TOP > 国内特許検索 > レール電食防止装置 > 明細書

明細書 :レール電食防止装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4757674号 (P4757674)
公開番号 特開2007-247318 (P2007-247318A)
登録日 平成23年6月10日(2011.6.10)
発行日 平成23年8月24日(2011.8.24)
公開日 平成19年9月27日(2007.9.27)
発明の名称または考案の名称 レール電食防止装置
国際特許分類 E01B  19/00        (2006.01)
C23F  13/00        (2006.01)
FI E01B 19/00 Z
C23F 13/00 A
C23F 13/00 Z
請求項の数または発明の数 4
全頁数 8
出願番号 特願2006-074244 (P2006-074244)
出願日 平成18年3月17日(2006.3.17)
審査請求日 平成20年7月15日(2008.7.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】長谷 伸一
【氏名】森本 大観
【氏名】伊東 利勝
個別代理人の代理人 【識別番号】100064908、【弁理士】、【氏名又は名称】志賀 正武
【識別番号】100089037、【弁理士】、【氏名又は名称】渡邊 隆
審査官 【審査官】藤澤 和浩
参考文献・文献 特開昭52-116510(JP,A)
特開平08-283968(JP,A)
特開平06-002172(JP,A)
調査した分野 E01B 19/00
C23F 13/00
特許請求の範囲 【請求項1】
直流き電回路におけるレールの電食を抑制するレール電食防止装置であって、
レールの所定の領域を分離絶縁した分離レールを、変電所に接続されたレールに対して接続する帰線自動開閉器と、
該帰線自動開閉器に並列に接続されたスイッチ手段と、
該スイッチ手段をオン/オフ制御する制御部と
を有し、
前記制御部が前記分離レール上の電車の有無を検出し、分離レール上に電車が有ることを検出した場合、スイッチ手段をオン状態とし、分離レール上に電車が無いことを検出した場合、スイッチ手段をオフ状態とする
とを特徴とするレール電食防止装置。
【請求項2】
前記分離レールとレールとの分離領域間の電位差を測定する検出器が設けられており、 前記制御部が該検出器の検出する電位が予め設定されている閾値を超えたことを検出した場合、分離レール上に電車がいることを検出することを特徴とする請求項記載のレール電食防止装置。
【請求項3】
前記分離レールが、予め設定された電流値を超える漏れ電流が流れる領域に設定されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のレール電食防止装置。
【請求項4】
前記分離レールに対し、排流装置を設けることを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載のレール電食防止装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電車のレールの電食を防止するレール電食防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
直流き電方式においては、一般にレールを帰回路として用いているため、負荷電流とレールの抵抗及び漏れ抵抗により、レール対地電圧が発生する。
例えば、図4(a)に示すように、変電所からの電流がき電線及び電車を介して、レールに流れ込み、変電所へ戻る電流経路となる。
そして、図4(b)に示すように、レールの単位長さ当たりの抵抗,き電線の単位長さ辺りの抵抗各々に対し、変電所及び電車間の距離を乗算して、発電所と電車との間における、き電線の抵抗値及びレールの抵抗値から、図5(a)に示す大地に対する電位差が求められる。
【0003】
また、漏れ電流は、図5(b)に示すように、レールの単位長さ辺りの抵抗から、各単位長さの位置(例えば、まくらぎの位置)ごとに、レールからバラストを介して、各漏れ抵抗による大地への漏れ電流として求められる。
上述したように、変電所から離れた地点においては、大地に対する電位差が高くなり、漏れ電流も増加することが考えられる。
特に、漏水などで全体的に湿っているようなトンネル区間などにおいては、レール対地電圧により大地への漏れ電流が発生し易く、レールの電食現象が他の場所に比較して多く発生し、レールの品質をより短期間に低下させることとなる。
