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明細書 :鉄道車両用車体の防振方法及び鉄道車両用車体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4825020号 (P4825020)
公開番号 特開2007-230287 (P2007-230287A)
登録日 平成23年9月16日(2011.9.16)
発行日 平成23年11月30日(2011.11.30)
公開日 平成19年9月13日(2007.9.13)
発明の名称または考案の名称 鉄道車両用車体の防振方法及び鉄道車両用車体
国際特許分類 B61F   1/08        (2006.01)
B61D  17/10        (2006.01)
B61D  17/12        (2006.01)
F16F  15/02        (2006.01)
FI B61F 1/08
B61D 17/10
B61D 17/12
F16F 15/02 L
請求項の数または発明の数 5
全頁数 12
出願番号 特願2006-051893 (P2006-051893)
出願日 平成18年2月28日(2006.2.28)
審査請求日 平成20年4月4日(2008.4.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】瀧上 唯夫
【氏名】富岡 隆弘
個別代理人の代理人 【識別番号】100100413、【弁理士】、【氏名又は名称】渡部 温
審査官 【審査官】岸 智章
参考文献・文献 実開平03-015255(JP,U)
特開2004-017842(JP,A)
特開2002-213531(JP,A)
特開平04-368276(JP,A)
調査した分野 B61F 1/08
B61D 17/10 - 17/12
F16F 15/02
特許請求の範囲 【請求項1】
車両進行前後方向に延びる床構造体、該床構造体の左右側縁から上方に立ち上がる側構造体、及び、左右の側構造体上に掛け渡されている屋根構造体を有する鉄道車両用車体の防振方法であって、
複数枚の剛性板と粘弾性材料層とを貼り合せたサンドイッチ構造を有し、前記複数の剛性板相互の相対変位による前記粘弾性材料のせん断変形によりダンピング作用を起こす粘弾性ダンパ部材を、前記床構造体及び/又は屋根構造体に、該構造体が上下振動することによって伸び縮みする方向に沿って取り付け、
前記構造体の上下方向曲げ振動を減衰させ、
前記床構造体が、車両前後方向に間隔を置いて多数配列された、車両左右方向に延びる横はりを含み、
前記粘弾性ダンパ部材を、前後の横はり間に、取り外し可能な方法で取り付けることを特徴とする鉄道車両用車体の防振方法。
【請求項2】
車両進行前後方向に延びる床構造体、該床構造体の左右側縁から上方に立ち上がる側構造体、及び、左右の側構造体上に掛け渡されている屋根構造体を有する鉄道車両用車体の防振方法であって、
複数枚の剛性板と粘弾性材料層とを貼り合せたサンドイッチ構造を有し、前記複数の剛性板相互の相対変位による前記粘弾性材料のせん断変形によりダンピング作用を起こす粘弾性ダンパ部材を、前記床構造体及び/又は屋根構造体に、該構造体が上下振動することによって伸び縮みする方向に沿って取り付け、
前記構造体の上下方向曲げ振動を減衰させ、
前記屋根構造体が、車両前後方向に間隔を置いて多数配列された、車両左右方向に延びるたるきを含み、
前記粘弾性ダンパ部材を、前後のたるき間に、取り外し可能な方法で取り付けることを特徴とする鉄道車両用車体の防振方法。
【請求項3】
前記床構造体又は屋根構造体の左右方向側寄りの部分にそれぞれ前記粘弾性ダンパ部材を取り付け、車体の左右同相一次曲げ振動及び左右逆相一次曲げ振動の双方を減衰することを特徴とする請求項1又は2記載の鉄道車両用車体の防振方法。
【請求項4】
車両進行前後方向に延びる床構造体、該床構造体の左右側縁から上方に立ち上がる側構造体、及び、左右の側構造体上に掛け渡されている屋根構造体を有する鉄道車両用車体であって、
前記床構造体及び/又は屋根構造体に、複数枚の剛性板と粘弾性材料層とを貼り合せたサンドイッチ構造を有し、前記複数の剛性板相互の相対変位による前記粘弾性材料のせん断変形によりダンピング作用を起こす粘弾性ダンパ部材が、該構造体が上下振動することによって伸び縮みする方向に沿って取り付けられており、
前記構造体の上下方向曲げ振動を減衰し、
