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明細書 :鋼材の交換周期の設定方法および交換周期の管理装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4101207号 (P4101207)
公開番号 特開2005-345112 (P2005-345112A)
登録日 平成20年3月28日(2008.3.28)
発行日 平成20年6月18日(2008.6.18)
公開日 平成17年12月15日(2005.12.15)
発明の名称または考案の名称 鋼材の交換周期の設定方法および交換周期の管理装置
国際特許分類 G01N  17/00        (2006.01)
FI G01N 17/00
請求項の数または発明の数 2
全頁数 6
出願番号 特願2004-161435 (P2004-161435)
出願日 平成16年5月31日(2004.5.31)
審査請求日 平成18年8月16日(2006.8.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】坂井 宏行
個別代理人の代理人 【識別番号】100085394、【弁理士】、【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
審査官 【審査官】福田 裕司
参考文献・文献 特開2003-169415(JP,A)
特開2002-294681(JP,A)
特開2003-262580(JP,A)
特開2002-062252(JP,A)
特開平04-134295(JP,A)
調査した分野 G01N 17/00
特許請求の範囲 【請求項1】
鋼材劣化の劣化促進物である海水を含有する水が存在する海底トンネルの入口から出口に至るまで連続的に設置された長尺状の鋼材の交換周期の設定方法であって、予め設定した所定間隔置きの位置にある鋼材の劣化度合をそれぞれ観測し、該観測した劣化度合に基づいて前記長尺状の鋼材を複数の区分に区分けし、該各区分内の鋼材のなかで鋼材設置から最も早く不具合が発生するまでの時間を当該各区分における鋼材の交換周期であるとそれぞれ設定するようにしたことを特徴とする鋼材の交換周期の設定方法。
【請求項2】
鋼材劣化の促進物である海水を含有する水が存在する海底トンネルの入口から出口に至るまで連続的に設置された長尺状の場所に設置された鋼材の交換周期の管理装置であって、予め設定した所定間隔置きの位置にある鋼材の劣化度合をそれぞれ観測し、該観測した劣化度合に基づいて前記長尺状の鋼材を複数のグループに区分けされた各区分を登録する手段と、該各区分毎の鋼材設置日および該各区分内の鋼材のなかで鋼材設置から最も早く不具合が発生するまでの時間を当該各区分における鋼材の交換周期であるとしてそれぞれ設定された当該交換周期を登録する手段と、該登録された鋼材設置日および交換周期から交換予定日を演算する手段とを備えて構成されることを特徴とする鋼材の交換周期の管理装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、海底トンネル等の地下構造物に配設され、海水等の鋼材劣化の促進物を含有する水(水溶液)が存在する場所に設置された鋼材の交換周期の設定方法および交換周期の管理装置の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
こんにち、地下水面や海面より低い位置にトンネルやボックスカルバート等の地下構造物を築造することが頻繁に行われ、このような地下構造物に鋼材が露出する状態で設けられることがある。そしてこのような鋼材のなかには、例えば地下水に海水を含有する漏水(以下「海水含有漏水」という。)が存在し、これが継続的に付着するものがあり、このような場合、鋼材は、漏水含有物である海水が付着することにより、さらに詳しくは、海水中の塩分の付着により劣化(腐食)していくことになる。そして海水含有漏水のような水が鋼材に付着した場合における腐食の電気化学的な仕組みは次のものと考えられる。まず鋼材が腐食するには、付着溶液中に酸化剤である溶存酸素の存在が前提で、該存在する溶存酸素により水が付着している部分の鋼材の表面に電気的な偏りが生じ、付着している水によって電子が輸送され、これにより鉄イオン(鉄(II)イオン(Fe2+)、鉄(III)イオン(Fe3+))が鋼材表面に生成する。