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明細書 :鉄道車両制御方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4271605号 (P4271605)
公開番号 特開2005-261095 (P2005-261095A)
登録日 平成21年3月6日(2009.3.6)
発行日 平成21年6月3日(2009.6.3)
公開日 平成17年9月22日(2005.9.22)
発明の名称または考案の名称 鉄道車両制御方法
国際特許分類 B60L   7/24        (2006.01)
B60T   8/17        (2006.01)
FI B60L 7/24 D
B60T 8/17 C
請求項の数または発明の数 5
全頁数 13
出願番号 特願2004-069958 (P2004-069958)
出願日 平成16年3月12日(2004.3.12)
審査請求日 平成18年7月20日(2006.7.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】川口 清
【氏名】石田 弘明
【氏名】早勢 剛
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
【識別番号】100096426、【弁理士】、【氏名又は名称】川合 誠
審査官 【審査官】村上 哲
参考文献・文献 特開平08-265907(JP,A)
特開平11-008906(JP,A)
特開2002-067915(JP,A)
特開2000-211487(JP,A)
調査した分野 B60L 7/24
B60T 8/17
特許請求の範囲 【請求項1】
過大な自連力の発生やブレーキの不均等を抑制する鉄道車両制御方法であって、付随車の遅れ込め制御の量は前記付随車が本来必要とする常用最大ブレーキ力の50%以下となし、電動車が前記付随車の分まで分担する遅れ込め制御の量は前記電動車が本来必要とする常用最大ブレーキ力の50%以下となし、かつ列車編成内の駆動軸に要する期待粘着係数は、実際の粘着係数の推定値を、車輪滑走時の当該軸のブレーキ力を当該軸の軸重で割ることにより求め、その算出値が駆動軸の期待粘着係数値より小さい場合には、その算出値を期待粘着係数として用いて車輪滑走を抑制し、前記遅れ込め制御の量は、固定した値を用いるのではなく、編成車両数が所定の車両数より増大した場合や、付随車に対する電動車比率が少ない場合に削減することを特徴とする鉄道車両制御方法。
【請求項2】
過大な自連力の発生やブレーキの不均等を抑制する鉄道車両制御方法であって、付随車の遅れ込め制御の量は前記付随車が本来必要とする常用最大ブレーキ力の50%以下となし、電動車が前記付随車の分まで分担する遅れ込め制御の量は前記電動車が本来必要とする常用最大ブレーキ力の50%以下となし、かつ列車編成内の駆動軸に要する期待粘着係数は、実際の粘着係数の推定値を、車輪滑走時の当該軸のブレーキ力を当該軸の軸重で割ることにより求め、その算出値が駆動軸の期待粘着係数値より小さい場合には、その算出値を期待粘着係数として用いて車輪滑走を抑制し、前記遅れ込め制御の量は、固定した値を用いるのではなく、急曲線通過時の線路情報、または過大な左右振動加速度の情報の何れかの情報を用いて削減することを特徴とする鉄道車両制御方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の鉄道車両制御方法において、パンタ点の架線電圧が高いために電気ブレーキの分担を減らす場合、不足分を機械ブレーキで補う電空協調ブレーキ制御については、各車両別の1両一括制御に代えて、編成列車の電気ブレーキ力を均等にするために、編成列車一括の電気ブレーキ制御用指令線を列車内に引き通し、その指令に基づいて編成列車内の各車両の電気ブレーキ力を均等に配分することを特徴とする鉄道車両制御方法。
【請求項4】
請求項1又は2記載の鉄道車両制御方法において、電動車のブレーキ制御方式については、1両各軸個別制御式の電気指令式空気ブレーキ方式とし、滑走再粘着制御時の各軸個別の電空協調ブレーキ制御を行うと共に、遅れ込めの制御の量を最大ブレーキ力の半分以下まで制限することを特徴とする鉄道車両制御方法。
