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明細書 :摩擦評価量測定装置及び方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4377805号 (P4377805)
公開番号 特開2006-153610 (P2006-153610A)
登録日 平成21年9月18日(2009.9.18)
発行日 平成21年12月2日(2009.12.2)
公開日 平成18年6月15日(2006.6.15)
発明の名称または考案の名称 摩擦評価量測定装置及び方法
国際特許分類 G01N  19/02        (2006.01)
G01M  17/10        (2006.01)
FI G01N 19/02 A
G01M 17/02 A
請求項の数または発明の数 8
全頁数 16
出願番号 特願2004-343369 (P2004-343369)
出願日 平成16年11月29日(2004.11.29)
審査請求日 平成19年4月11日(2007.4.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】飯田 浩平
【氏名】西山 幸夫
【氏名】前橋 栄一
個別代理人の代理人 【識別番号】100100413、【弁理士】、【氏名又は名称】渡部 温
審査官 【審査官】福田 裕司
参考文献・文献 特開2003-269948(JP,A)
特開2003-057135(JP,A)
特開2005-156505(JP,A)
特開平11-008901(JP,A)
特開2006-078306(JP,A)
調査した分野 G01N 19/02
G01M 17/10
特許請求の範囲 【請求項1】
被測定物の表面に押し当てられるスリップローラーと、
該スリップローラーを被測定物の表面上において所望の回転周速(Vr)で回転させる回転手段と、
前記スリップローラーを被測定物の表面に沿って所望の移動速度(Vf)で移動させる移動手段と、
被測定物の表面に対する前記スリップローラーの法線方向の押圧力を設定する押圧力設定手段と、
前記押圧力を検出する押圧力検出手段と、
前記スリップローラーが回転しつつ移動する際に該ローラーにかかる接線力を検出する接線力検出手段と
前記スリップローラーの周囲3箇所において各々が被測定物の表面に当たって転動する回転自在の補助ローラーと、を備え、
装置使用時に、前記補助ローラーが被測定物の表面に当たり、次いで、押圧力設定機構を操作して、スリップローラーを被測定面に押し付けが可能であり、
前記スリップローラーの回転周速(Vr)と移動速度(Vf)を異ならせ、前記スリップローラーを被測定物の表面でスリップさせながら、被測定物の表面の摩擦評価量を測定可能なことを特徴とする摩擦評価量測定装置。
【請求項2】
被測定物に固定される固定フレームと、
該固定フレームの長手方向に延びるガイド、及び、該ガイドに沿ってスライド可能に設けられたスライダーを有するスライド機構と、
該スライド機構のスライダーに揺動可能に設けられた測定フレームと、
該測定フレーム及び前記スライダーを前記ガイドに沿って移動させる移動手段と、
該測定フレームに回転可能に取り付けられたスリップローラーと、
該スリップローラーを被測定物の表面上で回転させる回転手段と、
前記測定フレームに設けられた、被測定物の表面に対する前記スリップローラーの法線方向の押圧力を設定する押圧力設定機構と、
前記スリップローラーの押圧力を検出する押圧力検出手段と、
前記スリップローラーの周囲3箇所において前記測定フレームに回転自在に取り付けられ、各々が被測定物の表面に当たって転動する補助ローラーと、
前記回転手段によって前記スリップローラーを回転させつつ、前記移動手段で前記測定フレームを移動させる際に、前記スリップローラーにかかる接線力を検出する接線力検出手段と、
を具備することを特徴とする摩擦評価量測定装置。
【請求項3】
前記測定フレームが、
前記スライド機構のスライダーに揺動可能に設けられた、前記各補助ローラーを回転自在に支持する外フレームと、
該外フレームに揺動可能に設けられた、前記スリップローラーを回転可能に支持する内フレームと、
を備えることを特徴とする請求項2記載の摩擦評価量測定装置。
【請求項4】
前記接線力検出手段が、前記内フレームと前記外フレーム間に配置されていることを特徴とする請求項3記載の摩擦評価量測定装置。
【請求項5】
前記移動手段が、
被測定物の表面に着脱可能に配置されるフレキシブルラックと、
前記測定フレームに設けられた駆動用モーターと、
該駆動用モーターの出力軸に設けられた、前記フレキシブルラックに噛み合うピニオンと、
を備えることを特徴とする請求項2、3又は4記載の摩擦評価量測定装置。
【請求項6】
前記回転手段が、
前記測定フレームに設けられた駆動用モーターと、
