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明細書 :軌道構造

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4914003号 (P4914003)
公開番号 特開2006-176982 (P2006-176982A)
登録日 平成24年1月27日(2012.1.27)
発行日 平成24年4月11日(2012.4.11)
公開日 平成18年7月6日(2006.7.6)
発明の名称または考案の名称 軌道構造
国際特許分類 E01B   5/18        (2006.01)
E01B   2/00        (2006.01)
FI E01B 5/18
E01B 2/00
請求項の数または発明の数 11
全頁数 15
出願番号 特願2004-369558 (P2004-369558)
出願日 平成16年12月21日(2004.12.21)
審判番号 不服 2010-027473(P2010-027473/J1)
審査請求日 平成19年4月17日(2007.4.17)
審判請求日 平成22年12月6日(2010.12.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】垂水 尚志
【氏名】前橋 栄一
【氏名】石田 弘明
個別代理人の代理人 【識別番号】100090033、【弁理士】、【氏名又は名称】荒船 博司
【識別番号】100093045、【弁理士】、【氏名又は名称】荒船 良男
参考文献・文献 特開2003-239204(JP,A)
調査した分野 E01B2/00,5/18
特許請求の範囲 【請求項1】
道床上に設けられて鉄道車両の車輪を支持する1対のレールと、
各レールに対して少なくとも左右一方の側に配設され、前記鉄道車両が前記1対のレール上から前記一方の側に脱線して走行する場合に、前記道床と前記車輪の下端面との間に介在して前記鉄道車両を上面で走行させつつ、当該下端面を押し上げるスロープ板と、
各スロープ板に対して前記一方の側に配設され、前記鉄道車両が前記スロープ板の上面を走行する場合に、前記車輪の前記一方の側の側面に当接することにより当該車輪を前記レール上に案内するガイド部材と、
前記1対のレールの内側に配設された前記ガイド部材に対して前記スロープ板と反対の側に配設され、当該ガイド部材の変形を防止する補強部材とを備え、
前記1対のレールの内側に配設された前記スロープ板は、前記車輪の踏面を前記レールの頂面以上の高さに押し上げ、
前記1対のレールの外側に配設された前記スロープ板は、前記車輪の下端面を前記レールの頂面以上の高さに押し上げ
前記レールは、伸縮継目部分で接続された受けレール及びトングレールを備え、
前記1対のレールの外側に配設された前記ガイド部材は、前記受けレールの端部であることを特徴とする軌道構造。
【請求項2】
道床上に設けられて鉄道車両の車輪を支持する1対のレールと、
各レールに対して少なくとも左右一方の側に配設され、前記鉄道車両が前記1対のレール上から前記一方の側に脱線して走行する場合に、前記道床と前記車輪の下端面との間に介在して前記鉄道車両を上面で走行させつつ、当該下端面を押し上げるスロープ板と、
各スロープ板に対して前記一方の側に配設され、前記鉄道車両が前記スロープ板の上面を走行する場合に、前記車輪の前記一方の側の側面に当接することにより当該車輪を前記レール上に案内するガイド部材と、
前記1対のレールの内側に配設された前記ガイド部材に対して前記スロープ板と反対の側に配設され、当該ガイド部材の変形を防止する補強部材とを備え、
前記1対のレールの内側に配設された前記スロープ板は、前記車輪の踏面を前記レールの頂面以上の高さに押し上げ、
前記1対のレールの外側に配設された前記スロープ板は、前記車輪の下端面を前記レールの頂面以上の高さに押し上げ
前記1対のレールは、他の1対のレールとの合流部に配設され、
前記1対のレールの外側に配設された前記ガイド部材は、前記他の1対のレールの一方であることを特徴とする軌道構造。
【請求項3】
請求項記載の軌道構造において、
前記1対のレールの内側に配設された前記ガイド部材は、ガードレールと、前記他の1対のレールの他方との何れか一方であることを特徴とする軌道構造。
【請求項4】
請求項1または2に記載の軌道構造において、
前記レールは、カーブレールであり、
前記1対のレールの内側に配設された前記ガイド部材は、ガードレールであることを特徴とする軌道構造。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載の軌道構造において、
