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明細書 :固定構造物の通過波低減構造

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4662233号 (P4662233)
公開番号 特開2004-257230 (P2004-257230A)
登録日 平成23年1月14日(2011.1.14)
発行日 平成23年3月30日(2011.3.30)
公開日 平成16年9月16日(2004.9.16)
発明の名称または考案の名称 固定構造物の通過波低減構造
国際特許分類 E01F   8/00        (2006.01)
E01B  19/00        (2006.01)
E01D  18/00        (2006.01)
FI E01F 8/00
E01B 19/00 C
E01D 18/00 Z
請求項の数または発明の数 3
全頁数 16
出願番号 特願2004-022514 (P2004-022514)
出願日 平成16年1月30日(2004.1.30)
優先権出願番号 2003027465
優先日 平成15年2月4日(2003.2.4)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成18年3月9日(2006.3.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】菊地 勝浩
【氏名】飯田 雅宣
個別代理人の代理人 【識別番号】100104064、【弁理士】、【氏名又は名称】大熊 岳人
審査官 【審査官】西田 秀彦
参考文献・文献 特開2000-355908(JP,A)
特公昭52-035215(JP,B2)
登録実用新案第3026815(JP,U)
特開2003-292264(JP,A)
特開昭51-144026(JP,A)
特開2000-080890(JP,A)
特開平09-221990(JP,A)
特開平7-305310(JP,A)
調査した分野 E01F 8/00
E01B 19/00
E01D 18/00
特許請求の範囲 【請求項1】
トンネル区間以外の明り区間の固定構造物と線路上を走行する列車との相互干渉によって発生する通過波を低減する固定構造物の通過波低減構造であって、
前記固定構造物は、
前記線路の上方及び側方から見たときの形状が長方形であり、かつ、前記列車が突入及び退出する開口部が互に平行な長方形であり、
前記列車の側面及び上面と間隔をあけてこの列車の側方及び上方を閉鎖するように、この線路長さ方向に対して略直交して構築されている跨線橋、橋上駅又は立体交差及びこれらの橋脚又は橋台であり
前記跨線橋、前記橋上駅又は前記立体交差の下方を時速300km/h以上の高速で前記列車が通過するときに発生する前記通過波を低減する通過波低減部を備え、
前記通過波低減部は、前記橋脚又は前記橋台の前記列車が突入及び退出する側の両端面の下端部から上端部までにわたる部位に形成された傾斜角度が30°以下の傾斜部であること、
を特徴とする固定構造物の通過波低減構造。
【請求項2】
トンネル区間以外の明り区間の固定構造物と線路上を走行する列車との相互干渉によって発生する通過波を低減する固定構造物の通過波低減構造であって、
前記固定構造物は、
前記線路の側方から見たときの形状が台形であり、
前記列車の側面と間隔をあけてこの列車の上方及び側方上側を開放し側方下側を閉鎖するように、この線路の側方に構築されている防音壁であり
前記防音壁の側方を時速300km/h以上の高速で前記列車が通過するときに発生する前記通過波を低減する通過波低減部を備え、
前記通過波低減部は、前記列車が突入及び退出する前記防音壁の壁部の始端及び終端の端面の下端部から上端部までにわたる部位に形成された傾斜角度が30°以下の傾斜部であること、
を特徴とする固定構造物の通過波低減構造。
【請求項3】
トンネル区間以外の明り区間の固定構造物と線路上を走行する列車との相互干渉によって発生する通過波を低減する固定構造物の通過波低減構造であって、
前記固定構造物は、
前記線路の上方から見たときの形状が台形であり、
前記列車の側面と間隔をあけてこの列車の上方及び側方上側を開放し側方下側を閉鎖するように、この線路の側方に構築されている防音壁であり
