体等3が集合して圧縮強度を発揮し、上部構造6の鉛直荷重を分担できる性質を持てば、粒状体等3の素材は問われないが、粒状体には例えば自動沈下補正装置1に要求される性能に応じてベアリング等の金属球やセラミック球の他、砂等の天然の材料が使用される。
【0037】
粒状体等3は平常時に容器2内に充填された状態に置かれ、下部構造5が沈下したときに容器2外に流出して容器2と下部構造5との間、または容器2と外郭4との間の空隙を埋めた状態を維持する。更なる下部構造5の沈下時には容器2内に留まっている分が更に容器2外に流出して常に空隙を埋めるため、粒状体等3に対する格別なメインテナンスは不要であり、沈下があったときに容器2内に補充する程度のことで足りる。
【0038】
粒状体等3は流体のように流出孔2aから流出し、容器2の底面と外郭4の上面との間に行き渡り、容器2を支持できるだけの圧縮強度を発揮した時点で、容器2の降下を阻止する。容器2はその底面下に行き渡った粒状体等3を介して外郭4に支持されるため、容器2には実質的な降下は生じない。
【0039】
図2-(c)に示すように粒状体等3が空隙を完全に埋め尽くしたところで、容器2は外郭4に対して降下できなくなるため、容器2の降下が完全に阻止される。(c)は外郭4に対して降下できない点では(a)と同等の状態にある。(c)の状態から更に外郭4が降下したときには(b)の状態になるから、粒状体等3が再度、容器2の底面と外郭4の上面との間の空隙を埋め、容器2の更なる降下を阻止することになる。
【0040】
図1、図2はまた、流出孔2aの内周面2b、もしくは流出孔2aの上面2cの断面が下方から上方へかけて次第に拡大する形状をしている自動沈下補正装置1の具体例を示す。流出孔2aの水平断面が円形の場合には流出孔2aの径が下方から上方へかけて拡大する。断面上は流出孔2aの内周面2b、もしくは流出孔2aの上面2cが流出孔2aの中心から外側へかけて上向きに傾斜する。流出孔2aの上面2cとは図示するように流出孔2aの内周面2bに面する上面を指す。
【0041】
図1、図2の場合、流出孔2aの断面が次第に拡大することで、粒状体等3は流出孔2aから流出し易く、応答速度が大きくなるため、下部構造5に沈下が生じたときの沈下から、容器2との間の空隙を埋めるまでの時間が短縮され、容器2を降下させることなく、下部構造5(外郭4)のみを沈下させることができる。
【0042】
図3-(a)、(b)は外郭4内に容器2が収納された、図1に示す自動沈下補正装置1の変形例を示す。(a)は流出孔2aの上面2cを傾斜させることなく、単純に流出孔2aを粒状体等3の粒径に対して極端に大きくした場合、(b)は容器2の底板21に複数個の流出孔2aを形成し、流出孔2aに傾斜を付けた場合と同様に、粒状体等3の流出が促されるようにした場合を示している。
【0043】
(a)、(b)のいずれも粒状体等3が流出孔2aから円滑に流出する、1個当たりの流出孔2aの面積は粒径の5倍程度以上が適当とされていることに対応している。流出孔2aの形状、大きさ、傾斜等は容器2が必要とする支持力と応答速度、すなわち粒状体等3が流出孔2aから流出しきる時間との関係で任意に設定される。
【0044】
図4は上部構造6が容器2を兼ねている請求項2に記載の自動沈下補正装置1の具体例を示す。図4では上部構造6の直下に下部構造5が存在しているが、上部構造6の規模によっては上部構造6の回りに外郭4を介在させることもある。この場合、上部構造6の流出孔2aから流出した粒状体等3は上部構造6と下部構造5の間の空隙を直接埋めることになる。図4では図1、図2と同様に流出孔2aの内周面2b、もしくは流出孔2aの上面2cを傾斜させている。
【0045】
