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明細書 :鉄道分岐器用エスケープクランク

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3895701号 (P3895701)
公開番号 特開2004-276872 (P2004-276872A)
登録日 平成18年12月22日(2006.12.22)
発行日 平成19年3月22日(2007.3.22)
公開日 平成16年10月7日(2004.10.7)
発明の名称または考案の名称 鉄道分岐器用エスケープクランク
国際特許分類 B61L   5/00        (2006.01)
E01B   7/00        (2006.01)
FI B61L 5/00 C
E01B 7/00
請求項の数または発明の数 3
全頁数 12
出願番号 特願2003-074718 (P2003-074718)
出願日 平成15年3月19日(2003.3.19)
審査請求日 平成17年6月28日(2005.6.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】櫻井 育雄
【氏名】五十嵐 義信
個別代理人の代理人 【識別番号】100104064、【弁理士】、【氏名又は名称】大熊 岳人
審査官 【審査官】村上 哲
参考文献・文献 実開平02-029902(JP,U)
特開平07-246933(JP,A)
調査した分野 B61L 5/00~7/10
E01B 7/00
特許請求の範囲 【請求項1】
鉄道分岐器を転換及び鎖錠する鉄道分岐器用エスケープクランクであって、
前記鉄道分岐器を転換するための転換力を発生する転てつ機の動作かんが動作したときに、この動作かんの動作に応じて駆動する原動部と、
前記原動部が動作したときにこの原動部の動作に応じて駆動し、前記鉄道分岐器を転換する従動部とを備え、
前記従動部は、この従動部を回転自在に支持する支点と、前記鉄道分岐器から負荷が作用する第1の作用点と、前記第1の作用点に作用する負荷を前記原動部に作用させる第2の作用点とを有し、
前記従動部には、前記鉄道分岐器を転換しているときに、この鉄道分岐器を転換するときに発生する負荷が前記第1の作用点に作用し、
前記原動部には、前記鉄道分岐器を転換しているときに、前記第1の作用点に作用する負荷と略同一の大きさの負荷が前記第2の作用点から伝わること、
を特徴とする鉄道分岐器用エスケープクランク。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄道分岐器用エスケープクランクにおいて、
前記従動部は、前記支点から前記第1の作用点までの長さと前記支点から前記第2の作用点までの長さとが等しいてこ機構部であること、
を特徴とする鉄道分岐器用エスケープクランク。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の鉄道分岐器用エスケープクランクにおいて、
前記原動部は、
前記鉄道分岐器を定位側で鎖錠する第1の鎖錠面と、
前記鉄道分岐器を反位側で鎖錠する第2の鎖錠面と、
前記第1の鎖錠面と前記第2の鎖錠面との間に配置され、前記鉄道分岐器を前記定位側と前記反位側との間で転換させるための転換孔とを備え、
前記従動部は、
前記第1及び前記第2の鎖錠面と接触して前記鉄道分岐器を鎖錠するとともに、前記転換孔に嵌合して前記鉄道分岐器を転換させる回転体と、
前記鉄道分岐器を転換するロッドを前記第1の作用点で回転自在に連結するとともに、前記回転体を前記第2の作用点で回転自在連結して、前記支点を中心に回転可能なクランクと、
前記クランクと一体となって回転して前記原動部と接触し、前記回転体が前記第1の鎖錠面から前記転換孔に嵌り込むように、このクランクを強制的に回転させる回転力を発生する第1の補助アームと、
前記クランクと一体となって回転して前記原動部と接触し、前記回転体が前記第2の鎖錠面から前記転換孔に嵌り込むように、このクランクを強制的に回転させる回転力を発生する第2の補助アームとを備えること、
を特徴とする鉄道分岐器用エスケープクランク。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、鉄道分岐器を転換及び鎖錠する鉄道分岐器用エスケープクランクに関する。
【0002】
【従来の技術】
は、従来の鉄道分岐器に用いるエスケープクランクの使用例を示す。