【0004】
このため、例えば、上述したような電食を防止する方法として、電車の車庫や交検庫などの建家基礎の電食防止に関し、電車の車庫や交検庫などの建家の付近のレールに、庫内側レールと庫外側レールとを電気的に分離するレール絶縁物を設け、庫外側レールの高い対地電位が庫内側レール及び建家などの防食対象物に波及することによる電食を抑制し、防食対象物の電食を防止する方法がある(例えば、特許文献1参照)。

【特許文献1】特開平07-173652号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に示す電食防止法においては、図6に示すように、帰線自動開閉器が設けられ、レールが分離絶縁されているため、電車が存在しない限り分離された範囲の電位上昇がなく、その範囲の電食を抑制することができる。
しかしながら、上記特許文献1に示す電食防止法においては、帰線自動開閉器であるダイオードが逆方向であるため、電車がブレーキを駆けた場合に発生する回生電流を流すことができず、回生ブレーキを使用することができない。
【0006】
すなわち、上記従来例においては、分離されたレール領域において回生ブレーキを使用する場合、図7に示すように、回生電流が流れないために分離された領域の電位が上昇し、分離された絶縁部分が高電圧(例えば、数mmの間隔に1500V~1800V程度)にさらされ、絶縁破壊による故障を起こしてしまうことになる。
したがって、特許文献1にある電食防止方法は、車庫などの限られた場所にて限定的に用いられる構成であり、トンネル内などの一般に電車が走行する場所に採用することが困難である。
また、従来の電食防止方法にあっては、レールを大地から絶縁することが考えられるが、完全に絶縁することが困難であり、漏れ電流を無くすことはできない。
【0007】
さらに、従来の電食防止方法にあっては、図8に示すように、排流装置(電気防食用選択排流装置:レールの電圧を大地に対して「0」V以下に制御する電源装置)を設け、強制的にレールから電流を流し出し、レールの電圧を大地電圧近傍に制御することも行われている。
しかしながら、上記方法においては、電流を流し出す電源が必要であり、電食の抑制に対して効果を得るためには大電流(例えば、数百A)を流す必要があり、この電流が迷走電流となり近傍のガス管などの鉄道に関係ない金属施設に流れ込み、悪影響(ガス管の電食)を与えることとなる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、回生ブレーキを利用することができ、かつ帰線自動開閉器によるレールの電位の上昇を抑制してレールの電食を抑制する簡易な電食防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のレール電食防止装置は、直流き電回路におけるレールの電食を抑制するレール電食防止装置であって、レールの所定の領域を分離絶縁した分離レールを、変電所に接続されたレールに対して接続する帰線自動開閉器と、該帰線自動開閉器に並列に接続されたスイッチ手段と、該スイッチ手段をオン/オフ制御する制御部とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明のレール電食防止装置は、前記制御部が前記分離レール上の電車の有無を検出し、分離レール上に電車が有ることを検出した場合、スイッチ手段をオン状態とし、分離レール上に電車が無いことを検出した場合、スイッチ手段をオフ状態とすることを特徴とする。
【0011】
本発明のレール電食防止装置は、前記分離レールとレールとの分離領域間の電位差を測定する検出器が設けられており、前記制御部が該検出器の検出する電位が予め設定されている閾値を超えたことを検出した場合、分離レール上に電車がいることを検出することを特徴とする。
【0012】
本発明のレール電食防止装置は、前記分離レールが、予め設定された電流値を超える漏れ電流が流れる領域に設定されることを特徴とする。
本発明のレール電食防止装置は、前記分離レールに対し、排流装置を設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、本線のレールから分離絶縁した分離レール上の電車の有無により、スイッチ手段をオンオフさせるようにしたため、帰線自動開閉器(ダイオード)に対して逆方向の電流を流せるようになり、回生ブレーキを使用した際に流れる回生電流を、変電所に対して流すことができ、帰線自動開閉器によるレールの分離絶縁を本線のレールに対しても用いることを可能とする。