前記スロープ板及び前記ガイド部材は、各レールに対して左右両側に配設されていることを特徴とする軌道構造。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載の軌道構造において、
前記スロープ板及び前記ガイド部材を、前記レールの延在方向に沿って所定間隔おきに備えることを特徴とする軌道構造。
【請求項7】
請求項1~の何れか一項に記載の軌道構造において、
前記1対のレールの内側に配設された前記ガイド部材と、前記レールとの間には、前記車輪のフランジが介在可能であることを特徴とする軌道構造。
【請求項8】
請求項1~の何れか一項に記載の軌道構造において、
前記スロープ板及び前記ガイド部材は、踏切部の手前に配設されていることを特徴とする軌道構造。
【請求項9】
請求項1~の何れか一項に記載の軌道構造において、
前記スロープ板及び前記ガイド部材は、ホームの手前に配設されていることを特徴とする軌道構造。
【請求項10】
請求項1~の何れか一項に記載の軌道構造において、
前記前記スロープ板及び前記ガイド部材は、鉄道橋の手前に配設されていることを特徴とする軌道構造。
【請求項11】
請求項1~の何れか一項に記載の軌道構造において、
前記スロープ板及び前記ガイド部材は、トンネルの手前に配設されていることを特徴とする軌道構造。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、脱線した鉄道車両を復線させるための軌道構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、地震の発生などによって鉄道車両が脱線する場合がある。そのため、脱線した鉄道車両を復線させる復線装置として、鉄道車両をジャッキ等で持ち上げてレール上に載置するものが開発されている(例えば、特許文献1参照)。

【特許文献1】特許第2920554号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述のような復線装置は、脱線事故後の後処理作業で使用されるものであり、走行中の鉄道車両の安全を確保するものではない。そのため、特に高速走行中の脱線では、鉄道車両が完全に停止するまでに脱線による軌道逸脱が拡大する結果、鉄道車両が転覆や衝突などすることにより、被害が拡大してしまう可能性がある。
【0004】
本発明の課題は、脱線した鉄道車両を走行中に復線させることにより、完全停止までの安全性を向上させることができる軌道構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、軌道構造において、
道床上に設けられて鉄道車両の車輪を支持する1対のレールと、
各レールに対して少なくとも左右一方の側に配設され、前記鉄道車両が前記1対のレール上から前記一方の側に脱線して走行する場合に、前記道床と前記車輪の下端面との間に介在して前記鉄道車両を上面で走行させつつ、当該下端面を押し上げるスロープ板と、
各スロープ板に対して前記一方の側に配設され、前記鉄道車両が前記スロープ板の上面を走行する場合に、前記車輪の前記一方の側の側面に当接することにより当該車輪を前記レール上に案内するガイド部材と、
前記1対のレールの内側に配設された前記ガイド部材に対して前記スロープ板と反対の側に配設され、当該ガイド部材の変形を防止する補強部材とを備え、
前記1対のレールの内側に配設された前記スロープ板は、前記車輪の踏面を前記レールの頂面以上の高さに押し上げ、
前記1対のレールの外側に配設された前記スロープ板は、前記車輪の下端面を前記レールの頂面以上の高さに押し上げ
前記レールは、伸縮継目部分で接続された受けレール及びトングレールを備え、
前記1対のレールの外側に配設された前記ガイド部材は、前記受けレールの端部であることを特徴とする。
【0006】
請求項1記載の発明によれば、各レールの一方の側にスロープ板とガイド部材とを備えるので、鉄道車両がレール上から前記一方の側に脱線して走行する場合に、レール対の内外のスロープ板が道床と車輪の下端面との間に介在して鉄道車両を上面で走行させつつ車輪の踏面,下端面をレールの頂面以上の高さに押し上げるとともに、ガイド部材が車輪の前記一方の側の側面に当接することにより当該車輪をレール上に案内する。従って、レール上から前記一方の側に脱線した鉄道車両は、脱線したまま走行することによって、脱線直後に自動的に復線する。よって、従来と比較して、鉄道車両の完全停止までの安全性を向上させることができる。
また、スロープ板とガイド部材という簡易な構造によって鉄道車両を復線させることができるため、従来と比較して、製造コストやメンテナンス費用を低廉化することができる。