該駆動用モーターの出力軸と前記スリップローラーの支持軸との間に架け渡されたタイミングベルトと、
を備えることを特徴とする請求項2~5いずれか1項記載の摩擦評価量測定装置。
【請求項7】
前記固定フレームに、該固定フレームを被測定物に着脱自在に固定する固定手段が設けられていることを特徴とする請求項2~6いずれか1項記載の摩擦評価量測定装置。
【請求項8】
スリップローラーの周囲3箇所に配置した回転自在の補助ローラーを被測定物の表面に当て、次いで、被測定物の表面にスリップローラーを押し当てて、被測定物の表面に対する前記スリップローラーの法線方向の押圧力を設定し、
前記スリップローラーを被測定物の表面上において所望の回転周速(Vr)で回転させつつ、被測定物の表面に沿って所望の移動速度(Vf)で移動させ、
これら回転周速(Vr)と移動速度(Vf)を異ならせ、前記スリップローラーを被測定物の表面でスリップさせながら、被測定物の表面の摩擦評価量を測定することを特徴とする摩擦評価量測定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車輪の踏面等の摩擦評価量(クリープ力、クリープ係数)を測定する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車輪やレールの動摩擦係数を測定する装置としては、例えば鉄道総合技術研究所製の『μテスター』が知られている。このμテスターは、車輪又はレールの表面に接してすべりながら回転するスリップローラーを備えており、このスリップローラーと車輪又はレールとの間に働く摩擦力の特性(動摩擦係数)を測定する装置である。μテスターは、現場において、車輪又はレールの様々な位置に様々な姿勢で取り付けて用いることができ、現在広く普及している。
【0003】
ところで、このμテスターは、車輪又はレールの動摩擦係数の測定は可能であるが、クリープ係数等の摩擦評価量までは測定することができない。これに対し、本出願人は、特許文献1(特願2003-399122号)において、すべり率とクリープ力との関係(クリープ飽和特性)を測定することが可能な『クリープ力測定装置』を提案した。このクリープ力測定装置によれば、レール上に測定ローラー(スリップローラー)を押し付けた状態で転動させることにより、実際のレール上でのクリープ力飽和特性を簡易に測定することが可能である。
【0004】

【特許文献1】特願2003-399122号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、実際の車輪とレールとの間は、微小すべり(すべり率-10%~+10%程度)を伴う転動が生じている。この微小すべり状態における摩擦評価量を測定可能な装置が求められている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、鉄道車両の踏面等について、微小すべり状態における摩擦評価量を測定可能な装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の摩擦評価量測定装置は、 被測定物の表面に押し当てられるスリップローラーと、 該スリップローラーを被測定物の表面上において所望の回転周速(Vr)で回転させる回転手段と、 前記スリップローラーを被測定物の表面に沿って所望の移動速度(Vf)で移動させる移動手段と、 被測定物の表面に対する前記スリップローラーの法線方向の押圧力を設定する押圧力設定手段と、 前記押圧力を検出する押圧力検出手段と、 前記スリップローラーが回転しつつ移動する際に該ローラーにかかる接線力を検出する接線力検出手段と 前記スリップローラーの周囲3箇所において各々が被測定物の表面に当たって転動する回転自在の補助ローラーと、を備え、 装置使用時に、前記補助ローラーが被測定物の表面に当たり、次いで、押圧力設定機構を操作して、スリップローラーを被測定面に押し付けが可能であり、 前記スリップローラーの回転周速(Vr)と移動速度(Vf)を異ならせ、前記スリップローラーを被測定物の表面でスリップさせながら、被測定物の表面の摩擦評価量を測定可能なことを特徴とする。
【0008】
この装置によれば、被測定物の表面上において、押圧力設定手段によりスリップローラーを所望の押圧力で押し当てた状態で、スリップローラーを所望のすべり率で転走させながら摩擦係数等を測定することができる。この際、スリップローラーは、回転手段により回転周速Vrで回転しつつ移動手段により移動速度Vfで移動し、これらVr、Vf(Vr≠Vf)を適切に設定することで、すべり率S=(Vr-Vf)/{(Vr+Vf)/2}を任意の微小な状態とすることができる。そのため、従来の装置でも測定可能なVr=0(S=-200%)の完全滑走すべり状態、及び、Vf=0(S=200%)の完全空転すべり状態に加えて、微小すべり(すべり率-10%~+10%程度)状態における摩擦評価量(摩擦係数等)を測定することが可能となる。また、微小すべり状態における摩擦力が測定可能になることで、例えば被測定物の表面に付着した塵埃等が摩擦力に与える影響を解析できるようになる。