また、本発明によれば、排流装置を分離レールの領域にのみ接続しているため、より分離レールの電位の上昇を抑制することができ、また、従来の様にレール全体の電位を引き下げるような大電流の電源が必要でなくなり、従来に比較して迷走電流も大幅に低減され、近傍の鉄道施設以外の金属に対して悪影響を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態による直流き電方式におけるレール電食防止装置を図面を参照して説明する。図1は同実施形態の構成例を示すブロック図である。
この図において、本線のレールは、変電所に接続されたレール部分である本レールから、所定の間隙(例えば、数mm程度)である分離絶縁部10により、分離して絶縁されたレール領域の分離レールとから構成されている。
本実施形態において、上記分離レールとして構成されるのは、トンネル区間,踏切区間や、湿地帯区間などの漏水が多く、まくらぎなどが湿っている(水分が多い状態となり)などして、レールから大地に対して漏れ電流が流れ易い領域(レールと大地との間の漏れ抵抗が低い領域)に配設されたレールである。このため、分離レールの距離としては、例えば、数百m程度から数Km(最大でほぼ2~3Km程度)の距離に限定される。
【0015】
帰線自動開閉器(ダイオード)11は、分離絶縁部10に対して並列に設けられており、本レールと分離レールとを接続している。この帰線自動開閉器11は、分離レールから本レールへの方向が順方向となるよう配設されており、分離レールから本レールに対して順方向電流が流れ、一方、本レールから分離レールへの方向が逆方向となっており、本レールから分離レールに対して電流が流れないよう構成されている。
【0016】
すなわち、この帰線自動開閉器11は、分離レールの電位が本レールより高い場合、分離レールから本レールに対して順方向の電流を流し、本レールの電位が分離レールより高い場合、本レールから分離レールに対して電流を流さない。
ここで、電車がき電線とレールとの間に介挿された負荷として存在し、電車,き電線,レール(帰線自動開閉器11を介して接続された本レールと分離レール)及び変電所からなる「直流き電回路」が構成されている。
【0017】
分離レール上に電車が存在しない場合、スイッチ部12がオフ状態となっており、分離絶縁部10近傍の本レールの電位が大地に比較して上昇したとしても、上述したように逆方向電圧となり、本レールから分離レールに対して電流が流れ込まず、分離レールの電位の上昇はない。このため、本レールの電位が、本レール上に電車が存在する場合に上昇したとしても、分離レールの電位は変動せず、大地の電位に近い値となっており、分離レールからの大地に対する漏れ電流を抑制することができる。
【0018】
スイッチ部12は、上記帰線自動開閉器11と並列に、分離絶縁部10の部分に設けられており、オン状態にて本レールと分離レールとを電気的に接続し、オフ状態にて本レールと分離レールとを絶縁状態(オープン状態)とする。
検出部13は、帰線自動開閉器11と並列に接続されており、分離絶縁部10における本レールと分離レールとの電位差を検出し、検出した検出電圧を制御部14に対して出力する。
【0019】
制御部14は、検出部13から入力される検出電圧が予め設定された閾値電圧を超えているか否か(すなわち、閾値電圧を超えて、分離レールの電位が本レールの電位に対して上昇したか否か)の検出を行い、検出電圧が閾値電圧を超えている(すなわち、閾値電圧を超えて、分離レールの電位が本レールの電位に対して上昇した)ことを検出した場合、スイッチ部12をオン状態とし、一方、検出電圧が閾値電圧以下である(すなわち、閾値電圧を超えて、分離レールの電位が本レールの電位に対して上昇していない)ことを検出した場合、スイッチ部12をオフ状態とする。
ここで、閾値電圧としては、帰線自動開閉器11の順方向電圧の電圧値を超えた値に設定されており、例えば、数十V程度に設定されている。
【0020】
図2に示すように、分離レール上に電車が存在する場合、電車に流れる負荷電流により分離レールの電位が上昇し、分離レールの電位が本レールの電位に対して高くなり、順方向電流が帰線自動開閉器11を介して分離レールから本レールに対して順方向電流が流れる。