また、ガイド部材の変形を防止する補強部材を備えるので、脱線した鉄道車両の車輪がガイド部材に衝突しても、当該ガイド部材の変形を防止することができる。
また、1対のレールの外側に配設されたガイド部材はレールの伸縮継目における受けレールの端部、つまり既存の構造物であるので、ガイド部材を新たに設置する場合と比較して、軌道構造の設置を容易化することができる。
【0007】
請求項2記載の発明は、道構造において、
道床上に設けられて鉄道車両の車輪を支持する1対のレールと、
各レールに対して少なくとも左右一方の側に配設され、前記鉄道車両が前記1対のレール上から前記一方の側に脱線して走行する場合に、前記道床と前記車輪の下端面との間に介在して前記鉄道車両を上面で走行させつつ、当該下端面を押し上げるスロープ板と、
各スロープ板に対して前記一方の側に配設され、前記鉄道車両が前記スロープ板の上面を走行する場合に、前記車輪の前記一方の側の側面に当接することにより当該車輪を前記レール上に案内するガイド部材と、
前記1対のレールの内側に配設された前記ガイド部材に対して前記スロープ板と反対の側に配設され、当該ガイド部材の変形を防止する補強部材とを備え、
前記1対のレールの内側に配設された前記スロープ板は、前記車輪の踏面を前記レールの頂面以上の高さに押し上げ、
前記1対のレールの外側に配設された前記スロープ板は、前記車輪の下端面を前記レールの頂面以上の高さに押し上げ、
前記1対のレールは、他の1対のレールとの合流部に配設され、
前記1対のレールの外側に配設された前記ガイド部材は、前記他の1対のレールの一方であることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明によれば、各レールの一方の側にスロープ板とガイド部材とを備えるので、鉄道車両がレール上から前記一方の側に脱線して走行する場合に、レール対の内外のスロープ板が道床と車輪の下端面との間に介在して鉄道車両を上面で走行させつつ車輪の踏面,下端面をレールの頂面以上の高さに押し上げるとともに、ガイド部材が車輪の前記一方の側の側面に当接することにより当該車輪をレール上に案内する。従って、レール上から前記一方の側に脱線した鉄道車両は、脱線したまま走行することによって、脱線直後に自動的に復線する。よって、従来と比較して、鉄道車両の完全停止までの安全性を向上させることができる。
また、スロープ板とガイド部材という簡易な構造によって鉄道車両を復線させることができるため、従来と比較して、製造コストやメンテナンス費用を低廉化することができる。
また、ガイド部材の変形を防止する補強部材を備えるので、脱線した鉄道車両の車輪がガイド部材に衝突しても、当該ガイド部材の変形を防止することができる。
また、1対のレールの外側に配設されたガイド部材は、前記1対のレールに合流する1対のレールの一方、つまり既存の構造物である。従って、ガイド部材を新たに設置する場合と比較して、軌道構造の設置を容易化することができる。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項に記載の軌道構造において、
前記1対のレールの内側に配設された前記ガイド部材は、ガードレールと、前記他の1対のレールの他方との何れか一方であることを特徴とする
【0012】
請求項3記載の発明によれば、1対のレールの内側に配設されたガイド部材はガードレールと、前記他の1対のレールの他方との何れか一方、つまり既存の構造物であるので、ガイド部材を新たに設置する場合と比較して、軌道構造の設置を容易化することができる。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1または2に記載の軌道構造において、
前記レールは、カーブレールであり、
前記1対のレールの内側に配設された前記ガイド部材は、ガードレールであることを特徴とする
【0015】
請求項4記載の発明によれば、1対のレールの内側に配設されたガイド部材はガードレール、つまり既存の構造物であるので、ガイド部材を新たに設置する場合と比較して、軌道構造の設置を容易化することができる。
また、カーブレールに対して設けられたスロープ板及びガイド部材によって、脱線したまま鉄道車両がレールの曲線部に侵入するのを防止することができる
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項1~4の何れか一項に記載の軌道構造において、
前記スロープ板及び前記ガイド部材は、各レールに対して左右両側に配設されていることを特徴とする
【0017】
請求項5記載の発明によれば、スロープ板及びガイド部材は各レールに対して左右両側に配設されているので、鉄道車両がレール上から左右何れの側に脱線した場合であっても、当該鉄道車両を走行中に自動的に復線させることができる