【請求項5】
請求項1又は2記載の鉄道車両制御方法において、列車の減速度、編成車両数、あるいは自連力が、予め設定した値を超えた場合には、電気と空気のブレーキの急峻なジャーク量に代えて、緩慢なジャーク量に制御することを特徴とする鉄道車両制御方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両制御に、直流電動機と抵抗制御と発電ブレーキを用いたかつての旧型電車と、その後の誘導電動機と電力変換器と電力回生ブレーキを用いる近年のインバータ制御電車を例に、従来技術について説明する。
【0003】
はじめに、日本の鉄道の軌間は、1067mmであり、世界的には狭軌と呼ばれている。鉄道導入当時の車体の幅は、英国の経験値を基に軌間の2倍であったが、現在の日本の車体幅は、多くが軌間の約3倍まで拡大されている。因みに、自動車では1.3倍程度である。軌間の大きさは、曲線半径やカントや車体の幅のみならず、車両の高さや長さ、台車、軸重といった各仕様を制約する。例えば、狭軌では標準軌に比べ、低速走行時における急曲線走行が許容される。しかし、一方で車体幅の拡大に伴い、乗り上がり脱線や座屈脱線、高速走行時における蛇行動や転覆といった事故を防止する上での、線路状態や限界速度や車両制御法への制約が増す。
【0004】
例えば、鉄道車両の制御法の基本として、自動車のジャックナイフ現象やスネーク現象に相当する座屈脱線の防止のための列車制御法がある。特に減速度の大きな電車列車の場合、直流電動機と抵抗制御と発電ブレーキを用いたかつての旧型電車では、列車内のブレーキ力の均等とブレーキ応答の均等を考慮した設計が尊重され、これに加えて、ブレーキ力の急変や過大な自連力(車両間の自動連結器に加わる圧縮力)や横圧が生じない設計も重視された。
【0005】
具体的には、
(1)直流電動機の出力が小さいこともあって、MT比(電動車M・付随車Tの比率)が6M4Tというように、編成列車内でのM車の割合が多くなるようにしていた。
(2)列車内の電動車と付随車のブレーキ力は、各車とも同一の減速度となるように設計された。
(3)電動車の常用ブレーキに併用される動力ブレーキには、失効しにくい簡易な発電ブレーキが用いられた。
(4)車輪踏面制輪子には、制輪子の溶着摩耗により踏面粗さを生成する高粘着な鋳鉄系が用いられていた。
(5)MT比6:4の駆動軸に要する期待粘着係数は14%程度で、雨天時の粘着係数15%に近い値に設計された。
(6)台車には、急曲線の線路でも旋回が容易なボルスタを有し、軸バネには変位量の大きなバネが用いられた。
(7)空気ブレーキ配管には絞りを設け、圧力変化率とジャーク(減速度変化率)量は緩慢に抑えられた。
【0006】
その後、電車の主回路方式が進化し、高出力で省保守の誘導電動機と高価な電力変換器、及び電力回生ブレーキを有する従来のインバータ制御電車が普及した。その結果、コスト低減が優先され、部品点数も大幅に削減された。
【0007】
例えば、
(1)電動機出力が増大し、MT比で4M8Tというように編成列車におけるM車の割合がかつての半分以下に集約された。
(2)列車内のブレーキは、付随車の機械ブレーキ力を電動車側で分担する遅れ込め制御への依存が増大した。
(3)電動車の常用ブレーキには、架線電圧の影響で失効し易い電力回生ブレーキが普及した。
(4)車輪踏面制輪子の材質には、制輪子の摩耗と表面粗さが小さくなる合成系や焼結系が普及した。
(5)MT比4:8の駆動軸に要する期待粘着係数は20%以上で、雨天時の実際の粘着係数は逆に10%程度に低下した。
(6)台車は、空気バネになり、ボルスタレス式が普及し、軸バネは硬いゴムを用いる方式が普及した。
(7)電空協調の制御性向上のため、空気ブレーキ回路の圧力変化率は増大し、配管上の絞りは撤去された。

【特許文献1】なし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のような理由により、特に近年のインバータ制御車では、車輪・レール間の粘着力(転がり摩擦力)や架線電圧といった外乱の影響を受け易くなり、それに関するトラブルが増大した。その背景には、
(1)付随車に対する電動車割合が減る一方で速度向上したため、駆動軸に要する期待粘着係数が従前の2倍以上になった。