前記防音壁の側方を時速300km/h以上の高速で前記列車が通過するときに発生する前記通過波を低減する通過波低減部を備え、
前記通過波低減部は、前記防音壁の壁部から線路側に屈曲した上端部の前記列車が突入及び退出する始端及び終端の端面の外側から内側までにわたる部位に形成された傾斜角度が30°以下の傾斜部であること、
を特徴とする固定構造物の通過波低減構造。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、トンネル区間以外の明り区間の固定構造物と移動体との相互干渉によって発生する通過波を低減する固定構造物の通過波低減構造に関する。
【背景技術】
【0002】
高速で走行する列車がトンネル入口から突入すると圧縮波が発生し、この圧縮波がトンネル内を音速で伝播してトンネル出口から周波数20Hz以下のパルス状の衝撃波(トンネル微気圧波)となって放射する現象が知られている。このようなトンネル微気圧波は、トンネル出入口の周辺で衝撃的な圧力波として放射され、放射圧力波の大きさによってはトンネル発破のような音として聴取されたり、付近の家屋の建具や窓をがたつかせたりするため環境問題となる可能性がある。このため、トンネル出入口付近に発生する低周波の圧力波を低減するための種々の対策がとられている。例えば、従来のトンネル緩衝工は、トンネルの出入口に構築された覆体構造物(特許文献1参照)と、覆体構造物の出入口に形成された切欠部とを備えている(特許文献2参照)。このような従来のトンネル緩衝工は、トンネル入口から高速で列車が突入したときにトンネル出口側から放射されるトンネル微気圧波を低減するとともに、列車がトンネル入口に突入する時トンネル入口側から放射される圧力波(突入波)と、列車がトンネル出口から退出する時トンネル出口側から放射される圧力波(退出波)を低減する。
【0003】

【特許文献1】特公昭55-31274号公報(第1頁第2欄第20行目~第30行目及び第1図)
【0004】

【特許文献2】特開2000-80890号公報(段落番号0014及び図1~図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図22は、構造物通過波の概念を説明するための図であり、図22(A)は平面図であり、図22(B)は側面図である。
従来のトンネル緩衝工は、トンネル微気圧波を低減するためにトンネル区間に構築されている。しかし、トンネル区間以外の明り区間において跨線橋や橋上駅などの固定構造物103が線路に近接して構築されていると、この固定構造物103の近傍を列車101が高速で通過したときに、図22(B)に示すようにトンネル区間のような低周波の圧力波(以下、構造物通過波という)Wが発生すると考えられる。例えば、図22(B)に示すように、固定構造物103の下方を列車101が高速で移動方向Aから通過すると構造物通過波Wが発生すると考えられる。このような構造物通過波Wは、列車101と固定構造物103との相互の形状による影響が大きく、列車101の速度がそれほど高くない場合には大きな問題とはならないが、列車101の速度が300km/h近くになると大きな問題となると考えられる。近年、300km/hを超える列車の開発が進められており、このような構造物通過波Wを低減するための対策を検討する必要がある。
【0006】
この発明の課題は、トンネル区間以外の明り区間における通過波を低減することができる固定構造物の通過波低減構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、図11に示すように、トンネル区間以外の明り区間の固定構造物(10)と線路(2a,2b)上を走行する列車(1)との相互干渉によって発生する通過波(W)を低減する固定構造物の通過波低減構造であって、前記固定構造物は、前記線路の上方及び側方から見たときの形状が長方形であり、かつ、前記列車が突入及び退出する開口部が互に平行な長方形であり、前記列車の側面及び上面と間隔をあけてこの列車の側方及び上方を閉鎖するように、この線路長さ方向に対して略直交して構築されている跨線橋、橋上駅又は立体交差及びこれらの橋脚又は橋台であり前記跨線橋、前記橋上駅又は前記立体交差の下方を時速300km/h以上の高速で前記列車が通過するときに発生する前記通過波を低減する通過波低減部(11)を備え、前記通過波低減部は、前記橋脚又は前記橋台の前記列車が突入及び退出する側の両端面の下端部から上端部までにわたる部位に形成された傾斜角度が30°以下の傾斜部であることを特徴とする固定構造物の通過波低減構造(4)である。
