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明細書 :ナノ粒子化合物、この化合物を用いる金属イオンの検出方法及び除去方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4904490号 (P4904490)
公開番号 特開2007-238558 (P2007-238558A)
登録日 平成24年1月20日(2012.1.20)
発行日 平成24年3月28日(2012.3.28)
公開日 平成19年9月20日(2007.9.20)
発明の名称または考案の名称 ナノ粒子化合物、この化合物を用いる金属イオンの検出方法及び除去方法
国際特許分類 C07F   3/06        (2006.01)
G01N  31/22        (2006.01)
G01N  31/00        (2006.01)
G01N  21/78        (2006.01)
C07F   3/08        (2006.01)
C09K  11/54        (2006.01)
C09K  11/56        (2006.01)
C09K  11/08        (2006.01)
FI C07F 3/06 CSP
G01N 31/22 122
G01N 31/00 U
G01N 21/78 Z
C07F 3/08
C09K 11/54
C09K 11/56
C09K 11/08 G
請求項の数または発明の数 9
全頁数 14
出願番号 特願2006-066443 (P2006-066443)
出願日 平成18年3月10日(2006.3.10)
審査請求日 平成21年3月2日(2009.3.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
発明者または考案者 【氏名】小西 克明
個別代理人の代理人 【識別番号】110000109、【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
審査官 【審査官】水島 英一郎
参考文献・文献 特表2002-536285(JP,A)
特開2002-121549(JP,A)
国際公開第2000/17656(WO,A1)
特開2002-38145(JP,A)
特開2005-98760(JP,A)
特開平10-19786(JP,A)
調査した分野 C09K 11/08
C09K 11/54
C09K 11/56
C07F 3/06
C07F 3/08
G01N 21/78
G01N 31/00
G01N 31/22
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
JSTPlus(JDreamII)
JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
一般式(1):M10412で表される化合物。
[式中、MはCdまたはZnであり、
Xは、SまたはSeであり、
Rは、下記R1~R4で示されるいずれの基である。R1~R4中、n1~n4は、独立に、1~10の整数である。]
【化1】
JP0004904490B2_000010t.gif

【請求項2】
1~n3は3であり、n4は6である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
被験水溶液に請求項1または2に記載の化合物を共存させ、水溶液の色の変化から、被験水溶液に含まれる金属イオンの有無及び/又は濃度を検出することを含む、金属イオンの検出方法。
【請求項4】
金属イオンがHg2+, Pb2+, Ag+, またはCu2+である請求項3に記載の検出方法。
【請求項5】
金属イオンの分析が、金属イオンの定量である請求項3または4に記載の検出方法。
【請求項6】
水溶液の色の変化を350~450nmの波長範囲の吸光量を測定することで検出する請求項3~5のいずれか1項に記載の検出方法。
【請求項7】
水溶液の色の変化を400nmにおける吸光量を測定することで検出する請求項3~5のいずれか1項に記載の検出方法。
【請求項8】
水溶液に含まれる金属イオンを分離する方法であって、前記水溶液に請求項1または2に記載の化合物を混合し、水溶液に形成した前記化合物と金属イオンとの錯体を、前記水溶液から分離することを含む、前記方法。
【請求項9】
