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明細書 :伝力機構構築方法および伝力機構

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4393946号 (P4393946)
公開番号 特開2006-057251 (P2006-057251A)
登録日 平成21年10月23日(2009.10.23)
発行日 平成22年1月6日(2010.1.6)
公開日 平成18年3月2日(2006.3.2)
発明の名称または考案の名称 伝力機構構築方法および伝力機構
国際特許分類 E02D  27/30        (2006.01)
E02D   5/08        (2006.01)
FI E02D 27/30
E02D 5/08
請求項の数または発明の数 6
全頁数 9
出願番号 特願2004-237660 (P2004-237660)
出願日 平成16年8月17日(2004.8.17)
審査請求日 平成19年2月21日(2007.2.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
発明者または考案者 【氏名】神田 政幸
【氏名】村田 修
【氏名】西岡 英俊
【氏名】田中 浩一
【氏名】武田 篤史
【氏名】崎本 純治
【氏名】平尾 淳一
【氏名】東野 光男
【氏名】喜多 直之
個別代理人の代理人 【識別番号】100097113、【弁理士】、【氏名又は名称】堀 城之
審査官 【審査官】苗村 康造
参考文献・文献 特開2003-138577(JP,A)
特開2002-013134(JP,A)
特開2004-003208(JP,A)
社団法人日本道路協会,鋼管矢板基礎設計施工便覧,社団法人日本道路協会,1998年 2月20日,初版第2刷,P.209~210、275~282,図-2.7
調査した分野 E02D 27/00~27/52
E02D 5/00~ 5/20
E02D 17/00~17/20
特許請求の範囲 【請求項1】
鋼材とコンクリートとの間でせん断力および引張力が伝達される伝力機構を構築する伝
力機構構築方法であって、
前記鋼材に有孔板が固着される鋼板固着工程と、
前記有孔板の孔にアンカー鉄筋が掛着される鉄筋掛着工程と、
前記有孔板および前記アンカー鉄筋の周囲に前記コンクリートが打設されて硬化するコ
ンクリート硬化工程とを有する伝力機構構築方法において、
前記有孔板の上端部及び下端部には、その周辺と孔とをつなぐ鉄筋通路が形成されており、前記鉄筋通路を通して前記有孔板の上端部及び下端部の前記孔に前記アンカー鉄筋が掛着されることを特徴とする伝力機構構築方法。
【請求項2】
前記有孔板は、孔あき鋼板であることを特徴とする請求項1に記載の伝力機構構築方法

【請求項3】
前記鉄筋通路は、前記孔あき鋼鈑の一部が切断されて形成されたものであることを特徴
とする請求項2に記載の伝力機構構築方法。
【請求項4】
前記鋼材は、U形鋼矢板であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の伝
力機構構築方法。
【請求項5】
前記コンクリートは、フーチングであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに
記載の伝力機構構築方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の伝力機構構築方法によって構築されたことを特徴と
する伝力機構。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼矢板併用式直接基礎の施工方法などに適用するに好適な伝力機構構築方法と、その伝力機構構築方法によって構築された伝力機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼矢板併用式直接基礎1を施工する際には、図6および図7に示すように、複数枚のU形鋼矢板51を順に地盤2内に打ち込んで矩形断面状の鋼矢板構造体5を形成し、この鋼矢板構造体5に包囲された地盤2を掘り下げる。そして、その空間にフーチング鉄筋(図示せず)を配筋した後、場所打ちコンクリートを打設してフーチング3を形成する。