【0018】
請求項6記載の発明は、請求項1~の何れか一項に記載の軌道構造において、
前記スロープ板及び前記ガイド部材を、前記レールの延在方向に沿って所定間隔おきに備えることを特徴とする
【0019】
請求項6記載の発明によれば、スロープ板及びガイド部材をレールの延在方向に沿って所定間隔おきに備えるので、脱線箇所に関わらず、鉄道車両を復線させることができる。
【0020】
請求項7記載の発明は、請求項1~6の何れか一項に記載の軌道構造において、
前記1対のレールの内側に配設された前記ガイド部材と、前記レールとの間には、前記車輪のフランジが介在可能であることを特徴とする
【0021】
ここで、車輪のフランジとは、レールの側面に当接することによって脱輪を防止するものである。このフランジは、一般的に車輪の内側に設けられている。
請求項7記載の発明によれば、1対のレールの内側に配設されたガイド部材と、レールとの間には車輪のフランジが介在可能であるので、鉄道車両がレール上から脱線していない場合には、これらガイド部材とレールとの継目部分で車輪がガイド部材に乗り上げることがない。従って、鉄道車両の走行の安全性を維持することができる。
なお、このようなガイド部材としては、尖端形状のレール、いわゆるトングレールを用いることができる。
【0024】
請求項記載の発明は、請求項1~の何れか一項に記載の軌道構造において、
前記スロープ板及び前記ガイド部材は、踏切部の手前に配設されていることを特徴とする。
【0025】
請求項記載の発明によれば、スロープ板及びガイド部材は踏切部の手前に配設されているので、脱線したまま鉄道車両が踏切部に侵入するのを防止することができる。
【0026】
請求項記載の発明は、請求項1~の何れか一項に記載の軌道構造において、
前記スロープ板及び前記ガイド部材は、ホームの手前に配設されていることを特徴とする。
【0027】
請求項記載の発明によれば、スロープ板及びガイド部材はホームの手前に配設されているので、脱線したまま鉄道車両がホームに侵入するのを防止することができる。
【0028】
請求項1記載の発明は、請求項1~の何れか一項に記載の軌道構造において、
前記前記スロープ板及び前記ガイド部材は、鉄道橋の手前に配設されていることを特徴とする。
【0029】
請求項1記載の発明によれば、スロープ板及びガイド部材は鉄道橋の手前に配設されているので、脱線したまま鉄道車両が鉄道橋に侵入するのを防止することができる。
【0030】
請求項1記載の発明は、請求項1~の何れか一項に記載の軌道構造において、
前記スロープ板及び前記ガイド部材は、トンネルの手前に配設されていることを特徴とする。
【0031】
請求項1記載の発明によれば、スロープ板及びガイド部材はトンネルの手前に配設されているので、脱線したまま鉄道車両がトンネルに侵入するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0032】
請求項1,2記載の発明によれば、レール上から前記一方の側に脱線した鉄道車両が脱線したまま走行することによって、脱線直後に自動的に復線するため、従来と比較して、鉄道車両の完全停止までの安全性を向上させることができる。
また、ガイド部材の変形を防止する補強部材を備えるので、脱線した鉄道車両の車輪がガイド部材に衝突しても、当該ガイド部材の変形を防止することができる。
また、1対のレールの外側に配設されたガイド部材は既存の構造物であるので、軌道構造の設置を容易化することができる。
【0034】
請求項3記載の発明によれば、請求項に記載の発明と同様の効果を得ることができるのは勿論のこと、軌道構造の設置を容易化することができる
【0035】
請求項4記載の発明によれば、請求項1または2に記載の発明と同様の効果を得ることができるのは勿論のこと、軌道構造の設置を容易化することができる
請求項記載の発明によれば、請求項1~4の何れか一項に記載の発明と同様の効果を得ることができるのは勿論のこと、鉄道車両がレール上から左右何れの側に脱線した場合であっても、当該鉄道車両を走行中に自動的に復線させることができる
請求項6記載の発明によれば、請求項1~5の何れか一項に記載の発明と同様の効果を得ることができるのは勿論のこと、脱線箇所に関わらず、鉄道車両を復線させることができる。
請求項7記載の発明によれば、請求項1~6の何れか一項に記載の発明と同様の効果を得ることができるのは勿論のこと、鉄道車両の走行の安全性を維持することができる。
【0036】
請求項~1記載の発明によれば、請求項1~の何れか一項に記載の発明と同様の効果を得ることができるのは勿論のこと、脱線したまま鉄道車両が踏切部,ホーム,鉄道橋,トンネルに侵入するのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
