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明細書 :車両加振システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4557908号 (P4557908)
公開番号 特開2007-218790 (P2007-218790A)
登録日 平成22年7月30日(2010.7.30)
発行日 平成22年10月6日(2010.10.6)
公開日 平成19年8月30日(2007.8.30)
発明の名称または考案の名称 車両加振システム
国際特許分類 G01M   7/02        (2006.01)
G01M  17/08        (2006.01)
FI G01M 7/00 A
G01M 17/00 F
請求項の数または発明の数 3
全頁数 11
出願番号 特願2006-041103 (P2006-041103)
出願日 平成18年2月17日(2006.2.17)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2005年(平成17年)8月22日 社団法人日本機械学会発行の「第9回「運動と振動の制御」シンポジウム講演論文集 通計番号No.05-15」に発表
審査請求日 平成20年5月16日(2008.5.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】瀧上 唯夫
【氏名】富岡 隆弘
【氏名】山本 大輔
個別代理人の代理人 【識別番号】100104064、【弁理士】、【氏名又は名称】大熊 岳人
審査官 【審査官】▲高▼見 重雄
参考文献・文献 特開平05-281096(JP,A)
特開平06-317502(JP,A)
特開2000-283894(JP,A)
特開平10-339629(JP,A)
特開平09-086123(JP,A)
特開平11-129900(JP,A)
特開2004-025994(JP,A)
特許第3585425(JP,B2)
調査した分野 G01M 7/02
G01M 17/08
特許請求の範囲 【請求項1】
車両の台車を加振して車両全体を加振する車両加振システムであって、
前記台車の車輪とレールとの間の振動の伝達を防ぎ、この車輪をこのレール上に弾性支持する弾性支持手段
前記台車の軸箱を加振する加振手段と、
前記車両の振動を測定する振動測定手段と、
前記振動測定手段の測定結果に基づいて前記車両の状態を解析する解析手段と、
備える車両加振システム。
【請求項2】
請求項に記載の車両加振システムにおいて、
前記解析手段は、前記加振手段が前記軸箱を加振したときに前記振動測定手段が測定した軸箱振動測定値及び車体振動測定値に基づいて、この軸箱振動測定値からこの車体振動測定値への伝達関数を推定し前記車両の状態を解析すること、
を特徴とする車両加振システム。
【請求項3】
請求項又は請求項に記載の車両加振システムにおいて、
前記解析手段は、前記車両の上下振動特性及び/又は前記車両の乗り心地を解析すること、
を特徴とする車両加振システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の台車を加振して車両全体を加振する車両加振システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高速化、地盤振動低減、省エネルギ、低コスト化などの要求により鉄道車両の軽量化、構造簡素化が進められているが、これに伴って車体の上下方向の振動が乗り心地の面から問題となるケースが目立つようになっている。乗り心地に影響がある車体の上下振動は、車体を支える空気ばねの上で車体自身は変形しないで振動する「剛体振動」と、車体が曲げ変形しながら振動する「車体曲げ振動」とに大別される。このうち車体曲げ振動は、人が敏感に感じる周波数で顕著に生じるため、乗り心地を向上させるにはその低減が重要となる。曲げ振動が顕著になる共振周波数(固有振動数)とそのときの振動の形(固有振動モード(モード形))は、車体の構造や材質、質量などで決まり、固有振動数とモード形の組は「固有振動モード特性」と呼ばれ、車種毎に固有の性質である。この固有振動モード特性を調べることで車体振動を特徴付けることができ、振動低減に必要な情報を得ることができる。従来、このような固有振動モード特性を調べる場合には、レール上に車輪を接触させた状態で車体を定置で加振する定置加振試験装置を用いており、この定置加振試験装置では動電型加振器などによって車体を直接加振する方法が主流であった。
