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明細書 :鉄道車両

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4430529号 (P4430529)
公開番号 特開2006-182111 (P2006-182111A)
登録日 平成21年12月25日(2009.12.25)
発行日 平成22年3月10日(2010.3.10)
公開日 平成18年7月13日(2006.7.13)
発明の名称または考案の名称 鉄道車両
国際特許分類 B61F   5/02        (2006.01)
B61F   5/10        (2006.01)
F16F   7/12        (2006.01)
F16F  15/02        (2006.01)
FI B61F 5/02 Z
B61F 5/10 B
F16F 7/12
F16F 15/02 K
請求項の数または発明の数 4
全頁数 15
出願番号 特願2004-376129 (P2004-376129)
出願日 平成16年12月27日(2004.12.27)
審査請求日 平成19年4月11日(2007.4.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】宮本 岳史
【氏名】前橋 栄一
個別代理人の代理人 【識別番号】100100413、【弁理士】、【氏名又は名称】渡部 温
審査官 【審査官】西中村 健一
参考文献・文献 特開昭63-265763(JP,A)
実開昭57-090262(JP,U)
実開平05-080950(JP,U)
特開2001-260881(JP,A)
特開平07-267086(JP,A)
特開平11-208468(JP,A)
調査した分野 B61F 5/00-20
B61F 19/04
B61D 15/06
F16F 7/00-14
F16F 15/00-36
特許請求の範囲 【請求項1】
車体及び該車体を搭載する台車を備える鉄道車両であって、
前記車体の下面側に設けられた、該車体と前記台車との連結機構の一部をなす中心ピンと、
該中心ピンの前記台車に対する左右方向の変移を規制する規制機構と、
を具備し、
前記規制機構中に、以下(a)の特性を有するクラッシャブル部材が設けられているとともに、以下(b)の特性を有する弾性部材が設けられていることを特徴とする鉄道車両:
(a)前記車体と前記台車との間に所定以上の左右方向の力が働いたときには、塑性変形して、地震などによって鉄道車両に与えられた著大な振動エネルギーを吸収する、
(b)前記クラッシャブル部材の塑性変形とともに弾性変形し、前記左右方向の力が低下した後には前記中心ピンを前記台車の幅方向中心位置に付勢する。
【請求項2】
前記クラッシャブル部材が、
前記車体と前記台車との間に所定以上の左右方向の力が働いたときに破断する破断部材と、
該破断部材が破断した後の左右方向の力を受けて塑性変形する変形部材と、
備えることを特徴とする請求項記載の鉄道車両。
【請求項3】
前記規制機構が、前記台車の台車枠に取り付けられたホルダーを有しており、
該ホルダーは、前記中心ピンを挟んで左右それぞれに配置され、前記台車枠に沿って左右方向にスライド可能となっており、
前記破断部材が、前記各ホルダーを前記台車枠にそれぞれ繋ぐメカニカルヒューズボルトからなり、
前記変形部材が、前記各ホルダーと前記台車枠との間にそれぞれ配置されたハニカム材からなり、
前記弾性部材が、前記各ホルダーと前記台車枠との間にそれぞれ配置されたバネからなることを特徴とする請求項記載の鉄道車両。
【請求項4】
前記中心ピンが、
前記車体の下面側の枕はりに取り付けられる取付座と、
該取付座に形成された左右方向に延びる長孔と、
前記取付座よりも上側に突出して前記枕はり内部に延びる突出部と、
を有しており、
該中心ピンは、前記長孔を通る連結部材を介して、前記枕はりに左右方向にスライド可能に取り付けられており、
前記破断部材が、前記取付座を前記枕はりに繋ぐメカニカルヒューズボルトからなり、
前記変形部材が、前記枕はり内部で前記突出部を挟んで左右両側にそれぞれ配置されたハニカム材からなり、