さらに、フーチング3の上側に橋脚4を立設していた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このとき、せん断力をフーチング3から各U形鋼矢板51へ円滑に伝えるべく、U形鋼矢板51の打設前に、孔あき鋼板7を各U形鋼矢板51の内面(フーチング3側の面)に縦向きに溶接していた。また、曲げによる引張力をフーチング3から各U形鋼矢板51へ円滑に伝えるべく、鋼矢板構造体5に包囲された地盤2を掘削した後に、孔あき鋼板7の上下両側において、所定本数(図6では、3本ずつ)のアンカー鉄筋9を各U形鋼矢板51の内面に横向きにスタッド溶接していた。

【特許文献1】特開2003-138577号公報(段落〔0041〕〔0042〕〔0044〕の欄、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これでは次のような不都合があった。
【0005】
第1に、鋼矢板併用式直接基礎1の施工現場でアンカー鉄筋9をU形鋼矢板51の内面、つまり鉛直面に対してスタッド溶接しなければならないので、このアンカー鉄筋9が太いと溶接だれ(熱で軟化した材料が自重で垂れ下がる現象)を回避することが困難となる。そのため、所定の直径(通常のスタッド工法では概ね16mm、特殊なスタッド工法を採用しても高々22mm)以下の細いアンカー鉄筋9しか実用に適さず、必然的にアンカー鉄筋9の必要本数が増えるため、作業性が悪い。
【0006】
第2に、鋼矢板構造体5は、図7に示すように、各U形鋼矢板51が交互に手前側(フーチング3側)と奥側(フーチング3と反対側)に位置する波形断面を呈しており、奥側に引っ込んだU形鋼矢板51の左右両側にはそれぞれ、手前側に突出したU形鋼矢板51が立ちはだかっている。その結果、この奥側のU形鋼矢板51に対してアンカー鉄筋9をスタッド溶接するための作業空間を確保しづらく、作業性が悪い。
【0007】
第3に、アンカー鉄筋9をフーチング鉄筋よりも内側まで届かせようとすると、フーチング鉄筋を配筋した後に、これらフーチング鉄筋の隙間からアンカー鉄筋9のスタッド溶接を行わざるを得ず、作業性が悪い。
【0008】
これらの不都合は、U形鋼矢板51とフーチング3との接合部に限らず、鋼管矢板とフーチングとの接合部や、土留め鋼材とスラブとの接合部などで、せん断力および引張力を伝達する伝力機構についても、同様に発生する場合がある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑み、作業性に優れた伝力機構構築方法と、その伝力機構構築方法によって構築された伝力機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
まず、請求項1に係る発明は、鋼材とコンクリートとの間でせん断力および引張力が伝達される伝力機構を構築する伝力機構構築方法であって、前記鋼材に有孔板が固着される鋼板固着工程と、前記有孔板の孔にアンカー鉄筋が掛着される鉄筋掛着工程と、前記有孔板および前記アンカー鉄筋の周囲に前記コンクリートが打設されて硬化するコンクリート硬化工程とを有する伝力機構構築方法において、前記有孔板の上端部及び下端部には、その周辺と孔とをつなぐ鉄筋通路が形成されており、前記鉄筋通路を通して前記有孔板の上端部及び下端部の前記孔に前記アンカー鉄筋が掛着されることを特徴とする。
また、請求項2に係る発明は、前記有孔板は、孔あき鋼板であることを特徴とする。
また、請求項3に係る発明は、前記鉄筋通路は、前記孔あき鋼鈑の一部が切断されて形成されたものであることを特徴とする。
また、請求項4に係る発明は、前記鋼材は、U形鋼矢板であることを特徴とする。
また、請求項5に係る発明は、前記コンクリートは、フーチングであることを特徴とする。
また、請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の伝力機構構築方法によって構築されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、鋼材とコンクリートとの間で引張力を伝達するためのアンカー鉄筋は、これを有孔板の孔に掛着するだけでその機能を発現し、現場での溶接作業を省くことができる。その結果、作業性に優れた伝力機構構築方法および伝力機構を提供することが可能となる。