錯体の水溶液からの分離を溶媒抽出により行う請求項8に記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ粒子化合物、並びに、このナノ粒子化合物を用いる金属イオンの検出方法及び除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水銀、鉛などの重金属イオンは蛍光灯や自動車バッテリーなど日常生活において多量に使用される反面、少量でも人体や生態系に大きな影響を及ぼすことから、廃棄物からの流出による環境中での動向を調査するために、簡便、迅速かつ感度よく検出できるシステムの開発が必須となってきている。既往の技術では、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析など高価な分析装置が用いられるが、脱塩など煩雑な前処理が必要であり、多検体の迅速分析に適さないなどの問題も多く、その観点から、電子吸収、蛍光などの汎用の安価なスペクトル機器や人間の色覚を利用した簡便な化学センサーの開発が強く求められている。
【0003】
本発明者らは、上記簡便な化学センサーの候補として、ナノ粒子化合物に注目した。ナノ粒子化合物としては、発光特性を有するナノ粒子が知られている(特表2002-536285号公報、特許文献1)。このナノ粒子は、例えば、CdSナノ粒子のような半導体粒子とデンドリマーとのコンポジットである。CdSナノ粒子は、蛍光シグナルを発することができ、イムノアッセイ、ELISAアッセイ、DNAのスクリーニング等に利用できることが記載されている。

【特許文献1】特表2002-536285号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記CdSナノ粒子は、長波長発光の波長が500nm超であることが記載され、可視光領域での検出が可能である。しかし、本発明が目的とする金属イオン、特に、Hg2+, Pb2+等の有害重金属イオンとの相互作用については、特許文献1には記載がなく、CdSナノ粒子をこれら重金属イオンの分析に用いることも記載がない。
【0005】
本発明の目的は、人間の視覚による検知が可能な色変化や簡便なスペクトル分光測定により、特別な前処理なしに有害重金属イオンを迅速に検出できる手段を提供することにある。
【0006】
より具体的には、金属イオンと相互作用をして、可視光領域における吸収特性が変化する物質(化合物)、そのような化合物を利用した金属イオンの検出方法及び分離方法を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鍵物質として独特な光特性を示す硫化亜鉛、硫化カドミウムのナノ微粒子に着目した。これらの微粒子は本質的に溶媒に不溶であるが、表面にトリエチレングリコール鎖などを導入することでクロロホルム、ベンゼン、メタノール、アセトニトリルなどの有機溶媒に加え、水中にも均一に分散させることができた。さらに、水溶液、緩衝水溶液、塩水溶液、アセトニトリル中でHg2+, Pb2+, Ag+, Cu2+, Zn2+, Cd2+, Mn2+, Fe3+, Mn2+, Ni2+, Co2+などの金属イオンと混合し、それにともなう応答性を電子吸収スペクトル、色の変化から評価した。
【0008】
その結果、当該ナノ粒子の溶液は単独では無色透明で400 nm以上(可視部)には吸収を持たない。しかし、Hg2+, Pb2+, Ag+, Cu2+に特異的に応答して、可視領域に吸収帯が誘起され、Hg2+, Pb2+, Cu2+に対しては薄茶色~黄色、Ag+に対しては赤色に着色する。肉眼では10 ppm程度まで、吸収スペクトルでは0.5 ppm程度まで検知可能であった。他の金属イオンに関しては、Fe3+, Co2+など一部のものに対して、紫外領域でのスペクトル変化が観察されたものの、可視領域に大きな変化はなく、上記の重金属イオンに対して選択的に可視部での応答能を示す。また、塩化合物(塩化ナトリウム、緩衝塩)の存在下、有機溶媒(アセトニトリル)中でも同等の応答活性が観察され、脱塩などの前処理も特に必要とされない。また、Hg2+と同族元素で化学的性質が類似しているため、従来のキレート型配位子を用いた比色・蛍光センサーではHg2+と識別困難なCd2+ Zn2+では全くスペクトル変化(溶液色変化)を示さず、Hg2+に対して選択的な応答性を示すことが明らかになった。このような知見に基づいて本発明は完成された。
【0009】
[1]一般式(1):M10412で表される化合物。
[式中、MはCdまたはZnであり、
Xは、SまたはSeであり、
Rは、下記R1~R4で示されるいずれの基である。R1~R4中、n1~n4は、独立に、1~10の整数である。]