【0003】
従来の定置加振試験装置は、車両の車体を上下方向に加振するための加振力を発生する加振器(動電型加振器)と、車体の床下に一端が連結され他端が加振器に連結された加振棒と、車体の床、屋根、側面などに取り付けられてこれらの振動を検出する加速度計などを備えている(例えば、非特許文献1参照)。このような従来の定置加振試験装置は、車体を加振器によって直接加振して車体の振動を加速度計によって測定し、この測定結果をデータ処理して固有振動数、減衰比、振動形状などの固有振動モード特性を解析している。
【0004】

【非特許文献1】富岡 隆弘、瀧上 唯夫、RRR、財団法人研友社、2005年5月1日、第16頁~第19頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の定置加振試験装置では、レール上に車輪を接触させた状態で車体を加振しているため台車を十分に加振することができず、台車を含めた車両全体の振動特性を把握できない問題点があった。また、従来の定置加振試験装置では、走行時と加振条件が異なるため、乗り心地を定量的に予測することができない問題点があった。一方、レールを模擬した軌条輪上に車両を設置して、走行状態を定置加振できる車両試験台を使用したり、実際に車両を走行させて車両の機能及び性能を試験する走行試験を実施したりすれば、車体の固有振動特性や乗り心地を評価することが可能である。しかし、そのような試験の実施には大規模な装置が必要で試験規模が大掛かりになるとともに、必要な試験の機会や日程を確保することが困難である問題点がある。
【0006】
この発明の課題は、車体の固有振動モード特性に加え走行時の車両の上下振動特性や乗り心地を定量的に簡便に評価することができる車両加振システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、車両(V)の台車(2)を加振して車両全体を加振する車両加振システムであって、前記車両の台車の車輪(3a)とレール(R1)との間の振動の伝達を防ぎ、この車輪をこのレール上に弾性支持する弾性支持手段(11a)と、前記台車の軸箱(4)を加振する加振手段(12)と、前記車両の振動を測定する振動測定手段(13)と、前記振動測定手段の測定結果に基づいて前記車両の状態を解析する解析手段(14)とを備える車両加振システム(10)である。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の車両加振システムにおいて、前記解析手段は、前記加振手段が前記軸箱を加振したときに前記振動測定手段が測定した軸箱振動測定値及び車体振動測定値に基づいて、この軸箱振動測定値からこの車体振動測定値への伝達関数(H1~H8)を推定し前記車両の状態を解析することを特徴としている車両加振システムである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の車両加振システムにおいて、前記解析手段は、前記車両の上下振動特性及び/又は前記車両の乗り心地を解析することを特徴とする車両加振システムである。
【発明の効果】
【0012】
この発明によると、車体の固有振動モード特性に加え走行時の車両の上下振動特性や乗り心地を定量的に簡便に評価することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、この発明の実施形態に係る車両加振システムによって加振される車両を概略的に示す正面図である。図2は、この発明の実施形態に係る車両加振システムによって加振される車両を概略的に示す側面図である。図3は、この発明の実施形態に係る車両加振システムによって加振される車両を概略的に示す平面図である。
【0014】
図1及び図2に示す軌道Rは、車両Vが走行する通路(線路)である。軌道Rは、車両Vの車輪3aを支持し案内してこの車両Vを走行させるレールR1などから構成されている。レールR1は、車輪3aを直接支持し車輪3aの踏面3cと接触して摩擦抵抗を受ける頭頂面(頭部上面)R2などを備えている。図1~図3に示す車両Vは、軌道Rに沿って走行する鉄道車両であり、電車又は気動車などである。車両Vは、車体1と台車2などを備えている。図1~図3に示す車両Vは、例えば、輪軸3を2対有する台車(2軸ボギー台車)2によって支持される2軸ボギー車である。
【0015】