ここで付着水が海水含有漏水である場合のように多量の塩化物イオンが溶解していると、該塩化物イオンが前記生成した鉄イオンに配位して鉄のクロロコンプレックスを生成することになって水に溶けにくい鉄の水酸化物の生成を妨害する。鉄のクロロコンプレックスは水に溶け易く、かつ、水に安定に存在することから、前記生成した鉄のクロロコンプレックスは付着水に溶け出していくことになり、この結果、鋼材は、鉄の水酸化物により表面被覆がなされて保護されるようなことがなく、常に新鮮な腐食表面が腐食環境中に暴露され続けることになる。そして通常の環境下では海水含有漏水中には溶存酸素が十分に存在していることから、結果的に、海水含有漏水に曝露され続ける鋼材は、前記生成した鉄のクロロコンプレックスが継続的(連続的)に漏水に溶け出すことになって痩せ細り状態で腐食し、劣化が進行していくことになる。
ところで鋼材が振動や熱負荷によって劣化する場合、その劣化度合いを超音波で評価しようとしたものが知られている(特許文献1)が、このものは、鋼材が繰り返し振動や熱負荷を受けることで鋼材内部の結晶粒界に炭化物が析出して層となり、この炭化物層では超音波の伝播速度が速く、これを利用して劣化度合いを評価し、不具合発生に至る前に鋼材の交換をすることになる。
そして劣化が進行した鋼材について、不具合発生の前に交換をすることは、点検作業員が現場に行って目視で行っているのが現状であるため、鋼材の交換周期を設定する手法については記載すべき先行技術文献情報はない。

【特許文献1】特開平7-260753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このように海水含有漏水が付着され続ける鋼材は、腐食して劣化が進行していくことにより強度低下を招くことになる。そして劣化が進行した鋼材は、必要強度以下になる前に交換する等のメンテナンス処理を施すことが要求されるが、従来、この交換周期は、前記設置された鋼材のうち、最も早く劣化促進したものにあわせて全箇所の鋼材を交換しているのが現状である。このため、未だ劣化が進まず、十分に使用に耐えるものまでも交換することになって交換コストが高騰するだけでなく、交換のための作業も長期間に亘ることになって作業性に劣るという問題があり、ここに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記のような実情に鑑み、これらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、鋼材劣化の劣化促進物である海水を含有する水が存在する海底トンネルの入口から出口に至るまで連続的に設置された長尺状の鋼材の交換周期の設定方法であって、予め設定した所定間隔置きの位置にある鋼材の劣化度合をそれぞれ観測し、該観測した劣化度合に基づいて前記長尺状の鋼材を複数の区分に区分けし、該各区分内の鋼材のなかで鋼材設置から最も早く不具合が発生するまでの時間を当該各区分における鋼材の交換周期であるとそれぞれ設定するようにしたことを特徴とする鋼材の交換周期の設定方法である。
請求項2の発明は、鋼材劣化の促進物である海水を含有する水が存在する海底トンネルの入口から出口に至るまで連続的に設置された長尺状の場所に設置された鋼材の交換周期の管理装置であって、予め設定した所定間隔置きの位置にある鋼材の劣化度合をそれぞれ観測し、該観測した劣化度合に基づいて前記長尺状の鋼材を複数のグループに区分けされた各区分を登録する手段と、該各区分毎の鋼材設置日および該各区分内の鋼材のなかで鋼材設置から最も早く不具合が発生するまでの時間を当該各区分における鋼材の交換周期であるとしてそれぞれ設定された当該交換周期を登録する手段と、該登録された鋼材設置日および交換周期から交換予定日を演算する手段とを備えて構成されることを特徴とする鋼材の交換周期の管理装置である。
【発明の効果】
【0005】
そして本発明は、請求項1のようにすることで、連続的に配置された長尺状の鋼材の交換を、全区間でなく、細かく区分けした区分ごとでの鋼材交換ができることになって劣化鋼材の交換作業が容易になる
と共に、効率のよい交換ができることになる。
請求項2のようにすることで、連続的に配置された長尺状の鋼材の交換管理ができることになって、鋼材のメンテナンス性がさらに向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