従来の鉄道分岐器用エスケープクランク112は、図に示すように、電気転てつ機111の動作かん111aが動作したときに、この動作かん111aに連結されたリンク111bの動作に応じて回転する原動クランク113と、この原動クランク113が回転したときにこの原動クランク113の動作に応じて回転し、分岐器101を転換する従動クランク114とを備えている(例えば、特許文献1参照)。原動クランク113は、支点O1 を中心として回転自在に支持されており、従動クランク114は支点O2 を中心として回転自在に支持されている。原動クランク113の一方の端部には、リンク111bがピン接合により回転自在に連結されており、他方の端部には回転体113aが回転自在に支持されている。従動クランク114の一方の端部には、分岐器101のトングレール103a,103bを転換するロッド109aがピン接合により回転自在に連結されている。従動クランク114の他方の端部には、原動クランク113の回転体113aと接触する鎖錠面(エスケープ面)114a,114bと転換面114c,114dとが形成されている。
【0003】
次に、従来の鉄道分岐器用エスケープクランクの動作を説明する。
電気転てつ機111の動作かん111a及びリンク111bが図中矢印方向に駆動すると原動クランク113が矢印方向に回転し、回転体113aが鎖錠面114aから抜け出して転換面114c,114dに嵌まり込み転換面114dを押す。その結果、従動クランク114が矢印方向に回転してロッド109aを矢印方向に駆動し、このロッド109aに連結された転てつ棒106を駆動する。トングレール103a,103bの先端は転てつ棒106によって連結されているため、ロッド109aが駆動すると分岐器101が転換されてトングレール103aが基本レール104aと密着する。分岐器101の転換が終了すると、原動クランク113の回転体113aが転換面114c,114dを抜け出して鎖錠面114bと接触して動作かん111a及びリンク111bが動作を停止する。分岐器101を反対側に転換するときには、矢印方向とは逆方向に動作かん111a及びリンク111bが駆動して回転体113aが転換面114cを押す。その結果、原動クランク113及び従動クランク114が矢印方向とは逆方向に回転して、トングレール103bが基本レール104bと密着する。このように、回転体113aが転換面114c,114dを押しているときには分岐器101が転換され、回転体113aが鎖錠面114a,114bと接触しているときには分岐器101が鎖錠される。
【0004】
このような従来の鉄道分岐器用エスケープクランク112では、電気転てつ機111が発生する転換力が動作かん111a、リンク111b、原動クランク113、従動クランク114及びロッド109aを介して分岐器101に作用する。一方、従動クランク114には、分岐器101を転換しているときに略一定の大きさの負荷が作用しており、この負荷は従動クランク114、原動クランク113、リンク111b及び動作かん111aを介して電気転てつ機111に作用する。このような従来の電気転てつ機111では、動作かん111aのストロークに対して転換力特性が凹形となることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。また、従来のエスケープクランク112では、従動クランク114に対して一定の負荷を加えると原動クランク113には凸形の負荷特性が出力されることが知られており(例えば、非特許文献2参照)、動作かん111aのストロークの両端では負荷が抑制され、動作かん111aのストロークの中間付近では負荷が増幅されるような特性を示している。
【0005】
【特許文献1】
特公平7-29604号公報(第3頁左欄第9行目~第31行目及び第1図)
【非特許文献1】
櫻井育雄、RRR、財団法人研友社、1989年7月1日、第31頁及び図4
【非特許文献2】
櫻井育雄、鉄道総研報告、財団法人研友社、1989年7月1日、第5頁及び図7
【0006】
は、従来の鉄道分岐器用エスケープクランクの負荷と総合負荷特性との関係を示す図であり、図(A)は分岐器を転換したときに従動クランクに加わる負荷を示し、図(B)は分岐器を転換したときに原動クランクに加わる負荷を示す。ここで、図(A)に示す縦軸は負荷の大きさであり、横軸は従動クランク114のストロークである。図(B)に示す縦軸は負荷の大きさであり、横軸は動作かん111aのストロークである。
【0007】