なお、測定時には、回転周速Vr及び移動速度Vfを一定(したがってすべり率Sを一定)としてスリップローラーを転走させる以外に、すべり率Sを滑走領域から空転領域で変えつつスリップローラーを転走させることもできる。
【0009】
本発明の他の摩擦評価量測定装置は、被測定物に固定される固定フレームと、 該固定フレームの長手方向に延びるガイド、及び、該ガイドに沿ってスライド可能に設けられたスライダーを有するスライド機構と、 該スライド機構のスライダーに揺動可能に設けられた測定フレームと、 該測定フレーム及び前記スライダーを前記ガイドに沿って移動させる移動手段と、 該測定フレームに回転可能に取り付けられたスリップローラーと、 該スリップローラーを被測定物の表面上で回転させる回転手段と、 前記測定フレームに設けられた、被測定物の表面に対する前記スリップローラーの法線方向の押圧力を設定する押圧力設定機構と、 前記スリップローラーの押圧力を検出する押圧力検出手段と、 前記スリップローラーの周囲3箇所において前記測定フレームに回転自在に取り付けられ、各々が被測定物の表面に当たって転動する補助ローラーと、 前記回転手段によって前記スリップローラーを回転させつつ、前記移動手段で前記測定フレームを移動させる際に、前記スリップローラーにかかる接線力を検出する接線力検出手段と、を具備することを特徴とする。
【0010】
この装置を使用する際には、まず、装置全体を被測定物上に載置して固定フレームを固定する。このとき、3箇所の補助ローラーが被測定物の表面に当たる。次いで、押圧力設定機構を操作して、スリップローラーを被測定面に押し付ける。この際の押圧力は、押圧力検出手段で検出される。そして、回転手段と移動手段とを同時に駆動し、スリップローラーの回転周速Vrと、スリップローラーを支持する測定フレームの移動速度Vfを制御して、所望のすべり状態でスリップローラーを転走させる。この際のスリップローラーにかかる接線力は、接線力検出手段で検出される。この装置においても、被測定面上において、スリップローラーを所望の押圧力で押し当てた状態で、スリップローラーを所望の微小すべり率で転走させることができるので、従来の装置でも測定可能な片方の接触面が静止(VrもしくはVfが0)している完全すべり状態に加えて、微小すべり状態における摩擦評価量を測定することが可能となる。
【0011】
本発明の摩擦評価量測定装置においては、前記測定フレームが、 前記スライド機構のスライダーに揺動可能に設けられた、前記各補助ローラーを回転自在に支持する外フレームと、 該外フレームに揺動可能に設けられた、前記スリップローラーを回転可能に支持する内フレームと、を備えるものとすることができる。
この場合、スライド機構に対して外フレームが揺動し、外フレームに対して内フレームが揺動する二重の揺動構造が実現され、測定時のスリップローラーの姿勢は3つの補助ローラーで維持される。そのため、被測定物の表面が曲面状であっても、スリップローラーを望ましい姿勢に保ちつつ曲面に沿って転動させることができる。
【0012】
本発明の摩擦評価量測定装置においては、前記接線力検出手段が、前記内フレームと前記外フレーム間に配置されているものとすることができる。
この場合、押圧力検出手段及び接線力検出手段がスリップローラーに近接して配置されているので、測定誤差を少なくすることができる。
なお、各検出手段としては、ロードセル等を用いることができる。
【0013】
本発明の摩擦評価量測定装置においては、前記移動手段が、 被測定物の表面に着脱可能に配置されるフレキシブルラックと、 前記測定フレームに設けられた駆動用モーターと、 該駆動用モーターの出力軸に設けられた、前記フレキシブルラックに噛み合うピニオンと、を備えるものとすることができる。
例えば被測定物が鉄道車輪の踏面の場合、車輪のフランジ頂部にフレキシブルラックを配置し、これにピニオンを噛み合わせて測定フレームを駆動させることができる。フレキシブルラックは、測定対象となる回転対称曲面と同心円周上に配置することができるので、測定フレームの駆動(ピニオンの噛み合い移動)とスリップローラーの移動速度Vfを一定に保ちつつ測定を行い易い。
【0014】
本発明の摩擦評価量測定装置においては、前記回転手段が、 前記測定フレームに設けられた駆動用モーターと、 該駆動用モーターの出力軸と前記スリップローラーの支持軸との間に架け渡されたタイミングベルトと、を備えるものとすることができる。