【0012】
しかも、有孔板には、その周辺と孔とをつなぐ鉄筋通路が形成されているので、閉鎖ループ形のアンカー鉄筋を使用することが可能となる。これにより、アンカー鉄筋とコンクリートとの接触面積を増大させ、両者間の締結力を容易に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
鋼矢板併用式直接基礎1は、図1に示すように、地盤2に施工された矩形のフーチング3を有しており、フーチング3内にはフーチング鉄筋(図示せず)が配筋されている。また、フーチング3の上側には橋脚4が立設されており、フーチング3の周囲には矩形断面状の鋼矢板構造体5が地盤2に埋設された形で形成されている。この鋼矢板構造体5は、図3に示すように、複数枚のU形鋼矢板51が、交互に手前側(フーチング3側)と奥側(フーチング3と反対側)とに位置するように継手51aを介して波形断面状に接合されたものである。
【0015】
そして、各U形鋼矢板51の内面(フーチング3側の面)には、図2および図3に示すように、孔あき鋼板6が縦向きに溶接されている。各孔あき鋼板6は長方形板状の基板6aを有しており、基板6aには複数個(図2では、6個)の円形の孔6bが一列に並んで形成されている。また、各孔あき鋼板6には、最上段の孔6bの上部と基板6aの周辺とをつなぐ鉄筋通路6cが水平に形成されているとともに、最下段の孔6bの上部と基板6aの周辺とをつなぐ鉄筋通路6cが水平に形成されている。ここで、各鉄筋通路6cは、基板6aの一部を切断することによって簡単に形成することができる。さらに、最上段および最下段の孔6bにはそれぞれ、略長方形状のアンカー鉄筋8が水平方向に掛着されている。各アンカー鉄筋8は、図3に示すように、その両端部8a、8bが内側に回り込んで互いに当接しているため、閉鎖ループ形となっている。
【0016】
鋼矢板併用式直接基礎1は以上のような構成を有するので、この鋼矢板併用式直接基礎1を施工する際には次の手順による。
【0017】
まず、公知の工法(例えば、バイブロハンマ工法、圧入工法など)を用いて、複数枚のU形鋼矢板51を順に地盤2内に打ち込んで矩形断面状の鋼矢板構造体5を形成する。このとき、各U形鋼矢板51には、その打設前に、予め鉄筋通路6cが形成された孔あき鋼板6を溶接しておく。
【0018】
次いで、鋼矢板構造体5に包囲された地盤2を掘り下げ、その空間にフーチング鉄筋(図示せず)を配筋する。
【0019】
次いで、各孔あき鋼板6の最上段および最下段の孔6bに略長方形状のアンカー鉄筋8を掛着し、手前側に向けて水平に保持する。それには、アンカー鉄筋8の先端部を孔あき鋼板6の鉄筋通路6cに挿通して孔6bに導くようにする。ここで、孔あき鋼板6には鉄筋通路6cが形成されているので、閉鎖ループ形のアンカー鉄筋8であっても孔6bに容易に掛着することができる。
【0020】
このように、アンカー鉄筋8は、U形鋼矢板51にスタッド溶接する必要がなく、孔あき鋼板6の孔6bに掛着するだけで済むので、溶接だれの心配がない。そのため、アンカー鉄筋8の直径は制限を受けず、太いアンカー鉄筋8を使うことができる。したがって、アンカー鉄筋8の必要本数が減り、作業性が向上する。
【0021】
また、鋼矢板構造体5は、各U形鋼矢板51が交互に手前側と奥側に位置する波形断面を呈しているが、孔あき鋼板6の孔6bにアンカー鉄筋8を掛着するだけで済むので、従来のスタッド溶接と比べて、特に奥側のU形鋼矢板51に対する作業性が向上する。
【0022】
さらに、アンカー鉄筋8を前記フーチング鉄筋よりも内側まで届かせようとする場合でも、後述する場所打ちコンクリートの打設直前までアンカー鉄筋8をU形鋼矢板51に立て掛けておけばよいので、従来のスタッド溶接と比べて作業性が向上する。
【0023】
最後に、鋼矢板構造体5に包囲された空間に場所打ちコンクリートを打設してフーチング3を形成する。
【0024】
すると、フーチング3と各U形鋼矢板51との間には孔あき鋼板6が介在しているので、フーチング3から各U形鋼矢板51へせん断力が円滑に伝わる。また、フーチング3と各U形鋼矢板51との間にはアンカー鉄筋8が介在しているので、フーチング3から各U形鋼矢板51へ引張力が円滑に伝わる。これらの結果、フーチング3に作用する荷重は、鋼矢板構造体5を介して地盤2に伝達されることから、橋脚4や橋桁(図示せず)などの上部構造は地盤2に強固に支持されることになる。