【0008】
請求項2の発明は、図8に示すように、トンネル区間以外の明り区間の固定構造物(8)と線路(2a,2b)上を走行する列車(1)との相互干渉によって発生する通過波(W)を低減する固定構造物の通過波低減構造であって、前記固定構造物は、前記線路の側方から見たときの形状が台形であり、前記列車の側面と間隔をあけてこの列車の上方及び側方上側を開放し側方下側を閉鎖するように、この線路の側方に構築されている防音壁であり前記防音壁の側方を時速300km/h以上の高速で前記列車が通過するときに発生する前記通過波を低減する通過波低減部(9)を備え、前記通過波低減部は、前記列車が突入及び退出する前記防音壁の壁部(8a)の始端及び終端の端面(9a,9b)の下端部から上端部までにわたる部位に形成された傾斜角度が30°以下の傾斜部であることを特徴とする固定構造物の通過波低減構造(4)である。
【0009】
請求項3の発明は、図7に示すように、トンネル区間以外の明り区間の固定構造物と線路上を走行する列車との相互干渉によって発生する通過波を低減する固定構造物の通過波低減構造であって、前記固定構造物は、前記線路の上方から見たときの形状が台形であり、前記列車の側面と間隔をあけてこの列車の上方及び側方上側を開放し側方下側を閉鎖するように、この線路の側方に構築されている防音壁であり前記防音壁の側方を時速300km/h以上の高速で前記列車が通過するときに発生する前記通過波を低減する通過波低減部(9)を備え、前記通過波低減部は、前記防音壁の壁部(8a)から線路側に屈曲した上端部(8b)の前記列車が突入及び退出する始端及び終端の端面(9a,9b)の外側から内側までにわたる部位に形成された傾斜角度が30°以下の傾斜部であることを特徴とする固定構造物の通過波低減構造(4)である。
【発明の効果】
【0013】
この発明によると、トンネル区間以外の明り区間における通過波を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、この発明の第1実施形態について詳しく説明する。
図1は、この発明の第1実施形態に係る固定構造物の通過波低減構造の平面図である。図2は、この発明の第1実施形態に係る固定構造物の通過波低減構造の側面図である。
列車1は、軌道2に沿って移動する移動体である。列車1は、図1及び図2に示すように、300km/h以上の高速で走行する新幹線車両などである。軌道2は、列車1が走行する通路(移動経路)である。軌道2は、図1に示すように、二本の本線で構成された複線であり、上り本線となる線路2aと、下り本線となる線路2bとから構成されている。
【0015】
固定構造物3は、トンネル区間以外の明り区間に設けられた建築物である。固定構造物3は、例えば、軌道2を越えるためにこの軌道2上に架け渡した跨線橋や、軌道2上に駅本屋が配置された橋上駅などである。ここで、明り区間とは、鉄道線路などの敷設区分でありトンネル区間以外の高架橋区間や土路盤区間などの総称である。固定構造物3は、図1及び図2に示すように、軌道2に対して略直交して構築されている。通過波低減構造4は、トンネル区間以外の明り区間の固定構造物3と列車1との相互干渉によって発生する構造物通過波Wを低減する部分である。通過波低減構造4は、列車1の先頭車両1a及び後尾車両1bと対向する側(固定構造物3の側面3a)にそれぞれ通過波低減部5を備えている。
【0016】
通過波低減部5は、明り区間を移動する列車1が固定構造物3の近傍を通過するときに発生する構造物通過波Wを低減する部分である。通過波低減部5は、図1に示すように、固定構造物3の下方を列車1が通過するときに、この列車1の移動方向A,Bに対して斜め方向に交差するようにこの固定構造物3に形成されている。通過波低減部5は、平面形状が図1及び図2に示すような三角形状の板状部材であり、先頭車両1a側及び後尾車両1b側の側面5aが直線状に形成されている。通過波低減部5は、図示しない固定部材などによって固定構造物3の側面3aから突出した状態で固定されている。この第1実施形態では、図1に示すように、列車1が退出する側よりも列車1が突入する側のほうが通過波低減部5の平面形状が大きくなるように、固定構造物3の側面3aに通過波低減部5がそれぞれ配置されている。図1に示す角度θは、側面3aに対する側面5aの傾斜角度であり、構造物通過波Wを低減するためにはこの角度θを大きく設定することが好ましい。