前記床構造体が、車両前後方向に間隔を置いて多数配列された、車両左右方向に延びる横はりを含み、
前記粘弾性ダンパ部材が、前後の横はり間に、取り外し可能な方法で取り付けられていることを特徴とする鉄道車両用車体。
【請求項5】
車両進行前後方向に延びる床構造体、該床構造体の左右側縁から上方に立ち上がる側構造体、及び、左右の側構造体上に掛け渡されている屋根構造体を有する鉄道車両用車体であって、
前記床構造体及び/又は屋根構造体に、複数枚の剛性板と粘弾性材料層とを貼り合せたサンドイッチ構造を有し、前記複数の剛性板相互の相対変位による前記粘弾性材料のせん断変形によりダンピング作用を起こす粘弾性ダンパ部材が、該構造体が上下振動することによって伸び縮みする方向に沿って取り付けられており、
前記構造体の上下方向曲げ振動を減衰し、
前記屋根構造体が、車両前後方向に間隔を置いて多数配列された、車両左右方向に延びるたるきを含み、
前記粘弾性ダンパ部材が、前後のたるき間に、取り外し可能な方法で取り付けられていることを特徴とする鉄道車両用車体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の車体の上下方向の振動を抑制する防振方法及びその防振方法を施した鉄道車両用車体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鉄道車両にはさらなる高速化が要求され、それに伴う車両の軽量化が進んでいる。このような軽量化、構造の簡素化により車体の剛性や減衰が低下すると、車体の上下方向の振動(上下曲げ振動)が問題になる。このような振動が発生する周波数帯域は、人間が最も敏感に振動を感じる帯域(4~8Hz)に近いため、乗り心地悪化の原因となっている。また、車体の上下曲げ振動が発生する際、巨視的な車体の曲げ中立軸は床面より高く、屋根面より低い位置にあるのが一般的である。したがって、床あるいは屋根位置においては、車体曲げ振動に伴い前後方向への伸縮を生じる。
【0003】
車体の振動を低減する方法として、車体の上下曲げ振動の腹の部分に粘弾性層を有する制振材を貼付し、粘弾性層のせん断変形によって振動エネルギを吸収する方法が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、この方法においては、粘弾性体(制振材)が平坦な形状であるため、取り付けるに当たって、車体に比較的大きな面積の平面が必要になる。また、制振材は接着剤等で直接貼付することを前提としており、一度貼付してしまうと取り外しが不可能であり、メンテナンス時や、期待通りの性能が発揮できなかった場合などに取付位置を変更することが事実上不可能である。
【0005】

【非特許文献1】「鉄道車両の車体曲げ振動の制振法」日本機械学界第74期通常講演会講演論文集(I)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、車体の改造をできるだけ少なくして上下曲げ振動を低減できる鉄道車両用車体の防振方法、及び、その防振方法を施した鉄道車両用車体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のベースとなる鉄道車両用車体の防振方法は、 車両進行前後方向に延びる床構造体、該床構造体の左右側縁から上方に立ち上がる側構造体、及び、左右の側構造体上に掛け渡されている屋根構造体を有する鉄道車両用車体の防振方法であって、 複数枚の剛性板と粘弾性材料層とを貼り合せたサンドイッチ構造を有し、前記複数の剛性板相互の相対変位による前記粘弾性材料のせん断変形によりダンピング作用を起こす粘弾性ダンパ部材を、前記床構造体及び/又は屋根構造体に、該構造体が上下振動することによって伸び縮みする方向に沿って取り付け、 前記構造体の上下方向曲げ振動を減衰することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、車両の床構造体などの上下曲げ振動が、粘弾性ダンパ部材の剛性板を介して粘弾性材料に伝わる。そして、該粘弾性材料がせん断変形することで、車両の振動エネルギーが吸収されるので、構造体の上下曲げ振動を抑制できる。このため、車体の振動が抑えられ、車両の乗り心地を向上させることができる。
【0009】
本発明においては、 前記床構造体が、車両前後方向に間隔を置いて多数配列された、車両左右方向に延びる横はりを含み、 前記粘弾性ダンパ部材が、前後の横はり間に、取り外し可能な方法で取り付けられていることが好ましい。
【0010】
