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明細書 :運転整理案作成情報及び運転整理案作成装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4191497号 (P4191497)
公開番号 特開2004-224113 (P2004-224113A)
登録日 平成20年9月26日(2008.9.26)
発行日 平成20年12月3日(2008.12.3)
公開日 平成16年8月12日(2004.8.12)
発明の名称または考案の名称 運転整理案作成情報及び運転整理案作成装置
国際特許分類 B61L  27/00        (2006.01)
FI B61L 27/00 H
請求項の数または発明の数 7
全頁数 22
出願番号 特願2003-012180 (P2003-012180)
出願日 平成15年1月21日(2003.1.21)
審査請求日 平成17年8月10日(2005.8.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
【識別番号】501257473
【氏名又は名称】株式会社ニューメディア総研
発明者または考案者 【氏名】富井 規雄
【氏名】田代 善昭
【氏名】田部 典之
【氏名】平井 力
【氏名】村木 国満
個別代理人の代理人 【識別番号】100090033、【弁理士】、【氏名又は名称】荒船 博司
【識別番号】100093045、【弁理士】、【氏名又は名称】荒船 良男
審査官 【審査官】平城 俊雅
参考文献・文献 特開平06-156282(JP,A)
特開平07-282149(JP,A)
特開2000-177590(JP,A)
調査した分野 B61L 27/00
特許請求の範囲 【請求項1】
コンピュータを、
運転整理案の暫定解である列車ダイヤを暫定列車ダイヤとして記憶する暫定列車ダイヤ記憶手段、
列車ダイヤに対する列車利用者の不満を複数項目に基づいてパターン化した複数の不満条件を記憶する不満条件記憶手段、
記暫定列車ダイヤ記憶手段に記憶された暫定列車ダイヤにおいて、前記複数の不満条件の少なくとも一つが満たされている部分を検出し、1つ1つを不満点とする検出手段、
前記検出手段によって検出された不満点のうちの一つを解消させるように、所定の運転整理方法に従った、前記暫定列車ダイヤ記憶手段に記憶された暫定列車ダイヤの運転整理を行って変更列車ダイヤを作成する変更ダイヤ作成手段、
記変更ダイヤ作成手段によって作成された変更列車ダイヤにおいて、前記複数の不満条件の少なくとも一つが満たされている部分を計数し、この計数値を利用して当該変更列車ダイヤに対する評価値を算出する評価手段、
前記変更ダイヤ作成手段によって作成された変更列車ダイヤで前記暫定列車ダイヤ記憶手段に記憶された暫定列車ダイヤを更新する暫定列車ダイヤ更新手段、
前記検出手段による不満点の検出、前記変更ダイヤ作成手段による変更列車ダイヤの作成、前記評価手段による評価、及び前記暫定列車ダイヤ更新手段による暫定列車ダイヤの更新を一連に繰り返し実行させる繰り返し手段、
前記繰り返し手段による繰り返し実行によって前記評価手段が算出した評価値を基準として、前記変更ダイヤ作成手段が作成した変更列車ダイヤの内から運転整理案とする変更列車ダイヤを決定する運転整理案決定手段、
として機能させるための運転整理案作成情報。
【請求項2】
請求項1に記載の運転整理案作成情報であって、
複数の列車のデータを含む列車ダイヤを入力するダイヤデータ入力手段として前記コンピュータを機能させるための情報と、
前記ダイヤデータ入力手段によって入力された列車ダイヤにおける修正点を入力するダイヤ修正点入力手段として前記コンピュータを機能させるための情報と、
前記ダイヤ修正点入力手段によって入力された修正点に基づいて、前記所定の運転整理方法に従った運転整理を行わないように前記ダイヤデータ入力手段によって入力された列車ダイヤを修正して、前記暫定列車ダイヤ記憶手段に暫定列車ダイヤとして記憶させることにより初期の暫定列車ダイヤを作成する初期解作成手段として前記コンピュータを機能させるための情報と、
を含む運転整理案作成情報。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の運転整理案作成情報であって、
前記検出手段によって検出された不満点の中から、前記暫定列車ダイヤ中において発生時刻が比較的早期の不満点を高確度で選定するように不満点を選定する選定手段として前記コンピュータを機能させるための情報と、
前記変更ダイヤ作成手段が、前記選定手段によって選定された不満点を解消させるように変更列車ダイヤを作成するための情報と、
を含む運転整理案作成情報。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の運転整理案作成情報であって、
前記暫定列車ダイヤ更新手段が、前記評価手段によって算出された評価値及び前記繰り返し手段による繰り返しの回数に基づき、暫定列車ダイヤを更新するか否かを判断するための情報を含む運転整理案作成情報。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の運転整理案作成情報であって、
列車ダイヤに含まれる各列車の各駅への到着及び出発それぞれを表すノードと、各列車の各駅への到着及び出発それぞれの相互の所定の依存関係を表す前記ノード間を結ぶアークとに基づいて、前記暫定列車ダイヤ記憶手段に記憶された暫定列車ダイヤから暫定列車ダイヤネットワークを生成する生成手段として前記コンピュータを機能させるための情報と、
前記検出手段が、前記生成手段によって生成された暫定列車ダイヤネットワークを構成するノードの中から、前記不満条件を満たす前記暫定列車ダイヤの部分に対応するノードを検出するための情報と、
前記変更ダイヤ作成手段が、前記生成手段によって生成された暫定列車ダイヤネットワークを構成する所定のノードから前記検出手段によって検出されたノードに至るクリティカルパスを構成するアークの中からアークを選択し、当該アークによって表される依存関係を変更することによって変更列車ダイヤを作成するための情報と、
を含む運転整理案作成情報。
【請求項6】
請求項5に記載の運転整理案作成情報であって、
前記所定の依存関係は、▲1▼列車の着発順序、▲2▼番線の使用順序、▲3▼車両の使用順序の内の少なくとも1つの依存関係であり、
前記変更ダイヤ作成手段は、前記クリティカルパスを構成するアークの中から、▲1▼列車の着発順序、▲2▼番線の使用順序、▲3▼車両の使用順序の内の何れかの依存関係を表すアークを選択し、当該依存関係を変更することによって変更列車ダイヤを作成するための情報、を含むことを特徴とする運転整理案作成情報。
【請求項7】
運転整理案の暫定解である列車ダイヤを暫定列車ダイヤとして記憶する暫定列車ダイヤ記憶手段と、
列車ダイヤに対する列車利用者の不満を複数項目に基づいてパターン化した複数の不満条件を記憶する不満条件記憶手段と、
記暫定列車ダイヤ記憶手段に記憶された暫定列車ダイヤにおいて、前記複数の不満条件の少なくとも一つが満たされている部分を検出し、1つ1つを不満点とする検出手段と、
