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明細書 :車両動揺抑制方法及び鉄道車両

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3689100号 (P3689100)
公開番号 特開2004-331074 (P2004-331074A)
登録日 平成17年6月17日(2005.6.17)
発行日 平成17年8月31日(2005.8.31)
公開日 平成16年11月25日(2004.11.25)
発明の名称または考案の名称 車両動揺抑制方法及び鉄道車両
国際特許分類 B61G  5/02      
B61D 17/20      
FI B61G 5/02 B
B61D 17/20 Z
請求項の数または発明の数 6
全頁数 13
出願番号 特願2004-251410 (P2004-251410)
分割の表示 特願平11-181843 (P1999-181843)の分割、【原出願日】平成11年6月28日(1999.6.28)
出願日 平成16年8月31日(2004.8.31)
審査請求日 平成16年8月31日(2004.8.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】前橋 栄一
【氏名】鈴木 康文
【氏名】宇治田 寧
個別代理人の代理人 【識別番号】100100413、【弁理士】、【氏名又は名称】渡部 温
審査官 【審査官】山内 康明
参考文献・文献 特開昭60-229863(JP,A)
実用新案登録第2574998(JP,Y2)
実開昭54-155204(JP,U)
特公昭47-031766(JP,B1)
特開平11-139311(JP,A)
実開平05-016543(JP,U)
実開昭62-052076(JP,U)
特開昭55-044019(JP,A)
調査した分野 B61G 5/00
B61G 7/00
B61D 17/20
特許請求の範囲 【請求項1】
連結された前後の車両の連結器がほぼ1本の剛直な棒のようになる密着連結器又は密着自動連結器によって相互に連結された複数の車両からなる列車の動揺を抑制する方法であって;
上記前後の車両間は上記連結器のみで連結しつつ、上記連結器の車体に対する回動を拘束し剛にするか又は拘束の条件を変化させる手段を上記連結器と車体との間に設け、
上記連結器の車体に対する回動を拘束し剛にするか又は拘束の条件を変化させることにより、前後車両の左右動を相互に抑制することを特徴とする車両動揺抑制方法。
【請求項2】
上記拘束の条件を車両の速度に応じて変化させることを特徴とする請求項1記載の車両動揺抑制方法。
【請求項3】
上記拘束の条件を車両が進行する線路の曲率に基づき変化させることを特徴とする請求項1記載の車両動揺抑制方法。
【請求項4】
連結された前後の車両の連結器がほぼ1本の剛直な棒のようになる密着連結器又は密着自動連結器によって相互に連結された複数の車両からなる鉄道車両であって;
上記前後の車両間は上記連結器のみで連結されており、
上記連結器の車体に対する回動を拘束し剛にするか又は拘束の条件を変化させて、前後車両の左右動を相互に抑制する手段を、上記連結器と車体との間に備えることを特徴とする鉄道車両。
【請求項5】
上記手段が上記連結器と車体間に設けられたダンパ又はアクチュエータを含み、該ダンパ又はアクチュエータが車両前後方向に対して斜めに設けられていることを特徴とする請求項4記載の鉄道車両。
【請求項6】
上記ダンパ又はアクチュエータが上記連結器を挟んで一対設けられた油圧シリンダを含み、
これら相互の油圧シリンダ間を送油管で連結し、
この送油管の途中に流量制御弁を設け、
この流量制御弁により上記油圧シリンダ相互間の送油流量を可変にしたことを特徴とする請求項5記載の鉄道車両。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、密着連結器又は密着自動連結器によって相互に連結された複数の車両を有する列車において車両の動揺を抑制する方法に関する。さらに、列車編成座屈が起きにくい、あるいは左右動(ヨーイング)が少なくて乗り心地の良い鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両には、前後の車両を相互に連結し、車両間の牽引力を伝達するための連結器が設けられている。従来、鉄道車両の連結器としては、自動連結器、密着連結器、密着自動連結器あるいは固定連結器等の種類がある。これらの各種連結器のうち、密着連結器は、主として新幹線や在来線の電車に広く用いられている。一方、密着自動連結器は、主として客車、ディーゼル動力車あるいは高速貨車用に広く用いられている。