この場合、粘弾性ダンパ部材を、床構造体の横はりに取り外し可能な方法で取り付けるので、既存の車両に設置する場合にも大きな改造が不要であり、既存の車体に簡単に取り付け・取り外しできる。また、粘弾性ダンパ部材を、複数の連結されたダンパユニットから構成すると、取付面が平面でない場合でも、ダンパユニットを取付面に合わせて取り付けることができる。さらに、取り付け・取り外しが容易であることにより、車体の最も制振対策が必要な部位を選んで簡単に設置できる。また、車体が改造された場合でも、制振効果を確認しながら適切な位置に取り付け直すことができる。
また、本発明においては、 前記屋根構造体が、車両前後方向に間隔を置いて多数配列された、車両左右方向に延びるたるきを含み、 前記粘弾性ダンパ部材が、前後のたるき間に、取り外し可能な方法で取り付けられていることも好ましい。
【0011】
本発明においては、 前記床構造体又は屋根構造体の左右方向側寄りの部分にそれぞれ前記粘弾性ダンパ部材を取り付け、車体の左右同相一次曲げ振動及び左右逆相一次曲げ振動の双方を減衰することが好ましい。
【0012】
ここで、左右同相一次曲げ振動及び左右逆相一次曲げ振動について説明する。
図9(A)は、左右同相一次曲げ振動を説明するための図であり、図9(B)は左右逆相一次曲げ振動を説明するための図である。
鉄道車両の車体では、図9(A)に示すように、左右の側はりが同位相(同方向)で曲げ変形を生じ、長手方向の中央部が振動の腹となる左右同相一次曲げ振動や、図9(B)に示すように、左右の側はりが逆位相(逆方向)で曲げ変形を生じる左右逆相一次曲げ振動が、乗り心地に対して支配的である場合が多いため、床構造体や屋根構造体の左右方向側寄りの部分にそれぞれ前記粘弾性ダンパ部材を取り付けると、車体の左右同相一次曲げ振動及び左右逆相一次曲げ振動の双方を減衰することが期待できる。
【0013】
本発明のベースとなる鉄道車両用車体は、 車両進行前後方向に延びる床構造体、該床構造体の左右側縁から上方に立ち上がる側構造体、及び、左右の側構造体上に掛け渡されている屋根構造体を有する鉄道車両用車体であって、 前記床構造体及び/又は屋根構造体に、複数枚の剛性板と粘弾性材料層とを貼り合せたサンドイッチ構造を有し、前記複数の剛性板相互の相対変位による前記粘弾性材料のせん断変形によりダンピング作用を起こす粘弾性ダンパ部材が、該構造体が上下振動することによって伸び縮みする方向に沿って取り付けられており、 前記構造体の上下方向曲げ振動を減衰することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、既存の車体に簡単に取り付け・取り外しが可能な、車体の上下曲げ振動を抑える防振方法を提供できる。また、そのような防振機能を備えることにより、振動が少なく乗り心地が改良された車体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る鉄道車両の車体の構造を説明する図であり、図1(A)は側面断面図、図1(B)は底面図、図1(C)は粘弾性ダンパ部材が取り付けられた部分を示す側面図である。
図2は、粘弾性ダンパ部材を構成するダンパユニットの構造を示す図であり、図2(A)は平面図、図2(B)は側面図、図2(C)は正面図である。
図3は、図1の車体の底面に粘弾性ダンパ部材が取り付けられた様子を示す斜視図である。なお、図3では、横はりの断面形状がH型としてあるが、図1などに示すようにコの字型の場合も多い。
【符号の説明】
【0016】
鉄道車両の車体1は、図1(A)に示すように、車両進行前後方向に延びる床構造体2と、床構造体2の左右側縁から上方に立ち上がる側構造体3と、両側構造体3上に掛け渡されている屋根構造体4と、を有する。床構造体2の上方(車室側)には、床板5が敷設されている。この例では、車体1の長さは19500mm、幅は2774mmである。
【0017】
床構造体2の下面には、図1(B)、図1(C)に示すように、車体1の左右方向に延びるチャンネル状の横はり6が、車体1の前後方向に並んで多数配列されている。さらに、同下面の、車体1の前方部及び後方部には、車体1の左右方向に延びる枕はり7が設けられている。この枕はり7は、枕バネ(空気バネ)を介して台車(図示されず)上に車体1が乗る部分である。
【0018】
この床構造体2の下面の前後方向中央には、2個の粘弾性ダンパ部材10が車体前後方向に渡って取り付けられている。