(A)に示す波形は、図に示すエスケープクランク112を介して電気転てつ機111によって分岐器101を転換したときに、従動クランク114側に加わる負荷の変化(負荷特性)である。この負荷は、トングレール103a,103bが床板105上を移動するときに発生する摩擦力などである。一方、図(B)に示す波形は、床板105を給油した状態でエスケープクランク112を介して電気転てつ機111によって分岐器101を転換したときに、原動クランク113(電気転てつ機111の動作かん111a)側に加わる負荷の変化(総合負荷特性)である。図(A)に示すように、従動クランク114側に加わる負荷は、この従動クランク114のストロークに対して略一定の大きさで変化し、図(B)に示すようにエスケープクランク112を介して分岐器101を転換すると転てつ機111に加わる負荷が凸形の負荷特性となる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
は、従来の鉄道分岐器用エスケープクランクの総合負荷特性と電気転てつ機の転換力特性との関係を示す図である。ここで、図に示す縦軸は負荷及び転換力の大きさであり、横軸は動作かんのストロークである。
に示すように、電気転てつ機111の転換力特性は凹形の波形(一点鎖線)を示し、エスケープクランク112の総合負荷特性は凸形の波形(実線)を示す。このため、床板105上の油が切れて摩擦力が増大したような場合には、エスケープクランク112の総合負荷特性は凸形の部分が高くなった波形(二点鎖線)を示す。その結果、図に斜線で示すように、エスケープクランク112の総合負荷特性の凸形の最大部分が増加して、電気転てつ機111の転換力特性の凹形の最低部分を越えると、電気転てつ機111が過負荷になって転換不良を起こすおそれがある。そこで、従動クランクに加わる一定負荷が大きい場合でも動作かんストロークの中間付近で負荷が増幅されることのない負荷特性を持つエスケープクランクの出現が望まれていた。
【0009】
この発明の課題は、分岐器の転換不能を低減することができる鉄道分岐器用エスケープクランクを提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、鉄道分岐器(1)を転換及び鎖錠する鉄道分岐器用エスケープクランクであって、前記鉄道分岐器を転換するための転換力を発生する転てつ機(11)の動作かん(11a)が動作したときに、この動作かんの動作に応じて駆動する原動部(13)と、前記原動部が動作したときにこの原動部の動作に応じて駆動し、前記鉄道分岐器を転換する従動部(14)とを備え、前記従動部は、この従動部を回転自在に支持する支点(O)と、前記鉄道分岐器から負荷が作用する第1の作用点(P1)と、前記第1の作用点に作用する負荷を前記原動部に作用させる第2の作用点(P2)とを有し、前記従動部には、前記鉄道分岐器を転換しているときに、この鉄道分岐器を転換するときに発生する負荷(F)が前記第1の作用点に作用し、前記原動部には、前記鉄道分岐器を転換しているときに、前記第1の作用点に作用する負荷と略同一の大きさの負荷(F)が前記第2の作用点から伝わることを特徴とする鉄道分岐器用エスケープクランク(12)である。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載の鉄道分岐器用エスケープクランクにおいて、前記従動部は、前記支点から前記第1の作用点までの長さと前記支点から前記第2の作用点までの長さとが等しいてこ機構部であることを特徴とする鉄道分岐器用エスケープクランクである。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の鉄道分岐器用エスケープクランクにおいて、前記原動部は、前記鉄道分岐器を定位側で鎖錠する第1の鎖錠面(13a)と、前記鉄道分岐器を反位側で鎖錠する第2の鎖錠面(13b)と、前記第1の鎖錠面と前記第2の鎖錠面との間に配置され、前記鉄道分岐器を前記定位側と前記反位側との間で転換させるための転換孔(13c)とを備え、前記従動部は、前記第1及び前記第2の鎖錠面と接触して前記鉄道分岐器を鎖錠するとともに、前記転換孔に嵌合して前記鉄道分岐器を転換させる回転体(14b)と、前記鉄道分岐器を転換するロッド(9a)を前記第1の作用点で回転自在に連結するとともに、前記回転体を前記第2の作用点で回転自在連結して、前記支点を中心に回転可能なクランク(14a)と、前記クランクと一体となって回転して前記原動部と接触し、前記回転体が前記第1の鎖錠面から前記転換孔に嵌り込むように、このクランクを強制的に回転させる回転力を発生する第1の補助アーム(14c)と、前記クランクと一体となって回転して前記原動部と接触し、前記回転体が前記第2の鎖錠面から前記転換孔に嵌り込むように、このクランクを強制的に回転させる回転力を発生する第2の補助アーム(14d)とを備えることを特徴とする鉄道分岐器用エスケープクランクである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、この発明の実施形態に係る鉄道分岐器用エスケープクランクに分岐器に連結するロッドを接続した平面内部図である。図2は、この発明の実施形態に係る鉄道分岐器用エスケープクランクによってポイント部のトングレールを転換する場合の平面図である。以下では、図2に示すトングレール3a,3bがB方向に転換した状態を反位とし、トングレール3a,3bがC方向に転換した状態を定位として説明する。