前記弾性部材が、前記枕はり内部で前記突出部を挟んで左右両側にそれぞれ配置されたバネからなることを特徴とする請求項記載の鉄道車両。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、レール上を走行する鉄道車両に関する。特には、地震等の際に著大な外力が働いたときにも走行安全性を確保し得る鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鉄道車両の走行安全性をより一層向上させることが求められている。特に、鉄道車両の走行中に大規模な地震等が突発した際にも、脱線や転覆等の事故を回避できるようにすることが強く求められている。
【0003】
鉄道車両の走行安全性の判断基準には、一般に、脱線係数や輪重減少率、輪重、横圧等の車輪-レール間作用力を用いている。ところが、大規模な地震が発生した場合には、車両に大きな横振動が働き、車体が台車に対して大きく左右動することが考えられ、その結果、脱線や転覆に至る事態も想定される。このような事態をも含めて考慮すると、車輪-レール間作用力を用いて走行安全性を判断することは必ずしも適当ではなく、車輪-レール間の相対左右変移(車輪踏面中心とレール中心との路離)を指標として用いる必要がある。
【0004】
このような観点から、例えば非特許文献1では、ボルスタレス台車を備える新幹線車両が、軌道狂いのないスラブ軌道の直線区間を一定速度で走行中(もしくは停止中)に振動を受けるモデルを作成し、レール下の路盤に正弦波振動を入力した際の車両の挙動について、車輪-レール間の相対左右変移の計算機シミュレーションを実行している。そして、このシミュレーション結果により、地震時に脱線や転覆に至る際の車両挙動には、左右振動が支配的な要因となることが解析されている。
【0005】
ところで、特許文献1(実開平5-80950号公報)には、車体の横揺れを防止し得る『鉄道車両用防振ゴムストッパ』が開示されている。このゴムストッパは、曲線軌道等の走行時において、車体に遠心力が作用した場合の左右振動を減衰し得るものであり、特許文献1中では、大規模な地震等に伴い車体が大きく左右動するようなケースまでは考慮されていない。
【0006】

【特許文献1】実開平5-80950号公報
【非特許文献1】宮本岳史、石田弘明、松尾雅樹著、『地震時の鉄道車両の挙動解析(上下、左右に振動する軌道上の車両運動シミュレーション)』、日本機械学会論文集(C編)、64巻626号(1998-10)、236~243ページ、論文No.97-1856
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した非特許文献1の解析結果の通り、地震時に脱線や転覆に至る際の車両挙動には、左右振動が支配的な要因となることがわかっている。そこで、車両の左右動を抑制することで、脱線や転覆に至る事態を回避することが考えられる。
一方、特許文献1のゴムストッパは、単に曲線軌道等を通常走行する際の鉄道車両の横揺れを防止し得るものであるため、地震等の際の著大なエネルギーの吸収性が充分であるとはいい難い。
【0008】
本発明は、このような観点からなされたものであって、地震等の際に著大な外力が働いたときにも走行安全性を確保し得る鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のベースとなる鉄道車両は、車体及び該車体を搭載する台車を備える鉄道車両であって、 前記車体と前記台車間にクラッシャブル部材を配置し、地震などによって鉄道車両に与えられた著大な振動エネルギーの少なくとも一部を、前記クラッシャブル部材のクラッシュ変形により吸収することを特徴とする。
ここで、「著大な振動エネルギー」とは、鉄道車両を脱線させてしまうほどの大きさのもののことをいう。
【0010】
本発明の第1の道車両は車体及び該車体を搭載する台車を備える鉄道車両であって、 前記車体の下面側に設けられた、該車体と前記台車との連結機構の一部をなす中心ピンと、 該中心ピンの前記台車に対する左右方向の変移を規制する規制機構と、を具備し、 前記規制機構中に、以下(a)の特性を有するクラッシャブル部材が設けられているとともに、以下(b)の特性を有する弾性部材が設けられていることを特徴とする鉄道車両:(a)前記車体と前記台車との間に所定以上の左右方向の力が働いたときには、塑性変形して、地震などによって鉄道車両に与えられた著大な振動エネルギーを吸収する、(b)前記クラッシャブル部材の塑性変形とともに弾性変形し、前記左右方向の力が低下した後には前記中心ピンを前記台車の幅方向中心位置に付勢する。
【0011】