【0003】
図11及び図12は、従来の密着式連結器の一例を示す一部断面底面図及び一部断面側面図である。
この連結器105は、突起状の頭部106や角形中空の胴部107を備えている。胴部107の内部には連結される相手方の車両の連結器頭部が挿入される凹部107aが形成されている。この凹部107aには回転錠(図示されず)が設けられている。連結時に、相手方の連結器の頭部が凹部107aに挿入され、さらに進んで連結面108同士が密着すると、回転錠同士が相手方の頭部内側に噛み合って連結される。連結された前後の車両の連結器は、ほぼ1本の剛直な棒のようになる。連結器の連結の解除は、解放ハンドル(図示されず)や空圧シリンダ(図示されず)で、手動又は遠隔操作により行われる。
【0004】
連結器105は、図12に示すように、胴受け109の上に載っている。胴受け109は、車体台枠101の下部に接続された梁である。連結器105は、車体中央寄りにおいてゴム緩衝器110に連結されている。このゴム緩衝器110は、両面に長方形のゴム製突起を接着した鋼板(パッド)111を積層して枠112に納めたもので、ゴムの圧縮変形により連結器105にかかる衝撃を吸収する。
【0005】
列車衝突時の車両の挙動について図8を参照して説明する。
図8の(A)に示すように、矢印X方向に走行している車両Sの前方に障害物Wが存在したとする。この障害物Wを検知して、車両Sが衝突することなく停車した場合は問題ない。しかし、図8の(B)に示すように、車両Sが障害物Wに衝突すると、隣り合う車両が車体の左右方向に相互に折り曲がる列車編成座屈を起こす場合がある。このような列車編成座屈が起こると、脱線(車両S-1~3)や転覆(車両S-4)を引き起こすことがある。このような列車編成座屈が生じなければ、図8の(C)に示すように、隣り合う車両の端面同士が突き合う形で列車は止まり、車両の脱線や転覆の可能性は低くなる。
【0006】
次に列車の走行中における左右動揺について説明する。
図9に示すように、車両が高速(例えば250km/h以上)でトンネル内等を走行している場合、トンネル壁面と車体側面に接する空気流によって車両が左右に動揺して乗り心地が悪くなる。なお、明かり区間においては、この空気流によって後部にカルマン渦を発生し、編成列車後部の車体ほど動揺が顕著になることがわかっている。また、パンタグラフカバー装着車両は他の車両より動揺が大きいこともわかっている。
【0007】
図10は、各種の車両連結器の概要を模式的に示す平面図である。
図10の(A)は図11、12に示す密着式連結器である。この密着式連結器を有する列車では、連結器105が左右方向に首振りするのを抑制する機構はなく、列車編成座屈が生じ易くなる。
【0008】
連結器の左右方向の首振りを回避するため、諸外国の鉄道車両においては、図10の(B)に示すように、車両の連結器として、車体台枠101の左右端にバッファ125を設け、台枠の中央にターンバックル129を設けているものがある。バッファ125は、先端部125aが車体前面から突出し、基端部125bが車体に形成された凹部101a内に摺動可能に配置されている。基端部125bはばね127により付勢されている。そして、前後の車両のバッファ125の先端部125a同士が接している。
【0009】
この図10(B)の装置においては、ターンバックル129の中央部129aを回転させることにより、相互の車両100A、100Bが引き寄せられるとともに、両バッファ125同士が突き合う。このとき、バッファ125は、ばね127の付勢力により圧縮している。これが車両の連結状態である。バッファ125は車両走行時も常に突き合っており、車両衝突時にはこのバッファ125が左右車体間の座屈を防止する作用も有する。
【0010】
日本においても最近の新幹線車両では、図10の(C)に示すように、車両端部の床下にダンパ130を追設し、このダンパ130を前後の車両間に介在させることにより、車両の左右動揺(ヨーイング)を減衰させることが行われている。しかしながら、前後の車両を分離する際には、連結器150だけではなくダンパ130をも取り外す必要が生じる。このため、車両の分離時には多大な時間と手間がかかっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、車両衝突時に引き起こされる列車の編成座屈を防止する方法に関連して、車両の動揺を抑制する方法を提供することを目的とする。さらに、列車編成座屈が起きにくい、あるいは左右動(ヨーイング)が少なくて乗り心地の良い鉄道車両を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に関連する列車編成座屈防止方法は、連結された前後の車両の連結器がほぼ1本の剛直な棒のようになる密着連結器又は密着自動連結器によって相互に連結された複数の車両からなる列車の編成座屈を防止する方法であって;ここで、列車の編成座屈とは、隣り合う車両が車体の左右方向に相互に折り曲がる現象をいい、列車の衝突直前又は衝突時、あるいは地震時に、運転士の操作又は架線停電、地上施設からの緊急停車指令により、あるいは列車の加速度、振動又は衝撃をセンサで検知して、上記連結器の車体に対する回動の拘束を強める(剛にする)ことを特徴とする。