前記検出手段によって検出された不満点のうちの一つを解消させるように、所定の運転整理方法に従った、前記暫定列車ダイヤ記憶手段に記憶された暫定列車ダイヤの運転整理を行って変更列車ダイヤを作成する変更ダイヤ作成手段と、
記変更ダイヤ作成手段によって作成された変更列車ダイヤにおいて、前記複数の不満条件の少なくとも一つが満たされている部分を計数し、この計数値を利用して当該変更列車ダイヤに対する評価値を算出する評価手段と、
前記変更ダイヤ作成手段によって作成された変更列車ダイヤを暫定列車ダイヤとして前記暫定列車ダイヤ記憶手段に記憶させて、暫定列車ダイヤを更新する暫定列車ダイヤ更新手段と、
前記検出手段による不満点の検出、前記変更ダイヤ作成手段による変更列車ダイヤの作成、前記評価手段による評価、及び前記暫定列車ダイヤ更新手段による暫定列車ダイヤの更新を一連に繰り返し実行させる繰り返し手段と、
前記繰り返し手段による繰り返し実行によって前記評価手段が算出した評価値を基準として、前記変更ダイヤ作成手段が作成した変更列車ダイヤの内から運転整理案とする変更列車ダイヤを決定する運転整理案決定手段と、
を備える運転整理案作成装置。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は運転整理案の作成を行う運転整理案作成情報及び運転整理案作成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
列車の運転整理とは、例えば、事故や故障等により列車ダイヤが乱れたときに、安全な運行を遂行するために、列車ダイヤを変更することを言う。近年、運転整理案の作成を支援するシステムが用いられるようになってきた。また、作成された列車ダイヤに応じて駅構内入替計画を自動的に作成する装置等が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2000-177590号公報(第3-9頁、第4図)
【0004】
【発明の背景】
しかしながら、上述したような運転整理案の作成の為の支援システムは、列車順序の変更等の単純なダイヤ変更を行うのみで、全面的な見直しを伴うような運転整理案の作成はできなかった。このため、運転整理案の作成作業は結局指令員が行っており、大きな負担となっていた。
【0005】
また、全面的な見直しを伴う運転整理案を自動作成するシステムには次のような要求仕様がある。▲1▼事故や故障が例え1カ所であったとしても、ダイヤ変更の対象となる列車が派生的に多数発生する。列車ダイヤが複雑になればなるほど、この派生的に発生するダイヤ変更対象の列車は増加することとなる。従って、複雑な列車ダイヤであっても、変更対象となる列車の組み合わせを処理できる能力が求められる。▲2▼事故や故障等の発生から運転整理案に基づくダイヤの運行までの時間は、短時間であることが望まれる。従って、運転整理案の作成作業には迅速性が要求される。▲3▼運転整理案を作成する原因となる事故や故障の規模等は様々である。従って、個々の原因に応じたダイヤ変更の的確な変更方法等が求められる。
【0006】
特に▲3▼に関しては、事故や故障の規模の他に、発生した場所(駅構内や駅間等)、該当する列車種別(普通列車か急行列車か等)、運転日(平日か休日か等)、時間帯(通勤時間帯か等)等の様々な条件と照らし合わせてダイヤ変更を行う必要がある。即ち、運転整理案の評価尺度を固定的にすることが非常に困難であった。
【0007】
本願発明は、この評価尺度に関する次のような発見に基づくものである。即ち、従来の運転整理案作成支援システムは、列車の運行会社側にとって都合の良い運転整理案を作成するためのものであった。例えば運休や運転遅延があったとしても最も早く元のダイヤを運転させるようにするための評価尺度というようなものであった。このため、事故や故障の規模、発生した場所といった個々のケースに応じた評価尺度を決定する必要があり、列車の運行会社側の視点に立った評価尺度であった。
【0008】
しかし、どのような事故や故障等であっても困るのは結局、列車の利用客である。列車の利用客側の視点に立った評価尺度を定義できれば、どのような状況であっても、的確な(即ち、列車利用客の視点に立った評価尺度として的確な)運転整理案を作成できる。
そこで、本発明は、運転整理案の評価尺度として利用者の不満を用いることにより、利用者の不満を最小にする運転整理案を自動的に作成する運転整理案作成情報及び運転整理案作成装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するために、請求項1に記載の発明の運転整理案作成情報は、コンピュータを、運転整理案の暫定解である列車ダイヤを暫定列車ダイヤとして記憶する暫定列車ダイヤ記憶手段(例えば、図5の暫定解ダイヤデータ5641)、列車ダイヤに対する列車利用者の不満を複数項目に基づいてパターン化した複数の不満条件を記憶する不満条件記憶手段(例えば、図5のクレームファイル群5516)、前記暫定列車ダイヤ記憶手段に記憶された暫定列車ダイヤにおいて、前記複数の不満条件の少なくとも一つが満たされている部分を検出し、1つ1つを不満点とする検出手段(例えば、図5のCPU51;図7のステップB4;図9(a)のステップC2)、前記検出手段によって検出された不満点のうちの一つを解消させるように、所定の運転整理方法に従った、前記暫定列車ダイヤ記憶手段に記憶された暫定列車ダイヤの運転整理を行って変更列車ダイヤを作成する変更ダイヤ作成手段(例えば、図5のCPU51;図7のステップB6;図10(a)のステップE4)、前記変更ダイヤ作成手段によって作成された変更列車ダイヤにおいて、前記複数の不満条件の少なくとも一つが満たされている部分を計数し、この計数値を利用して当該変更列車ダイヤに対する評価値を算出する評価手段(例えば、図5のCPU51;図7のステップB7;図10(b)のステップF3~F4)、前記変更ダイヤ作成手段によって作成された変更列車ダイヤを暫定列車ダイヤとして前記暫定列車ダイヤ記憶手段に記憶させて、暫定列車ダイヤを更新する暫定列車ダイヤ更新手段(例えば、図5のCPU51;図7のステップB9、B10)、前記検出手段による不満点の検出、前記変更ダイヤ作成手段による変更列車ダイヤの作成、前記評価手段による評価、及び前記暫定列車ダイヤ更新手段による暫定列車ダイヤの更新を一連に繰り返し実行させる繰り返し手段(例えば、図5のCPU51)、前記繰り返し手段による繰り返し実行によって前記評価手段が算出した評価値を基準として、前記変更ダイヤ作成手段が作成した変更列車ダイヤの内から運転整理案とする変更列車ダイヤを決定する運転整理案決定手段(例えば、図5のCPU51;図7のステップB12)、として機能させることを特徴としている。
【0010】
また請求項2に記載の発明のように、請求項1に記載の運転整理案作成情報であって、複数の列車のデータを含む列車ダイヤを入力するダイヤデータ入力手段(例えば、図5の入力部52)として前記コンピュータを機能させるための情報と、前記ダイヤデータ入力手段によって入力された列車ダイヤにおける修正点を入力するダイヤ修正点入力手段(例えば、図5の入力部52)として前記コンピュータを機能させるための情報と、前記ダイヤ修正点入力手段によって入力された修正点に基づいて、前記所定の運転整理方法に従った運転整理を行わないように前記ダイヤデータ入力手段によって入力された列車ダイヤを修正して、前記暫定列車ダイヤ記憶手段に暫定列車ダイヤとして記憶させることにより初期の暫定列車ダイヤを作成する初期解作成手段(例えば、図5のCPU51;図7のステップB2)として前記コンピュータを機能させるための情報と、を含むこととしてもよい。