この発明によれば、大規模な地震等が発生し、車体が台車に対して大きく左(右)へ動いた場合には、規制機構によって車体下の中心ピンの台車に対する左(右)変移が規制される。その際、規制機構中のクラッシャブル部材は、特性(a)により、車体-台車間に所定以上の左(右)方向の力が働いたときに塑性変形し始め、その変形によって鉄道車両に与えられた著大な振動エネルギーを吸収する。そして、左(右)方向に働く力が低下した後は、弾性部材が特性(b)により、中心ピンを台車の幅方向中心位置に付勢する。このようなクラッシャブル部材及び弾性部材の作用により、車体の台車に対する一定ストローク以上の変移が阻止され、車体の姿勢が台車の幅方向中心に維持され易くなる。そのため、車両の走行安全性が確保され、脱線や転覆、対向車や駅ホーム等とのオフセット衝突等の発生する可能性を低減できる。
【0012】
本発明の第1の鉄道車両においては、前記クラッシャブル部材が、 前記車体と前記台車との間に所定以上の左右方向の力が働いたときに破断する破断部材と、 該破断部材が破断した後の左右方向の力を受けて塑性変形する変形部材と、を備えるものとすることができる。
この場合、車体と台車との間に所定以上の左(右)方向の力が働くと、まず破断部材が破断し、これにより鉄道車両に与えられた著大な振動エネルギーがある程度吸収される。破断部材の破断後に、さらに左(右)方向の力が働き続けるときは、変形部材が塑性変形し始めるとともに、弾性部材が弾性変形し始め、これらの変形により著大な振動エネルギーが吸収される。そして、左右方向の力が低下した後には、弾性部材の弾性変形により中心ピンが台車の幅方向中心位置に付勢される。このようにして、車体の台車に対する一定ストローク以上の変移が阻止され、車体の姿勢が台車の幅方向中心に維持され易くなるので、車両の走行安全性が確保され、脱線や転覆、対向車や駅ホーム等とのオフセット衝突等の発生する可能性を低減できる。
【0013】
本発明の第1の鉄道車両のより具体的な態様においては、前記規制機構が、前記台車の台車枠に取り付けられたホルダーを有しており、 該ホルダーは、前記中心ピンを挟んで左右それぞれに配置され、前記台車枠に沿って左右方向にスライド可能となっており、 前記破断部材が、前記各ホルダーを前記台車枠にそれぞれ繋ぐメカニカルヒューズボルトからなり、 前記変形部材が、前記各ホルダーと前記台車枠との間にそれぞれ配置されたハニカム材からなり、 前記弾性部材が、前記各ホルダーと前記台車枠との間にそれぞれ配置されたバネからなるものとすることができる。
【0014】
本発明の第1の鉄道車両のより具体的な態様においては、前記中心ピンが、 前記車体の下面側の枕はりに取り付けられる取付座と、 該取付座に形成された左右方向に延びる長孔と、 前記取付座よりも上側に突出して前記枕はり内部に延びる突出部と、を有しており、 該中心ピンは、前記長孔を通る連結部材を介して、前記枕はりに左右方向にスライド可能に取り付けられており、 前記破断部材が、前記取付座を前記枕はりに繋ぐメカニカルヒューズボルトからなり、 前記変形部材が、前記枕はり内部で前記突出部を挟んで左右両側にそれぞれ配置されたハニカム材からなり、 前記弾性部材が、前記枕はり内部で前記突出部を挟んで左右両側にそれぞれ配置されたバネからなるものとすることができる。
【0015】
本発明に関連する第2の鉄道車両は、車体及び該車体を搭載する台車を備える鉄道車両であって、 前記車体の下面側に設けられた、該車体と前記台車との連結機構の一部をなす中心ピンと、 該中心ピンの前記台車に対する左右方向の変移を規制する規制機構と、を具備し、 前記規制機構中に、以下(a)~(c)の特性を有するクラッシャブル部材が設けられていることを特徴とする。
(a)前記車体と前記台車との間に所定以上の左右方向の力が働いたときには、クラッシュ変形を開始して、地震などによって鉄道車両に与えられた著大な振動エネルギーを吸収し始める、
(b)前記中心ピンの前記台車に対する左右方向の変移が一定ストロークに達するまでは、変形が継続して、地震などによって鉄道車両に与えられた著大な振動エネルギーを吸収し続ける、
(c)前記中心ピンに付随しつつ摩擦力を付与し、該中心ピンの左右方向の振動持続時の共振を抑制する。
【0016】
この発明では、規制機構中のクラッシャブル部材の特性(c)により中心ピンに摩擦力が付与されることで、中心ピンの左右方向の振動持続時の共振が抑制される。そのため、クラッシャブル部材が変形した後にも、この変形後のクラッシャブル部材との間で中心ピンが左右動し難くなる。そのため、中心ピンの位置が安定化し、長時間にわたる地震動持続等の際にも、完全停止までの減速に要する間の車両の走行安全性が確保し易くなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、地震時の際に著大な外力が働いたときにも走行安全性を確保し得る鉄道車両を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