図5-(a)、(b)は上部構造6がレール8であり、下部構造5が道床(バラスト)9である場合において、上部構造6の下にまくらぎ7のみが設置され、自動沈下補正装置1が存在していない場合に、下部構造5に不同沈下が発生するときの状況を示している。図6-(a)~(c)はまくらぎ7の下に、外郭4内に容器2が収納された形式の自動沈下補正装置1が存在している場合の、下部構造5と上部構造6の様子を示している。容器2はレール8に締結される。
【0046】
道床9(下部構造5)上に敷設されたまくらぎ7にレール8(上部構造6)を締結したバラスト軌道においては、踏切との境界や高架橋取付部等、道床の構造が変化する箇所の他、レール8の継ぎ目等の近辺で荷重変動が生じ、図5-(a)に示すように1本~3本程度のまくらぎに局所的な沈下が生ずることがある。まくらぎに局所的な沈下が発生すると、図5-(b)に示すように列車が通過した後のレール8の弾性回復によりレール8に締結されているまくらぎ7が持ち上げられ、いわゆる浮きまくらぎの状態になることが多い。
【0047】
一度浮きまくらぎが発生すると、列車が通過する度にまくらぎ7が道床9に叩き付けられてまくらぎ7に衝撃的な荷重が作用するため、まくらぎ7の沈下が促進され、次第に大きな軌道狂いを発生させることになる。
【0048】
これに対し、図6に示すようにまくらぎ7に自動沈下補正装置1が内蔵されている場合、あるいはまくらぎ7の下に自動沈下補正装置1が存在している場合には、(a)に示すように、自動沈下補正装置1に支持されたまくらぎ7に著大な荷重が作用してそのまくらぎ7が沈下し、レール8に変形が生じたとき、容器2が降下し、それに押されて外郭4が道床(バラスト)9中に押し込まれる。図6に示す状況では下部構造5が道床9であるために、粒状体等3を支持する能力がないため、外郭4内に容器2が収納された形式の自動沈下補正装置1が使用される。
【0049】
列車の通過後には図6-(b)に示すようにレール8が弾性回復し、それに伴い、レール8に締結されている容器2が上昇すると同時に、容器2から粒状体等3が流出して容器2と外郭4との間の空隙を埋める。これにより容器2上面及びレール8が沈下前の正規の位置を保持し、併せてレール8の荷重支持剛性の低下が防止される。容器2がレール8の弾性回復と共に上昇しようとするとき、外郭4は容器2から流出した粒状体等3により道床9中に埋め込まれた状態を保つ。
【0050】
外郭4が道床9中に押し込まれたとき(図6-(b))、外郭4周囲の、道床9を構成する砕石は周辺に回り込むが、外郭4はその回り込み、圧密された砕石中に自重で埋め込まれた状態を維持することで、砕石に拘束され、砕石中で安定性を確保する。一方、降下した外郭4と容器2との間には粒状体等3が密実に介在していることで、外郭4の上昇と容器2の降下が阻止されるため、容器2に連結されたレール8の沈下が阻止され、容器2及びレール8が沈下前の正規の位置を保持する。
【0051】
この状態で、粒状体等3は容器2の降下を阻止する機能を発揮し続け、再度の荷重による降下に対して安定するため、自動沈下補正装置1がその後に著大な荷重を受けても図6-(c)に示すように容器2の降下(沈下)が阻止されるため、まくらぎ7の上面の絶対的な高さに変動は生じず、レール8に変形は生じない。また自動沈下補正装置1が道床9とレール8間で安定することで、容器2がレール8から吊り下げられた状態になることがなくなるため、浮きまくらぎの発生が確実に防止され、浮きまくらぎの発生に伴う軌道狂いと、噴泥の発生が回避される。
【0052】
図7は上部構造6であるレール8の曲げ剛性が低下し易く、下部構造5である道床9や路盤の沈下がその他の区間より発生し易いレール8の継ぎ目部における道床9側のまくらぎ7の内部、または下に自動沈下補正装置1を設置した状況を示す。レール8の継ぎ目部はバラスト軌道と踏切や高架橋との境界部等に形成されることが多い。この場合の自動沈下補正装置1の挙動は図6に示した通りである。
【0053】