【0011】
更に、請求項7に記載の発明の運転整理案作成装置は、運転整理案の暫定解である列車ダイヤを暫定列車ダイヤとして記憶する暫定列車ダイヤ記憶手段(例えば、図5の暫定解ダイヤデータ5641)と、列車ダイヤに対する列車利用者の不満を複数項目に基づいてパターン化した複数の不満条件を記憶する不満条件記憶手段(例えば、図5のクレームファイル群5516)と、記暫定列車ダイヤ記憶手段に記憶された暫定列車ダイヤにおいて、前記複数の不満条件の少なくとも一つが満たされている部分を検出し、1つ1つを不満点とする検出手段(例えば、図5のCPU51;図7のステップB4;図9(a)のステップC2)と、前記検出手段によって検出された不満点のうちの一つを解消させるように、所定の運転整理方法に従った、前記暫定列車ダイヤ記憶手段に記憶された暫定列車ダイヤの運転整理を行って変更列車ダイヤを作成する変更ダイヤ作成手段(例えば、図5のCPU51;図7のステップB6;図10(a)のステップE4)と、記変更ダイヤ作成手段によって作成された変更列車ダイヤにおいて、前記複数の不満条件の少なくとも一つが満たされている部分を計数し、この計数値を利用して当該変更列車ダイヤに対する評価値を算出する評価手段(例えば、図5のCPU51;図7のステップB7;図10(b)のステップF3~F4)と、前記変更ダイヤ作成手段によって作成された変更列車ダイヤを暫定列車ダイヤとして前記暫定列車ダイヤ記憶手段に記憶させて、暫定列車ダイヤを更新する暫定列車ダイヤ更新手段と(例えば、図5のCPU51;図7のステップB9、B10)と、前記検出手段による不満点の検出、前記変更ダイヤ作成手段による変更列車ダイヤの作成、前記評価手段による評価、及び前記暫定列車ダイヤ更新手段による暫定列車ダイヤの更新を一連に繰り返し実行させる繰り返し手段(例えば、図5のCPU51)と、前記繰り返し手段による繰り返し実行によって前記評価手段が算出した評価値を基準として、前記変更列車ダイヤ作成手段が作成した変更列車ダイヤの内から運転整理案とする変更列車ダイヤを決定する運転整理案決定手段(例えば、図5のCPU51;図7のステップB12)と、を備えることを特徴としている。
【0012】
この請求項1、2又は7に記載の発明によれば、予め列車ダイヤに対する列車利用者の不満条件を記憶しておき、利用者の不満を解消するように暫定列車ダイヤの運転整理を行って変更列車ダイヤを作成することにより、例えば、列車ダイヤが乱れた際に利用者の不満や混乱を最小限に抑えた運転整理案を作成することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の運転整理案作成情報であって、前記検出手段によって検出された不満点の中から、前記暫定列車ダイヤ中において発生時刻が比較的早期の不満点を高確度で選定するように不満点を選定する選定手段(例えば、図5のCPU51;図7のステップB5;図9(b)のステップD2)として前記コンピュータを機能させるための情報と、前記変更ダイヤ作成手段が、前記選定手段によって選定された不満点を解消させるように変更列車ダイヤを作成するための情報と、を含むことを特徴としている。
【0014】
この請求項3に記載の発明によれば、発生時刻の早い不満点から優先的に解消させるように変更列車ダイヤを作成することができる。例えば、発生時刻の早い不満点を解消すると、当該不満点の発生時刻より遅く発生する不満点も連鎖的に解消される可能性もある為、暫定列車ダイヤの不満点を効率良く解消することができる。
【0015】
また、請求項4に記載の発明のように、請求項1~3のいずれか一項に記載の運転整理案作成情報であって、前記暫定列車ダイヤ更新手段が、前記評価手段によって算出された評価値及び前記繰り返し手段による繰り返しの回数に基づき、暫定列車ダイヤを更新するか否かを判断するための情報を含むこととしてもよい。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1~4のいずれか一項に記載の運転整理案作成情報であって、列車ダイヤに含まれる各列車の各駅への到着及び出発それぞれを表すノードと、各列車の各駅への到着及び出発それぞれの相互の所定の依存関係を表す前記ノード間を結ぶアークとに基づいて、前記暫定列車ダイヤ記憶手段に記憶された暫定列車ダイヤから暫定列車ダイヤネットワークを生成する生成手段(例えば、図5のCPU51;図7のステップB6;図10(a)のステップE1)として前記コンピュータを機能させるための情報と、前記検出手段が、前記生成手段によって生成された暫定列車ダイヤネットワークを構成するノードの中から、前記不満条件を満たす前記暫定列車ダイヤの部分に対応するノードを検出するための情報と、前記変更ダイヤ作成手段が、前記生成手段によって生成された暫定列車ダイヤネットワークを構成する所定のノードから前記検出手段によって検出されたノードに至るクリティカルパスを構成するアークの中からアークを選択し、当該アークによって表される依存関係を変更することによって変更列車ダイヤを作成するための情報と、を含むことを特徴としている。
【0017】
また、請求項6に記載の発明のように、請求項5に記載の運転整理案作成情報であって、前記所定の依存関係は、▲1▼列車の着発順序、▲2▼番線の使用順序、▲3▼車両の使用順序の内の少なくとも1つの依存関係であり、前記変更ダイヤ作成手段は、前記クリティカルパスを構成するアークの中から、▲1▼列車の着発順序、▲2▼番線の使用順序、▲3▼車両の使用順序の内の何れかの依存関係を表すアークを選択し、当該依存関係を変更することによって変更列車ダイヤを作成するための情報、としてもよい。
【0018】
この請求項5又は6に記載の発明によれば、暫定列車ダイヤから暫定列車ダイヤネットワークを生成することにより、暫定列車ダイヤネットワークを構成する各ノードへのクリティカルパスを計算することができる。そして、暫定列車ダイヤネットワークにおいて不満条件に対応するノードを検出し、当該ノードに至るクリティカルパスからアークを選択して、当該アークによって表される依存関係を変更することにより、簡単に変更列車ダイヤを作成することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図1~16を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は、列車ダイヤの一例を示した図である。同図において、横軸が時刻、縦軸がX駅、Y駅、Z駅を示している。更に、列車の運行を表す「列車スジ」が傾斜線で示されている。各列車スジには、対応する列車番号が表記される。
【0020】
列車ダイヤ1によると、A列車はX駅を10時に発車し、Y駅に10:20に到着する。A列車はそのままY駅にて4分間停車する。一方、B列車はX駅を10:20に発車し、Y駅を10:22に通過する。ここでA列車を追い越して、Z駅に10:24に到着する。A列車は、B列車がY駅を通過して2分後の10:24にY駅を発車し、Z駅に10:44に到着する。