まず、図12及び図13を参照して、現状の鉄道車両の全体構造の一例について説明する。
図12は、現状の鉄道車両の全体構造の一例を模式的に示す正面図である。
図13は、同鉄道車両の全体構造の一例を模式的に示す側面図である。
なお、以下の説明においては、特に断らない限り、上下は鉄道車両の高さ方向をいい、左右は鉄道車両の幅方向をいい、前後は鉄道車両の走行するレールの長手方向をいう。各図に示す矢印方向も、それらの方向を示す。
【符号の説明】
【0019】
図12及び図13に示すように、鉄道車両1の車体2は、台車11上に搭載されている。この台車11の台車枠13の下部には、左右一対の車輪15と車軸16からなる輪軸17が取り付けられている。車輪15は、車軸16の両側に圧入されて固定されている。両車輪15の外側において、車軸16の両端部には軸受け(図示されず)を介して軸箱18が外嵌されている。台車11の台車枠13と各軸箱18の間には、軸バネ19が介装されている。一方、車体2の下面には、枕はり3が設けられている。この枕はり3の下面には、中心ピン21が固定されている。この中心ピン21は、ピン本体22の上端に取付座23が形成されてなる。中心ピン21の取付座23は、ボルト24で枕はり3の下面に固定されている。中心ピン21のピン本体22は、台車11の台車枠13に形成されたピン孔を通って下方まで垂下している。
【0020】
台車枠13下面側において、中心ピン21の下端には牽引装置(連結機構)25が取り付けられている。図13に示すように、牽引装置25は、台車枠13から下方に延びる台車側アーム25aと、中心ピン21から下方に延びるピン側アーム25bとの間に設けられた牽引バー25cを具備している。牽引装置25は、車体2に中心ピン21を介して台車枠13を連結するとともに、台車11の牽引力を車体2に伝えるものである。図12に示すように、車体2下面と台車枠13上面との間において、車体2下面と台車枠13上面との間の左右両側部には、空気バネ(枕バネ)27がそれぞれ配置されている。各空気バネ27は、車体2の荷重を受けるとともに、クッションや車体傾斜調整等の役割を果たす。
【0021】
図12に示すように、中心ピン21のピン本体22を挟んで左右両側には、ゴムブロック29が設けられている。各ゴムブロック29は、台車枠13のピン孔の左右内端にそれぞれ固定されている。ゴムブロック29は、車体2が台車11に対して大きく左右動した際に、中心ピン21に当たってエネルギーを吸収するとともに、車体2の左右変移を規制するストッパの役割を果たす。しかしながら、大規模な地震等が突発した際には、現状のゴムブロック29のみでは充分に著大な振動エネルギーを吸収できない場合もある。本発明に係る鉄道車両では、図12の部位X又は部位Yに、中心ピン21の台車11に対する左右方向の変移を規制する規制機構を追加することで、充分なエネルギー吸収性を実現し、鉄道車両の走行安全性を確保することが可能となる。
【0022】
以下、本発明に係る鉄道車両の規制機構の構成例について説明する。
まず、本規制機構を台車側(図12の部位X)に設ける場合について説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る鉄道車両の規制機構の構成例を示す正面断面図である。
図2は、同規制機構の構成例を示す斜視図である。
図3(A)~(C)は、同規制機構の地震時等における作動プロセスを示す断面図である。
【0023】
図1及び図2に示す規制機構30は、台車枠13のピン孔の左右内端に取り付けられたホルダー31を有している。左右のホルダー31は同一構成であって、中心ピン21を挟んで左右に対向するように配置されている。ホルダー31の端面には、前述のゴムブロック29が設けられている。ホルダー31の基端開口部は、台車枠13の内端部に外嵌している。ホルダー31の基端開口部と台車枠13の内端部とは、メカニカルヒューズボルト(破断部材)33で結合されている。ホルダー31の内側には、コイルバネ(弾性部材)35が設けられている。このコイルバネ35は、一端がホルダー31内端面に固定されているとともに、他端が台車枠13外端面に固定されている。コイルバネ35の内側には、アルミハニカム(変形部材)37が配置されている。
【0024】