連結器に拘束を与えるだけであり、車両間は連結器だけで連結されているため、車両の分離時には連結器のみを分離させればよい。このため、ダンパ等により前後の車両を繋ぐものに比べて編成分離・連結が楽である。連結器の回動首振りを拘束することにより、列車が衝突事故を起こした場合の列車編成の座屈が起きにくくなる。そのため、車両の隣線張り出しや転覆の危険性も減る。なお、既存の車両を改造することも可能であり、その際の重量増加もそれほど影響はない。
【0013】
上述の列車編成座屈防止方法においては、可変絞り式油圧ダンパ、油圧アクチュエータ等を上記連結器と車体間に設け、これらのダンパ又はアクチュエータも連結器に対する拘束力を可変とすることができる。
特に、連結器の位置を制御する場合には、油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)を用いることが好ましい。油圧ダンパを用いる場合には、内部のオリフィスを閉塞したり、オリフィス径を変化させることで、連続的な拘束力制御が可能になる。
【0014】
また、上述の列車編成座屈防止方法においては、列車の衝突直前又は衝突時に上記連結器を拘束することが好ましい。
走行時は連結器の回動首振りを拘束せず、必要時(列車の衝突直前又は衝突時)にのみ拘束を行うのである。
【0015】
上述の列車編成座屈防止方法においては、運転士の操作又は架線停電、地上施設からの緊急停車指令により上記拘束を行うことができる。また、列車の加速度、振動又は衝撃をセンサで検知して拘束を行うこともできる。さらに、地震時に拘束を行うこともできる。
【0016】
連結器の拘束を強める(剛にする)ことにより、脱線した車輪や台車が大きく線路から逸脱しようとしても、健全な前車両に追動しやすくなる。このように前車両にガイドされることにより、大幅な脱線や転覆を防止することができる。この効果は、高速車両において特に有効である。このように拘束を強める(剛にする)際には、列車の加速度、振動又は衝撃をセンサで検知し、この検知結果に基づいて運転士の操作又は中央司令所からの遠隔操作により行うのがよい。
【0017】
また、列車走行中に拘束条件を変化させることで、前後車体間の左右振動を抑制することが可能となる。すなわち、車体間をダンパで繋いだ場合と同等の作用を持たせることができる。しかも、車両間の連結は連結器のみで行っているため、編成分割・連結も容易である。
大地震発生時には、連結器の拘束を一斉に行うことで、停車までの間の脱線転覆事故を減少させることができる。
【0018】
本発明の車両動揺抑制方法は、 連結された前後の車両の連結器がほぼ1本の剛直な棒のようになる密着連結器又は密着自動連結器によって相互に連結された複数の車両からなる列車の動揺を抑制する方法であって; 上記前後の車両間は上記連結器のみで連結しつつ、上記連結器の車体に対する回動を拘束し剛にするか又は拘束の条件を変化させる手段を上記連結器と車体との間に設け、上記連結器の車体に対する回動を拘束し剛にするか又は拘束の条件を変化させることにより、前後車両の左右動を相互に抑制することを特徴とする。
車両間の左右動を拘束することにより、前記の車両を繋ぐダンパがない場合にも左右動を抑制でき、車両の乗り心地が良くなる。この場合にも車両間は連結器のみで連結されているので、修理や補修時の編成分離・連結が容易である。左右動の制御はアクティブでもセミアクティブでも対応可能である。なお、アクティブ制御とは、意図的に連結器の位置を制御する方式であり、セミアクティブ制御とは、必要に応じてダンパ定数等を速度条件等により可変する等の方式である。
【0019】
本発明の車両動揺抑制方法においては、上記拘束を車両の速度に応じて行うことができる。
車速に応じて拘束の態様を変えることで、様々な速度で車両の左右動を抑制できる。
【0020】
本発明の鉄道車両は、 連結された前後の車両の連結器がほぼ1本の剛直な棒のようになる密着連結器又は密着自動連結器によって相互に連結された複数の車両からなる鉄道車両であって; 上記前後の車両間は上記連結器のみで連結されており、上記連結器の車体に対する回動を拘束し剛にするか又は拘束の条件を変化させて、前後車両の左右動を相互に抑制する手段を、上記連結器と車体との間に備えることを特徴とする。