前述したように、海水のように鋼材劣化の促進物を含有する水が付着する鋼材は、例えば鋼材劣化の促進物が海水である場合、塩化物イオンによって腐食されて劣化が進行していくが、その劣化度合いは、鉄のクロロコンプレックスの生成量に影響される。そしてこれは、鋼材設置時から現在に至るまで鋼材に付着した塩化物イオンの総量、つまり累積量(絶対量、積算量または延べ通過量としても表現できる。)に関連付けられ、設置される環境(場所)が同じなら、同じ状態で劣化すると推論できる。
【0007】
ところで海底トンネルのように延長の長いところに設置される鋼材は、トンネルの出入口付近とトンネル中心部とでは漏水中の海水量が異なり、一般にトンネル中心部に向うほど海水量が多く、そして海水量が多いほど劣化が促進されると推定される。海底トンネルは、図1に示すように、本坑1および作業坑2を有し、そのうちの本坑1は、陸地にトンネル出入口が設けられ、トンネルの中間に向かうほど深くなるようにしてトンネル途中にこう配変更点3を有する略V字形の傾斜構造で築造されている。これに対して作業抗2は、前記本坑1の最深位置をこう配変更点として坑口に至るほど深くなるよう傾斜した略逆V字形に築造され、そして各坑口側の地上位置においてたて坑4が築造されている。
【0008】
そしていま、このようになっているある海底トンネルにおいて、本坑1の入口から出口に至るまで連続的に設置された長尺状の鋼材について、所定間隔(例えば50m間隔)置きに劣化度合を観測した。設置から5年後の劣化度合(mm)をグラフ化したものを図2に示す。これによると、入口であるA位置からこう配変更点3であるD位置までの劣化度合の変化を観察すると、A位置からB位置までは微増状態の変化であり、B位置からC位置までは急傾斜状に増大する変化であり、C位置からD位置までは放物線状に増大する変化であり、該D位置で極大点となることが確認された。
【0009】
一方、こう配変更点3であるD位置から出口であるH位置までの劣化度合いの変化を観察すると、D位置からE位置までは放物線状に減少する変化であり、E位置からF位置までは微減する変化であり、F位置からG位置までは急傾斜状に減少する変化であり、G位置からH位置まではほとんど変化のない変化であることが確認された。
【0010】
そこでいま、A位置からB位置までを第1区分、B位置からC位置までを第2区分、C位置からF位置までを第3区分、F位置からG位置までを第4区分、G位置からH位置までを第5区分として区分けをし、各区分において最も劣化が速いところの鋼材について、設置してから不具合発生までの時間(期間)を鋼材の交換周期として設定し、この設定した交換周期を基準とし、実際にはこの交換周期よりも半年前に交換するように管理することで、従来のように全区間に亘る鋼材の交換作業が不要になって、交換作業の効率化が図れると共に、鋼材の無駄な交換を回避できることになる。この他に鋼材交換をあらかじめスケジュール化できるという利点もある。
そしてこのような劣化度合の変化は、個々の海底トンネルにより相違はあるが、同じ海底トンネルであれば同じような変化をしていることが確認され、本発明に信頼性があることが認められる。
【0011】
そして次に、前記交換周期の管理装置について説明する。このものは、汎用のコンピューターを用いて構成できるが、コンピューター本体は、その制御部6に記憶手段(登録手段)や演算手段等の必要手段を備えるが、このものには、前記区分けした区分が登録され、該区分ごとに設置日や交換周期が入力(キーボード7等による入力)できるようになっている。そして制御部6は、設置日と交換周期を入力すると、これに基づいて交換予定日を演算してディスプレイ8に表示する。さらに制御部6自体に内蔵する時計機能を基に、設置日から今日までの経過日数、さらには交換周期満了までの残存日数を表示するように設定される。制御部6はさらに、交換周期満了前の例えば6箇月となったとき、交換を促す表示、例えば該当区分の記載文字を赤色表示する等の表示や音声報知をする等して管理者に報知するよう設定される。
【0012】
このようにして鋼材の交換管理をすることにより、区分けした区分ごとの交換管理が簡単にできることになって、鋼材のメンテナンスが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】海底トンネルの概略断面図である。
【図2】劣化度合とトンネル位置との関係を示すグラフ図である。
【図3】交換周期の管理装置のブロック回路図である。
【図4】管理装置の表示画面図である。
【符号の説明】
【0014】
1 本坑
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3