この規制機構30は、車両の通常走行時には、図1及び図3(A)に示すように、台車枠13内端部とホルダー31基端開口部とがメカニカルヒューズボルト33で結合された状態を維持する。車両の通常走行時において、車体2が台車11に対して通常想定される程度に左右動した場合は、中心ピン21がホルダー31端面のゴムブロック29に当たって横方向のエネルギーが吸収される。しかし、大規模な地震等の発生により、車体2と台車11との間に所定以上の左右方向の力が働いたときには、中心ピン21がゴムブロック29を介してホルダー31を左側又は右側に押し込む。
【0025】
この際、中心ピン21のホルダー31を押す力が一定以上になると、図3(B)に示すように、中心ピン21からの力を受けてメカニカルヒューズボルト33が破断し、この破断の際に一定のエネルギーが吸収される(図3(B)では右側への力が働いた場合が示されている)。そして、ホルダー31が台車枠13に沿ってスライドしつつ押し込まれ、ホルダー31と台車枠13との間でコイルバネ35が押し縮められるとともに、アルミハニカム37がクラッシュ変形(塑性変形)する。このときのコイルバネ35の弾性変形とアルミハニカム37の塑性変形により、地震時等の著大な横方向のエネルギーがほとんど吸収される。
【0026】
このようにしてエネルギーが吸収され、左右方向の力が低下した後には、図3(C)に示すように、コイルバネ35の復元力により中心ピン21が台車11の幅方向中心位置に復元される。そのため、車体2の台車11に対する一定ストローク以上の変移が阻止され、車体2の姿勢が台車11の幅方向中心に維持される。よって、車両の走行安全性が確保され、脱線や転覆、対向車や駅ホーム等とのオフセット衝突等の発生する可能性を低減できる。また、停車後の地震動持続中にあっても自己車両限界内に復帰させ、曲線カント軌道に停車中の重力移動変移を抑制でき、対向列車とのクリアランスを維持できる。
【0027】
次に、図4を参照して、本発明に係る規制機構を車体傾斜用台車に適用した例について説明する。この車体傾斜用台車は、在来線を高速で走行する振り子式車両用の台車として広く用いられているものである。
図4は、本実施の形態に係る車体傾斜用台車を示す分解斜視図である。
図4に示す車体傾斜用台車41は、車体傾斜ころ装置43や前後力伝達ころ45を介して、車体傾斜用はり47が搭載される。車体傾斜用はり47は、台車41の中央部で空気圧シリンダ49に接続される。この空気圧シリンダ49が進退動作すると、車体傾斜用はり47とその上の車体(図4では図示されず)は左右に傾斜する。車体傾斜用はり47には、左右側部にヨーダンパ51が設けられており、左右上部に空気バネ53が設けられており、前端中央に1本リンクの前後牽引装置54が設けられている。この台車41における中心ピン52は牽引装置も兼ねており、車体傾斜用はり47の中央に形成された凹部48を介して、台車41の中央部に連結されている。
【0028】
この台車41に適用される規制機構は、車体傾斜用はり47の凹部48内に設けられる。この規制機構は、中心ピン52の下端を挟んで左右両側に、内側からゴムブロック55、スライド板56、コイルバネ57の順で設けられている。そして、スライド板56側部と車体傾斜用はり47の凹部48側面とはメカニカルヒューズボルト58で結合され、コイルバネ57内側にはアルミハニカム59が収容されている。この場合の規制機構も、図1~図3を用いて前述した規制機構30と同様の作用により、車体2の台車11に対する一定ストローク以上の変移を阻止し、車体2の姿勢を台車11の幅方向中心に維持することができる。
【0029】
次に、本規制機構を車体側(図12の部位Y)に設ける場合について説明する。
図5は、本発明の他の実施の形態に係る鉄道車両の規制機構の構成例を示す正面断面図(図6のI-I線断面図)である。
図6は、同規制機構の構成例を示す下面図である。
これらの図に示す規制機構60に用いられる中心ピン61は、ピン本体62と同一軸上に、取付座63よりも上側に突出する突出部64が形成されている。図6に示すように、取付座63の四隅には、左右方向に延びる長孔65がそれぞれ形成されている。図5に示すように、この中心ピン61は、取付座63が枕はり3下面側に取り付けられ、突出部64が枕はり3内部に配置される。中心ピン61の取付座63と枕はり3とは、ピン本体62の四方のメカニカルヒューズボルト33で結合されているとともに、取付座63の各長孔65を通る連結ボルト・ナット(連結部材)66で繋がれている。
【0030】
