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明細書 :早期計測震度予測方法及びそのための装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4160033号 (P4160033)
公開番号 特開2006-078297 (P2006-078297A)
登録日 平成20年7月25日(2008.7.25)
発行日 平成20年10月1日(2008.10.1)
公開日 平成18年3月23日(2006.3.23)
発明の名称または考案の名称 早期計測震度予測方法及びそのための装置
国際特許分類 G01V   1/30        (2006.01)
FI G01V 1/30
請求項の数または発明の数 2
全頁数 8
出願番号 特願2004-261743 (P2004-261743)
出願日 平成16年9月9日(2004.9.9)
審査請求日 平成18年11月27日(2006.11.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】中村 洋光
【氏名】小高 俊一
【氏名】芦谷 公稔
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
【識別番号】100096426、【弁理士】、【氏名又は名称】川合 誠
審査官 【審査官】田中 秀直
参考文献・文献 特開2002-277557(JP,A)
特開2003-066152(JP,A)
調査した分野 G01V 1/00-1/52
特許請求の範囲 【請求項1】
地震動の初期振幅への関数フィッティングの際に得られる、P波初動振幅の時間変化の程度を表す係数Bと、震央距離(観測点と震央の距離)との相関に基づいて、前記係数Bと初期微動の最大振幅Amax を含む下記の式を用いることにより、地震計の設置されている場所の計測震度Is を早期に予測することを特徴とする早期計測震度予測方法。
s =α1 log(Amax )+α2 -0.5+α3 logB+α4
ここで、α1 ~α4 は統計的に求められる係数である。
【請求項2】
(a)地震計と、
(b)該地震計からの情報を取込み、ディジタル波形データとして取得する制御処理装置内のメモリと、
(c)前記制御処理装置内において、P波初動振幅の時間変化の程度を表す係数Bと初期微動の最大振幅Amax 、統計的に得られる係数α1 ~α4 をそれぞれ求めるパラメータ演算部と、
(d)前記制御処理装置内において、計測震度Is =α1 log(Amax )+α2 -0.5+α3 logB+α4 を演算する計測震度予測部と、
(e)前記制御処理装置内において、前記早期計測震度予測情報の送信を行う情報文送出部とを具備することを特徴とする早期計測震度予測装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、地震動の初期微動(P波到達から2~3秒)のデータから計測震度を予測する早期計測震度予測方法及びそのための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、震央距離やマグニチュードを推定するためには、
(a)多点の観測データから震源位置を求め、各観測点までの震央距離を算出する、
(b)震央距離と振幅値や周期、又は振動継続時間等からマグニチュードを推定する、
(c)1観測点の初動部分の周期からマグニチュードを推定し、このマグニチュードと初動部の振幅などから、震源距離、深さ、震央距離を推定する、
等の方法がある。

【特許文献1】特開2002-277557号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した(a)や(b)の方法は、従来から行われている一般的な手法で精度は高いが、推定には地震検知から数分程度もかかってしまう。
【0004】
また、上記した(c)の方法は、地震の主要動(被害をもたらす大きな振動)が観測点に到達する前に、1観測点の初動部分のデータから推定する方法であり、地震検知から数秒で地震諸元を大まかに推定できるが、その推定精度はあまり高くなく、特に、震源が遠方の地震や深い地震などに対して推定精度が悪いという課題があった。
【0005】
そこで、本願発明者らは、既に、地震波の初動部分の波形形状をパラメータが数個の簡易な関数でフィッティングしてその波形形状を定量化し、得られたパラメータから震央距離とマグニチュードを推定することができる、震央距離及びマグニチュード推定方法とそのための装置(上記特許文献1参照)を提案している。
【0006】
さらに、これまでの地震動のP波部分に、以下に示す簡単な関数
y(t)=Bt×exp(-At) …(1)
(ここで、tはP波到達時からの経過時間)
をフィッティングすることによって、係数A,Bを決定し、地震のマグニチュードを地震検知から数秒間で推定する方法を開発している。