【0015】
分岐器1は、一つの軌道を二つ以上の軌道に分ける装置である。図2に示す分岐器1は、基準線が直線であり分岐線(他の一線)が曲線である片開き分岐器である。分岐器1は、ポイント部2と、軌道が交わる図示しないクロッシング部と、ポイント部2とクロッシング部とを連絡する図示しないリード部とから構成されている。図2に示す分岐器1の方向は、車両の進行方向(図中A方向)がポイント部2からクロッシング部に向かう対向である。
【0016】
ポイント部2は、軌道を分ける部分である。ポイント部2は、先端部を尖らせた転換可能な可動レールであるトングレール3a,3bと、このトングレール3a,3bの先端部が密着及び分離する基本レール4a,4bと、トングレール3a,3bを移動自在に支持する床板5と、トングレール3a,3bを転換する転てつ棒6と、トングレール3a,3bの先端部の間隔を固定するフロントロッド7と、このフロントロッド7に接続される接続かん8と、トングレール3a,3bが基本レール4a,4bと密着するときの密着力を設定するスイッチアジャスタ9などを備えている。
【0017】
電気転てつ機11は、分岐器1を転換するための転換力を発生する装置である。電気転てつ機11は、トングレール3a,3bを転換するときに動作する動作かん11aと、この動作かん11aに連結されこの動作かん11aと一体となって動作するリンク11bと、この動作かん11aを動作させて分岐器1を転換させる図示しない転換機構部と、接続かん8に接続される鎖錠かん11cと、この鎖錠かん11cの切欠部にロックピースを挿入して転換後のトングレール3a,3bの先端位置を照査する図示しない鎖錠機構部とを備えている。電気転てつ機11は、動作かん11a及びリンク11bをD方向に動作させてトングレール3a,3bをB方向に駆動し、分岐器1を定位から反位に転換する。また、電気転てつ機11は、動作かん11a及びリンク11bをE方向に動作させてトングレール3a,3bをC方向に駆動し、分岐器1を反位から定位(図1に示す位置)に転換する。電気転てつ機11は、図2に示すように、基本レール4a,4bに対して平行に動作かん11a及びリンク11bが動作可能なように設置されている。
【0018】
エスケープクランク12は、分岐器1を転換及び鎖錠する装置である。エスケープクランク12は、トングレール3a,3bを定位及び反位に転換するとともに、転換後のトングレール3a,3bを定位及び反位で鎖錠する機能を備えており、分岐器用の転換鎖錠装置を構成する上で欠かせない機器である。エスケープクランク12は、図1に示すように、原動部13と、従動部14と、筐体15などを備えている。
【0019】
原動部13は、動作かん11aが動作したときにこの動作かん11aの動作に応じて駆動する部分である。原動部13は、リンク11bに固定されており動作かん11a及びリンク11bと一体となって駆動する。原動部13には、分岐器1を転換しているときに、従動部14に作用する負荷と略同一の大きさであり従動部14側の負荷特性と略同一の負荷特性を示す負荷がこの従動部14から作用する。原動部13には、鎖錠面(エスケープ面)13a,13bと、転換孔13cと、接触面13d,13eとが形成されている。
【0020】
鎖錠面13aは、図2に示すC方向に分岐器1が転換してトングレール3bが基本レール4bと密着したときに、この分岐器1を定位で鎖錠する部分である。鎖錠面13bは、図2に示すB方向に分岐器1が転換してトングレール3aが基本レール4aと密着したときに、この分岐器1を反位で鎖錠する部分である。鎖錠面13a,13bは、図1に示すように、動作かん11a及びリンク11bの長さ方向に対して平行な平面状に形成されている。転換孔13cは、分岐器1を定位と反位との間で転換させるための部分であり、鎖錠面13aと鎖錠面13bとの間に配置されている。転換孔13cは、原動部13を貫通して形成されており、この転換孔13cには転換面13f,13gが形成されており、転換面13f,13gは鎖錠面13a,13bに対して直交して互いに間隔をあけて形成されている。接触面13d,13eは、動作かん11a及びリンク11bの動作方向の両端部に形成された平面部であり、転換面13f,13gに対して直交して形成されている。
【0021】