このような鉄道車両は、従来の車体間ダンパ方式で不可能であった、小編成同士の連結編成間(先頭部同士の連結)における左右動抑制や、先頭車両の中間車代用時の左右動抑制も可能となる。もちろん、衝突時の安全確保も中間車・先頭車の区別なく発揮される。
【0021】
この鉄道車両においては、既存の連結器(密着連結器、密着自動連結器)に座を設けて拘束する構造でも、ホルダー状の拘束部(胴受け)に連結器を挿入するような構造でも実現できる。特に、胴受けを用いる場合は安価な構成となる。
さらに、上記手段を持たない従来車両との連結も可能である。前後一方の車両のみが上記手段を搭載した場合であっても、ある程度の左右動抑制効果がある。
【0022】
なお、先頭車同士が向かい合う運用では、先頭部が尖っているため、車体間ダンパが付けられない構造の場合がある。この場合でも、後述する図1の実施例のような、ダンパーやアクチュエータを斜めに配置する方式ならば十分に適用が可能である。
【0023】
本発明の鉄道車両においては、上記手段が上記連結器と車体間に設けられたダンパ又はアクチュエータを含み、該ダンパ又はアクチュエータが車両前後方向に対して斜めに設けることもできる。
斜めに設けることにより、連結器前後方向の衝撃力吸収効果をも併せ持たせることが可能となる。このため、緩衝装置の補助的役割を分担させることができる。すなわち、引き出し時や運転時において、緩衝装置の緩衝機能を、本来の緩衝装置と本発明のダンパ又はアクチュエータとのそれぞれに分担させるような使用法も可能となる。さらに、衝突時には衝撃吸収ダンパ効果をもたせることも可能となる。
【0024】
また、本発明の鉄道車両においては、上記ダンパ又はアクチュエータが上記連結器を挟んで一対設けられた油圧シリンダを含み、 これら相互の油圧シリンダ間を送油管で連結し、 この送油管の途中に流量制御弁を設け、 この流量制御弁により上記油圧シリンダ相互間の送油流量を可変にすることもできる。
衝突時において流量制御弁を完全に締め切るか、オリフィスを経て内部の作動油が徐々に外部に放出させるようにすれば、連結器の拘束を持続したままで前後衝撃を吸収して、衝撃力を緩和させることも可能となる。
【0025】
さらに、本発明の鉄道車両においては、上記油圧シリンダの進退により、上記連結器の左右位置調整を行うようにすることもできる。
このようにして位置調整を行えば、車両連結時の自動連結にも応用でき、現状の手間を大幅に削減できる。この機構のための大幅な機器追加も不要である。
【発明の効果】
【0026】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、列車編成座屈が起きにくい、あるいは左右動(ヨーイング)が少なくて乗り心地の良い鉄道車両を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例について説明する。
なお、以下の説明では、通常の鉄道車両の技術におけるのと同様に、レールの長手方向(車両の進行方向)を前後方向、軌道面におけるレール長手方向と直角の方向を左右方向、軌道面に垂直な方向を上下方向と呼ぶ。
図1は本発明の第1実施例に係る鉄道車両の連結装置周辺の構造を示す底面図である。図2は同実施例に係る鉄道車両に用いられる連結装置を前方から見た斜視図である。図3は第1実施例の連結装置を後方から見た斜視図である。図4は本実施例の鉄道車両における連結器の拘束制御系統のブロック図である。
【符号の説明】
【0028】
各図に示すように、この例の鉄道車両の連結装置は、密着連結器10とゴム緩衝器20を備えている。密着連結器10は、車体台枠1の前後端部に設けられている。密着連結器10は、前後の鉄道車両を連結するものである。密着連結器10そのものの構造は、従来提供されているものを使用できる。すなわち、各密着連結器10は、図2、3に示すように、突起状の頭部10a、角形中空の胴部10b、胴部10bの内部の凹部10c、連結面10d及び回転錠(図示されず)等を備えている。
【0029】
ゴム緩衝器20は、図1に示すように、密着連結器10の車両中央側に設けられている。ゴム緩衝器20は、前後の車両連結の際に生じる衝撃力を吸収・緩和するものである。ゴム緩衝器20そのものの構造も、従来提供されているものを使用できる。
【0030】