【0007】
本発明は、地震動の初期振幅への関数フィッティング法に基づいてP波初動振幅の時間変化の程度を表す係数Bと、初期微動(P波到達から2~3秒)の最大振幅(Amax )から、計測震度を早期に予測する早期計測震度予測方法及びそのための装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕早期計測震度予測方法であって、地震動の初期振幅への関数フィッティングの際に得られる、P波初動振幅の時間変化の程度を表す係数Bと、震央距離(観測点と震央の距離)との相関に基づいて、前記係数Bと初期微動の最大振幅を含む下記の式を用いることにより、地震計の設置されている場所の計測震度Is を早期に予測することを特徴とする。
【0009】
s =α1 log(Amax )+α2 -0.5+α3 logB+α4
ここで、α1 ~α4 は統計的に求められる係数である。
【0010】
〔2〕早期計測震度予測装置であって、地震計と、この地震計からの情報を取込み、ディジタル波形データとして取得する制御処理装置内のメモリと、前記制御処理装置内において、P波初動振幅の時間変化の程度を表す係数Bと初期微動の最大振幅Amax 、統計的に得られる係数α1 ~α4 をそれぞれ求めるパラメータ演算部と、前記制御処理装置内において、計測震度Is =α1 log(Amax )+α2 -0.5+α3 logB+α4 を演算する計測震度予測演算部と、前記制御処理装置内において、前記早期震度予測情報の送信を行う情報文送出部とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、地震動の初期振幅への関数フィッティング法に基づいてP波初動振幅の時間変化の程度を表す係数Bと、初期微動(P波到達から2~3秒)の最大振幅Amax から、本来は地震が終了してから得られる計測震度を早期に予測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
早期計測震度予測方法であって、地震動の初期振幅への関数フィッティングの際に得られる、P波初動振幅の時間変化の程度を表す係数Bと、震央距離(観測点と震央の距離)との相関に基づいて、前記係数Bと初期微動の最大振幅を含む下記の式を用いることにより、地震計の設置されている場所の計測震度Is を早期に予測することを特徴とする。
【0013】
s =α1 log(Amax )+α2 -0.5+α3 logB+α4
ここで、α1 ~α4 は統計的に求められる係数である。
【0014】
よって、本来は地震が終了してから得られる計測震度を早期に予測することができる。
【実施例】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
本発明では、地震動の初期振幅への関数フィッティングの際に得られる、P波初動振幅の時間変化の程度を表す係数Bは、震央距離(観測点と震央の距離)と明瞭な相関があるので、P波初動振幅の時間変化の程度を表す係数Bと初期微動の最大振幅Amax を含む下記の式(2)を用いることにより、計測震度Is を予測する。
【0017】
s =α1 log(Amax )+α2 -0.5+α3 logB+α4 …(2)
ここで、α1 ~α4 は統計的に求められる係数である。
【0018】
図1は本発明の実施例を示す早期計測震度予測装置のブロック図、図2はその早期計測震度予測の処理フローチャートである。
【0019】
この図において、1は地震計、2は通信回線、10は制御処理装置、11はアンチエイリアシングフィルタ(ローパスフィルタ)、12はA/D変換器、13は波形収録部、14はメモリ、15はパラメータ演算部、16は計測震度予測部、17は情報文送出部、18はGPS時計、19は状態表示装置、20はモデム、21はメモリ14へ統計的に求められる係数α1 ~α4 を入力するデータ入力装置である。
【0020】
この早期計測震度予測装置を用いた早期計測震度予測方法を図2に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0021】
(1)地震計1から情報を制御処理装置10に取込み、ディジタル波形データとしてメモリ14に取得する(ステップS1)。
【0022】
(2)次に、パラメータ演算部15において、P波初動振幅の時間変化の程度を表す係数Bと初期微動の最大振幅Amax をそれぞれ求める(ステップS2)。
【0023】
(3)次に、ステップS2で求めたパラメータに基づき、計測震度予測部16において、上記した式(2)の演算を行い、計測震度Is を予測する(ステップS3)。
【0024】
(4)次に、その予測された計測震度Is を早期震度予測情報として、情報文送出部17に取込み、ここから送信を行う(ステップS4)。
【0025】
ここで、本発明の前提となる地震諸元の推定方法についてさらに詳細に説明する。
【0026】