【0021】
図2は、PERTネットワークで表現した列車運行ネットワークの一例を示した図である。図2の列車運行ネットワーク2は、列車ダイヤ1に基づいて生成されたものである。列車運行ネットワーク2は、計画時刻ノードと、遅延ノードと、各列車の着発の事象を示すノード(以下、「イベントノード」と言う。)と、各ノードを結ぶアークによって構成される。
【0022】
各イベントノードには、イベント名称(例えば、列車番号、着発駅名等)、当該イベントの発生時刻等が表記される。例えば、イベントノードN23において、イベント名称は“A列車、X駅発”であり、イベント発生時刻は“10:00”となる。
【0023】
計画時刻ノードから各イベントノードに対するアーク(以下、「計画時刻アーク」と言う。図中、点線矢印で示す。)には、各イベントノードに対応する列車の発車又は到着の実行予定時刻が重み付けされる。即ち、計画時刻アークとは、図2における計画時刻ノードN21と各イベントノードN23~N30を結ぶアークのことである。例えば計画時刻アークA21には“10:00”が重み付けされている。これは、イベントノードN23の示すイベントが10:00に実行予定であることを示している。
【0024】
遅延ノードからイベントノードに対するアーク(以下、「遅延アーク」と言う。)は、当該イベントノードの実行予定時刻に遅延時間を加算した時刻が重み付けされる。図1に示す列車ダイヤにおいて、A列車及びB列車のダイヤ遅延は発生していないため、図2における遅延ノードN22からの遅延アークは存在しない。
【0025】
また、イベントノード間のアークには、アークの始点に位置するイベントノードの示すイベントが発生してから、アークの終点に位置するイベントノードの示すイベントが発生するまでの最小時間が重み付けされる。
【0026】
具体的に説明すると、同じ列車番号であって異なる駅の発着を示すイベントノードを結ぶアークの場合(以下、「基準運転アーク」と言う。図中、実線矢印で示す。)、当該アークには駅間走行時分が重み付けされる。例えば、基準運転アークA22には“20”が重み付けされている。これは、A列車がX駅を出発してから(イベントノードN23)、Y駅に到着するまで(イベントノードN24)の走行時分が20分であることを示している。
【0027】
また、同じ列車番号であって同じ駅の発着を示すイベントノードを結ぶアークの場合(以下、「最小停車時分アーク」と言う。図中、実線矢印で示す。)、当該アークには同駅での最小停車時間が重み付けされる。
【0028】
更に、異なる列車番号のイベントノードを結ぶアークの場合(以下、「時隔アーク」と言う。図中、一点鎖線矢印で示す。)、当該アークには、例えば線路のポイント切替等に要する時間等、各列車が安全に走行する為に必要な交差支障時隔等が重み付けされる。例えば、時隔アークA23には“2”が重み付けされている。これは、A列車がY駅に到着してからB列車がY駅に到着するまで、ポイント切替等の作業の為に最低2分の時間間隔が必要であることを示している。
【0029】
尚、各イベントノードに対応するイベント発生時刻は、スタートノードN20から当該イベントノードへ至る最長パス(クリティカルパス)を計算して求められる。例えば、イベントノードN25の場合、スタートノードN20からイベントノードN25への最長パスとして、スタートノードN20から計画時刻ノードN21~計画時刻アークA21~基準運転アークA22~時隔アークA23~最小停車時分アークA24~時隔アークA25の経路となる。この経路を構成する各アークに重み付けされた時刻を足し合わせると“10:24”となり、この時刻がイベントノードN25のイベント発生時刻となる。
【0030】
列車ダイヤ3は、列車ダイヤ1において、B列車のX駅発車時刻が20分遅延した場合に運転整理を行わずにダイヤ修正を行った場合の列車ダイヤである。運転整理とは、例えば、天災、事故、車両故障等によって列車ダイヤが乱れた場合に、列車ダイヤの変更を行うことをいう。
【0031】
尚、運転整理の具体的な手段としては、運休(列車の運転を取りやめる)、部分運休(列車の一部区間の運転を取りやめる)、臨時列車(臨時列車を運転する)、延長運転(列車の運転区間を延長する)、車両運用変更(車両の使用計画を変更する)、番線変更(列車の番線を変更する)、発順序変更(列車の出発順序を変更する)、着順序変更(列車の到着順序を変更する)、停車種別変更(通過を停車に変更する)、発時刻変更(列車の発時刻を変更する)、列車種別変更(列車の種別を変更する)等がある。
【0032】
列車ダイヤ3において、B列車のX駅発車時刻が10:20から10:40になった為、B列車のY駅通過時刻が10:42となっている。A列車はB列車のY駅通過後、2分経過してからY駅を発車する。このため、A列車はY駅に10:20に到着してから、同駅に24分間停車し、B列車がY駅を通過した後、10:44に発車している。
【0033】
図4は、列車ダイヤ3に基づいて生成した列車運行ネットワークの一例を示した図である。B列車のX駅発車時刻が20分遅延した為、遅延ノードN42からイベントノードN43に対する遅延アークA42には、計画時刻アークA41の重み “10:20”に遅延時間20分を加算した“10:40”が重み付けされる。
【0034】
また、各イベントノードに対応するイベント発生時刻は、スタートノードN40から当該イベントノードへ至る各種アークによる最長パスを計算して求められる。従って、イベントノードN44の場合、スタートノードN40からイベントノードN44への最長パスは、スタートノードN40から遅延ノードN42~遅延アークA42~基準運転アークA43~最小停車時分アークA44~時隔アークA45の経路となる。この経路を構成する各アークに重み付けされた時刻を足し合わせると“10:44”となり、この時刻がイベントノードN44のイベント発生時刻となる。
【0035】
図3、4に示したように、B列車がX駅を20分遅延して出発すると、A列車はY駅で24分間停車しなければならない。従って、A列車の利用者は、A列車の停車時間やY駅発車時刻の遅延を不満に感じると考えられる。また、A列車のZ駅到着時刻も20分遅延することになるため、Z駅からA列車に乗車しようとしている利用者にとってもこの遅延は不満と感じるだろう。
【0036】
このような状況を改善するために、列車ダイヤが乱れた際は運転整理を行って運転整理案が作成される。作成された運転整理案の評価尺度として、例えば、遅延時分、運休列車の本数、遅延が収束するまでの時間等がある。しかし、運転整理が行われる状況は千差万別であり、最適な運転整理案を作成するために必要な情報が必ずしも全て得られるとは限らないこと等を考慮すると、上記のような評価尺度は何れも満足いくものではなかった。
【0037】
そこで、本発明は、列車ダイヤが乱れた場合に利用者が不満と感じる不満条件を予め定義し、当該不満条件を評価尺度として利用者の不満を最小にする運転整理案を作成するものである。
【0038】