【化1】
JP0004904490B2_000002t.gif
[2]n1~n3は3であり、n4は6である[1]に記載の化合物。
[3]被験水溶液に[1]または[2]に記載の化合物を共存させ、水溶液の色の変化から、被験水溶液に含まれる金属イオンの有無及び/又は濃度を検出することを含む、金属イオンの検出方法。
[4]金属イオンがHg2+, Pb2+, Ag+, またはCu2+である[3]に記載の検出方法。
[5]金属イオンの分析が、金属イオンの定量である[3]または[4]に記載の検出方法。
[6]水溶液の色の変化を350~450nmの波長範囲の吸光量を測定することで検出する[3]~[5]のいずれかに記載の検出方法。
[7]水溶液の色の変化を400nmにおける吸光量を測定することで検出する[3]~[5]のいずれか1項に記載の検出方法。
[8]水溶液に含まれる金属イオンを分離する方法であって、前記水溶液に[1]または[2]に記載の化合物を混合し、水溶液に形成した前記化合物と金属イオンとの錯体を、前記水溶液から分離することを含む、前記方法。
[9]錯体の水溶液からの分離を溶媒抽出により行う[8]に記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、Hg2+, Pb2+, Ag+, Cu2+のような金属イオンを選択的に試験液の色の変化により検出、定量することができる。さらに、本発明によれば、Hg2+, Pb2+, Ag+, Cu2+のような金属イオンを選択的に分離することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、一般式(1):M10412で表される化合物に関する。
式中、MはCdまたはZnである。
Xは、SまたはSeである。
Rは、下記R1~R4で示されるいずれの基であり、R1~R4中、n1~n4は、独立に、1~10の整数である。
【0012】
【化2】
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【0013】
一般式(1)で表される化合物は、R1~R4の末端(左端)がチオール(SH)である化合物を、市販の原料から常法により合成し、得られたチオール化合物とCdS、CdSe、ZnS、またはZnSeのフェニルチオ化合物と反応させることで合成できる。フェニルチオ化合物は、例えば、Cd104(SPh)12、Cd10Se4(SPh)12、Zn104(SPh)12、およびZn10Se4(SPh)12を挙げることができる。R1~R4中、n1~n4は、独立に、1~10の整数である。n1~n3は、好ましくは、独立に、2または3であり、より好ましくは3である。n4は、好ましくは、4~10、より好ましくは5~7の整数であり、さらに好ましくは6である。
【0014】
【化3】
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【0015】
上記反応スキームはRがR1(n1=3)の例である。この反応スキームを例に本発明の化合物の合成方法を具体的に説明する。化合物2にシュウ酸クロリドを反応させて、酸クロリドとし、次いで2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]エチルアミンを反応させて化合物3を得る。化合物2は、R. S. Senger, V. N. Nemykin, P. Basu, New J. Chem., 2003, 27, 1115-1123に記載の方法に従って合成できる。2-[2-(2-メトキシエトキシ) エトキシ]エチルアミンは、P. Pengo, S. Polizzi, M. Battagliarin, L. Pasquato, Paolo Scrimin, J. Mater. Chem., 2003, 13, 2471-2478に記載の方法に従って合成できる。
【0016】
化合物3は、NaBH4と反応させて化合物4を得る。有機溶媒、例えば、アセトニトリルに懸濁させたCd10S4(SPh)12に、化合物4を添加することで、目的物質であるCd10S4(SC6H4CONH(CH2CH2O)3CH3)12 (1)が得られる。
【0017】
CdSクラスターCd10S4(SPh)12の合成ルート(反応式)は以下のとおりである。
1) Cd(NO3)2 + PhSH + NMe4Cl → [Cd4(SPh)10](NMe4)2
2) [Cd4(SPh)10](NMe4)2 + S → [Cd10S4(SPh)16](NMe4) 4