【0017】
次に、この発明の第1実施形態に係る固定構造物の通過波低減構造の作用を説明する。
図22に示すように、通過波低減部5が固定構造物3に存在しない場合には、列車101が固定構造物103を高速で通過すると、図中C方向(紙面の表側から裏側)から見たときに先頭車両101aが固定構造物3と一瞬で重なりこの固定構造物3を通過する。その結果、列車101と固定構造物103とが相互に干渉して、図22(B)に示すようなパルス状の構造物通過波Wが発生する。一方、図1に示すように、通過波低減部5が固定構造物3に存在する場合には、列車1が軌道2を高速で走行しながら固定構造物3に接近すると、図中C方向から見たときに先頭車両1aが通過波低減部5と徐々に重なりながら固定構造物3の下方を通過する。このため、列車1と固定構造物3との相互干渉による構造物通過波Wの発生を通過波低減部5が低減する。同様に、図22に示すように、通過波低減部5が固定構造物3に存在しない場合には、後尾車両101bが固定構造物3を一瞬で通過するために、この後尾車両1bと固定構造物3との相互干渉によって構造物通過波Wが発生する。しかし、図1に示すように、通過波低減部5が固定構造物3に存在する場合には、図中C方向から見たときに後尾車両1bが通過波低減部5を徐々に通過するため、この通過波低減部5が構造物通過波Wの発生を低減する。
【0018】
この発明の第1実施形態に係る固定構造物の通過波低減構造には、以下に記載するような効果がある。
(1) この第1実施形態では、明り区間を移動する列車1が固定構造物3の近傍を通過するときに発生する構造物通過波Wを通過波低減部5が低減する。その結果、固定構造物3付近の家屋の建具や窓のがたつきが抑えられて低周波騒音による環境の悪化を防止することができる。また、通過波低減部5を既存の固定構造物3に設置してこの固定構造物3側の形状を変更する場合には、新型車両を導入する際に車両側の形状を変更する場合に比べて、低周波騒音を安価に低減することができる。
【0019】
(2) この第1実施形態では、固定構造物3の下方を列車1が通過するときに、この列車1の移動方向A,Bに対して斜め方向に通過波低減部5が交差する。その結果、通過波低減部5の下方を先頭車両1aが徐々に通過し、通過波低減部5の下方を後尾車両1bが徐々に通過するため、構造物通過波Wの発生を抑えることができる。
【0020】
(3) この第1実施形態では、跨線橋や橋上駅などの固定構造物3に通過波低減部5が形成されている。このため、300km/hを超えるような列車が開発された場合に、既存の固定構造物3を大規模に改修することなく、安価で簡単な構造の通過波低減部5によって構造物通過波Wを低減することができる。
【0021】
(第2実施形態)
図3は、この発明の第2実施形態に係る固定構造物の通過波低減構造の平面図である。図4は、この発明の第2実施形態に係る固定構造物の通過波低減構造の側面図である。以下では、図1及び図2に示す部分と同一の部分については、同一の番号を付して詳細な説明を省略する。
図3及び図4に示す通過波低減部6は、平面形状が図3及び図4に示すような三角形状の板状部材であり、先頭車両1a側及び後尾車両1b側の側面6aが直線状に形成されている。通過波低減部6は、図3に示すように、三角形状の板状部材の頂角を互いに向かい合わせた状態で固定構造物3の側面3aにそれぞれ配置されている。この第2実施形態には、第1実施形態と同様の効果がある。
【0022】
(第3実施形態)
図5は、この発明の第3実施形態に係る固定構造物の通過波低減構造の平面図である。図6は、この発明の第3実施形態に係る固定構造物の通過波低減構造の側面図である。
図5及び図6に示す通過波低減部7は、平面形状が図5及び図6に示すような鋸状の板状部材であり先頭車両1a側及び後尾車両1b側の側面7aが鋸波状に形成されている。
【0023】
(第4実施形態)
図7は、この発明の第4実施形態に係る固定構造物の通過波低減構造の平面図である。図8は、この発明の第4実施形態に係る固定構造物の通過波低減構造の側面図である。