具体的には、まず、列車の事故や故障等の状況が与えられた時に運転整理をせずに通常の列車ダイヤを修正した列車ダイヤを初期解として作成する。そして初期解を候補解として、当該候補解から不満条件に基づいて利用者の不満点を検出する。検出した不満点から1つの不満点を選定し、当該不満点を解消するために運転整理を行った運転整理案を変更解として作成する。更に変更解の評価を不満条件に基づいて行い、評価結果に応じて変更解を暫定解とする。このような処理を所定回数繰り返し、最終的に導出された暫定解を運転整理案として決定する。
【0039】
また、選定された不満点を解消した変更案を作成する際には、図2や図4に示したような列車運行ネットワークを利用する。具体的には、候補解に基づいて列車運行ネットワークを作成する。作成した列車運行ネットワークにおいて選定された不満点に対応するノードを検出し、当該ノードに至るクリティカルパスを構成するアークにおいて、列車の着発順序を規定するアーク、番線使用順序を規定するアーク、車両の使用順序を規定するアークから1つのアークを選ぶ。そして当該アークの種類に応じて列車ダイヤを変更し、変更した列車ダイヤを変更解とする。
【0040】
次に、本実施の形態における運転整理案作成装置100の機能構成について、図5を参照して説明する。同図に示すように、運転整理案作成装置100はCPU(Central Processing Unit)51、入力部52、表示部53、通信部54、ROM(Read Only Memory)55及びRAM(Random Access Memory)56によって構成され、各部はバス57によって接続されている。運転整理案作成装置100は、パーソナルコンピュータやサーバ装置等のコンピュータに類する装置である。
【0041】
CPU51は、入力される指示に応じて所定のプログラムに基づいた処理を実行し、各機能部への指示やデータの転送等を行う。具体的には、CPU51は、入力部52によって入力される操作信号等に応じて、ROM55に格納された各種プログラムを読み出してRAM56に展開し、当該プログラムに従って処理を実行する。そしてこの処理結果をRAM56に格納すると共に、当該処理結果を表示するための表示信号を表示部53へ出力する。
【0042】
入力部52は、カーソルキー、テンキー、各種ファンクションキー等を備えたキーボード及びマウス等のポインティングデバイスによって構成され、押下されたキーの押下信号やマウスの位置信号等の操作信号をCPU51に出力する。
【0043】
表示部53は、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等により構成され、CPU51から入力される表示信号に基づいて、対応する表示情報を表示する。
【0044】
通信部54は、装置内部で利用される情報を通信回線を介して外部とやりとりするための装置であり、他の装置と通信回線を介して接続されて所定の情報を送受信すること等に利用される。
【0045】
ROM55には、運転整理案作成装置100の各種機能を実現する為のプログラムやデータが記憶されている。本実施の形態において、ROM55には、運転整理案作成情報551等が記憶されている。
【0046】
運転整理案作成情報551は、列車の事故や故障の状況が入力部52より入力されると、入力された情報に基づいて利用者の不満を最小にした運転整理案を作成する為に必要なプログラム及びデータ等を含む。具体的には、運転整理案作成プログラム5511、不満検出プログラム5512、不満選定プログラム5513、不満解消プログラム5514、評価プログラム5515及びクレームファイル群5516等を含む。
【0047】
図6はクレームファイル群5516のデータ構成の一例を示した図である。クレームファイル群5516は、各列車ダイヤに対応したクレームファイルによって構成されており、各クレームファイルには利用者が不満と感じる条件(以下、単に「不満条件」と言う。)が記憶されている。
【0048】
具体的に説明すると、クレームファイル5516aには、京葉線の列車ダイヤに対応した利用者の不満条件の一例が記憶されている。各クレームファイルは、「不満の種別」、「駅名」、「列車種別」、「運転日」、「時間帯」、「遅延時間」等の項目に基づいて不満条件が記憶されている。
【0049】
「不満の種別」とは、当該不満条件が停車時間、走行時間、発着時刻等の何れの遅延であるかを示す。「駅名」とは、当該不満条件の該当駅名を示す。「列車種別」とは、当該不満条件に該当する列車の種別(普通、快速、急行、特急等)を示す。「運転日」とは、当該不満条件に該当する運転日(全日、平日、休日等)を示す。「時間帯」とは、当該不満条件に該当する時間帯(朝通勤時、データイム、夕通勤時等)を示す。時間帯の指定が特にない場合は“指定なし”とする。「遅延時間」は、当該不満条件の示す遅延時間を秒単位で示している。
【0050】
クレームファイル5516aにおいて、例えば、全ての運転日、全ての時間帯において、蘇我駅に停車する特急列車の停車時間が120秒を超過すると、利用者が不満と感じるとして、当該不満が不満条件600として記憶されている。
【0051】
RAM56は、CPU51が実行する各種プログラムや、これらプログラムの実行に係るデータ等を一時的に保持するメモリ領域を備える。本実施の形態では、特に初期解記憶領域561、候補解記憶領域562、変更解記憶領域563及び暫定解記憶領域564等を備える。
【0052】
初期解記憶領域561には、初期解の示す列車ダイヤである初期解ダイヤデータ5611が記憶される。候補解記憶領域562には、候補解の示す列車ダイヤである候補解ダイヤデータ5621と、当該列車ダイヤに対応した列車運行ネットワークである候補解ネットワークデータ5622と、候補解の評価値を示す候補解評価値データ5623が記憶される。
【0053】
変更解記憶領域563には、変更解の示す列車ダイヤである変更解ダイヤデータ5631と、当該列車ダイヤに対応した列車運行ネットワークである変更解ネットワークデータ5632と、変更解の評価値を示す変更解評価値データ5633が記憶される。暫定解記憶領域564には、暫定解の示す列車ダイヤである暫定解ダイヤデータ5641と、暫定解の評価値を示す暫定解評価値データ5642が記憶される。
【0054】
図7は、運転整理案作成プログラム5511に従ってCPU51が実行する運転整理案作成処理の動作を説明するためのフローチャートである。本実施の形態における運転整理案作成処理では、シミュレーティドアニーリング(Simulated Annealing)の手法を用いて、作成された変更案で候補解を更新するか否かを判断する。
【0055】
尚、シミュレーティドアニーリングについては広く一般的に知られている手法であるため、簡単な説明のみ行う。まず、初期値として、凍結温度t0(t0>0)、初期温度t(t>t0)、温度減少率γ(0<γ<1)、繰り返し回数設定値L(L>0)、繰り返し回数k=1を設定する。そして初期解xを求め、初期解xを暫定解として記憶する。
【0056】
尚、以下の処理をランダム局所探索と言う。近傍空間N(x)よりyをランダムに選ぶ(y∈N(x))。そしてΔ=f(y)-f(x)を計算する計算する。Δ<0ならばx=y、Δ>0ならばexp(-Δ/t)の確率でx=yとする。尚、Δ<0の時、f(y)が暫定解の値より小さければ、yを新たな暫定解とする。以上の処理をL回繰り返す。そしてt=γtとする。t≦t0ならば暫定解を出力して処理を終了する。t>t0ならばk=k+1としてランダム局所探索を繰り返す。