【0025】
しかも、アンカー鉄筋8は閉鎖ループ形であるため、アンカー鉄筋8とフーチング3との接触面積が増大し、両者間の締結力が容易に高まることになる。
【0026】
ここで、鋼矢板併用式直接基礎1の施工が終了する。
【0027】
なお、上述した鋼矢板併用式直接基礎1の施工手順は一例であり、施工現場の状況などに応じて、各工程の順序を適宜入れ替えることも可能である。例えば、U形鋼矢板51の打設後に、U形鋼矢板51に孔あき鋼板6を溶接してもよい。また、アンカー鉄筋8を掛着してから、徐々にフーチング鉄筋の配筋を行うこともできる。
【0028】
また、上述の実施形態においては、図2および図3に示すように、孔あき鋼板6の円形の孔6bに略長方形状のアンカー鉄筋8を1本ずつ掛着した場合について説明した。しかし、アンカー鉄筋8の形状は、必ずしも略長方形状に限るわけではなく、略長方形状以外の形状(例えば、U字形、L字形など)を採用することも可能である。また、アンカー鉄筋8の本数は、必ずしも1本ずつに限るわけではなく、図4に示すように、アンカー鉄筋8を2本ずつ掛着しても構わない。さらに、孔あき鋼板6の孔6bの形状は、必ずしも円形に限るわけではなく、製作可能なものである限り、円形以外の形状(例えば、正方形、三角形など)であってもよい。
【0029】
また、上述の実施形態においては、孔あき鋼板6の最上段および最下段の孔6bに、そのその上部から水平に鉄筋通路6cが形成されている場合について説明したが、この孔6bに対する鉄筋通路6cの位置は、これに限るわけではなく、図5(a)~(e)に示すように、種々考えられる。
【0030】
また、上述の実施形態においては、予め鉄筋通路6cが形成された孔あき鋼板6をU形鋼矢板51にその打設前に溶接する場合について説明したが、鉄筋通路6cの形成は必ずしも孔あき鋼板6の溶接前に限られない。すなわち、孔あき鋼板6をU形鋼矢板51に溶接した後、このU形鋼矢板51の打設の前後を問わず、ガス切断やプラズマ切断などにより、孔あき鋼板6に鉄筋通路6cを形成するようにしてもよい。
【0031】
また、上述の実施形態においては、有孔板が孔あき鋼板6である場合について説明したが、孔あき鋼板6以外の有孔板(例えば、パーフォボンドリブなど)を代用することもできる。
【0032】
また、上述の実施形態においては、矩形断面状の鋼矢板構造体5について説明したが、鋼矢板構造体5の形状は、矩形断面状以外の形状であってもよい。例えば、円形断面状、三角形断面状などの閉曲線断面状のほか、I字形断面状、L字形断面状、コの字形断面状、円弧断面状などの開曲線断面状が考えられる。
【0033】
また、上述の実施形態においては、U形鋼矢板51とフーチング3との接合部について説明したが、せん断力および引張力を伝達する伝力機構である限り、鋼材はU形鋼矢板51に限られず、コンクリートはフーチング3に限られない。例えば、鋼管矢板(鋼材)とフーチング(コンクリート)との接合部や、土留め鋼材(鋼材)とスラブ(コンクリート)との接合部などに本発明を適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る伝力機構である鋼矢板併用式直接基礎の第1の実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1に示す鋼矢板併用式直接基礎の要部を示す縦断面図である。
【図3】図2に示す鋼矢板併用式直接基礎の要部のA-A線による断面図である。
【図4】本発明に係る伝力機構である鋼矢板併用式直接基礎の第2の実施形態の要部を示す縦断面図である。
【図5】孔あき鋼板の鉄筋通路の変形例を示す正面図である。
【図6】従来の鋼矢板併用式直接基礎の一例を示す縦断面図である。
【図7】図6に示す鋼矢板併用式直接基礎の鋼矢板構造体の平面図である。
【符号の説明】
【0035】
1……鋼矢板併用式直接基礎
2……地盤
3……フーチング(コンクリート)
5……鋼矢板構造体
6……孔あき鋼板(有孔板)
6a……基板
6b……孔
6c……鉄筋通路
8……アンカー鉄筋
51……U形鋼矢板(鋼材)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6