図8は多径間高架橋の橋脚を杭基礎で支持させようとする場合において、連続する3支点の内、両側の橋脚の下には杭基礎を構築することができながら、中間の橋脚の下の支持層までの距離が大き過ぎるために、杭基礎を構築できない場合に、この中間の橋脚の下に自動沈下補正装置1を設置した状況を示す。この場合、橋脚が上部構造6となり、その下の地盤等が下部構造5となる。この場合には地盤の沈下が見込まれるため、自動沈下補正装置1には外郭4内に容器2が収納された形式が使用される。図8では自動沈下補正装置1の下に地盤反力を得るための基礎10を構築しているため、基礎10が下部構造5となる。
【0054】
埋没谷のような支持層までの深度が大きい箇所に杭を構築することは不経済であるところ、図8では自動沈下補正装置1を設置することで、地盤(下部構造5)の沈下に拘らず、橋脚(上部構造6)のレベルを一定に維持することができるため、杭を構築する場合より施工コストを大幅に削減することが可能になる。
【0055】
この場合は図6の場合とは異なり、地盤の沈下により容器2が原位置に留まったまま、外郭4が沈下し、それに伴って粒状体等3が容器2から流出して容器2と外郭4間の空隙を埋めることにより、自動沈下補正装置1が支持する橋脚の沈下を防止することになる。この場合の自動沈下補正装置1の挙動は図2に示した通りである。
【0056】
図9は構造物が支持層に到達しない群杭に支持される場合に、地盤の沈下による各杭11の沈下量が均等にならないと予想される場合に、各杭11の先端に自動沈下補正装置1を設置した状況を示す。この場合、杭11が上部構造6となり、その下の地盤等が下部構造5となる。この場合も自動沈下補正装置1には外郭4内に容器2が収納された形式が使用される。ここでも自動沈下補正装置1の下に地盤反力を得るための基礎10を構築し、基礎10を下部構造5としている。
【0057】
各杭11の沈下量が相違しても、各杭11に設置されている自動沈下補正装置1の外郭4が沈下しながら、容器2が原位置に留まるため、実質的に杭11に沈下が生ずることはない。全体的には各杭11の沈下量の相対差分が吸収され、各杭11の分担荷重が平均化され、不同沈下が防止されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】外郭を有する自動沈下補正装置の構成例を示した縦断面図である。
【図2】(a)~(c)は図1に示す自動沈下補正装置の挙動を示した縦断面図である。
【図3】(a)、(b)は外郭を有する他の自動沈下補正装置の構成例を示した縦断面図であり、(a)は流出孔を大きくした場合、(b)は多数の流出孔を形成した場合である。
【図4】上部構造が容器を兼ねている自動沈下補正装置の構成例を示した縦断面図である。
【図5】(a)は従来のまくらぎが車輪の通過により沈下したときの様子を示したレールに直交する方向の縦断面図、(b)はレールが弾性回復したときの様子を示した縦断面図である。
【図6】(a)は車輪の通過により自動沈下補正装置付きのまくらぎが沈下したときの様子を示したレールに直交する方向の縦断面図、(b)はレールが弾性回復したときの様子を示した縦断面図、(c)は再度車輪が通過したときの様子を示した縦断面図である。
【図7】レールの継ぎ目部の道床側のまくらぎの下に自動沈下補正装置を設置した状況を示した縦断面図である。
【図8】多径間高架橋の中間の橋脚の下に自動沈下補正装置を設置した状況を示した縦断面図である。
【図9】構造物を支持する群杭の先端に自動沈下補正装置を設置した状況を示した縦断面図である。

【0059】
1………自動沈下補正装置
2………容器
21……底板
2a……流出孔
2b……内周面
2c……上面
3………粒状体、もしくは粉状体
4………外郭
5………下部構造
6………上部構造
7………まくらぎ
8………レール
9………道床
10……基礎
11……杭
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8