図5に示すように、枕はり3の内部には止板4が設けられている。そして、枕はり3の内部において、止板4と中心ピン61の突出部64との間には、コイルバネ35が設けられている。このコイルバネ35は、一端が止板4の内端面に固定されているとともに、他端が中心ピン61の突出部64の外面に固定されている。コイルバネ35の内側には、アルミハニカム37が収容されている。メカニカルヒューズボルト33、コイルバネ35、アルミハニカム37は、前述のものと同様である。
【0031】
このような規制機構60は、車両の通常走行時には、枕はり3と中心ピン61の取付座63とがメカニカルヒューズボルト33及び連結ボルト・ナット66で結合された状態を維持する。車両の通常走行時において、車体2が台車11に対して通常想定される程度に左右動した場合は、中心ピン61のピン本体62が台車枠13の端面のゴムブロック29に当たって横方向のエネルギーが吸収される。
【0032】
しかし、車体2と台車11との間に所定以上の左(右)方向の力が働いたときには、車体2に働く力が枕はり3を介して中心ピン61に伝わり、メカニカルヒューズボルト33が破断して、前述した規制機構30と同様に一定のエネルギーが吸収される。そして、枕はり3内部の止板4と中心ピン61の突出部64との間でコイルバネ35が押し縮められるとともに、アルミハニカム37がクラッシュ変形(塑性変形)する。このときのコイルバネ35の弾性変形とアルミハニカム37の塑性変形により、前述した規制機構30と同様に横方向のエネルギーがほとんど吸収される。
【0033】
この際、中心ピン61は、各連結ボルト・ナット66を介して枕はり3に支持されつつ、取付座63の各長孔65に沿って左(右)に変移し、連結ボルト・ナット66に長孔65端縁が当たった時点で止まる。連結ボルト・ナット66に対する中心ピン61のストロークは、一例で左右それぞれに50mm程度である。このようにしてエネルギーが吸収され、左(右)方向の力が低下した後には、コイルバネ35の復元力により中心ピン61が台車11の幅方向中心位置に復元される。そのため、前述した規制機構30と同様に、車体2の台車11に対する一定ストローク以上の変移が阻止され、車体2の姿勢が台車11の幅方向中心に維持される。
【0034】
次に、車体側(図12の部位Y)に設ける規制機構の他の例について説明する。
図7(A)~(C)は、本発明の他の実施の形態に係る鉄道車両の規制機構の構成例を示す分解斜視図である。
図8は、同規制機構の構成例を示す正面断面図である。
これらの図に示す規制機構70に用いられる中心ピン71は、ピン本体72の上側に打撃ブロック75が形成されている。取付座73と打撃ブロック75との間には、枕はり固定板77が介装されている。枕はり固定板77の貫通孔78内には、ピン本体72が挿通されている。ピン本体72が断面角形の場合、貫通孔78は長角孔であり、ピン本体72が断面円形の場合、貫通孔78は長孔である(図7には後者の場合が示されている)。ピン本体72の直径dが一例で165mmの場合、貫通孔78の長さtは一例で265mmである。取付座73と枕はり固定板77とは、メカニカルヒューズボルト33で結合されている。
【0035】
図8に示すように、枕はり固定板77は、枕はり3下面に固定ボルト79で結合されている。中心ピン71の打撃ブロック75は、枕はり3下面の孔3aを通って、枕はり3内部に配置される。枕はり3内部において、止板4と打撃ブロック75との間には、コイルバネ35が設けられている。このコイルバネ35は、一端が止板4の内端面に固定されているとともに、他端が中心ピン61の打撃ブロック75の側面に固定されている。コイルバネ35の内側には、アルミハニカム37が収容されている。メカニカルヒューズボルト33、コイルバネ35、アルミハニカム37は、前述のものと同様である。
【0036】
このような規制機構70も、前述の規制機構60とほとんど同様に作用する。すなわち、車両の通常走行時には、枕はり3と枕はり固定板77とが固定ボルト79で結合され、枕はり固定板77と中心ピン71の取付座74とがメカニカルヒューズボルト33で結合された状態を維持する。車両の通常走行時において、車体2が台車11に対して通常想定される程度に左右動した場合は、中心ピン71のピン本体72が台車枠13の端面のゴムブロック29に当たって横方向のエネルギーが吸収される。
【0037】