【0057】
このシミュレーティドアニーリングの手法を用いることにより、yがxを改善したものであれば無条件にxがyで更新される。しかしyがxの改悪となっている場合でも、exp(-Δ/t)の確率でxがyで更新される。
【0058】
即ち、運転整理案作成処理に置き換えて説明すると、作成された候補解から利用者の不満点を検出し、当該不満点を解消した変更解において、CPU51が候補解よりも変更解の評価が良いと判断した場合は、無条件に候補解を変更解で更新する。しかし、候補解よりも変更解の評価が悪いと判断した場合は、所定の確率に従って候補解を変更解で更新する。これにより、候補解を局所的な解にすることを防ぐことができる。
【0059】
次に、図7を用いて運転整理案作成処理の流れについて説明する。まず、CPU51は初期値として温度tに初期温度T1を代入し、繰り返し回数kに“1”を代入する(ステップB1)。そして、CPU51は入力部52より入力された列車の事故や故障等の状況情報に基づいて、通常の列車ダイヤに対して運転整理を行わない場合の初期解S(列車ダイヤ)を作成し、作成した列車ダイヤを初期解ダイヤデータ5611として記憶する(ステップB2)。
【0060】
具体的には、例えば、列車ダイヤ1に示すように、列車の事故や故障等によってB列車が20分遅延してX駅を発車する情報が入力部52より入力された場合、運転整理を行わない列車ダイヤとして、例えば列車ダイヤ3が作成される。そして列車ダイヤ3が初期解ダイヤデータ5611として記憶される。
【0061】
続いて、CPU51は候補解ダイヤデータ5621及び暫定解ダイヤデータ5641に初期解ダイヤデータ5611を代入して記憶する(ステップB3)。即ち、暫定解S*及び候補解Aに初期解Sを代入する。そして不満検出処理へ処理を移行する(ステップB4)。
【0062】
図9(a)は、不満検出プログラム5512に従ってCPU51が実行する不満検出処理の動作を説明するためのフローチャートである。まずCPU51はクレームファイル群5516の内、該当するクレームファイルを読み出し、当該クレームファイルに記憶されている不満条件を1つ読み出す(ステップC1)。そしてCPU51は、当該不満条件と候補解ダイヤデータ5621とを比較する。不満条件を満足する部分が候補解ダイヤデータ5621にある場合(ステップC2;Yes)、CPU51は当該不満条件を満足する部分全てを検出して満足した部分1つ1つを不満点としてRAM56の作業領域に記憶する(ステップC3)。
【0063】
次にCPU51が読み出した不満条件はクレームファイルに記憶されている最後の不満条件ではないと判断した場合(ステップC4;No)、ステップC1へ処理を移行する。最後の不満条件である場合(ステップC4;Yes)、CPU51は運転整理案作成処理のステップB4へ処理を移行する。
【0064】
そしてCPU51は不満選定処理へ処理を移行する(ステップB5)。図9(b)は、不満選定プログラム5513に従ってCPU51が実行する不満選定処理の動作を説明するためのフローチャートである。まずCPU51は、候補解ダイヤデータ5621に基づいて、不満検出処理のステップC3で記憶した不満点を発生時刻の早い順番に並べる(ステップD1)。そして並べた不満点のうち、発生時刻の早い不満点を優先的に1つ選定する(ステップD2)。
【0065】
具体的に説明すると、例えば候補解ダイヤデータ5621には3つの不満点P、Q及びRが存在したとする。そして不満点P、Q及びRを発生時刻の早い順番に並べると「不満点R、不満点Q、不満点P」の順番になる場合、それぞれの不満点が選ばれる比率を3:2:1になるように設定する。即ち、CPU51によって選定される確率が、不満点R:不満点Q:不満点P=3:2:1となる。つまり、n個の不満点が存在する場合、それらを発生時刻の早い順番に並べると、各不満点が選ばれる比率はn:(n-1):(n-2):・・・:3:2:1となる。
【0066】
ステップD2の処理が終了すると、CPU51は運転整理案作成処理のステップB6へ処理を移行し、続いて不満解消処理を実行する(ステップB6)。
【0067】
図10(a)は、不満解消プログラム5514に従ってCPU51が実行する不満解消処理の動作を説明するためのフローチャートである。まずCPU51は候補解ダイヤデータ5621に基づいて列車運行ネットワークを作成し、当該列車運行ネットワークを候補解ネットワークデータ5622として記憶する(ステップE1)。
【0068】
具体的には、例えば、候補解ダイヤデータ5621として列車ダイヤ3が記憶されている場合、列車運行ネットワーク4が候補解ネットワークデータ5622として記憶される。
【0069】
次にCPU51は、候補解ネットワークデータ5622において、不満選定処理のステップD2で選定した不満点に対応するノードを検出し、更に当該ノードに至るクリティカルパスを検出する(ステップE2)。そして検出したクリティカルパスを構成するアークのうち、列車の着発順序を規定するアーク、番線使用順序を規定するアーク、車両の使用順序を規定するアークを抽出し、抽出したアークのうち、発生時刻の早いアークを優先的に1つ選択する(ステップE3)。具体的に説明すると、クリティカルパスから抽出したアークがn本あったとすると、それらのアークをスタートノードからの順に並べた時、各アークが選ばれる比率がn:(n-1):(n-2):・・・:3:2:1となるようにする。
【0070】
続いてCPU51は選択したアークの種類に応じてアークの内容を変更し、変更した列車運行ネットワークを変更解ネットワークデータ5632として記憶する。更に変更解ネットワークデータ5632に基づいて列車ダイヤ(変更解A’)を作成し、変更解ダイヤデータ5631として記憶する(ステップE4)。
【0071】
具体的に説明すると、例えば、候補解ダイヤデータ5621として列車ダイヤ3、候補解ネットワークデータ5622として列車運行ネットワーク4が記憶されており、不満点選定処理のステップD2において、Y駅におけるA列車の停車時間が所定秒数以上(所定秒数<24分)である不満点が選定されたこととする。列車運行ネットワーク4において、上記不満点に対応するノードはイベントノードN44となる。従って、スタートノードN40からイベントノードN44までのクリティカルパスが検出される。
【0072】
検出されたクリティカルパスが、遅延ノードN42から遅延アークA42~基準運転アークA43~最小停車時分アークA44~時隔アークA45の経路であったとする。このクリティカルパスを構成する各種アークの内、列車の着発順序を規定するアーク、番線使用順序を規定するアーク、車両の使用順序を規定するアークを抽出する。この場合、時隔アークA45が、A列車とB列車の着発順序を規定するアークである。従って時隔アークA45が選択される。尚、番線使用順序を規定するアーク及び車両の使用順序を規定するアークについては後述する。
【0073】
そして時隔アークA45の内容を変更する。時隔アークA45は、B列車がY駅を発車した2分後にA列車がY駅を発車可能であることを示している。従って、この時隔アークA45の向きを逆転させ、A列車がY駅を発車した2分後にB列車がY駅を発車可能なように変更すればよい。