(2)列車内の電動車と付随車のブレーキ力の差は、常用最大ブレーキ時の低速時に従前の3倍以上になった。
(3)架線電圧や編成列車内の各電力変換器の電圧差により、電力回生ブレーキの失効や絞り込みが多発しはじめた。
(4)車輪踏面が鏡面化し、期待粘着係数と実際の粘着係数の乖離も増大したため、車輪の滑走が多発しはじめた。
(5)期待粘着係数と実際の粘着係数の乖離により、滑走に伴う電力回生ブレーキのブレーキ不均等が多発しはじめた。
(6)急曲線通過時の台車には、アンダーステアリング傾向が増大した。ブレーキ時には空気バネ化により軸重移動量が増大し、縦勾配区間通過時においては硬いゴムを用いる方式の軸バネにおいて輪重の偏りが増大した。
(7)空気ブレーキ回路の圧力変化率が増大したため、電力回生ブレーキ失効時のジャーク量が増大した。
【0009】
以上の理由により、近年のインバータ制御電車では、従前の旧型電車に比べ、動的な自連力や横圧が増大した。
【0010】
そこで、従来のインバータ制御電車の課題を解決するために、本発明は、誘導電動機を用いる従来のインバータ制御電車に対して、主に制御手段と一部センサを付加し、過大な自連力の発生やブレーキの不均等を抑制することができる鉄道車両制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するために、
(1)過大な自連力の発生やブレーキの不均等を抑制する鉄道車両制御方法であって、付随車の遅れ込め制御の量は前記付随車が本来必要とする常用最大ブレーキ力の50%以下となし、電動車が前記付随車の分まで分担する遅れ込め制御の量は前記電動車が本来必要とする常用最大ブレーキ力の50%以下となし、かつ列車編成内の駆動軸に要する期待粘着係数については、従来の20%といった固定した値を用いる方法に代えて、車輪滑走時の情報から実際の粘着係数の推定値を算出し、その算出値が駆動軸の期待粘着係数値より小さい場合には算出値を期待粘着係数として用い、車輪滑走を抑制する方法である。なお、粘着係数の推定値の算出方法は、車輪滑走時の当該軸のブレーキ力を当該軸の軸重で割って求める。しかも、電動車と付随車間の遅れ込め制御の量については、従来の固定した値を用いる方法に代えて、編成車両数が所定の車両数より増大した場合や、MT比が1M2Tのように付随車に対する電動車比率が少ない場合において、遅れ込め制御の量を削減する。
過大な自連力の発生やブレーキの不均等を抑制する鉄道車両制御方法であって、付随車の遅れ込め制御の量は前記付随車が本来必要とする常用最大ブレーキ力の50%以下となし、電動車が前記付随車の分まで分担する遅れ込め制御の量は前記電動車が本来必要とする常用最大ブレーキ力の50%以下となし、かつ列車編成内の駆動軸に要する期待粘着係数については、従来の20%といった固定した値を用いる方法に代えて、車輪滑走時の情報から実際の粘着係数の推定値を算出し、その算出値が駆動軸の期待粘着係数値より小さい場合には算出値を期待粘着係数として用い、車輪滑走を抑制する方法である。なお、粘着係数の推定値の算出方法は、車輪滑走時の当該軸のブレーキ力を当該軸の軸重で割って求める。しかも、電動車と付随車間の遅れ込め制御の量については、従来の固定した値を用いる方法に代えて、急曲線通過時の線路情報、または過大な左右振動加速度の情報の何れかの情報を用いて、遅れ込め制御の量を削減する。
)パンタ点の架線電圧が高いなどの理由で電気ブレーキの分担を減らす場合、不足分を機械ブレーキで補う電空協調ブレーキ制御については、従来の各車両別の1両一括制御に代えて、編成の電気ブレーキ力を均等にするための、列車編成一括の電気ブレーキ制御用指令線を列車内に引き通し、その指令に基づいて編成内の各車両の電気ブレーキ力を均等に配分する。
)電動車のブレーキ制御方式については、従来の一般的な1両4軸一括制御式の電気指令式空気ブレーキ方式に代えて、1両各軸個別制御式の新電気指令式空気ブレーキ方式とし、滑走再粘着制御時の各軸個別の電空協調ブレーキ制御を行うと共に、遅れ込めの制御の量を最大ブレーキ力の半分以下まで制限する。
)列車の減速度、あるいは編成車両数、あるいは自連力が、予め設定した値を超えた場合には、従来の電気と空気のブレーキの急峻なジャーク量に代えて、従来値より緩慢なジャーク量に制御する。