また、帰線自動開閉器11の両端、すなわち絶縁分離部10における分離レールと本レールとの電位差が上昇し、本レールに対して分離レールの電位が閾値電圧を超えて高くなり、制御部14は、検出部13の出力する検出電圧が閾値電圧を超えていることを検出した場合、すなわち、分離レール上に電車が存在していることを検出した場合、スイッチ部12をオン状態とする。
【0021】
これにより、分離レールと本レールとが短絡状態となり、電車が回生ブレーキを用いたとしても、回生電流が変電所に流れる電流経路が形成されるとともに、分離レールと本レールとの電位がほぼ同電位に近い値となる。。
また、制御部14は、一端、スイッチ部12をオン状態とした後、一定期間の間に渡り、スイッチ部12のオン状態を継続させる。
【0022】
すなわち、スイッチ部12がオン状態となると、検出部13が出力する上記検出電圧が閾値電圧以下となるが、電車は分離レール上に存在するため、電車が分離レール上にあるか否かを検出することができなくなるからである。
したがって、上記一定期間は、電車が分離レール上に侵入してから、本レール上に移動する迄の時間を、予めその分離レールを通過する複数の各電車の走行速度から計算し、計算された複数通過時間から最大の時間を選択して設定する。
そして、制御部14は、電車が分離レールに侵入したことを検出部13の検出電圧にて検出してから、例えばタイマにより時刻を測定して、設定された一定期間が経過したことを検出すると、すなわち、分離レール上に電車が存在しないと判定して、スイッチ部12をオフ状態とする。
【0023】
また、図3に示すように、分離レールに対して、分離レールに防食電流を強制的に流し、分離レールの電位を大地の電位に対して、0V以下の一定値(例えば、0V~-0.5Vの範囲)にする排流器15を設けた構成としても良い。上記排流器15は制御部14により、駆動または非駆動が制御される。
これにより、電食を抑制するための防食電流を、限られた対象区間(分離レールの領域)のみに限定することができ、最小限の電流により、本レールから分離されて、順方向電圧分の電位に保持されることが無くなり、分離レールの電位を常に上記一定値とすることが可能となり、対象区間の電位の上昇を抑制することができる。
【0024】
また、分離レール電位が大地の電位を超えているか否かを検出する、図示しない第2の検出部が設けられている。この第2の検出部は、分離レールと大地の電位との電位差を第2の検出電圧として、制御部14に対して出力する。
ここで、制御部14は、上記第2の検出部から入力される第2の検出電圧により、分離レールの電位が大地の電位を超えたことを検出した場合、排流器15を動作させ、一方、分離レールの電位が大地の電位に対して閾値(例えば、-0.5V)以下となったことを検出した場合、排流器15の操作を停止する。
【0025】
上述した処理により、排流器15は、常に分離レールの電位を、大地の電位に対して一定値に制御することができ、漏れ電流が本レールに比較して大きい分離レールの電食を抑制することができる。
また、防食電流の電流値が従来例に比較して大幅に低下させることができ、鉄道施設以外の近傍に配置された金属施設に対しての悪影響を大幅に低下させることができ、かつ防食電流を流すための電流源も従来例に比較して小さな容量で構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態によるレール電食防止装置の構成例を示す概念図である。
【図2】回生ブレーキを駆けた際に、回生電流が流れる電流経路が形成される状態を説明する概念図である。
【図3】分離レールに対して排流装置を設けて、分離レールの電位を大地の電位に近づける構成を示す概念図である。
【図4】従来のき電回路におけるレールの電位変化を説明する概念図である。
【図5】従来のき電回路におけるレールからの大地に対する漏れ電流を説明する概念図である。
【図6】従来例におけるレールの分離について説明する概念図である。
【図7】従来例におけるレールの分離によって回生電流の流れず、回生ブレーキが使用できないことを説明する概念図である。
【図8】従来例におけるレールに排流装置を設けた場合の問題を説明するための概念図である。
【符号の説明】
【0027】
10…分離絶縁部
11…帰線自動開閉器(ダイオード)
12…スイッチ部
13…検出部
14…制御部
15…排流器
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7