車体1は、乗客又は貨物などを積載し輸送するための構造物である。台車2は、車体1を支持して走行する装置であり、図1~図3に示すように、輪軸3と、軸箱4と、台車枠5と、軸ばね6と、まくらばね(空気ばね)8と、けん引装置9などを備えている。輪軸3は、車輪3aと車軸3bとを組み立てた部材である。車輪3aは、レールR1と転がり接触する部材であり、レールR1の頭頂面R2と接触して摩擦抵抗を受ける踏面3cを備えている。以下では、図1~図3に示す車輪3aには、車両Vの前側から後側に向かって順に1位から8位までの番号を付して説明する。車軸3bは、車輪3aを取り付ける部材である。軸箱4は、一対の車輪3aと一体となって回転する車軸3bを回転自在に支持する部材であり、図示しない軸箱支持装置によって台車枠5の所定の位置に保持されている。台車枠5は、台車2の主要構成部であり、軸ばね6は軸箱4と台車枠5とを結合し垂直方向の荷重を弾性的に支持する装置である。まくらばね8は、車体1と台車枠5との間を結合し、車体1の垂直方向の荷重を支持しつつ台車枠5から車体1に伝わる振動を低減する装置である。けん引装置9は、車体1と台車2とを連結してこれらの間で前後方向の力を伝達させる装置である。
【0016】
図1~図3に示す車両加振システム10は、車両Vの台車2を加振して車両V全体を加振するシステムである。車両加振システム10は、車輪支持装置11と、加振装置12と、振動測定装置13と、解析装置14などを備えている。車両加振システム10は、車輪支持装置11によって車輪3aをレールR1上に弾性支持した状態で、加振装置12によって台車2の軸箱4を加振させて、振動測定装置13によって車両Vの振動を測定し車両Vの状態を解析装置14によって解析する。
【0017】
車輪支持装置11は、車両Vの車輪3aを支持する手段である。車輪支持装置11は、図1~図3に示すように、弾性支持部11aと移動規制部11bなどを備えている。図1~図3に示す車輪支持装置11は、1位及び2位の車輪3aとレールR1との間に装着されている。弾性支持部11aは、台車2の車輪3aをレールR1上に支持する手段である。弾性支持部11aは、レールR1の頭頂面R2と車輪3aの踏面3cとの間に挟み込まれるウレタンゴムなどの弾性体であり、レールR1に着脱自在に装着される。弾性支持部11aは、加振装置12によって台車2を加振したときに、レールR1と車輪3aとの間の振動の伝達を防ぐ。弾性支持部11aは、例えば、図3に示すように、1位の軸箱4を加振したときに3位から8位までの軸箱4に加振力が伝達されないようにこの加振力を絶縁する機能を有する。移動規制部11bは、車輪3aの移動を規制する部分である。移動規制部11bは、レールR1上を車輪3aが前後方向及び左右方向に移動するのを規制する機能を有するとともに、車輪3aが左右方向に移動してレールR1上から車輪3aが脱落するのを防止する機能を有する。
【0018】
加振装置12は、台車2の軸箱4を加振する手段である。加振装置12は、実際に車両Vを軌道Rに沿って走行させたときの加振条件と同一にするため、輪軸3と一体と考えられる軸箱4を加振することによって台車2を加振して車両V全体を加振する。加振装置12は、アクチュエータ部12aと、信号出力部12bと、ドライバ部12cなどを備えている。アクチュエータ部12aは、軸箱4を加振する軸箱加振用のアクチュエータであり、例えば直線往復運動するリニアモータなどのリニアアクチュエータである。アクチュエータ部12aは、図1及び図2に示すように、駆動部12dと固定部12eなどを備えている。駆動部12dは、往復運動する軸部材であり、上端が軸箱4に固定されてこの軸箱4を上下方向に駆動する。図1に示すアクチュエータ部12aは、例えば、1位の軸箱4と2位の軸箱4とをそれぞれ加振している。固定部12eは、下端が地面に固定されて反力を得るための部分である。信号出力部12bは、アクチュエータ部12aを加振動作させるための加振指令信号を発生する装置であり、この加振指令信号をドライバ部12cに出力するDAボード内蔵パーソナルコンピュータ(PC)又はシグナルジェネレータなどであり、加振指令信号としては、例えばランダム波の周波数特性を帯域制限したバンドランダム波などを与える。ドライバ部12cは、信号出力部12bが出力する加振指令信号に基づいて、アクチュエータ部12aを駆動するための駆動電流を出力する回路である。
【0019】