従動部14は、原動部13が動作したときにこの原動部13の動作に応じて駆動し分岐器1を転換する部分である。従動部14には、分岐器1を転換しているときに所定の負荷特性を示す負荷が分岐器1から作用する。従動部14は、この従動部14を回転自在に支持する支点Oと、分岐器1から負荷が作用する作用点P1 と、この負荷を原動部13に作用させる作用点P2 とを有し、支点Oから作用点P1 ,P2 までの長さが等しいてこ機構部である。従動部14は、クランク14aと、回転体14bと、補助アーム14c,14dとから構成されている。
【0022】
クランク14aは、支点Oを中心に回転可能な部材であり、この支点Oに対して直交する2つのアーム部分を有する直角クランクである。クランク14aは、支点Oを中心に回転可能なように筐体15に支持されており、図2に示すスイッチアジャスタ9のロッド9aを作用点P1 で回転自在に連結するとともに、回転体14bを作用点P2 で回転自在に連結する。回転体14bは、鎖錠面13a,13b及び転換面13f,13gと回転接触するローラである。回転体14bは、鎖錠面13a,13bと接触して分岐器1を鎖錠するとともに、転換孔13cに嵌合して分岐器1を転換させる。回転体14bは、転換面13fと転換面13gとの間を回転可能なように、これらの幅よりも直径が僅かに小さく設定されている。
【0023】
補助アーム14c,14dは、分岐器1を転換するときに原動部13の往復動作に応じてクランク14aを強制的に回転させる回転力を発生する部材である。補助アーム14c,14dは、鎖錠面13a,13bから転換孔13cに回転体14bが嵌まり込むように、原動部13と接触したときにクランク14aと一体となって回転して、このクランク14aを強制的に回転させる。補助アーム14c,14dは、支点Oを中心に回転可能であり、この支点Oに対して直交する2つのアーム部分を有する直角クランクである。補助アーム14c,14dの中心角は、クランク14aの中心角に対して所定角度(例えば45度)ずれている。補助アーム14cの先端部には、鎖錠面13aから転換孔13cに回転体14bが嵌まり込むように、接触面13dと接触してクランク14aを回転させる接触部14eが形成されている。補助アーム14dの先端部には、鎖錠面13bから転換孔13cに回転体14bが嵌まり込むように、接触面13eと接触してクランク14aを逆転させる接触部14fが形成されている。
【0024】
筐体15は、原動部13及び従動部14を収容する部分である。筐体15には、リンク11bが貫通する貫通孔15a,15bと、従動部14が回転したときにこの従動部14が筐体15と干渉するのを防止するための開口部15cと、リンク11bをスライド自在にガイドするガイド部15dと、原動部13をスライド自在にガイドするガイド部15eとが形成されている。
【0025】
次に、この発明の実施形態に係る鉄道分岐器用エスケープクランクの動作を説明する。
図3は、この発明の実施形態に係る鉄道分岐器用エスケープクランクの動作を説明するための図であり、図3(A)は分岐器を定位で鎖錠した状態を示し、図3(B)は分岐器が転換を開始する直前の状態を示し、図3(C)は分岐器の転換を開始した直後の状態を示し、図3(D)は分岐器を転換している途中の状態を示し、図3(E)は分岐器の転換を終了する直前の状態を示し、図3(F)は分岐器を反位で鎖錠した状態を示す。
【0026】
図3(A)に示すように、回転体14bが鎖錠面13aと接触していると、クランク14aが回転することができず、トングレール3bが基本レール4bと密着して分岐器1が定位で鎖錠される。分岐器1を定位から反位に転換するときには、図2に示す電気転てつ機11が動作を開始して図3(A)に示すリンク11bがD方向に動作する。回転体14bが回転して鎖錠面13aと回転接触している間は、クランク14aが回転せず分岐器1が定位で鎖錠されている。
【0027】
図3(B)に示すように、リンクがD方向に移動し回転体14bが転換孔13cに位置すると、補助アーム14dの接触部14eが接触面13dと接触してクランク14aが強制的にG方向に回転される。その結果、回転体14bが転換孔13cに嵌合して転換面13gと回転接触する。リンク11bがさらにD方向に動作すると回転体14bが転換面13gから押されて、クランク14aがさらにG方向に回転する。その結果、ロッド9aがB方向に動作を開始し、トングレール3bが基本レール4bから離れ分岐器1が定位から反位に転換を開始する。
【0028】