図7及び図8に示す固定構造物8は、音源から伝搬する音の強さを減衰させる防音壁などの建築物である。固定構造物8は、例えば、壁部8aの上端部8bを音源側に屈曲させることによって音響エネルギーを音源側に閉じ込めて遮音効果を高める逆L形防音壁である。通過波低減部9は、列車1の移動経路(軌道2)の側方に固定構造物8があるときに、この列車1の移動方向A,Bに対して前面9a,9bが傾斜するようにこの固定構造物8に形成されている。前面9a,9bは、傾斜角度を小さく鋭角に形成することが好ましく、30度以下に形成することが好ましい。通過波低減部9は、図7及び図8に示すように、固定構造物8の始端と終端における壁部8a及び上端部8bの端面(先頭車両1a及び後尾車両1bと対向する面)に形成されている。例えば、列車1よりも固定構造物8が長いときには、図8に示すように列車1が固定構造物8に高速で接近すると、D方向から見たときに先頭車両1aが通過波低減部9と徐々に重なりながら固定構造物8の側方に突入し、その後に後尾車両1bが通過波低減部9と徐々に重なりながら固定構造物8の側方に突入する。このため、列車1と固定構造物8との相互干渉による構造物通過波Wの発生を通過波低減部9が低減する。同様に、列車1が固定構造物8から高速で離れるときには、先頭車両1aが通過波低減部9を徐々に退出し、その後に後尾車両1bが通過波低減部9を徐々に退出するため、この通過波低減部9が構造物通過波Wの発生を低減する。この第4実施形態には、第1実施形態~第3実施形態と同様の効果がある。
【0024】
(第5実施形態)
図9は、この発明の第5実施形態に係る固定構造物の通過波低減構造の平面図であり、図9(A)(B)は通過波低減部の側面を凹状の曲線に形成した例であり、図9(C)(D)は通過波低減部の側面を凸状の曲線に形成した例であり、図9(E)(F)は通過波低減部の側面を鋸波状に形成した例であり、図9(G)(H)は通過波低減部の側面を凹凸状の曲線に形成した例である。
図9に示す通過波低減部5,6は、図1及び図3に示す側面5a,6aを凹状の曲線、凸状の曲線、鋸波状又は凹凸状の曲線に形成して平面形状を変化させている。この第5実施形態には、第1実施形態~第3実施形態の効果と同様の効果がある。
【0025】
(第6実施形態)
図10は、この発明の第6実施形態に係る固定構造物の通過波低減構造の側面図であり、図10(A)は通過波低減部の前面を凹状の曲線に形成した例であり、図10(B)は通過波低減部の前面を凸状の曲線に形成した例であり、図10(C)は通過波低減部の前面を鋸波状に形成した例である。なお、図10では、図7に示す前面9bについては図示を省略している。
図10に示す通過波低減部9は、図7及び図8に示す前面9a,9bを凹状の曲線、凸状の曲線又は鋸波状に形成して断面積を変化させている。この第6実施形態には、第4実施形態の効果と同様の効果がある。
【0026】
(第7実施形態)
図11は、この発明の第7実施形態に係る固定構造物の通過波低減構造の斜視図である。図11に示す固定構造物10は、跨線橋や橋上駅の橋脚や脚台などの建築物である。通過波低減部11は、列車1の移動経路(軌道2)の側方に固定構造物10があるときに、この列車1の移動方向A,Bに対して前面11aが傾斜するようにこの固定構造物10に形成されている。通過波低減部11は、固定構造物10の両端面(先頭車両1a及び後尾車両1bと対向する面)に形成されている。この第7実施形態には、第4実施形態及び第6実施形態と同様の効果がある。
【実施例】
【0027】
次に、この発明の実施例について説明する。
図12は、この発明の実施例に係る固定構造物の通過波低減構造の効果を確認するために使用した走行実験装置の平面図である。
図12に示す走行実験装置20は、構造物模型21と列車模型22との相互干渉によって発生する通過波を測定する装置である。走行実験装置20は、図12に示すように、実際の跨線橋を模擬した構造物模型21と、実際の新幹線列車を模擬した列車模型22と、回転体23aと回転体23bとの間で列車模型を加速しながら発射させる発射装置23と、発射装置23から発射された列車模型22をガイドするガイドワイヤ24と、構造物模型21を通過した列車模型22を制動させる制動装置25と、構造物模型21を通過する列車模型22の速度を検出する速度センサSと、構造物模型21を列車模型が通過したときに発生する構造物通過波を検出するマイクロホンM1~M4などを備えている。
【0028】