3) [Cd10S4(SPh)16](NMe4) 4 → (加熱)→[Cd10S4(SPh)12]
【0018】
Zn10S4(SPh)12は、上記反応において硝酸カドミウムCd(NO3)2に代えて硝酸亜鉛を用いることで合成できる。
【0019】
CdSeクラスターCd10Se4(SPh)12の合成ルート(反応式)は以下のとおりである。
1) Cd(NO3)2 + PhSH + NMe4Cl → [Cd4(SPh)10](NMe4)2
2) [Cd4(SPh)10](NMe4)2 + Se → [Cd10Se4(SPh)16](NMe4) 4
3) [Cd10Se4(SPh)16](NMe4) 4 → (加熱)→[Cd10Se4(SPh)12]
【0020】
上記合成ルートにおいて、1)2)は、I. G. Dance, A. Choy, M. L. Scudder, J. Am. Chem. Soc.1984, 106, 6285に記載の方法に従って実施できる。3)はCdSクラスターについては、W. E. Farneth, N. Herron, Y. Wang, Chem. Mater.1992, 4, 916に記載の熱分解法を用いて合成でき、CdSeクラスターも同様に合成できる。
【0021】
本発明の化合物は、クラスター構造を有していると考えられ、その構造を以下に示す。
【化4】
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【0022】
上記クラスター構造を有する化合物は、コロイド状の硫化カドミウムナノ粒子と類似した半導体的な電子構造をもち、それに由来する独特な吸収・発光特性を有する。尚、コロイド状の硫化カドミウムナノ粒子は、コロイド状のナノ粒子の分子モデルとして注目されており、本発明の上記クラスター構造を有する化合物も、ナノ粒子に分類できる。
【0023】
本発明は、上記本発明の化合物を、被験水溶液に共存させ、水溶液の色の変化から、被験水溶液に含まれる金属イオンの有無及び/又は濃度を検出することを含む、金属イオンの検出方法に関する。
【0024】
被験水溶液は、例えば、川、湖、海などの環境水であることができる。本発明の方法は、多量の塩が共存しても、分析を妨げないことから、海水の分析には特に有効である。また、土壌、汚泥などは抽出、ろ過をして得た水溶液を被験水溶液とすることができる。
【0025】
被験水溶液における本発明の化合物の濃度は、本発明の化合物と被験水溶液中の金属イオンが形成した錯体の吸収を肉眼で判別し、または分光光度計で測定することができる程度に前記錯体が成形するように、調整することが適当である。錯体の種類によっても違いはあるが、分光光度計であれば、5.0 x 10-6 mol/Lあれば十分検出可能であり、肉眼では、その1オーダーくらい上の10-5~10-4 mol/Lの濃度であれば、十分検出かのうである。
【0026】
従って、分光光度計での測定であれば、被験水溶液における本発明の化合物の濃度は、例えば、5 x 10-6~2 x 10-5 mol/Lの範囲とすることが適当である。被験水溶液における本発明の化合物の濃度をこの範囲とすることで、数ppmオーダーの重金属イオンの検出が可能である。
【0027】
本発明の検出方法では、例えば、金属イオンとして、Hg2+, Pb2+, Ag+, Cu2+を検出することができる。
【0028】
上記本発明の化合物を含む水溶液は、これら化合物単独で水溶液に存在する場合には、無色透明である。それに対して、上記いずれかの金属イオンと上記本発明の化合物を含む水溶液は、350~450nmの波長範囲において、着色を示す。従って、水溶液の色の変化から、被験水溶液に含まれる金属イオンの有無を検出することができる。さらに、水溶液の色の変化から、被験水溶液に含まれる金属イオン濃度を定量することもできる。この場合、この波長範囲における吸光量を測定することで、金属イオン濃度を定量することができる。より好ましく水溶液の400nmにおける吸光量を測定することで金属イオン濃度を定量するができる。尚、この場合、水溶液中の金属イオン濃度と吸光量との検量線を予め作成しておく。このように、本発明の検出方法では、水溶液中の金属イオンの定量が可能である。
【0029】
さらに本発明は、水溶液に含まれる金属イオンを分離する方法を包含する。この方法は、金属イオンを含有する水溶液に、上記本発明の化合物を混合し、水溶液中に含まれる金属イオンと本発明の化合物との錯体を形成する。次いで、形成した錯体を、水溶液から分離する。錯体は、金属イオンを含む水溶液に本発明の化合物を室温で混ぜるだけで形成できる。
【0030】