車体2と台車11との間に所定以上の左(右)方向の力が働いたときには、車体2に働く力が枕はり3から枕はり固定板77を介して中心ピン71に伝わり、まずメカニカルヒューズボルト33が破断して一定のエネルギーが吸収される。そして、枕はり3内部の止板4と中心ピン71の打撃ブロック75との間でコイルバネ35が押し縮められるとともに、アルミハニカム37がクラッシュ変形(塑性変形)し、横方向のエネルギーがほとんど吸収される。この際、中心ピン71は、ピン本体72が枕はり固定板77の貫通孔78に沿って左(右)に変移し、ピン本体72が貫通孔78の左右端縁に当たった時点で止まる。このようにしてエネルギーが吸収され、左(右)方向の力が低下した後には、コイルバネ35の復元力により中心ピン71が台車11の幅方向中心位置に復元される。
【0038】
次に、図9及び図10を参照しつつ、本規制機構をいわゆるボルスタ台車、ボルスタレス台車を備える鉄道車両に適用する場合について説明する。
図9は、ボルスタ台車を備える鉄道車両を模式的に示す正面図及び分解斜視図である。
図9に示す鉄道車両の車体101は、ボルスタ台車111上に搭載されている。この台車111の台車枠113の上側には、側受け115を介して枕はり(ボルスタ)117が設けられている。この枕はり117の両側面と車体101の両側部との間には、台車枠113に対して車体101を留めるボルスタアンカ119が設けられている。台車111の台車枠113の下側には、輪軸組立体(車輪、車軸、軸受け及び軸箱)125が取り付けられている。枕はり117の下面には、中心ピン103が固定されている。この中心ピン103は、台車枠113のブッシュ114まで垂下している。車体101と枕はり117との間には、空気バネ109が介装されている。
このようなボルスタ台車111においては、図9中に示す部位Z(枕はり117内)に、前述した図5、図6や図7、図8の規制機構60、70を設けることができる。
【0039】
図10は、ボルスタレス台車を備える鉄道車両を模式的に示す正面図及び分解斜視図である。
図10に示す鉄道車両のボルスタレス台車211は、前述のボルスタ台車111と比較して、側受け115、枕はり117、ボルスタアンカ119が設けられていない点で大きく異なる。この鉄道車両の車体201は、ボルスタレス台車211の台車枠213上に空気バネ209を介して直接搭載されている。
このようなボルスタレス台車211を備える鉄道車両は、図10中に示す部位W(中心ピン203の取り付けられる車体201下面の枕はりに相当する箇所)に、前述した図5、図6や図7、図8の規制機構60、70を設けることができる。この場合は、前述の台車111と比較して、台車211の重量が増加しない利点がある。
【0040】
前述した各実施の形態は、鉄道車両の台車側あるいは車体側のいずれかに規制機構を設ける場合について説明した。ここで、一般に鉄道車両においては、1次バネ(図12等の軸バネ19)の下側の荷重をバネ下荷重といい、1次バネと2次バネ(図12等の枕バネ27)の間の荷重をバネ間荷重といい、2次バネの上側の荷重をバネ上荷重というが、軌道破壊抑制性能や追随性能、乗り心地の向上等の観点からは、バネ下荷重とバネ間荷重は小さい方がよいとされている。台車側に規制機構を設ける場合は、台車の重量が増加し、バネ間荷重が増加するが、車体は無改造で済む。一方、車体側に規制機構を設ける場合は、車体の重量が増加し、バネ上荷重が増加するが、台車は無改造で済み、改造工事が台車側に設けるよりも楽に済む。このため、規制機構は、台車側に設けるよりも車体側に設ける方が利点は多いが、鉄道車両の構造や重心高さ等を考慮して、適宜最適なものを選択利用することが好ましい。
【0041】
次に、図11を参照して、本規制機構に摩擦エネルギー吸収(減衰)機構を設ける場合の例について説明する。
図11(A)は摩擦エネルギー吸収(減衰)機構付きの規制機構の構成例を示す図であり、図11(B)は図11(A)のII-II線断面図であり、図11(C)は同機構を備える鉄道車両を模式的に示す正面図である。
図11(A)、(B)に示す枕はり3内には、図5に示す中心ピン61の突出部64又は図7、図8に示す中心ピン71の打撃ブロック75に相当するブロック301が設けられている。このブロック301には、中心ピン303が取り付けられる。
【0042】
中心ピン303は、前述したものと同様の長穴65、連結ボルト・ナット66(図5、図6参照)を介して、枕はり3下面に取り付けることができる。さらに、枕はり3には、左右方向に延びる溝3′を形成してもよい。この場合、ブロック301は、この溝3′内に配置され、ブロック301及び中心ピン303は、長穴65と溝3′に沿って左右にスライド可能となる。長穴及び連結ボルト・ナットのみを用いても中心ピン303を充分にガイドすることができるが、さらに溝3′内でブロック301をガイドすると、ブロック301及び中心ピン303がより安定化する。