[第1の実施の形態]
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明に係る軌道構造1の概略構成を示す平面図である。
この図に示すように、軌道構造1は、道床10及びまくら木11,…の上部に1対のレール3,3を備えている。
【0038】
レール3,3は、図2に示すように、鉄道車両2の車輪20を支持するものであり、車輪20のフランジ21と側面で当接することにより脱輪を防止するようになっている。これらレール3,3は、図1に示すように、受けレール31のレール部31aと、このレール部31aに接続されたトングレール30とを備えている。レール部31a及びトングレール30は伸縮継目の継目部分32を形成しており、この継目部分32よりも手前側(図中下側)において、各レール3,3の内側にはスロープ板4aが、外側にはスロープ板4bが配設されている。スロープ板4aとレール3との間には、車輪20のフランジ21が介在可能となっている。
【0039】
スロープ板4a,4bは、図3に示すように、長尺な略4面体形状を有する板状部材である。これらスロープ板4a,4bの左右の厚みは、図1に示すように、鉄道車両2の進行方向Xに沿って少なくなっている。また、スロープ板4aの上面は、手前側の一端部において道床10の上面とほぼ連続するとともに、他端部においてレール3の頭部の下端面とほぼ同様の高さとなっている。スロープ板4bの上面は、手前側の一端部において道床10の上面とほぼ連続するとともに、他端部においてレール3の頂面よりも高くなっている。なお、スロープ板4a,4bは、マンガン等の材料によって形成されている。
【0040】
また、図1に示すように、これらスロープ板4a,4bに対してレール3と反対の側にはガイド部材5a,5bが配設されている。
ガイド部材5a,5bは、鉄道車両2の進行方向Xに沿って徐々にレール3に近接している。ガイド部材5aはトングレールであり、当該ガイド部材5aとレール3との間には車輪20のフランジ21が介在可能となっている。また、ガイド部材5bは、受けレール31の端部である。これらガイド部材5a,5bの高さは、レール3より高くても良い。
【0041】
なお、ガイド部材5a,5b及びレール3の交差角、つまりスロープ板4a,4bの先端部の角度と、ガイド部材5a,5bの長さとは、当該ガイド部材5a,5bの付近を通過する鉄道車両2の速度に応じて設定されることが好ましい。具体的には、走行速度が大きい程、前記交差角が小さく、かつ、ガイド部材5a,5bが長いことが好ましい。本実施の形態においては、ガイド部材5a,5bはスロープ板4a,4bの側面よりも長く形成されている。
【0042】
また、図1では図示を省略しているが、以上のスロープ板4a,4b及びガイド部材5a,5bは、レール3の延在方向に沿って所定間隔おきに配設されている。
【0043】
続いて、鉄道車両2がレール3,3の上部から脱線した場合の軌道構造1の作用について、図4を参照しながら説明する。なお、以下の説明においては、鉄道車両2がレール3の右側に脱線することとして説明する。また、図4では、便宜上、まくら木11と、レール3の左側に位置するスロープ板4a,4b及びガイド部材5a,5bとの図示を省略している。
【0044】
まず、図4(a)に示すように、鉄道車両2がレール3,3の上部から右側に脱線すると、鉄道車両2がブレーキをかけて減速走行を行う結果、左側の車輪20が左側のレール3とガイド部材5aとの間を、右側の車輪20が右側のレール3とガイド部材5bとの間を、それぞれ走行する。これにより、車輪20は、レール3及びガイド部材5a,5bによって横方向への移動が拘束された状態となる。
【0045】
この状態で鉄道車両2が走行を続けると、図4(b)に示すように、左側の車輪20がスロープ板4aの上面40上に、右側の車輪がスロープ板4bの上面40上にそれぞれ乗り上げ、これらスロープ板4a,4bが道床10と車輪20の下端面との間に介在する。
【0046】
そして、図4(c)に示すように、スロープ板4a,4bが鉄道車両2を上面40で走行させつつ、スロープ板4aが車輪20の踏面をレール3の頂面の高さに、スロープ板4bが車輪20の下端面をレール3の頂面以上の高さに押し上げる。このとき、ガイド部材5aが車輪20の内側側面に当接することにより、当該車輪20を左側のレール3の上部に案内する。また、ガイド部材5bが車輪20の外側側面に当接し、当該車輪20のフランジ21を右側のレール3の頂面上で右側から左側に移動させることにより、この車輪20を右側のレール3の上部に案内する。