形成した錯体の水溶液からの分離は、例えば、溶媒抽出により行うことができる。例えば、溶媒抽出は、溶媒としてクロロホルムを用いると、溶媒側に錯体は移行する。水溶液中に含まれる金属イオンを捕捉するに十分量の本発明の化合物を用いることで、水溶液中の金属イオンを除去することができる。
【0031】
以上述べた特性を利用して、本発明の化合物(ナノ粒子)は重金属イオン、特に毒性の高いHg2+, Pb2+の簡便な比色センシングに利用できる。特に1)大掛かりで高価な分析機器を使用しない、2)脱塩などの前処理を必要としない、3)類似の金属イオンに対して選択的に応答する、などの特性は、環境中の水サンプルに含まれる重金属イオンの「その場分析」による迅速なスクリーニングが可能にすると期待できる。
【0032】
より一層の感度向上のため、濃縮パーツ、簡易分光光度計とアセンブル化することもかのうである。これらとの組み合わせにより、専門的な知識を持たなくても利用可能なキットとして利用できる可能性がある。また、先に述べたように本の化合物(クラスター)は水と混和しないクロロホルム、ベンゼンにも溶解し、その場合は水中に溶け込んだPb2+, Hg2+イオンを、これら有機溶媒中に効率的に抽出することができる(モル比で10倍程度までは確認済み)。従って、本クラスターは水中の重金属イオンの除去材料としても利用できる可能性がある。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
【0034】
実施例1
【化5】
JP0004904490B2_000006t.gif

【0035】
4,4'-ジチオジ(N-(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エチル)ベンズアミド(3)
2-3滴のDMFを含む乾燥THF(10 ml)中に懸濁させた4, 4'-ジチオジベンゾイックアシド[R. S. Senger, V. N. Nemykin, P. Basu, New J. Chem., 2003, 27, 1115-1123] (2, 0.400 g, 1.30 mmol)に、シュウ酸クロリド (1.5 mL, 17 mmol)を0℃窒素下で滴下した。室温で5時間攪拌後、得られた黄色の均一溶液を真空下で乾固して、酸クロリドを粘性の黄色固体として得た。この固体を脱水ジクロロメタン (10 mL) に溶解し、そこに2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]エチルアミン[P. Pengo, S. Polizzi, M. Battagliarin, L. Pasquato, Paolo Scrimin, J. Mater. Chem., 2003, 13, 2471-2478] (0.630 g, 3.86 mmol) の乾燥ジクロロメタン/トリエチルアミン (12 mL、5/1 v/v) 溶液に0℃下で加えたのち、ゆっくりと室温に戻してそのまま一晩撹拌した。揮発成分を減圧で留去した後、粗生成物をシリカゲルカラム(関東化学, Silica Gel 60N, 展開溶媒:クロロホルム/メタノール=10/1)を用いて分離精製し、4,4'-ジチオジ(N-(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エチル)ベンズアミド(3) を黄色の油状物質として得た 0.81 g, 100%)。
【0036】
1H NMR δ (400 MHz; CDCl3) 7.75 (4H, d, Ar 3-H, 5-H), 7.52 (4H, d, Ar 2-H, 6-H), 6.84 (2H, br, NH), 3.70-3.60 (20H, m, CH2(OC2H4)3), 3.51 (4H, m, NCH2), 3.30 (6H, s, OCH3)
【0037】
N-(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エチル)-4-メルカプトベンズアミド (4)
2 (1.30 mmol) の乾燥THF/EtOH (30/30 mL)溶液に、0℃下で撹拌しながら少量ずつNaBH4 (0.52 g, 14 mmol) を加え、室温で一晩撹拌した。揮発成分を減圧留去して得られた残渣を水(10 mL)に溶解させた後、1N 塩酸で酸性にして酢酸エチルで抽出した。有機相をMgSO4乾燥後、減圧下で溶媒留去することで、N-(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エチル)-4-メルカプトベンズアミド (4)を黄色の油状物質として得た(0.74g, 95%)。本物質は特に精製操作を行うことなく、そのまま続く反応に供した。