このタイミングベルトと前記移動手段のフレキシブルラックを用いるとともに、スリップローラーの移動方向を一定とすると、測定フレームやスリップローラーの駆動系のすべりやバックラッシ等の悪影響を低減できる。さらに、フレキシブルラックに噛み合う前記ピニオンをノーバックラッシギアに代えると、滑走すべりから空転すべりあるいはその逆のような、すべりの向きを反転させたときのバックラッシの悪影響も低減できる。
【0015】
本発明の摩擦評価量測定装置においては、前記固定フレームに、該固定フレームを被測定物に着脱自在に固定する固定手段が設けられているものとすることができる。
この固定機構を用いることで、装置の被測定物への固定及び固定解除を容易に行うことができる。そのため、装置を別の測定部位に移すのに手間がかからず、多くの測定部位を短時間で測定することができるようになる。
【0016】
本発明の摩擦評価量測定方法は、スリップローラーの周囲3箇所に配置した回転自在の補助ローラーを被測定物の表面に当て、次いで、被測定物の表面にスリップローラーを押し当てて、被測定物の表面に対する前記スリップローラーの法線方向の押圧力を設定し、 前記スリップローラーを被測定物の表面上において所望の回転周速(Vr)で回転させつつ、被測定物の表面に沿って所望の移動速度(Vf)で移動させ、 これら回転周速(Vr)と移動速度(Vf)を異ならせ、前記スリップローラーを被測定物の表面でスリップさせながら、被測定物の表面の摩擦評価量を測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、微小すべり状態における摩擦係数等の摩擦評価量を測定可能な摩擦評価量測定装置及び方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施の形態は、被測定物が鉄道車両の車輪の場合である。
図1は、本実施の形態に係る摩擦評価量測定装置の全体図(正面図)である。
図2は、同摩擦評価量測定装置の側面断面図である。
図3は、同摩擦評価量測定装置の平面断面図(図1のX-X線断面図)である。
図4は、同摩擦評価量測定装置の測定部の上面図である。
図5は、同摩擦評価量測定装置の測定部の外フレーム部及びその連結構造の分解斜視図である。
図6は、同摩擦評価量測定装置の測定部の内フレーム部及び測定ヘッド部の斜視図である。
なお、以下の説明において、上下・左右・前後とは、特に断らない限り各図における矢印方向を指すものとする。
【符号の説明】
【0019】
図1~図6に示す摩擦評価量測定装置1は、大きく分けて、以下の各部(A)~(F)を備えている。
(A)被測定物である車輪Cに固定される固定フレーム部10。この固定フレーム部10は、固定用マグネット15(固定機構)、ガイド21及びスライダー22を有するリニアガイド20(スライド機構)を含む。
(B)固定フレーム部10の内側でリニアガイド20のスライダー22に取り付けられた測定部30。この測定部30は、スライダー22に揺動可能に取り付けられた外フレーム部40(図5参照)、外フレーム部40に揺動可能に取り付けられた内フレーム部50(図6参照)、内フレーム部50の内側に配置された測定ヘッド部62(図6参照)を有する。
【0020】
(C)測定部30の測定ヘッド部62に設けられたスリップローラー60及びその回転機構61(図2、図6参照)。
(D)測定部30の測定ヘッド部62に設けられたスリップローラー60の押圧力設定機構71。この押圧力設定機構71は、スリップローラー60の押圧力検出用ロードセル79(検出手段)を含む。
(E)測定部30の外フレーム部50に組み付けられた接線力検出部80。この接線力検出部80は、接線力検出用ロードセル81(検出手段)を含む。
(F)測定部30を移動させる移動機構91(図2参照)。
【0021】
以下、各部の詳細について説明する。
(A)固定フレーム部10
図1及び図2に示すように、固定フレーム部10は、上プレート11及び縦フレーム12を備えている。縦フレーム12は、上プレート11の左端から垂下している(図2参照)。縦フレーム12の下側両隅部には、左右方向に延びる位置決め棒13が設けられている(図1参照)。各位置決め棒13は、装置1の設置時に車輪Cのフランジ部Cfに当たり、装置1全体を位置決めする。なお、固定フレーム部10の上プレート11に開けられた孔11a(図2参照)は、後に詳述する押圧力設定機構71を操作するための工具(図示されず)を通すためのものである。
【0022】
縦フレーム12の前後下端それぞれには、固定用マグネット(永久磁石又は電磁石)15が設けられている。各固定用マグネット15は、装置1の設置時に車輪Cのフランジ部Cfの側面に吸着し、装置1全体を定位置に固定する。この固定用マグネット15には、レバー16が取り付けられており、このレバー16の切り換えに応じて磁力が生じるようになっている。このような固定用マグネット15を用いることで、装置1の車輪Cへの固定及び別場所への設置時の固定解除を容易に行うことができる。