図3(C)に示すように、リンクがD方向にさらに移動しクランク14aがG方向に回転を開始すると、分岐器1を転換するときに発生する負荷Fがクランク14aの作用点P1 に作用する。クランク14aが直角クランクであり支点Oから作用点P1 ,P2 まで長さが等しいため、作用点P1 に作用する負荷Fと同じ大きさの負荷Fが作用点P2 から原動部13に伝わる。回転体14bが転換面13gと回転接触しながら転換孔13cに進入すると、クランク14aがG方向に回転して補助アーム14cの接触部14eが接触面13dから離れる。
【0029】
図3(D)に示すように、リンクがD方向にさらに移動し回転体14bが転換孔13cに最も深く進入すると、分岐器1が定位と反位との中間位置に達する。リンク11bが継続してD方向に動作すると、回転体14bが転換面13fと回転接触しながら転換孔13cから退出するとともに、トングレール3aが基本レール4aに接近する。図3(E)に示すように、クランク14aがG方向にさらに回転して回転体14bが転換孔13cから抜け出すと、図3(F)に示すように回転体14bが転換孔13cから鎖錠面13bに移動してクランク14aが回転を停止する。その結果、分岐器1が転換を終了して図2に示す電気転てつ機11が動作を停止し、トングレール3aが基本レール4aに密着して分岐器1が反位で鎖錠される。
【0030】
一方、分岐器1を反位から定位に転換するときには、電気転てつ機11がリンク11bをE方向に動作する。その結果、図3(F)に示す補助アーム14dの接触部14fが接触面13eと接触してクランク14aがH方向に強制的に回転し、回転体14bが鎖錠面13bから転換孔13cに嵌合する。回転体14bが転換面13fと回転接触しながら転換孔13cに進入すると、クランク14aがH方向に回転してトングレール3aが基本レール4aから離れ分岐器1が反位から定位に転換する。
【0031】
図4は、この発明の実施形態に係る鉄道分岐器用エスケープクランクの負荷と総合負荷特性との関係を模式的に示す図であり、図4(A)は分岐器を転換したときに従動部に加わる負荷を示し、図4(B)は分岐器を転換したときに原動部に加わる負荷を示す。図5は、この発明の実施形態に係る鉄道分岐器用エスケープクランクの総合負荷特性と電気転てつ機の転換力特性との関係を模式的に示す図である。
【0032】
図4(A)に示すように、分岐器1を転換しているときに従動部14側に作用する負荷Fは、ストロークS1 ~S2 において略一定である。従動部14は、図1に示すように、支点Oから作用点P1 ,P2 までの長さが等しいてこ機構部であるため、図3に示すように作用点P1 に作用する負荷Fと同じ大きさの負荷Fが作用点P2 から原動部13側に作用し、従動部14側(入力側)の負荷Fが原動部13側(出力側)にそのまま伝達される。このため、図4(B)に示すように、原動部13側の負荷特性(総合負荷特性)が動作かん11aのストロークに対して略一定になり、従動部14側の負荷特性と略同一の波形を示す。その結果、図5に示すように、床板5の油が切れた状態でエスケープクランク12を介して電気転てつ機11が分岐器1を転換しても、図8(B)に示す従来のエスケープクランク112の総合負荷特性のように波形が凸状にならず、二点鎖線で示すように波形が略直線状に変化する。このため、従来のエスケープクランク112に比べて負荷変動が発生しても転換力に余裕があり、分岐器1の転換不能を軽減することができる。
【0033】
この発明の実施形態に係る鉄道分岐器用エスケープクランクには、以下に記載するような効果がある。
(1) この実施形態では、分岐器1を転換するときに発生する負荷Fが従動部14に作用し、分岐器1を転換しているときの負荷特性と略同一の負荷特性を示す負荷Fが従動部14から原動部13に伝わる。このため、図5に示すように、床板5の油切れなどによって負荷が増加しても負荷特性の最大部分が増加しない負荷特性を示す。その結果、エスケープクランク12を介して電気転てつ機11によって分岐器を転換した場合に、電気転てつ機11の転換特性を損なうことがなく電気転てつ機11の転換不能を低減することができる。
【0034】
(2) この実施形態では、従動部14を支点Oで回転自在に支持し、分岐器1から負荷Fが従動部14の作用点P1 に作用し、この従動部14の作用点P2 から原動部13にこの負荷Fを作用させ、分岐器1を転換しているときに原動部13の往復動作に応じて補助アーム14c,14dが従動部14を強制的に回転させる。このため、分岐器1を転換するときに従動部14側に加わる負荷Fを原動部13側にそのまま伝達することができる。その結果、図8(B)に示す従来のエスケープクランク112の総合負荷特性のように、従動部14側に加わる負荷が原動部13側に増大して伝わるのを可能な限り防止することができる。
【0035】