密着連結器10と車体台枠1間には、油圧シリンダ12が設けられている。同油圧シリンダ12は、密着連結器10を挟んで左右両側に設けられている。油圧シリンダ12は、前後方向に対して斜めに配置されている。油圧シリンダ12を斜めに設けることにより、密着連結器10前後方向の衝撃力吸収効果を併せ持たせることができる。同油圧シリンダ12は、シリンダ本体13が車体台枠1に取り付けられている。そして、このシリンダ本体13よりも車体前後端部側において、シリンダロッド14が密着連結器10に取り付けられている。
【0031】
この油圧シリンダ12により、密着連結器10の左右位置調整を行うこともできる。すなわち、前後の連結器10が離れた状態で、左又は右の油圧シリンダ12のシリンダロッド14が進出し、他方の油圧シリンダ12のシリンダロッド14が後退すると、密着連結器10は右又は左に首を振る。このようにして位置調整を行えば、車両連結時の自動連結にも応用できるので、現状の手間を大幅に削減できる。
【0032】
図3に示すように、左右相互の油圧シリンダ12のシリンダ本体13間は、送油管15により連結されている。この送油管15の途中には、流量制御弁17が組み込まれている。この流量制御弁17は、制御装置19に接続されている。この制御装置19は、後述する各検知センサの検知結果に基づいて、流量制御弁17から油圧シリンダ12への送油流量を変化させる。この制御装置19により流量制御弁17が完全に締め切られ、各油圧シリンダ12への送油流量がゼロになった場合は、密着連結器10の車体に対する回動首振りが拘束強(剛)となる。
【0033】
制御装置19には、次の各検知センサが接続されている。各検知センサは、特に図示されないが、車体の所定箇所に設けられている。なお、センサからの信号の他に、急ブレーキ指令や架線停電情報(地震発生や非常時)に応じて制御することもできる。
(1)列車の振動を検知する振動検知センサ。
振動検知センサに検知される振動値に基づき拘束力を調節する。特に、列車の脱線等により振動値が所定値以上となった場合は、流量制御弁17を完全に締め切って回動首振りを拘束強(剛)とする。
(2)列車の衝撃を検知する衝撃検知センサ。
これは、車両先頭部に大きい衝撃を受けると倒れて信号を出力する簡易な検出装置か、潰れて回路を短絡するテープスイッチ等である。この衝撃検知センサで車両後部に瞬時にして伝えて流量制御弁17を完全に締め切り、編成座屈を防止する。
【0034】
なお、密着連結器10の拘束(すなわち制御装置19による流量制御弁17の送油流量制御)は、車体の運転室に設けた操作ボタン(図示されず)を運転士が操作することにより行ってもよい。又は、中央司令所からの遠隔操作により行ってもよい。その一例として、地震の場合に、中央司令所よりの集中司令により各列車の連結器拘束を行うようにしてもよい。
【0035】
次に、上記の構成からなる鉄道車両の作用を説明する。
通常時においては、前後の車両は密着連結器10により連結された状態で走行している。このとき、密着連結器10は、相手方の連結器の頭部10aが凹部10cに挿入され、連結面10d同士が密着している。この走行時においては、油圧シリンダ12には流量制御弁17を介して油の流通が行われ、密着連結器10の回動首振りは拘束されていない。但し、密着連結器10は油圧シリンダ12に押さえられているため、回動首振りはある程度抑制されている。この場合、密着連結器10に作用する衝撃力は、油圧シリンダ12により吸収される。
【0036】
ここで、図4に示すように、矢印X方向に走行している列車Sの前方に、障害物Wが存在したとする。このとき、列車Sの運転士は、障害物Wとの衝突を避けるために急ブレーキをかける(ブロックB1)。同時に、運転士が運転台の操作ボタン(図示されず)をONにする(ブロックB1)。この操作により、流量制御弁17は完全に締め切られ、左右の油圧シリンダ12間の油流動がブロックされる。すると、密着連結器10においては、回動首振りの拘束が強められる(ブロックB2)。回動首振りが拘束されることで、密着連結器10の左右動が相互に抑制される。
【0037】
このため、列車Sが障害物Wに衝突した際に、脱線した車輪や台車が大きく線路から逸脱しようとしても、列車が編成座屈を起こさず、後車両S-2が前車両S-1に追動してガイドされることになり、脱線・転覆が防止される。この際、密着連結器10の拘束を持続したままの状態で、前後衝撃がゴム緩衝器20及び油圧シリンダ12に吸収されるので、衝突衝撃力が緩和される。
【0038】
一方、運転士が操作ボタンをONにできなかったとしても、急ブレーキに伴って車速度検知センサ(図示されず)が列車Sの減速度を検知する(ブロックB3)。この車速度検知センサの検知結果は制御装置19へと送出され、この制御装置19により流量制御弁17が完全に締め切らる。したがって、左右の油圧シリンダ12間の油流量がゼロとなり、密着連結器10においては回動首振り及び左右動の拘束が強められる(ブロックB2)。なお、車両衝突時以外に、大地震発生時には、連結器の拘束を一斉に行うようにする。これにより、停車までの間の脱線転覆による列車座屈や車体の乗り上げを緩和することができる。