【0023】
図1、図2(及び図5)に示すように、固定フレーム部10の上プレート11の下面には、リニアガイド20が設けられている。このリニアガイド20は、上プレート11の長手方向(前後方向)に延びるガイド21と、このガイド21に沿ってスライド可能に設けられたスライダー22とからなる。ガイド21は、上プレート11の下面に固定されており、このガイド21にスライダー22がスライド可能に設けられている。
【0024】
(B)測定部30
測定部30は、前述の通り、外フレーム部40、内フレーム部50、測定ヘッド部62を備えている。
図5に最もわかり易く示すように、外フレーム部40の上部は、バネ受けプレート31、支持プレート32、連結コイルバネ35を介して、リニアガイド20のスライダー22に揺動可能に連結されている。バネ受けプレート31は、スライダー22の下面に固定されている(図2参照)。このバネ受けプレート31の下面には、支持プレート32がビス39で固定されている。この支持プレート32の対向する左右の側面には、一対の支持ピン33が突設されている。
【0025】
支持プレート32の各支持ピン33には、外フレーム部40の係合突片41がそれぞれ係合している。係合突片41は、左右の支持ピン33のそれぞれに対応して、外フレーム部40上面の左右端に二本ずつ形成されており、二本の係合突片41間のスペースに支持ピン33が嵌り込んでいる(図1参照)。さらに、バネ受けプレート31の下面四隅と、外フレーム部40の上面四隅とは、連結コイルバネ35で連結されている。各連結コイルバネ35には、それぞれ補強ピン37が内挿されている。各補強ピン37は黄銅材等からなり、外フレーム部40の上面四隅に取り付けられている。これら補強ピン37は、連結コイルバネ35の座屈防止の役割を果たす。
【0026】
外フレーム部40全体は、係合突片41が両支持ピン33に当たることで前後水平方向の変位は規制されるが、両支持ピン33を支点として前後方向に揺動可能であり、且つ、上下方向に若干摺動可能である。各連結コイルバネ35は、バネ受けプレート31に対して外フレーム部40を連結支持しつつ、外フレーム部40全体を下方向に付勢している。外フレーム部40の前後方向の揺動時において、各連結コイルバネ35は伸縮・屈曲変形する(後述する図8、図9参照)。
【0027】
外フレーム部40は、三つの脚部(左側の前後二つの脚部43、及び、右側のV字状の脚部44)を備えている。各脚部43、44の下端それぞれには、補助ローラー45が回転自在に取り付けられている。これら補助ローラー45は、測定ヘッド部62に取り付けられたスリップローラー60の周囲3箇所に位置し、装置1の車輪Cへの設置時において、各々が車輪Cの踏面Csに当たって転動する。
【0028】
外フレーム部40の内側には、内フレーム部50が揺動可能に設けられている。図2及び図6にわかり易く示すように、内フレーム部50はL字状をしている。この内フレーム部50上端の左右側面には、それぞれ支持ピン53が突設されている。各支持ピン53は、外フレーム部40の左右側面に埋め込まれたベアリング47(図1、図2参照)にそれぞれ嵌め込まれている。内フレーム部50は、支持ピン53を支点として前後方向に揺動可能である。本実施の形態では、固定フレーム10・リニアガイド20に対して外フレーム部40が揺動し、この外フレーム部40に対して内フレーム部50が揺動する二重の揺動構造が実現されており、測定時のスリップローラー60の姿勢は3つの補助ローラー45で維持されるようになっている。そのため、曲面状の踏面Csであっても、スリップローラー60を望ましい姿勢に保ちつつ、踏面Csに沿って転動させることができる。
【0029】
内フレーム部50の内側には、測定ヘッド部62が配置されている。この測定ヘッド部62と内フレーム部50との間には、ガイド56及びスライダー57からなるリニアガイド55が介装されている。このリニアガイド55は、内フレーム部50と一体に揺動するが、後に詳述する押圧力設定機構71の押し付けネジ75を捩じ込んだ際に、内フレーム部50側のガイド56に対して、スライダー57が測定ヘッド部62とともに若干下方向にスライドする。測定ヘッド部62には、後述するスリップローラー60、回転機構61、押圧力設定機構71が設けられている。
【0030】
(C)スリップローラー60及びその回転機構61
スリップローラー60は、車輪Cの踏面Csに接した状態で、回転機構61の駆動により回転する。図2及び図6にわかり易く示すように、スリップローラー60は、測定ヘッド部62の二股状の下端に、支持軸60aを介して回転可能に設けられている。測定ヘッド部62の右側面からは、ステージ64(図2参照)が外側に張り出しており、このステージ64上には回転機構61のパルスモーター63が配置されている。