粘弾性ダンパ部材10は、複数(この例では8個)のダンパユニット11を車体前後方向に連結したものである。各ダンパユニット11は、図2に示すように、2枚の比較的長い剛性板(左右剛性板)13の間の両端に、左右剛性板13より短い剛性板(中剛性板)15を挟んで、これらの剛性板13、15を粘弾性材料17を介して貼り合せたサンドイッチ構造を有する。粘弾性材料17は各剛性板13、15に接着剤等によって貼り付けられている。
【0019】
左右剛性板13は、例えば鋼板で、長さ(車両前後方向長さ)が400mm、高さが50mm、幅(車両左右方向幅)が6mmである。中剛性板15は、長さが200mm、高さが50mm、幅が9mmである。粘弾性材料17は、粘弾性ゴムからなり、長さが150mm、高さが50mm、幅が2mmである。
【0020】
ダンパユニット11全体としては、左右の剛性板13の間の長手方向両端に、中剛性板15が、粘弾性材料17を介して貼り合わされている。中剛性板15は、左右剛性板13の両端から前方及び後方に50mmずつ突き出している。突き出した部分15aには、連結用の2つの貫通孔19が開けられている。この貫通孔19は、ダンパユニット11を車両前後方向に連結したり、粘弾性ダンパ部材10を車体1の床構造体2の横はり6に取り付けたりするためのものである。
【0021】
本発明の粘弾性ダンパ部材10は、図1(C)に示すように、ダンパユニット11を、車体前後方向に8個連結したものである。ダンパユニット11を車体前後方向に連結したり、粘弾性ダンパ部材10を横はり6に取り付けるには、一対のL字型ブラケット23を使用する。各L字型ブラケット23は、図3に示すように、連結片23aと固定片23bを有する。連結片23aには、両端付近にユニット連結用の2つの貫通孔が開けられており、固定片23bには、中央付近に横はり固定用の2つの貫通孔が開けられている。
【0022】
このL字型ブラケット23でダンパユニット11を連結する際は、隣接するダンパユニット11の、中剛性板15の突出部15aを突き合わせて、一対のL字型ブラケット23の連結片23aを、突き合わされた突出部15aの両側から当てて挟み、両連結片23aの貫通孔及び中剛性板15の貫通孔19にボルトを通してナットで固定する。そして、このL字型ブラケット23で粘弾性ダンパ部材10を横はり6に固定する際は、各ブラケット23の固定片23bを横はり6の下面にボルトとナットで固定する。
【0023】
このように複数のダンパユニット11が連結された粘弾性ダンパ部材10は、図1(A)や図1(B)に示すように、車体1の床構造体2の下面の、車体前後方向ほぼ中央の左右側に、床構造体2の横はり6間を掛け渡すように、横はり6に取り付けられる。
【0024】
この例では、図1(C)に示すように、8連の粘弾性ダンパ部材11のうちの、車両方向前端と後端のみを、床構造体2の横はり6に固定した。詳細には、粘弾性ダンパ部材10の前端のダンパユニット11Fから前方に突き出た中鋼板突出部15a(図2参照)をL字型ブラケット23-1で横はり6に固定し、後端のダンパユニット11Bから後方に突き出た中鋼板突出部15aをL字型ブラケット23-9で横はり6に固定した。
【0025】
このような構成においては、床構造体2が上下方向にしなるように振動すると、横はり6間に掛け渡された粘弾性ダンパ部材10は、前端と後端が横はり6に固定されているので、車体前後方向に伸び縮みしようとする。つまり、床構造体2の上下方向の撓みに応じて前後端のダンパユニット11F、11Bの中剛性板15が、互いの方向又は反対方向に引っ張られて相対変位する。なお、前後端のダンパユニット11F、11Bの中剛性板15は、粘弾性材料17を介して挟まれている左右の剛性板13を介して連結されているので、前後端のダンパユニット11F、11Bの中剛性板15の相対変位が各ダンパユニット11に分割される。各ダンパユニットにおいては、このような中剛性板15の相対変位により粘弾性材料17がせん断変形することで、床構造体2の振動エネルギーが散逸される。これにより、床構造体2の上下方向曲げ振動が減衰する。
【0026】
粘弾性ダンパ部材10は、床構造体2の左右方向側寄りの部分にそれぞれ取り付けられている。このため、車体1の左右同相一次曲げ振動及び左右逆相一次曲げ振動の双方を減衰することが期待される。
【0027】
さらに、粘弾性ダンパ部材10は複数のダンパユニット11で構成され、L字型ブラケット23を用いることによりボルトとナットで容易に連結できるとともに、横はり6に容易に固定できる。このため、車体1の最も制振対策が必要な部位に簡単に設置できる。また、車体1が改造された場合でも、制振効果を確認しながら適切な位置に付け替えることができる。