【0039】
このように、密着連結器10の回動首振りを拘束することにより、列車Sが衝突事故を起こした場合の列車編成座屈を回避できる。したがって、車両の隣線張り出しや転覆を防止することができる。
【0040】
また、列車Sの走行中に密着連結器10の拘束条件を変化させることで、前後車体間の左右振動を抑制することが可能となる。すなわち、車体間をダンパで繋いだ場合と同等の作用を持たせることができる。また、既存の連結器に拘束を与えるだけであるので、車体重量が大幅に増加することがない。車両間の左右動を拘束することにより、前後の車両を繋ぐダンパの設置が不要となる。これによって、車両間は連結器のみで連結されていることになるので、修理や補修時の編成分割が容易になる。
【0041】
なお、本事例では、密着連結器10の回動首振りの拘束を油圧シリンダ12により行う構成としたが、油圧シリンダ12以外にも、可変絞り式油圧ダンパや油圧アクチュエータ等を用いることもできる。特に、拘束条件を連続的に制御する場合には、油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)を用いることが好ましい。油圧ダンパを用いる場合には、内部のオリフィスを閉塞したり、オリフィス径を変化させると、連続的な制御が可能になる。
【0042】
次に、本発明の第2実施例について説明する。
図5は、本発明の第2実施例に係る鉄道車両を示す正面図である。この第2実施例においては、油圧シリンダ12のシリンダ本体13を車体の胴受け3に取り付けている。この場合は、既存の車両の改造が最低限で済むので、特に安価な構成を実現できる。
【0043】
次に、本発明の第3実施例について説明する。
図6は本発明の第3実施例に係る鉄道車両の連結装置周辺の構造を示す底面図である。この第3実施例では、油圧シリンダ12は、前後方向に対して直交配置することもできる。この場合、油圧シリンダ12を斜めに配置したものに比べて、密着連結器10の左右拘束効果が向上する。
【0044】
なお、図7に示すように、従来の車体間ダンパ方式で不可能であった、小編成同士の連結編成間(先頭部同士の連結、図7(A)参照)における左右動抑制や、先頭車両の中間車代用時(図7(B)参照)の左右動抑制も可能となる。この場合の衝突時の安全確保も中間車・先頭車の区別なく発揮される。
さらに、油圧シリンダ12を持たない従来車両との連結も可能である。前後一方の車両のみが油圧シリンダ12を搭載した場合であっても、ある程度の左右動抑制効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1実施例に係る鉄道車両の連結装置周辺の構造を示す底面図である。
【図2】同実施例に係る鉄道車両に用いられる連結装置を前方から見た斜視図である。
【図3】第1実施例の連結装置を後方から見た斜視図である。
【図4】本実施例の鉄道車両における連結器の拘束制御系統のブロック図である。
【図5】本発明の第2実施例に係る鉄道車両を示す正面図である。
【図6】本発明の第3実施例に係る鉄道車両の連結装置周辺の構造を示す底面図である。
【図7】図7(A)は鉄道車両の先頭部同士の連結状態を示す側面図であり、図7(B)は先頭車両の中間車代用時の連結状態を示す側面図である。
【図8】編成座屈の状態を説明する説明図である。図8(A)は衝突前の状態を示す側面図であり、図8(B)は衝突後の脱線・転覆状態を説明する平面図であり、図8(C)は衝突後に隣り合う車両の端面同士が突き合った状態を説明する説明図である。
【図9】車体側面空気流によって誘発される空気流れを説明する説明図である。
【図10】図10(A)は従来の連結器の回動首振りを説明する説明図であり、図10(B)は従来の鉄道車両におけるバッファの例を示す説明図であり、図10(C)は従来の鉄道車両におけるダンパの例を示す説明図である。
【図11】従来の鉄道車両の密着連結器の一例を示す一部断面底面図である。
【図12】同一部断面側面図である。
【0046】
1 車体台枠 3 胴受け
10 密着連結器 12 油圧シリンダ
13 シリンダ本体 14 シリンダロッド
15 送油管 17 流量制御弁
19 制御装置 20 ゴム緩衝器
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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