【0031】
このパルスモーター63の出力軸63aには、歯車63gが設けられている。一方、スリップローラー60の支持軸60aは、測定ヘッド部62の側面から突き出ており、ここにも歯車60gが設けられている。そして、これら両歯車60g、63gには、ループ状のタイミングベルト65が掛け渡されている。回転機構61のパルスモーター63が駆動して出力軸63a・歯車63gが回転すると、タイミングベルト65を介して歯車60g・支持軸60aが回転し、スリップローラー60が回転する。
【0032】
(D)押圧力設定機構71
押圧力設定機構71は、車輪Cの踏面Csを測定する際に、スリップローラー60の押し付け荷重を手動で設定する機構である。この押圧力設定機構71を操作することにより、クリープ係数の算出に必要なスリップローラー60の押し付け荷重を調整することができる。図2及び図6にわかり易く示すように、押圧力設定機構71は、測定ヘッド部62の穴62a内部に配置された押し付けバネ73を備えている。この押し付けバネ73の上端は、押し付けネジ75の下端のピストン76に係合している。
【0033】
押し付けネジ75の上端は、下側から順に、外フレーム部40上面の孔40a、支持プレート32の孔32a、バネ受けプレート31の孔31aを通って、固定フレーム10の上プレート11近くまで延びている。押し付けネジ75は、上プレート11の孔11a(図2参照)からL型六角レンチ(図示されず)等を差し込んで回転させることができる。押し付けネジ75のネジ部は、内プレート部50上面のネジ孔に噛み合っている。押し付けネジ75は、内プレート部50のネジ孔に噛み合った状態で、上下方向に進退可能である。押し付けネジ75が進退する際には、ピストン76が測定ヘッド部62内部の穴62aにガイドされて上下する。
【0034】
押し付けバネ73の下端は、押圧部材78に係合している。この押圧部材78の下側において、測定ヘッド部62の穴62a底部には、押圧力検出用ロードセル79が配置されている。このロードセル79は、スリップローラー60の直上に位置している。押圧力設定機構71による押し付け力の設定値(押し付けネジ75の捩じ込み量)は、ピストン76→押し付けバネ73→押圧部材78を介して、ロードセル79で検出される。ロードセル79の検出値は、モニタ(図示されず)に表示される。
【0035】
(E)接線力検出部80
図1、図3、図6に示すように、接線力検出部80は、接線力検出用ロードセル81を備えている。このロードセル81は、測定ヘッド部62の後端面に接するように、前述した押圧力検出用ロードセル79の近くに配置されている。前述の通り、ロードセル79はスリップローラー60の直上に位置しており、ロードセル81もスリップローラー60に近接して配置されているので、測定誤差を少なくすることができる。
【0036】
接線力検出用ロードセル81は、固定ブロック83の前端面に固定されている。この固定ブロック83は、固定プレート85で測定部30の外フレーム部40に固定されている。図1に示すように、外フレーム部40と測定ヘッド部62との間には、コイルバネ89が設けられている。このコイルバネ89により、外フレーム部40側に測定ヘッド部62が引き寄せられ、測定ヘッド部62とロードセル81との接触状態が常に確保される。ロードセル81の検出値は、制御部(図示されず)に送出され、この制御部においてクリープ力、クリープ係数に換算されて表示される。
なお、詳しい測定原理については、図7を参照しつつ後述する。
【0037】
(F)移動機構91
移動機構91は、スリップローラー60を含む測定部30全体をリニアガイド20に沿って移動させる機構であって、前述の回転機構61とは独立の駆動系である。図1~図3に示すように、移動機構91は、フレキシブルラック93を備えている。このフレキシブルラック93は、装置1本体とは別体であって、測定時に車輪Cのフランジ部Cf頂部に着脱可能に配置される。フレキシブルラック93は、車輪Cの踏面Csと同心円周上に配置することができるので、測定部30の駆動とスリップローラー60の移動速度を一定に保ちつつ測定を行い易い。
【0038】
図2及び図3に示すように、測定部30の外フレーム部40の左側面からは、ステージ49が図の左側に張り出している。このステージ49の下面には、コイルバネ98を介してパルスモーター92が設けられている。このパルスモーター92の出力軸92aには、フレキシブルラック93に噛み合うピニオン94が設けられている。ステージ49の前端には、下方に垂下する側壁49aが形成されている。この側壁49aとパルスモーター92との間には、ガイド96及びスライダー97からなるリニアガイド95(図3参照)が介装されている。このリニアガイド95は、ピニオン94がフレキシブルラック93に噛み合って回転する際に、側壁49a側のガイド96に対して、スライダー97がパルスモーター92とともに若干下方向にスライドする。