【0012】
以上、改善手段の多くは鉄道車両制御法の変更による。編成列車に新たに付加を要するセンサや装置も僅かですむ。すなわち、
上記(1)においては、付加すべきセンサや装置はなし。本発明に基づく鉄道車両制御法を採用する。
【0013】
上記()においては、編成列車の両端制御車への左右振動センサか横圧センサを付加する。または、GPS(衛星測位システム)と線路情報を付加する。
【0014】
上記()においては、編成車両を連ねる電気ブレーキ制御指令線の付加と鉄道車両制御法の機能を追加する。
【0015】
上記()においては、電動車のブレーキ制御装置の個別制御化(ブレーキ制御装置の交換)と鉄道車両制御法の機能追加が必要である。
【0016】
上記()においては、付加すべきセンサや装置はなし。本発明に基づく鉄道車両制御法を採用する。あるいは、編成列車中間の一部車両に対する自連力センサを設ける。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、過大な自連力の発生やブレーキの不均等を抑制することができる。
【0018】
より具体的には、
(A)座屈脱線防止を向上させることができる。
【0019】
(B)ブレーキの回生率を向上させることができる。
【0020】
(C)機械ブレーキや車輪の保守を低減させることができる。
【0021】
(D)回生ブレーキの信頼性を向上させることができる。
【0022】
(E)駆動と制御の性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
過大な自連力の発生やブレーキの不均等を抑制する鉄道車両制御方法であって、付随車の遅れ込め制御の量は前記付随車が本来必要とする常用最大ブレーキ力の50%以下となし、電動車が前記付随車の分まで分担する遅れ込め制御の量は前記電動車が本来必要とする常用最大ブレーキ力の50%以下となし、かつ列車編成内の駆動軸に要する期待粘着係数は、車輪滑走時の情報から実際の粘着係数の推定値を車輪滑走時の当該軸のブレーキ力を当該軸の軸重で割って求め、その算出値が駆動軸の期待粘着係数値より小さい場合には、算出値を期待粘着係数として用い、車輪滑走を抑制する。よって、過大な自連力の発生やブレーキの不均等を抑制することができる。しかも、電動車と付随車間の遅れ込め制御の量については、従来の固定した値を用いる方法に代えて、編成車両数が所定の車両数より増大した場合や、MT比が1M2Tのように付随車に対する電動車比率が少ない場合において、遅れ込め制御の量を削減する。
【実施例】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0025】
図1は本発明の実施例を示す鉄道車両の制御ブロック図である。
【0026】
この図に示す列車内の電気と機械による制御とを併用する電空協調制御、遅れ込め制御、駆動・力行制御を行う鉄道車両制御装置において、1は車両の制動の検出手段(既存の車両が有している指令系)、2は力行のノッチ段の検出手段(既存の車両が有している指令系)、3は車両の左右方向Gの検出センサ(自動車で用いられているエアバック用のGセンサを用いることができる)、4はMT(電動車と付随車)比の検出手段(既存の車両が有している指令系)、5は線形・速度・滑走の有無の検出手段(既存の車両が有している指令系)、6は自連力の検出センサ、7は横圧の検出センサ、8はパンタ点電流の検出手段(既存の車両が有している指令系)、9はGPS、16はデータ入力装置(線路情報17を入力可)、10は各種の検出手段1~9やデータ入力装置16からのデータを取り込んで最適な車両の制御を行う制御装置である。
【0027】
また、制御装置10によって制御の対象となる、ノッチ11、電動機13の電力を制御する電動機制御器12、電気ブレーキ14、機械ブレーキ15を備えている。
【0028】
まず、本発明に関連する各種用語について説明する。
【0029】