【0074】
上述したように時隔アークA45の内容を変更して時隔アークA55とした場合の列車運行ネットワークを図11に示す。この列車運行ネットワークが変更案ネットワークデータ5632として記憶される。更に図11に示す列車運行ネットワークに基づいて作成した列車ダイヤを図12に示す。この列車ダイヤは変更解ダイヤデータ5631として記憶される。
【0075】
尚、不満解消処理のステップE3において、検出したクリティカルパスを構成するアークのうち、列車の着発順序を規定するアーク、番線使用順序を規定するアーク、車両の使用順序を規定するアークを抽出し、抽出したアークから1つのアークを選択することとした。これは、列車の遅延、停車時分又は走行時分の増加に対する利用者の不満に重点を置いて不満を解消する為である。
【0076】
しかし、運転整理案作成処理のステップB4からステップB16を繰り返して一定回数処理しても暫定解の著しい改善がない場合は、列車の運転頻度又は列車の接続に対する利用者の不満を解消するようにしてもよい。
【0077】
列車の運転頻度に対する不満の場合、当該駅を含むある区間に対して、通過列車を停車列車に変更する等して対応することができる。また列車の接続に対する不満の場合、当該駅での列車の発車時刻を所定の接続時間内になるように変更する等して対応することができる。
【0078】
不満解消処理が終了すると、CPU51は運転整理案作成処理のステップB7へ処理を移行し、続いて評価処理を実行する(ステップB7)。図10(b)は、評価プログラム5515に従ってCPU51が実行する評価処理の動作を説明するためのフローチャートである。まずCPU51は変数nに“0”を代入する(ステップF1)。そして不満検出処理のステップC1で用いたクレームファイルに記憶されている不満条件を1つ読み出し(ステップF2)、当該不満条件と変更案ダイヤデータ5631とを比較する。不満条件と合致する部分が変更案ダイヤデータ5631にある場合(ステップF3;Yes)、CPU51は変数nに合致した部分の数を加算する(ステップF4)。
【0079】
次にCPU51が、読み出した不満条件がクレームファイルに記憶されている最後の不満条件ではないと判断した場合(ステップF5;No)、ステップF2へ処理を移行する。最後の不満条件である場合(ステップF5;Yes)、CPU51は変更案評価値データ5633として変数nの値を記憶する(ステップF6)。即ち、変更解A’の評価値f(A’)に変数nを代入する。ここで、評価値の示す値は、対応する列車ダイヤの不満点の数となる。従って、評価値の値が小さいほど良い評価結果を示し、値が大きいほど悪い評価結果を示す。そしてCPU51は運転整理案作成処理のステップB8へ処理を移行する。
【0080】
尚、評価処理において、評価値の示す値は、対応する列車ダイヤの不満点の数としたが、次のようにしてもよい。すなわち、例えば、クレームファイルに、各不満条件に対対応する重みを予め記憶させておき、ステップF4において評価値(n)として加算する値を、当該不満条件に対応する重みの値としてもよい。
【0081】
次にCPU51は候補解評価値データ5623と変更案評価値データ5633とを比較する。即ち、評価値f(A)と評価値f(A’)とを比較する。候補解評価値データ5623が変更案評価値データ5623よりも大きい場合、即ち、評価値f(A)>評価値f(A’)の場合(ステップB8;Yes)、変更解ダイヤデータ5631で候補解ダイヤデータ5621を更新して記憶する。同時に変更解ネットワークデータ5622で候補解ネットワークデータ5622を更新して記憶し、変更解評価値データ5633で候補解評価値データ5623を更新して記憶する(ステップB9)。
【0082】
更に、暫定解評価値データ5642が変更解評価値データ5633より大きい場合、即ち、評価値f(S*)>評価値f(A’)の場合(ステップB11;Yes)、変更解ダイヤデータ5633で暫定解ダイヤデータ5641を更新して記憶する。更に変更解評価値データ5633で暫定解評価値データ5642を更新して記憶する(ステップB12)。
【0083】
一方、候補解評価値データ5623が変更案評価値データ5623よりも小さいか等しい場合、即ち、評価値f(A)≦評価値f(A’)の場合(ステップB8;No)、CPU51は確率αに従って変更解ダイヤデータ5633で暫定解ダイヤデータ5641を更新して記憶する。更に変更解評価値データ5633で暫定解評価値データ5642を更新して記憶する(ステップB10)。ここで確率αはexp{(f(A’)-f(A))/(-t)]で求められる。
【0084】
次にCPU51は繰り返し回数kと繰り返し回数設定値Lとを比較する。k≧Lの場合(ステップB13;No)、繰り返し回数kに“1”を代入し、温度tに温度減少率γを乗算した値を温度tに代入する(ステップB15)。そしてCPU51は温度tと凝固点T0とを比較する。t>T0の場合(ステップB16;Yes)、CPU51は運転整理案作成処理を終了する。t≦T0の場合(ステップB16;No)、CPU51はステップB4へ処理を移行する。
【0085】
一方、ステップB13においてk<Lである場合、CPU51は繰り返し回数kに“1”を加算し(ステップB14)、ステップB4へ処理を移行する。
【0086】
図13及び図14を参照して、本実施の形態の運転整理案作成装置100による運転整理案作成情報551の実行前後の列車ダイヤについて説明する。図13(a)は列車の遅延が発生していない通常の列車ダイヤ、図13(b)は海浜幕張駅において列車遅延が発生したが、運転整理を行わずにダイヤ修正をした場合の列車ダイヤの一例を、図14は図13(b)に示した列車ダイヤを初期解として運転整理案作成装置100が運転整理案作成情報551を実行した後の列車ダイヤの一例を示した図である。
【0087】
図13(b)に示すように、海浜幕張駅において列車遅延が発生した為、東京駅に関するエリア13の時間帯において列車の発着数が減少している。尚、図13(a)の列車ダイヤに対応したクレームファイルと図13(b)の列車ダイヤとを比較すると、428個の不満点が検出された。
【0088】
そして、図13(b)を初期解として運転整理案作成処理が実行され、最も評価の良い暫定解として決定された運転整理案が図14に示す列車ダイヤであるが、当該処理によって約20件のダイヤ変更が行われ、図13(a)の列車ダイヤに対応したクレームファイルと図14の列車ダイヤとを比較すると、不満点が47個に減少した。
【0089】
尚、図13及び14に示す列車ダイヤは京葉線の約2時間分の列車ダイヤであるが、24時間分の列車ダイヤについて運転整理案作成処理を実行したところ、約2分で処理が終了した。処理速度の点においても、実用的であることが分かる。
【0090】
以上説明したように、利用者の不満条件をクレームファイル群5516に予め記憶しておき、当該記憶された不満条件を評価尺度として運転整理案を作成することにより、列車の事故や故障等によって列車ダイヤが乱れた際に利用者の不満や混乱を最小限に抑えた運転整理案を作成することができる。
【0091】
また、運転整理案を作成する段階において、列車ダイヤに対応する列車運行ネットワークを用いることによって、運転整理案作成装置100による列車運行のシミュレーションを行い易くすることができる。