【0039】
ここで、図7を参照しつつ、前述の構成を有する摩擦評価量測定装置1を用いた摩擦評価量(摩擦係数)の測定原理について説明する。
図7は、本実施の形態に係る摩擦評価量測定装置の測定原理を説明するための概念図である。
図7には、測定部30、補助ローラー45、スリップローラー60、押圧力設定機構71が概念的に示されている。この図において、R1は車輪Cの踏面Csを示し、R2は移動機構91のフレキシブルラック93とピニオン94との噛み合い線を示す。P1は接線力検出用ロードセル81の検出作用点を示し、P2は押圧力検出用ロードセル79の検出作用点を示し、P3は測定部30の内フレーム部50に設けられた支持ピン53の揺動支点を示す。さらに、揺動支点P3から検出作用点P1までの上下方向の長さをL1で示し、揺動支点P3からスリップローラー60の踏面Csとの接点までの上下方向の長さをL2で示す。スリップローラー60の半径はrとする。L1、L2、rは、装置1の仕様に基づき決まる値である。
【0040】
スリップローラー60は、回転機構61の駆動により角速度ωで図中時計回りに回転し、測定部30は移動機構91の駆動により速度Vで図中左側から右側へと軌跡R2に沿って移動するものとする。さらに、押圧力設定機構71による押圧力設定力(すなわち、検出作用点P2における押圧力検出用ロードセル79の検出値に対して重力の影響等を補正した値)をWとし、測定ヘッド部62の押圧力(すなわち、検出作用点P1における接線力検出用ロードセル81の検出値に対してコイルバネ89の影響等を補正した値)をFとする。
【0041】
車輪Cの踏面Cs上において、押圧力設定機構71によりスリップローラー60を所望の押圧力Wで押し当てた状態で、スリップローラー60を所望のすべり率Sで転走させる。この際、スリップローラー60の回転周速(接触面におけるスリップローラー60表面の物質速度)Vrは、
Vr=r・ω
となり、スリップローラー60の移動速度(接触面における車輪Cの踏面Csの物質速度)Vfは、
Vf=(R1/R2)・V
となる。そして、スリップローラー60の転走時のすべり率Sは、
S=(Vr-Vf)/{(Vr+Vf)/2}
で与えられる。
【0042】
このスリップローラー60の転走の際、回転周速Vrと移動速度Vfとが異なるようにし(もし回転周速Vrと移動速度Vfとを等しくするとすべり率S=0となるため、回転周速Vr≠移動速度Vfの条件が必要になるのである)、角速度ωと速度Vとを適切に制御すると、スリップローラー60を所望の微小なすべり率(-10%~+10%程度)で転動させることができる。そして、このような微小すべり状態における摩擦評価量(摩擦係数)を測定することができる。なお、測定時には、回転周速Vr及び移動速度Vfを一定(したがってすべり率Sを一定)としてスリップローラー60を転走させる以外に、すべり率Sを変えつつスリップローラー60を転走させることもできる。
【0043】
このようにしてスリップローラー60を所望のすべり率Sで転走させつつ、接線力検出用ロードセル81で測定ヘッド部62の押圧力Fを検出する。この押圧力Fを用いて、車輪Cの踏面Csのクリープ力(接線力)Fcが
Fc=(L1/L2)・F
で算出される。さらに、クリープ係数Rcが
Rc=Fc/W
で算出される。
【0044】
次いで、主に図1、図8及び図9を参照しつつ、前述の摩擦評価量測定装置1の総合的な作用について説明する。
図8は、本実施の形態に係る摩擦評価量測定装置の測定開始時の状態を示す全体図である。
図9は、本実施の形態に係る摩擦評価量測定装置の測定終了時時の状態を示す全体図である。
【0045】
本実施の形態に係る摩擦評価量測定装置1は、以下(1)~(3)の手順で使用する。
(1)まず、準備段階として、固定フレーム10の内側において、測定部30を前端部移動原点に移動させておく(図8参照)。そして、固定フレーム10の位置決め棒13が車輪Cのフランジ部Cf頂部に当たるようにして装置1全体を載置した後、固定用マグネット15を用いて装置1を車輪Cに固定する。この時点で、スリップローラー60の周囲3箇所の補助ローラー45が車輪Cの踏面Csに当たる。これとほぼ同時に、車輪Cのフランジ部Cf頂部に移動機構91のフレキシブルラック93を取り付け、ピニオン94(図2、図3参照)を噛み合せる。
【0046】
(2)押圧力設定機構71を操作して、スリップローラー60の踏面Csに対する押し付け荷重Wを調整する(図2参照)。押圧力設定機構71の操作は、上プレート11の孔11aからL型六角レンチ(図示されず)等を挿入し、押し付けネジ75の上端に係合して回転させる。すると、押し付けネジ75は、内プレート部50のネジ孔に噛み合った状態で捩じ込まれ、この捩じ込み量がピストン76→押し付けバネ73→押圧部材78を介してロードセル79で負荷Wとして検出される。前述の通り、このロードセル79の検出値Wは、モニタ(図示されず)で識別できる。