電空協調制御とは、電気機関車や電車では空気ブレーキのほかに発電ブレーキ(車両の運動エネルギーを主電動機で電気エネルギーに変換し、これを抵抗器に通電して熱として消費させるもの)や電力回生ブレーキ(発電ブレーキと同様の方法によって生じた電気エネルギーを電車線を通して他の負荷に消費させるもの)といった電気ブレーキが使用されているが、これらの電気ブレーキ力が飽和したり失効した場合などに空気ブレーキを作用させるなど、各々のブレーキ力の和がブレーキ力指令値と一致するようにさせる制御方法のことである。
【0030】
遅れ込め制御とは、電気ブレーキと空気ブレーキを併用するブレーキにおいて、付随車(T)の空気ブレーキによる摩擦材料の摩耗を低減させるために、電動車(M)の電気ブレーキに付随車の分も分担させる制御法である。従って、電動車または電動車(M)と付随車(T)などがユニットとなった編成列車の電気ブレーキ力が飽和状態となった場合、もしくは電気ブレーキが失効した場合に、空気ブレーキによって制動力を捕捉する。付随車の空気ブレーキは、電気ブレーキのみで負担しきれない強いブレーキの指令を受けた場合や架線電圧が高い場合などに作用する。
【0031】
この作用によって、電動車の電気ブレーキや回生ブレーキを最大限に使用し、付随車の制輪子の摩耗の低減などが図られ、省エネルギーやメンテナンス低減などの利点をもつ。付随車のブレーキシリンダ圧力の立ち上がり開始が遅れることから遅れ込め制御と名付けられた(図2参照)。
【0032】
2において、AはT車が本来必要とする常用最大ブレーキ力、Bは常用最大ブレーキAの50%以下の遅れ込め制御により減じられて作用するブレーキ力、FはM車が本来必要とする常用最大ブレーキ力、Eは遅れ込め制御により増大されて作用するM(電動)車のブレーキ力をそれぞれ示している。なお、図2(b)はスケールとしては正確には図2(a)の2倍に描くべきであるが、紙面のスペース上、1/2のスケールで描いている。
【0033】
図2(a)から明らかなように、本発明においては、T車の遅れ込め制御の量は常用最大ブレーキAの50%以下とする。また、図2(b)から明らかなように、M(電動)車でT(付随)車の分まで分担する遅れ込め制御の量は常用最大ブレーキ力Fの50%以下とし、かつ期待粘着係数と同値以下であると同時に、実際に算出された粘着力と同値以下とする。このようにすることで車輪滑走を抑制する。
【0035】
図3は編成列車の遅れ込め制御ブレーキ時における列車座(スネーク)現象例を示す図である。ここでは、2M3T編成列車を示しており、21はM車又は機関車、22,23,25はT車、24はM車である。
【0036】
このような編成列車における遅れ込め制御ブレーキ時に列車座(スネーク)現象が発生することがある。
【0037】
自連力とは、車両間の連結器軸方向に作用する力をいう。自動連結器作用力の略称である。自連力測定ピンと言われる、連結器と緩衝器を接続するピンに換えて挿入され、連結器に作用する引っ張り力、圧縮力(自連力)を検出するセンサにより容易に測定することができる。
【0038】
横圧とは、車輪・レール間に作用する力のうち、レール方向に対して垂直な平面内にあり、かつ左右方向成分の分力をいう(図4における力Q参照)。
【0039】
図5はその横圧の説明図であり、図5(a)はその連結器力左右方向成分の発生の説明図、図5(b)はその自連力の説明図、図5(c)は横圧Qと輪重Pの説明図である。
【0040】
横圧は、歪みゲージを貼った測定輪軸を組み込んだ試験車両を用いた車上測定、または歪みゲージを貼った特定のレール上で車両を走行させることにより、運転条件や車種・車軸の差を比較する地上測定によって測定する。
【0041】
ジャーク制御とは、乗り心地ならびに力行・ブレーキ制御、電空協調制御における制御の一つである。鉄道車両制御においては、引っ張り力やブレーキ力の制御開始時のトルク変化率の制御のことを指す。力行や電気ブレーキの場合、主電動機電流によって制御される。空気ブレーキの場合、単純な絞り径切り換えの方法もある。なお、ジャークとは加・減速度の時間変化率を指し、位置の時間による3階微分値に相当する。
【0042】
粘着とは、列車を加速するための駆動力やブレーキ力の伝達を可能にするレール・車輪間の摩擦現象をいい、レール・車輪間で車輪円周方向に作用する摩擦力を粘着力という。
【0043】
粘着係数とは、レール・車輪間に作用する1車軸または1車輪当たりの車輪円周方向の接線力を、1車軸または1車輪当たりのレールへの垂直力で除した接線力係数F/Wの最大値を粘着係数(μ)という。