【0092】
尚、CPU51による不満解消処理のステップE3において、候補解ネットワークデータ5622より選定された不満点に対応するノードに至るクリティカルパスを検出し、当該クリティカルパスを構成するアークの内、列車の着発順序を規定するアーク、番線使用順序を規定するアーク、車両の使用順序を規定するアークを抽出し、抽出したアークより1つのアークを選択するとした。そこで、番線使用順序を規定するアーク及び車両の使用順序を規定するアークについて説明する。
【0093】
図15(a)は、列車ダイヤの一例を示した図である。同図に示す列車ダイヤによると、ある車両であるA列車はY駅を発車し、X駅に到着する。A列車はそのままX駅の1番線に停車し、B列車としてX駅を発車する。そしてB列車はY駅に到着する。一方、別の車両であるC列車はY駅を発車し、B列車がX駅の1番線を発車してTx分後、X駅に到着する。C列車はX駅の1番線に停車し、D列車としてX駅を発車する。そしてD列車はY駅に到着する。
【0094】
図15(a)の列車ダイヤに対応した列車運行ネットワークの一例を図15(b)に示す。各アークの重み及び各イベントノードのイベント発生時刻の表記は省略する。イベントノードN150はB列車がX駅の1番線から発車することを示すノード、イベントノードN151はC列車がX駅の1番線に到着することを示すノードである。A列車とC列車はX駅の1番線を使用して停車することとされている為、その番線使用順序を設定しなければならない。アークA150には、イベントノードN150の実行からイベントノードN151の実行までの最小間隔時間Txが重み付けされている。即ちアークA150は、番線使用順序を規定するアークである。
【0095】
例えば、B列車のX駅発車が遅れ、C列車のX駅到着時刻になってもA列車がX駅の1番線に停車している場合、C列車のX駅への到着時刻を遅らせる等して、図15の列車ダイヤを修正する必要がある。しかし、C列車の乗客はX駅への到着時刻の遅延に対して不満を感じるであろう。そこで、本実施の形態の運転整理案作成装置100を用いることにより、例えばアークA150が削除されることによって、X駅の1番線の番線使用順序の設定が解除される。即ち、例えば、C列車はX駅の2番線に停車する等して、C列車のX駅への到着時刻の遅延を防ぐことができる。
【0096】
図16(a)は、列車ダイヤの一例を示した図である。同図に示す列車ダイヤによると、ある車両であるA列車はZ駅を発車してY駅を通過し、X駅に到着する。A列車はX駅に停車し、B列車としてX駅を発車する。そしてB列車はY駅を通過してZ駅に到着する。
【0097】
図16(a)の列車ダイヤに対応した列車運行ネットワークの一例を図16(b)に示す。各アークの重み及び各イベントノードのイベント発生時刻の表記は省略する。イベントノードN160はA列車がX駅に到着することを示すノード、イベントノードN161はB列車がX駅から発車することを示すノードである。A列車はX駅で到着後、B列車としてX駅を発車する為、車両の使用順序を設定しなければならない。アークA160は車両の使用順序を示すアークであり、A列車が折り返しB列車としてX駅を発車することを示している。
【0098】
例えば、A列車のX駅到着時刻が遅れると、B列車のX駅発車時刻が遅延する。すると、B列車の利用者は当該列車の発車時刻の遅延に対して不満を感じるだろう。そこで、本実施の形態の運転整理案作成装置100を用いることにより、例えば、アークA160が削除されることによって、A列車の車両の使用順序の設定が解除される。即ち、A列車のX駅到着時刻が遅れても、別の車両を用いてB列車をX駅から発車させる、あるいは、A列車とB列車のY駅とX駅の間等の運転を休止する等して、B列車の遅延を防ぐことができる。
【0099】
尚、本発明の運転整理案作成情報及び運転整理案作成装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0100】
【発明の効果】
請求項1、2又は7に記載の発明によれば、予め列車ダイヤに対する列車利用者の不満条件を記憶しておき、利用者の不満を解消するように暫定列車ダイヤの運転整理を行って変更列車ダイヤを作成することにより、列車ダイヤが乱れた際に利用者の不満や混乱を最小限に抑えた運転整理案を作成することができる。
【0101】
請求項3に記載の発明によれば、発生時刻の早い不満点から優先的に解消させるように変更列車ダイヤを作成することができる。例えば、発生時刻の早い不満点を解消すると、当該不満点の発生時刻より遅く発生する不満点も連鎖的に解消される可能性もある為、暫定列車ダイヤの不満点を効率良く解消することができる。
【0102】
請求項5又は6に記載の発明によれば、暫定列車ダイヤから暫定列車ダイヤネットワークを生成することにより、暫定列車ダイヤネットワークを構成する各ノードへのクリティカルパスを計算することができる。そして、暫定列車ダイヤネットワークにおいて不満条件に対応するノードを検出し、当該ノードに至るクリティカルパスからアークを選択して、当該アークによって表される依存関係を変更することにより、簡単に変更列車ダイヤを作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】列車ダイヤの一例を示した図。
【図2】図1の列車ダイヤに対応した列車運行ネットワークの一例を示した図。
【図3】列車ダイヤの一例を示した図。
【図4】図3の列車ダイヤに対応した列車運行ネットワークの一例を示した図。
【図5】運転整理案作成装置の機能構成を示す図。
【図6】クレームファイル群のデータ構成の一例を示した図。
【図7】運転整理案作成処理の動作を説明するためのフローチャート。
【図8】図7に続く、運転整理案作成処理の動作を説明するためのフローチャート。
【図9】不満検出処理の動作を説明するためのフローチャート及び不満選定処理の動作を説明するためのフローチャート。
【図10】不満解消処理の動作を説明するためのフローチャート及び評価処理の動作を説明するためのフローチャート。
【図11】列車ダイヤの一例を示した図。
【図12】図11の列車ダイヤに対応した列車運行ネットワークの一例を示した図。
【図13】通常の列車ダイヤ及び運転整理を行わずにダイヤ修正をした場合の列車ダイヤを示す図。
【図14】図13(b)に示した列車ダイヤを初期解として本発明を適用した場合の列車ダイヤを示す図。
【図15】番線使用順序を規定するアークを説明する為の図。
【図16】車両の使用順序を規定するアークを説明する為の図。
【符号の説明】
100 運転整理案作成装置
51 CPU
52 入力部
53 表示部
54 通信部
55 ROM
551 運転整理案作成情報
5511 運転整理案作成プログラム
5512 不満検出プログラム
5513 不満選定プログラム
5514 不満解消プログラム
5515 評価プログラム
5516 クレームファイル群
56 RAM
561 初期解記憶領域
562 候補解記憶領域
563 変更解記憶領域
564 暫定解記憶領域
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15