【0028】
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る鉄道車両の車体の構造を説明する図であり、図4(A)は側面断面図、図4(B)は底面図、図4(C)は粘弾性ダンパ部材が取り付けられた部分を示す側面図である。
この例では、8連の粘弾性ダンパ部材10が4ヶ所で車体1の床構造体2の横はり6に固定されている。詳細には、粘弾性ダンパ部材11の前端のダンパユニット11Fから前方に突き出た中鋼板突出部、並びに、後端のダンパユニット11Bから後方に突き出た中鋼板突出部がL字型ブラケット23-1、23-9で固定されており、これに加えて、さらに前方から2個目と3個目のダンパユニット連結部をL字型ブラケット23-3で横はり6に固定し、後方から2個目と3個目のダンパユニット連結部が、L字型ブラケット23-7で横はり6に固定されている。
【0029】
粘弾性ダンパ部材10は、この例のように、複数箇所で車体1に取り付けることができる。また、例えば、取付面が平面でない場合には、複数のダンパユニット11に分割して、各ダンパユニット11を取付面に合わせて取り付けることができる。
【0030】
次に、前述の粘弾性ダンパ部材を床構造体に取り付けた車体の加振試験の結果について説明する。
軽量ステンレス製車体(在来線通勤車両相当)を用いて定置加振試験を行い、加振力(N)・床上加速度(m/s)間の周波数応答特性を求めた。車体1の試験条件として、図1に示す条件(取付条件Aという。粘弾性ダンパ部材10の前後端の2ヶ所で横はり6に固定したもの)と、図4に示す条件(取付条件Bという。粘弾性ダンパ部材10を4ヶ所で横はり6に固定したもの)の2種類を設定した。
【0031】
上述の取付条件A、Bにおいて、車体床板5上の車体前後方向及び左右方向中央(車体中央)と、車体前後方向中央の車両左右方向における左側(車体側寄)の2ヶ所で、圧電式加速度センサを用いて上下の振動加速度を計測した。また、加振力の測定にはロードセルを使用した。
【0032】
図5は、車体中央における周波数応答特性を示すグラフである。グラフの横軸は周波数、縦軸はゲインを表す。また、実線は粘弾性ダンパ部材を搭載していないもの(未対策)、破線は取付条件A(粘弾性ダンパ部材を前後端の2ヶ所で車体に固定したもの)、一点鎖線は取付条件B(粘弾性ダンパ部材を4ヶ所で車体に固定したもの)を表す。
図6は、図5のグラフの13Hz付近のピークを拡大して示すグラフである。
【0033】
図5のグラフから、ピークは8Hz付近と13Hz付近に現れている。このうち8Hz付近に現れるピークは左右逆相一次曲げ振動を示すものであり、13Hz付近に現れるピークは左右同相一次曲げ振動を示すものである。床板の車体左右方向における中央では、左右逆相一次曲げ振動はあまり起こらないため、8Hz付近の揺れは小さい。一方、左右同相一次曲げ振動を示す13Hz付近のピークは相当大きくなる。
【0034】
図6を参照しつつ13Hz付近のピークにおける本発明の効果を見てみる。図6において、一番上の実線が未対策の車体、次の破線が取付条件A(粘弾性ダンパ部材を前後端の2ヶ所で車体に固定したもの)、一番下の一点鎖線が取付条件B(粘弾性ダンパ部材を4ヶ所で車体に固定したもの)を示す。
図6から、取付条件Aのピーク高さは未対策車体の約90%程度、取付条件Bのピーク高さは未対策車体の約78%程度であって、取付条件A、Bともに、未対策車体に比べてピーク高さが低くなっており、左右同相一次曲げ振動に対する本発明の防振作用が発揮されているといえる。
【0035】
さらに、取付条件B(粘弾性ダンパ部材を4ヶ所で車体に固定したもの)が取付条件A(粘弾性ダンパ部材を前後端の2ヶ所で車体に固定したもの)よりもピーク高さが低くなっている。
【0036】
図7は、車体中央側寄における周波数応答特性を示すグラフである。グラフの横軸は周波数、縦軸はゲインを表す。また、実線は粘弾性ダンパ部材を搭載していないもの(未対策車体、上述の粘弾性部材と同等の寸法の鋼板を車体の床構造体の下に取り付けたもの)、破線は取付条件A(粘弾性ダンパ部材を前後端の2ヶ所で車体に固定したもの)、一点鎖線は取付条件B(粘弾性ダンパ部材を4ヶ所で車体に固定したもの)を表す。
図8は、図7のグラフの各ピーク付近を拡大して示すものであり、図8(A)は13Hz付近のピーク、図8(B)は8Hz付近のピークを示す。