振動測定装置13は、車両Vの振動を測定する手段である。振動測定装置13は、振動検出部13a,13bと、アンプ部13cと、フィルタ部13dと、データ記録部13eなどを備えている。振動検出部13a,13bは、車両Vの振動を検出する装置であり、振動検出部13aは車体1の振動を検出し、振動検出部13bは軸箱4の振動を検出する。振動検出部13a,13bは、上下方向の振動加速度、速度又は変位などを検出するもので、例えば、圧電式加速度計又はひずみ式加速度計、レーザ変位計などである。図1~図3に示す振動検出部13aは、例えば、固有振動モード特性の同定に必要な個数(図1~図3では代表して1個のみ示す)が車体1に設置されている。振動検出部13aは、車体1の振動に応じた振動検出信号(加速度信号)をアンプ部13cに出力し、振動検出部13bは軸箱4の振動に応じた振動検出信号(加速度信号)をアンプ部13cに出力する。アンプ部13cは、振動検出部13a,13bが出力する振動検出信号をそれぞれ増幅する回路である。アンプ部13cは、車体1及び軸箱4の振動状態をそれぞれ電圧値又は電流値として出力する、例えばチャージアンプ又は動ひずみ計などである。フィルタ部13dは、アンプ部13cが出力する出力信号を処理する回路である。フィルタ部13dは、アンプ部13cが出力する車体1及び軸箱4の振動検出信号から特定の周波数成分を抽出又は遮断する。データ記録部13eは、振動測定データを記録するデータ測定装置である。データ記録部13eは、車体1の振動測定値(車体加速度)と軸箱4の振動測定値(軸箱加速度)とを収集し記録するADボード内蔵PC又はデータレコーダなどである。
【0020】
解析装置14は、振動測定装置13の測定結果に基づいて車両Vの状態を解析する手段である。解析装置14は、加振装置12が軸箱4を加振したときに振動測定装置13が測定した軸箱振動測定値(軸箱加速度)及び車体振動測定値(車体加速度)に基づいて、軸箱振動測定値から車体振動測定値への伝達関数を解析し、車体1の固有振動モード特性を同定するほか乗り心地を評価する。解析装置14は、例えば、前記振動特性や乗り心地を解析するソフトウェアを備えたPCなどである。
【0021】
次に、この発明の実施形態に係る車体加振システムの動作を説明する。
図4は、この発明の実施形態に係る車体加振システムの加振処理及び伝達関数推定処理を車体振動測定点の1つに着目して説明するための図であり、図4(A)~図4(D)は1軸~4軸までを順次加振したときの伝達関数の推定手順を模式的に示す概略図である。図5は、この発明の実施形態に係る車体振動測定点の1つに着目して走行時の乗り心地を予測する推定手法を示すブロック図である。
【0022】
先ず、図4(A)に示すように、1位及び2位(第1軸)の軸箱4にアクチュエータ部12aをそれぞれ設置して、これらの軸箱4をアクチュエータ部12aによって加振する。その結果、図1~図3に示すように、アクチュエータ部12aの駆動部12dが上下方向に往復運動して、1位及び2位の軸箱4を駆動部12dが加振する。レールR1の頭頂面R2と車輪3aの踏面3cとの間には、車輪支持装置11の弾性支持部11aが挟み込まれている。このため、1位及び2位の軸箱4が加振されると弾性支持部11aが弾性変形して伸縮し、軌道R上で台車2が上下方向に変位して台車2とともに車両V全体が加振される。
【0023】
1位及び2位の軸箱4をアクチュエータ部12aが加振すると、図3に示す車体1の車体加速度を振動検出部13aが検出してデータ記録部13eがこの車体加速度(車体振動測定値)を記録するとともに、1位及び2位の軸箱4の軸箱加速度を振動検出部13bが検出してデータ記録部13eがこの軸箱加速度(軸箱振動測定値)を記録する。次に、図4(A)に示すように、図3に示す1位の軸箱4から振動検出部(車体評価点)13aへの伝達関数H1を解析装置14が推定するとともに、2位の軸箱4から振動検出部13aへの伝達関数H2を解析装置14が推定する。
【0024】
同様に、3位及び4位(第2軸)の軸箱4、5位及び6位(第3軸)の軸箱4、7位及び8位(第4軸)の軸箱4にアクチュエータ部12aを順次移設して、これらの軸箱4をアクチュエータ部12aによって加振し、各軸を加振したときの車体加速度及び軸箱加速度をデータ記録部13eが記録する。そして、図4(B)~(D)に示すように、図3に示す3位及び4位の軸箱4から振動検出部13aへの伝達関数H3,H4と、5位及び6位の軸箱4から振動検出部13aへの伝達関数H5,H6と、7位及び8位の軸箱4から振動検出部13aへの伝達関数H7,H8とを解析装置14が推定する。その結果、1位から8位までのぞれぞれの軸箱加速度から車体加速度への伝達関数H1~H8の推定が終了する。
【0025】
次に、図5を参考に、上記で求めた伝達関数H1~H8を用いて、走行時の乗り心地を予測する推定手法について述べる。