【0038】
1H NMR δ(400 MHz; CDCl3) 7.68 (2H, d, Ar 2- and 6-H), 7.28 (2H, d, Ar 3- and 5-H), 6.84 (1H, br, NH), 3.70-3.60 (10H, m, CH2(OC2H4)3), 3.56 (1H, s, SH), 3.53 (2H, m, NCH2), 3.33 (3H, s, OCH3)
【0039】
Cd10S4(SC6H4CONH(CH2CH2O)3CH3)12 (1a):
乾燥アセトニトリル (20 mL) に懸濁させたCd10S4(SPh)12 (200 mg, 0.078 mmol) に、4(1.40g, 4.7 mmol)を加え、室温で20時間攪拌した。得られた均一溶液から揮発成分を減圧下で留去し、残渣をヘキサンで洗浄することで生成したベンゼンチオールを除去後、 さらにジエチルエーテル/テトラヒドロフラン(4/1 v/v) で洗浄することで過剰に仕込んだ4を除去した。得られた固体をベンゼンに溶解させ、凍結乾燥することで、1aを潮解性のある黄色の固体として得た(300mg,80%)。
元素分析: calcd (%) for Cd10S4(C14H20NO4S)12(H2O)6 (C168H252Cd10N12O54S16): C 40.83, H 5.14, N 3.40, S 10.38; found C 40.78, H 4.97, N 3.35, S 10.51.
【0040】
Cd10Se4(SC6H4CONH(CH2CH2O)3CH3)12 (1b)
1aの合成と同様の手法で、Cd10Se4(SPh)12と7を反応させることによって合成した(yield: 74%)。赤外吸収スペクトルで、Cd10Se4(SPh)12のフェニル基由来の690, 735 cm-1の吸収が消失したのを確認した。
【0041】
Zn10S4(SC6H4CONH(CH2CH2O)3CH3)12 (1c)
1aの合成と同様の手法で、Zn10S4(SPh)12と7を反応させることによって合成した(yield: 76%)。純度は95%以上であった。赤外吸収スペクトルで、Zn10S4(SPh)12のフェニル基由来の690, 735 cm-1の吸収が消失したのを確認した。
元素分析: calcd(%) for Zn10S4(C14H20NO4S)12 (C168H240Zn10N12O54S16): C 46.25, H 5.54, N 3.85, S 11.76; found C 44.11, H 5.05, N 3.13, S 13.00
【0042】
実施例2
【化6】
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【0043】
4,4'-ジチオジ(N-(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エチル)ベンゾエート(6)
実施例1の化合物3と同様の方法で、2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エチルアミンの代わりに2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エタノールを原料に用いて合成を行った (yield: ~100 %)。
1H NMR δ(400 MHz; CDCl3) 7.98 (4H, d, Ar 3-H, 5-H), 7.52 (4H, d, Ar 2-H, 6-H), 4.45 (4H, t, COOCH2), 3.81 (4H, t, CH2O), 3.75-3.50 (16H, m, CH2(OC2H4)3), 3.35 (6H, s, OCH3)
【0044】
2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エチル 4-メルカプトベンゾエート(7)
実施例1の化合物4と同様の手法で化合物(6)をTH/EtOH中で、NaBH4で還元することで合成した (yield: 97 %)。
1H NMR δ(400 MHz; CDCl3) 7.89 (2H, d, Ar 3-H, 5-H), 7.27 (2H, d, Ar 2-H, 6-H), 4.44 (2H, t, COOCH2), 3.81 (2H, t, CH2O), 3.75-3.50 (9H, m, CH2(OC2H4)3, SH), 3.35 (3H, s, OCH3)