【0044】
座屈脱線とは、複数の車両で組成された列車編成において、車両間に生じる圧縮連結器の作用力により支持するばね装置の作用範囲を越えて車体が大きく変位する現象をいう。
【0045】
本発明においては、
(1)列車編成内の駆動軸に要する期待粘着係数については、従来の20%といった固定した値を用いる方法に代えて、車輪滑走時の情報から実際の粘着係数の推定値を算出し、その算出値が駆動軸の期待粘着係数値より小さい場合には算出値を期待粘着係数として用い、車輪滑走を抑制する。なお、粘着係数の推定値の算出方法は、車輪滑走時の当該軸のブレーキ力を当該軸の軸重で割って求める。
【0046】
このためには、主に従来から装備されているセンサや装置を用いることができ、新たに付加すべきセンサや装置はなくてすむが、本発明に基づく鉄道車両制御法の機能を追加する必要がある。
(2)電動車Mと付随車T間の遅れ込め制御の量については、従来の固定した値を用いる方法に代えて、編成車両数が所定の車両数より増大した場合や、MT比が1M2Tのように付随車Tに対する電動車Mの比率が少ない場合において、遅れ込め制御の量を削減する。
【0047】
このためには、主に従来から装備されているセンサや装置を用いることができ、新たに付加すべきセンサや装置はなくてすむが、本発明の基づく鉄道車両制御法の機能を追加する必要がある。
(3)電動車と付随車間の遅れ込め制御の量については、従来の固定した値を用いる方法に代えて、急曲線通過時の線路情報、または過大な左右振動加速度の情報の何れかの情報を用いて、遅れ込め制御の量を削減する。
【0048】
このためには、編成列車の両端制御車への車両の左右方向Gの検出センサ(左右振動センサ)3か横圧の検出センサ7を付加する。または、GPS(衛星測位システム)9とデータ入力装置16から線路情報17を入力して用いる。
(4)電動車の電気ブレーキ力の演算については、従来のブレーキノッチ(減速度の指令量に相当)と速度と乗車重量の情報に加え、上記(1)で算出した期待粘着係数を用いて、電力回生ブレーキの分担を削減する。
【0049】
このためには、主に従来から装備されているセンサや装置を用いることができ、新たに付加すべきセンサや装置はなくてすむが、本発明に基づく鉄道車両制御法の機能を追加する必要がある。
(5)パンタ点の架線電圧(パンタ点の電流測定による架線電圧)が高いなどの理由で電気ブレーキの分担を減らす場合、不足分を機械(空気)ブレーキで補う電空協調(ブレンディング)ブレーキ制御については、従来の各車両別の1両一括制御に代えて、編成の電気ブレーキ力を均等にするための、列車編成一括の電気ブレーキ制御用指令線(図示なし)を列車内に引き通し、その指令に基づいて編成内の各車両の電気ブレーキ力を均等に配分する。
【0050】
このためには、編成車両を連ねる電気ブレーキ制御指令線(図示なし)の付加と本発明に基づく鉄道車両制御法の機能を追加する。
(6)電動車のブレーキ制御方式については、従来の一般的な1両4軸一括制御式の電気指令式空気ブレーキ方式に代えて、1両各軸個別制御式の新電気指令式空気ブレーキ方式とし、滑走再粘着制御時の各軸個別の電空協調ブレーキ制御を行うと共に、遅れ込めの制御の量を最大ブレーキ力の半分以下まで制限する。
【0051】
このためには、電動車のブレーキ制御装置の個別制御化(ブレーキ制御装置の交換)と本発明に基づく鉄道車両制御法の機能追加を行う。
(7)列車の減速度、あるいは編成車両数、あるいは自連力が、予め設定した値を超えた場合には、従来の電気と空気のブレーキの急峻なジャーク量に代えて、従来値より緩慢なジャーク量に制御する。
【0052】
このためには、主に従来から装備されているセンサや装置を用いることができ、新たに付加すべきセンサや装置はなくてすむが、本発明に基づく鉄道車両制御法の機能を追加する必要がある。あるいは、編成列車中間の一部車両に対する自連力センサ6を設ける。
【0053】
そこで、本発明の鉄道車両制御は、上記した検出センサ1~9からの情報に基づいて制御装置10によって、制御対象であるノッチ11、電動機13の電力を制御する電動機制御器12、電気ブレーキ14、機械ブレーキ15を制御することにより、上記したように、過大な自連力の発生やブレーキの不均等を抑制するようにしている。