軸箱加速度は、主に軌道の上下不整によって生じる。このため、図4に示すように、第1軸が先頭となって走行する場合には、図3に示す3位、5位及び7位の軸箱4には1位の軸箱加速度が遅れを持って入力し、4位、6位及び8位の軸箱4には2位の軸箱加速度が遅れを持って入力すると考えられる。ここで、各軸に対応する時間遅れは、走行速度と第1軸までの距離によって決まる。このため、図5に示すように、各軸箱加速度から車体加速度までの伝達関数への入力として、1位及び2位には実測した軸箱加速度を解析装置14が与えるとともに、3位~8位にはこの軸箱加速度に対して軸毎に時間遅れを持たせた信号を解析装置14が与える。そして、車体1の振動加速度をディジタル処理によって解析装置14が推定し、この振動加速度に基づいてパワースペクトル密度(PSD)及び乗り心地レベル(LT)を解析装置14が演算して乗り心地を評価する。
【0026】
図6は、前記乗り心地推定手法による解析結果を一例として示すグラフである。
図6に示す横軸は、周波数[Hz]であり、縦軸は床面中央における上下加速度のパワースペクトル密度(PSD)[(m/s2)2/Hz]である。図6に示す合成処理の波形は、図1~図3に示す解析装置14によって軸毎に加振して求められた周波数応答をディジタル信号処理して合成しパワースペクトル密度(PSD)及び乗り心地レベル(LT)を求めたものである。図6に示す走行時模擬の波形は、車両試験台により60km/hの走行を模擬したものであり、軸毎ではなく時間差を持った4軸同時加振時の測定結果である。図6に示すように、走行時模擬の波形と合成処理の波形とが良く一致しており、乗り心地推定手法としての妥当性が確認された。
【0027】
この発明の実施形態に係る車両加振システムには、以下に記載するような効果がある。
(1) この実施形態では、台車2の車輪3aをレールR1上に弾性支持部11aが弾性支持する。例えば、従来の定置加振試験では、レールR1と車輪3aとを接触させた状態で車体1を加振しているため、大きな加振力を作用させても台車2を含む車両V全体を十分に加振させることができず、十分な変位(加速度)を得ることができない。この実施形態では、弾性支持部11aを使用することによって、レールR1に対して車輪3aが十分に変位可能になるため、台車2を含む車両V全体を加振させることができる。また、解析装置14による伝達関数H1~H8の推定手順において、加振した車輪3aと異なる部位から車体1が加振力を受けた場合に、伝達関数H1~H8の推定精度が悪化する可能性がある。弾性支持部11aは、図3に示す1位及び2位の車輪3aからレールR1に振動が伝播して、レールR1と接触している3位から8位までの車輪3aに振動が伝播するのを遮断することができる。その結果、走行時の上限振動特性や乗り心地を定量的に精度よく評価することができる。
【0028】
(2) この実施形態では、車両Vの台車2の軸箱4を加振装置12が加振する。このため、実際に車両Vが軌道Rを走行するときと同じ加振条件になるように、台車2を含む車両V全体を加振することができる。特に、加振装置12としてリニアアクチュエータを使用した場合には、従来の定置加振試験装置のような動電型加振器を使用する場合に比べて十分な加振力を作用させることができる。
【0029】
(3) この実施形態では、車両Vの振動を振動測定装置13が測定し、この振動測定装置13の測定結果に基づいて車両Vの状態を解析装置14が解析する。このため、走行時の車両Vの状態を定量的に評価することができる。また、従来の車両試験台のような大規模な設備が不要になり可搬型とすることができるため、車両工場や車両基地で車両Vを簡単に加振させることができる。
【0030】
(4) この実施形態では、加振装置12が軸箱4を加振したときに振動測定装置13が測定した軸箱振動測定値及び車体振動測定値に基づいて、この軸箱振動測定値からこの車体振動測定値への伝達関数(H1~H8)を解析装置14が推定して車両Vの状態を解析する。このため、解析装置14によって車体1の固有振動モード特性を同定することができるほか、乗り心地を簡便に評価することができる。
【0031】
(5) この実施形態では、車両Vの上下振動特性及び/又は車両Vの乗り心地を解析装置14が解析する。このため、走行時の台車2を含む車両Vの振動特性を調査することができるとともに、走行時の車両Vの上下振動による乗り心地を評価することができる。また、車両Vが走行する線区の軌道狂いを予め測定しておき、実際にこの線区に車両Vを走行させずに、車両Vの乗り心地などを予測することができる。その結果、実際に車両Vによって線区を走行しなくても、車両Vがどのような振動特性を示し、乗り心地がどの程度であるかを予測することができる。