【0045】
Cd10S4(SC6H4COO(CH2CH2O)3CH3)12 (5):
1の合成と同様の手法で、Cd10S4(SPh)12と7を反応させることによって合成した(yield: 85%)。純度は95%以上であった。赤外吸収スペクトルで、Cd10S4(SPh)12のフェニル基由来の690, 735 cm-1の吸収が消失したのを確認した。
元素分析: calcd(%) for Cd10S4(C14H19O5S)12 (C168H228Cd10O60S16): C 41.65, H 4.74, S 10.59; found C 40.18, H 4.28, S 12.32
【0046】
実施例3
【化7】
JP0004904490B2_000008t.gif

【0047】
S-アセチル-1-メルカプト-2-(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エチルカルバモイル)エタン(9)
500 mg 2-チオアセチルプロピオン酸(1, 0.500 g, 3.37 mmol), EDC (671 mg, 3.50 mmol), HOBt (54 mg, 0.35 mmol) の脱水CHCl2溶液中に、0℃窒素下で2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エチルアミン(0.570 g, 3.50 mmol) を滴下した。室温で12時間攪拌後、反応溶液を1N HCl aq. で洗浄した。有機相をMgSO4乾燥後、減圧下で溶媒留去することで、黄色の油状物質4を得た(0.800 g, 81%)。1H NMR δ(400 MHz; CDCl3) 6.18 (1H, br, NH), 3.70-3.42 (12H, m, CH2(OC2H4)3), 3.38 (3H, s, OCH3), 3.15 (2H, t, SCH2), 2.49 (2H, t, CH2CO), 2.32 (3H, t, CH3COS)
【0048】
N-(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エチル) -3-メルカプトプロパンアミド(10)
文献[T. Zheng, M. Burkart, D. E. Richardson, Tetrahedron. Lett., 1999, 40, 603-606]に従って、化合物(9)を アセトン水溶液中でNaOHで処理し脱アセチル化することで合成した(yield:~100 %)。
1H NMR δ(400 MHz; CDCl3) 6.32 (1H, br, NH), 3.70-3.42 (12H, m, CH2(OC2H4)3), 3.39 (3H, s, OCH3), 2.81 (2H, q, SCH2), 2.50 (2H, t, CH2CO), 1.63 (1H, t, SH)
【0049】
Cd10S4(SC2H4CONH(CH2CH2O)3CH3)12 (8):
実施例1の化合物1の合成と同様の手法で、Cd10S4(SPh)12と10を反応させることによって合成した(yield: 78%)
元素分析: calcd (%) for Cd10S4(C10H20NO4S)12 (C120H240Cd10N12O48S16): C 33.86, H 5.68, N 3.95, S 12.05; found C 33.48, H 5.31, N 3.46, S 12.63
【0050】
実施例4
【化8】
JP0004904490B2_000009t.gif

【0051】
[CH3(OC2H4)nOC6H4S]2 [T. Fukushima, A. Kosaka, Y. Ishimura, T. Yamamoto, T. Takigawa, N. Ishii, T. Aida, science, 2004, 304, 1481-1483] (12)
4, 4'-dihydroxyphenyl disulfide (1.00 g, 3.99 mmol) とCH3(OC2H4)nOTs (nav=7.25, 6.05 g) が入ったDMF (10 mL) 溶液にK2CO3 (2.5 g, 18 mmol) を加え、80 oCに加熱して1晩撹拌した。その後、DMFを加熱減圧下 (~70℃) で除去し、残渣を水 (50 mL) に溶解してCH2Cl2により抽出を行いった。有機相をNa2SO4乾燥後、揮発成分を減圧で留去してから、粗生成物をシリカゲルカラム(関東化学, Silica Gel 60N, 展開溶媒:クロロホルム/メタノール=10/1)を用いて分離精製することにより、[CH3(OC2H4)nOC6H4S]2を黄色の油状物質として得た (4 g, ~100%)。