【0054】
車両の制動の検出は、車両の制動力の検出手段1において、車両の速度計で速度の変化をみることによって検出することができる。
【0055】
力行のノッチ段の検出は、運転席に配置されたノッチの段の位置を検出する力行のノッチ段の検出手段2によって検出することができる。
【0056】
車両の左右方向Gの検出は、曲線走行時の車両に作用する左右方向Gの力を検出する車両の左右方向Gの検出センサ3によって検出することができる。
【0057】
MT(電動車と付随車)比は、車両編成データに基づいて、MT(電動車と付随車)比の検出手段4によって検出することができる。
【0058】
線形・速度・滑走の有無の検出は、車両の変位と速度と加速度から線形・速度・滑走の有無の検出手段5によって検出することができる。
【0059】
自連力の検出は、連結器と緩衝器を接続する自連力測定ピンに配置された自連力の検出センサ6によって検出される。
【0060】
必要な場合には、横圧の検出は、歪みゲージを貼った測定輪軸を組み込んだ試験車両による車上測定を行い、横圧の検出センサ7によって行うことができる。
【0061】
パンタ点電流の検出は、パンタ点電流を測定するパンタ点電流の検出手段8によって検出され、パンタ点の電圧情報を得ることができる。
【0062】
図6は本発明にかかる曲線線路における鉄道車両を示す図であり、図6(a)はその鉄道車両の配置を、図6(b)は車輪とレール間の粘着力の摩擦円のモデルを示す図である。
【0063】
これらの図において、26は横圧、27は自連力、28はブレーキに用いられるベクトル分、29は案内力に用いられるベクトル分、30は粘着係数に相当するベクトル分、31は曲線状のレール、32は台車、33は台車32上に配置される車両、34は連結器である。
【0064】
そこで、カーブで横方向の案内力を取られると、進行方向のブレーキ力は、図6(b)に示すベクトル分だけに減少する。したがって、期待粘着係数の削減を要する。
【0065】
図7は本発明にかかる鉄道車両モデルを示す図である。
【0066】
この図において、41は車体、42は台車枠、43は輪軸、44は空気ばね、45はヨーダンパとその緩衝ゴム、46は牽引リンクの緩衝ゴム、47は軸ばね、48は軸ばねダンパ、49は軸箱前後支持剛性である。
【0067】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、過大な自連力の発生やブレーキの不均等を抑制することができる安全な鉄道車両制御に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施例を示す鉄道車両の制御ブロック図である。
【図2】遅れ込め制御の説明図である。
【図3】編成列車の遅れ込め制御ブレーキ時における列車座屈(スネーク)現象例を示す図である。
【図4】レールに作用する力の説明図である。
【図5】横圧の説明図である。
【図6】本発明の実施例を示す車両の配置例を示す図である。
【図7】本発明の実施例を示す台車部の構造を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
1 車両の制動の検出手段
2 力行のノッチ段の検出手段
3 車両の左右方向Gの検出センサ
4 MT(電動車と付随車)比の検出手段
5 線形・速度・滑走の有無の検出手段
6 自連力の検出センサ
7 横圧の検出センサ
8 パンタ点電流の検出手段
9 GPS
10 制御装置
11 ノッチ
12 電動機の電力を制御する電動機制御器
13 電動機
14 電気ブレーキ
15 機械ブレーキ
16 データ入力装置
17 線路情報
26 横圧
27 自連力
28 ブレーキに用いられるベクトル分
29 案内力に用いられるベクトル分
30 粘着係数に相当するベクトル分、
31 曲線状のレール
32 台車
33 車両
34 連結器
41 車体
42 台車枠
43 輪軸
44 空気ばね
45 ヨーダンパとその緩衝ゴム
46 牽引リンクの緩衝ゴム
47 軸ばね
48 軸ばねダンパ
49 軸箱前後支持剛性
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6