図12に示す中心線C1は、構造物模型21の中心を通過してガイド線24と平行な直線であり、中心線C2は中心線C1と直交して構造物模型21の中心を通過する直線である。マイクロホンM1は、構造物模型21の中心線C1から距離L1=400mm離れた中心線C2上に配置されており、マイクロホンM2は構造物模型21の中心線C1からマイクロホンM1とは反対側に距離L1=400mm離れた中心線C2上に配置されている。マイクロホンM3は、構造物模型21の中心線C1からマイクロホンM2側に距離L1=400mm離れた位置であり、かつ、構造物模型21の中心線C2から発射装置23側に距離L2=231mm離れた位置に配置されている。マイクロホンM4は、構造物模型21の中心線C1からマイクロホンM2側に距離L1=400mm離れた位置であり、かつ、構造物模型21の中心線C2から制動装置25側に距離L2=231mm離れた位置に配置されている。ガイドワイヤ24は、中心線C1からマイクロホンM2~M4側に偏心量Δ=17mm離れた位置にこの中心線C1と平行に配置されているため、列車模型22は中心線C1から僅かにずれた位置を通過する。
【0029】
(従来例)
図13は、従来例に係る構造物模型の斜視図である。図14は、従来例に係る構造物模型を列車模型が通過したときの圧力波形を示すグラフである。
図13に示す構造物模型21は、図22に示す従来の固定構造物103を模擬した模型であり、幅W=47.2mm、長さL=92.9mm、高さH=103.9mmである。列車模型22は、300系新幹線を模擬した模型である。構造物模型21及び列車模型22は、実際の構造物や車両を縮尺し外観形状が上下対称となるように形成されている。図14に示すグラフは、列車模型22を400km/hで通過させたときに発生する構造物通過波を、図12に示すマイクロホンM2によって検出した測定結果である。図14に示す縦軸は、圧力(Pa)であり、横軸は時間(ms)である。図14に示すように、列車模型22の先頭車両が構造物模型21を通過する45~50msでは、プラス側の圧力のピーク値が約13Paに達し、マイナス側の圧力のピーク値が約-17Paに達している。また、列車模型22の後尾車両が構造物模型21を通過する55~60msでは、プラス側の圧力のピーク値が約10Paに達し、マイナス側の圧力のピーク値が約-8Paに達している。その結果、新幹線のように高速で走行する列車が固定構造物を通過すると構造物通過波が発生することが確認された。
【0030】
(実施例1)
図15は、この発明の実施例1に係る通過波低減構造を備える構造物模型の斜視図である。図16は、この発明の実施例1に係る通過波低減構造を備える構造物模型を列車模型が通過したときの圧力波形を示すグラフである。
図15に示す構造物模型21は、図11に示す固定構造物10を模擬した模型であり、この構造物模型21には列車模型22に近い側(列車模型22側から見て左側)であって列車模型22が突入する側及び退出する側に傾斜角度θ=30°の傾斜板が設置されている。図16に示すグラフは、従来例と同様に300系新幹線を模擬した列車模型22を400km/hで通過させたときに発生する構造物通過波を、マイクロホンM2によって検出した測定結果である。図16に示すように、列車模型22の先頭車両通過時におけるプラス側の圧力のピーク値が約6Paであり、従来例に比べて7Pa程度低減しており、マイナス側の圧力のピーク値が約-14Paであり、従来例に比べて3Pa程度低減している。また、列車模型22の後尾車両通過時のプラス側の圧力のピーク値が約9Paであり、従来例に比べて1Pa程度低減しており、マイナス側の圧力のピーク値が約-6Paであり、従来例に比べて2Pa程度低減している。その結果、新幹線のように高速で走行する列車が固定構造物を通過するときに、列車が突入する側と退出する側に傾斜面を有する壁部を列車から見て片側に設置することで構造物通過波を低減可能であることが確認された。例えば、列車から見て左側に住宅地が存在し、列車から見て右側に住宅地が存在しないような場合には、列車から見て左側のみに傾斜面を有する壁部を設置することによって、構造物通過波による影響を低減することができる。
【0031】
(実施例2)
図17は、この発明の実施例2に係る通過波低減構造を備える構造物模型の斜視図である。図18は、この発明の実施例2に係る通過波低減構造を備える構造物模型を列車模型が通過したときの圧力波形を示すグラフである。