【0043】
ブロック301の左右には、アルミハニカム315が設けられている(図11(A)ではクラッシュ変形した後の状態が示されている)。さらに、ブロック301の前後はブレーキシュー321で挟まれている。各ブレーキシュー321は、コイルバネ323を介して枕はり3前後側面に連結されている。通常走行時の前後力は、枕はり3の溝3′とブロック301により伝達され、コイルバネ323は摩擦力抵抗のみを負荷する。これらブレーキシュー321及びコイルバネ323により、摩擦エネルギー吸収(減衰)機構が構成される。両ブレーキシュー321は、ブロック301の前後側面に接して摩擦力を付与し、ブロック301(及び中心ピン303)の左右方向の変移を抑制する。
【0044】
このようなブレーキシュー321及びコイルバネ323を設けると、アルミハニカム315が変形した後に生じるスペース内で、ブロック301の左右方向の振動持続時の共振が抑制される。そのため、中心ピン303の位置が安定化し、地震後にも車体を安定させることができるので、最低限車両基地まで車両を回送する際の走行安全性を確保できる。なお、このような摩擦エネルギー吸収(減衰)機構を設ける場合は、アルミハニカム315の周囲に必ずしもコイルバネを設置しなくともよい。コイルバネを設けない場合、車体311が台車313に対して横揺れした際(図11(C)参照)の、車体311の幅方向中心位置への復元性能は、枕バネ(空気バネ)305の横剛性に受け持たせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施の形態に係る鉄道車両の規制機構の構成例を示す正面断面図である。
【図2】同規制機構の構成例を示す斜視図である。
【図3】同規制機構の地震時等における作動プロセスを示す断面図である。
【図4】本実施の形態に係る車体傾斜用台車を示す分解斜視図である。
【図5】本発明の他の実施の形態に係る鉄道車両の規制機構の構成例を示す正面断面図(図6のI-I線断面図)である。
【図6】同規制機構の構成例を示す下面図である。
【図7】本発明の他の実施の形態に係る鉄道車両の規制機構の構成例を示す分解斜視図である。
【図8】同規制機構の構成例を示す正面断面図である。
【図9】ボルスタ台車を備える鉄道車両を模式的に示す正面図及び分解斜視図である。
【図10】ボルスタレス台車を備える鉄道車両を模式的に示す正面図及び分解斜視図である。
【図11】図11(A)は摩擦エネルギー吸収(減衰)機構付きの規制機構の構成例を示す図であり、図11(B)は図11(A)のII-II線断面図であり、図11(C)は同機構を備える鉄道車両を模式的に示す正面図である。
【図12】現状の鉄道車両の全体構造の一例を模式的に示す正面図である。
【図13】同鉄道車両の全体構造の一例を模式的に示す側面図である。
【0046】
1 鉄道車両 2 車体
3 枕はり 3′ 溝
4 止板
11 台車 13 台車枠
21 中心ピン 22 ピン本体
23 取付座 25 牽引装置
29 ゴムブロック
30 規制機構
31 ホルダー 33 メカニカルヒューズボルト
35 コイルバネ 37 アルミハニカム
41 車体傾斜用台車
47 車体傾斜用はり 48 凹部
52 中心ピン 55 ゴムブロック
56 スライド板 57 コイルバネ
58 メカニカルヒューズボルト 59 アルミハニカム
60 規制機構
61 中心ピン 62 ピン本体
63 取付座 64 突出部
65 長孔 66 連結ボルト・ナット
70 規制機構
71 中心ピン 72 ピン本体
73 取付座 75 打撃ブロック
77 枕はり固定板 78 貫通孔
79 固定ボルト
101 車体 103 中心ピン
111 ボルスタ台車 113 台車枠
117 枕はり(ボルスタ)
201 車体 211 ボルスタレス台車
213 台車枠
301 ブロック 303 中心ピン
315 アルミハニカム 321 ブレーキシュー
323 コイルバネ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
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【図12】
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【図13】
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