【0047】
このように、レール3,3の上部から脱線した鉄道車両2は、脱線したまま走行することによって、図4(d)に示すように、軌道構造1の設置地点で自動的に復線することとなる。なお、スロープ板4a,4b及びガイド部材5a,5bはレール3,3の延在方向に沿って所定間隔おきに配設されているので、脱線箇所に関わらず鉄道車両2は復線することとなる。また、スロープ板4a,4b及びガイド部材5a,5bは各レール3,3に対して左右両側に配設されているので、鉄道車両2がレール3,3上から左側に脱線した場合にも、上記と同様にして鉄道車両2は復線することとなる。
【0048】
以上の軌道構造1によれば、脱線した鉄道車両2を完全停止までの減速走行中に軌道構造1の設置地点で自動的に復線させることができるため、鉄道車両2の転覆や衝突などの事故を防止することができる。従って、従来と比較して、鉄道車両2の完全停止までの安全性を向上させることができる。
【0049】
また、スロープ板4a及びガイド部材5aはレール3との間に車輪20のフランジ21を介在させることができるように配設されているので、鉄道車両2がレール3,3上から脱線していない場合には、ガイド部材5aとレール3との継目部分32で車輪20がスロープ板4aやガイド部材5aに乗り上げることがない。従って、鉄道車両2の走行の安全性を維持することができる。
【0050】
また、スロープ板4a,4bとガイド部材5a,5bという簡易な構造によって鉄道車両2を復線させることができるため、従来と比較して製造コストやメンテナンス費用を低廉化することができる。更に、ガイド部材5bはレール3,3の継目部分32における受けレール31の端部、つまり既存の構造物であるので、ガイド部材5bを新たに設置する場合と比較して、軌道構造1の設置を容易化することができる。
【0051】
なお、上記第1の実施の形態においては、レール3,3を直線状のレールであることとして説明したが、カーブレールであることとしても良い。この場合には、レール3,3の内側に位置するガイド部材5aとして、既存のガードレールを用いることができるため、ガイド部材5aを新たに設置する場合と比較して、軌道構造1の設置を容易化することができる。また、脱線したまま鉄道車両2がレール3の曲線部に侵入するのを防止することができる。
【0052】
また、軌道構造1は、受けレール31の端部をガイド部材5bとして用いることにより、レール3の継目部分32の付近に形成されていることとして説明したが、スロープ板4a,4b及びガイド部材5a,5bを新たに設けることによってホームや鉄道橋、トンネル等の手前に形成されることとしても良い。この場合には、脱線したまま鉄道車両2がホームや鉄道橋、トンネル等に侵入するのを防止することができる。
【0053】
また、伸縮継目の継目部分32は、進行方向Xのみにトングレール30及び受けレール31を繋ぐこととして説明したが、逆方向にも繋ぐこととしても良い。この場合には、レール3,3上を鉄道車両2が逆方向に走行する場合にも、脱線した鉄道車両2を自動的に復線させることができる。
【0054】
[第1の実施の形態の変形例]
次に、上記第1の実施の形態の変形例について説明する。なお、上記第1の実施の形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0055】
図5は、本変形例における軌道構造1Aの概略構成を示す図である。
この図に示すように、軌道構造1Aのレール3,3は単線であり、鉄道車両2を往復走行させるようになっている。また、これらレール3,3は、踏切部12において道路13と交差している。
【0056】
進行方向Xにおいて踏切部12の手前には、スロープ板4a,4b及びガイド部材5c,5bが配設されている。
ガイド部材5cは、角柱状に形成されている点以外には、前記ガイド部材5aと同様の部材である。なお、このガイド部材5cの外側側面、つまりスロープ板4a側の側面には、車輪20に対する摩擦低減用の油が塗布されることが好ましい。
【0057】
ガイド部材5c,5cに対してスロープ板4a,4aと反対の側、つまりガイド部材5c,5cよりもレール3,3の内側には、板状の補強部材14が配設され、当該ガイド部材5c,5cの変形を防止するようになっている。
【0058】
以上の軌道構造1Aによれば、上記第1の実施の形態における軌道構造1と同様に、脱線した鉄道車両2を軌道構造1Aの設置地点で自動的に復線させることができるため、脱線したまま鉄道車両2が踏切部12に侵入するのを防止することができる。
【0059】
また、ガイド部材5c,5cの変形を防止する補強部材14を備えるので、脱線した鉄道車両2の車輪20がガイド部材5cに衝突しても、当該ガイド部材5cの変形を防止することができる。