図17に示す構造物模型21は、実施例1と同様に図11に示す固定構造物10を模擬した模型であり、この構造物模型21には列車模型22側から見て左右両側であって列車模型22が突入する側及び退出する側に傾斜角度θ=30°の傾斜板を設置されている。図18に示すグラフは、従来例及び実施例1と同様に300系新幹線を模擬した列車模型22を400.9km/hで通過させたときに発生する構造物通過波をマイクロホンM2によって検出した測定結果である。図18に示すように、列車模型22の先頭車両通過時のプラス側の圧力のピーク値が約4Paであり、従来例に比べて9Pa程度、実施例1に比べて2Pa程度低減しており、マイナス側の圧力のピーク値が実施例1と同様に約-14Paであり、従来例に比べて3Pa程度低減している。また、列車模型22の後尾車両通過時のプラス側の圧力のピーク値が約8Paであり、従来例に比べて2Pa程度、実施例1に比べて1Pa程度低減しており、マイナス側の圧力のピーク値が実施例1と同様に約-6Paであり、従来例に比べて2Pa程度低減している。その結果、新幹線のように高速で走行する列車が固定構造物を通過するときに、列車から見て左右両側に傾斜面を有する壁部を設置することで構造物通過波を最も有効に低減可能であることが確認された。
【0032】
(実施例3)
図19は、この発明の実施例3に係る通過波低減構造を備える構造物模型を列車模型が通過したときの圧力波形を示すグラフである。
図19に示すグラフは、図17に示す実施例2の傾斜板を傾斜角度θ=45°に設定して、300系新幹線を模擬した列車模型22を400.9km/hで通過させたときに発生する構造物通過波をマイクロホンM2によって検出した測定結果である。その結果、実施例2に比べて圧力のピーク値が上昇している。
【0033】
(実施例4)
図20は、この発明の実施例4に係る通過波低減構造を備える構造物模型を列車模型が通過したときの圧力波形を示すグラフである。
図20に示すグラフは、図17に示す実施例2の傾斜板を傾斜角度θ=60°に設定して、300系新幹線を模擬した列車模型22を400km/hで通過させたときに発生する構造物通過波をマイクロホンM2によって検出した測定結果である。その結果、実施例2に比べて圧力のピーク値が上昇している。実施例3,4のマイクロホンM2の測定結果によれば傾斜板を傾斜角度θ=30°を超えた角度に設定した場合には構造物通過波の低減効果が低下することが確認された。
【0034】
(実施例5)
図21は、この発明の実施例2に係る通過波低減構造を備える構造物模型を異なる形式の列車模型が通過したときの圧力波形を示すグラフである。
図21に示すグラフは、500系新幹線を模擬した列車模型22を図17に示す構造物模型21に350.2km/hで通過させたときに発生する構造物通過波を、マイクロホンM2によって検出した測定結果である。その結果、300系新幹線とは車両形状の異なる500系新幹線についても構造物通過波を低減可能であることが確認された。
【0035】
(他の実施形態)
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この実施形態では、移動体として列車(鉄道車両)1を例に挙げて説明したがこれに限定するものではない。例えば、高速で走行する磁気浮上式鉄道や自動車などの移動体についてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、固定構造物3として跨線橋や橋上駅などを例に挙げて説明したが道路の立体交差などの固定構造物についてもこの発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、固定構造物8として逆L形防音壁を例に挙げて説明したが、防音壁や線路側方に構築された建築物などについてもこの発明を適用することができる。
【0036】
(2) この実施形態では、複線区間を例に挙げて説明したが単線区間についてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、側面5a,6a,7a及び前面9aを鋸波状に形成した場合を例に挙げて説明したが、正弦波などの他の波形に形成することもできる。さらに、この実施形態では、図1に示すように、線路2bから線路2aに向かって通過波低減部5の平面形状が増加する場合を例に挙げて説明したが、線路2aから線路2bに向かって通過波低減部5の平面形状を増加させてもよい。
【0037】