1H NMR δ(400 MHz; CDCl3) 7.36 (4H, d, Ar 3-H, 5-H), 6.84 (4H, d, Ar 2-H, 6-H), 4.10 (4H, t, OCH2), 3.84 (4H, t, CH2O), 3.75-3.50 (60H, m, CH2(OC2H4)n), 3.36 (6H, s, OCH3)
【0052】
CH3(OC2H4)nOC6H4SH (13)
4と同様の手法で化合物(12)をTH/EtOH中で、NaBH4で還元することで合成した (yield: ~100 %)。
1H NMR δ(400 MHz; CDCl3) 7.24 (2H, d, Ar 3-H, 5-H), 6.81 (2H, d, Ar 2-H, 6-H), 4.08 (2H, t, OCH2), 3.84 (2H, t, CH2O), 3.75-3.58 (30H, m, CH2(OC2H4)n), 3.36 (3H, s, OCH3), 3.35 (1H, s, SH)
【0053】
Cd10S4(SC6H4O(C2H4O)nCH3)12 [nav=6] (11):
1の合成と同様の手法で、Cd10S4(SPh)12と13を反応させることによって合成した(yield: 82%)
元素分析: calcd (%) for C228H372Cd10O99S16 (n=6): C 44.94, H 6.15, S 8.41; found found C 44.74, H 6.02, S 9.17
【0054】
実施例5
イオン交換水あるいはHEPES緩衝液に溶解したナノ粒子(濃度= 6.7 x 10-6 (mol/L))に、室温で金属塩(塩化物、硝酸塩など)の水溶液を一定量加えて、吸収スペクトルを測定する。ブランクのスペクトルと比較し評価した。
【0055】
<結果と評価>
化合物1aにHgCl2を添加した時の典型的な吸収スペクトル変化を図 1に示す。初めは400nm以上の可視部に吸収がないが、金属イオンの添加とともに長波長(可視領域)側にテーリングがみられるようになり、結果として無色透明から薄い褐色~黄色に変化した。右上のプロットは、着色の指標として400nmをピックアップし、その吸光度を金属イオン濃度とプロットしたものである。裸眼ではなく機器(分光光度計)を使えば、感度もあがり定量も可能であることを示す。
【0056】
HgCl2に代えて、AgNO3またはCu(NO3)2を添加した場合の結果を図2および3に示す。また、化合物1aを化合物1b、1c、5または8に代えた場合の結果を図4~8に示す。いずれの場合も、初めは400nm以上の可視部に吸収がないが、金属イオンの添加とともに長波長(可視領域)側にテーリングがみられるようになり、結果として無色透明から薄い褐色~黄色に変化した。また、各図の右上のプロットは、着色の指標として400nmをピックアップし、その吸光度を金属イオン濃度とプロットしたものである。裸眼ではなく機器(分光光度計)を使えば、感度もあがり定量も可能であることを示す。
【0057】
実施例6
有害重金属イオンの除去方法
HgCl2(14mg)の水溶液(50mL)に化合物1a(50mg)を室温で加え両者を錯形成させ、そこにクロロホルム (50mL)と飽和食塩水(50mL)を加えた。分液ロートで分液すると1a-Hg錯体は水相からクロロホルム相に抽出され、結果として水中から水銀が取り除かれた。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、化学分析、環境分野等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】化合物1aとHgCl2との吸収スペクトル変化
【図2】化合物1aとAgNO3との吸収スペクトル変化
【図3】化合物1aとCu(NO3)2との吸収スペクトル変化
【図4】化合物1bとHgCl2との吸収スペクトル変化
【図5】化合物1cとHgCl2との吸収スペクトル変化
【図6】化合物5とHgCl2との吸収スペクトル変化
【図7】化合物5とCu(NO3)2との吸収スペクトル変化
【図8】化合物8とHgCl2との吸収スペクトル変化
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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