【0060】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、上記第1の実施の形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0061】
図6は、本発明に係る軌道構造1Bの概略構成を示す平面図である。
この図に示すように、軌道構造1Bは、合流部6においてレール3,3に右側から合流する1対のレール3A,3Aを備えている。これらレール3A,3Aはレール3,3と同様のものであり、左側のレール3Aは本発明におけるガイド部材として機能するようになっている。
【0062】
合流部6のクロッシング部60よりも手前側(図中下側)において、各レール3,3の右側にはスロープ板4a,4bが配設されている。
【0063】
スロープ板4aの右側にはガードレール50が配設されている。このガードレール50は、前記ガイド部材5aと同様の部材である。
また、スロープ板4bの右側には前記左側のレール3Aが配設されている。
【0064】
続いて、鉄道車両2がレール3,3の上部から右側に脱線した場合の軌道構造1Bの作用について、図6,図7を参照しながら説明する。
【0065】
まず、図6中「I」の位置で鉄道車両2がレール3,3の上部から右側、つまりレール3A,3Aの側に脱線すると、鉄道車両2がブレーキをかけて減速走行を行う結果、図7(a)に示すように、左側の車輪20が左側のレール3とガードレール50との間を、右側の車輪20が右側のレール3と左側のレール3Aとの間を、それぞれ走行する。これにより、車輪20は、レール3,3A及びガードレール50によって横方向への移動が拘束された状態となる。
【0066】
この状態で鉄道車両2が走行を続けると、図6中「II」,「III」の位置では、図7(b)(c)に示すように、スロープ板4a,4bが鉄道車両2を上面40で走行させつつ、スロープ板4aが車輪20の踏面をレール3の頂面の高さに、スロープ板4bが車輪20の下端面をレール3の頂面以上の高さに押し上げる。このとき、ガードレール50が車輪20の内側側面に当接することにより、当該車輪20を左側のレール3の上部に案内する。また、左側のレール3Aが車輪20の外側側面に当接し、当該車輪20のフランジ21を右側のレール3またはクロッシング部60の頂面上で右側から左側に移動させることにより、当該車輪20を右側のレール3の上部に案内する。
【0067】
このように、レール3,3の上部から右側に脱線した鉄道車両2は、脱線したまま走行することによって脱線直後に自動的に復線し、図6中「IV」の位置では、図7(d)に示すように、レール3,3上を走行することとなる。
【0068】
以上の軌道構造1Bによれば、鉄道車両2がレール3,3の上部からレール3A,3Aの側に脱線した時に、脱線した鉄道車両2を完全停止までの減速走行中に軌道構造1Bの設置地点で自動的に復線させることができるため、鉄道車両2の転覆や衝突などの事故を防止することができる。従って、従来と比較して、鉄道車両2の完全停止までの安全性を向上させることができる。
【0069】
また、スロープ板4a,4b、ガードレール50及びレール3Aという簡易な構造によって鉄道車両2を復線させることができるため、従来と比較して製造コストやメンテナンス費用を低廉化することができる。更に、ガードレール50及びレール3Aは既存の構造物であるので、上記第1の実施の形態におけるガイド部材5bを新たに設置する場合と比較して、軌道構造1Bの設置を容易化することができる。
【0070】
なお、上記第2の実施の形態においては、レール3A,3Aはレール3,3と同様のものとして説明したが、いわゆる横取り分岐装置における保線車両用レールとしても良い。ここで、保線車両用レールとは、板状部材が上部に仮設されることでレール3よりも頭部(フランジウェイ)の分だけ高く形成されるものであり、当該保守車両用レール上の鉄道車両2をレール3,3の頂面上に乗り上げさせた後、レール3,3上に案内するようになっている。この場合には、合流部6からクロッシング部やトングレールを省くことができるため、合流部6を低廉化することができる。
【0071】
[第2の実施の形態の変形例]
次に、上記第2の実施の形態の変形例について説明する。なお、上記第2の実施の形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0072】
図8は、本変形例における軌道構造1Cの概略構成を示す図である。