(3) この実施形態では、図3に示すように、軌道2の中心から線路2a,2bの外側に向かって通過波低減部6の平面形状が増加する場合を例に挙げて説明したが、線路2a,2bの外側から軌道2の中心に向かって通過波低減部6の平面形状を増加させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】この発明の第1実施形態に係る固定構造物の通過波低減構造を示す平面図である。
【図2】この発明の第1実施形態に係る固定構造物の通過波低減構造を示す側面図である。
【図3】この発明の第2実施形態に係る固定構造物の通過波低減構造を示す平面図である。
【図4】この発明の第2実施形態に係る固定構造物の通過波低減構造を示す側面図である。
【図5】この発明の第3実施形態に係る固定構造物の通過波低減構造を示す平面図である。
【図6】この発明の第3実施形態に係る固定構造物の通過波低減構造を示す側面図である。
【図7】この発明の第4実施形態に係る固定構造物の通過波低減構造を示す平面図である。
【図8】この発明の第4実施形態に係る固定構造物の通過波低減構造を示す側面図である。
【図9】この発明の第5実施形態に係る固定構造物の通過波低減構造を示す平面図であり、(A)(B)は通過波低減部の側面を凹状の曲線に形成した例であり、(C)(D)は通過波低減部の側面を凸状の曲線に形成した例であり、(E)(F)は通過波低減部の側面を鋸波状に形成した例であり、(G)(H)は通過波低減部の側面を凹凸状の曲線に形成した例である。
【図10】この発明の第6実施形態に係る固定構造物の通過波低減構造を示す側面図であり、(A)は通過波低減部の前面を凹状の曲線に形成した例であり、(B)は通過波低減部の前面を凸状の曲線に形成した例であり、(C)は通過波低減部の前面を鋸波状に形成した例である。
【図11】この発明の第7実施形態に係る固定構造物の通過波低減構造を示す斜視図である。
【図12】この発明の実施例に係る固定構造物の通過波低減構造の効果を確認するために使用した走行実験装置の平面図である。
【図13】従来例に係る構造物模型の斜視図である。
【図14】従来例に係る構造物模型を列車模型が通過したときの圧力波形を示すグラフである。
【図15】この発明の実施例1に係る通過波低減構造を備える構造物模型の斜視図である。
【図16】この発明の実施例1に係る通過波低減構造を備える構造物模型を列車模型が通過したときの圧力波形を示すグラフである。
【図17】この発明の実施例2に係る通過波低減構造を備える構造物模型の斜視図である。
【図18】この発明の実施例2に係る通過波低減構造を備える構造物模型を列車模型が通過したときの圧力波形を示すグラフである。
【図19】この発明の実施例3に係る通過波低減構造を備える構造物模型を列車模型が通過したときの圧力波形を示すグラフである。
【図20】この発明の実施例4に係る通過波低減構造を備える構造物模型を列車模型が通過したときの圧力波形を示すグラフである。
【図21】この発明の実施例2に係る通過波低減構造を備える構造物模型を異なる形式の列車模型が通過したときの圧力波形を示すグラフである。
【図22】構造物通過波の概念を説明するための図であり、(A)は平面図であり、(B)は側面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 列車(移動体)
1a 先頭車両
1b 後尾車両
2 軌道(移動経路)
2a,2b 線路
3 固定構造物
3a 側面
4 通過波低減構造
5,6,7 通過波低減部
5a,6a,7a 側面
8 固定構造物
8a 壁部
8b 上端部
9 通過波低減部
9a,9b 前面
10 固定構造物
11 通過波低減部
11a 前面
A,B 移動方向
W 構造物通過波

図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
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【図15】
14
【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
18
【図20】
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【図21】
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【図22】
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