【0032】
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この実施形態では、1位及び2位の軸箱4を加振するときに1位及び2位の車輪3aとレールR1との間に車輪支持装置11を装着した場合を例に挙げて説明したが、この場合に限定するものではない。例えば、1位及び2位の軸箱4を加振する場合であって加振力が大きいときには、1位から4位までの車輪3aとレールR1との間に車輪支持装置11を装着したり、1位から8位までの全ての車輪3aとレールR1との間に車輪支持装置11を装着したりすることもできる。また、この実施形態では、車輪3aとレールR1との間の振動の伝達を遮断する場合を例に挙げて説明したが、これらの間を電気的に絶縁して試験する場合についてもこの発明を適用することができる。
【0033】
(2) この実施形態では、加振装置12によって軸箱4を加振する場合を例に挙げて説明したが、加振装置12によって車輪3a、車軸3b又は台車枠5などを加振して台車2を加振する場合についてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、車両Vの上下振動特性及び/又は車両Vの乗り心地を解析装置14によって評価する場合を例に挙げて説明したが、これら以外の車両Vの状態を評価する場合についてもこの発明を適用することができる。
【0034】
(3) この実施形態では、振動検出部13aが車体1の振動を検出する場合を例に挙げて説明したが、車体1以外に台車2などの振動を検出することもできる。また、この実施形態では、振動検出部13a,13bが上下方向の振動を検出する場合を例に挙げて説明したが、前後方向、左右方向の加速度、速度または変位などを検出することもできる。さらに、この実施形態では、振動検出部13aが車体1に、固有振動モード特性の同定に必要な個数だけ設置されている場合を例に挙げて説明したが、モード特性の同定が不要で乗り心地予測のみを目的とする場合、着目する点数が少なければ設置個数を減らしたり、1個のみとすることもできる。
【0035】
(4) この実施形態では、1軸(軸箱2個)ずつ加振装置12が加振する場合を例に挙げて説明したが、軸箱1個、1台車(軸箱4個)又は全軸箱(8個)を加振装置12によって加振することもできる。また、この実施形態では、軸箱4への加振指令信号としてバンドランダム波を与えているが、サイン波やスイープ波、実測した軸箱加速度など試験者が任意に設定した加振入力を与えることもできる。
【0036】
(5) この実施形態では、加振装置12中のリニアアクチュエータの下端を地面に固定する場合を例に挙げて説明したが、アクチュエータ全体を軸箱4に固定して可動部におもりを積載し、その反力を利用して加振する方法を採用することもできる。また、この実施形態では、加振装置12中のアクチュエータとして、リニアモータを利用する場合を例に挙げて説明したが、油圧アクチュエータなどを用いることもできる。さらに、この実施形態では、加振装置12が軸箱4を直線運動によって加振する場合を例に挙げて説明したが、直線運動による加振の他にアンバランスマスを回転させて加振する方法を利用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明の実施形態に係る車両加振システムによって加振される車両を概略的に示す正面図である。
【図2】この発明の実施形態に係る車両加振システムによって加振される車両を概略的に示す側面図である。
【図3】この発明の実施形態に係る車両加振システムによって加振される車両を概略的に示す平面図である。
【図4】この発明の実施形態に係る車体加振システムの加振処理及び伝達関数推定処理を車体振動測定点の1つに着目して説明するための図であり、(A)~(D)は1軸~4軸までを順次加振したときの伝達関数の推定手順を模式的に示す概略図である。
【図5】この発明の実施形態に係る走行時の乗り心地を予測する推定手法を示すブロック図である。
【図6】乗り心地推定手法による解析結果を一例として示すグラフである。
【符号の説明】
【0038】
1 車体
2 台車
3 輪軸
3a 車輪
3b 車軸
3c 踏面
4 軸箱
5 台車枠
10 車両加振システム
11 車輪支持装置
11a 弾性支持部
11b 移動規制部
12 加振装置
13 振動測定装置
14 解析装置
V 車両
R 軌道
1 レール
2 頭頂面
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5