この図に示すように、軌道構造1Cは、複線路線となっており、レール3,3と逆の方向に鉄道車両2を走行させるレール3B,3Bを備えている。これらレール3,3及びレール3B,3Bには、合流部6,6においてレール3A,3Aが合流するようになっている。なお、本変形例においては、レール3A,3Aがともに本発明におけるガイド部材として機能するようになっている。
【0073】
これら合流部6,6のポイント後端部61の手前には、スロープ板4a,4bが配設されている。より詳細には、スロープ板4aは鉄道車両2の進行方向Xに対して左側のレール3,3Bと左側のレール3Aとの間に、スロープ板4bは右側のレール3,3Bと右側のレール3Aとの間に配設されている。
【0074】
続いて、鉄道車両2がレール3,3の上部から右側に脱線した場合の軌道構造1Cの作用について説明する。なお、以下の説明においては、レール3,3から鉄道車両2が脱線することとして説明する。
【0075】
まず、クロッシング部60の上部を通過してから鉄道車両2がレール3,3の上部からレール3B,3Bの側に脱線すると、鉄道車両2がブレーキをかけて減速走行を行う結果、左側の車輪20が左側のレール3と左側のレール3Aとの間を、右側の車輪20が右側のレール3と右側のレール3Aとの間を、それぞれ走行する。これにより、車輪20は、レール3,3Aによって横方向への移動が拘束された状態となる。
【0076】
この状態で鉄道車両2が走行を続けると、図8中、上側のスロープ板4a,4bが鉄道車両2を上面40で走行させつつ、スロープ板4aが車輪20の踏面をレール3の頂面の高さに、スロープ板4bが車輪20の下端面をレール3の頂面以上の高さに押し上げる。このとき、左側のレール3Aが車輪20の内側側面に当接することにより、当該車輪20を左側のレール3の上部に案内する。また、右側のレール3Aが車輪20の外側側面に当接し、当該車輪20のフランジ21を右側のレール3の頂面上で右側から左側に移動させることにより、当該車輪20を右側のレール3の上部に案内する。
【0077】
このように、レール3,3の上部から右側に脱線した鉄道車両2は、脱線したまま走行することによって脱線直後に自動的に復線することとなる。なお、スロープ板4a,4bはレール3B,3Aの間にも配設されているので、鉄道車両2がレール3B,3Bからレール3,3の側に脱線した場合にも、上記と同様にして鉄道車両2は復線することとなる。
【0078】
以上の軌道構造1Cによれば、上記第2の実施の形態と同様の効果を得ることができるのは勿論のこと、クロッシング部60を通過してから鉄道車両2が脱線したときにも、脱線した鉄道車両2を軌道構造1Cの設置地点で自動的に復線させることができる。また、このように鉄道車両2を復線させることができるため、脱線した鉄道車両2によって合流部6の分岐装置が破壊されてしまうのを防止することができる。
【0079】
また、レール3,3からレール3B,3Bの側、或いはレール3B,3Bからレール3,3の側に脱線する鉄道車両2を迅速に復線させることができるため、対向して走行する鉄道車両2,2が脱線や軌道逸脱により衝突するのを防止することができる。
【0080】
なお、上記第1,第2の実施の形態においては、ガイド部材5a~5cをトングレール,受けレール31の端部、角柱状の部材であることとして説明したが、図9に示すように、断面視略L字状の部材であることとしても良い。このようなガイド部材5a~5cを用いる場合には、背面側をレール3に対向させた状態でガイド部材5a~5cを配設し、当該背面に摩擦低減用の油を塗布することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明に係る軌道構造の概略構成を示す図である。
【図2】鉄道車両とレールとの関係を示す図である。
【図3】スロープ板を示す図である。
【図4】本発明に係る軌道構造の作用を説明するための図である。
【図5】第1の実施の形態の変形例における軌道構造の概略構成を示す図である。
【図6】第2の実施の形態における軌道構造の概略構成を示す図である。
【図7】第2の実施の形態における軌道構造の作用を説明するための図である。
【図8】第2の実施の形態の変形例における軌道構造の概略構成を示す図である。
【図9】ガイド部材の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0082】
1,1A~1C 軌道構造
2 鉄道車両
3,3B レール
3A 他の1対のレール
4a,4b スロープ板
5a,5b ガイド部材
6 合流部
10 道床
14 補強部材
20 車輪
21 フランジ
30 トングレール
31 受けレール
32 継目部分(伸縮継目部分)
40 スロープ板の上面
50 ガードレール
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8