【0047】
(3)回転機構61のパルスモーター63と、移動機構91のパルスモーター92を同時に駆動する。すると、スリップローラー60は、車輪Cの踏面Csに押し付けられた状態で、回転周速Vrで回転しつつ、測定部30とともに移動速度Vfで移動する(図8→図1→図9)。測定部30の移動範囲の規制は、パルスモーター92の制御、又は、始点・終点に取り付けた光センサ(図示されず)等で行うことができる。この際、前述の通り、回転周速Vrと移動速度Vfを適切に制御することで、スリップローラー60を微小なすべり状態で転走させることができる。
【0048】
測定部30においては、固定フレーム10・リニアガイド20に対しては外フレーム部40が支持プレート32の支持ピン33を支点として揺動し、各連結コイルバネ35が伸縮・屈曲変形しつつ測定部30全体を踏面Csに向けて付勢する。また、外フレーム部40に対しては内フレーム部50が支持ピン53を支点として揺動し、コイルバネ89で外フレーム40側に付勢される。スリップローラー60の姿勢は、3つの補助ローラー45で維持され、測定ヘッド部62、ピニオン94の曲面追従性はそれぞれリニアガイド55、95で補償される。これにより、スリップローラー60は望ましい姿勢に保たれつつ、踏面Csに沿って転動する。
【0049】
そして、この転動の際に、スリップローラー60にかかる接線力に応じた測定ヘッド部30の押圧力Fが、接線力検出ロードセル81で検出される。測定ヘッド部62は、コイルバネ89で外フレーム部40側(ロードセル81側)に引き寄せられているので、測定ヘッド部62とロードセル81との接触状態が常に良好に確保される。このロードセル81の検出値Fは、制御部(図示されず)に送出され、この制御部においてクリープ力Fc、クリープ係数Rcに換算されて表示される。測定の際には、前述の通り、ロードセル79がスリップローラー60の直上に位置し、ロードセル81がスリップローラー60に近接しているので、測定誤差がより少ない。
【0050】
この(3)の一連の動作において、回転機構61の回転伝達手段としてタイミングベルト65を用いるとともに、移動機構91の駆動手段としてフレキシブルラック93を用い、スリップローラー60の転走方向を一定としているため、測定部30やスリップローラー60の駆動系のすべりやバックラッシ等の悪影響が低減されている。なお、ピニオン94の代わりにフレキシブルラック93に噛み合うノーバックラッシギアを用いると、空転すべりから滑走すべりに移行するような測定の際にも、バックラッシの悪影響を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本実施の形態に係る摩擦評価量測定装置の全体図(正面図)である。
【図2】同摩擦評価量測定装置の側面断面図である。
【図3】同摩擦評価量測定装置の平面断面図(図1のX-X線断面図)である。
【図4】同摩擦評価量測定装置の測定部の上面図である。
【図5】同摩擦評価量測定装置の測定部の外フレーム部及びその連結構造の分解斜視図である。
【図6】同摩擦評価量測定装置の測定部の内フレーム部及び測定ヘッド部の斜視図である。
【図7】本実施の形態に係る摩擦評価量測定装置の測定原理を説明するための概念図である。
【図8】本実施の形態に係る摩擦評価量測定装置の測定開始時の状態を示す全体図である。
【図9】本実施の形態に係る摩擦評価量測定装置の測定終了時時の状態を示す全体図である。
【0052】
1 摩擦評価量測定装置
10 固定フレーム部
11 上プレート 12 縦フレーム
13 位置決め棒
15 固定用マグネット 16 レバー
20 リニアガイド
21 ガイド 22 スライダー
30 測定部
31 バネ受けプレート 32 支持プレート
33 支持ピン 35 連結コイルバネ
37 補強ピン 40 外フレーム部
41 係合突片 43、44 脚部
45 補助ローラー 47 ベアリング
50 内フレーム部 53 支持ピン
55 リニアガイド
60 スリップローラー 60a 支持軸
60g、63g 歯車 61 回転機構
62 測定ヘッド部 62a 穴
63 パルスモーター 63a 出力軸
65 タイミングベルト
71 押圧力設定機構
73 押し付けバネ 75 押し付けネジ
76 ピストン 78 押圧部材
79 押圧力検出用ロードセル 80 接線力検出部
81 接線力検出用ロードセル 83 固定ブロック
85 固定プレート 89 コイルバネ
91 移動機構
92 パルスモーター 92a 出力軸
93 フレキシブルラック 94 ピニオン
95 リニアガイド 98 コイルバネ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8