(3) この実施形態では、鎖錠面13aから転換孔13cに回転体14bが嵌まり込むように、接触部14eが原動部13と接触してクランク14aを強制的に回転させるとともに、鎖錠面13bから転換孔13cに回転体14bが嵌まり込むように、接触部14fが原動部13と接触してクランク24aを強制的に逆転させる。その結果、原動部13の動作に連動してクランク14aを動作させて、定位と反位との間で分岐器1を転換させることができるとともに、定位及び反位で分岐器1を鎖錠させることができる。
【0036】
(4) この実施形態では、回転体14bが鎖錠面13a,13bと接触している間は分岐器1が定位及び反位で鎖錠されており、このとき鎖錠面13a,13bと回転体14bとの間に作用する力は動作かん11a及びリンク11bの駆動方向と直交する方向にのみ作用する。このため、分岐器1が鎖錠されているときに列車が通過すると、分岐器1からの列車横圧が鎖錠面13a,13bと回転体14bとの間で図1に示すB,C方向にのみ作用しD,E方向には作用しない。その結果、分岐器1からの列車横圧がエスケープクランク12にのみ加わり電気転てつ機11には加わらなくなるため、電気転てつ機11の磨耗が低減し寿命を延ばすことができるとともに点検周期を延長することができる。また、新たな電気転てつ機を開発する際に電気転てつ機の強度を下げることができるため電気転てつ機の小型軽量化を図ることができる。
【0037】
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。例えば、この実施形態では、支点Oから作用点P1 ,P2 までの長さが等しい場合を例に挙げて説明したが、支点Oから作用点P1 ,P2 までの長さをそれぞれ異なる長さにすることもできる。また、この実施形態では、支点Oから接触部14e,14fまでの長さが等しい場合を例に挙げて説明したが、支点Oから接触部14e,14fまでの長さをそれぞれ異なる長さにすることもできる。さらに、この実施形態では、分岐器101のトングレール3a,3bやノーズレール18を転換する場合を例に挙げて説明したが、可動K字クロッシングの可動レールを転換する場合についてもこの発明を適用することができる。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によると、分岐器の転換不能を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施形態に係る鉄道分岐器用エスケープクランクに分岐器に連結するロッドを接続した平面内部図である。
【図2】この発明の実施形態に係る鉄道分岐器用エスケープクランクによってポイント部のトングレールを転換する場合の平面図である。
【図3】この発明の実施形態に係る鉄道分岐器用エスケープクランクの動作を説明するための図であり(A)は分岐器を定位で鎖錠した状態を示し、(B)は分岐器が転換を開始する直前の状態を示し、(C)は分岐器の転換を開始した直後の状態を示し、(D)は分岐器を転換している途中の状態を示し、(E)は分岐器の転換を終了する直前の状態を示し、(F)は分岐器を反位で鎖錠した状態を示す。
【図4】この発明の実施形態に係る鉄道分岐器用エスケープクランクの負荷と総合負荷特性との関係を模式的に示す図であり、(A)は分岐器を転換したときに従動部に加わる負荷を示し、(B)は分岐器を転換したときに原動部に加わる負荷を示す。
【図5】この発明の実施形態に係る鉄道分岐器用エスケープクランクの総合負荷特性と電気転てつ機の転換力特性との関係を模式的に示す図である。
【図6】従来の鉄道分岐器に用いるエスケープクランクの使用例を示す。
【図7】従来の鉄道分岐器用エスケープクランクの負荷と総合負荷特性との関係を示す図であり、(A)は鉄道分岐器を転換したときに従動クランクに加わる負荷を示し、(B)は鉄道分岐器を転換したときに原動クランクに加わる負荷を示す。
【図8】従来の鉄道分岐器用エスケープクランクの総合負荷特性と電気転てつ機転の転換力特性との関係を示す図である。
【符号の説明】
1 分岐器
2 ポイント部
3a,3b トングレール
4a,4b 基本レール
9 スイッチアジャスタ
9a ロッド
11 電気転てつ機
11a 動作かん
11b リンク
12 エスケープクランク
13 原動部
13a,13b 鎖錠面
13c 転換孔
13d,13e 接触面
13f,13g 転換面
14 従動部
14a クランク
14b 回転体
14c,14d 補助アーム
14e,14f 接触部
O 支点
1 ,P2 作用点
F 負荷
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
6
【図8】
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