【0037】
このグラフにおいても、ピークは8Hz付近と13Hz付近に現れている。このうち8Hz付近に現れる左右逆相一次曲げ振動を示すピークは、図5のグラフよりも大きくなっており、車体側寄では左右逆相一次曲げ振動による揺れが大きく現れる。また、左右同相一次曲げ振動を示す13Hz付近のピークは、図5のグラフと同程度である。
【0038】
図8(A)を参照しつつ13Hz付近のピークにおける本発明の効果を見てみる。図8(A)において、一番上の実線が未対策の車体、次の破線が取付条件A(粘弾性ダンパ部材を前後端の2ヶ所で車体に固定したもの)、一番下の一点鎖線が取付条件B(粘弾性ダンパ部材を4ヶ所で車体に固定したもの)を示す。
図8(A)から、取付条件Aのピーク高さは未対策車体の約90%程度、取付条件Bのピーク高さは未対策車体の約77%程度であって、取付条件A、Bともに、未対策車体に比べてピーク高さが低くなっており、左右同相一次曲げ振動に対する本発明の防振作用が発揮されているといえる。
【0039】
さらに、取付条件B(粘弾性ダンパ部材を4ヶ所で車体に固定したもの)が取付条件A(粘弾性ダンパ部材を前後端の2ヶ所で車体に固定したもの)よりもピーク高さが低くなっている。
【0040】
図8(B)を参照しつつ8Hz付近のピークにおける本発明の効果を見てみる。図8(B)において、ピーク頂点で重なっている実線と一点鎖線が未対策の車体と取付条件B(粘弾性ダンパ部材を4ヶ所で車体に固定したもの)を示し、次の破線が取付条件A(粘弾性ダンパ部材を前後端の2ヶ所で車体に固定したもの)を示す。
図8(B)に示すように、取付条件Bのピーク高さは未対策車体とほとんど同じであるが、取付条件Aのピーク高さは未対策車体の約72%程度であり、左右逆相一次曲げ振動に対する本発明の作用が発揮されているといえる。
【0041】
以上、床構造体2に粘弾性ダンパ部材10を取り付けた場合について説明したが、屋根構造体4のたるきに粘弾性ダンパ部材10を取り付けた場合についても同様の効果が期待できる。
また、以上の説明においては、粘弾性ダンパを縦(垂直)に取り付ける場合について説明したが、取付スペースの都合、低減したい振動モードの形状によっては、横(水平)に取付けても良い。
【0042】
また、以上の説明では左右同相一次曲げと左右逆相一次曲げの制振を行う例について述べたが、横はりもしくはたるき間隔が前後方向に拡大・縮小する形状であれば、この振動モードに限らず、他の振動モードにおいても低減が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る鉄道車両の車体の構造を説明する図であり、図1(A)は側面断面図、図1(B)は底面図、図1(C)は粘弾性ダンパ部材が取り付けられた部分を示す側面図である。
【図2】粘弾性ダンパ部材を構成するダンパユニットの構造を示す図であり、図2(A)は平面図、図2(B)は側面図、図2(C)は正面図である。
【図3】図1の車体の底面に粘弾性ダンパ部材が取り付けられた様子を示す斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る鉄道車両の車体の構造を説明する図であり、図4(A)は側面断面図、図4(B)は底面図、図4(C)は粘弾性ダンパ部材が取り付けられた部分を示す側面図である。
【図5】車体中央における周波数応答特性を示すグラフである。
【図6】図5のグラフの13Hz付近のピークを拡大して示すグラフである。
【図7】車体側寄における周波数応答特性を示すグラフである。
【図8】図7のグラフの各ピーク付近を拡大して示すものであり、図8(A)は13Hz付近のピーク、図8(B)は8Hz付近のピークを示す。
【図9】図9(A)は、左右同相一次曲げ振動を説明するための図であり、図9(B)は左右逆相一次曲げ振動を説明するための図である。
【0044】
1 車体 2 床構造体
3 側構造体 4 屋根構造体
5 床板 6 横はり
7 枕はり
10 粘弾性ダンパ部材 11 ダンパユニット
13 剛性板(左右剛性板) 15 短い剛性板(中剛性板)
17 粘弾性材料 19 貫通孔
23 L字型ブラケット
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
2
【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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