図3は実際の地震波に簡易関数をフィッティングした例を示す図であり、図3(a)は実際の初動波(P波)を通常表示した図、図3(b)はそれを振幅絶対値対数表示し、上記(1)式の関数y(t)=Bt×exp(-At)をフィッティングさせた図である。
【0027】
ここで、図3(b)における初期震動の傾きB(Bは地震波形の初動振幅の時間変化に関するパラメータ)は震央距離と相関がある。本発明では、この初期震動の傾きBと震央距離の関係に注目する。
【0028】
図4は本発明にかかる真の震央距離(km)とP波初動振幅の時間変化の程度を表す係数B(gal/s)の特性図であり、ここでは、■はM(マグニチュード)7、▲はM6、+はM5、▽はM4、●はM3を示している。
【0029】
この図から明らかなように、地震動の初期振幅への関数フィッティングの際に得られる、P波初動振幅の時間変化の程度を表す係数Bは、震央距離(観測点と震央の距離)と明瞭な負の相関があり、相関関係はマグニチュードの大きさによらないものである。そこで、この相関に基づき、下記のP波初動振幅の時間変化の程度を表す係数Bと初期微動の最大振幅Amax を含む下記の関係式(2)を用いることにより、計測震度Is を予測することが可能となる。
【0030】
s =α1 log(Amax )+α2 -0.5+α3 logB+α4 …(2)
但し、α1 ~α4 は統計的に求める係数である。
【0031】
なお、通常よく使われる震度の予測式(震度の距離減衰式)として、下記の式(3)がある。
【0032】
s =β1 M+β2 Δ+β3 logΔ+β4 …(3)
ここで、Is は計測震度、Mはマグニチュード、Δは震央距離、β1 ~β4 は統計的に与えられる係数である。
【0033】
また、これまでの検討で得られた関係式は次の通りである。
【0034】
M=c1 log(Amax )+c2 logΔ +c3 …(4)
Δ∝B-0.5 …(5)
但し、Amax は初動の最大振幅、Bは関数フィッティングで得られるP波初動振幅の時間変化の程度を表す係数B、c1 ~c3 は統計的に与えられる係数である。上記式(3)に上記式(4)、(5)を代入して係数をまとめると、上記式(2)が得られる。
【0035】
図5は本発明の早期震度予測方法を用いた震度予測の推定精度を示す図であり、横軸に計測震度Is -実際の震度を、縦軸に頻度を示している。
【0036】
1996年から2003年に発生したマグニチュード3.0~8.0の約400地震の記録(記録数は約2400)に上記した本発明の早期計測震度予測方法を適用し、係数α1 ~α4 は統計的に求め、推定精度を検討した。その結果、本発明の早期計測震度予測方法によって求められた計測震度の推定誤差〔計測震度Is -実際の震度〕については、実際の震度±0.5の範囲に本発明の早期計測震度予測方法によった計測震度の全体の約60%のデータが含まれていた。
【0037】
図6は本発明の比較例としてのマグニチュード(M)と震央距離(Δ)を用いた震度予測の推定精度を示す図である。
【0038】
図5と図6を比較すると、本発明の早期計測震度予測方法(図5)と地震が終了してから得られるマグニチュード(M)と震央距離(Δ)を使った震度予測方法(図6)では、ほぼ同様の精度があることが分かった。むしろ、詳細に見ると、本発明の早期計測震度予測方法を示す図5の方が計測震度±0.5の範囲により多くのデータが含まれており、精度が高いと言える。
【0039】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の早期震度予測方法は、地震動の初期微動(P波到達から2~3秒)のデータから早期に震度を予測することができるため、計測震度予測に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施例を示す早期計測震度予測装置のブロック図である。
【図2】本発明の実施例を示す早期計測震度予測の処理フローチャートである。
【図3】実際の地震波に簡易関数をフィッティングした例を示す図である。
【図4】本発明にかかる真の震央距離とP波初動振幅の時間変化の程度を表す係数Bの特性図である。
【図5】本発明の早計測期震度予測方法を用いた震度予測の推定精度を示す図である。
【図6】本発明の比較例としてのマグニチュード(M)と震央距離(Δ)を用いた震度予測の推定精度を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
1 地震計
2 通信回線
10 制御処理装置
11 アンチエイリアシングフィルタ(ローパスフィルタ)
12 A/D変換器
13 波形収録部
14 メモリ
15 パラメータ演算部
16 計測震度予測部
17 情報文送出部
18 GPS時計
19 状態表示装置
20 モデム
21 データ入力装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5